原子力政策円卓会議(第8回)
議 事 録


日 時: 1996年7月24日(水)
     13:30−17:30

場 所: パシフィコ横浜

出席者


開  会

【中川】 それでは第8回原子力政策円卓会議をただいまから始めさせていただきたいと存じます。私は原子力委員長の中川秀直でございます。
お一人、ちょっと遅れられるというご連絡がございましたので、定刻を過ぎましたので始めさせていただきます。
この第8回会議が開かれるに当たりまして、本当にご多忙中にもかかわらず、皆様のご出席が得られたことに対し、まず心から主催者として御礼を申し上げます。ありがとうございました。
この原子力政策円卓会議は4月の第1回以来、本日で第8回目となりますが、今回は初めて一般の方からもご参加をいただいております。これはこれまでの会議で何人かの方々からいただいたご指摘も踏まえまして、既に国からご委嘱を申し上げております原子力モニターの約500名の方々のうち、この円卓会議にご参加をご希望をいただいた方々の中から抽選で2名、選ばせていただき、また今回、新たに一般公募を行って応募いただいた方々の中から抽選で4名を選ばせていただき、ご参加をいただいたものでございます。この抽選は前回の円卓会議でさせていただきました。それぞれお忙しい中にもかかわらず、この会議にご関心をお持ちいただき、ご出席いただいたことに対し改めて御礼を申し上げる次第でございます。本日はそうした意味で専門家の視点とは違った市民の皆様ならではの視点からの率直なご意見が伺えるのではないかと期待しております。
さて、本日の会議は「原子力と社会との関り」というテーマ設定がなされておりますが、これは端的に申し上げまして、原子力が社会や市民からどう受け取られているかという観点からの議論であり、安全の問題、教育、広報のあり方の問題、情報公開の問題なども含まれているのではないかと存じます。また、地域社会とのかかわりという観点に立てば、立地地域と原子力との関係といった点も議題に入ると思います。いずれにせよ、各界の第一線でご活躍の方々と一般の方々が一堂に会して議論するにふさわしいテーマであると考えており、ぜひ、率直な忌憚のないご意見をいただきたいと存じます。
実は私はこの大事な会議でございますから、今日は終日、ここへいることを予定いたしておりましたが、ご承知のとおり、O157の被害があのような事態になりまして、夕刻から緊急で閣僚懇談会が入ることになりました。誠に申しわけないんですが、途中で退席をせねばなりません。私自身、この円卓会議で出たご議論、また実りのある会議にしていただくご協力をいただいて、そこで出てきましたものについては予断を持たず、引き続き原子力委員会も議論を尽くすというような気持ちで、既存のそうした政策が先にありきという気持ちではなく、臨んでまいろうという姿勢でおりますことを改めて申し上げておきたいと存じます。本日も皆様方による建設的なご議論が行われまして、実り多い会議になりますことを心からお願いを申し上げまして、私のごあいさつといたします。
それでは、伊原委員長代理、お願いをいたします。
【伊原】 委員長代理の伊原でございます。
円卓会議では議論を効果的に行うためにモデレーターの方々6人をお願いいたしまして、議事の進行、取りまとめ、これを図っていただくと、こういうことにさせていただいております。本日は東京大学名誉教授の茅さん、評論家の五代さん、日本経済新聞社論説委員の鳥井さん、埼玉大学大学院政策科学研究科長の西野さんの4人にお越しをいただきまして、議事の進行をお願いいたしております。4人のご相談の結果、前半を五代さんに、後半を西野さんに進行をお願いいたしまして、茅さん、鳥井さんにはお二人のご支援をお願いいたすと、こういうことにいたしたいと思います。
それでは五代さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【五代】 ただいま、ご紹介に預かりました五代でございます。前半は私、五代が議事進行をさせていただきまして、後半に西野さんに進行をバトンタッチしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
最初に原子力政策円卓会議の趣旨や運営に関する基本的な事項につきましてお手元に資料を配付してございますので、これをご一読いただきまして、会議の円滑な進行にご協力をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。それで、全部、それらのことについて申し上げると時間の関係もありますので、簡単に幾つかの点だけをこちらのほうで申し述べさせていただきます。
まず、この会議は原子力に関する国民各界各層のさまざまな意見を原子力政策に反映することを目的としております。それから、モデレーターでございますが、モデレーターは参加者の意見を公平に取り上げ、円滑な議事の進行を努める旨、努力いたしますので、よろしくお願いいたします。また、モデレーターは会議におきまして個人的な意見を述べることもございます。それから、会議の中で今後、原子力政策に反映すべき事項または検討すべき事項が明らかになった場合は、関係省庁等で具体的に検討するということを申し述べさせていただきます。また、円卓会議では単に狭い意味で原子力政策についてご意見をお伺いするということではございませんで、原子力をめぐる幅広い議論が行われるよう議事運営に努めてまいりたいと思っております。
この後も会議の論点などについて幾つかご案内いたしますが、その前にまず、本日、ご出席いただいている方々をご紹介したいと思います。
今回は各界からの招へいの方々に加え、先ほどからのお話にもありましたように、一般公募による参加及び原子力モニターからの参加をいただいております。なお、国民各層各界の方々のご参加をいただく円卓会議ということでございますので、今後、敬称はすべて○○さんとお呼びさせていただきたいと思います。
それでは五十音順で本日、ご出席いただいている13名の方々をご紹介させていただきます。
まず理化学研究所理事長の有馬朗人さんでございます。よろしくお願いいたします。
筑波大学社会工学系助教授、市民フォーラム2001代表の岩崎駿介さんでございます。よろしくお願いいたします。
京都大学工学部教授、神田啓治さんでございます。よろしくお願いいたします。
元大阪大学理学部講師、久米三四郎さんでございます。よろしくお願いいたします。
原子力モニターとして齋田智恵さんでございます。よろしくお願いいたします。
一般公募された方として諏澤定雄さんでございます。よろしくお願いいたします。
東海村村長、須藤富雄さんでございます。よろしくお願いいたします。
東京電力株式会社取締役、宅間正夫さんでございます。よろしくお願いいたします。
共同通信社論説委員の田村和子さんでございます。よろしくお願いいたします。
一般公募の西崎真さんでございます。よろしくお願いいたします。
原子力モニターの萩原真理さんでございます。よろしくお願いいたします。
一般公募の藤田明史さんでございます。よろしくお願いいたします。
続きまして、一般公募の三浦由紀さんでございます。よろしくお願いいたします。
続きまして、原子力委員の皆さんをご紹介いたします。
まず、科学技術庁長官で原子力委員長の中川秀直さんでございます。よろしくお願いいたします。
次に原子力委員長代理の伊原義徳さんでございます。よろしくお願いいたします。
原子力委員の田畑米穂さんでございます。よろしくお願いいたします。
同じく藤家洋一さんでございます。よろしくお願いいたします。
同じく依田直さんでございます。よろしくお願いいたします。
本日はこれらの方々と先ほどご紹介いただきました私たちモデレーター5名を含めまして計23名で議論を行ってまいりたいと思います。
円卓会議は最初の4回でさまざまな分野の多くの方々にお出でいただきまして、特定の分野にとらわれない、自由闊達な議論が展開されまして、原子力をめぐる大方の論点は、その中で摘出されたのではないかと考えております。それまでの議論はそれぞれの会ごとに議事概要として整理されておりますが、改めてそれを眺めてみますと、具体的にはお手元の資料、「原子力政策円卓会議の当面の開催について」の中にございます。4項目がございますが、次の4分野に要約できるかと存じます。すなわち、(1)原子力と社会、特に安全・安心に関する事項、(2)エネルギーと原子力に関する事項、(3)原子力と核燃料リサイクルに関する事項、(4)原子力と社会とのかかわりに関する事項。大体、この4分野というふうに考えております。
もちろん、以上の分野は絶対的なものではございませんで、相互に密接に関連しているわけでございますが、毎回、限られた時間での議論を効果的に実施するために、今申し上げました4分野を回を追うごとに順次、取り上げることでこれまでの議論をより深めてまいりたいと思っております。先に述べました4分野のうち、本日は原子力と社会とのかかわりに関する事項を取り上げまして集中的に議論を深めたいと思います。
具体的には、「原子力は何をもたらすか?−原子力と社会との関り−」というテーマを設定させていただきました。私どもといたしましては、人間文化・社会と原子力。あるいは原子力の安全確保や安全と安心の問題、それから、立地地域と消費地の問題。また、原子力に関する教育あるいは広報の問題。さらに情報公開、政策への反映など、これらの項目がとりあえず−−これはあくまでもとりあえずでございますが−−議論のヒントになるのではないかと考えておりますが、もちろん、皆様方の自由なご発想でご議論をいただければありがたいと思っております。
ここで本日のテーマにつきまして、これまでの円卓会議で行われました議論の概要を私のほうからご紹介申し上げます。詳しくはお手元の資料、「これまでの『原子力政策円卓会議』で出された議論のポイント」をごらんいただくといたしまして、これも時間の関係がございますので、私からはごく要点だけを申し上げてみたいと思います。
まず、人間文化・社会と原子力といった点でございますと、これは原子力を含む科学技術には光が影があると。その影の部分を技術システム、社会システムでコントロールしながら光を享受してきたのが人間の知恵ではないか、といったご意見がある一方で、人為的に核分裂を起こして利用し、放射能をつくり出すことは人間の分を超えているものではないか、というご意見もありました。
また、原子力の安全確保や安全と安心といった点につきましては、安全の基本というのは「人は誤り、機械は故障することもあるべし」という認識の上に立って深層防護の確保に努めること、というご意見。あるいは、安全を考える場合にリスクをトータルで議論することが必要ではないか、というご意見。原子力について危険を認めた上で、だから、きちんと安全を考えるという姿勢が必要である等々、いろいろなご意見が出ております。また、どのような説明を聞いても事故の起こる不安や放射線でがんになるという不安はぬぐい切れない、といったご意見もございました。
また、立地地域と消費地といった点では、恒久的な地域振興策を図ることが必要。原子力の問題は立地地域だけではなく消費側の問題でもあり、都市部を含めた全国的な理解を得ることを努力することが必要、というようなご意見もありました。
次に、原子力に関する教育、広報といった点につきましては、立地地域が胸を張れるように国としても国民全体に原子力をもっと理解してもらうよう、施策を行ってもらいたい、というご意見もありましたし、また、日本のエネルギー教育は海外に比べて非常に遅れをとっており、日本のエネルギー事情について現実をはっきりと示すべき、というようなご意見もありました。
さらに、情報公開、政策への反映といった点につきましては、国民的合意形成のためにさまざまな情報をわかりやすく、幅広く、国民に伝えていくことが重要だ、というご指摘もありました。また、マニュアルどおりの情報公開ではなく、心を開いた情報交流ということが重要だ、というご指摘もありました。また、専門家や知識人だけではなく、原子力政策の決定過程に広く国民の声を反映させるべき、というご意見もございました。
私どもモデレーターといたしましては、皆様に十分、ご発言いただけるよう、会議の議事運営に努めるだけではなく、議論の流れを十分踏まえつつ、取りまとめをしてまいりたいと思っております。出席者の皆様方は、どうぞ、日ごろからお考えなっていらっしゃることを、忌憚のないご意見をお願いしたいと思います。
それでは具体的な議事に移りたいと思いますが、本日は以下のような議事運営をしたいと思っております。
まず最初に一般の方の意見を伺うという趣旨から、一般公募及び原子力モニターから参加されている6名の方々から意見をいただくとともに、全国の原子力モニターの方々からあらかじめお送りいただいている意見の概要を事務局から紹介してもらいます。その後、久米さん、須藤さんのご両名から議論の基礎となる事実関係、視点、ご意見等について基調発言をいただきたいと思います。それ以外の方々は大変恐縮でございますが、ご自身のご意見等はその後に行う自由討議の中でお述べいただきたいと思います。これまでの会議の経験を踏まえまして少しでも自由討議の時間を多くしたいという観点から、このような運営方法をとったものでございますので、どうぞ、その点をご理解、ご協力をお願いしたいと思います。自由討議に当たりまして、私どもモデレーターは先般からも繰り返して申しておりますように、できるだけ公平に皆様方にご発言をいただけるように努力してまいるつもりでございます。なお、今回は特に広く一般公募等により参加された方が多数いらっしゃいますので、ご発言に関しては専門的な用語は極力控え、あるいは、その言葉を翻訳していただいて、わかりやすい議論として進められるよう、皆様のご協力をお願いしたいと思います。
それではまず、一般公募及び原子力モニターから参加いただいている方々のご意見をいただきたいと思います。これらの方々は先ほど、長官からのお話にもありましたように、一般公募は162名の応募の中から、原子力モニターは68名の応募の中から、前回の円卓会議終了後に無作為抽選によって選定させていただきました。なお、選定に当たりましては若い人の意見を十分、議論に反映するとの観点から、30歳未満の方が半数以上になるように配慮してございます。
それでは五十音順ということで、齋田さんからお願いしたいと思います。大変恐縮ですが、お一人5分以内でお願いできれば大変ありがたいと思っております。それではよろしくお願いいたします。

