原子力政策円卓会議(第6回)議事概要
- 日 時
7月2日(火) 午後1時30分〜午後5時30分
- 場 所
KKR HOTEL TOKYO(東京都千代田区大手町1−4−1)
- テーマ
「原子力に代われるエネルギーは?」
−エネルギーと原子力−
- (1)世界のエネルギー情勢
- (2)ライフスタイル、社会・経済構造とエネルギー需給
- (3)地球環境とエネルギー需給
- (4)省エネルギー・新エネルギー
- (5)原子力エネルギーの意義
- (6)エネルギー源の選択
- 出 席 者
- モデレーター
- 茅 陽一 東京大学名誉教授(議事進行を担当)
- 五代 利矢子 評論家
- 鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員(議事進行を担当)
- 招へい者
- 碧海 酉癸 消費生活アドバイザー
- 内山 洋司 財団法人電力中央研究所技術評価グループ
- グループリーダー
- 荻本 和男 株式会社東芝電力事業部技監
- 加藤 幸子 小説家 日本野鳥の会理事
- 隈 研吾 建築家
- 竹内 榮次 中部電力株式会社常務取締役
- 十市 勉 財団法人日本エネルギー経済研究所理事
- 藤井 石根 明治大学理工学部教授
- 日本太陽エネルギー学会会長
- 舟橋 功一 川越市長
- 古沢 広祐 國學院大学経済学部教授
- 森田 恒幸 国立環境研究所地球環境研究グループ
- 温暖化影響・対策研究チーム総合研究官
- 原子力委員
- 中川 秀直 委員長(科学技術庁長官)
- 伊原 義徳 委員長代理
- 田畑 米穂 委員
- 藤家 洋一 委員
- 依田 直 委員
- (敬称略 五十音順)
- 議事概要
- 注:文章整理の関係から表現が必ずしも発言通りではない場合がある。
- 参考別紙:
- 「原子力政策円卓会議開催に当たっての基本的事項」[別紙1]
- 「基調発言要旨」[別紙2]
《中川原子力委員会委員長冒頭挨拶》
- これまで4回の円卓会議では、各界・各層の参加によりテーマを定めず幅広い議論を行ってきた。
- 前回からは、抽出された課題を踏まえ、分野を絞り深い議論を行っている。本日は、「エネルギーと原子力」の観点からの議論であり、世界的なエネルギー需給、生活のあり方、省エネルギー・新エネルギーへの取り組みなどが含まれると考える。共通の土俵で議論いただきコンセンサスを作ることができればと考えている。
- これまでの会議において意見が多かったとして、前回モデレーターより要請のあった「情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進」については、原子力委員会として鋭意検討を行っていく。
《モデレーター冒頭挨拶》
- 最初の4回の円卓会議で、原子力を巡る大方の論点は摘出されたと考える。これらは、原子力と社会、エネルギーと原子力、原子力と核燃料リサイクル、原子力と社会との関わりの4分野に要約でき、順次これらを取り上げ議論を深めていきたい。
- 本日のテーマについては、「世界のエネルギー情勢、ライフスタイル、地球環境」、「新エネルギー、省エネルギー、原子力の意義」、「エネルギー源の選択」などの項目が議論のヒントとなると考える。
- 前回の会議で、「エネルギーと原子力」に関係する議論として「高速増殖炉は日本が必要とするエネルギーの1%しかつくれない。これをエネルギー政策の根幹とすることは社会的安全の面から見て重大」といった意見に対し、「全く認識が違う」といった応答がされたことを報告する。
《基調発言》
□エネルギー一般
- 川越市役所では原子力発電所の増加をいくらかでも緩和する方向へ行けないかということを標題として1%節電運動を行っている。
- 資源小国の日本は電力大消費国である。節電の努力なしに発電所をつくるなというのは消費者エゴ。発電所を作らなければならないのなら、最も経済的、効率的と聞いている原子力発電所の建設に結びつくのは当然のこと。
- 節電により、原子力発電所の安全性の向上、新エネルギー開発、国民的合意を得るための時間などのための余裕を作ることが、現実を前提として実行できる方法。
- 賛成か反対かという議論は溝が深まるばかりである。原子力発電所は現実に動いており、我々は恩恵を被っている。この現状に対するベストではないがベターな解決方法として、やわらかく原子力発電所を包み、新エネルギーの普及にもっと資金を投じるべきである。
- 災害発生時の対策として、水、電気、通信の確保は重要である。川越では災害用の井戸に発電設備をつけた。電力は大規模には備蓄できないことを考えると、ソーラーなど様々な発電設備を考える時代にきており、新エネルギーについては今後さらに研究補助をしてほしい。
- エネルギー消費は過去100年で25倍、特に戦後は4.6倍に増加し、現在、石油換算で年間80億トン、一人当たり1.4トンを消費している。その90%が化石エネルギーであり、この状況は将来も変わらない。このようなエネルギーの大量消費によって豊かな生活、肉体労働からの解放など快適な生活が確保されている。
