原子力政策円卓会議(第7回)議事概要
- 日 時
- 7月12日(金) 午後1時30分~午後5時30分
- 場 所
- 東條会館(東京都千代田区麹町1-4)
- テーマ
「原子力-未来に何を引き継ぐか?」
-原子力開発利用政策と核燃料リサイクル-
-
- (1)人間文化・社会と原子力
- (2)エネルギー源の選択
- (3)原子力開発の意義(総合科学技術としての意義も含む)
- (4)原子力開発利用政策のあり方
- (5)核燃料リサイクルの意義・展望
(再処理、高速増殖炉、プルサーマル、バックエンド対策)
- 出席者
- モデレーター
佐和 隆光 京都大学経済研究所長
鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
西野 文雄 埼玉大学大学院政策科学研究科長
- 招へい者
池亀 亮 東京電力株式会社取締役副社長
池島 芙紀子 ストップ・ザ・もんじゅ事務局代表
岩本 忠夫 双葉町長
植松 邦彦 動力炉・核燃料開発事業団副理事長
木村 守男 青森県知事
鈴木 篤之 東京大学工学部教授
高木 仁三郎 原子力資料情報室代表
舘野 淳 日本科学者会議原子力問題研究委員会委員長
松浦 祥次郎 日本原子力研究所副理事長
松田 美夜子 生活評論家(廃棄物とリサイクル)
- 原子力委員
中川 秀直 委員長(科学技術庁長官)
伊原 義徳 委員長代理
田畑 米穂 委員
藤家 洋一 委員
依田 直 委員
(敬称略 五十音順)
- 議事概要
注1:文章整理の関係から表現が必ずしも発言通りではない場合がある。
- 参考別紙
- :原子力政策円卓会議開催に当たっての基本的事項[別紙1]
- :基調発言要旨[別紙2]
- :基調発言者以外の方から提出のあった資料等[別紙3]
《中川原子力委員会委員長冒頭挨拶》
- この原子力政策円卓会議は4月25日の第1回以降、月2回のペースで開催しているが、最初の4回の議論の中で、大方の論点は出されたものと考えている。
- 我が国は、原子力の平和利用に徹することはもとより、安全確保を第一に着実に開発を進めてきた。また、核燃料リサイクルについても、開発当初からの一貫した政策として長計等で取り組んできた。
- 円卓会議は、昨年の「もんじゅ」の事故等をきっかけに、国民の核燃料リサイクル全般を含めた原子力開発利用政策全般について改めて考えてみてはという声を真摯に受け止めて設置されたもの。本日のテーマは、そうした意味で、非常に重要なものであると感じている。
《モデレーター冒頭挨拶》
- 最初の4回の円卓会議で、特定の分野にとらわれない自由闊達な議論が展開され、原子力を巡る大方の論点は摘出されたのではないか思う。
- これまでの議論は、原子力と社会、エネルギーと原子力、原子力と核燃料リサイクル、原子力と社会の関わりの4分野に要約できる。第5回以降の円卓会議においてこれら4分野についての順次議論を深めていくことが重要と考えている。
- 第8回と第10回の会議では、広く一般公募による参加や、原子力モニターの方々からの参加を得て、議論の幅を広める予定。
- 今回のテーマでは「人間文化・社会と原子力」、「エネルギー源の選択」、「原子力開発の意義」、「原子力開発利用のあり方」、「核燃料リサイクルの意義・展望」が議論のヒントになるのではないかと思うが、自由闊達な発想で議論いただきたい。
《基調発言》
□原子力一般
- 我々は、原子力の文化を21世紀につないで行かなければいけない。
- 我が国の基本的原子力政策には一貫性があることが重要。原子力は基軸電源の一つであることを重視すべき。
- 長期的視野に立った計画を着実に遂行することが重要。同時に社会情勢の変化にも的確に対応していくことが必要。
- 我々の住む日常世界のエネルギーは化学結合から生まれるものであり、世界の安定は原子核の安定の上に築かれてきた(地の平和)。核エネルギーの利用は、原子核の安定性を強いて破壊して、核結合のエネルギーを取り出すものであり、そこに大きな怖さ、特殊性がある。軍事利用に限らず、平和利用においても基本的な困難性がある。社会との間に基本的な困難をもたらすことを認識するべき。
- 核エネルギーの利用という「パンドラの筺」をいったん開けた以上、とことんこの技術を開発して最大限利用するべきとの意見もあるが、この本質を見極めて、好ましくないものであるならば、この「パンドラの筺」をどう閉じるのか-放射性廃棄物や解体核兵器の問題をどうするのか-ということに人間の知恵を結集するべき。
□原子力長期計画
- 現行の原子力長期計画は実態と大幅にずれた設定であり、原子力政策を歪めている。国民の不信感もここにある。全面的に見直しすべきである。
□エネルギー関係
- エネルギー面で原子力に頼らざるを得ないことは論を待たない。