一般公募・原子力モニター参加者からの意見

【齋田】 よろしくお願いいたします。
四つのテーマでお話ししたいと思います。最初が原子力に対する日本人の認識、二つ目が安全性について、三番目が信頼関係について、四番目が事故内容に対する判断力について、お話しさせていただきます。
最初に原子力に対する日本人の認識についてですが、原子力の問題を考えるに当たって、国民一人一人がエネルギー事情やCO2規制を念頭に置いて考えているのか、疑問だと思います。潜在的な核アレルギーを持つこともあって、代替エネルギーに太陽熱や風力、地熱などを望む意見も多いようですが、実用化に時間がかかることは避けられない問題です。最終的には資源の枯渇の心配もなく、CO2発生の問題もない、これらのエネルギーを利用することが最も望ましいことではありますが、それまでの期間について有限な資源である点や安全性への疑問はあるものの、同様にCO2問題のないエネルギーとして原子力を改めて国民が認識する必要があると思います。
二つ目の安全性についてですが、安全性について最近、気になるのは、日本が地震の多い国だということです。通常の状態での安全性には特に心配はしていませんが、日本の技術レベルは世界のトップクラスですし、今までに起こった事故も評価尺度から判断する限り、重大なものとは思っていません。ただ、問題なのは阪神大震災の例もあって、安全基準が絶対的に安全を保証できるものではないという不安です。原発についていえば、その立地条件から活断層の存在は、現在設定されている安全基準を脅かす大きな不安要因だと思います。もう一度、震度7の地震がもし敦賀市に起こったら、と考えると本当に怖いです。そう思いながら暮らす地元の方は決して少ないないはずですので、専門家の方も同じように危機感を持って対処してほしいと思います。
三番目の信頼関係についてですが、このような安全性にとって国民と企業、政府との信頼関係が大切であるということは言うまでもありませんが、「もんじゅ」の事故のときもそうですが、いざとなると両者の信頼関係はとてももろいものであると感じる結果に終わってしまう気がします。事故が発生したときの対応についても、それぞれの立場からだけではなく全体的な視野から適切な対応を心がけたいと思います。
最後に事故内容に対する判断力についてですが、事故発生から、その内容を的確に公表していただくことはもちろんですが、私たちがその内容を判断する能力を持つことは、今、最も重要なことかもしれません。私の経験からも学生時代を通して今までエネルギー問題を身近で、なおかつ、とても大切なものだと認識することはなかったように思います。義務教育のころからわかりやすく、こういった問題に接することは他国の見習うべき点であり、それが原子力エネルギーと共存していく道を見出すのに必要不可欠だと思います。
少し早口になってしまったと思いますが、以上です。
【五代】 どうもありがとうございました。それでは諏澤定雄さん、お願いいたします。
【諏澤】 非常に立派な会議に出るのは生まれて初めてでして、どういうふうに私の意見を言うべきか、いろいろと迷いましたが、私も1926年生まれでありまして、それまでに生きた、私の原子力に対する認識の養成過程のあらましと、それから、柱が6本出ましたが、6本柱の原子力に関する教育の問題、広報の問題といいますか、これに多少触れながら、私に与えられました時間を有効に使わせてもらいたいと思います。
第一の火、第二の火、第三の火、これは私は教員を50年いたしまして、その中で教えた詩の中にも第三の火の原子の火を教えた認識が今、よみがえってまいりまして、当時、教えた子供の不思議な目といいますか、恐ろしい目といいますか、そういうような目が担任していた子供にあったのを今、まざまざと思い出して、これをやっぱり課題として追求するのがこの会議の目的ではなかろうか。
それが一点と、私がまだ師範学校の三年生だったころに、岡山の備前会館において、岡山県出身の原子力物理学の第一人者、湯川秀樹さんの恩師でもあった仁科博士が昭和 23年10月29日、天満のイセン会館において京都大学の木原均さんが小麦の問題、仁科博士が原子力の問題を、私は初めてそこで先生の講演に接して聞いたのがちょうど 50年ぐらい前になるんですが。もちろん、原子記号を書かれてウラニウムの話……。私が一番、今でも頭に残っているのは先生が、当時21年に、仁科博士は文化勲章ももらわれまして、それから一、二年たっておりますから59歳ごろの仁科博士の講演があったんですが、その中で今、頭に残っているのは、今度の原子核といいますか、ウラニウムというのは富士山の砂粒以上の数があると理解されてくれればいいんだと。そんなことで富士山の岩とか山とか、岩石は理解できるんですが、富士山の砂粒以上のもののもつエネルギーの反応だ、というのを仁科博士ご自身の口で話されたのを聞いて、これはとんでもないものが、先生は物理学者だったんですが、そういう人の研究でできたんだな、というようなことを私が20歳の初めに体験したのを今、思い出します。
それともう一つは、親戚で水力発電に一生を捧げたSさんが「私は今、水力の仕事を一生続けてきたが、今度は原子力の電気の時代が来る」ということを中国山地の発電所の、ちょっと夏休みに遊びに行った時分に言われて、そういう時代が日本に来るのか、と思っていたんですが、それが間もなしに現実に、資料にありますように、普及したのが日本の現実だろうと思います。
次のことなんですが、ちょっとこれは研究者の方には悪口にもなるかもしれませんが、一応、簡単に申させてください。
中国の「戦国策」という本に、「書をもって御するものは馬の情を尽くさず」という名言があるんですが、これを原子力のこの問題にはめ込んでみますと、馬はもちろん第三の火の原子力です。大暴れ馬です。しかし、巨大な、また強力な不滅のこのエネルギーを持つと仁科博士も言われた、これを人類が果たして安全なり、経済性という両刃の刃をどう制御していくのか、これが大変な問題で、今日のテーマの「何をもらたすか?」。これはプラスも出てきましょうし、マイナスも出てくると。現実の日本の場合にはマイナスばかりが出てきているようですが、仁科博士もおそらくプラスを日本の国がもたらすべく研究していくべきではなかろうか、と言われたように今、思っているんですが、そんなことを今、感じたのを簡単に言っておきます。
最後に、1592年に生まれて1670年に亡くなったチェコの世界的な教育学者、教育哲学者のコメヌーズという人が言った言葉を述べておしまいにしたいと思います。「あらゆる政治の根本問題は何か。それは教育である。」 これが有名な言葉です。私が言わなくても賢明な皆様はもう知っておられますように、コメヌーズは教育学史上初めて、教授の体系を特殊科学として打ち立てた教育学の歴史の上では特記すべき学者なんですが、その人の教授法の四原則といいますか、実物教育をせよ、創造性を持て、模範段階を経よ、最後に実習せよ。そういったことを教育哲学者のコメヌーズは申されております。いろいろとたくさん彼が言った著述もありますが、もう時間もないので簡単に申し上げて……。明治の先哲である、ある先人が「人間はいよいよ極めて、いよいよ遠し」と。この実感が持てるべく、それぞれの仕事、科学、いろいろなものをやっていけと。「いよいよ極めて、いよいよ遠し」、これがおそらく原子力の研究者の方も、また国民の皆さんの持っておられる原子力に対するお気持ちじゃなかろうかと。私はそんな感想を申しましておしまいにさせていただきます。
【五代】 ありがとうございました。それでは西崎真さん、お願いいたします。
【西崎】 西崎でございます。
冒頭に恐縮なんですけれども、ちょっと体調を数日、崩しておりまして、大したレジュメの用意ができておりませんで、お手元にメモ程度ですけれども、この四つに沿って手短にお話しさせていただきたいと思います。
私は科学の専門家でもございませんし、特別な知識を持ち合わせているわけでもございませんので、一市民として原子力政策について平素思っていることを率直に、また簡単に述べたいと思っております。
先般起こりました「もんじゅ」のナトリウム漏れの出来事は、それ以前の各原発施設の故障もしくは事故以上に国民の動揺が起きたのではないでしょうか。それはなぜかと申しますと、「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故そのものへの不安と申しましても、ナトリウムという物質や、そこで起こる化学反応などは科学の専門知識を持ち合わせていない私のような素人市民にとっては何となく実感が湧かず、いま一つ、直接的な不安とまでいかなかったと思います。むしろ、その後の動燃の内部の連絡体制や外部との対応、動燃と科学技術庁の関係、ビデオ隠しの問題など、科学的出来事そのものへの不安よりも事故後の一連の対応のまずさを報道で目の当たりにして不安感が高まり、原子力政策への国民の信頼感が揺らいできたのではないかと思いました。つまり、ごく普通の一般市民は原発で事故や故障が起こっても科学的原子力知識が乏しいため、それが重大な事故なのか、軽度の故障であったのか、理解や判断ができにくいものです。ですから、ナトリウム漏れという科学的不安よりも事故後の対応や動きに対する不安のほうを強く持たれたのではないでしょうか。専門家や市民団体などと違い、一般人は科学的な部分に注目するよりも原子力を運営管理している側の動きや対応のほうに敏感であると思います。
次に、科学的知識を豊富に持ち合わせていない素人にとっては科学的判断ができません。原子力政策への信頼感をつなぐものは技術的なものだけではなく情報公開や提供であり、原子力に対する正しい知識もそこから始まると思います。このことは一朝一夕ではできるものではありません。むしろ、日々の積み重ねが大切であると思います。科学的知識がない人々に原子力行政を信頼してもらうには、科学の技術論以外の部分での努力も必要であり、情報公開はその最たるものであると思います。情報公開と申しましても、原子力という性格上、技術的に悪用され、軍事技術に移転流用されないよう、公開できる部分、公開しなければならない部分と支障が出るので公開できない部分をはっきりと区別して、メリハリの効いた情報公開制度を充実してほしいものです。今後、幾ら技術的に安全であるとから心配ないと言われても情報公開抜きでは信頼関係を築いていくことは困難であると思います。
次に、大半の市民はわざわざ直接、行政から資料を取り寄せたり、市民グループのビラを手にする機会は非常に少ないと思います。最も身近に情報を入手しているのはテレビや新聞からであり、原子力政策に対する意識を持つ大きな手がかりになっていると思います。しかし、記事として紹介されるものの大半は政治家、推進派及び行政側の声や、市民団体メンバーの主張が多く、表面的な印象を受けますが、反面、科学的に詳しい紹介をされてしまいますと難しく理解しづらいという点でマスコミも苦心されておられるでしょうが、今まで以上により一層わかりやすく公正な報道をしていただかなければ、国民の関心は高まりつつも頭打ちすることになると思います。そのためには、先ほど述べましたように、科学技術庁がさらに情報公開を進め徹底することにより、原子力報道も充実してくると思います。我々が報道による正確な情報の入手をするには情報公開と常に大きな関連性を持っていると思います。また、原子力問題にまつわる記事のインタビューや論文などで登場する先生方は役人、工学系研究者を中心とする理科系科学者、市民団体代表といったいつも同じ顔ぶれのように思います。しかし、以前の円卓会議での議論でも話が出ましたように、原子力の問題は原子力技術など原子力そのものの問題だけではなく、社会的、地球的な議論も必要であり、一見、異分野に思える法学者、社会学者、哲学者などをはじめとする方々の原子力に対する考え方も積極的に取り上げていただければ議論にも広がりがあるのではないでしょうか。あれやこれやと申し上げても、やはり、一般市民はマスコミを頼りにし、また頼りにせざるを得ないわけで、英知を結集して頑張っていただかないと原発に関する情報難民となってしまい、知らない、知らされないまま、時が進むことが一番危惧されることであると思います。
最後に四番目でございますが、これは意見というよりも時間がありましたら、後ほど、皆さんに意見を賜りたいんですけれども、今、住民投票とか、また国民投票とかという今井一さんの本なんかが非常に売れておりますけれども、そういうのが話題になってきている中で、情報公開とどういうふうに関連して考えていったらいいのか。情報が出ないままで住民投票というのをやって、それは意味があるのかどうか。その辺をことをお教えいただければと思います。以上でございます。
【五代】 誠にありがとうございました。それでは萩原真理さん、お願いいたします。
【萩原】 萩原真理です。私は原子力の知識はもちろんのこと、科学的な知識もあまりないんですけれども、素人なりに思っている問題や要望を述べたくて参加しました。
まず、現在の原子力政策の問題点を挙げてみたいと思います。
まず、原発の恐怖をエネルギーを最も消費する地域ではなく、あまり必要としない地域に押しつけているような気がします。本当に安全ならば実際に使う大都市のそばに原発をつくればいいと思います。過疎地域に被害が少なくて済むという理由で置くんだったら間違っているんではないかと思います。もちろん、過疎地域ですと反対する人も当然、少ないですからやりやすいのかもしれないけれども、仮に一人の人でも生活を脅かすのであればできないんではないでしょうか。
次に、低コストと言いながら実際は莫大なコストがかかっているということをよく聞きます。パンフレットなどには低コストと言いながら実際はそうではないというのを新聞とかでも見聞きします。それについては何もお答えがなく、相変わらず低コストと言い続けているのはどうかなと思います。
次に、実際に事故が起こる可能性があるのに安全だと言い切っていると思います。この世の中、絶対100%安全なんていうことはあり得ないんです。まして、人は間違うものですし、間違う人がつくった機械を信用するのはおかしいと思います。一つ一つの部品は「もんじゅ」の事故でもわかりましたけれども、町工場でつくられたようなもので、それを寄せ集められたものです。同じようにつくっているもっと簡単なはずの車だって壊れるのに、どうして安全だと言い切れるのでしょうか。
次に、ほかのエネルギーの開発を真剣に検討されているんでしょうか。水力とか風力発電などほかのエネルギーはコストがかかるとか、パンフレットに書いていたんですけれども、どうせ原子力も結局同じなのでしたら、できるだけ危険の少ないものにも開発に力を入れていただきたいと思います。
また、反対意見や問題点を指摘されても強引に押し通しているような気がします。私は新聞とかで見る限りでしか言えないんですけれども、反対派とはいつもあまり話し合いもせずに押し通しているような気がします。問題点を指摘されても、そんなことはあり得ないとか、それでも安全ですと言い切っています。もしかして、その根底には何も知らない国民なんかは理解しなくてもいいとか、とりあえず、自分の社会的立場を守るために今、やっているだけで、次の世代なんかどうでもいいと思っているのではないかと、ちょっと思っちゃうこともあります。
以上が問題点なんですけれども、私個人としては原子力は必要だと思っております。石油もなくなることですし、もっと有効なものが出ない限りは危険だからといって避けて通れない問題だと思っています。それを踏まえまして次に要望を述べたいと思います。
まず、最悪、事故発生時の安全対策について。今朝の新聞にも載っておりましたが、日本人は危険意識が非常に少ないということです。それは原子力のことに対しても言えると思います。とにかく1回でも絶対に事故があってはならないと思います。けれども、最悪のときの対処方法だけは絶対考えておいてほしいと思います。例えば周りの各家には放射能の測定器を置いたりとか、核シェルターをつくるとか、そういった非現実的なこともしれないけれども、それぐらいしないと不安はなくならいんではないでしょうか。
次に、廃棄物の処理方法ですけれども、これも最初に考えておくべきことだと思うのに今はとりあえず埋めているという感じがします。それについて、埋めていることが安全なのかどうかというのは私ははっきりしたことはわからないんですけれども、やっぱり、そういうことは「とりあえず」ということはよくないと思いますので、先に開発を進める前に決めてほしいと思います。
次に、ほかの国の状況なんですけれども、この原発の事故が起きたときは国境を越えて、こちらにも被害が及んでくることはあると思うんです。日本でなくてもほかの、特に近隣諸国で事故が起きても、どうしようと思うんです。ほかの国の状況を把握して危険があるのかないかのを教えていただきたいし、また、もし危険があるんでしたら、国として申し入れをするなりしていただきたいと思います。
次に、教育についてですけれども、皆さんがおっしゃっておりますように、私も本当に原子力の教育というのはあまり受けた記憶はないんですけれども、やはり自分の国の将来にかかわることですから、これから義務教育の間に徹底的に教えていただきたいと思います。
次に、情報の公開です。当然のことですけれども、デメリットも含めてすべてを公開していただきたいと思います。今のを見ておりますと、何かいいことだけをアピールして、悪いことは黙っているというような感じがあります。この前の「もんじゅ」の事故があってから、これから先、科学技術庁のほうで本当のことを言っても信用されないという可能性もあるんですけれども、そういったことのないように、これから第三者的な立場で専門的な知識を持った方々にももっと発言してほしいと思います。そういった方の意見がありますと素人としても判断材料になるのではないかと思います。
最後に、国民の意見の反映ですけれども、耳の痛い話とか反対意見にもきちんと話し合いの場を持って聞いていただきたいと思います。今回の円卓会議やモニターのも必ず政策に反映させていただきたいと思います。以上です。
【五代】 ありがとうございました。それでは藤田明史さん、お願いいたします。
【藤田】 藤田明史といいます。よろしくお願いします。一応、レジュメを資料4につくっておりますので、それを見ながら聞いていただきたいと思います。
私は市民として現代テクノロジー、その典型としての原子力発電にかなり前から関心を持ってきました。「もんじゅ」事故の後、今年1月23日に福島、新潟、福井の三県の知事が内閣総理大臣あてに提言を行い、原子力長期計画の見直しにまで言及されました。私はそこに地元住民の切実な不安と要求があることを感じ、この提言の持つ意味は大変重いというふうに思いました。同時に、私たち一人一人に向かってメッセージが発せられているようにも思いました。私は一人の市民として、こうした呼びかけに自分なりに応えるためにこの円卓会議に応募いたしました。
まず、お手元のレジュメの最後のところ、3のところを見ていただきたいんですが、「若干の政策的提言」を書いております。こうした方向に原子力政策を転換することが、より合理的であろうと私が考えましたことを3点挙げております。まず、高速増殖炉開発の凍結。それから、使用済燃料の再処理政策の放棄。最後に、軽水炉原発の増設路線を転換し、段階的縮小を図る、であります。要約いたしますと、従来のプルトニウム・リサイクル政策からプルトニウム・ミニマム政策への転換というふうに言えると思います。こうしたことは少なくとも原子力長期計画とは正反対の内容でありますから、その意味では私は現行の原子力政策には明確に批判的な立場に立っております。
ところで、私は高速増殖炉も含めた原子力技術開発それ自体を頭から否定しようとは思いません。それは将来の有望なエネルギー生産技術であると考えております。その一番の根拠は、将来の原子力技術の有効性というものは今後の総体としての科学技術の発展に大きく依存するであろうということであります。将来、がんの発生メカニズムが解明され、がんの予防や治療方法が確立されるならば、原子力技術の持つ社会的評価は現在とは全く違ったものになるというふうに考えます。また、放射能の消滅技術に関しましても同様であります。こうした技術が将来、どれだけ進歩するかという技術予測は現在の原子力政策立案にも非常に影響するはずであります。したがいまして、この点に関しまして原子力委員会の見解を明らかにしていただきたいと私は要望いたします。
