原子力政策円卓会議(第9回)議事概要
- 日 時
- 8月7日(水) 午後1時30分〜午後5時30分
- 場 所
- 東條会館(東京都千代田区麹町1−4)
- テーマ
「原子力開発利用の未来は?」
−核燃料リサイクル−
- (1)核燃料リサイクルの意義・展望
- (2)再処理
- (3)高速増殖炉開発の意義
- (4)プルサーマルの意義
- (5)バックエンド対策、特に高レベル放射性廃棄物処分の展望
- 出席者
- モデレーター
- 茅 陽一 東京大学名誉教授(議事進行を担当)
- 佐和 隆光 京都大学経済研究所長(議事進行を担当)
- 鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
- 西野 文雄 埼玉大学大学院政策科学研究科長
- 招へい者
- 荒木 浩 電気事業連合会会長
- 東京電力株式会社取締役社長
- 栗田 幸雄 福井県知事
- 近藤 駿介 東京大学工学部教授
- 西川 正純 柏崎市長
- 鈴木 篤之 東京大学工学部教授
- 高木 仁三郎 原子力資料情報室代表
- 土田 浩 六ケ所村長
- 平野 良一 核燃をとめよう浪岡会代表
- 松浦 祥次郎 日本原子力研究所副理事長
- 吉岡 斉 九州大学大学院比較社会文化研究科教授
- 原子力委員
- 伊原 義徳 委員長代理
- 田畑 米穂 委員
- 藤家 洋一 委員
- 依田 直 委員
- (敬称略 五十音順)
- 議事概要
注1:文章整理の関係から表現が必ずしも発言通りではない場合がある。
- 参考別紙
- :「原子力政策円卓会議開催に当たっての基本的事項」[別紙1]
- :「招へい者の方から提出のあった資料等」[別紙2]
- :「核燃料リサイクルに関わる議論の視点」[別紙3]
《伊原原子力委員会委員長代理挨拶》
- この円卓会議は、毎回様々な方による活発な討議が行われ、議論を深めてきた。
- 本日は、第7回に引き続き「原子力と核燃料リサイクル」に関する事項について、議論を深めたい。特に今回は「核燃料リサイクル」そのものに焦点を当てた議論を行いたい。
- 核燃料リサイクルの確立は、地球資源の有効利用の観点から大きな意義と可能性を秘めており、特に資源に乏しい我が国では非常に意義あるものとして、原子力政策の中心に位置付けてきている。
- これまでの会議でも、長期的に見たエネルギーの確保、人類の進むべき道について様々な意見が出されており、これらを踏まえ、核燃料リサイクルをどのようにとらえていくか、議論を行う必要があると考えている。
《モデレーター冒頭挨拶》
- 本日は、「原子力と核燃料リサイクル」に関する事項について議論を行いたい。この事項については第7回の会議でも議論したが、本日はこの議論をさらに深めたい。
- 今回は、核燃料リサイクルの意義・展望という総論的な項目に加え、再処理、プルサーマルの意義、高速増殖炉開発の意義、高レベル放射性廃棄物処分の展望、といったものが議論の項目として考えられる。
- これらの項目について、議論を進めるための手がかりとして、これまでの円卓会議でなされた議論を整理した資料を用意している。(別紙3:事務局より説明)
- しかし、これまでの議論にない新しい問題提起を頂くことは歓迎するし、自由な発想でご議論いただきたい。
《自由討論》
□巻町住民投票について
┌─────────────────────────────────┐
│巻町の住民投票の結果について │
│・十分時間をかけて議論した上のものであり、結果を率直に認めるべき。│
│ 住民の理解不足というべきではない。 │
│・国策と地域との関わりをどのように考えるのかについて問題提起された│
│ ものと理解。立地地域だけの問題ではなく都会の人たちも共有の認識を│
│ 持つべきことを問いかけている。 │
│・エネルギーについてもっと本質的な問題を直接対話をできればもっと理│
│ 解が進んだのではないか。 │
│・あのような問いかけに対してよく4割も賛成したというのが率直な感想│
│・自治体の長としては、住民を二分にすることがないような解決に努力す│
│ るべき。 │
│ との意見が出された。 │
│ また、原子力委員会からは住民投票の結果に関する委員長談話が紹介さ│
│ れた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 住民投票の結果は尊重するべき。円卓会議の議論に、この結果を反映しないようでは、円卓会議が国民の意見を反映するものであるとは言えない。
- 住民投票の結果は、二十数年来の議論の末の住民の総合判断であり、住民の理解不足と言うべきではない。
- 住民の意見あっての国策である。国策を押しつけるべきではない。
- 住民投票の手法については疑問を持っているが、巻町の場合のような問いかけに対して、よく4割も賛成したというのが率直な感想。
- 昭和40年代の前半、柏崎では巻町と同時期に原子力発電所の問題が浮上してきたが、今の時点での状況の違いに複雑な気持ちを持っている。近隣である柏崎の地域振興は、より一層進まなければならないという思いを強くした。
- 地域住民の理解を十分進めるということが重要。東海村では40年の実績に基づき、住民の理解がよく進んでおり、原子力事業所に対する住民のサポートがよく得られている。
- 住民投票の結果は十分な時間をかけて議論した上でのものであり、率直に認めるべき。原子力政策は国策であるにもかかわらず、情報の提供や意見の吸い上げがない。一地域が巻町のような決定を行ってもいいのかという声に対しては、昔の滅私奉公を彷彿させて慄然たる思いを抱く。国策の進め方が今回問われたのであり、国は反省するべき。
- 国策として原子力政策を遂行している国は他にほとんど見あたらない。科学技術庁や通産省のような、原子力開発を進めるという党派性をもった団体が国策を指導する以上、推進という方向に傾かざるを得ない。原子力長期計画は国の関わるプロジェクトに限定するべき。通産省が巻町まで介入するのはやり過ぎ。
- 住民投票では、国策と地域との関わりをどのように考えていくのかということについて問題提起された気持ちである。このことは電源立地地域だけの問題ではなく、都会でその恩恵を受けている人たちも共通の認識をもつべきことを問いかけている。
- 明白な結果が出た以上、国と電力会社は原子力開発利用計画を一旦白紙にするべき。巻の計画は電調審からはずすべき。
- エネルギー源の選択の議論はしっかりすべき。
- 原子力が受け入れられない理由を反対派のせいにするべきではない。原子力発電所を地方に押しつけるようなことは通用しない。私は、原子力はなくてもやっていけると考えるが、どうしても必要というなら都会に建設できるような原発を作って提起するしかない。