- 一人当たりのエネルギー消費をみると、先進国は途上国の10倍のエネルギーを使っている。先進国では、米国やオランダ、スウェーデン、デンマークなどが消費量が多く、省エネルギーの余地がある。日本では大幅な省エネは難しい。
- エネルギーは次の3点において水や空気と異なる。まず、良質な石油があと20年で減産に転ずるなど、枯渇するという点。次に、毎年230億トンという二酸化炭素放出など環境汚染を引き起こす点。最後にエネルギー供給は技術が支えている点である。
- 豊かな経済発展、エネルギー消費、環境影響のトリレンマ状態は21世紀向けて人類に投げかけられた大きな課題。
- 世界のエネルギー消費は、発展途上国の人口増加とライフスタイルの向上により、今後、爆発的に増加する。
- 化石燃料は、資源量に非常に楽観的な仮定を用いても、歴史的には一瞬である数百年で枯渇する。
- 化石燃料の大量消費は、良質な資源が使える現代人と低品位の資源以外の選択の余地のない子孫との間に世代間の不公平を生ずる。
- 人口増加の90%は途上国におけるものであり、その抑制は困難である。また、多くは都市に集中するため、バイオマスや自然エネルギーでは到底賄えない。
- 中国、インドネシアなどエネルギー資源に乏しいアジアでは原子力の開発が不可欠である。安全性の確保に技術力が必要なため、先進国は技術支援をせざるを得ない。
- 全てを満足させるエネルギー源はない。石油には途絶の危険があり、石炭は環境影響が大きく、再生可能エネルギーは安定したエネルギーではない。
- 地域間、世代間の公平を考えたエネルギー技術開発を行っていくことが必要。
- 大型集中型のライフスタイルは、21世紀には分散型へと大きく変わる。これに対応するようなエネルギー供給のあり方を今から作るべき。
- 資源、エネルギー、情報量が急激に増加している。特に資源・エネルギー消費が21世紀もこの調子で増加していくのは無理。
- 今後OECD諸国の消費をどう下げていくかが大きな分かれ目。途上国については、技術によりエネルギー利用効率を上げることで、資源消費量を同じレベルに抑えられる可能性は十分にある。
- 非再生的な資源、そこから生じる廃棄物、廃熱を自然の許容量の中に如何に抑え込むかが、エネルギー政策の最大の課題であり、産業システム全体もエコロジー・環境革命の波に巻き込まれだしている。
- 消費を抑え、再生可能なシステムにどう適合させるかという方向の政府的な動きがデンマーク、カリフォルニアのサクラメント、デービス市、ドイツのフライブルグ、イギリスのレスター市などで始まっている。資源は有限であり、資源の有効利用こそが社会全体で取り組むべき課題である。
- 自然エネルギーは潜在的な量が大きい。日本に降り注ぐ太陽エネルギーは消費量の100倍であり、風力発電だけでも消費量の20%は潜在的に可能である。技術はあっても、社会的、政策的基盤が整っていないのが現状。
- 今後、化石燃料、原子力発電所などのコストは上昇していく。再生エネルギーのコストは、政策にもよるが、今後大きく低下していく。集中型でいくか、分散型でいくかが国民的な選択として問われている。
- ライフスタイルに関しては、経済成長を抑えることで、所得が増えず経済が停滞する状態をマイナスとしてとらえるのではなく、これを積極的に受け入れて、低成長をベースとしたスリムな社会設計、生活設計を考えるという構想も必要である。
- 日本の生産性でイギリスの一人当たりのGNPを達成するとすると、今よりも休日が94日増加する。忙しい経済社会の中で生きていくのか、所得は伸びないがゆっくりとしたライフスタイルを作っていくべきかを考えるきっかけがこの数字により提示されている。
□原子力一般
- 原子力発電所立地箇所でもないのに節電運動を行った理由は、燃料輸送に関越道が使われる可能性や、海外の事故、原子力計画縮小などもあるということを考慮し、対岸の火災視すべきではないと考えたためである。
- 原子力におけるウランは、高速増殖炉では多少延命するとしても、枯渇性の資源である。放射性廃棄物についても現状では人類と共存できる状況でない。
□安全関係
- 全くトラブルのない原子力発電所はありえない。地球を揺るがすような事故に至らないトラブルがあることは当然予測しなくてはいけない。こういうトラブルは予想され、やむを得ないと言うことを含めて、情報提供、説明を一般に対し、わかりやすく行うべき。
- 原子力には安全性についての不安がある。しかし、過去の大型プラントのリスクを分析した結果からは、石炭火力がもっともリスクがあり、自然エネルギーも製作、輸送時の事故などによるリスクが大きい。これに比べ原子力はリスクが小さい。
- 大規模事故のリスクは、水害、嵐、地震、火山などの自然災害と比べると小さい。このリスクを自然災害以下にする努力を人間はしていることがわかる。
《他の招へい者の所感》
- 原子力を抑制するための省エネルギーを主張するならば、電力消費のピークに関連させて説明するべき。
- ライフスタイルの転換は難しいことが多い。例えば米国等で行われているシェアード・ハウジング(他人同士などが一つの家を分け合って住むこと)は日本の場合非常に難しい。