レジュメの1のところ、最初に戻りまして、「もんじゅ」事故の持つ意味でありますが、私の結論は「もんじゅ」の安全審査体制そのものに設計ミスがあったというものであります。したがいまして、安全審査のやり直しが行われなくてはならないというふうに考えます。そうした場合、「もんじゅ」の永久停止の可能性という問題が出てきますため、問題は核燃料サイクル全体の再検討にまで及ぶということであります。
二番目の「原発を考える三つの視点−原子力開発に係わる政策決定のあり方の観点から」であります。
まず第一点、「高レベル放射性廃棄物の処理・処分」の問題であります。私の素朴な疑問は、なぜ、今までこの問題がそれにふさわしい重要性で論議されないまま放置されてきたのかということであります。私のこれへの回答は「知らしむべからず」という非民主的な社会では必然的にそうなるのではないだろうか。つまり、決定権は社会の一部の人間が掌握し、その他大多数の人間は決定から排除されるわけですが、その排除された構成員には現在の大多数の人間だけではなく、未来のすべての人間も含まれていたということではないかというふうに考えます。したがいまして、人々の情報処理能力が非常に高まってきた現代の民主的な社会におきましては、高レベル放射性廃棄物の処理・処分のように現在の決定が未来の社会に影響を及ぼすとき、未来の人間がどう考えるであろうかを現在の人間が彼らにかわって考えて、そのことも考慮に入れて現在の決定を行わなくてはならないということが政策決定の基準になるというふうに考えております。
第二点の「高速増殖炉をどうするか−私的決定か公共的決定か」という問題でありますが、要点は新型転換炉にしても、再処理工場にしても、高速増殖炉にしても建設コストが常に予想を大幅に上回る、超える結果になるということでございます。したがいまして、これらの商業化が主として電力会社の私的決定に委ねられるならば早晩、開発が延期ないし中止されるであろうというふうに考えます。ゆえに、単に経済性だけではなく、より広い視野から高速増殖炉開発の正当性と合理性を検討する必要があると考えておりまして、そのためには公共的諸決定がどうしても必要になると私は考えております。
第三点は、「戦争責任と日本の原子力政策」の問題であります。戦争責任を日本人が行動で示すべきであるとしたならば、アジアの人々に核兵器開発の危惧を抱かせる日本の高速増殖炉、核燃料サイクルの路線を根本的に転換すべきである、ということがこの問題に対する私の結論であります。
以上の三つの視点はいずれも政策決定過程における民主主義の拡大という問題と関連しております。その結果、空間的にも、時間的にも、より広い視野から政策決定が可能になってくるであろうというふうに私は考えております。
最後に、こういう円卓会議の議論を踏まえ、原子力委員会及び科学技術庁がより合理的な方向へ日本の原子力政策を再検討されますことを心から希望しまして、私の発言を終わりたいと思います。
【五代】 ありがとうございました。それでは三浦由紀さん、お願いいたします。
【三浦】 三浦由紀と申します。よろしくお願いいたします。私はフルタイムで働く兼業主婦ですので、主婦という立場でエネルギーについてお話したいと思います。
主婦として日常生活でエネルギーとどのようにかかわっているかを考えてみますと、大変たくさんのエネルギーなしにはもう生活ができないような状態になっています。いろいろな電気製品によって家事が効率的に行えたり、交通や施設といった社会的基盤もエネルギーなしでは成り立たない状況になっています。その反面、電気はスイッチ一つで使える安全で便利なエネルギーですので、消費量は増える一方になっています。家庭の中でも改めて考えると大変多くのエネルギーを使った電気製品がございます。特にキッチンなどを考えますと、数え上げたら大変たくさんあります。しかも増えることはあっても減ることはまずありません。同じように社会的にも情報化の進展や産業の発展によって電気の消費はますます増えていく状況にあります。ただ、石油やガスなどの化石資源も限りがありますし、大気中の炭酸ガスの放出といった環境について考えますと、環境に優しい新エネルギーの利用や開発はもちろんのこと、どんどんエネルギーを使っていくのではなくて省エネルギーをもっともっと推進していくことが大変重要であると思います。
ただし、いろいろと考えてみますと、この二つだけでは解決しないと思います。太陽光や風力などといった自然エネルギーは環境への影響が少なく、無限で大変すばらしいものだと思います。ですけれども、現在ではまだ非常に値段が高いこと、使いたいときに使えないといった技術的な面がありまして実用的ではないと思います。今後も引き続き、研究開発を進めていただきたいと思います。
そして、省エネルギーについても、簡単そうなんですが、大変難しい面を持っていると思います。電気製品の消費電力といったものは大変省エネルギー化されて減ってきているんですけれども、機械そのものが省エネルギー化されていってもだんだん大型化していったり、付加機能がついているといった状況で、しかも台数が増えているという状況があります。そのため、電気の消費量はだんだんと増えていっています。かといって、使わないとか我慢するといったことは省エネルギーではないと思いますし、必要なものには効率的にエネルギーを使うことが大切だと思います。今後も省エネルギーを設備の面、それから意識の面でも強力に国として進めていくことが必要だと思います。
ですから、私としては今後、増えていくエネルギーの需要に対しては省エネルギーと新エネルギーだけでは十分に対応することはできないと思います。そう考えますと、現在、我が国の電気の3分の1を発電している原子力はやはり重要だと思います。
日本はエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っていて、中には政情の不安定な国々からも輸入しています。私はオイルショックの経験というのは小さくてあまり覚えていなかったんですけれども、一昨年、不作によって米不足が起きました。そのときに日常生活にさまざまな影響が起きたことを考えますと、万が一、輸入が途絶えてエネルギー資源が不足して大変パニックになるようなことでは大変困ります。そして、地球環境などのいろいろな問題を考えましても、炭酸ガスを出さないといった原子力は安全に十分な注意を払いつつ進めていくべきだと思います。そして、特定のエネルギーの偏るわけではなくて、いろいろなエネルギーのいい点を組み合わせて利用していくことが一番現実的でよいのではないかと思っています。
最後に、エネルギーを使う消費者として正しい知識を持って、エネルギーを大切に使うことが必要だと思います。水や電気のように生活になくてはならないものでありながら、あって当たり前、使いたい放題、なくなってしまってから初めて困るというのに気づくのではとても困ります。そのため、エネルギーに関する消費者教育が重要になると思います。特に子供のころから、日常生活の中でエネルギーに対しての意識づけを図っていくべきだと思います。自分の経験ですと、先ほどもおっしゃっておられましたが、私も結婚して自分で生活を営むまで電気と家庭とのかかわりというのは考えたことはありませんでした。学校教育の中でも社会科で石油やガスの輸入といったことや、理科で電流や電圧といった理論について勉強した記憶はあるんですけれども、発電についてですとか、新エネルギーや省エネルギーといったことでは勉強した記憶がちょっとないようです。
また、身近な問題としてだけでなく、世界的な視野からエネルギー問題を考えることも大切だと思っています。今後、世界の人口はだんだんと増加していって、発展途上国の経済発展に伴いまして、エネルギー消費の大幅な増加が避けられない状況にあると思います。日本は国際社会の一員として、またエネルギー資源の大輸入国として地球規模の資源問題や環境問題にも大きくかかわっていかなければいけないと思います。
ですから、学校教育の中で教科にとらわれない総合的な実生活と関連づけたエネルギー教育を取り入れていただきたいと思います。そして、例えば社会的にも身近にエネルギーを学べる施設を整備するとか、情報の提供、日々の生活の中でエネルギーにどうやって接していったらいいかを考える機会を持つようにして、エネルギーを大切する気持ちとか、必要なエネルギーを正しく選択できる知識を学んでいってほしいと思います。そして、未来を担う子供たちが正しい知識を持って、関心を持ってエネルギーや環境に対することができるようになってほしいと思います。以上です。
【五代】 ありがとうございました。皆様からの貴重なご意見に厚く御礼を申し上げます。
それでは続きまして、全国の原子力モニターからいただいているご意見を、その概況を事務局よりご紹介いただきたいと思います。それでは事務局、お願いいたします。
【事務局】 それでは事務局のほうから原子力モニターから提出がありましたご意見等につきまして簡単にご説明申し上げたいと存じます。お手元の資料5という資料、それから冊子になってございます、印刷された資料、「原子力モニターから提出のあった意見について」という、その資料を適宜ご参考にいただければと存じます。
原子力モニターは平成8年7月現在で1,074名の方を全国的に委嘱させていただいております。そのうち、今回、ご意見をいただきました方々は全部で792通でございました。
資料5の7ページ目に原子力モニターにどのような方がなられているかという若干の統計的なグラフを用意してございます。女性の方が若干、多うございます。さらには年齢的には20歳以上でございますが、各年代層に分かれて幅広くご参加いただいております。さらに職業的にもいろいろな農林水産業、自営業、会社員等々、それから主婦の方もかなりいらっしゃいます。4割強は主婦の方でいらっしゃいます。地域的にも全国、東京、大阪等の大都市部でもかなりいらっしゃいますし、各県に巾広く委嘱させていただいているという状況でございます。
その方々から全部で792通のご意見をいただきました。その中身につきましては、かなり多岐にわたっておりますので、私どものほうで、この円卓会議の議論の推移に合わせた形で便宜的に資料を整理させていただいております。順次、資料のほうを見ながらご説明申し上げたいと存じます。
原子力と社会、特に安全と安心に関する事項につきましては、以下のような点がポイントではないかなと思います。原子力の安全確保一般に関連いたしましては、絶対安全ということはあり得ないということを踏まえた上で最善の安全確保対策すべきであるという意見。それから、何重にもチェックや安全対策をしてくださいという意見。さらに行政への不信感をおっしゃられる意見がございました。さらに、原子力固有の問題として放射線被曝の問題があるわけでございますが、子供たちの被曝や生まれてくる子供たちへの放射線被曝の影響ということについての不安感を述べられるご意見がございました。また、放射線の人体への影響をなくすことができなければ原子力開発は行うべきではないというご意見等がございます。さらに、先般の「もんじゅ」事故に関連いたしましては、安全性に関する信頼感の喪失の問題、徹底的な原因究明とその説明を強く求めるご意見、事故後の対応の問題、運転マニュアル等が不適切であったのではないかというご意見をいだたいております。
さらに、技術的な問題から発展いたしまして、人々の安心感という心理的な社会的な安全に関する事項に関連いたしましては、ソ連のチェルノブイリ事故のような事故が日本でも起きるのではないかという不安を述べられる方。さらには、一たん、原子力の事故が起きれば、その被害はとても大きくなるであろうということに関連しての不安感を述べられる方。さらには、原子力発電所周辺で何らかの放射能の影響が出ているのではないかというような不安を述べられる意見がございます。さらに歴史的な記憶、核兵器への日本人の記憶ということもあるんだろうと思いますが、原子力という言葉からは核兵器を連想すること自体で不安を感じられる方もいらっしゃいます。それに対しては、平和利用に徹しているという状況をきちんと世界的に主張すべきであるというご意見もございました。さらに、危険性も認めた上で可能な限り、安全確保を行っているという状況をもっと説明すべきであるというご意見もいただいております。
2ページ目にまいりますが、エネルギーと原子力に関連する事項につきまして若干、ご説明します。東南アジア地域において原子力開発が最近、とみに気運が高まっているという状況に対応して、日本はどのように対応していったらいいなのだろうかというようなご意見をいただいております。さらに、ライフスタイル、社会構造とエネルギー需給に関する事項につきましては、社会のエネルギー消費について浪費を見直すべきである、ライフスタイルや生活意識を改革を行うべきであるというご意見をいだたいています。エネルギー需要の状況を踏まえた問題は、エネルギーの80%以上を輸入に頼っている日本としては国内でエネルギーを生産していくことが必要であるというようなご意見もいだたいております。さらに地球規模でのエネルギー需給の問題を考えた場合には当然、環境の問題が出てくるわけでございますが、エネルギー源を考える際には地球環境への配慮ということが必要であるというご意見をいただいております。原子力発電は二酸化炭素の発生が少なく、地球温暖化防止に寄与しているというようなご意見、さらには開発途上国の工業化に伴って化石燃料の消費が増大するであろうと。したがってCO2の問題等を考えると地球温暖化の問題が進むことについて危惧を表明される意見がございました。さらには、省エネルギー、新エネルギー開発をもっと進めていくべきであるというご意見もいただいてございます。
3ページ目にまいります。原子力エネルギーについての意義に関連してございますが、有限な資源を考えれば原子力を使うべきであって、環境に優しくコストも安い原子力に意義を見出すご意見がある一方、本当に原子力が必要なのか、また、今以上に必要になるのであろうかということについての疑念を表明されるご意見もございました。エネルギー選択の問題でございますが、石油系の資源の枯渇、自然エネルギーの発生量のことを考えるとやはり原子力発電に意義を見出す方もいらっしゃいます。コストが大きくとも安全なエネルギー源を望むというご意見もいただきました。
さらに、原子力と核燃料リサイクルに関連する事項でございますが、まず政策一般に関連してのご意見でございます。原子力研究開発利用長期計画につきましては、時代の要請に合わせて柔軟に変化、対応していくべきであるというご意見がございます。さらに動燃事業団の体制に関連しては、メーカー任せであること等、動燃事業団の体質を徹底的に洗い直すべきであって、さらには技術者は過剰な自信を持ち過ぎではないかという疑念を表明される意見がございました。さらに、原子力開発利用につきましては5年程度のモラトリアムを提案されている意見もございました。
その次は、原子力が幅広い総合科学技術としての意義があるわけでございますが、それに関連してのご意見は以下のとおりでございます。原子力の研究開発として日本がみずから新しい技術の発見と開拓を実践していかなければならいというご意見がございます。さらには、農業利用の分野でも放射線を利用していくべきであるというご意見もいただいてございました。核融合に関連してのご意見もございました。
さらに、核燃料リサイクルの意義・展望につきましてのご意見。核燃料リサイクルそれぞれの項目につきましてご意見をいただいているわけでございますが、核燃料リサイクルは原子力の重要な柱である。最先端の技術を投入してリサイクルを行っていくべきであるというご意見がある一方、なぜ日本だけが核燃料リサイクルを進めていくべきなのであろうか。将来の高レベル廃棄物の処理・処分の問題もあってリサイクルはやめるべきであるというご意見もいただきました。さらに、プルトニウム利用に関連しては、先般の「あかつき丸」によるプルトニウムの海上輸送の際に起こった非難の問題等を取り上げられ、プルトニウム利用について国内外にさまざまな批判がある状況を指摘されている方もいらっしゃいます。使用済燃料の処理の問題は、使用済燃料の処理がどうなるかということについての不安を訴えられる方の意見もございます。使用済燃料の貯蔵の問題について国の政策がはっきりしていないため、立地県や住民の不信感が高まっているのではないかというご指摘もいただいております。さらに放射性廃棄物の処理・処分の問題でございます。放射性廃棄物の処理・処分がもっとしっかりとした対策を立てるようにという要望をいただいております。特に高レベル放射性廃棄物の最終処分の方法を優先的に確立することが課題であろうというご意見もございました。それから、廃炉の問題、特に高速増殖炉の問題に関連いたしましては、かたや、日本が高速増殖炉に取り組んでいる姿については頼もしいというご意見に対して、「もんじゅ」の事故により高速増殖炉の技術の困難さを強く印象づけられて残念であるというご意見もいただきました。「もんじゅ」の安全性と必要性については疑念を感じる点が多いというご意見があるのに対して、人類の将来を担う重要な技術として長期的な視点で研究を進めていくべきであるというご意見もいただいてございます。
5ページ目にまいります。5ページ目は原子力と社会とのかかわりに関する事項でございます。
人間の文化・社会とのかかわり合いに関連しては、文明の発達は危険の上に成り立っているものであって危険と共存を認めるべきであると。また、原子力の危険度は低いという意見。大きなリスクを持っている原子力は推進すべきではないかというご意見。それから原子力は必要最小限、または現状維持にとどめたいというご意見等々をいただいております。それに対しまして、人類は原子力を有効適切に安全に使いこなしていかなけれはならないというようなご意見もいただいてございます。
さらに地域社会における安全・安心に関する事項でございますが、防災対策に関するご意見、平時から防災対策の周知徹底を求めることが重要というご意見がございます。
さらには、地域振興、電源立地地域と電力消費地域との関係に関する事項でございますが、原子力発電所誘致のメリットないしデメリットを明らかにしていくべきである。立地県と非立地県との間で原子力に対する関心のずれが生じている事実を指摘される向きもございます。電源立地地域の住民が誇りを持てるような、そのような行政を望まれているご意見もございました。電源供給地の人に対する消費地の無理解と無責任さを解消する努力ということについて言及されるご意見もございました。地域振興につきましても、広くいろいろな財源を利用できるようなる、それから、人材を多く雇用してもらいたいというようなご意見もございます。
最後、6ページ目でございますが、原子力に関する教育、広報啓発、報道に関するご意見もかなりたくさんいただいてございます。原子力発電所の立地地域では反対活動が目立ち、マイナス面のみが強調されているけれども、プラス面についても強調、啓発するべきであるという意見。それとともに、原子力施設の安全面に関する地元住民への情報提供が不足しているご不満のご意見もございます。原子力について知る機会がほとんどなくて、与えられている情報も少ない。わかりやすい情報を提供するべきであるというご意見はかなりたくさんございました。さらに、日本のエネルギー需給、環境問題等の観点から理解増進を積極的に図るべきであるというご意見もございます。報道の役割に関しましても、今、原子力の安全や必要性について正しく報道すべきであるというご意見をちょうだいしてございます。さらに教育の問題に関連しても多数の意見がございましたが、正しい知識を学校教育でもっと取り上げていくべきである。教育現場でもっと原子力施設の見学等をどんどんやっていくべきであるというようなご意見。そのようなことを通じて選択する意思を持った人間をつくる教育が重要であるというご意見をいただいてございました。
最後に、情報公開に関連してですが、国民全体が議論できるような対話型の原子力の情報公開ということが必要である。いろいろな手段を使ってだれにでもわかるように情報公開していくことが必要であるということ。事故時に関連しても情報を完全に公開していくことが非常に重要であるというようなご意見等々をいただいてございます。
以上、申しましたのは、全体を把握する上で便宜的に整理したものでございますので、詳しくは、この冊子のほうをご参考いただきながらご議論の参考にしていただければと存じます。事務局からは以上でございます。
【五代】 ありがとうございました。
それでは続きまして、基調発言に移りたいと思います。五十音順ということで、久米さんからお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