- 我が国が資源小国であり、現実に使用電力の30%が原子力であることを踏まえながら、次世代、悠久にして評価に耐えうるエネルギー政策として、環境に優しいエネルギーの研究開発、経済性を踏まえた確立をお願いしたい。原子力エネルギーを将来にわたって軸とする国の政策であっていいのかどうか、国民的議論をこの際求めたい。
- 経済成長、大量生産、資源浪費型社会は破綻をきたしており、将来は環境調和型社会を目指すべきであるが、開発途上国ではそのような認識がない。この格差を埋めていくことが世界的最重要課題の一つ。
- ウランには潜在的には化石燃料の何百万倍もの資源的価値がある。同じエネルギーを得る場合、廃棄物の発生量が最も少ない。環境調和型という点で非常に優れている。
- 世界は現在、環境問題を抱えており、化石燃料に替わる代替エネルギー開発が優先的課題。原子力は火力に替わる電源として有力。
- 原子力のエネルギー源としての利用は、エネルギーを制御しながら少しずつ取り出すという意味で、従来の「消費型」から新しい「制御型」エネルギーへの転回である。
□リサイクル政策関係
- プルトニウムを軽水炉で利用することは、資源の有効利用の観点からも、核拡散防止上の観点からも大きな意義がある。諸外国等での良好な利用結果から考えても、安全性について懸念するものはない。
- プルトニウム利用の透明性の確保のため、国は核燃料リサイクル計画を明確にしてほしい。
- 「ウラン資源もあと40年」と先が見えていると言われている。プルトニウム利用は不可欠となる。
- 国の原子力政策が「核燃料リサイクル」の確立を基本として進められていることは承知。その意味で青森県六ケ所村の原子燃料サイクル事業は、エネルギー政策、原子力政策の中心に位置されるべきもの。
- 原子燃料サイクル事業について国を挙げて取り組むべき事業であることを再度認識することが必要。
- 国策として位置づけられることが安全確保や地域振興に対する県民の安心感、信頼感の基礎を与えるもの。
- 政策決定及び遂行の過程で、国と立地地域との間で密接な情報交換、意思疎通を図ることが肝要であり、そのための常設の協議の場が必要。
- 再処理の意義は資源のリサイクル。使用済燃料を有効に活用していくことは環境保全につながる。再処理コストは一種の環境保全コストと考えることが重要。将来的には経済性を向上させていくことが重要。
- プルサーマルは世界的には既に500トン近い実績もあり、またウラン資源の節約につがなる。経済的な考慮も必要だが、ウラン供給国の環境のことも考慮するべき。
- 使用済燃料はエネルギー資源として有効利用することが重要。すぐに再処理できないものについては計画的に備蓄する等、再処理にあたっては計画性が重要。
- 原子力長計のプルトニウム関連計画は、ATR実証炉計画の中止、もんじゅの事故、六ケ所再処理工場建設の遅れなど、ほとんど全面的に破綻を来しており、プルサーマルをも含めたプルトニウム政策に国民が納得していない以上は大幅に見直しをするべき。
□高速増殖炉及び「もんじゅ」関係
- 現在の原子力発電所(軽水炉)はウラン資源を効率よく使っていない。将来的には潜在的な価値を最大限有効に活用するという考えが重要。そのためには高速炉の開発は非常に重要。
- もんじゅ事故は深刻に受け止め、今後の研究開発に活かすべき。研究開発の方法、内容を再構築していくことも考慮してよいのでは。
- 非現実的な計画のみが先走りして、技術と実態との間にひずみを生んだのが、「もんじゅ」事故を起こし、また事故隠しを生んだ原因。
□バックエンド関係
- 再処理計画が大幅に遅れ、使用済核燃料の発電所内長期貯蔵が避けられない状況にある。使用済核燃料が永久に立地町に置かれることのないよう、国民的合意を基礎とした適切かつ慎重な対策を講ずるべきである。
- 高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵については、その安全性及び最終処分地が決まっていないことに対する懸念、不安が依然として続いている。再処理、プルトニウム利用を基本とする我が国の原子力政策が先行き不透明であり、青森県への放射性廃棄物や使用済燃料の搬入だけが進められていくのではないかという懸念がある。
- 国の原子力政策には、例えば高レベル放射性廃棄物の最終処分等、基本的方向は明文化されているものの、未だ全体像が明らかになっていない部分もあり、今後原子燃料サイクル事業の本格化を控えて、このような状態であることは疑問。
- 青森県は、立地協力要請を受諾する直前に、高レベル放射性廃棄物の最終的な処分については、国が責任を負うとの確認をいただいているところであるが、昨年9月の原子力委員会による取り組みの具体化までの11年間目に見えるものはなかった。したがって、今世紀中に高レベル放射性廃棄物の最終処分地を決定するよう国に願う。
- 放射性廃棄物の問題は国民的課題。高レベル放射性廃棄物については特に安全性に留意することが必要。また処分の実施主体をできるだけ早急に設立するべき。地下研究施設の建設は是非進めて行くべき。