- 電力の節約、省エネルギーの推進は非常によいこと。輪を広げてほしい。
- 新エネルギーの普及はよいことだと思うが、すぐにできることではないと認識。
- 個人がエネルギー問題を自分の問題として考えることが大切であり、それをいかに普及していくのかが重要。
- 集中型、分散型の議論はエネルギー問題だけに絞らず議論をするべき。例えば都市構造で言えば、集中型都市構造は全体のエネルギー消費が少ないが、田舎に住みたいという人もいる。
- ライフスタイルの転換については、気構えの問題だけでなく、例えば建築基準法、都市計画法といった制度の問題を絡めて議論するべき。
- エネルギー需要が伸びる傾向にある中、省エネルギーへの試みは大いに結構。しかしそこで原子力をやめるということについては疑問。
- いつまでも成長経済が望めるのか疑問であるが、生活レベルを急激に落とすことは困難。
- 分散型エネルギー、大規模集中型エネルギーは対立させて考えるべきではない。現代の工業社会を考えると相互依存の関係であるべき。
- 地球全体の長期的な問題を考慮すると、原子力の位置付けをきちんと行い、どの程度原子力に依存していくのか議論するべき。
- 人間の欲望を社会として制御していくぐらいのところまで議論しなければ省エネルギーの問題は先に進まない。
- 資源の有限性や環境問題をクリアしながら現在の我々の考え方で、エネルギー問題に関わっていくことは非常に難しい。
- 限られた地球と限られた資源、後生に負の遺産を残さないということを肝に命じた上で議論しなければ、将来、同様の問題に突き当たるであろう。
- 原子力は地球温暖化問題を解決する幾つかのオプションの一つであり、それらの中で原子力はどれだけ優れているのか、あるいはどのようなバランスで原子力を進めるのかが論点。
- 新規バイオマスエネルギーのコスト如何によっては、エネルギー導入のシナリオが崩れるという意見もある。
《自由討論》
□エネルギー
(1)新エネルギー関連
┌─────────────────────────────────┐
1│自然エネルギーは、密度が薄い、自然条件に左右されるといわれるが、使│
│いこなすための技術開発や、知恵を出してうまく使っていくことが重要と│
│の意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 自然エネルギーは、密度が薄いと言われているが、地球に届いている太陽エネルギーは現在の我々が使っているエネルギーの約3万倍といわれている。そうしたエネルギーを、うまく使いこなすための技術開発、知恵を出すことが大切。
- 自然エネルギーは、自然条件に左右されるというが、太陽光、風力、波力等様々な種類があり、それらを相互に補完しあって、使っていくことが重要。
┌─────────────────────────────────┐
2│・新エネルギーへの取り組みは重要であるが、供給力、信頼性、コストの│
│ 問題があり、将来を支えるエネルギー源としては不確実という意見が出│
│ された。 │
│・「新エネルギー導入大綱」の新エネルギーの目標については、生産能力│
│ 材料不足等の問題から、実現が非常に大変な数字であるとの意見が出さ│
│ れた。 │
│・新エネルギー開発に関する上記の意見に関し、長期的な視点から客観的│
│ な議論を行うことの必要性や、小さい取り組みの積み重ねを行うことの│
│ 重要性が指摘された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 省エネルギー、新エネルギーへの取り組みが大切であることは、十分認識しているが、この二つで最も心配しているのが、供給力、信頼性である。エネルギー供給において、最も重要なのは、安定供給である。エネルギーはいまや水や空気と同様に使っているため、それらと同じように安定して供給する必要がある。長期的にみて、安定的に確保できるかは、基本的な問題。
- 風力に適した自然条件を持つカリフォルニアでは、1万7千基の風力発電があるが、それでも3.5%のエネルギーを賄うに過ぎない。新エネルギーの努力をすることは大切だが、将来のエネルギーを支えるメインのエネルギー源としては、不確実なところがあまりに多く、日本では現状では不十分であるという結論が出ていると認識している。
- ゴミ発電に努力した経験からいえば、温熱需要が一年通して高いところでなければ、難しい。日本の全てのゴミを発電に回しても、エネルギーの1%という数字があり、何が可能かを定量的に評価し、考えていかねばならない。
- 一昨年、「新エネルギー導入大綱」が閣議決定され、新エネルギーの目標が示されているが、その目標が可能かというと、実は非常に大変な数字である。例えば、目標をクリアするためには、太陽光発電設備の生産能力を直ちに4〜5倍にしなければならないとか、材料不足などが予測される。また、住宅用のモニター制度を活用しても、コストは原子力、火力などの他電源の4〜5倍という問題もあり、推進するのは、非常に厳しいのが現実。こうしたことも考慮すると、当面は原子力を頭に入れて対応すべきと考える。