- 憲法は前文で「国民は代表者を通じて行動し」としている。これが基本であるべき。しかし、それにもかかわらず、この住民投票に象徴されるように先進国においては、権力が多重、多層構造化し、国の権威が低下しつつあることが専門家により指摘されている。権力構造、社会構造が今後そのようになるのであれば、そういう前提で、地域社会が受け入れやすい技術にしていかなければならない。また地域のリクエストを反映した技術の姿を設置者と地域が、共同で協議し、決定していけるような仕組みが必要。
- 巻町では、これから新しい町づくりをする気になっているのに、電力会社の引き続き理解を求め続けるとの発言には疑問。巻町が一体になって地域づくりに励めるような環境をつくってやることも企業の一つの責任ではないのか。
- 住民投票の結果は、エネルギーが国民に対してどういう位置づけにあるかということについて、表面的な問題で議論が進み過ぎたのではないか。もっと本質的な問題を直接対話できればもっと理解が進んだのではないか。
- なぜ巻町では町を二分するような住民投票に至ったのか分からないが、町の政策決定者が判断を住民投票にまかすことになったプロセスについて何だったのか、原子力発電所がもたらすものは何か、十分考えることが必要。町長、村長はできるだけ町、村を二分することがないような解決の方策を探る努力をするべき。
- 巻の住民投票の結果について、原子力委員会としての意見を聞きたい。
- 巻の問題については、中川委員長がこういう発言をしておられます。「今回の住民投票において、原子力発電所建設に係る巻町町民の意志表示がなされました。いずれにしても、原子力施設の設置に当たっては、地元をはじめとする国民の御理解と御協力を得ることが重要であり、今後とも原子力に対する一層の御理解と御協力が得られるよう更なる努力を行って参りたい。」
- 特に安全問題が大きな問題であったが、更に安全レベルを高めながら、原子力がどのような意味をもつのかについて、努力を重ねたい。
□原子力政策関連
┌─────────────────────────────────┐
1│原子力に関して、 │
│・21世紀のエネルギーセキュリティーを考えるとエネルギー源の多様化を│
│ 図ることが重要であり、原子力は基幹エネルギーの大きな選択肢の一つ│
│・我が国において、新エネルギーや省エネルギーに期待することは困難な│
│ 状況であり、原子力、プルトニウム利用に関する安全性を高めつつ、技│
│ 術を信頼しながらやることに国民の合意を得る努力をするべき。 │
│ との意見が出された。 │
│ これに関連して、原子力の他にも選択がないかも含め議論をしてエネル│
│ ギー政策を作るべきとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 近隣アジア諸国のエネルギー需要の急増、CO2問題による大きな制約、また第3次石油ショックの可能性がないと断言できない現状において21世紀のエネルギーセキュリティを考えると、体力のあるうちに将来への備えをする必要があり、エネルギー源の多様化によりリスクを分散するべき。質、量、経済性を考慮した上でベストミックスの考え方の下に安定供給を図っていきたい。
- 原子力は基幹エネルギーの大きな選択肢の一つと考えることが重要。新エネルギーは補完的役割であり、基幹エネルギーになることは難しいと認識。
- 供給義務のある電力会社としては、不安定、不透明な新エネルギーだけでは自信がもてない。
- 世界的に我が国の省エネルギーはかなり進んでおり、これ以上の大幅な省エネルギーを期待することは困難。
- 年2%で伸びる電力需要を満たすのに、原子力発電以外にあるのか。竜飛岬で風力発電が試験的に行われているが、津軽半島から能登半島まで並べても100万kW程度であることを考えれば代替エネルギーといっても困難なことが分かる。省エネといっても、日本人が自動販売機は駅に一つだけといった辛抱ができるでしょうか。できないのなら、当分は原子力に頼るしかないというところから話が始まっている。プルトニウムにしろ、リサイクルにしろ、安全性を高めつつ技術を信頼しながらやることに国民の合意を得る努力を原子力委員会でしてほしい。
- エネルギー資源が本当に枯渇する状況、又は埋蔵量の半分を使ってしまった状況を考えると、過去の歴史を見ても、国際紛争のもととなることが予想される。日本のように国際紛争を軍事力で解決しない立場の国がそうした事態にどう対処できるかというと、「紛争をしなくてもこういう事も可能」という様々な選択肢を世界に示しうる技術を持っていることが必要。選択肢の幅を広げることが日本の安全、世界の平和に影響すると考える。
- 本日の議論を聞いていると、エネルギーの必要性を錦の御旗にして、「今やらねばならない」という錯覚を起こさせるが、今の状況はもう少し余裕があると認識している。原子力の他に選択がないかどうかを含めて、しっかり議論して国のエネルギー政策を作り上げてもいいのではないか。
┌─────────────────────────────────┐
2│現在の原子力政策は、国民全般の合意が必ずしも充分ではなく立地地域で│
│は対応に苦慮している。国民的な議論を踏まえ、改めて国民合意を図るべ│
│きとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力政策は、国民生活あるいは我が国の将来を左右する大変重要な問題であるにも関わらず、立地地域固有の特殊な政治・行政問題になっており、消費地域を含めた全国民の関心事になっていない。
- 核燃料リサイクル、特にプルサーマル利用、バックエンド対策というものに対して、その実現の見通しが明らかでないということもあり、国民全般の合意が必ずしも十分とは言えない。地元ではもんじゅ事故をはじめ、使用済燃料の貯蔵保管対策など原子力政策の遂行に伴い派生する様々な課題に直面しており、その対応に苦慮している。
- 国は責任を持って、国民の理解、信頼、合意を得る努力を十分に行ってこなかった。国の努力不足を地方が肩代わりしていると言っても過言でない。
- 現状の原子力政策のままでは将来展望が開かれず、閉塞状況に陥ることは必死。国民的議論を踏まえ、原子力政策の基本的方向について改めて国民合意を図る必要がある。円卓会議、シンポジウム等において取り上げられた地元の意見、あるいは国民各界各層の意見を原子力政策に的確に反映して、原子力政策を現実的で柔軟性をもった将来見通しのあるものにするべき。
┌─────────────────────────────────┐
3│大間に計画されているABWRを例に、原子力の開発手順への疑問が示さ│
│れた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 今までは、ある意味で実験炉、原型炉、実証炉、商業炉という手順を踏んでやられてきたが、ここにきて、それが一足飛びに最初から実用炉を考えた形となっている。その一番いい例が青森県大間でATRからABWRのフルMOX燃焼炉という形が打ち出されたことではないか。