基 調 発 言

【久米】 久米でございます。
私はレジュメにも書いておきましたように、今から約30年前に兵庫と鳥取の間に香住(かすみ)というところがあった。これは日本有数の漁港のある非常にきれいなところでございます。そこの民宿のおじさんやおばさんに呼ばれて、初めていわゆる現地というのに参りました。それ以来、現在まで各地で原子力施設の立地に反対している住民の、これはほとんど味方がいないものですから、推進の側はそこらにいらっしゃる、非常に強力なサポーターがたくさんおられますけれども、本当に地元で戦っている住民には、そういうサポーターがいないんですよね、それで、私も非力でしたけれども、助っ人の一人としてずっと現在まで運動の現場から原子力政策について批判を続けてきたものであります。現在は福井県の若狭にございます原発銀座−−これは現在のところ、日本で最大の集中地帯でございますけれども、そこから遠くない京都府北部の田舎町で年金生活をやっている者です。私の住んでいる町も後で問題になります電源交付金を受けて、いろいろな問題が出てきています。そういう立場から報告したいと思います。
円卓会議の評価についてはレジュメにもございますように私は否定的であります。私の意見では現在の原子力政策というのは明確に破綻しているわけです。そのことをはっきりして、どうして破綻したのか、なぜかというようなことをおやりならないで、大臣をはじめ、一生懸命やっておられる方には悪いですけれども、こういう会議をおやりになっても、「大山鳴動してネズミ一匹」に終わるだろうと。そういうふうに思っています。
それなのに、どうしてこんなところに出てきたのかと思われると思いますが、まずは、この会議の準備しておられるスタッフの方の熱意にほだされました。そんなのもの、出てもしょうがないというのに、「まあ、出て、ともかく思ったことを言うてくれ、言うてくれ」ということで、その熱意にほだされました。それから、私たちはおととしから、「もんじゅ」の運転を凍結してほしいという原子力委員長あての署名運動をやってまいりまして、この5月に一応の目標の100万を超えました。そのとき、大臣は非常に忙しい中で私たちに会っていただきまして署名簿を受け取っていただきました。それに対するお礼といったらおかしいですけれども、そういう思いがあります。
さらに、これははっきりと皆さんに言っておきたいと思いますけれども、私は各地で現在も原子力発電所に対して戦っている住民の友人をたくさん持っています。その人たちの大部分は、こんな会議に出て何になるかということでボイコットしておられます。それから、「こんなに偉い人ばっかり出ているところへ出て行っても、自分たちの言うことは100分の1も話せない」と言って、横を向いておられる方もたくさんおられます。それで、私は長らくそういう方々と接してきましたから、恨みつらみの一端でも皆さんにご披露したいなと思って出てまいりました。ですから、いろいろな失礼なことも言うかもしれませんし、もちろん、偏見と独断に満ちあふれていると思いますから、そういう点はビシビシ批判をしてほしいと思います。
ただ、スタッフの方から20分というのが最大限で、なるべくもっと詰めてくれということで、問題だけを出しておいてほしいということで、あとでフリーディスカッションのところでいろいろと補足的にまた発言をしてもらうからと。そういうことですので、お手元のレジュメに沿って、さっといたします。ただ、しゃべるとなると話したいことが30年分、山ほどあるんですけれども……。
【五代】 それは後半でお願いするとして、一応、時間の中でおさめていただければありがたいと思います。
【久米】 それで、主題は国主導の利益誘導型原子力立地政策が既に破綻したと。そういうことでございます。
ちょっと、この意味を申しておきますと、利益誘導型というのは、産業施設をやるときには企業は−−今日も企業の方がいらっしゃいますけれども−−利益で人を引っ張って、そして銭もうけをする。これは当たり前のことですけれども、国が主導でそういうことをおやりになる。これは22年前に法制ができまして、その法律に基づいて堂々と国がやっておられるわけであります。そして人の嫌がる施設−−正直に言いまして、原子力発電所というのは嫌がっているんですよ、みんな。それを利益と引きかえに何とか引き受けてもらいたい。そういう政策のことであります。
それが破綻したということの最も典型的なのは、これは通産省も既に発表しておられますが、資料1をごらんになってください。これは通産省がおととしの9月に発表されてご存じの方も多いと思いますけれども、その下の図面。それは何を書いてあるかというと、左の縦軸がリードタイムと書いてございます。リードタイムは、これは後の議論とも関係がありますので、その表の中に書いてございますように、原発をやるときには電力会社からあるところに申し込みます。そこでOKが取れたら、電源開発調整審議会(電調審)の承認を得て、それから安全審査を経て、建設やなんかにかかる。そのトータルの時間のことです。それが70年代からどんどん延びて、90年代にはついに25年、4分の1世紀を超えてしまったんです。これは何を物語っているかというと、原子力発電が既に国民の支持を失ったと。これは新規立地でございますけれども、そういうふうにこれを見るべきだと思います。
それに対して国はどういう政策をとっておられるかというのは資料2に書いておきました。通産省も原子力委員会もこの事実を認めておられて、新しいサイトの確保は難しくなってきている。しかし、やることは結局、利益誘導をさらにきめ細かくやる。具体的には資料3にあります。ついこの間、大体、こういう大事なことを議論している円卓会議のさなかに−−今日は通産省の方も出ておられるんでしょう−−こういうことをおやりになるんですね。これは利益誘導政策を具体化したものです。これまで5年しか渡らない電源交付金を原発寿命いっぱいやるから協力してくれと。これは政策とは言えないと思います。既に失敗して破綻したことをまたやるというのは。こんなことをしていると、かつての戦争と同じようにズルズルいってしまうわけで、ぜひ、この辺は大臣、よく政策の問題を考えていただきたい。こういうことをおやりになるから、この円卓会議がシラけて、申しわけないですけれども、現在でも不人気なのが、ますます人気がなくなってしまいます。
それで、そういう立地政策がどうやって成り立ってきたかということでございます。これは実は国と立地自治体との間の、私は「阿吽の合意」と呼んでいるんです。あまり詳しく説明するとぼろが出る。あうんでやるんですね。どうしてやるかというと、まず国が電力会社にかわって国民に安全を保証するようなことはできないということはよく認めている。これは今から23年前に四国電力の伊方原子力発電所の設置許可処分に対して住民が国を相手に裁判を起こしました。これは我が国で最初の原発裁判になりました。私も住民側の弁護補佐人を裁判所から命じられまして、最高裁判決が出る19年の間、1回も法廷を欠かさずに出ておりました。その法廷で国が何遍もおっしゃったことがこれなんです。自分たちは決して安全を保証するんではないんだと。このとおりやったら安全だと言っているに過ぎないと。何度もおっしゃって、最高裁で勝ったわけですからね。しかし、皆さん、立地のところに行ってごらんなさい。今一番問題になっている巻に行ってみなさい。どういうことになっているか。原子力施設の安全は国が保証するかのように振る舞っておられるんです。はっきりは言いませんけれども。それを受けて地方自治体のほうは、当然、危険なものですから、給付されるものは危険手当、迷惑料であるということは社会通念上、明らかですよ。それにもかかわらず、安全は国に任せてあるんだから、国策に協力してもらえるものはもらいましょうと。私たち戦中派にとっては国策という言葉を聞いただけでもゾッとするような思いですけれども、こういうことがまかり通っているんです。
これに関連して、このモニターの方も書いておられますけれども、立地周辺住民が、私たちは初めて接触した30年前から一貫して持っておられる根源的質問というのは何も難しいことではないんです。「電気を余計使う東京や大阪でまず何でやれへんのや」って。それから、実際には国がつくった立地審査指針、これはできてから33年間、現在も有効ですよね。その中にはっきり書いてあるやかないかって。原子炉の周辺には人が住んだらいかんねん。その周りには人口の低い地帯を設けなければいかんのやって。「こんなことやから田舎に来るんや」と言って。これは30年間言い続けていることです。これに対して最初は国及び、それを代弁した学者の人たちは、初めのことはおどおどと、「いや、原子力は安全なんだけれども、まだちょっと不安なところがあるから田舎に来ている。もう10年もしたら大阪湾や東京湾にずらっと並ぶ」って。
そうならなかったから、今度は、そこに出ているようなことに変わってきた。これはやはり、伊方の裁判で内田さん、これは日本の原子力の大ボスですよね。大ボスと言ったら悪いけれども、第一人者です。それはなるほど、法律にはそう書いてある。人が住まないところ、低人口地帯が要ると書いてあるけれども、計算してみたら、全部、敷地の中に入ってしまうんやと。だから、東京でもいけるけれども、まあ、冷却水のことや地盤のことや、あるいは地価のことを考えたら、東京にそんなところができるかどうか、私にはわかりませんと。こう言った。これは証言です。今からちょうど20年前です。こういう証言をなさっているんですね。何回かは知りませんが、伊原さんがこの間、このことをおっしゃったでしょう。そのとおりなんですよ。だけれども、どうしたことか訂正されたでしょう、あなた。そして、大臣もその訂正は承認された。しかし、これは法廷でやっているんでっせ。僕は証言法の時効は知りませんけれども、もしも訂正されたら偽証罪になります。そうでなければ、この国の方針をいつ、どこで変えられたということをはっきりしてください。今日はこんなところで答弁を聞く気はありません。原子力委員もそうです。あなた方はしっかりと過去の30年間の記録を調べてください。だから、今、現地では大変なことが起こっています。あなた方のところにも届いているでしょう。協力してきた人たちがだまされた、けしからんと言って。そういう状況を今、生んでいるわけですから、こんなところで思いつきで答弁をされずに、しっかりと、変更したなら、いつ変更して、どうしたのかということをはっきりすべきです。そういうことをまず情報公開の最初におやりにならずに、こんなところで情報公開が必要だと百万遍おっしゃっても意味はありません。
それで、そういう立地政策によって、これもモニターの方が、さっきの一般公募の方が言われたが、結局、「電力生産は田舎で、電力消費は都会で」という構図ができ上がったんですね。しかし、それは一方で非常なゆがみ現象を起こしています。その例をそこへ挙げておきました。
まず第一は、皆様は原子力と人間のかかわりと言っておられますけれども、一番大事な人間のかかわりというのは、金力、権力の圧力のもとで立地地域の人間関係がずたずたに亀裂が入っていることです。これはプライバシーに関係することですから、こういう明るいところでは話題にもできないんです。しかし、多少とも経験のある方は強大な金力や権力にちょっとでも逆らったら、この日本社会ではどんな目に遇うか、ご存じでしょう。
二番目には、それと関係ありますけれども、かつて手塚さんの「鉄腕アトム」、それに付随した音楽で日本中が本当に沸き立ったですよね。あれは輝かしい原子力に対する希望だったんです。その漫画が原子力発電の宣伝に使われないようになって久しいですけれども、それはまさに輝かしい原子力が薄汚れて、不潔な原子力に転落しているからです。これも嫌というほどの例がありますけれども、時間がございませんから、最近の代表的な例を二つだけ。
一つは、皆さん、よくご存じの石川県珠洲で起こった市長選挙のやり直し。選挙のやり直しというのは民主主義の根幹にかかわる恥ずべき事件です。5月31日に最高裁が判決を出してやり直しを命じましたけれども、あの判決の中には原子力のゲの字もありませんけれども、あれが現在の原子力政策に対する痛烈な警告であることは、あなた方はご存じでしょう。にもかかわらず、原子力委員会をはじめ、これまで原子力を推進してきた人たちは知らぬ顔の半兵衛を決め込まれたでしょう。この円卓会議もその真っ最中に開かれているのに私の調べた限りでは全く議題になっていない。何という不感症ですか。そんなことをやっておられるから、さらに輪をかけた白昼堂々たる違法の行為、行動が行われているじゃないですか。こんな事態が続けば、今、ベレー帽をかぶって外国に派遣している選挙監視班を原発立地点にまず派遣するというような事態がきますよ。そこまで原子力は落ち込んでいるということをあなた方は十分考えてください。そんなことを抜きにしてきれい事を百何遍並べても出てくるものは砂上の楼閣です。
【五代】 大変申しわけありませんが、お話し中ですが、大体、最初の時間になってしまいましたので……。
【久米】 もう3分ほどあるのと違いますか。
【五代】 いえ、最初の話のところからちょっと拝見していたんですが、もしあれでしたら後半また、お触れになりたい点を……。
【岩崎】 しかしながら、3分間ですから。私は関係ないけれども、ここまでみんな、真剣に聞いているし、僕は継続するべきだと思います。
【久米】 いや、それはまた後で。
【五代】 ちょっとお待ちください。先ほどちょっとお話がありましたが、大臣が退席されるものですから、ちょっとお話を中断して恐縮ですが、一言、お話をいただいて、じゃ、その後、継続させていただきますので、ちょっとお待ちください。
【中川】 いや、私の話というよりはせっかく、皆さんのご発言の時間をたくさんとっていただきたいと思います。
本当に私自身も残念なんですが、閣僚懇談会がすぐございますので、まことに残念ですが、退席させていただきます。どうぞ、冒頭に申しましたようなことで、いろいろと忌憚のないご意見を出していただきまして、我々もそれに対して誠意をもって対処してまいる所存でございますから、よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。
【五代】 それでは引き続き、お願いいたします。
【久米】 いえ、そんな特別なあれは要りませんから、やめます。また後で。
【五代】 そうですか。ありがとうございました。ご協力いただきましてありがとうございます。
それでは引き続きまして、須藤富雄さん、お願いいたします。やはり時間の配分を申すと、恐縮ですが、20分程度ということでお願いいたしまして、そのあとは後半でお願いいたします。
【須藤】 東海村の村長をしております須藤でございます。
今回のテーマが「原子力と社会のかかわり」、そういうことでございますので、原子力と地域社会であります東海村とのかかわり、それから東海村が今日まで原子力政策に対する取り組んできたようなもの、そしてまた、今、国に対して地域として要望したいことなどを順を追ってお話をさせていただきます。
原子力の問題では東海村と言いますれば、日本で初めて原子力の立地をした地域であります。私たちの東海村が昭和31年、日本で初めて原子力の平和利用による研究開発のための日本原子力研究所が設置をいたしました。ちょうど原子力研究所立地の論議が持ち上がりましたのは東海村が合併発足をいたしました年であったわけであります。その当時、日本は世界唯一の被爆、原爆被災の国であり、さらにはちょうどその2年前、静岡県焼津のマグロ漁船「第5福竜丸」がビキニ環礁での核実験による被爆を受けたと大変大きな原爆被爆の社会問題があったときでもあったわけであります。私たちは毎夜のように説明会や研究会を開催しての論議をいたしましたが、核分裂によるエネルギーの利用という新しい科学技術の学問的な解明も非常に難しく完全に理解することもできなかったわけでありますが、私たち東海村の村民の結論としては安全性を含めた技術的な問題は日本の科学者の英知と良識に任せ、私たちはこの施設立地を村の発展につなげようと。そういう合意をいたしまして、立地を決定したわけであります。引き続きまして、動燃事業団の前身でございます原子燃料公社、さらには日本原子力発電株式会社が商業用原子力発電所建設へと東海村は原子力の基礎研究から核燃料の開発及び原子力発電技術の実証という日本における総合的な原子力開発研究拠点として整備をされてまいりました。それは昭和30年代でありますが、さらに昭和40年代から医療や通信などラジオアイソトープを利用いたしました研究機関や大学の原子力の研究施設のほか、原子燃料の研究・製造等が立地をいたしました。今日現在で14の放射性物質を取り扱う原子力事業所あるいは研究所と安全協定を結びながら事業活動を展開し、日本の原子力センターを形成してまいっております。
そこで、東海村がどのように変わったかということをレジュメで昭和30年と現在を比較してございます。原子力施設が立地をいたします前の昭和30年は人口は1万1,500人という小さな農村でございました。働く者の就業構造の構成比も第一次産業、ほとんどが農業でございまして全体の75.2%。それから、二次産業は7.7%、第三次産業は17.1%と農業中心の村であったわけであります。現在、人口も約3倍の3万3,000人、それから第一次産業の全体の8%、第二次産業は原子力発電や核燃料の製造を含めた製造業でありますので39.0%、第三次産業は原子力研究所、動燃事業団など研究開発の施設も含めまして53%と大きく変貌をしてまいりました。
原子力施設の安全確保や住民の生活環境の保全のための措置は、我が国の法制上は国が一元的措置によって許認可をし、管理監督を国がすると。一切の権限が国にあるわけでありまして、地方自治体の原子力事業所に対する関与する権限がございませんでしたので、私たちは何回か国に対しまして、原子力に対する地方自治体としての関与権を認めてほしいと再三、要請をいたしましたが認めていただけませんでしたので、茨城県とも協議をいたしまして、昭和46年に県と周辺地域を含めた茨城県東海地区環境放射線監視委員会を発足をいたしまして、原子力周辺を含めた近隣市町村までの放出放射線の監視を行い、その結果は現在も3カ月ごとに季報として一般に公表をしております。また、レジュメにございますように、49年には村内の原子力事業所と茨城県、そして東海村の三者によります原子力施設周辺の安全確保及び環境保全に関する協定書、いわゆる原子力安全協定を結びまして、それぞれの原子力施設から環境への放出する気体、液体の放射性廃棄物の放出量の規制、新・増設の事前了解、さらには必要に応じての立ち入り調査、また各原子力事業所における事故や故障の通報の義務づけ、これらを細部にわたる内容で協定を結び、お互いの信頼関係の中で運用をしてきております。さらに59年には、動燃再処理工場の工場へ各電力会社から使用済燃料が搬入をされることに伴いまして、その輸送の安全を確保するために各電力会社の責任による輸送対策本部を現地に設置すると。そういうものを含めました使用済燃料の輸送の安全確保に関する協定をそれぞれ電力会社と締結をいたしまして、その責任を明確化したなど、対策をしてまいりました。このような行政としてでき得る安全対策を講じながら住民生活の安全と住民の信頼を得るための措置を行ってまいりまして、昭和61年には原子力平和利用推進・核兵器廃絶宣言の村と議会の満場の議決で宣言をいたしまして対応してまいったところであります。
東海村は、申し上げましたように、日本最初の原子力平和利用の研究開発利用、そういう施設を受け入れて今年でちょうど40年になります。直径6キロから7キロの半円形の小さい村でありますが、この間、先ほど申しましたような、一連の原子力関連の施設と3万人を数える村民とが共存共栄の中で今日を迎え、私たちはいささかなりとも資源小国の日本の国民のエネルギーを支える国の原子力政策に貢献をしたと。そういう自負すら持っておるところであります。
今、原子力利用は国内消費電力の30%を超える電力を賄うのみならず、医療や工業、農業、さらには先端科学技術にまで極めて幅広い分野での国民生活に密着して利用されております。私たちはその恩恵も受けているわけであります。しかし、現在、国の原子力政策の基本であります原子力長計が平成6年に決定されてからわずか1年足らずでの変更や、さらには昨年12月の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の二次冷却系ナトリウム漏洩事故の発生に起因をいたしまして、大変、国民に不安を与えておりますことはまことに残念なことであります。私どもは国をはじめ、原子力関係者の総力を上げて誠意と努力によって国民の理解と信頼の回復に努めなければならないと存じております。
そこで、今後、原子力を進めていくために立地地域の立場から何点か国への要望を申し上げまして意見としたいと思います。
まず第一点でありますが、国の原子力政策の早期確立と国民理解の合意形成であります。国民の生活を支えるエネルギー問題の重要性、その中で原子力の果たす役割や必要性、さらには適切な情報公開、あるいは電力消費地の理解を得ることなど、国としてやるべきことはきちんと行い、不当な意見には毅然とした態度で対処され、広く国民の意見を集約しての原子力政策の再確認と安全性の確認を含めた国民的合意形成を図っていただきたいと存じます。
次は、原子力防災対策の充実強化でございます。原子力防災対策については従前から原発所在の市町村を中心に私どもは全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)を組織をし、その中で共通問題を討議をしながら国に対しても要請を続けておりますが、その中でも現在の防災基本法での市町村や県での対応は不可能であります。原子力防災に対しては国の一元的責任による安全規制上での防災対策を明確に位置づけた原子力災害対策特別措置法(仮称)、これらを制定をし、国が直接、防災の指揮をとれるよう、制度の改善をすべきであると考えております。
次は、原子力施設立地地域への施策の強化であります。現状ではややもすると新設や増設に重点が置かれ、既存地域に対しての施策が不十分であると全原協での不満もございます。新規立地の話が持ち上がりますと、その地域の方々は必ず既存地域を訪れます。東海村は今日まで国内外の原子力施設のための見学の方々が今でもたくさんお越しをいただいております。新規立地地点に対してだけでなく、既存地域の恒久的地域振興のための電源三法の抜本的見直しも図られたいと存じます。
次は、放射性廃棄物の処理・処分対策の確立であります。発電所からの低レベル放射性廃棄物は下北に一括管理をされるわけでありますが、再処理施設から出てまいります高レベルを含む放射性廃棄物、あるいはそれぞれの研究機関から出てくるもの、さらには核燃料製造のための、あるいは加工するための施設から発生をいたします放射性廃棄物の処分につきましてはいまだ解決をされておりません。年々、施設内累積保管量が増大をしておるのが現況であります。さらには、今後予想されます商業用発電炉の停止措置に伴う廃炉解体による放射性廃棄物の処理・処分の見通しも示されていない状況であります。過般、日本で初めて商業発電を行いました東海発電所の停止措置が発表されたわけであります。こういう原子炉の廃止措置に関する技術基準や、あるいは制度と合わせまして廃棄物の処理・処分の将来計画を早急に決定をし、実行されることを望むものであります。また、使用済燃料につきましても、今、日本原燃の再処理工場の計画が延期をすると発表されております。そういたしますと、日本の方針が国内再処理を基本としておりますので、発電所内での使用済燃料の保管量が増大をし、なおかつ、長期保管をせざるを得なくなる状況にございますので、早急に適切な対策が必要であると思います。
最後でありますが、核燃料サイクル政策の明確化であります。資源の少ない我が国日本では、その大半が外国依存であります。ウランもその一つであります。有限の資源を現在の私たちで使い果たして後世に引き継ぐべきではないと私は信じております。そのためにも資源は大切に、現在の知恵で利用するものは利用しなければならないと思います。国は核燃料サイクルの推進を政策の基本とすることとしておりますが、その必要性、さらには我が国の特殊性、我が国は原子力基本法による原子力平和利用、原子力利用は平和の目的に限るという国是をもとに、もっともっとわかりやすく国民全体に、さらには外国にも日本の特殊性を説明することに努めて理解と信頼を得られるよう、積極的な対応を希望いたしまして、私の発言を終わらせていただきます。
【五代】 ありがとうございました。