- 産業規模で考えると、電力は、必要な時に、必要な量を、かなりの経済性を持って提供することが必要。新エネルギー、省エネルギーはもちろん大事であるが、総合判断すると、当面、原子力発電、さらに、軽水炉から将来的には高速増殖炉につなぐことが必要。
- 原子力政策は50年〜100年のオーダーで考えているのに、新エネルギーは今の価格で強調され、論じられるのは疑問。そうした観点から、新エネルギーは量が足りないという主張も、長期的な視点も含めもう少し客観的に議論すべき。
- フライブルグでは、一カ所にゴミを集めてコージェネレーションで発電し、廃熱は温排水を供給している。こうした姿勢が重要。メインにならないから駄目というのでなく、こうした小さなものから積み重ねていけば、大きな力となる、ということが重要。
┌─────────────────────────────────┐
3│自然エネルギーの取り組みに関して、 │
│・予算を新エネルギーに向けるべきとの意見が出された。 │
│・自然エネルギーの開発は電力会社というよりも、地域レベルで実施する│
│ べきであるとの意見が出された。 │
│・太陽光発電を普通の家に取り付けるとメンテナンスが大変であるとの意│
│ 見が出されたのに対し、12年間省エネルギー実験用住宅の電力を │
│ すべて太陽電池で賄っているとの意見も出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 日本では、行政的な意味では、予算を一つの方向に使う傾向が強いと感じている。予算を新エネルギーに向けることができないかと思っている。
- 女性は自然エネルギーを非常に待望しているが、自然エネルギーの利用は電力会社が開発するというよりも、自治体や地域コミュニティーのレベルで進めていくべきと考える。
- 太陽光発電は、メンテナンスを考えると専門の担当者のいない普通の家庭に取り付けるのは勧められない。
- 省エネルギーに関する実験用住宅に、12年前に太陽電池を取り付け、使用電力は全て太陽電池で賄っている。是非太陽光も試してもらいたい。
(2)バイオマス
┌─────────────────────────────────┐
1│・新エネルギーの1つとしてバイオマスについて議論があり、将来的に期│
│ 待されているものであるが、不明確な点も多く、なお、研究、調査が必│
│ 要であるとの考え方が示された。 │
│・日本は森林資源が多く潜在的能力があり、コストも減少する可能性があ│
│ るとの意見が出されたとともに、広大な土地が必要であり、またエネル│
│ ギー密度も低いとの問題点も指摘された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 「化石資源は地球温暖化につながるものであり、太陽、風力などの新エネルギーにもある程度の限界がある、だから原子力」ということでなく、それにバイオマスも入れれば、仮説としては、一応原子力無しのシナリオも書けるということを何人かの研究者が示し議論になっていることを指摘したい。バイオマスは、データも少なく、不確実なものであることは事実だが、長期的に将来のエネルギーを議論するときに、バイオマスを避けて議論すべきではないと考える。
- バイオマスに関連して、日本では、森林資源が年間1億m3 成長している。そのうち木林として利用されているのは、約2000万m3 。また、日本は土地が狭いというが、都市や農地などで利用されているのは、約3割。残り7割は山林、森林で、潜在的可能性は十分あると考えられる。また、コスト的にも、自然エネルギーやバイオマスは10年で10分の1になる可能性がある。原子力には、そうした将来的可能性があるか、20〜30年で競争力はどうかという議論もすべき。
- バイオマスは、育ちやすい地域では、短期的に植林が可能だが、そうでないところでは広大な土地が必要になる。また、エネルギー密度も化石エネルギーの何分の1である。そうしたことを考慮しながら、将来のポテンシャルは考えていくべき。いろいろな可能性を追求することは重要だが、その際は定量的に評価することが重要。
- 中期的には、原子力無くしては無理というのは、理解できる。ただし、その次のステップで原子力しか本当に無いのか、といった可能性については、検討し、定量的に追求すべき。
- 以前スウェーデンで、原子力を当面やめよう、といったとき、バイオマスも議論があった。しかし、最近のスウェーデンの動きを見ると原子力をやめるのを、見直す動きもある。ただし、バイオマスなど新しいものをやるべきでないということではなく、可能性は追求すべきと考える。
- バイオマスが欧米で将来的に非常に期待されているのは事実。ただし、具体的に細かくチェックした例はあまりなく、本当のところは誰もわからないというのが現実。それは、膨大な地域を調査しなければいけないことが一因と推察されるが、将来的には、きちんとした研究、調査をすべき。バイオマスは、長期的には重要であるが、30〜40年では問題があるのが実状。
┌─────────────────────────────────┐