□核燃料リサイクル関連
(1)核燃料リサイクルの意義、展望
┌─────────────────────────────────┐
1│核燃料リサイクルについて、経済面、資源面、安全の面も含め総合的に評│
│価することが必要との意見が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- プルトニウム政策について、原子力委員会の責任において中立的な第三者機関を作ってほしい。その際、経済面、資源面、安全の面から、軽水炉との利害得失を様々な側面から評価すべき。
- 今回、比較検討の議論をすることは賛成。
- 各エネルギーの利害得失を論ずることについては、全く同感。
- 総合評価として、高速増殖炉路線、軽水炉路線の比較をすべき。資源的側面は総合評価する上での一つでしかない。また、ウラン資源の有効利用というのは、さらにその中の一つの側面でしかない。資源面だけを重視して論を立てれば、総合的判断を誤るおそれがある。
- 原子力無し(オプションI)とワンススルー(オプションII)とプルトニウム利用路線(オプションIII)を項目ごとに比較した表を配布された参加者の方がいる。その中で、たとえば、高速増殖炉の安全性が他のものより劣るとなっているが、そう書くだけのデータベースがあるのか。海外の評価などでは、比較的批判的なものでもそれをイコールとしているものもある。
- その表では、オプションIの路線は、すべての項目でIIよりまさり、IIはすべての項目でIIIより勝っているが、個々の項目でメリット、デメリットが輻輳している場合にのみ、それらを総合的に評価することに意味があるのではないか。これでは、総合評価するまでもなく、Iが圧倒的によいものとなってしまい意味がない。
- 原子力無しとワンススルーとプルトニウム利用路線を項目ごとに比較した表については、各オプションについて、様々な項目のメリット、デメリットを総合して比較し、議論することが大切という観点で出したもので、皆で議論するためのたたき台である。個々の評価については主観も混ざっており自信のない項目もある。
- 核燃料リサイクルかワンススルーかと議論が分かれているが、その分かれ目が何かについて明確にするのも一つの大きな目的であり大事な議論。
- 使用済燃料だから再処理しなければいけないというのは一つの考え方にすぎず、様々なオプションを総合的に考えるべき。
- 提出された資料中の表にある項目は大変おもしろいと思うが、評点については留保していると考えていいか。(提出者了解)
┌─────────────────────────────────┐
2│ 核燃料リサイクルの意義について、資源的側面及び環境影響の側面から│
│以下の意見が出された。 │
│○資源的側面 │
│・原子力発電所からは必ず使用済燃料がでてくる。それを資源として有効│
│ 活用する事が重要。 │
│・国際関係の観点からエネルギーセキュリティー上はマイナスであり、ま│
│ た、プルトニウム増殖は、人的資源、労力の観点から資源の有効利用に│
│ はならない。 │
│○環境的側面 │
│・再処理により、環境へのかなり大量の放射能が放出されるとともに、廃│
│ 棄物を体積的に増大させるものである。また、プルトニウムを燃やすと、│
│ また使用済燃料が出てくるのでプルトニウムが消えるわけではないし、│
│ 放出放射能の影響評価はされているだろうが出さないで済むならその方│
│ がいい。 │
│・再処理により放射能量は明らかに少なくなるし、処分時の全体の容積に│
│ ついても増大させるものではない。また、再処理による環境への放射性│
│ 物質の放出については、安全審査において問題ないと評価されている。│
│ との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
○総論
- 核燃料リサイクルの推進はエネルギーセキュリティの確保という観点のみならず、科学技術立国としての日本の責務である。再処理は廃棄物を低減するという点からも重要。
- リサイクルが持っている多くのやっかいな部分にふれずにプラスだというわけにはいかず、マイナス部分も多い。軽水炉ですら合意が成立しないのに、事態をさらに複雑にするリサイクルはすべきでない。
- ワンススルーかリサイクルかの選択があるが、直接処分を語るときには、その中のプルトニウムをどうするかという議論は、あまりされてないとの印象を持っている。リサイクルすれば、資源を有効活用でき、高レベル廃棄物を少なくとも40%減容でき、廃棄物のレベルに応じて処分できるというメリットがある。一方、直接処分は、技術的、コスト的に難しいと考える。
- 直接処分もリサイクルも否定するということになると、現在電力の3分の1を占めている原子力をどうするのかということになり、電気の無いリスクと資源の有効利用のリスクを比較して考えていくのが国民的課題となる。
○資源的側面
- リサイクルに関しては、原子力発電を電源のある割合で進めていくとすると、使用済燃料は必ず出てくる。これをどうするかがポイント。考え方としては、なお有効な資源をリサイクルするというのが大切な考え方。
- プルトニウム利用は、ホットな国際政治の問題であり、世界情勢によって、民生用にも非常に大きく響いてくる。一方、軽水炉だけなら一応国際世論はほぼ合意している。そうした観点で、高速増殖炉と軽水炉を比べた場合、高速増殖炉は、資源の有効利用ではプラスでも、エネルギーセキュリティ上は、かえってマイナスであり、総合的には、資源面でマイナスが強いと考える。
- プルトニウムを増殖するためには、人的資源、労力が必要であり、環境への問題も生じるということを考えると、ウラン238の活用という観点だけで資源の効率化というわけにはいかない。
- 今の軽水炉路線を続ける限り使用済燃料は発生し、その中にはプルトニウムが含まれているのが事実であり、それをどう処分するかという問題につきると考える。
- 最近、米国内で直接処分と他のオプションについて比較検討した結論が出た。これによると、非常に慎重な言い回しはしているが、直接処分とリサイクルの差はないとしており、資源論からみてこのまま直接処分をすることがいいかについては留保している。しかし、高速増殖炉等の実現は、持続的、長期的な国のコミットメントがあってはじめて可能であり、現在のアメリカの状況ではできないとしている。
- 理解の仕方としては、プルトニウムを分離して新たな物質として考えるのでなく、使用済燃料自体を有効な資源として考えるかどうかという観点も重要。使用済燃料は直接処分という方針の国もあるが、それはかえって無責任と考える。使用済燃料は原子力発電を行う以上出てくるものであり、どうするかを計画的に進めるのが、責任ある態度。そうした意味から日本の原子力発電にとって、リサイクルの計画を着実に進めていくのが大切。