- 廃棄物問題は、原子力長期計画が実態に即していなく、国民の不信感をもたらしている。
- 廃棄物問題について全体的にどうアプローチするかがないままに、「青森県には最終処分しない」などと「確約」しているのはおかしい。その場しのぎの口約束で事を進めてはダメ。
□安全関係
- 原子力発電所については、トラブルはあっても、安全性については問題なく推移している。もんじゅ事故でも安全性に連動されるものはない。
□社会と原子力
- 今後、原子力施設に関わる安全対策を強化し、安全確保の実績を積み重ねることによって、信頼が回復されるものと思う。
- 原子力発電所を取り巻く環境は、トラブルや阪神淡路大震災、高レベル放射性廃棄物処分、もんじゅ事故により厳しいものとなっており、立地町としても地域住民の不安の解消、安全安心の原子力行政の構築に全力を傾注している。
- 立地地域住民の不安をなくすための対策に電力会社のみならず、国が積極的な取り組みをするべき。
- 今後、原子力発電所の新増設を進める上では、原子力の安全確保と地域振興が最も重要と考える。道路、福祉、環境、教育など原子力発電所所在の住民が希望をもって快適に暮らせる住環境の整備が必要。
- 国の地域政策として、国の責任において、恒久的な地域振興策を講じてほしい。
- 原子力行政は、住民の信頼がなければ成り立たない。国は、原子力利用によるエネルギーの確保から、最終処分まで、国民にわかりやすく説明し、国の責任ある姿勢を示して、国民の信頼を得ることが重要である。
- 原子燃料サイクル施設の立地協力要請に対し、国のエネルギー政策、原子力政策に沿う重要なものであるとの認識のもとに、安全確保を第一義に、建設、操業に係る地元雇用、地元参画及び高速交通体系の整備、複合的な地域開発等による地域振興を前提に受諾したが、具体化したのは原子力政策に直接関連するものにとどまる。
- 国の方針や具体的な実施計画の大きな変更は、立地地域住民の不安・懸念・不信感、地域行政の混乱に結びつく。
- 原子燃料サイクル事業の円滑な推進と施設立地に伴う地域振興を図るため、建設、操業に係る地元参画、地元雇用の拡大への取り組みと、原子力関連研究機関の設置、電源三法交付金の交付限度額の引き上げや使途の拡大、原子力発電施設等周辺地域交付金による電気料金の割引制度の全県適用等を要望。また、地震、活断層、津波等に対する十分な調査、気象観測体制の充実、強化、地域住民の健康管理に向けた具体的取り組みについても要望。
□立地地域と消費地関係
- 双葉地方には10基の原子力発電所があるなど、全国でも有数の電力供給基地となっており、国のエネルギー政策に大きく貢献してきたとの自負心を持っている。
- 原子力発電による多くの利益を享受しているのは大都市圏であるにも拘わらず、高レベル放射性廃棄物の受け入れなど、なぜ青森県だけがそれを受けていかなければならないのかとの問題を国民に提起したい。
□情報公開関係
- 事業の本格化に伴い、県民の安心感を醸成していくためにもこれまで以上の情報公開への積極的取り組みを要望。
- 原子力開発利用政策のあり方として透明性の確保、特に政策決定過程を分かりやすくすることが重要。
- (地下研究施設の建設に)併せて安全から安心に向けた研究開発成果を広く公開するよう、より一層努力するべき。
- 情報公開と政策決定プロセスの民主化については、すでに繰り返し円卓会議でも取り上げられ、合意が成立しているようにも思われるが、実態はまだ不十分で、私自身も電力会社のMOXの資料など、公開を拒まれている。国民に対して情報が公開されていること、それに意見を述べることができること、プロセス自身が公開されていること、意志決定に加わることができるということが重要。
- 政府は政策決定の前に、例えばその政策をとるとどのような社会がやって来るのか、どのような影響があるのか、ということを全面的に評価するようなアセスメントを国民に提示するべき。それに対して批判的な立場からの対抗的な評価も含めて議論し、国民に納得してもらうべき。例えば将来高速増殖炉の時代がきたときに社会の安全上、環境上の危険はどれだけか、情報の非公開や核拡散が国際的に警戒や懸念の目で見られることも含めて私たちが支払わなければならない社会的コスト、財政的負担、地域社会への影響等についての評価を原子力委員会は国民に提示して議論を求めるべきである。MOX燃料、放射性廃棄物についても同様。
□円卓会議のあり方
- 円卓会議の進め方や人選・議事概要のまとめ方について、不透明さがあり、国民の声を真に政策に反映させるために一層の努力が必要。
《他の招へい者の所感》
- 地球は太陽の恵みを受けている。今の石炭、石油も太陽の恵みでできており、それを掘り出して使用している。これは原子核の変換というのが役に立つということである。特にウランについては、安定な核から外れたものが使える状態にある。いかなる法則といえども自然に反した法則は作れないため、これは自然の恵みのうちにあると考える。