2│国際的な機関の報告書では、日本でのバイオマスの利用ポテンシャルはゼ│
│ロと評価されていることに関連し、バイオマスについて、地球公共財とい│
│う観点から開発に取り組んでもいいのではないかとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- バイオマスについて、原子力とは別のオプションとして世界的に考えられているのは認識している。ただし、IPCC,IIASAの報告書では、気候条件などから、日本の利用ポテンシャルはゼロであったと記憶している。
- バイオマスは、日本では土地も少なく、純国産エネルギーにならないという意見もあろうが、以前の会議での原子力利用技術を地球公共財として開発すべき、との意見があったように、バイオマスもそうした観点から、日本が取り組んでもよいと考える。日本では、あまり適さない、とするのでなく、地球公共財として、他国と提携して取り組むといった視点をエネルギー政策に盛り込んでもよいのではないか。
(3)自然界とエネルギー
┌─────────────────────────────────┐
│・エネルギー問題は、他の生物も含めた自然界という観点からの議論が必│
│ 要であり、原子力は自然界から飛び出したものという意見に対し、原子│
│ 力委員から、放射線は宇宙、地球創世の時から存在し、我々は自然放射│
│ 線に囲まれて暮らしており、また、核分裂は、過去地球上で自然に発生│
│ しており、自然で行われていることを行っているだけであるという見解│
│ が示された。 │
│・また、太陽、バイオマスの自然エネルギーを大量に使うことは、太陽の│
│ 恵みを人間が独占する事になるのではないかという疑問が提示された。│
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- エネルギー問題は、人間だけでなく、他の生物も含めた議論であるべき。暮らし方も含めて、この問題は文化の問題。人間は、他の生物と同様に自然の中に含まれているものであり、またその文化も自然の中に含まれるものである。しかし、原子力などの先端技術開発には、その自然から飛び出してくる部分があり、その部分を利用することにより人間が非生物的存在になるのではないか懸念を持っている。遺伝子工学、宇宙開発のある部分も同様。
- 自然の循環を壊さないようなエネルギーができるかどうかではなく、是非やらなければいけない。
- 黒部ダムは、ものすごい自然破壊。あの広い面積は、人間が太陽の恵みを独占している。太陽光、バイオマスという議論があったが、人間だけが太陽の恵みを独占して他の生物に渡さないということはいいのかと感じている。
- 太陽の恵みはすべての生物の上に注いでおり、人間が利用しても他の生物にいかないということにはならないのではないか。
- 自然エネルギーでも大規模に利用するのには限度があるのは確か。しかし環境の負荷が小さいのも確かであり、知恵を出してうまく利用していくことが必要。そのためには、分散型のエネルギーが適している。
- 人間が地球上の一生物であるということを認識し、人間のエゴをむき出していてはいけない。
- 宇宙、地球の創世以来、放射性物質は地球の中にたくさんあり、我々も自然放射線という形でそれを受けている。関西と関東でも自然放射線の量は違うが、それで大きな差があるわけではない。原子力発電所から出てくる放射線は、そういう自然放射線の変動の範囲よりも2桁ほど小さく、自然から飛び出していないと思う。
- 原子力発電所に対して心理的に不安があるのも確かであるが、日本では自然に対して一番飛び出していない。例えば火力発電所などでは酸性雨による影響などがある。
- 原子を取り出して利用するような形は、自然からかけ離れた存在であり、自然の外に飛び出してしまう。
- 宇宙のエネルギー源としては、自然の原子力と人工の原子力しかない。今我々の使っている原子力は、過去、地球上で自然に発生したものを使っているだけであり、いずれにせよ自然に学ぶ以上のことはできないという認識。
- 太陽の光を利用するのと、人工で小さな太陽を作り出すのは文化の質が全然異なると思っている。
(4)省エネルギー
┌─────────────────────────────────┐
1│省エネルギーが進むように、社会構造、ライフスタイルの改善等に取り組│
│むべきであるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 今後は、限られたエネルギーをいかに効率的に使うかについて知恵を出し、必要度に応じたエネルギーを選択することが重要。また、省エネルギー型社会の構築も重要。つまり、効率のよい使い方、システム、社会構造の再編成、ライフスタイルの改善などが実行できる制度、法制面の対応が必要。また、ヨーロッパなどでは既に取り組まれている環境負荷に対する税制面での対応も日本は、取り組むべき。
- エネルギーの使用のあり方が問題。季節感を忘れ、使いたいだけ使うというのでなく、供給を減らしていく方向、つまり負荷を減らしていくことが一つの方向。我々の生活は、電力に依存しており、自然に負荷をかけている。省エネルギーに関して、我慢することも大切であるが、エコロジカルなダイエット(省エネ