- 路線の総合評価の問題が重要であり、使用済燃料があるという前提で、再処理するか直接処分するかを、資源面から議論するのは本質的ではない。
○環境影響の側面
- 「核燃料リサイクル」というが、軽水炉に戻すとした場合、プルトニウムのごく一部が利用できるだけで、大半はリサイクルされようのない廃棄物。再処理は、環境へかなり大量の放射能が放出され、低レベルを含めれば、廃棄物を体積的に増大させるにもかかわらず、リサイクルと称して、環境にやさしいというのは、まやかしの表現である。
- 再処理は、新たな廃棄物を生み出す上、回収されたものを使った後に、新しくより始末に困る廃棄物を発生させるという問題がある。そうしたことを含め、もう一度、議論して進めなければ、ただ先送りするだけになってしまう。核燃料リサイクルは、一度使ったものをもう一度使うからいいこと、という感じを与えているが、再処理路線は、廃棄物増殖路線ではないか。
- 再処理という技術は歴史があり、廃棄物をたくさん出し、環境を汚すという初期の頃のイメージが強い。しかし、最近の再処理工場は、廃棄物の管理、処理は非常に進んでおり、廃棄物を作り出すというかつてのイメージとは変わってきている。また、ワンススルーとの比較をするなら、使用済燃料中の放射能と再処理後の放射能の比較をすべきで、これは、明らかに再処理後の方が少ない。
- 再処理によって放射能の量が減るといわれたが、使用済みのMOX燃料に含まれている成分の長期的毒性が環境へどう影響するかいった点等からも評価すべき。さらに、再処理に伴い環境へ放出される気体廃棄物が出るが、それも問題。そうしたことを考えると、再処理によって、放射能が減るという認識はできない。きちっと評価して全体像を明らかにする必要がある。
- 確かに再処理の過程でトリチウムや、クリプトンとかが出るが、人間がエネルギーを使うと廃棄物は出てくるものであり、化石燃料を使えばそこから廃棄物が出てくる。それらと比較して、トリチウムやクリプトンが、許容できないほどの量が出るかについては、安全審査でそうではないと評価されている。そういう点で、リサイクルの方が環境に影響が少ないと考えている。
- これまでの研究開発の中で様々な答えがあってそれに基づいて、リサイクルの方が環境影響が少ないという意見になっているのだと思う。
- 再処理の安全審査の適切さについての批判はもっている。
- 高レベル放射性廃棄物と使用済燃料の処分の問題については、放射能の面からみれば、それらの放射能量の比較が出発点であり、リサイクルした方がプルトニウムが無いだけ明らかに低くなる。
- 再処理して抽出したプルトニウムを燃やしても、使用済燃料が出てくるのだからプルトニウムが消えるわけではない。さらに、超ウラン元素もできてくる。そんな簡単な話ではなく緻密な議論が必要である。これはもっと別なところでやるべき議論。
- 再処理により、捨てる放射能が減るというのはその通りだと思うが、トータルな容積が増えるかどうか、また環境影響がどうかというのが論点。環境影響については、直接処分については必ずしも実証できないが、再処理については歴史的に検証することは可能なのではないか。
- 歴史的には、再処理工場が環境を汚染したことはあると思うが、その反省にたって、フランスの新しい再処理工場では、データでも発表されているが、驚くほど廃棄物の発生量が減っている。
- 全体の容積についても、使用済燃料を直接処分できる状態にすると体積が増えるので、リサイクルした方が少なくなるというフランスの報告書もある。また、自分としても、少し余裕をみて考えても容積については、ほとんど差は無いと理解している。
- 再処理工場からの環境放射能の問題は、原子力発電所における環境放射能による放射線の影響と同じ考え方で環境安全性が確保されるべきと考えている。
- 現在のフランスの再処理工場でも、トリチウム、クリプトン、ヨウ素129が放出されている。長期的にそれが環境にどう影響を与えるかについてはいろいろな評価があるが、出さなくてすむならそれがいいとみんなが認めるのではないか。
- 使用済燃料問題であることは確かであるが、MOXとして燃やしてもまた使用済燃料ができるので、放射能が減るということにはならない。
┌─────────────────────────────────┐
3│・プルトニウムの需給計画について、高速増殖炉の計画が遅れてきたよう│
│ に、プルトニウムの消費が足りなくなり生産がだぶついてくるのではな│
│ いかという意見が出された。 │
│・これに関連して、プルトニウムバランスで重要なのは、回収されたプル│
│ トニウムが充分使い道があるという点。六ケ所再処理工場から回収され│
│ る予定のプルトニウムは日本中の軽水炉燃料の10%以下であり、これは│
│ 適正な規模であるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- プルトニウム需給計画は数字あわせではないと言われたが、高速増殖炉の実用化の目標時期がどんどん延びてきたように、需給計画も消費が足りなくなり生産がだぶつくというようになるのではないか。
- 数字あわせではないというからには、それが違っていたらどのような責任をとるのか。あるいは、責任の取り方の制度的な仕組みを含めて、もう少した長期計画の内容についてけじめのある対応をとるべき。
- 計画が遅れると言うことがあったが、プロセスの正当性の議論はのこるが、計画を遅らせると合意した段階で責任の問題は終結していると考えられる。
- プロセスの正当性の問題と中身の問題とはかなり関わっていると思っている。また、計画そのものについても、何十年もかかって、結局実現しないということにはならないようにしないといけない。もし、そうなるのであれば、その計画はやめるべきであり、その冷静な判断を大勢の人数で密室にならないようにやるべきと思う。
- 使用済燃料をリサイクルするという考え方にたてば、再処理をすることになるが、それには工場の建設、いろいろな手続きがあり、適正な計画が必要である。それが今の計画と理解している。
- プルトニウムバランスで大事なのは、再処理工場で回収されるプルトニウムは充分使い道があるかという点。六ケ所の再処理工場で回収されるプルトニウムが、資源のリサイクルとしてどのくらいの原子力発電所でプルサーマルとして利用できるかと試算すると10%以下であり、適正な規模と考えられると思う。
┌─────────────────────────────────┐
4│・使用済燃料の直接処分に関して、地層への熱的な影響、地下水との相互│
│ 作用等の基礎的な研究が不足しており充分議論ができないとの意見が出│
│ された。 │
│・また、これに関連して、地層処分の基礎的な研究としてプルトニウムを│
│ 含む使用済燃料よりガラス固化体の研究を優先することは自然との意見│
│ が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 直接処分の技術開発の努力は決定的に不足しており、議論はできない。