それではこの後、今までご発言いただいていらっしゃらない他の招へい者の方からご感想、ご意見をいただきたいと思います。議論は後半の時間にたっぷりと取ってございますので、まことに恐縮でございますが、今の感想は大体、また時間を区切って恐縮でございますが、5分以内にまとめてお話しいただきまして。それから後半の議論に移りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それではこれもまた、五十音順で有馬さんからお願いいたします。
【有馬】 五点ほど申し上げたいと思います。
私は原子核理論が専門でありますので原子力の話は非常に興味深く聞いておりました。まず、一般国民の、特に小中学校の生徒諸君に対する教育の必要性ということがあるということを感じました。そこでは放射能というものが果たして必要であるか。その放射能の有用性と危険性を教えるべきである。
それから、エネルギー源というものが世界的にあと50年するとほとんどなくなるということを十分、国民に知らせるべきである。ただし、石炭は残りますね。あるいはアメリカだけが生き延びるかもしれない。ほかの国は全部、エネルギーが足りなくなるということを国民に十分知らせていく必要があると思います。そのときに出てくる話は、必ず新エネルギーという話になるのですが、太陽にせよ、風力にせよ、せいぜい家庭電力であるということを十分、国民に教えるべきだと思います。
それから、50年たったときにどうなるか。これは核融合を何とか研究していかないといけない。しかし、50年は核融合は使えないということを国民に教えないといけない。50年は無理です。よくても30年は核融合はエネルギーを生み出さないでしょう。このことは国民は十分知るべきだと思います。
そうすると、先ほど、三浦さんがおっしゃっていたと思うんだけれども、エネルギーというものをいかに消費をしないようにするかということが一つの大きな問題になってくる。これもまた教育の問題であると考えます。
こういうふうにエネルギーが非常に足りなくなるであろうということを十分理解した上で、国民はどういう選択をしていくかということは教育をしなければわからないと思いますので、十分、教育ということを考えるべきだと思います。
実は三浦さんがさっきおっしゃっておられたことだったと思いますが、教科にとらわれない教育をせよ、とおっしゃった。これは非常にありがとうございました。今度の中央教育審議会で私が会長として答申を文部大臣に出しました。その中には、総合的学習の時間というものを設けてあります。その時間には自然環境の勉強、あるいは外国の理解、あるいはエネルギーの問題、こういうふうなことをそこで勉強してもらうようにしてあります。これを活用していただきたいと思います。
ですから、まず第一に指摘したいことは、原子力のみならずエネルギーというものがいかに難しい問題であるかということを、十分国民に知らせるべく教育を行うべきだと思います。
第二番目に、特に原子力に戻りますけれども、現在のところ一番問題になっているのは使用済燃料の問題だろうと思います。この使用済燃料の問題は、これは研究者のみならず、皆様もご承知のように、研究の上での立ち遅れが世界的にありますので、使用済燃料は極めて有効な財源だということを認識すべきである。あの中には極めて、なかなか自然にはないような物質が含まれているわけでありまして、使用済燃料は宝の宝庫であるという可能性がありますので、この処理の研究をすべきであると思います。こういう点で長期計画の中でオメガ計画というのが入っている。これはすべからく実現をすべきだと思っています。
三番目に申し上げたいことは、あまり、これについては触れておらなかったけれども、航空機の危険の怖さ−−今度のTWAがそうですね。いかにジャンボジェットというものが危険であるかとか、巨大科学というのは相当のリスクを持っている。あるいは環7公害のように自動車をどんどん走らせれば多くの人がぜん息になる。こういうリスクの評価を原子力も含めてやるべきだと思っています。本当にジャンボジェットのほうが原子力より100倍でしたか1,000倍かのリスクがあるかどうか。こういうふうな問題もきちんと評価をして国民に知らせるべきだと思っています。こういうリスク(危険度)をいろいろな面から、いろいろな交通機関、いろいろな発電所が持っている危険性、そういうもの、これは公害も含めてですね、ぜん息であるとかなんかも含めて、リスク評価をきちんとしていくべきだと思います。
最後にもう一つ、情報公開というのは、これは原子力委員会にお願いでありますけれども、なるべく速やかにすべてのこと、「もんじゅ」に限らず、すべての問題についてきちんと国民に知らせるべくご努力をいただきたいと思います。この情報公開ということは非常に大切なことだと思います。特に国民の税金を使ってやっていく以上、情報公開というものは十分早く行われなければいかん。十分に行われなければいけないと思います。
以上で5分間になりましたので。
【五代】 ありがとうございました。時間どおりで感謝しております。
それでは岩崎さん、お願いいたします。
【岩崎】 私は実はどういうふうに発言するかについては資料7を用意してまいりました。同じく資料8がそれとの関連で私ども、先日、原子力委員会委員長に提出したわけで、その資料二つをもとに私の考えを述べたいわけなんですけれども、5分ということで、どういうふうに述べますか。特に今、求められているのは、今日、発表があったことに対する感想といいますか、そういうような印象を受けますので、一つの考えとしては、私が用意しました7と8については休憩時間の後、もしお時間が許せば発表させていただきまして、今、お話を伺った感想をこの与えられた時間でお話できればと思います。
【五代】 よろしくお願いいたします。
【岩崎】 私は市民フォーラム2001という市民の声を国政及び国際的な舞台に反映させていくことに努力しておりますが、原子力そのものについて歴史的な詳しい経過を存じません。しかしながら、今日、はっきり申しまして、久米さんのお話は非常に感動的といいましょうか、内容が濃いと同時に、やはり原子力委員会そのものが考え、責任を負わなければならない具体的なことについて数多く指摘があったと思います。
同じく、萩原さんですが、萩原さんは非常に率直に、この点について11点、おまとめになって。これも私自身、詳しい事情がわからない者として当然疑問に思うことが率直に述べられているという意味においても非常に賛同するものです。
藤田さんも同じくいろいろなことを申せられ、私も共鳴する部分もありました。後で申し上げたいと思うんですけれども、何と言いましょう、一部の人間が決定していくことと時間と空間を超えての波及と言いましょうか、そういうようなことが述べられておったり、そのほか、私は後で詳しく申しますけれども、共通の部分を感じました。
しかしながら、この時間を利用して申し上げたいのは、先ほど、久米さんからのご発言で、この円卓会議において情報公開の重要性を何回強調しても、もう既に求められている情報公開そのものがなされていないということについて真剣に考えるべきだと思うんです。ですから、何か型どおり、ここで情報公開が必要だという結論が出たら、おずおずとでも言いましょうか、情報公開をするんではなくて、やはり実効的に今すぐ可能なと言いましょうか、必要とされる情報、そういうものを公開していくことが誠意をもって、この円卓会議なりの発言に応えていくだろうと思います。実際、通産省そのものがこういう会議の途中に既に誘導策をさらに加速するというようなことをやっているわけですから、やはり、情報公開がこれだけ求められている状況においては即刻実行すべきだと感じます。例えば、原子力は安いと言われているわけですけれども、実際のコストを速やかに公表するとか、いろいろと求められている具体的な内容についてこの10回が終わる前に可能な限り、その努力をすべきだと思います。
そのほか、私は後で申し上げるということなんですけれども、円卓会議に対する不信感ですね。確かに担当者の熱意というものは感じないわけではありませんけれども、より、このプロセス、特に4回が終わって5回、6回に移る過程の中でもっと努力するべきだったと思います。これについてはまた後で申しますけれども、そうすることによって、この会議そのもの信頼感を取り戻すということについても腐心されるよう、お願いしたいと思います。
今の段階ではこの程度にさせていただきまして、休憩後にお話しさせていただければと思います。
【五代】 わかりました。ありがとうございました。
それでは神田さん、お願いいたします。
【神田】 京都大学の神田でございます。
京都大学では4月からエネルギー政策学という新しい学科というか専門分野が始まりして、そこの担当をしております。それまでは原子力の設計工学をやっていたんですが、これからはいろいろな電力、エネルギー源の問題について、その比較検討をし、そういう専門家を育ててもらいたいというので、この4月から京都大学に新しい大学院ができまして、工学部から独立して、そういうことをやるということになりました。そこには文系の先生も理系の先生も、あるいは農学部の先生とかがたくさん参画しまして、40人ぐらいの教授が集まって新しい研究を始めたところであります。
一方、研究所のほうでは中央管理室長といって、地元の窓口をするということをやっております。先ほどの東海村長さんのお話を聞いて非常にうれしかったです。ああいう話を私も地元の方たちとやってみたいというふうなことを言っていただきました。地元との会話というのは−−地元というのは変な言葉かもしれませんが、地域の私たちも一町二市にわたって定期的な会合を持っておりますし、すべての行動は大阪府に報告しなければいけない。京都大学の原子炉は大阪府にあるものですから、大阪府の原子炉問題対策室というところとやっている。そういうことからいって、ああいう会話をしてみたいと思いました。実は私は学位を東海村で3年間過ごして、そのときにいただきましたものですから、大変懐かしく、そういうことを伺いました。
それからもう一つは、有馬先生が今日、いらっしゃるということは大変うれしいことです。教育の問題について実は原子力学会の中に教育委員会というのがありまして、そこで教科書というのがいかに間違いの記述というか、いいかげんに取り扱われているか。これは原子力に限らなくてエネルギー問題というのがどういうふうに取り扱われているか。その記述にどういう間違いがあるかというのを3年がかりで調査をして、先日、文部省に、こういうふうに間違っている、ということと、こういうふうな教育が望ましい、という要望書を出したところであります。それが、その先生と直接、こんなところでお会いできるというのは大変喜んでおります。
それからもう一つ、情報公開というところで、マスコミの方が、もしおられるならお願いがあるんですが、私は京都大学で何かあったときの第一報を流す責任者であるわけですから、今も携帯電話を持って、どこに行くのでも私から第一報が出ることになっているんですが。何分遅れたとか、5分遅れた、10分遅れたということをギャアギャア言われるたび、結局、情報が混乱してしまう。一番、判断しなければいけない私が的確な情報を集めて、それから地元に正確な情報を流そうと思うのに、何分遅れたというのをギャアギャア言われるために、もし住民が逃げまどわなければいけないような事態であるなら、それは一刻も早く知らせなければいけない。しかし、そうでない事態にあって、30分が35分になって、40分になっていうのは、40分、隠していたんじゃないんです。その情報をきれいに整理して、また、途中段階のことを言いますと、事故隠しなんて……。
今日だけはちょっと「もんじゅ」を弁明しようという気になってきたんですが。この間は「もんじゅ」をさんざん非難したんですが、今日は「もんじゅ」を弁明しようという気になってきたのは、事故隠しとかそういうのじゃなくて、情報を整理して正しい情報を伝えようというときに、早く知らせろ、と電話が全部鳴りっ放しになって、そういうところで正しいところを伝える。もし違うと、ほら、さっきのと違ったじゃないかとか、揚げ足を取られる。それから、そのときに全部、わかっていないことを言えなかったから言うと情報を隠したと言われる。というのがありまして、重要性に応じて、例えば1時間欲しい、2時間欲しいとか、そういうことを十分理解していただきたい。事故というのはわかった途端に責任者がすべてのことを把握するんではないということを理解してもらいたいということをふと今、思いつきまして、発言させていただきました。また、後で別のことを言わせていただきます。
【五代】 ありがとうございました。それでは宅間さん、お願いいたします。
【宅間】 私は電気事業に、また原子力に携わっておる者としまして、一言お話を申し上げたいと思いますが、私がこれからお話しするのもののベースには、今、原子力の施設を立地させていただいております地域の皆様に大変お世話になっている、ご協力をいただいているということがベースにありまして、私がこういうお話をさせていだだけると思いますので感謝いたしております。
まず、電気事業者としては私は市場原理に基づく自由主義経済社会の中で私企業の公益事業として二つの役目を社会的に持っていると思っています。一つは、今の世代の皆様方にいかにして安くて品質のよい、安全な電気を過不足なくお送りすることができるかどうかということ、お届けするということ。それからもう一つは、それを後の世代にまで、孫子の世代にまで送り続けることができるかどうか。この二つの使命を電気事業者としては持っていると思っています。
1番の「今のお客様に安くてよい電気を」ということなんですけれども、原子力は石油ショック以来、石炭、天然ガス、それから原子力ということで脱石油の三本柱の一つとしまして安全性と信頼性と経済性の向上を目指して必死になって努力してきておりまして、今現在、30%という電力の中核を担うような重要な電源になったと同時に、電気事業者として、この原子力というのはコストの面、信頼性の面でも非常に優れた電源として私どもは自信を持って開発してまいっておるわけです。
それから二番目につきまして、「後の世代にまで、電気を送り続けなければいけない」ということですが。このためには、今の世代がそのためのインフラを、要するにエネルギーを送り続けるためのインフラ整備をしていかなければいけない。これは今の世代がやらなければならない一つの責務なんだろうと思います。長期的なエネルギー資源としてウランの資源というものをリサイクルして使うことができる。そのためには再処理とか、それからプルトニウム利用だとか、あるいはさらにはFBRという技術と設備の建設と同時に人材の育成、R&Dというソフト、これも長い時間かかってやらなければいけないわけですから、それも一つのインフラだと思います。それを今の世代が少しでもやっておかなければいけないものだろうというふうに思っております。
そうした意味で原子力の開発というのは日本だけじゃなくて、今、21世紀に予想されております世界の人口増、アジア中心の人口増、経済成長という中で考えたときに、世界規模で見ても原子力開発というものは、しかも、リサイクルをしていくということはエネルギー資源の増大というのに寄与できると思います。
今、どっちかといいますと、経済成長する、人口が増えるということでエネルギーを使う方向ばっかりに目が向いておりますけれども、今の市場原理の世界の中で一方で、例えばアジアがどんどん人口が増加して経済成長する一方で、どんどん貧富の格差が開いてきて、もっともっと貧しい国がどんどん出てきているということ。これは私は忘れてはいけないことだろうと思います。その方々がこれから、その生活から抜け出して発展のきっかけをつかむためには、やはりエネルギーが必要。それはやはり使いやすい化石エネルギーというものを最初は使っていかなければいけない。そのためには先進技術的に原子力というものを使いこなすことができた。私どもは、そういうエネルギーを使っていくということ、それによって化石燃料という使いやすいエネルギーをそちらのほうに回して使っていっていただけるようにエネルギー市場を緩和していくということが私は大事なものだろうと思っております。
それから、炭酸ガスの温室効果の問題につきまして原子力開発というのが今、一つの有効な対策だというふうに世上言われております。今現在、IPCCですか、気候変動に関する条約とか、ああいうことでもだんだん国際ルールが、来年にでも具体的な国際ルールが制定されるというような状況になっております。その中で原子力が一定の役割を果たすということが地球環境、温室効果問題に対して重要だということは言われておるわけでございます。振り返ってみますと石油ショックのときにどうだったんだろうと考えてみますと、1979年、第二次石油ショックの後ですけれども、国際エネルギー機関(IEA)におきまして石油火力の新設をこれ以上やめようじゃないかという脱石油が国際ルールとして決まってしまったわけです。したがって、日本もこれに従うのは当然だというわけで、そこで省エネと新エネの開発、R&Dに必死になったと同時に、今申しました脱石油の三本柱の開発を必死になって進めてきて今日まで至っているわけでございますけれども、今、今度、地球環境問題でIPCCその他で国際ルール化されてきた場合に、日本も国際社会の中で炭酸ガスの削減ということに対して約束をした以上は、これは違反はできないわけです。そうすると、これに対応していくためには省エネとか新エネ対策は当然のことであります。こういうので必死になることは当然ですけれども、一方で原子力のより効果的な活用ということを国際的に協力をしながら進めていくということが大事なことだろうと思っております。
その場合にも、当然、安全というのは第一のことであります。私自身が柏崎の発電所の所長を4年間やっておりまして、まさに自分で地元で立地をさせていただいて、その発電所を運営させていただく。そのときに地元の皆さん方に働いていただいているわけです。だから、安全というものは当然のこととして企業の存続条件でありますし、それがなければ自由主義経済社会の中の市場原理の中で存続できません。また、安全であっても高いものであれば市場原理から外されるわけでございますので、我々も必死になって努力してきている。こういう枠の中で原子力開発を進めておるわけでございます。
その中でもどうしても科学技術的に安全というものがなかなかわかりにくいということで、やはり原子力に携わっている人間に対する信頼感というのが一番大事だと思います。 このためには、皆様方がお話しされた情報公開、透明性ということが当然のことでございまして、私どもは必死になってできるだけのことをご理解いただくためにやっておるわけでございますけれども、やはり一つはメディアの問題があると思います。要するに……
【五代】 そろそろ時間が近づいてきましたので。
【宅間】 じゃ、あと一つだけ。
要するに情報というのは発信する側と受け手側とのレベルによって発信された情報が正しく理解されるかどうかということがあって、それはやはり受け手側の初等中等教育を含む一般教育の問題だと思います。そういう意味で教育ということは、何度も繰り返すようですけれども、エネルギー教育というのは有馬先生がおっしゃられましたように、非常に大事なことだと思っております。
【五代】 ありがとうございました。田村さん、お願いいたします。
【田村】 田村でございます。
皆様のご意見を承っておりまして、この円卓会議というのはいかに大事なものかということをつくづく考えております。そして、この円卓会議を開かれたからには原子力委員会としての原子力政策の新たな見直しというようなことに相当重大な決意をもって臨まれているのではないだろうかと。そうでなければ、またこの成果が反映できないのであろうということをまず深く心にとめました。
私自身は原子力利用というものに肯定的な立場に立つ部分が多いのでございますけれども、しかし、この原子力に多く依存するということには非常に反対でございます。電力の3割というのは今がちょうど限度ではないか、いいところではないかというふうに日ごろ思っております。つまり、原料の問題、廃棄物の問題、取水の問題、立地の問題から見て、日本の環境容量ではこれ以上の原発の増設、依存というようなことは非常に難しいのではないかというふうに日ごろ思っております。そして、日本のエネルギーの少なさからいえば、やはり、一つのどれか太い綱につかまっているということはなかなかできないので、幾つもの細い綱をより合わせて、それにつかまって何とか生きていくというのが日本の姿ではないかと思っております。
高齢化社会を迎えまして電気のような安全でクリーンなエネルギーというのは非常に必需でございますので、どのように今後、需要と供給を見合わせていくかというのが非常に大きな問題だと思うんです。これまでのように需要があれば供給しなければいけないという時代ではもうないのではないかと。先ほどから皆さん、おっしゃられましたように、やはりエネルギーの消費を抑えるというような政策を、これは環境の問題も含めて国全体で考えていくことに大きな必要性があると思います。ですから、原子力政策ということだけではなくて、もう少し大きな立場から見たエネルギー政策というものを考えていかなければいけない時期ではないかということです。皆様の両方のご意見を伺っていてつくづく思いました。
私が一番、西崎さんがおっしゃられたマスコミの報道の問題は−−ほかの方もおっしゃられましたけれども−−当事者といたしまして非常に心に重く受けとめるわけでございます。従来、何かことが起こりまして、そのときは非常に大きな報道がワァッと起こるんですが、最後になってだんだんになってくるとマスコミが悪かったと。要するに、あれはあおり過ぎだとか、あるいは、わからないで書いている、というようなことでいつも、マスコミの責任が非常に重いわけでございますけれども、マスコミの側にも非常に大きな問題がありまして、記者の教育の問題もございます。非常に原子力のことについてはご専門の先生方もたくさんおられるわけですけれども、ご承知のように、今の世の中が非常に多様でございまして、科学の担当の記者たちも今日は原子力、明日はO−157ですか、そういうふうに走り回っているようなことになりますと、なかなか、一つの事象をきちんととらえて正しく報道するということが、その瞬間瞬間に難しいわけでございますし、これは私どもは心にとめて後輩の人の指導にも当たらなければいけませんし、私たち自身も常に目を遠く届かせていかなければいけないということを自覚しております。
実際問題といたしまして、先ほどから有馬先生がおっしゃられましたように、一般国民の科学技術及び原子力とかエネルギーに関する理解の度合いというようなものが非常に問題になってくると思います。原子力というと非常に感情的な反対というようなことも、よく原子力施設などをごらんになって、いろいろなことを知るにつれてだんだん理解が深まっていくというようなこともございます。ですから、その意味では、先ほどから出ておりましたように、国民が自分が判断できるまでの情報を持てる、そして、その情報が理解できるレベルというようなものが必要だと思います。ですから、義務教育の中で例えば、そういった理科教育なんかのレベルをどんどん落としてくるようなことが今まで行われてきましたけれども、そういたしますと例えば私どもが新聞紙上に書くときにもどこに標準を合わせるか。中学校を卒業した程度の人たちがきちんと理解できるように書くというのが私ども記者が一番初めに言われることなんですけれども、その中学、小学校のこういった科学技術教育がどんどん減ってくるとなりますと、では、原子の話なんかはどこまでわかるのかということになります。したがって、文系、理系というようなことでどんどんやらなきゃいけないものを片方で減らしているような今の現状では、原子力の問題にいたしましても、環境の問題にいたしましても、それをきちんととらえて感情的ではなく理解をして自分の意見を言うと。そういう国民を一人でも多く育てなければいけないということをもっと全体の教育の中で考えていかなければ、情報公開のことは私も皆様と同じように思うのでもう申しませんけれども、幾ら情報が公開され、インターネットができても、それを理解できる−−もちろん、難しいことをそのまま書けということではないんですけれども−−国民を育てるということが非常に大事ではないかというふうに思いました。
【五代】 どうもありがとうございました。皆様の熱心なご意見に厚く御礼を申し上げます。
それでは、ここで15分ほど、お休みをいただきます。そうしますと今、ちょうど時計を見ておりますと4時スタートというのが切れ目がよろしいのではないかと思います。その後、自由討議を行いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは前半の部はこれにて終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