- 省資源)生活へと、どう社会・経済的にインセンティブをつけていくかということが重要。
- 省エネルギーはやり方の問題。今あるシステムを前提にしどのような省エネルギーをするかではなく、これだけの少ないエネルギーでいかにして快適な生活を送れるかというところで知恵を絞ることが重要。
┌─────────────────────────────────┐
2│今後は、供給サイドだけでなく需要サイドでも省エネルギーを図るべきで│
│あり、機器をベースとしたもので10%は可能であるとの意見や、省エネ│
│ルギーに関して今後冷暖房関係がポイントになるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 今後は、供給サイドだけでなく、需要サイドでも省電力対策を図っていくべきである。断熱等の機器をベースとした省エネルギーも10%位は可能という結果が出ており、節約を進めれば更にのびる。
- 以前、4人家族でのライフサイクルエネルギーの調査をしたことがあったが、冷暖房に使用するエネルギーが一番大きかった。これからも冷暖房関係の消費が増えてくるので、このシステムをよく考えて省エネルギーを図るのがポイント。
┌─────────────────────────────────┐
3│・民生用エネルギーについては、社会の変化を考えれば、一般的な家庭が│
│ すべて贅沢な使い方をしているとは言えず、使用量を減らすことは難し│
│ い。 │
│・産業用エネルギーについては、経済発展と大きく関わっており、理念だ│
│ けで簡単に省エネルギーができるとは思えない。 │
│と、簡単には省エネルギーが進まないのではないかとの意見が出された。│
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 民生用エネルギー消費の増加というが、電気の契約アンペア数の平均で見れば昭和30年代の3倍にしかなっていない。この間の、女性の社会進出、長寿化という社会の変化を考えれば、一般の平均的な家庭では贅沢だから使用エネルギーを減らしましょうということにはならないと思う。
- 太陽エネルギーの恩恵は食べ物でしっかり受けていると考えている。
- 省エネルギーを考える場合、民生用だけでなく、総合的に考えることが必要。産業用の省エネは、今の大量生産システムを変えないと難しいが、そのシステムを変えて雇用を維持し、経済を支えられるかという点がある。また、日本の経済発展がモータリゼーションとともに起こった。このように社会の経済発展はエネルギー消費と関係しており、雇用というかたちで個人の生活基盤とも関わっている。このため、簡単に理念だけでは省エネルギーはできず、可能なことから一つ一つ省エネルギーを図っていくことが大切。
- 地球の資源を考えると、このままエネルギー消費が野放図に伸びていくのは問題があると思うが、まだまだ伸びてしまうのが現実。人口が増えたり寿命が延びたりすれば、エネルギー消費が増加するのは当然であり、それをダメということはできない。このように考えると原子力発電が必要と考えるが、省エネルギーと対立するものではなく、省エネルギーも着実に進めていくべき。
- エネルギーを大量消費する、役所、企業が変化すればずいぶん違うのではないか。
┌─────────────────────────────────┐
4│省エネルギーについて、生活者にその情報が十分伝わっていないという問│
│題点が提起された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 最近、省エネ型の家を建てたが、前のエアコンのない家と比べて、エアコンをつけてもエネルギー消費が約1/3となった。しかし、一般の生活者にはこのような選択ができる情報が必ずしも伝わっていない。省エネルギーや原子力の問題を専門家レベルからおろしていくというのではなく、生活者の立場に立って、その人たちの関心を広げてエネルギーや原子力の問題に膨らませていくべき。
┌─────────────────────────────────┐
5│・「夜間電力を貯蔵して昼使うなど、安くするためには、どうするか」、│
│ 「ピークを減らすことが重要」といった声も認識しているが、川越市の│
│ 1%省エネ運動では、省エネルギーの様々な取り組みの内、とりあえず│
│ 使うことを節約することから取り組んでいる。この取り組みで、節電に│
│ 関する一石を投じ、波紋を起こすことができたという手応えは感じてい│
│ るとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(5)途上国とエネルギー
┌─────────────────────────────────┐
│途上国の経済発展、人口増加に伴うエネルギー需要の増加に関して、日本│
│の効率化の技術を活用すれば、当面の見通しは立つという意見が出された│