- 円卓会議のあり方について、今までの経過、また、本日の開催に関しても、非常にたくさんの不公平さを感じている。
- 原子力政策、特にプルトニウム利用については、ターニングポイントまで来ているのではないかと感じている。
- プルトニウムを資源として有効利用する方法については、諸外国を含めかなりの実績がある。
- プルトニウムの平和利用についての研究は、ヨーロッパで長い時間実施されている。日本においてもプルトニウムの取扱いについては、非常に長い歴史と多くの実績を持っている。
- 会議の性格について、20年前の原子力船「むつ」の時に「原子力行政懇談会」というのがあった。「原子力行政懇談会」は首相の諮問機関であったが、この会議は科学技術庁長官の主催で開催されている。当時の危機に比べて、今日の危機はより低いものというふうには考えられないので、もう少し構えを大きくしていく必要があるのではないか。
- 原子力を人間が見つけたというのは、人知と文明の発達の結果である。
- 原子力を人間の安寧福祉に役立つようにコントロールして使っていくのは当然である。
- 化石燃料だけに依存して地球環境を壊していくよりは、人知の究極として得られた核エネルギーをきちんと使うという方向に進んでいくのは当然である。
- 専門家の言葉は、国民にはわかりにくい。
- 一般廃棄物については、経済的に許容していけるのかという視点から、国民のコンセンサスを作りながら、法律を2つ作ってきた。この考え方が原子力の中でも利用されていくと国民の同意も得ていけるのではないか、また、国民の選択する判断力も培われてくるのではないか。
《自由討議》
□原子力の意義
┌─────────────────────────────────┐
1│核エネルギーの利用は、原子核の安定を破壊するので社会との間に基本的│
│な困難をもたらすと基調発言において指摘があった。 │
│一方、これに関連して、 │
│・人類文明の発達の中で核エネルギの利用は自然なこと │
│・co2抑制の観点から原子力は有意義 │
│・原子力は利用効率といった点で最も理想的なエネルギー源 │
│との意見があった。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 個人としては、地球で人類が生まれ、化学エネルギーの利用に至って文明を構築したことを考えると、人類文明の発展の中で核の世界に入っていくのは、至極もっともなことと理解している。ただし、研究開発の理念を「利用から調和へ」と転換し自然や社会と科学技術の調和を優先させることが必要。
- CO2は地球規模で環境的に問題となっている。火力発電からは大量のCO2が出るため、電力会社はその放出の抑制に努めており、東京電力では、1970年から1995年の間に1KWhあたり54%カットした。しかし、そのうち70%は、原子力によるものであり、原子力なしには、それだけのCO2の抑制は出来ない。今後、目標とされている原子力開発を達成していき、一人あたりのCO2の排出量を今のレベルに抑えていきたいと考えている。
- 原子力について考える際、「人智の発達、進歩を促す可能性があるか」「人類の安寧、福祉に役立つか」「人間活動と環境との調和に貢献できるか」といった観点から、考えるべき。
- 人間の文明の発達、特に科学技術の発達から見ると、片やミクロの方向、片やマクロの方向に進んでいくものに分かれる。それら広範多様にわたるものを全体として体系化し、精緻化し、知識にしていくのが科学技術、文明の方向。その中で、核反応を使い、全体としては精緻な技術を使って、役立てていくのが原子力の特性の一つ。
- 原子力は他のものと比較して最も密度が高く、高温のエネルギー源である。利用効率といった点では、最も理想的なエネルギーである。核拡散防止、安全などでは十分なコントロールが必要だが、原理的な面では、未来へつなげていく価値のあるものと考えている。
[《基調発言》における関連意見]
□原子力一般:4番目意見
□原子力政策のあり方
┌─────────────────────────────────┐
1│ 原子力の三原則が完全に保証されるように提言するという意見とともに│
│我が国の原子力利用の精神は基本法の三原則に基づいてなされており、特│
│に平和利用は徹底しているとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 自主、民主、公開の原子力三原則が今日のようなインチキな形でなく完全に保証されるよう提言する。
- 我が国の原子力の利用は、そもそもの始まりが平和利用に徹する、人間社会に幸せと豊さをもたらすものという意味が込められており、その精神は基本法の三原則に基づいてきちんとなされていると考えている。海外では、軍事利用から始まったところもあるが、日本は平和利用に徹底しており、誇らしい利用と思っている。