- 直接処分の研究開発が少ないという意見があったが、では研究開発として何が不足しているのか。
- 使用済燃料を減容し、安全に長期的に貯蔵して地層に処分するという場合に、ガラス固化体にせよ使用済燃料にせよ、どのような放射性物質が地下水を汚染する可能性があるのかなどについて基礎的な研究が足りない。
- 直接処分と再処理の廃液を固化したもので違うのは、プルトニウムが含まれていること。プルトニウムを処分するという研究を日本でどうやってやるのかと考えると、プルトニウムの含まれないガラス固化体の研究を優先することは偏った考え方と思わない。
- プルトニウムではなく、使用済燃料を直接処分するときの話をしているのであって、それが熱的に地層にどう影響を与え、地下水との相互作用がどうなるかという基礎的な研究の問題。
┌─────────────────────────────────┐
5│ 使用済燃料の処理に関して、 │
│・現在でも原子力発電所から使用済燃料が発生しているのに、リサイクル│
│ するか直接処分するかの狭い選択を今ここで議論していること自体、地│
│ 元としては釈然としない。国として方向付けする一層の努力するべき │
│ との意見が出された。 │
│・これに関して、モデーレターよりそもそも円卓会議がそういう議論をす│
│ るということが前提になっているという説明と、一昔前は当たり前と考│
│ えていたことでも、様々な問題が噴出したためそれが問われているとの│
│ 意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力発電所は毎日、発電を行っており、今我々が核燃料サイクルについて考えられる幅はあまりない。原子力発電所を稼働させる限り使用済燃料が出るのであり、原子力発電所を全て止めるという極端な選択を除けば、リサイクルを行い有効活用をするか、直接処分するかの2とおりしかない。
- この狭い選択の議論を、今私たちのような立場の者が考えなければならないのか。この状況が、巻を町を二分する住民投票を選択させるまでに追い込んだ。
- これまでの円卓会議では、エネルギーが必要で、立地地域への配慮は必要で、発電所にある使用済燃料を早く搬出してほしいとの意見があったが、国として使用済燃料をどうするのかを決めるべき。青森は、交付金がなくなり地域振興ができなくなっても困る。
- 現在、原子力発電により使用済燃料がコンスタントに生まれつつあるという段階なのに、このような議論がなされていることに釈然としないものを感じている。
- 選択肢としては、2つくらいしかない。誰かにどこかで、正確な議論とデータを提示してもらいつつ総合評価をして選択する努力をしてもらわないと、現場にいる人間としてはたまったものではない。それにつながるのがこの円卓会議であると理解しているが、国として一つの方向付けをする一層の努力が必要。
- 現実に原発から使用済燃料が出てきているのにこのような議論をしているのは不満という声もあったが、現実の問題として円卓会議はそういう議論をやるということが前提になっているということを理解いただきたい。
- 廃棄物が出ているのに再処理するべきか議論しているのが問題という意見について、一昔前は再処理、高速増殖炉の開発が当然と原子力委員会は考えていたが、国際的な動向、いろいろな問題の噴出により、現在それが問われているからだと思う。もう少しこの点についてじっくり議論をするべき。
┌─────────────────────────────────┐
6│使用済燃料貯蔵の長期化に備え、敷地外の中間貯蔵施設を設けるべきとの│
│意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 福井県内の原子力発電所では、2001年、2002年くらいには貯蔵プールが満杯になる。使用済燃料貯蔵の長期化に対応するため、2010年くらいまでに敷地外に中間貯蔵施設を設け、敷地内にプールされているものをそこに移すようにしてもらいたい。
□高速増殖炉開発関連
┌─────────────────────────────────┐
1│ 高速増殖炉に関して、 │
│・他の先進国はプルトニウム増殖路線から撤退しているし、半世紀研究開│
│ 発をしてきてもまだ成果が出ておらずフィージビリティーがあるとは思│
│ えない。 │
│・諸外国がやめているからやめるというのは、日本が先進国を追いかけて│
│ 来た頃の考え方。将来の重要性を考え研究開発に努力を傾注するべきで│
│ あり、開発のためのチェック・アンド・レビューの体制を整えるべき。│
│ との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 今は、プルトニウム政策を見直す絶好の時期である。第一に、全ての先進国がプルトニウム増殖政策を止めた。第二にもんじゅ事故は、プルトニウム政策への国民の関心を高めた。第三には、まだ研究開発段階にあり、止めても損失はない。
- FBRから世界が皆撤退したのに日本だけがなぜやるのかという議論については、日本が先進国を追いかけて来た頃の考え方。世界第二のGNP大国であり、科学創造立国である日本が一歩前を走るためには、なによりも科学技術が重要であり、FBRの開発も日本はすべき。
- 文明における先進国と後進国は歴然としており、ヨーロッパ、米国、日本の順である。先に進んできた者みんなが止めたのに、日本は脱プルトニウム後進国であるともいえる。先端技術を何でも進めるのが先進国であるというのは、19から20世紀の価値観であり、1970年頃から価値観が変わってきている。その最初の例がSST(超音速旅客機)。
- 海外ではFBRを止めたからこそ、むしろ、日本はやるんだとの意見があったが、太陽光発電をするとか、コジェネレーション、エネルギー依存型でない文明をどうするのかというような方面にこそ努力すべき。
- 先進国のうち、米国はプルトニウム利用を止めたが、フランス、ロシアは利用を行っている。利用を止めても損失がないというが、今はよくても、将来大きな損失を生ずる。先進技術を進めるのが先進的な考え方という世の中ではないという意見があったが、SSC(大型加速器)の失敗は、技術がなかったことによる。
- フランスは増殖炉としてのプルトニウム利用をやめた。ロシア、中国はGNPからみて先進国ではない。
- 将来的に損失を与えるかどうかについては、プルトニウム技術は半世紀たっても成果が出ておらず、フィージビリティーがあるかどうかさえ分からないので、損失が出るとはいうべきでない。先端技術の開発は、いいもののみを選択して進めていくべき。
- 研究開発途上のものについては、ある意味では、未来は我々の手中にあるともいえ、今の段階、過去の出来事で評価するのは不適切。また、長期の研究開発において、限られたリソースをどこに分配するかは、その国々が事情に応じ、決めていくことであり、他の国では止めているから駄目、という視点も不適切。むしろ、開発に対するチェック&レビューの体制をきちんとすることが大切。