│が、中国の現状を見れば、現実的に需要の増加を抑えるのは難しいとの意│
│見が出た。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 途上国の経済発展と、人口増加をどのように考えるか。
- 途上国にもいろいろの条件があり、単純に途上国の人口×需要の増加がエネルギー源の増加となることに疑問。日本の効率化の技術を取り入れることができれば、当面の見通しは立つと考えられる。
- 中国は、現在電力需要が1年間に8%増加しており、現実に毎年1600万KWのプラントを建設している。現実的には需要の増加を抑えることは難しい。
- 中国の省エネルギー率(GNPの伸率に対してエネルギー需要伸率の低さ)は毎年4%位であるが、これは、自立的にやっているのではなく、エネルギー需要が多いと供給が間に合わないので政府がエネルギーを規制しているからと認識。
- 開発途上国は、やはりお金がないので、最初は垂れ流し的なエネルギーを使用し、徐々に工業化が進んでいく。工業化が進まないと人口問題等他の問題とも関わってくる。新エネルギー、省エネルギーがうまくいくかどうか疑問。
(6)将来のエネルギーの選択
┌─────────────────────────────────┐
1│将来のエネルギーに関し、 │
│・新しい技術については、時間的要素と、量的なものを評価し、社会シス│
│ テムに経済的に入っていけるかを把握する事が重要。 │
│・日本では、資源状況が欧米諸国と異なることから、原子力も考慮するべ│
│ きであるし、在来型電源も見直しつつ、長期的に新エネルギーも評価し│
│ 選択するべき。 │
│・自然エネルギーの普及にも大型エネルギー源の支援が必要であり、様々│
│ なエネルギー源を多角的に使用することが重要。 │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 新しい技術はいろいろあるが、時間的要素と、量的なものをきちんと評価し、社会システムに経済的に入っていけるかを把握することが重要。ドイツ、イギリス、アメリカ等は、原子力の開発をあまり進めていないが、これは、天然ガスを使ったコンバインドサイクル発電という在来型の発電を見直しており、新エネルギー主体とはなっていない。また、豊富な石炭資源があるという背景もある。日本は、資源的にそれらの国と違うことから、原子力も考慮すべきであるし、今後は、在来型電源も見直しながら、長期的に、新エネルギーも評価し、選択していくべき。
- 今後の課題は、ピーク時の対策をどうするかであり、太陽光はそれに寄与することができるが、増えすぎると電力系統の信頼性の問題が出てくる。その対策には、バッテリーが必要であるが、直接太陽光の電気をバッテリーに充電するよりも、夜間使わない電気を充電していくほうが効率がいい。結局、自然エネルギーを普及する場合には、大型エネルギー源の支援が必要であり、様々なエネルギー源を多角的に使用することが重要。
┌─────────────────────────────────┐
2│・エネルギーの議論に関しては、リサイクル社会を形成できるかの観点が│
│ 重要であり、原子力にはその可能性が十分あるとの意見が出された。 │
│・リサイクルはコストが問題であり、それにより見通しが大きく変わって│
│ しまうとの意見が出された。 │
│ なお、モデレータより、リサイクルの議論は別の機会にすると発言が │
│ あった。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- エネルギーの議論に関してはリサイクル社会を形成できるかどうかが重要であり、原子力は当初よりそれを目指して利用を進めているし、その可能性は十分あると考えている。
- 一般論としてリサイクルを実施することは重要であるが、問題はコスト。エネルギーの長期シミュレーションモデルにおいても、コストを少し変化させるだけで、結果が全然変わったものになってしまう。その見通しがよくわからない。
(7)その他
┌─────────────────────────────────┐
│・男性が家庭のエネルギー消費の実態をもっと把握するべきとの意見が出│
│ された。 │
│・エネルギー問題は、建設、土地行政とも一体の問題として捉えることが│
│ 必要との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
- 女性は、エネルギーについて教育も不十分であり、省エネルギーといってもなかなかわからないこともある。男性が家庭のエネルギー消費の実態をもっと把握するべき。
- 省エネについて個人の工夫は大切であるが、エネルギー問題は建設、土地行政と大きく関わっており、二つの問題を一体の問題として捉える視点が必要。
□原子力の安全確保
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│原子力のトラブルについてもっと情報提供をするべきであるという指摘に│
│対し、原子力委員より、原子力の安全に関する情報や海外の高速増殖炉の│