(休 憩)


自由討議

【西野】 それではおそろいでございますし、時間になりましたので、主たる目的は自由討議でございますが、後半に入りたいと思います。後半は私、西野が議事の進行役を務めますのでよろしくお願いいたします。前半を踏まえまして活発な討議、意見交換を行いたいと考えております。
ただ、前半の部分に多少、積み残しがありましたので、まず、その積み残しの一つでございますが、久米さん、先ほど、3分と言っておられたんですが、また改めてとなると多少、時間が要るのかなと5分ぐらいでよろしくお願いいたします。
【久米】 申しわけありません。議長さんのほうから……。
レジュメの7、8は読んでいただいたら大体おわかりいただけますので、9について、これは提案と何かごついことを書いてありますけれども、各地で私は数年間、話すときに必ず最後に言っていることなので。モデレーターの中には西野さんのような政策の専門家もいらっしゃいますし、経済の専門家の方もおられるので、日本の原子力はやっぱり経済、政治には音痴ですね。だから、政策立案能力は、原子力委員を前に悪いですけれども、ほとんどないと思います。それで、ぜひ、もっと、さっきどなたかがおっしゃったように、社会科学系統の方がどんどん入ってきて、本当の意味の政策立案をやっていただきたい。そういう意味で提案をいたします。
現在の利益誘導型の立地政策の根源は電源立地促進政策です。これは戦後、44年前に電源開発促進法というのが法制化されて、それから22年前に、いわゆる電源交付金等の地域の優遇策が出てまいりました。それを私は時代遅れではないかと思っていますので、一度、ぜひ、円卓会議でも議論をしていただきたい。これを言うと、おそらく行政の方はせせら笑われると思いますけれども、私が時代遅れと言うのは、一つは、日本も押しも押されもせぬ先進国になりましたから、先進国の任務というのはエネルギーをいかに減らしていくか。そういうことです。それは戦後の時代とは全く違う。それから二番目は、電気事業法が昨年12月にまず第一次改正を経て、電気の卸売というのが出て、各電気生産者がどっと殺到するというような状況ですから、今ごろ、電源のための促進政策なんてどうして必要なのか。その二点で私はもう時代遅れだろうと思いますので検討していただきたい。それだけを追加させていただきます。
【西野】 ありがとうございました。
円卓会議が始まりましてから、原子力モニターあるいは一般公募の方が来ておられるという回は今日が初めてでございます。あと、10回の回にももう一度、予定をしておりますが、ある意味では原子力モニターからの参加者、一般公募の参加者がおられる席ですから、できるだけ自由討議を活発にしたいと思っております。しかし、少し先の前半が延びたことと既に配られておりますが、岩崎さんから資料7、8が出ております。一つは、原子力委員長あての文書でございます。円卓会議があまり硬直的にならないという意味では、こういうものが出てまいりましたので、今回、特別に一応、ご発言をいただきたいと思いますが、先ほどの趣旨がありまして、今日は非常に大事な会議なものですから、大変恐縮でございますが5分ぐらいでお話しいただけますでしょうか。
【岩崎】 ありがとうございます。それでは資料7に沿って発言させていただきます。資料8にももちろん触れさせていただきますが。先回もそうだったんですけれども、短い時間に申し上げるということで発言の内容をメモにしてきましたので、それを読むという形で資料7のほうを言わせていただきます。
私は既に、この円卓会議第2回において発言する機会を得て、円卓会議のあり方、情報公開、原子力の商業利用廃止を目指す原子力政策のあり方。私は、2回目のメモを見ていただければわかりますけれども、原子力の商業利用は廃止すべきだというふうに、段階的に廃止すべきだと考えて、その内容について提言させていただきました。そして、より深い原子力政策検討のためのモラトリアム、この4点について意見を述べました。その後、この円卓会議が10回まで延長され、一般公募の方も発言できることを知り、喜びましたが、5回から10回までの討議されるべき議題設定については不十分であると感じております。それは第1回から4回までの発言集の中に、私のみではなく多くの方が、この円卓会議での発言がどのように原子力政策そのものに反映するのかについて疑問を呈したのにかかわらず、それについての討議枠が十分に設定されないまま討議が進んでいるからです。私は率直に言って、この円卓会議のあり方という表題において、5回から10回の6回開かれるわけですから、そのうちの1回の時間を十分に割いてこの問題を討議してしかるべくほどの今までの発言者の重みがあったと思います。8回と10回というのはそのことを許容する枠組みにはなっておりますので、その点は評価いたしますけれども、さらにそのことについて徹底しないと言い放しになる可能性があるということです。
次ですが、会議参加者が会議そのもののあり方に疑問や質問を呈したとき、主催者は事情説明を踏まえて何をおいてもその疑問に答えていくことが一般の社会習慣からして当然の責務ではないだろうか。今日、配られたのに今後の円卓会議のあり方といいましょうか、原子力政策に反映させるということは書いてあります。資料1に書いてありますけれども、「反映すべき事項が提出された場合、また、さらに検討するべき事項が明らかになった場合には」云々ということで、ここらも何か、率直に言って、わかったようなわからない。つまり、反映すべき事項が提出されないと判断した場合には結局、何の採用も行われないんではないかというふうにも読めなくもなく、ここらについての鮮明さを欠いていると私は思っています。
私たちが円卓会議で発言した17人は、このような事情を踏まえて去る7月17日、発言者有志という形で中川委員長に提言書を提出しました。その内容は別添の「原子力政策円卓会議への提言」にありますが、その基本的趣旨は、原子力委員会はこの円卓会議で表明される意見をどのように原子力政策そのものに反映するかの具体的な方法をできるだけ速やかに明らかにしてほしいということです。ということで、資料8を見ていただきますと、最初の三枚が提言そのものです。そして3枚目に17名の方々の名前を列挙させていただきました。これは正直に申しまして、第6回までに発言された71名の方に数人の有志というか呼びかけ人が、この文書を送付し、賛同の回答を得た人の連名において、これを委員長に先日、差し出したところです。その資料8の4枚目は、それを簡単にして、その要旨のみを抽出した部分であります。これについては私が今から述べることとも関係ありますので、ここの時間の制約もありますから、資料8については、そのように、特に資料8の4ページ目に書いてあります大きな字、原子力委員会は円卓会議で表明された意見をどのように具体的に結びつけていくのか、そこをはっきりさせてほしいということ。今日の段階においても、ぜひ、これを原子力委員会の方からお伺いしたいと期待しております。
私の今日の発言は、この提言書提出と絡んで、東西対立の崩壊以後、そもそも円卓会議というのはどのような歴史的意味を持っているのか。そして、ここでの発言をどのように政策立案に生かすことができるかについて申し上げたい。
円卓会議の今日的意味。当原子力円卓会議は開催主旨に「国策としての位置づけの一層の明確化」あるいは「原子力政策に対する国民の不安感などに応え、国民合意の形成に資するため」という文章が散見され、「もんじゅ」の事故によって生じた市民の原子力に対する不安に応え、政策そのものもタガを締め直そうとする印象を与える。私はこの文章をいみじくも、こういう文章が散見されるというのは言い得て妙と言いましょうか、その趣旨がはっきりとはわからないわけですけれども、そのように感じるところがあります。タガを締め直してさらに推進しようというような意図で、この会議が開かれているのではないかという危惧を持ちます。しかし、この円卓会議はくしくも地球サミットで採択された21世紀の行動計画、アジェンダ21の第3部で規定されている対話の精神を具体化したものであり、異なる立場と意見を持つ人々の意見を聞いて政策そのものに反映させていくという今日、最も今日的な的確な政策決定方法なのである。
国連は国家の代表が出席して、国際的合意を図る機関です。しかし、時として国連会議は出席する各国の国益を守れても、共通する地球益や未来益を守ることができない場合があります。そこで国連は国家を超えた地球益または未来益を国際的な場において代弁できるよう、NGO(非政府組織)の代表を出席させ、国家あるいは1国と時代を超えた公平性を確保しようとしています。
一方、原子力委員会の法的根拠である原子力委員会及び原子力安全委員会設置法によれば、原子力委員会委員長は科学技術庁長官であること、そして原子力委員会委員は国会の承認を得る必要がある、と規定しています。つまり、現在の原子力委員会は国政が色濃く反映できるような法的枠組みの中にあり、国策としての経済成長、経済成長のためのエネルギー安定供給、そして安定供給ための原子力の商業利用という文脈の中で、原子力発電は国是としてこれを実行しなければならないという命題を担わされています。言いかえるならば、経済力を背景とした国家安全保障のために原子力利用が進んでいると私は理解しています。
しかし、東西対立の崩壊後の現代世界にあっては国家安全保障よりも地球安全保障、すなわち国家と時代を超え、地球益と未来益をどのように現代の枠組みの中に組み込むことができるかが問われています。つまり、異なる立場を超えて社会的合意を図る円卓会議こそ、今、歴史的に緊急に求められている討議方式であり、その内容をいかに具体的施策に結びつけていくかが問われている。つまり、円卓会議をどうして原子力委員会の方が企画されたかは、しかとはわかりませんけれども、しかしながら、推測にするに、その開催主旨にもあったように、タガの締め直しを図る必然的手段だったかもしれない。しかしながら、くしくも設置された円卓会議は歴史的な文脈の中においてはタガの締め直しではなくて、まさに今日的なと言いましょうか、つまり、国家を超えた地球、あるいは現代を超えた未来という文脈の中で必然的に持たなければならない、あるいは可能性を秘めた会議形式そのものです。
ですから、したがって、原子力委員会は円卓会議を決して反対派の意見を聞きおく場所として位置づけるのではなく、地球安全保障をも視野に入れた政策決定の場として尊重しなければなりません。当円卓会議に出席されている原子力委員の方々、自治体の方々、企業の方々、研究学者の方々も今や、時代は国家の手を離れて地球社会の時代に入りつつあることを理解いただきたい。人のために尽くしたいという気持ちを生かすには今や単に国家に奉仕するのではなく、国家を超えて地球益と未来益擁護の道を模索するべきと考えます。
私の感想ですけれども、皆さんは原子力の利用性を問います。それは人のため、世のためというふうに、あるいはめぐりめぐって必要なんだという理解を及ぼすわけですけれども、その皆さんと「人のために」といった、その「人」というのは果たしてだれを意味しているか。私は極めて日本人を意味していると思うんですね。私たちが育った過程において日本社会の歴史的な、あるいは地理的閉鎖性において必然的に持たざるを得なかった視点です。ですから、皆さんは自分に対して誠意を尽くしているかもしれない。しかし、その誠意の対象は日本人だけでは生きられないということをしっかり認識すべきだということを強調したいわけです。ですから、もっと虚心坦懐と言いますか、もっと地球的な視野において自己を確立すべきだと思います。
以上ですけれども、原子力委員会と原子力政策円卓会議の関係ですが、以上、述べてきた趣旨から、原子力委員会の改組、とりわけ委員長は科学技術庁長官が務めるという国家と原子力委員会の癒着を防ぎ、国家利益を超えた地球益と未来益を包含できる委員会構成に改めるべきだと考えます。しかし、この法改正が急激にできないならば、円卓会議の討議内容がいかに具体的政策に結びつくか、方法を確立しなければいけない。そのためには、ここらが私は実は法的知識もあまりないし、ここらを1回、円卓会議そのものがこういうことを集中的に議論してはっきりさせていただきたいんですけれども、諮問委員会として位置づけ、これが的確な方法だったかはちょっと今はあまり自信ないんですけれども、何らかの具体的施策の政策決定における公平性と透明性の確保のための有効な手段とすべきだと思う。また、日本における原子力利用は日本各地の地域社会と密接なつながりを持って進行しているため、原子力政策円卓会議を原子力施設を有する市、県または市町村にも設置して権限の分散を図り、より多くの市民参加を実現していただければと考えます。
以上です。ありがとうございました。
【西野】 どうも。一応、資料8が原子力委員会の委員長あてに出されています。今日は委員長が残られる予定でございましたが、先ほどのような理由で退席されておられます。委員長代理の伊原さん、一言、コメントをいただけますでしょうか。
【伊原】 伊原でございます。
原子力委員会はこれまで原子力政策円卓会議の運営に当たりまして、せっかく開かれるからには、より実りのある会議となるよう、心を配ってまいりました。この観点からご提言についても誠意をもって対応いたします。
まず、円卓会議の目的についてのご提言でありますが、原子力政策円卓会議では結論に予断を持たず、審議を尽くすということを基本としております。これは委員長も最初から申し上げております。決して既存の原子力政策ありきとだけ考えているわけではありません。改めてそのことを申し上げます。
また、円卓会議における議論の成果、これは的確に政策に反映させていくために、政策に反映すべき事項が摘出された場合には原子力委員会の専門部会、関係省庁等で具体的な検討を行います。既に原子力委員会は円卓会議より原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進、これについて必要な措置をとるよう、要請を受けております。現在、検討を進めておるところでございます。そこで今後ともモデレーターの皆様方と十分ご相談をいたしまして、円卓会議がより実りのあるものとなるように努めてまいりたいと、こういうことでございます。
【西野】 円卓会議そのものについての話題といいますか、問題提起をされておりますので、モデレーターの中から茅さんからコメントをいただけますでしょうか。
【茅】 茅でございます。モデレーターの一人としてちょっと意見を申し上げます。
この提言の内容そのものについては私も読ませていただきましたが、その中には考慮すべき点が多々ありまして、私としても原子力委員会のほうで十分ご検討をいただきたいということをお願いしたいと思います。
それはそれでよろしいんですけれども、私はモデレーターとして、この提言のプロセスについて、このことで少し考えましたんで、その点だけをちょっと申し上げたいと思います。
この円卓会議は、ご承知のように、原発の問題にいたしましても、それを推進する立場、逆に反対する立場、いろいろな方がおられまして意見が非常に違うわけです。したがいまして、こういう円卓会議から意見を何らかの形で原子力委員会に提言するプロセスとしては、本当はモデレーター自身が皆さんの意見を聞いて、そしてそれを何らかの形で原案としてまとめ、皆さんに諮って、その上で提言として出すというのが一番、本当はよろしいプロセスだと思います。本来、モデレーターというのはそういうリエゾンで役目を果たすのが趣旨だと思うんですね。そういうこともありまして、たしか2回前だったと思いますが、私はたまたま出られませんでしたけれども、モデレーターは6人おりますが、その中から情報公開と政策決定過程への参加、それをぜひ推進してほしいという一般的な提言は出しております。
ただ、これでは私はやはり、終わるということには考えておりませんで、当然、さらに具体的な提言を今後も出すべきだと思っておりますが、実は、ここに大変難しい問題がありまして、そういうふうによい提言を出していきたいんですけれども、私は二つ難しい点があると思っておるわけです。
一つは、普通、そういうふうなプロセスをとろうとしますと、メンバーの方々の意見を聞いて、原案をモデレーターがつくって、それをメンバーの方に返してご意見をいただいて、皆さんで何らかの意味での了解がとれたところで出すと。こうしたいんですが、毎回毎回、出られるメンバーが違うわけです。岩崎さんはたまたま、1回前に出られましたけれども、それでもこれはもう8回目ですから。というわけで、そのプロセスがとれないわけです。
二番目は、実はモデレーター自身も全部の会議に出られないわけです。ご承知のように、これは1回4時間でございまして、月に2回以上やっているわけですが、原子力委員の方は大変ご苦労様だと思いますが、モデレーターのほうも実はほかの職業もありますので、こればかりにかかわっているわけにはまいりません。したがいまして、モデレーターがすべての会議に出て、皆さんの意見を全部くみ取って原案をつくるということは、今の状況では非常に難しいわけです。
そういったことで、どうもやはり、提言というのはしたいんだけれども、なかなかモデレーターのほうがまとめる方法がないというので、弱ったな、というのが実は私個人が思っていた感想だったんです。その意味で言いますと、今の参加された方の有志の提言というのは、ある意味ではタイムリーであったとは思っております。しかし、それが一番いい方法だとは、今言ったように、私は思っておりません。したがいまして、今後、こういう問題をどうするかということにつきましては、この円卓会議自身の運営の仕方、それからモデレーターの選定もそうだと思いますが、そういったことを含めて、さらに事務局側とも相談をして検討させていただきたいというふうに私は考えています。
ただ、そうは申しましても、こういう会議でこれだけ大勢の方が集まる会議ですから、どうしても準備に時間がかかります。したがって、すぐそういった対応ができるということはもちろんお約束はできませんが、少なくとも、この先にそういった検討を私はさせていただいて、ぜひ、少しでもモデレーターがモデレーターらしいことができるような状況に持っていきたいと考えております。以上です。
【西野】 ありがとうございました。
先ほど申し上げましたように、今日はフリーディスカッションに早く入りたいんですが、もう一つ、司会役として気になっていることがございます。先ほどから円卓会議が進行している中で通産省がいろいろなことをやっているという指摘がございました。たまたまではありませんで、今日も通産省の事務方が出ております。通産省の方から一言、短くご報告いただけますでしょうか。
【谷口】 通産省の資源エネルギー庁審議官の谷口でございます。
久米さんと岩崎さんのほうから、円卓会議の最中に利益誘導策について通産省が新たな政策を決めてけしからん、ということでご指摘がございましたので、ごく簡単にご説明させていただきます。
新聞で報道の件については現在まだ検討中ということでございます。
実際には先ほど、東海村の村長の須藤さんのほうからお話がございましたし、資料6の須藤さんのメモにもはっきり書いてございますように、むしろ、そういう方向での対策を強化してくれ、という話も別途、非常に強い要望としてございます。須藤さんのメモには立地地域への対策強化ということで、ややもすると新設や増設に重点が置かれ、既存の立地地域に対して対応が不十分、新規立地地域の住民は必ず既存地域を訪れる、立地地域の恒久的地域振興のため、電源三法の抜本的な見直しを図られたい、というのがご指摘にございます。これは須藤さんだけじゃなくて、原子力の立地地域、とりわけ古くから長い間、原子力の開発あるいは発電にご協力をいただいている地域の首長さん、あるいは住民の方々からの強い要請がございます。現に須藤さんのお話にも言及されました全原協という全国の原子力発電所所在市町村の協議会でも、今後、立地地域の恒久的な地域振興策を確立しろ、という強い要望がございます。それから、県のレベルでも立地県の協議会で、やはり、既存立地地域への電源三法制度等の充実を特に図れ、ということがございます。それから、国会関係の議論でも、特に自民党の政務調査会をはじめとしまして既存地点への地域振興計画あるいは恒久的、長期的な地域振興策の強化ということを強く指摘あるいは提言されております。こういう流れの中で皆様方関係者のご意見をよく伺いながら、来年の予算あるいは法律の改正に向けて検討を進めてまいりたいということでございます。
それから、ついでに、原子力は安いかということでコスト情報も公開しろ、というお話がございましたが、これにつきましては個別発電所の個別コスト、原価につきましては経営情報でございますが、通産省でも、ご案内かと思いますが、標準的な発電所の原価試算をしております。それから、日本だけではなくて、パリにございますOECDの国際原子力機関でも主要先進国の原子力発電コストをほかのエネルギー源、電源とサイクルすべてを含めた比較をしておりまして、どの資料を見ましても国の状況で多少の差はございますが、原子力は相対的に安目だということです。もう一点、大事なことは、原子力の場合には設備あるいは資本の比率が高くて燃料費の割合が全体のコストの2割程度なものですから、石油等のエネルギー価格が上がるに従って−−石油の発電所の場合には6割が大体、燃料費で、天然ガスで5割が燃料費といっていますから、コストはどんどん上がるに対して、原子力発電所の場合は非常にコストが安定しているということです。さらに、エネルギー危機等で供給途絶があった場合に、石油や天然ガスについてはすぐにとめざるを得ない状況もございますが、原子力発電所については十分な時間的余裕がとれる等、さまざまな利点が指摘されております。ありがとうございました。
【西野】 それでは、モデレーター……
【岩崎】 ちょっと今のに。
【西野】 できれば、これからのフリーディスカッションの中でと思っておりますので、ちょっと私の発言を許していただきたいと思います。
今日は原子力と社会とのかかわりに関する事項というタイトルで大きくくくっております。既に基調講演もありましたし、あるいは、それぞれの方々のご意見の発表もございました。私どもモデレーターの役割というのは、ここにおります参加者の意見を公平に取り上げて議論が円滑に進むということでございます。この中には岩崎さん、神田さんのように既に2回目のご出席の方がおられますが、残りは初めてという方でございます。私、モデレーターの進行役といたしましては、特に、繰り返しになりますが、原子力モニター、一般公募の参加者のご意見というのはある意味で非常に大事なものですから、公平にと思っておりますが、どうぞ、ご遠慮なく、また、先ほどから聞いておりますと少し声が、遠慮されて、小さいような気もいたします。大きな声でマイクに、あるいはマイクに近づけてご発言をいただきたいと思います。
それで、できるだけ端的に要点を言っていただきたいということでございます。
先ほどの通産の事務局からの話題というのは今日の話題に入っておりますので、ちょっと岩崎さんの話題はここで終わりにさせていただいて……。
【岩崎】 いや、まだいろいろと。
【西野】 まあ、とりあえず久米さんから、どうぞ。
【久米】 いや、私も今の通産省の方の円卓会議との関係について、それを私が問題提起したわけで、今の答弁は全然、それになってないから、それだけちょっとチェックしたいと思います。それだけです。だから、今のは通産のこれまでの政策をどう進めてきたかという経過説明です。そうだけれども、この円卓会議というのはそういうのを一々、中断してでも根本から討論するんやろう、と思って国民は期待しているのに、いや、これまで自民党がやってきているから、そんなもん、って。そんなことであなた方がおやりになったら、この円卓会議なんかは本当に人気を失いますよ。それだけははっきり言っておきます。これ以上、言いません。
【西野】 ありがとうございました。どうぞ、ご意見のある方。
【有馬】 人間文化と社会と原子力の関係で私がぜひ国民全体で本当に考えてほしい−−この円卓会議はもちろんだけれども−−と思うことは、人類にとってのエネルギーは将来どうしていくかですね。別に原子力に限らなくていいです。本当に石油は50年しかもちません。ウラニウムですら235だけを使えば45年ぐらいです。石炭だけが300年ぐらいあるけれども−−天然ガスはもっと早く終わる−−本当にどうするのか。人口はさらに来世紀の真ん中では100億になるかもしれない。どういうふうにして人類は生きていくのか。このことを真剣にまず考えてほしい。
その上で原子力が必然的に−−私は原子力は最小限必要だと思っています。だけれども、原子力以外にもいろいろな道があるかもしれない。本当にあるんだろうか。皆さんはすぐに新エネルギーとおっしゃる。だけれども、太陽だけを使ったらせいぜい家庭電力ですよ。5キロワットを起こすのに大変なお金が要るわけですね。300万円か500万円かは要るわけです。もう少し技術が進めば安くなっていくと思うけれども、それだってせいぜい自分の家の面積を使って、せいぜい5キロワットですよ。今は3キロワットですね。どうしていくのか。風力。東京の真ん中で風力は利用できませんよ。地力はそんなにエネルギーは出しません。だから、我々はどうしていくか。核融合は相当先の話です。それでも我々やここにおられる方々は生きていけるでしょう。まだ枯渇しないかもしれない。しかし、孫子の代になったら、もうエネルギー源はないものと思わなければいけない。一体、どうするのか。この点を一つ、お伺いしたいです。賛成でも反対でもいいです。どちらの方でもどうなさるかを教えてほしい。もし、この原子力反対をするならそれでいいから、ご自分の家の冷房は切っていただきたい。冷房をつけながら、ぜいたくにエネルギーを使いながらエネルギー問題を議論することはやめていただきたい。自動車もやめてほしい。自家用は持たないようにしてほしい。そのぐらいの覚悟をした上でエネルギー問題を論ずるべきだと思う。リイサクルは大いにやるべきだと思いますね。この点を十分お考えいただきたい。これが第一点。皆さんからお返事をいただきたい−−まあ、ここでいただくことはないかもしれないけれども、それをお返事いただきたいと思っています。
二番目に、公害をどうするんですか。公害をどうしていったらいいか。日本は努力をしました。産業界は大変努力しました。電力会社が特に努力をして、電力から出てくる硫黄化合物は大いに減りました。すばらしく減ったんですね。世界一減っている。ですが、窒素化合物は依然として取れない。NOxというものがどうしても取れない。最もぜん息の原因になっている。これを皆さん、どうするのか。それから、炭酸ガスの問題はいろいろと議論があります。もっと海が吸ってくれるかもしれない。このことは今、研究をしています。今日も茅先生が見えています。炭酸ガスをどうやって固めて海の中に閉じ込めるかというふうなことも考えておられる。この辺でやはり、公害に対する科学技術をさらに進めていかなければならないと思う。それにしても公害をどうなさいますか。石油を燃やせば公害は出ます。これをどうするか。石炭を燃やせばもっとひどく出ます。どうなさるか。それから、発展途上国。中国を発展途上国と言ってはいけないけれども、中国の公害をどうするのか。既に酸性雨が日本に襲ってきています。これをどうするか。近隣諸国と我々は協力して公害を取り除く努力をしていかなければならない。この辺をどうするのか。
こういうことについて円卓会議でいいアイデアが出てくれば私はすばらしいことだと思っています。そして国民がいち早く省エネルギーに努力されるべく円卓会議で推薦、アドバイス、提言したいと思っております。この点を皆さんはどう考えるか、ぜひ、お伺いいたしたい。以上です。