- 研究開発の途上のものを完全に評価できないのは事実。しかし、歴史的に見て、半分の確かさをもって評価できると考えている。
- 60年代からは、原子力委員会も、チェック&レビューを掲げているが、うまく機能してきたか疑問。長計改定の度に、加速的に目標時期が遠のいていくというのは、そうしたチェック&レビューがきちんとかかっていなかったのではないかと考える。そうした方式の改革を行い、きちんとした評価システムの確立が必要である。
- ウランに限定していえば、高速増殖炉をやらねば資源的な意味はない。しかし、高速増殖炉は既に何十年も開発を行っているのに海外でも、うまくいかない技術で、何十年先に実用化するかも不透明。現実的に考えると、宝くじみたいなもので期待できるものではない。
- 高速増殖炉は、50年やってもものにならないので駄目だとの意見があるが、科学技術の発展はその技術の一つの世代がどれくらいの長さを持っているかに左右され、そのサイクルが繰り返されるごとに世代ごとに発展していく。原子力は一つの世代が非常に長い技術であり、50年やっているといっても、世代にしてはそんなにやっておらず、研究開発の努力は、これまで一生懸命やってきたが、十分尽くされているとは言い難い。将来の重要性を考えるとまだ、努力を傾注すべきである。
┌─────────────────────────────────┐
2│・将来の高速増殖炉のあり方について充分時間をかけ幅広く議論をするた│
│ め、原子力委員会に「高速増殖炉懇談会」のような懇談会を設置するべ│
│ きであるとの意見が出された。 │
│・これに対し、原子力委員会からその方向で検討したいとの見解が表明さ│
│ れた。 │
│・また、その懇談会に関して、密室の議論にならないようにしてもらいた│
│ い、将来のエネルギーのあり方をベースにした議論をしてもらいたいと│
│ の意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力委員会に「高速増殖炉懇談会」のような懇談会を設置して、将来の高速増殖炉のあり方等について十分時間をかけて幅広く議論することが重要。
- 高速増殖炉をどうすべきか等は、みんなで議論した方が良いのは確かであり、しかるべき場を設けて徹底的に議論することが、円卓会議の成果として出てくれば有意義。
- 「もんじゅ」事故の検討結果を踏まえ、核燃料リサイクル体系の中で高速増殖炉のあり方を議論し、今後、もんじゅの位置づけを明確にする必要がある。
- 長計では、高速増殖炉を将来の核燃料リサイクル体系の中核として位置づけ、将来の原子力発電の主流としていくべきものとうたっているが、国民的合意をはかるためには、そうした視点だけでなく、幅広い議論が必要。軽水炉技術の高度化も含め、将来の高速増殖炉のあり方について、十分時間をかけて幅広く議論するために原子力委員会に高速増殖炉懇談会の設置を提案したい。
- 日本でリサイクルに関する様々な形でデータは出ているが、こういう場でこれという決定版がないのも事実。そういう意味で懇談会で議論するべき。
- 高速増殖炉に関する懇談会については、設置する方向で、その内容を十分つめていきたいと思う。
- 懇談会という話しもあったが、それも密室にならないようにしてもらいたい。
- 高速増殖炉の懇談会を開催するのであれば、21世紀の日本のエネルギーのあり方をベースにおいて技術的にこういうものが必要であるということが、研究開発をする立場からすると重要なので、そういう点もいれてもらいたい。
┌─────────────────────────────────┐
3│・「もんじゅ」の事故については、徹底的に調査検討し、あらゆる角度か│
│ ら総点検し安全性を確認するべきという意見がでた。 │
│・これに関連して、原子力委員会から、規制当局、安全委員会でそのよう│
│ に進められているとの認識が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 「もんじゅ」事故については、時間と労力を惜しまず、設計思想、安全審査のあり方までさかのぼって、徹底的に調査検討し、その結果を踏まえ、あらゆる角度から設備・システム全体を総点検して、「もんじゅ」全体の安全性を確認する必要がある。
- 「もんじゅ」について徹底的に検討して、「もんじゅ」全体の安全性を確立するべきという意見はその通りであり、規制当局、安全委員会においてその通りに努力していると考えている。
□プルサーマル
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1│・プルサーマルは、使用済MOX燃料の再処理の問題や社会的安全性の問│
│ 題が生じるなど問題が拡大するにも関わらず、経済的にも資源的にもメ│
│ リットはない。 │
│・リサイクルというのはそれ自体面倒でいろいろな困難が伴うもの。天然│
│ ウランを海外から買っている日本としては、プルサーマルは立派な資源│
│ の節約であり、プルトニウム利用技術を育てていく重要なステップ。 │
│・プルサーマルの実施には、国民的な合意が必要であるが、現在はそれが│
│ 充分でなく、この場で議論している段階。このような状態でプルサーマ│
│ ルの実施は困難。 │
│ との意見が出された。 │
│ これに関連して、原子力委員より、プルサーマルは充分意義のあるもの│
│ であり、今後国民的合意が得られるよう努力するとの意見が出された。│
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 軽水炉MOXは、使用済MOX燃料の再処理等の他、加工時の廃棄物、安全性、核拡散、輸送時の情報公開などの社会的安全性等と問題が拡大してしまう。それにもかかわらず、経済的にも資源的にもメリットはない。問題を複雑化しない分だけ、直接貯蔵、処分の方が賢明な選択。
- ある意味で資源のリサイクルというのは、それ自体、面倒でいろいろな困難が伴うものである。従って、電気事業が私企業であることから利潤の追求にもっぱら傾くと、資源のリサイクルをやめようということにもなりかねない。リサイクルは単純な経済原則だけでは、うまくいかないということもあって、こういう場があると認識しており、こうした場で議論することは大変重要。
- プルサーマルでは資源節約はわずかでしかない、という意見もあるが、天然ウランを海外から買っている日本という立場に立ち、どれだけ購入が必要かを考えれば、立派な資源の節約。また、高速増殖炉までのプルトニウム利用技術を着実に育てていく一環として重要なステップでもある。