│状況について情報を提供はしているが、今後更に努力していきたいとの見│
│解が示された。 │
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(議事の概要)
- 安全に関して、いろいろな情報をそれなりに提供してきている。その中で、現在、日本の原子力発電所が49基、運転しているが、これまで放射能が漏れ、公衆に災害を及ぼす事故は経験していない、ということは、ご認識いただけるところであろう。ただし、それで、十分な情報提供ができているとは、思っていない。
- 高速増殖炉の問題について、事故によって開発が停止したのではないか、という情報があるが、それについて説明すると、
- フランスのスーパーフェニックスは、火災で運転を中断していたが、現在は問題を克服し、運転再開している。
- ドイツのSNR−300は、州政府が燃料装荷を認めなかったこと、及び、経済的理由から運転できなかった。ただし、燃料装荷前に、ナトリウム漏洩を1〜2回経験し、修理している。
- イギリスも、高速増殖炉を開発していたが、北海油田が開発されたという資源的な背景と原子力開発予算の民間移転の中で、停止した。なお、イギリスのPFRという高速増殖炉は、昔蒸気発生器の細いチューブ40本が壊れるという事故を経験している。ただし、放射性物質の漏洩はなく、修理後、運転を再開したが、成果が上がったので、現在は、運転を中断している。
- 旧ソ連のBN−350は、20回くらい漏洩事故を起こしているが、修理し、今は順調に運転している。
これらの情報は、その都度、提供しているが、一般にはなかなか伝わっていない。今後とも、情報公開には努力していただきたいが、同時にそうしたことに関心を持ち続けて欲しいと考えている。
- IAEAの事故評価尺度というのがあり、その都度新聞情報などで、提供している。ちなみに、チェルノブイルはレベル7、スリーマイルはレベル5、日本では、最高でもレベル2であり、放射能の放出はない。スリーマイルも放射線による人身事故には至っていない。ぜひ、今後はそうした情報にも接していただきたい。
- 機器の故障などのトラブルはあるが、しかし、アクシデントには至っていないということだが、そうした情報を積極的に出してほしい。
□円卓会議の運営
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│・原子力政策円卓会議に関する資料の表現について、円卓会議の設置が │
│ 『原子力政策を推進』との前提でなされたものと受け止められるとの指│
│ 摘に対して、モデレーターより、円卓会議では、原子力の推進という意│
│ 味でなく、改廃を含めて議論するという解釈で、モデレーターを引き受│
│ けているとの見解が示された。 │
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(議事の概要)
- 原子力政策円卓会議に関する資料の表現について、「円卓会議の設置が『原子力政策を推進』との前提でなされたものと受け止められる。その立場はおかしいのでは」との意見があったが、円卓会議では、原子力の推進という意味でなく、改廃を含めて議論するという解釈で、モデレーターを引き受けている。また、この会で意見が多くだされ、意見の一致を見たものは、委員会に要請し、積極的に対応してもらうものと理解してほしい。前回も、それまでに意見の多かった情報公開について、原子力委員会に具体的な要望を行ったところ。
《モデレーター閉会時発言》
- 新エネルギー、省エネルギーに意見が集中してしまい、それと原子力の関わりについて議論を伺う時間がなかったので今後の円卓会議で今日の話をベースにそれを詰める議論をしたらいいのではないかと思っている。
- 本円卓会議で一般公募の人を入れるべきという意見が多くあったが、第8回の7月24日、第10回の8月22日に行うこととなっている。開催場所が第8回目が神奈川県、第10回目が福井県で行うこととなると思う。一人でも多くの方に一般公募が行われていることを伝えていただきたい。
《中川原子力委員会委員長閉会挨拶》
- 色々な意見を伺い、多くの視点や考え方のきっかけを与えていただいて大変興味深く伺った。私自身も、色々なことを様々な角度から考えていかなければならないと思っており、それぞれの意見が大変参考になった。
- 先般、社会経済生産性本部の報告書で、地域において新エネルギー省エネルギー、エネルギー全体の問題に関する意識向上のための提言があったが、非常に重要なことであり、関心を持って見ている。
- 様々な議論を、円卓会議の場に留まらず広くみんなで共有していけるかということが重要。
- エネルギー問題は、一人一人の国民が自分の問題として真剣に考えることが非常に大切。その際、今だけでなく未来も、日本だけでなく世界も考えることや、安全、環境など色々な面からも考えることも必要。
- 今日のご意見はしっかり受け止め政策に活かすべく努力をしていきたい。
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