┌─────────────────────────────────┐
2│原子力推進体制について、 │
│・原子力委員会を廃止し、研究者の公選制による会議を設置すること │
│・原子力安全委員会は一定の権限を持たせた行政委員会とすること │
│・日本原子力研究所を国立研究所とすること │
│・動燃事業団を廃止すること │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力委員会は、今日では、原子力推進のための機関となってしまい、国民の立場でチェックするという観点からは必要なくなっていることから廃止すること、原子力安全委員会は諮問機関でなく一定の権限を持たせた行政委員会とすることを提言する。
- 原子力安全委員会は国民の側に立ってチェックする姿勢が重要。
- 原子力委員会の代わりとして、研究者の公選制による原子力研究会議を設置して進めていくことを提言する。
- 原子力研究所は特殊法人とされているが、これは国からも民間からも独立して研究を進めることができるためといわれている。しかし、実状はそうなっていなく、官僚支配が貫徹している。それならば、特殊法人でなく、公務員としてそれなりの権利を持った国立研究所とすべき、と考える。
- 動力炉・核燃料開発事業団は廃止すべき。原船「むつ」の際、事業団というのは、大量の国のお金を民間に配布するトンネル機関で、技術的蓄積はあまり無いという問題点が指摘されたが、今日その過ちが繰り返されていると考えている。
┌─────────────────────────────────┐
3│欧米の原子力発電が停滞している理由について、 │
│・原子力、火力などの大規模な基盤エネルギーシステムを当面追加的に必│
│ 要としていない経済状況だからである │
│・かつて無いほどの反対運動があったことが背景にある │
│・米国で原子力が停滞しているのは、石油の価格が下がり原子力より火力│
│ が安くなったからである │
│との指摘がなされた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- OECD先進諸国の原子力発電量は、確かに停滞している。しかし、ヨーロッパ及び米国の失業率が高い一方、日本の失業率が低いこと等で示されるように、経済活動の差により、エネルギー需要に違いがあることが要因。つまり、欧米諸国では、原子力、火力などの大規模の基盤エネルギーシステムを当面追加的には必要としていないという背景により停滞している、と考えられる。
- 先進国が原子力を凍結しているのは、電力の需要が伸びていないからだという発言は、認識が異なり、そうした認識では困る。私の認識では、アメリカの原発が計画をやめたのは、かつてない反対運動があったためで、ヨーロッパも同様の背景と聞いている。
- アメリカで原子力が停滞したのは、反対運動が強まったのも一因だが、経済性が優先される国ということも大きい要因。つまり、石油価格が安くなったため、原子力より火力が安くなったことが非常に大きい理由。
┌─────────────────────────────────┐
4│今後の原子力政策の決定に当たっては、 │
│・国民特に若い人が認めるかどうかという観点が重要 │
│・政策に関しアセスメントを提示し、対抗意見を出して、最終的に国民の│
│ 意見がどうかというプロセスが必要 │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 「もんじゅ」の事故により国民にやっと「もんじゅ」というものがわかってきたという状況だと思う。しかし、高レベル廃棄物やプルトニウム政策は、国民にその重要性や危険性を理解されていないのだと思う。専門家による論議だけでなく、国民特に若い人達が認めるかどうかについての議論なしに、簡単に長計を踏襲するべきではない。
- 米国のように、政府がある政策に関しアセスメントを提示し、対抗する意見を出して、最終的に国民の意見がどうなのかというプロセスが必要。
┌─────────────────────────────────┐
5│現状の原子力政策について、 │
│・安全については、ある程度の実績があり評価している │
│・現在の政策は、基本としてエネルギーだけでなく原子力を総体として捉│
│ えていること、リサイクル社会の形成の展望を持っていることから、認│
│ められる。 │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力発電の安全については、ある程度実績を積み重ねてきており、評価している。
- 今の原子力政策の基本は、原子力をエネルギーだけでなくガン治療への利用等も含め総体として捉えていることと、リサイクル社会を形成するという展望を持ってやっていること。そういう意味で原子力政策は認められると思う。