- プルトニウム利用についての国民合意が現段階では不十分。プルサーマル導入スケジュールは、余剰プルトニウムを持たないという「プルトニウムバランス論」による単なる数字合わせだとすれば、国民の理解は得られない。
- プルサーマル計画は、もんじゅやプルトニウム利用を中心とした我が国の長計の見直しの中の中心的課題であると認識している。福井県内でのプルサーマルの実施には、プルトニウム利用への国民的合意が不可欠であるが、現段階ではそれが十分でなく、困難と考えている。
- このような状態で、プルサーマルについて、自治体を預かるものとしての自信ある判断を市民の皆様としろというのが無理だろうと考えている。
- 軽水炉でのプルトニウム利用は、数字あわせではなく、将来の実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術の確立、体制の整備等の観点から重要。また、エネルギー供給面でも一定の役割を果たす。今後、国民的な合意が得られるよう努力していきたい。
□六ケ所核燃料サイクル施設関連
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1│・六ケ所核燃料サイクル施設における廃棄物の将来計画が不明確である │
│ という意見について、事務局より将来計画に関する事実関係が │
│ 説明された。 │
│・また、説明のあった事実関係について、地元でもよく説明し、青森の住│
│ 民に安心感を与えるようにしてもらいたいとの意見があった。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- いつもエネルギーの必要性は認識しているが、なぜ青森だけなのか、将来どれだけのものが運ばれるのかがわからない。原子力発電を始めたときから、使用済燃料が出ることがわかっていたのに、未だに海外返還廃棄物の貯蔵施設や低レベル廃棄物等の将来計画が不明確。
- 青森について、将来どういう廃棄物がくるのかの全貌が見えないことについて、答えがほしい。
- 高レベル放射性廃棄物については、将来にわたって青森県に高レベル放射性廃棄物があるということではないことを約束している。
- この地域に、六ヶ所村にどれだけの量の廃棄物が集められるのかをはっきりしてほしい。
- 低レベル放射性廃棄物については、最終的には300万本のドラムをお願いしたいが、現在許可を得ているのが20万本相当であり、全体像を明らかにしながら現在の施設建設は20万本として進めている。高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵については、最終的に三千数百本の返還があるが、現在の施設は1440本である。
- 英国ではスワッピングの話があるが、海外に再処理を委託している中、低レベル放射性廃棄物についても青森に帰ってくるのか。
- スワッピングについては、英国において、一つの可能性として検討している。最初に六ヶ所村にお願いした中に、海外からの全体の廃棄物の返還をお願いするという全体としての位置づけがあるが、どの程度の量をどういう施設でお願いするかの具体化には至っていない。
- 廃棄物量の低減化も進んでおり、ここで廃棄物の明確な量を求めるのは無理。
- 自分の問題提起に対しては、私に答えるのではなく、青森で説明するなど、青森の住民に安心感を与えるような努力をしてほしい。
┌─────────────────────────────────┐
2│六ケ所サイクル施設について、 │
│・燃焼度の高い燃料を再処理するようであるがそれがどのようなものか │
│・濃縮工場の劣化ウランを将来どう利用するか │
│・MOXの使用済燃料がまた青森に帰ってくるのか │
│ などについてきちんとした説明が無く、現地としては納得理解できない│
│ との意見が出された。 │
│ これに関連して、 │
│・高燃焼度の燃料はエネルギーがたくさん取り出されているのでその分高│
│ レベル廃棄物が多く含まれている。 │
│・MOXの使用済燃料は計画的に貯蔵し、劣化ウランとともに高速炉で使│
│ っていくことが正しいと思う。 │
│ との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 六ヶ所村の施設は、フランスで最新の再処理工場(UP3)をモデルにしているというが、我々が、実際そこで何が行われているか教えてほしいと事業者に質問しても、なかなか回答がされない。そのあたりをはっきり説明することが必要。
- 生活しているものの感覚としては、濃縮工場に大量のウラン原料が入ってきても、出ていくのはほんの少量で、あとは全部残され、将来資源になると説明されるだけ。また、再処理した後のものは、青森にとどめられ、かつ、取り出されたものが再利用された後、使用済燃料として青森に戻ってくる。なぜ、青森ばかりなのかと思う。そうしたことに、きちんとした説明がされなければ、現地としては理解できない。
- MOXの使用済燃料は将来的にはリサイクルしていくのがいいと思うが、それなりの技術的開発が必要。
- MOXの使用済燃料は計画的に貯蔵し、先ほど意見のあった劣化ウランとともに、高速炉で利用するのが正しいと思う。従って、長期的に蓄えるということを国民的なコンセンサスを得ながらどうしていくかということを別途考えるべき。
- 六ケ所で再処理しようとしている使用済燃料は燃焼度が高く、フランスのUP−3では割増料金が必要なものである。それは再処理するのが難しいからであると理解しているが、最近では、使用済燃料の発生量を減らすためか、燃焼度を高くしている。その辺についてもみんなのわかるような議論をしてもらいたい。
- エネルギーの話はあるが、負の部分として貯蔵される使用済燃料をどうしていくか、貯蔵は安全なのか、またどのくらいの燃焼度がいいのかなどについても示してもらいたい。
- 燃焼度は取り出したエネルギーに比例するものであり、燃焼度が高くなればエネルギーの取り出した量が多くその分使用済燃料に含まれる高レベル廃棄物も多くなる。このため、再処理コストが高くなると理解できるのではないか。
- 燃焼度によって、プルトニウムの同位体が変わってくる。それと同じようなかたちで、汚れもひどくなるから、再処理料金がかかるのではないかと理解している。また、プルサーマルで使用した使用済燃料の処理は技術的に難しいので時間を要するという説明とやや中間的なかたちにならざるを得ない。
- 「汚れ」ということがどういう意味かよくわからないが、燃焼度が進んでいるということはエネルギーをたくさん取り出しているので、高レベル廃棄物が多く含まれていることは確かである。
- 燃焼度が高くなると、プルトニウム同位体番号が高いものが増えるというのも確かであるので、再処理する場合は、軽水炉で利用するより、高速増殖炉で使う方が有効な使い方。このため、MOXの使用済燃料は、高速炉の燃料として利用するまで計画的に貯蔵していくことがいいと思う。
□バックエンド対策関連