【西野】 基調演説を含めて今また、大きな問題が提起されたんですが、藤田さん、どうぞ。
【藤田】 今の有馬先生のには直接にはすぐには回答できないんですけれども、私の受けた印象を述べたいと思います。ちなみに私は自動車は何年か前に捨てましたし、家ではクーラーは使っておりません。この部屋も扇風機にしたらいいんじゃないかなというふうに思っております。
先生のエネルギーが50年たったらなくなるという、私の印象では、そういう問題の立て方自体が非常に、何というか、人を困らせるものであるというふうに感じます。おそらく、エネルギーは50年でなくなるということの前提にはいろいろな条件があると思います。その条件を、少なくとも主要なものだけでも明らかにした上で発言をしていただきたいと。でないと……
【有馬】 ある程度、今のエスティメーションは、産業がそれほど今以上にエネルギーを使わないだろうというふうにしても、発展途上国が急激に工業化しているんですね。日本だけの問題じゃないんで、発展途上国が日本と同じ……。日本は随分努力して省エネルギーをしているんですね。ですから、日本の国民は随分努力していると私は思う。だけれども、アメリカと比べるとアメリカのほうが5割方高く使っている。それで仮にですよ、日本人と同じくらい中国人がエネルギーを使うとどうなるかというと、アメリカの2倍になっちゃう。だから、こういう点をどうするか。日本だけの問題じゃないんで、世界規模−−さっき、岩崎さんが世界規模で考えろと言っておられた。まさに世界規模で考えなければいけない問題だと思うんです。これをどうしていくかというのは私は本当に真剣に考えているんだけれども、一つは省エネをするよりしょうがない。
それから、藤田さんがおっしゃるように、政策的というふうに評価しただけではない。これは国際的にいろいろな方が、NGOをも含めて評価して、やはり足りなくなるぞ、と言っているわけで、何も日本政府が政策的に脅かしているわけじゃない。明らかに足りなくなる。少しは50年たっても残るでしょう。それは非常にお金を使って、今の2倍、3倍のお金を使って掘り出すということになると思う。今の経済の今の値段ではもう50年ぐらいですよということを繰り返して申し上げているわけですね。だから、もっと高くお金を出すようになれば幾らかよくなるでしょう。この辺を原子力賛成であろうと反対であろうと、ともかく真剣に考えていただきたいと思います。
【西野】 どうぞ、岩崎さん。
【岩崎】 そうですね。私が申し上げたいのは、先ほど、茅先生等々のご発言もあって、私が最初に申しましたことに対して非常に重要だと思いますので申し上げたいんですけれども。
今、有馬さんが人口増加とエネルギー問題をどう考えるか。あるいは気候変動枠組み条約とエネルギーの関係をどう考えるかというご指摘があったと思いますが、要するに途上国における人口増加とエネルギー問題。なぜ人口が増えるかというのも私自身、ここでとうとうと述べていったら大変ないろいろな議論に拡散していくわけです。そして中国は彼らの76%が今石炭に頼っているとかというような状況を踏まえて、いわゆるCO2、地球温暖化の問題と原子力発電の関係をどう考えるか。これについては相当議論してもいいんですけれども、しかしながら、私が原子力政策といいましょうか、発電そのものには否定的な意味を持っているのは人口問題及び中国の石炭政策そのものを含めて私は申し上げているんであって、決して現象的に危ないからということでのみ申し上げているのではないということだけははっきりさせたいと思います。
しかしながら、私が申したいのは、茅先生が率直に述べられて、モデレーターの方々がここまでたくさん出た意見をおまとめになってやるのがいいというふうにお考えだと。しかしながら、二つの点、つまり了解を取っていくこと、あるいは全部にそれぞれが出ているわけではないから非常に難しいというご指摘があった。はたから見ても大変なお仕事で、同情をしているといったら語弊がありますけれども、しかしながら、私が考えますのには、そんな了解などを取らずに率直にこれだけ公平に意見が出たんだから、ご担当の6人のモデレーターが率直に自分たちの意見だということで提言するということは一つ、やっばりないとですね……。じゃ、逆に言えば、どうなるんですかというか、じゃ、言い放しですかというのがいまだはっきりしないということが一つあろうと思います。
と同時に、今、委員長代理が申した幾つかのご発言があったわけですけれども、反映すべき事項が摘出された場合と。つまり、資料1の8に書いてありますのは、やっぱり、その意味がさっぱりわからないんですけれども。もう少し具体的に、反映すべき事項が摘出された場合と……。いや、もう少し単純に言ってしまえば、いろいろと議論してもらったけれども、反映してもいいかなと思っていることは云々と。何か全然よく意味がわからないんですけれども、これはどういう意味なんですかね。やはり、これだけの人がエネルギーをかけて既に8回開いているわけですから、もう少し明確にこれをどういうふうに生かしていくのかをご回答いただければと思います。
【西野】 最初の議論から言い放しになって聞き捨てになるんではないかということが何回か言われておりまして、今のようなご質疑が出ますと、今日の本来の趣旨に少しずらしたいんですが、やはり、それにお答えせざるを得ないと思うんですが。まず、モデレーターのほうから。
【茅】 私が言いたかったのはまさに岩崎さんが言ったのと実はほとんど同じだと思うんですけれどもね。つまり、我々モデレーターとしては何か提言をしたいと思って、実際、それを今までも努力してきているわけです。だからこそ、前々回、その提言をやったわけです。ですが、そういったことをやっているプロセスの中で我々はこれだけの問題を抱えているということだけはわかっていただきたい。
そして、今回、提言が岩崎さんを含めた17人の方から出たわけですが、本当は、そういった有志から出た提言が直接、原子力委員会に出て、モデレーターがただ眺めているというのは正直言ってモデレーターとしては甚だ悲しいんです。だから、我々としてはもう少し積極的にリエゾンをやりたいと。だから、そのような方法がないかということを検討したいということをさっき申したわけです。以上です。
【西野】 原子力委員会からお願いできますか。
【伊原】 ちょっと私は岩崎さんのご発言のポイントを十分につかめなかったのでございますが、先ほど申しましたように、いろいろと円卓会議でご意見をいただいて、その結果、政策に反映させるべきものは必ず反映させるということでやらせていただいておるわけなんでございますが。
【岩崎】 ちょっと失礼ですけれども、私が質問しましたのは、資料1の8、「会議の成果の扱い」という項目で4点、ここに書かれていると思うんですが、「反映すべき事項が摘出された場合、又は、更に検討すべき事項が明らかになった場合」、そしてこれは専門部会にも頼むかもしれないし、関係省庁に検討を求めると。
じゃ、一つだけ具体的に聞きたいんですけれども、もう既に関係省庁に頼んだことはあるんですか。
【伊原】 今までの情報公開について、これはどんどんできることからやっていこうと。こういうことをやっておるわけであります。それから、必要に応じてどんどん通産省なり、科学技術庁なりにこれからも指示をするわけであります。
【岩崎】 指示をしたんでしょうか、もう既に。なぜならば、その次の9に、フィードバックすると。この会議はフィードバックするには、もう今、していないことにはフィードバックもできないんじゃないかと思います。
【伊原】 まだフィードバックの段階に至っておりません。それはおっしゃるとおりです。
【西野】 それでは本題に戻りたいと思いますが、ほかの方。どうぞ、神田さん。
【神田】 先ほど、有馬先生がお話になった50年先というのは、まさに実は今日も続けているんですが、京都大学の大学院生たちにエネルギー政策学セミナーというを連日、朝9時から、本当は5時に終わる予定が7時、8時までやっています。これはどういうテーマでやっているかというと、「2040年の世界」というので、一人が1時間発表して1時間討論するというのを全員の学生に必須でやらせています。それはどんなものがテーマに取り上げられているかというのを例を挙げますと、人口問題、食料問題、廃棄物、環境、エネルギー、そのほかのもの。それから海洋というのを取り上げた生徒がいます。それから、労働条件、女性の権利と非常にいろいろなことを各自が好きなテーマを選んで、「2040年の世界」というのを今日も今もやっている最中です。
それを見てみますと、本当に2040年というのはちょうど今の学生たちが定年を迎えて一段落する、仕事がおしまいになるときに自分たちはどんな世界に生きているだろうかというのを演習してみようというので、初めは「1時間も話すことはありません」と言っていた学生たちが「もう1時間たったんですか」と言いながら……。1時間の討論というのは昨日も、1時間の討論で打ち切りたかったのに、一つのテーマごとに1時間では終わらないと。そういうことを今やっている。このことで、だんだんわかってきたことは……。学生たちがわかってきたことは、これであと2日間やりますが、その後、みんなが自分たちが描いた2040年に向かって、今、何をすべきかというレポートを書かせる予定なんですが、それまで考えていた世界が全然変わってきたというのが少なくとも昨日の学生たちの印象です。
現在の視点に立って、今、自分たちがどうなのかというんじゃなくて、2040年に自分たちはどんな世界に生きているのかと。それから、2040年に向かって今、自分たちが何ができるんだろうか。そのための責任は何があって、何をやらなければいけないかというのをやっていくと、その中の一人がエネルギーの問題を取り上げました。それまで、彼は反原子力だったそうですが。出身はもちろん原子力の出身者なんてほとんどいませんで、エネルギーというのは金属学とか、機械工学とか、経済学とか、法科とか、そういうのを出た連中が集まって「2040年の世界」をやっているわけです。彼はそれをやっていながら、今はしょうがないんだということに至った経過を説明しておりました。その次に、じゃ、2040年の先のエネルギーは一体、何なんだろうというのを不安になってきて、2040年までのエネルギーという宿題で1時間討論したけれども、やっているうちに2040年から先のエネルギーはどうなるんだろうと非常に不安を覚えてきたということを話していました。
今、私たちはもちろん、問題を回避する、さっき藤田さんが「そんな設問の仕方というのはおかしいんじゃないか」とか「我々を困らせる」と言われるけれども、本当に大学院の学生たちで、これからエネルギー問題を真っ正面から取り組んでいこうと思って気合を入れて集まってきた100人ちょっとの京都大学の学生たちは、本当に自分たちが定年になるまで、あるいは子孫に対してエネルギー問題をどう考えるべきかということを本当にまじめに取り組み始めた。自分たちはその一期生であるというんで今、気合が入っているわけです。その議論の中で、それは問題は困らせるんじゃなくて、自分たちが一期生として、日本あるいは世界で活躍していく上で、それは非常に重要だということを考え始めた。ということをちょっとね……。
もう一つは後にします。
【西野】 後にしていただきたい。どうぞ。
【宅間】 宅間と申します。今の神田先生の高尚なお話とはまたちょっと違ってしまうのですけれども。
例の省エネの話、省エネ、省資源の問題なんですけれども、今、お話を伺っていますと、確かに身の回りのエネルギーを使わない、あるいは資源を使わないというのはこれは結構なんですけれども、現在の我々が住んでいるこの社会というのはほとんどが人工環境なんですね。技術でつくられた人工環境なんです。ですから、食料にしても、衣服にしても、何にしても、ほとんどが技術がつくり上げられた環境、社会生活をするための環境というのは技術でつくられた人工環境で成り立っている。ですから、身の回りのそういうものを節電したり、省エネしても、それだけでは全然おさまらない。ですから、また人口が増えていく中でそういう人工環境を作り上げ、維持していくためには、やっぱりそれだけエネルギーがかかる。だから、それを構造的にそうしたエネルギーを省エネしていかなければいけない。あるいは省資源をしていかなければいけないということです。
いい例が石油ショックのとき。あれは外圧によって、外部要因によって企業もみんなが省エネを図り、省資源を図ったわけです。じゃ、今後も外圧がなければだめなのかというと、これは情けない話で、やっぱり我々は内発的に自分たちで省エネ、省資源をやっていかなければいけない。それは教育だと思います。だから、改めて言うようですけれども、先生、中教審の答申の中での、教科を超えた、科目を超えたエネルギー教育、資源教育というものは、それから食料、人口の問題、こういうものをぜひ取り上げていただきたいなと思っています。
それからもう一つは……。
【西野】 すみません。区切って一つだけで。
今、たまたま、中教審の話が出ましたし、私は先ほどから繰り返しまして、原子力モニターないし一般消費者の方にぜひ、ご発言をと申し上げております。気後れせずにお話をしてほしいと思うんですが、とっつきにくいようであれば、先ほどから問題になっておりますマスコミの問題であるとか教育の問題、この辺は一番、とっつきやすい話題かなという気もいたします。非常に大事な話題と司会役のモデレーターとしても感じております。いかがでございましょうか。
藤田さん、いかがですか。先ほどと違う話題ですか。
【藤田】 ええ、教育の問題じゃないんですけれども、いいでしょうか。
【西野】 どうぞ。
【藤田】 先ほど、神田先生が、私が困らせる、というような発言に対して言われたわけですけれども、私が「困らせる問題だ」と言うのは、前提となる条件がはっきりしていないという点で困らせる質問だ、ということであります。
それからもう一点、先ほど、神田先生が、情報遅れ、事故隠しの問題ですね。それに対して10分や20分というのは多少遅れても、そのものは事故隠しにはならないケースがある、というふうな発言をされたように思いますけれども、それは「もんじゅ」の件についておっしゃったわけでしょうか。
【神田】 いえ、京都大学もしょっちゅう、マスコミと地元にいじめられておりまして、私が当事者になることがよくあるんです。その経験からいって、ある市町村でファックスを一斉に入れますと向こうが話し中であったと。届いたのが熊取町には例えば1時15分に着いたのに、貝塚市には1時20分について5分の遅れがあったということに対して、地方自治体とかマスコミから、一斉に報道すべきなのになぜずらしたのだと。向こう側のファックスが話し中だったから通じなかったと。そういう事実が一つとか。
それから、書いたことを正確に書こうと思ったら、わからないと言われる。それで、わかりやすく書いたら正確ではないと言われる。科学技術庁に出したあらゆる報告は地元の地方自治体に送れ、地方自治体に送ったものはすべて科学技術庁に送れ、という約束になっているんです。同時に報道機関に送らなければいけないんです。そうすると報道機関にもわかり、地元にもわかり、科学技術庁にもわかる日本語というのはないんですね。科学技術庁にわかるようにしようと思ったら、法律第何条の何とかの項に基づき、何とか何とかの指示何とかに基づきと書くんです。ところが、マスコミはそんなのはわからない。地元に至っては法律なんて使わずに説明せよと。これで三者に出すファックスならファックスが同じになるように統一して、間違いないなとやるのに簡単に30分はかかっちゃうんですね。30分たって知らせたというのはどういうことかというふうに、地元の方はおっしゃらないんですけれども、マスコミが言うんです。「30分、何をしていたんだ」と言うけれども、その現場に立ってみれば必死の努力をして30分で文書を上げる。前にも言いましたけれども、今回の地震のときも5時46分に地震が起きました。第一報をまとめたのが、それからわずか30分後の6時15分には私はレポートをまとめまして、20分には一斉に全国にファックスを流しました。ところが、その文章でも地震の報告で、京都大学の原子炉は一番サイトに近かったものですから、こうこうこうであったというのを流しても、ある人は全然わからないわけですね、その言葉の意味が。震度が幾らというような言葉は後になって、一週間後にはみんなわかったんです。震度とは何かと。それから、ガルが幾らだったと。そういうのじゃなくて、どうだったかと。もうちょっとおれたちにわかるように書け、と言われるんですが、そのときに非常に苦労した。それから、そういう種類のことで我々が事故隠しを全然しているんじゃなくて一生懸命やっているのにもかかわらず、そういうことを言われることがあって、そのことについてだけは「もんじゅ」を弁明したいと。こう言っただけです。
いや、「もんじゅ」がどうなのかはよく知りませんよ。だけれども、「もんじゅ」の情報隠しというのはよく私も実態は知らないんですが、もし、そういうのであったならば、そういうことも起こり得るという気が……。自分たちのときに情報隠しと言われたりすることがあるから、マスコミは時間を争って、それから、おれにわかるように書け、と皆さんがおっしゃる。特に地方自治体の町会議員に出す文書というのは大変なんです。全町会議員に今、実験所でスクラムでも起きようものなら、全町会議員に出さなければいけない、ということが町会議員から申し出があった。ところが町会議員の方というのに全部わかるような日本語を書けと言われても、これは大変なことです。その日本語はすべて役所が地方に出すんなら、先におれにもみせろとおっしゃるし、それは大変な目に遭っているということをある程度理解してくださいということです。
【西野】 神田さん、どうもありがとうございました。
今日、いろいろな議論が行われておりますが、先ほどから裏返しておりまして、こういう聞き方をしてみたいと思うんです。情報公開ということが言われておりますが、一体、どういうような言葉で、どういう情報が流れればいいと。特に今まで原子力にあまり関係がなくて多少関心があったという方はどうお考えですか。どなたか、ございませんか(発言者なし)。
それでは、そういうことを頭に置きながら、お考えいただくことにして、ちょっと先ほど、宅間さんからご発言がありそうだったんで、どうぞ、宅間さん。
【宅間】 例の省資源の話なんですけれども、その前に、今の神田先生のお話は本当に私どもも原子力で立地しておりますときに身につまされております。そこをどういうふうに改善していったらいいんだろうかというのは、本当に原子力の現場におる者としては、もちろん素早く通報連絡していくのが一番いいんですけれども、そのときにあちらとこちらで時間が本当に数分の遅れでも問題になる。それから、内容がちょっと違っても問題になる。それから、わかりやすさの問題。そういうことでいつも悩んでおりまして、これは本当に永遠の課題かなと思いながら、でも、できるだけ早く情報を通報連絡をし、それを社会的にも早く理解していただく努力をしている。これは今、ひたすらやっております。ただ、何とかして、もう少し構造的にうまくいかないかなという気はいたしております。
それからもう一つは、私が話したかったことは自然エネルギーの話なんです。
よく自然エネルギー、太陽エネルギーとか風力というのは高いといわれます。もう少し技術が進歩すれば当然、安くなると思うんですけれども、なぜ高いかというところがあまり論議されてないんです。あれは資源をうんと使っているからだと思うのです。要するに薄いエネルギーで、太陽から降るエネルギーはただですから、これはだれでも使えるんですけれども、ただ、それを集めて加工して電気エネルギーにする、その加工過程で物すごく資源を使っているんですね。電池をつくってずらっと並べて土地という資源を大量に使っちゃうわけですね。したがって、省資源という面からは非常に非効率。しかも、これは10年か20年したら、みんな、この電池は廃棄物になるわけですから、資源効率という点からは非常に効率が悪い。したがって、そういう自然エネルギーというのはある程度までは当然必要で、コストは下がるし、市場経済の中で必要なところにはどんどん使っていくべきだと思っていますし、電力会社もそれに対する技術開発をどんどん進めておりますけれども、やはりベースになりますエネルギーというのは原子力を一つの核として進める必要があります。もちろん、原子力で全部やるということは、これまた脆弱性があります。多様性の中に強靱さが、フレキシビリティーの中に強靱さがあるわけですから、多様性の中での一つの原子力というふうに考えていただければよろしいと思うんですけれども。すみません、ちょっと長くなりました。
【西野】 どうぞ、ご意見のある方。
【鳥井】 鳥井でございます。しゃしゃり出てきて大変申しわけないんですが。
先ほど、有馬先生が提起された問題について、私はどんなイメージを持っているかということをお話をしたいと思います。
大量のエネルギーを消費したからこそ、地球上に50億人、60億人が暮らせるように実はなってきたんだろうと思うんですね。石油エネルギー、化石燃料の資源の問題ということを考えますと50年から100年というオーダーで考えると、どうせいずれなくなるわけです。そのときには戦前の10億とか、そういう人口へ減っていくというのが自然の姿だと思うんですね。問題は減っていくプロセスなんだと思うんです。急激な減り方をしたときには何が起こるかというと大変な紛争と争いが実は起こるんじゃないかという感じがするんです。私はどうせ減るんだけれども、こういうふうに落とすんじゃなくて、なるだけ緩やかに悲惨な目に遭わないで元の自然の状態に戻っていくと。そういうプロセスを何とか探さなくちゃしょうがないんだろうというふうに実は思っております。つまり、50億、60億をいつまでも保つというような、100億を保つというようなことは不可能なんだろうというふうに考えております。
【有馬】 恐竜にならなきゃいいよね。恐竜があれだけ繁殖していたのが一時期にバタッといなくなるわけですね。人類もそうなるかもしれない。このことにならないように今、おっしゃったような徐々に経済を下げていく、エネルギー消費を下げる、食料の消費を下げていくというような格好で人口も下げていくことができれば一番いいですね。
【西野】 モデレーターも発言をしていいということになっているので、発言されたんだと思いますが、私もあまり発言しないでおこうと思っていましたが、同じことを考えておりました。
環境倫理学というようなことを言う人がいます。そういう人たちは人類の歴史が10万年ぐらいあるときに、人類の生存を10万年ぐらい先まで考えてはどうかと。そういうことを言う人がいます。そのときには完全に資源はリサイクルしなければいけない。おそらくエネルギーは太陽エネルギーに頼らざるを得ない。そうしますとおそらく何人の人口が養えるかというのは逆算できるんですね。そこへ移る過渡期をどう乗るかというようなことが問題になっているような気がします。それは私の勝手な考え方で、おそらく過渡期に対する問題であって、そうしないことにはどこかで人類が死滅するであろうということははっきりしているような気がしております。よくわかりませんが。
余計なことを申し上げました。大変恐縮ですが、一般参加者の方にこちらから指名してよろしゅうございますでしょうか。齋田さんから何かご発言を。教育問題でも何でもいいですから、せっかくの機会なんでぜひ。いや、ご無理なら結構でございます。
【藤家】 一つよろしいでしょうか。
今日、6人のモニター及び一般参加の方から大変、我々も参考にしたい、あるいは対応したいお話を聞かせていただきました。
齋田さんがいろいろとお話しになった中で耐震問題をおっしゃったと思っているんですが。ご承知のように、阪神淡路大震災の後、原子力安全委員会を中心にこの問題については積極的に取り組んでまいって、ある種の報告が出た段階でございます。これは一般の方々にご紹介すべく、今、努力しておるところでございますので、おそらく情報に接せられるチャンスが多いですし、もし、ご必要でしたら対応できるように考えたいと思っております。
それから、諏澤さんのお話は大変参考になるお話として承ったわけであります。
西崎さんは、二度、お目にかかるわけで、いつも我々も自分が若いときにどう考えていただろうかと思いながら参考にさせていただいております。
少し厳しいお話をされた萩原さんについて、途中で原子力を必要だとは思っていますというお話があったので、その辺を。
今日、お話しになった中で、消費地域と生産地域の問題、これは須藤村長さんが言われたことである程度、ご理解いただけたと思います。それからコスト問題は通産省のほうから、世界的にどういう評価をして原子力の発電コストがどうなっているかというお話もあっただろうと思うんですね。他のエネルギー、新エネルギーについてはここでいろいろと議論が出る中で、やはり新エネルギーの研究開発は大事なんだと。特に太陽を中心とした新エネルギー開発は大事なんだと。しかし、それで済むのかという議論が量的あるいは質的な観点から、これまで議論されております。この辺も、ここの議事録もありますし、いろいろな文献もあるかと思っております。反対意見や問題点を指摘されても強引に押し通している。この辺はちょっと私もよくわからないところがありますけれども、少なくとも原子力にかかわっている人たちは20代から60代までいろいろな対象の人がいます。それぞれにやはり自分の立場で努力をしている。その辺がどこまで見えているか。おそらくは宅間さんの発電所では本当に20代の前半の人が発電にずっと携わって、まさに運転の安全を守っておられる方が相当おられるわけなんですね。そういう人の存在も我々は見ながら話をしていく必要があるかなと思っています。政策への展望、これはいろいろとございますので、これについては今日もご議論が随分進んだかと思っておりますけれども、教育問題、情報公開、他の国の問題、廃棄物。ただ申し上げておきたいのは、易しい問題が残っているとは私自身も考えておりません。原子力を続けていく上では相当難しい問題があるわけであります。それは皆さんのご理解とご支援を得ながらやっていかなければいけない。したがって、そういう開かれた場でのご議論を通して反映すると。先ほど委員長代理が申し上げたような姿勢で臨んでいるところであります。
【田畑】 ちょっとよろしいですか。
先ほど藤田さんのほうから、将来の原子力技術について消滅処理の話と医学の分野への利用の可能性についてどうかと。こういうご質問があったわけで、ちょっとお話ししたいと思います。
ご存じのように、原子力は大変広い分野の技術です。原子力発電でエネルギー利用ということが中心によく話が出てまいりますけれども、実際には非常に広い分野をカバーしているわけです。医療の分野はそのうちの重要な一つになるわけです。医療の分野への利用は原子炉とRI(ラジオアイソトープ)、加速器ということです。原子炉の場合だと直接、間接という利用になるわけです。原子炉でアイソトープを生産して、それを医学の分野で治療とか診断に非常に広く使われております。今日は神田先生がいらっしゃいますが、原子炉を直接、中性子を使って医療の分野で、脳腫瘍とか悪性黒色腫の治療に使っており、ボロンテラピーと呼ばれています。これは原子炉特有の利用で、原子炉でないとできない非常に難しい脳腫瘍の治療がやられています。それから、加速器は非常に広くたくさん使われているわけです。がんの治療に使われています。最近は重イオンのビームを使って非常に従来難しくて、なかなか手につかなかった治療がだんだん実現してくるという状況です。医療の分野は非常に身近で、また、非常に重要な分野です。将来ますます伸びていく技術だと考えています。