┌─────────────────────────────────┐
6│原子力発電所の廃炉について、地域経済、長期的な電力確保なども踏まえ│
│どのような計画があるのかという疑問点が提示された。 │
│これに関連して、原子力委員より、 │
│・長期計画では、地域社会との協調をとりつつ、原子力発電所用地として│
│ 引き続き有効に活用するとしている。 │
│・個別サイドの話は電力会社、通産省が検討しているが、原子力委員会と│
│ しては、長期的に整合がとれるようにする責任がある。 │
│との見解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 最近、原子力発電所の廃炉が報道されているが、原子力政策を進めるための原子力委員会としては、廃炉の対策、その後の次なる立地、高レベル廃棄物の処分等について、見極めをもっているのか。
- 原子力発電が、廃炉になった場合、その場所にもう一度作りたいと考えている。これは、大量の水の確保、地盤がしっかりして、広い面積があるという原子力立地に適した地域がそれほど多くはないためである。
- 廃炉で解体するには、それなりに時間もかかるはず。その間、地域の経済などはどうなるのか。長期的な電力確保を考える上で、原子力委員会では、そうした点も全て踏まえた裏付けのある計画はあるのか。
- 廃止措置については、解体撤去後は、地域社会との協調をとりつつ、原子力発電所用地として引き続き有効に活用する、というのが、長期計画に示された基本的な考えである。非常に長期的に見て、全体的に整合性のある計画を示せるかといえば、方向性は示せるが、今の時点では具体的な地点における個別論まではいれない。ただし、電力会社は想定した将来計画を持っているであろうし、行政責任主体として通産省もスタディしていくと思う。原子力委員会としては、長期的に整合性を持ってやらなくてはいけないという責任を持っている、と考えている。
- 政策的な展望を見極めるためには、廃炉後の具体的立地などについて、全体的なことはつかめず、電力各々の会社で考えるということではいけないと考える。
- 福島第一発電所の1号機は25年経過しており、耐用年数が40年とするとぼつぼつ準備に取りかかる時期ではないかと感じているが、その辺については、指針として国が方針をきちんと打ち出す必要がある。
┌─────────────────────────────────┐
7│原子力利用について、 │
│①原子力利用はこれからが正念場である │
│②原子力はお金をかけすぎである │
│との指摘がなされた。なお、2については、モデレータより事実関係が紹│
│介された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力利用はこれからが正念場であり、幸い安全性は確保されているようであるので、効率のよい、経済性の高い、技術の面でも信頼されるあり方を国民に示してもらいたい。
- 高速増殖炉には、科研費の7倍というすごいお金を使っているが、そこまでしてやる必要があるのか。せいぜい、科研費と同じ程度でプロジェクトをやるべき。原子力にあまりにもお金をかけすぎているのではないか。
- 「もんじゅ」は10年間で6000億円、宇宙は年間約2000億円、科研費は年間約1000億円である。
┌─────────────────────────────────┐
8│原子力、核燃料リサイクル政策は国策であると認識しているが、国策にふ│
│さわしく、安全についてきちんとした対応をするべきであるとの指摘がな│
│された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 円卓会議を通じ、リサイクル路線を国の政策として再確認することを切望。
- リサイクル政策が国策ということは認識しているが、そういう国策を再確認するする事が必要であれば、いろいろ議論をしていただき、それを見極めたい。
- 国策といいながら、国策にふさわしく安全な対応なり、立地条件を科学的に英知を絞ってやっているかといえば100点満点とは言えない。東通沖の断層についても、資料に基づく十分な説明が必ずしもない。阪神大震災の後、ようやく県内の断層調査の交付金がきたが、国策なんだから当然科学者の持っている資料に基づいて、疑わしきは調査はするべきである。環境を論ずる場合においても、安全が第一義であることを確認する事が大事。
□核燃料リサイクル
(1)リサイクル政策
┌─────────────────────────────────┐
1│基調発言において、国の長期計画、特にプルトニウム政策はほとんど全面│
│的に破綻しているとの指摘がなされたが、これに関連して原子力委員より│
│・ATRの計画変更、六ケ所再処理工場についてはいずれも長計の基本を│