┌─────────────────────────────────┐
1│・バックエンド対策について、世代間の公平として我々が責任を持ってや│
│ るべきなのかも含め、きちんとその方法について議論をするべきという│
│ 意見が出された。 │
│・また、廃棄物については、世代責任の問題があり、きちんと対応するべ│
│ きであるが、研究は産業界の利害と独立した機関でするべきとの意見が│
│ でた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- エネルギーを使った後の負の遺産を世代間の公平として我々が責任を持ってやるべきなのかについてきちんと議論をするべき。高レベル廃棄物の最終処分については、地層処分という方向がでているが、これは我々の代にきちんと始末しようという焦りがあるのではないか。経済性、安全性、国民合意の方向についてこれから議論をしても遅くないのではないか。
- 廃棄物については、世代責任の問題が厳然とあり、放置していていいとは思わない。しかし、研究は産業界の利害と独立した機関でするべき。現在、動燃が研究開発をしているが、廃棄物を発生させている事業者であり、簡単に処分できるという方向になりかねず、適当ではない。
□円卓会議関連
┌─────────────────────────────────┐
1│円卓会議の議論のとりまとめやモデレーターの役割が不透明という意見が│
│出されたことに対して、モデレーターより、 │
│・円卓会議の意見をとりまとめ原子力委員会に提言するのがモデレーター│
│ の役割 │
│・モデレーターのあり方も含め、今後の円卓会議のやり方については検討│
│ していきたい │
│との見解が表明された。 │
│ また、円卓会議はよく努力しているが、「国民の意見を聞いていない」│
│という問題は常に残るので、別の形で議論を発展させることを考えてもよ│
│いとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 円卓会議の議論の結果をどのように取りまとめてどのように発展させていくのか不安。モデレーターの役割が不透明である。
- 円卓会議の意見をまとめ、吸い上げて原子力委員会に提言として提出するのがモデレーターの役割。(今後の円卓会議のやり方については検討していきたい。)モデレーターの人選も含めて、モデレーターのあり方を検討中である。今後の円卓会議のやり方については検討していきたい。
- 円卓会議は、前回の参加者はくじで決めるなど、枠の中でかなり努力していると考えるが、それでも、「国民の意見を聞いていない」という問題は常に残る。今後、円卓会議というやり方は、例えばどこかで区切って、別の形で議論を発展させる様なことを考えてもよい。
┌─────────────────────────────────┐
2│国民の意見を国政に反映させる方法に関する議論が不十分であるとの意見│
│が出されたのに対して、モデレーターより、既に原子力委員会に見解を求│
│めており、その答を受けて考えるべきとの見解が表明された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- これまでの会議では、円卓会議のあり方そのものを中心的議題とすることがなかった。円卓会議自体に限らず、国民の意見を広く聞いてこれを国政に反映させる方法に関する議論が不十分である。
- 手順として、原子力委員会に対し、原子力政策への国民参加に関する見解を求めており、答えが返ってくるので、これを受けて考えることがやりやすい。
┌─────────────────────────────────┐
3│他の発言者の意見を前もって提出してもらいその要点を説明してもらいた│
│かったという意見が提出された。これに対して、モデレーターからフリー│
│な議論を多くする観点や、出席者の準備時間の余裕がないことからこのよ│
│うなやり方でしているとの説明があった。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 議論をかみ合わせるため、他の発言者の意見を前もってもらい、要点を説明してもらいたかった。
- これまでの円卓会議では事前にレジメを提出してもらっていたが、これを読み上げる方が多く、フリーな議論の時間が少ないという弊害があり、出席者の準備時間の余裕がないこともあり、やり方を変えた。
- 青森の住民の参加は、今回初めてのはず。もっと、発言時間などについて配慮してほしい。
┌─────────────────────────────────┐
4│議事の進行について、原子力委員の意見を聞きたいとの意見がでると原子│
│力委員を指名するのではなく、ポリシーを持って議事を進め、原子力委員│
│会には意見をまとめ提言として出すべきとの意見が出されたことに対して│
│モデレーターより、今回は原子力委員からの発言がなかったから求めたも│
│のであり、原子力委員会を追及するつもりはないとの説明がなされた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 議事進行についてだが、招へい者が意見を聞く相手を指定するのではなく、モデレーターがポリシーをもって議事を進めてほしい。原子力委員の意見を聞きたいとの意見がでると、原子力委員を指名するのではなく、モデレーターが提言をまとめて原子力委員会に出すべきで、ここで原子力委員会を追及するという運営は円卓会議にそぐわない。
- モデレーター、原子力委員、招へい者で議論するのが円卓会議の建前。今日は、原子力委員からの発言がなかったので、質問を振ったのであり、原子力委員会を追及するつもりはない。
《モデレーター閉会時発言》
- 本日の論点のうち、高レベル廃棄物、核不拡散の観点についてふれることができていない。リサイクルの問題についても充分議論を尽くしたとは思っていない。また、原子力、FBR路線がエネルギー全体の中でどう位置づけられるかについてもほとんど議論がされていない。
- 円卓会議は10回で終了するのではなく、これまでどういう議論が行われ、何が不足かについて整理して、その後の円卓会議について考えていきたい。
- 具体的なやり方はいえる段階ではないが、円卓会議の進め方等に対するご意見、モデレーターの考えている問題点を円卓会議へ反映していきたい。
《伊原原子力委員会委員長代理閉会挨拶》
- 本日は、前回の討論を一層深め実りのある議論ができたと思っている。
- 特に資源の有効活用という観点からのリサイクルの意義、再処理の問題点等核燃料リサイクル全般について焦点を絞った議論ができて有意義。
- 本日はもとよりこれまでの議論を充分整理して、それを検討し、これからの政策に的確に反映するという努力をしていきたい。
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