それからもう一つは消滅処理のお話ですが、高レベルの廃棄物の処理ということでは、現在、地層処分に努力を傾けています。将来の基礎的な研究としては、有馬先生からもご指摘がありましたけれども、群分離とか、あるいは消滅処理と。これは基礎研究として非常に重要であろうと。それでいわゆる廃棄物が非常に重要な……。先ほど、宝の山だということを有馬先生はおっしゃったんですが、過去にも産業革命の当時、コールタールが余分で非常に困るというのが−−この前の円卓会議で伊達先生がお話しになったんですが、非常に重要な資源の宝の山であった。それから、銅の精錬でもかつてはいろいろな公害を生んだわけですが、その中に硫黄の他、貴金属、砒素など非常にいろいろな貴重なコンポーネントが入っているんですが、それが今は全部分離されて、それぞれ有効に利用されている。それから、ちょっと話が飛びますけれども、中国で先ほど、排煙からの酸性雨の話が出ており、大変困るわけですが、最近、原子力の技術としてエレクトロンビームを使って、排煙を処理するとNOxとSOxが肥料に転換して、それを有効に使うことができると。そういう技術開発が進んでいます。高レベルの廃棄物についても、やはり、中に貴重な成分元素がたくさん入っているわけです。現時点ではいろいろと難しい問題があるかと思いますけれども、長い先のことを考えますとそれらが有効に使い得る可能性を持っています。そういうふうなことで、廃棄物は長い目で見ると有効に使うことができ、場合によると宝の山にもなると思っております。以上です。
【西野】 先ほどからいろいろなことを言っておりますが、西崎さんは先ほど、ご意見を書かれたものの中で国民投票について触れておられますね。萩原さんは原子力政策への要望というので国民の意見の反映についてと。同じテーマをちょっと挙げられておられる。西崎さんはかなり具体的に書いておられますが、何かつけ足すようなことはございませんでしょうか。
【西崎】 先ほど、西野先生のほうから、逆に情報公開して何が欲しいんですかと聞かれると非常に胸が痛いんです。といいますのは、我々はある意味ではオウムのように、情報公開せえ、情報公開せえ、と言いますけれども、じゃ、お見せしますよと逆にぽんと書類を渡されても我々はわからない。市民団体の方とか学者の先生方とかはわかるでしょうけれども、我々はそんなものを見ても何が書いてあるのかはわからない。これは食糧費の公開のことでも一緒だと思うんですね。食糧費の公開でいろいろな伝票とか何とかを見せてもらっても我々はわからないけれども、それを新聞記者とかマスコミの人がいろいろと見て、それなりに調べていただいて報道することによって、食糧費の実態というのはこういうことで、こういう問題が抱えたりとか、逆にこういう点は実際、言われていたことと違って、どうもなかったとか、そういうことがわかるのと一緒です。私なんかはある意味では何も考えないといったら失礼ですけれども、どういうものを欲しいというふうなことを高尚に考えて要求するというんじゃないんです。むしろ、何も無知だから、情報を一つでも出してほしいと。それを有識者の先生方とかマスコミの方が見ていただいて、チェックしていただいて、それを国民に逆にわかりやすく……。直接、そういうのを提示されましても、私なんかは全然活用もできないです。だから、そんなマスコミばっかりに頼っていてどないするんねん、というようによく言われるんですけれども、弱い市民にとってはそれが頼みの綱であり、直接的に役所からの情報というんじゃなくて、どこかを間接的に通してもらって我々に入るという方法しか認識できないのじゃないかなというふうに思います。
【西野】 萩原さん、先ほどの中に教育についてとか、国民の意見の反映についてというようなことを要望という形で述べられましたが、議論を通して聞いておられまして、何かつけ足すようなことはございませんでしょうか。
【萩原】 私も今の方と同じようなことなんですけれども、やっぱり、私も例えば、先ほどから聞いていて、原価がどうのとか、何%だとか、そういうふうに言われても全然ぴんとこないんですね。やっぱり、そういうことは……。今、例えば「もんじゅ」の事故とか、そういうので不信感というのがかなりあると思うんです。例えば科学技術庁の方に、「これこれこうです」と言われても何かうのみにしにくいというか、「本当?」なんてちょっと思ってしまうんです。やっぱり、マスコミの方とか、そういった専門的な知識を持っている方とか、ジャーナリストの方とか、そういった方にいろいろな意見を述べていただいたのを聞いて、そこでワンクッションを置いて初めて理解できると思います。
【西野】 ありがとうございました。神田さん、どうぞ。
【神田】 さっき休憩時間に萩原さんとちょろちょろと立ち話をしたんですけれども、萩原さんの質問の中で「他の国の状況について」というのがありますね。このことについて、ちょっとお話をしたんです。
実は外国、特に日本人の環境に影響を与える中国はどうなっているんだということで、実は先日、中国がロシア製の原子炉を2基ほど入れるということについて実態を調査し、それを阻止する方法に何があるというのを言ってこいという大臣命令で急に行かされまして、実態調査をしてきて、その怖さというのにびっくりしたんです。
実は中国にも今、原子力がどんどん入っている。日本がこういうことを一生懸命やっている間に、よその国の原子炉がどんどん入ってきている。一番問題になったロシア製の2基について、しかるべき権限を持って交渉してもよろしいということでしたので、いろいろと交渉してきたんですが、現金を払わなくてもいろいろと農作物とか何とかで、あるいは衣類を提供すれば、ロシアはそのバーターといいますか物々交換で原子炉2基をくれると。我々は今、エネルギーが欲しいんだから、それが安全かどうかということについてはその次で、もし事故が起きたような場合には、みんなでそのときには運が悪かったと。極端に言うとそういう感じですね。それから、損害賠償法の話になって、損害賠償とは一体何かといったら、損害賠償という概念がなくて。それから車検という概念がなくて、要するに定期検査という概念がなくて。とにかく何日間か中国の偉いさんたちと大分議論してきたんですけれども、実態はもうそういうことが進んでいるんです。
それで、台湾とかインドネシア、タイ、随分いろいろな国を回りましたし、また近く行くことになっているんですけれども、そういう国の人たちと話していると、我々が一生懸命、安全ということで自分たちの国だけを守ろうという……。極端に言うと、先ほど、おっしゃっていた自分の国だけという話じゃないという話ですけれども、我々は一生懸命、これをやっているんですけれども、外国のほうで話していると随分テンポも違うし、ものの違いがすごくあるんです。それでも現実として原子力発電所が導入されつつあるんです。それを見ながら、おれたちは何なんだ、という気がしている。それが一つです。
その次、そのことを報告書にまとめて出版されているんです。通産省のほうから「地域の何とかを目指して」とか、「アジアの何とかビジョン」とか、そういうのが出るんですが、確かに通産省でああいう報告書をまとめていただいて本になっても一般市民が見るチャンスがあるんだろうか。我々は一生懸命、調査しましたので、報告書をまとめて、通産省がどこかで出版されまして、霞が関に行きますとダッと並んでいる中のところのエネルギーのところに行けば、アジアの問題のことがたくさん出ております。しかし、先ほどから情報公開、そういうことを知る方法がないと言われると、確かに、ああいう本は売れてませんから、どうなっているんだろうと感じます。
そういうことから、もう一度、いいですか。一つは、他の国の状況についてということで、今、非常に調査が大分進みました。そのことをまとめて通産省から出版しています。その情報の公開のことについて、実際はそのまま、ありのままに公開されているんだけれども、役所だけが出版物にして報告書でぽんと出しているから、それは一体、国民に公開したことになるんだろうかということは今、聞きながら、もっと別の方法があるなというふうに思っているということです。
【西野】 ちょっと今、前からずっと出ている議論なんですが、近隣諸国の原子力なりエネルギー問題というのが常に出たり入ったりしております。ちょっと事実関係がもしわかれば、今、アジアにどれぐらいの計画が進んでいるかというのがわかりましたら、口頭でごく簡単にご報告いただけますでしょうか。
【宅間】 もしあれでしたら、用意するまでの間、ちょっと一言、よろしゅうございますでしょうか。今の近隣諸国の原子力の話なんで、現場から一言、事実だけをお話し申し上げたいんですけれども。
私が柏崎の発電所長でおりましたときに、アジアの諸国から今でも続けてきているんですが、何度も何度も、これから自分たちの人口と経済成長を支えるためには、どうしても原子力が必要なんだということで勉強に来ておられます。そういう方々が本当に一生懸命になって来ておられますし、私どもも向こうの国に行って、いろいろと技術協力というか研修なんかをしておるんです。その中の一つにWANOという組織が−−これは組織的に行われておりますが−−あります。これは原子力発電事業者協会といいまして、チェルノブイリの事故以降、今までIAEAという政府間ベースの技術協力といいますか、安全性の確保とか、そういうものがあったんですけれども、それから核不拡散の問題があったんですけれども、WANOというのは本当に原子力発電所を運転している当事者同士の情報交換であり、研修であり、お互いの現場の人と人とが交換しあって、よその発電所を見て、ここはいいじゃないか、ここはぜひ取り入れたいとか、ここはあなたのお国はちょっとこうしたほうがいいよとか、そういう交換が行われています。それが一つの原子力の安全文化というのを国際的に共有していくという大きな役目を持っているんです。そういうこともあるということをぜひ、ご承知していただければと思います。
【西野】 岩崎さん、どうぞ。
【岩崎】 私は二点、申し上げたいんです。
一つは情報公開。先ほど、委員長が今後、原子力政策に反映すべき事項が摘出された場合ということについて、情報公開については重要と考え、これをやっているというようなご発言がちょっと聞こえたように思いました。今、モデレーターの西野さんのほうから、何が情報公開されてしかるべきか、あるいは希望があるかというお話もありまして、そこらについてもう少し議論したく思います。
もう一つは、有馬さんあるいは鳥井さんのことで、今、特に開発途上国で原子力発電がどういうふうに進んでいるかというデータを探しているというような状況の中で、結局、私たちが今、今日、この地球上において問いかけられている問題は確かに複雑にして難しい問題です。
人口問題とエネルギー問題について少し申し上げたいんです。
日本は最初の人口統計が行われたのは1720年で明治維新まで148年間、日本は 3,000万人と同じ水準を保っていたわけです。明治維新から今日、1996年までは128年間ですか、それしかたっていないにもかかわらず、人口は実に4倍に伸びたわけです。これは非常に驚異的なことであります。したがって、日本ないしは先進国すべては都市化、工業化を推進するに従って急激な人口増加を見るわけです。どこも、日本も含めてですけれども、その急激な人口増加の資源あるいは食料、それを開発途上国に求めていったんです。したがって、開発途上国では環境とそんなに共存して生きたにもかかわらず、先進国によって環境が壊されるわけです。壊されることによって人口増加が起こるわけです。ですから、開発途上国は何か、とにかく子供をつくりまくっているんだというふうに対岸の火として我々は関係ないように自覚していますけれども、長い歴史の中では我々が最初に人口増加を急激に起こし、その資源を途上国に求め、環境を壊したがゆえに彼らが今、まさに人口増加を続けているわけです。結局、それを確かに今、日本は女性一人当たり、一生に生むのは1.46という極めて少ないし、2010年ごろから日本の人口は減り出すわけですけれども、途上国においては急激な人口増加をしていると。それはさっき言った、環境が壊されると。
ところが、私自身、カイロの94年に開かれました人口と開発会議の政府代表団として人口問題についても参加したんです。いずれにしても、そのような途上国の人口を減らすには結局、女性の地位の向上というようなことが、あの会議の宣言に出てくるわけです。それはどういうことかといいますと、結局、インドのケララ州なんかが適切な事例として指摘されているんです。ケララ州は非常に貧しい状況にあるにもかかわらず、女性の生む数は1.90という先進国よりも低いような場合も見られるわけです。なぜならば、つまり、貧困であれば人口増加が起こるという一般的な通説を破って、女性の地位が非常にケララは高いんですね。高いがゆえに人口が抑制されているということがあるわけです。ですから、将来の人口がこれだけ増えるというようなことで、さらに例えば原子力を加味することによって、結局、環境を破壊していくこと。このことがさらに不安を呼びながら人口を増加を呼び込んでいくというプロセスに……。つまり、悪循環を悪循環の形でさらに解決しようとする施策そのものが既に行き詰まっているという状況だと思います。
ですから、ここまで長年、人類の歴史がつくり上げたものを確かに一挙にもとに戻すわけにはいかない。しかしながら、そういうような状況を踏まえて、足りないんだからこうするということじゃなくて、いかに全体的な構造の中でそれを消費していくか。このことが今求められているんであってですね。したがって、原子力をいかに正当化するかじゃなくて、いかに減らしていくかということが主要な課題です。ですから、私に言えば短期的な、短絡的な見込みによってこういうふうに増やさなくちゃいけないんじゃなくて、もっと長期的なスパンの中で現在の時点を考えなくてはいけないと思います。
とりわけ、結局、そういう原子力発電所と消費地、都市と農村といいましょうか、地方が分断されているという施策そのものが、そういう過剰消費を呼んでくるということが結局は、海外の資源を求める、人口増加が起こるという悪循環に結びついてくるわけですから、結局、東京に原発をと言いますけれども、要するに我々が支えられている生活条件というのはいかに身に近づけてくるかですね。こういう政策そのものを求められている。そういう中で結局、現代社会において求められているのは、今までの延長上ではなく、この地球が限られた資源、限られた空間であるということに基づいて、新しい価値、新しい生活様式、新しい経済社会システムを築くかと。でなければ、いずにしても、悪循環を続ける。ですから、転べ痛い、痛いから何かするというような近視的な形で問題の解決しないということを申し上げたい。ですから、例えば途上国でこういうことが起こっているというようなことをデータとして出して、だから、これが正当なんだというような論理ではなくて、なぜ途上国がそういうふうに原子力を必要とするか。それは国力の問題、世界政治の問題ですね。そういうような広い文脈の中で考えなければいけないと思います。
最後といいますか、情報公開については、委員長代理に執拗に食い下がりたいわけですけれども、しかし、この問題は非常に要でもありますので、情報公開が重要であるということであれば、今後、こういうことについて情報公開としたいというご表明があれば非常にありがたいと思います。
【西野】 先ほどモデレーターから役割はどうなんだという話が出たんですが、この席で出たことをできれば何らかしたいと。私も個人的には思っております。そのときに出ないことというのは取り上げられないものですから、今、神田さんから、たまたま、中国の原子力の話があったんで、とりあえず事実関係として事務当局で調べられたようなんで、ご報告をいただきたいと思います。
【事務局】 科学技術庁原子力局長の岡崎でございます。
世界で今、原子力発電を行っている国が約30の国あるいは地域がございます。全体の総発電電力の約17.5%が世界で見ますと原子力発電であるわけであります。
その中で今、ご指摘がありましたアジア諸国でありますが、かなり国によって原子力発電の状況が違うわけであります。かなり原子力発電を進めている国として韓国が運転中が862万キロワットで全体の発電電力量の35%程度。あるいは台湾が運転中が514万キロワットで総発電電力量の31.7%。この2つの国、地域が大変、原子力発電がアジアでは今、進められている国であるわけであります。それ以外に中国が、今、運転中が3基であります。総発電電力量の1.5%でありますけれども、現在、中国は大変意欲的にこの原子力発電所の建設計画に取り組んでおるというように先ほど神田先生からもご指摘がございました。一部の資料によりますと2050年ぐらいに、随分先でありますけれども、3億から3億5,000万キロワットぐらいの設備を目指すという記述もございます。それ以外にインドネシアあるいはタイにおきまして原子力発電を導入するかどうかということについて、今、真剣に取り組んでおるというのが現状であろうかと思います。もちろん、それぞれの国のよって立つエネルギー事情はそれぞれ違うわけでありますので、一概にここで論ずることは非常に難しいと思います。
一点だけ、ご紹介申し上げたいと思いますが、この4月にモスクワで原子力発電の安全に関するサミットが開かれましたけれども、その際も今後、アジア地域における原子力発電の問題について、世界各国の首脳間の、そういう認識も一致をして、この秋に東京でアジア地域におけます原子力発電の安全に関する国際会議を日本が提唱して開き、ぜひ、原子力に関する安全の意欲あるいは意識について高めていただくような取り組みをしていきたいと思いますし、具体的に通産省あるいは原子力委員会でもアジアとの協力のあり方について検討を進めておるということを申し添えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【西野】 時間も迫ってきております。本日の討議は大体、この辺で打ち切りにしたいと思いますが、この際、ぜひというご発言がございましたら、一つ二つ。まず、伊原さん。
【伊原】 伊原でございます。
先ほど、久米さんの基調発言の中で「私が意見が変更したことがおかしい」と申しておられたんですが、久米さんはお帰りになったんで、よくわかりませんが、立地審査指針の考え方についてということでございましたら、内田秀雄先生の20年前のご説明と基本的に変わっていないと。こういうことを申し上げておきます。
それから今一つ、先ほど、萩原さんから「原子力発電所を過疎地に置くのは事故の被害を少なくするためという考え方はおかしい」とおっしゃいましたが、そのとおりでございます。事故の被害を少なくするために原子力発電所を過疎地に置くという考え方はございません。これをはっきり申し上げておきたいと思います。
【西野】 あと一つぐらいならお受けできると思います。有馬さん。
【有馬】 情報公開の件の中の一番重要なことは、事故なり故障が起こったときに、先ほど非常に難しいとおっしゃっていたけれども、しかし、段階的に発表されたらどうかと思うんですね。事故が起こったよ、あるいは故障だよ、ということは速やかに言って、その次に調査はこうだ、というふうなことで段階的になるべく早く公表していかれたらどうかと思います。
それからもう一つ、国民が非常に心配していることはやっぱり地震ですね。ですから、断層は本当に充分調査をして、ここのところは断層からどのぐらい離れているとか、この断層は当分大丈夫だとか、断層がやられても深度7までだったら十分いけるとか、そういうことについて国民に、あるいは市民になるべく早く伝えてあげたらばいいんじゃないかと思います。そういうデータはあるんですね。ある程度あるんだけれども、あまりよく知られていないので、なるべく知らせるという努力をおやりになったらいいと思います。
もう一つ、最後は、いろいろな人が原子力発電所を見たいという人がいると思いますので、なるべく大勢の人に……。今も随分努力をしておられると思うけれども、なるべく大勢の人、特に新聞記者などにはひっきりなしに見せていただきたいと。その周りにガイガーカウンターでも何でも持たせて、自分で測ってもらって、温泉に行ったらどうかということをよく自分で確かめてもらう。温泉に行くと物すごいガーガーなる。だけれども、原子力発電所に行けばならないとか、そういうことをきちんと皆さんにお示しになったらば、随分、誤解は招かれないんじゃないかと思います。
最後に、先ほど、岩崎さんが言っておられた人口の問題は非常に複雑であって、明らかに医学が進んだということによって子供が死ななくなったということがインドなどでは大きな要因になっているということを申しておきましょう。
【西野】 大体、時間になり……。田村さん、何かございますか。じゃ、最後のご発言ということで。
【田村】 情報の問題がありましたので。先ほど、神田先生のほうからもお話がありましたけれども、非常に言われて困るというお話でしたけれども、どうぞ、そういうことはきちんとマスコミのほうにも言っていただきまして、こういうふうに時間がかかるのであるということをちゃんと主張していただいて記者も教育をしてもらいたいと思います。
それで、私は情報公開ということは二つあると思います。一つは、先ほどのように、この事故はどういう事故であるかということを意味づけたご発表ということは非常に正しいと思うんですが、もう一つは、その後、必要であれば生のデータに接することができるということが大事だと思うんです。
先ほど、西野さんがおっしゃいましたが、どこに行ったらいいかわからないというようなことがよくあるわけですけれども、先ほどの科学技術庁なんかも含めまして、エネルギーの問題なんかで非常に基礎的なご調査とかご研究が山とあるんですけれども、その大事なデータが私たちの目に触れません。例えば、木を一本、切るとどれだけのエネルギーが要り、服をつくったらどれだけのエネルギーが要るみたいな、非常に家庭で私たちがエネルギーということを知るのに基本的な情報をちゃんと研究してあるのにもかかわらず、そういうものが私たちがどこかに行って、そういう情報を知りたいと思っても、今、生のデータがどこにあるかはわかりません。どこかに調査報告書があったんですが、というような発言では困るわけです。事故の場合でも、まず当初、どういう事故だということが発表された後に、先ほどのお話のように段階的にということですけれども、生のデータにも接する……。
これまではそういうことは無理であろうということで専門家の間だけ、あるいは技術者の間だけで行われてきたんだと思うんですけれども、このような皆様のようなご意見の時代になってくるわけですから、やはり、一つは専門家のほうからも一般の国民の情報が知りたいという声に応えていただきたいと。ですから、例えば原子力発電所、そこには無理かもしれませんけれども、とにかく技術がわかって、少しやさしい言葉でそのことを説明できるような人もたくさんつくっていただきまして、こちら側から接する側の問題と情報を持っている側の話し方、伝え方、そういうことについて、そういう専門家が出てきても、モデレーターのような方があっても一向に構わないわけです。情報公開というのは幾通りもの、ただ、こういう情報を出せばいいということだけでは済まないと思います。
【西野】 ありがとうございました。
もう時間が3分、4分過ぎておりますが、司会の特権を使い、つい失言することが多いんですが、一つは人口問題の−−多分、間違ってないと思うんですが−−日本のデータで特殊再生産率が2を切ったのが1975年であったと思います。そして、日本の人口がピークを迎えるのが2010年というふうに推測をされておりまして、その間に35年−−特殊再生産率が2を割ってからピークに達するまでに35年あるという事実が日本でございます。この事実が中国の12億に適用できるか、あるいはインドの9億に適用できるかどうかはわかりません。ただ、事実として現在では8%から9%の経済成長をしているという事実もあります。それが原子力発電になったり、あるいは先ほど、いろいろなコメントになったりしたんだと思います。
もう一つ、最後に発言をさせていただきます。これはとんでもないことをちょっと言おうかと思っているんですが、今までの議論、8回を通しまして、原子力エネルギーがやはり必要ではないかというほうが、かなり論点は明確であります。それに対して、どうもそれは問題があるんではないかという非常にいろいろなバリエーションがあります。いろいろな理由があります。まさにここで議論を幾らしても尽きないほどの複雑な要因があると思います。
私は次回と次々回に、あるいはモデレーターとして大きな問題提起をしたいというのは、たまたまでございますが、若いときにアメリカのペンシルベニア州で私は勉強をしておりました。ご存じの方が多いかと思うんですが、あそこにはアミッシュとかペンシルベニア・ダッチというふうに完全に文明を否定して生活をしている人がいるんです。彼らは文明を完全に否定して生活しているんですが、隣の人が電気を使う、車を使うというのには反対をしないんです。問題は全く私はエネルギーを使わないで、車を使わない、エアコンディショナーも使わない、暖房も使わないということを、横にやはり、それが多数の人が−−いや、多数かどうかはわかりませんが−−仮にそういうものを使いたいと言ったときに、それは困るというふうな問題なのかどうかと。こういうことがひょっとすると多様な社会の中で将来、生き方に対して個人のポリシーが許されるというのも原子力利用に関する、あるいは車利用、エネルギー利用、資源利用に関する一つの論点かなという話題かもしれないという発言をさせていただいてですね。これは記録には一応残りまして、次の話題のタネになるという意味で発言をしたんで、議論をしようとか、そういうつもりではございません。考えていく問題の一つではないかと。アプローチの一つではないかということでございます。
大変勝手な発言をしまして……。
【藤田】 すみません。
【西野】 今のことですか。
【藤田】 どうしても言っておきたいことがあるんですが。
【西野】 じゃ、非常に簡単に。
【藤田】 先ほど、大分前ですけれども、有馬先生が「車に乗る人は原子力を語る資格がない」というふうなご発言があったと思いますけれども。私は非常にそれは不当な発言だと思っています。
【西野】 じゃ、それだけ記録にとって、これで大変失礼でございますが、終わりにさせていただきたいと思います。

閉  会

【西野】  それでは閉会に当たりまして伊原さんより一言、ごあいさつをいただきたいと思います。
【伊原】 本日は長時間にわたりまして、さまざまな観点から貴重なご意見をいただきまして、ご討論いただきまして大変ありがとうございました。いずれも原子力と社会のかかわりを考える上で非常に有意義なものばかりだったと思うわけであります。特に今回は初めて、一般の方々からご参加をいただきまして、多くの率直なご意見を承ることができたわけでございます。
本日のご意見、ご議論を聞いておりまして、やはり、原子力を含むエネルギー問題というのは社会のさまざまな部分と密接にかかわり合っていると。それを考える際にはトータルで考えるということも必要でありますけれども、また、一個人としてどういうふうに考えておられるか。そういう感覚というものも重要である。こういうことを痛感いたしました。今後、政策を考え、進めていく際に専門家のご意見をもとより、それらの声も大切にいたしまして政策の検討をいたしてまいりたいと思います。今日のご討論はしっかりと受けとめて原子力政策に生かしてまいります。
今日はどうもありがとうございました。
−−了−−

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