│ 変えているものではない。 │
│・我が国のプルトニウム利用は余剰プルトニウムを持たない、平和利用に│
│ 徹することを全面に出しており、需給バランスについても白書で報告し│
│ ている │
│との見解が示された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- ATR計画の変更については、ATRの研究開発の目的を他のもので達成しうるか、という観点を中心に検証した結果、軽水炉の発展などにより達成できるとの見解が得られたことから、実証炉の中止となった。その他、経済的なファクターもあった。
- 再処理施設の計画が遅れているとの指摘があるが、長計では2000年過ぎの操業開始となっていたものが、日本原燃を中心に努力をされ、2003年開始と明示できる状況まで話が進んだものと考えている。
- 長計については、常に全体をみながらバランスのとれた方向へ向かうようにしていくべきものと思う。もちろん情勢に応じて適切に対応することは言うまでもないが、原子力長計は大枠うまくいっている。
- 再処理でプルトニウムの余剰が一方的に出るとの指摘もあったが、国の基本的見解として余剰プルトニウムは持たない、平和利用に徹することを前面に出して行っており、需給バランスについては白書で報告することになっている。
- 長計が大枠うまくいっているという認識が、基本的にみんなが原子力政策を納得しない理由だ。
[《基調発言》における関連意見]
□リサイクル政策関連:11番目意見
┌─────────────────────────────────┐
2│核燃料リサイクル政策について、 │
│・再処理の意義は資源の有効活用と環境保全であり、再処理コストは一種│
│ の環境保全コストと考えるべき。 │
│・プルトニウム政策は国民が納得していない以上大幅に見直しをするべき│
│という意見が基調発言で出されたが、これに関連して、 │
│・原子力発電所からの使用済燃料の取り扱いは、資源のリサイクルか使い│
│ 捨てかといった観点だけでなく、使用済燃料を直接処分すると、環境保│
│ 護上、核不拡散上問題もあるという意見が出された。 │
│・これに対し、再処理するとそれに伴う廃棄物が出てくること、廃棄物の│
│ 容量は減るが放射能量は変わらないこと、プルトニウム社会の問題点は│
│ 大きく代償が大きいこと等からリサイクルは賢明ではないという意見が│
│ 出された。 │
│・また、プルトニウムについては既に国際的な合意が得られている利用の│
│ 形があり、日本もその形でしか行っていないという意見も出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子炉を運転すれば、使用済燃料は必ず出てくるが、その処分方法は直接処分するか、再処理するかという2つしかない。使用済燃料中、廃棄物は約3%なのでこの問題は、資源のリサイクルか使い捨てかということでもある。また、プルトニウムを含む使用済燃料を処分するのは、環境保護、核不拡散上の観点から問題がある。
- 再処理することによって、再処理に伴う廃棄物も出てくる。高レベル廃棄物の容量は減るかもしれないが、放射能そのものは変わらない。また、海外委託に伴う返還輸送は国際的に大変な問題となっている。再処理工場も何年もつかわからないが、そのうち廃棄施設になってしまう。このように考えると、再処理することによって環境上プラスになるとは思えず、リサイクルは賢明ではない。
- 原子力の一番重荷となっているのは、廃棄物問題と、平和利用に徹していてもどこかで核兵器につながるのではないかという点。特にプルトニウム利用については、核不拡散、社会的制約、情報の公開の制限等、核兵器になるような物質に依拠するという社会の持つ問題は非常に大きく、何倍かの資源量になっても払う代償が大きすぎる。
- プルトニウム利用が核兵器問題につながるという議論は、既に1970年代に世界的に議論して、プルトニウムを使おうとすればこんな形であるという合意ができている。日本のプルトニウム利用もその合意の得られた形でしかやっていない。
[《基調発言》における関連意見]
□リサイクル政策関連:8番目意見、11番目意見
┌─────────────────────────────────┐
3│・現時点では、再処理工場を建設するべきではなく使用済燃料は敷地内に│
│ 貯蔵するべきであるという意見が出された。 │
│・これに関連して、核燃料リサイクルを産業として確立するためには、あ│
│ る量の活動を実施していくことが重要であるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 使用済燃料の処分について、現時点の科学技術の進展状況を見ると、まだ再処理工場は建設するべきではなく、敷地内に貯蔵することを考えていくべき。
- 再処理工場を今建てるのは合理的ではないという意見があったが、そういう考え方をする人もいるだろうが、全く別な考え方をする人もいると思う。リサイクルを産業として確立するためには、ある量の活動を将来を目指して、研究開発も含めて実施していくことが重要。
┌─────────────────────────────────┐
4│核燃料リサイクルについて、 │
│・リサイクルといっても一般廃棄物のリサイクルとは質の違うものだから│
│ 同じキーワードを使うべきではない │
│・今後は、海外再処理委託をやめてもらいたい │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- リサイクルといっても放射線という質の違うものであるから、一般廃棄物のリサイクルと同じキーワードを使うことは国民が混乱するのではないか。
- 使用済燃料の海外再処理委託については、今後、30トンのプルトニウム、大量の高レベル廃棄物が返還されるということだが、もう既に返還されるものについては仕方ないが、今後これ以上世界の人に迷惑をかける危険性を与えることの無いように、今後の再処理委託はやめてもらいたい。
(2)プルサーマル関係
┌─────────────────────────────────┐
1│・プルサーマルは、資源の利用効率は2倍くらいにしかならなく、プルト│
│ ニウムの高次化、廃棄物中の超ウラン元素の問題、輸送、MOX使用済│
│ 燃料の再処理の問題等があり、メリットはないという意見が出された。│
│・一方、これに関連して、プルサーマルは世界的な実績、「ふげん」によ│
│ るMOX利用の実績から、技術的に問題はない。また、軽水炉でプルト│
│ ニウムができてくるのだから、貯めるよりもいろいろなタイプの炉で燃│
│ やすことは当然であるという意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- ATR「ふげん」の成果は、軽水炉利用のプルトニウムリサイクルについても反映できる経験と考えている。再処理、プルトニウム利用ができるのが動力炉・核燃料開発事業団の特色であり、今後、積み上げた技術を日本の原子力開発の役に立てなければならないと考えている。
- プルサーマルは愚劣な利用法である。利用効率は2倍くらいにしかならず、プルトニウムの高次化の問題、廃棄物中の超ウラン元素の問題もあり、メリットはない。現時点においては、プルトニウムリサイクルは遅らせるか延期するべきである。
- プルサーマルは愚劣とあったが、我が国は新型転換炉による100トンに上る利用、150トンもの燃料加工という世界的に見ても大きな実績を持っている。また、外国では、プルサーマルは、仏、独、ベルギー等で進められており、世界的に見てもプルトニウムの軽水炉利用は問題ある技術とは考えていない。
- 軍用プルトニウムの平和利用への転換についても是非ともやるべき問題
- プルサーマルの技術は1975年頃には確立している。確かに高速増殖炉に比較し効率的ではないが、軽水炉でウランを燃焼させるとプルトニウムができてくるのだから、それを貯めるよりもフレキシブルにいろいろなタイプの炉で燃やすというのは当然だと思う。
- プルサーマルについては、資源的にはほとんど大した意味がないのに、実施しようとすれば、輸送の問題もあるし、MOX加工施設を作ることが必要になる。また、その使用済燃料を再処理するかしないかという問題もある。
(3)高速増殖炉開発の意義と「もんじゅ」の位置づけ
┌─────────────────────────────────┐
1│高速増殖炉に関連して │
│・審査や考え方の甘さがいたる所にあり、「もんじゅ」は凍結するべき。│
│・資源的なメリットは認めるが、現状では技術がないことを認識するべき│
│・「もんじゅ」の今回の事故であきらめるのではなく、今後とも実験を重│
│ ねてもらいたい │
│との意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 「もんじゅ」については、当事者、関係者が原因究明をはじめ努力している状況、今はそれをウォッチしている。
- 「もんじゅ」の再現実験では、動燃が当初思っていなかった事態が発生したが、FBRのいろんな想定される恐ろしい事態について、審査や考え方の甘さがいろんな所にあるのではないかと思う。「もんじゅ」は凍結していただきたいし、「もんじゅ」でこの状態だから、次の実証炉はとてもではないが出来ないのではないか。
- 高速増殖炉により資源の利用効率が100倍くらいになるのは認めるが、それは利用できる技術があってはじめて出来ること。今の状態では、絵に描いた餅であり、それがすぐ実現出来るように言うことが問題である。
- 「もんじゅ」の事故は残念であるが、それであきらめることではなくて、これから更に確かな安全性を確認しながら実験を重ねていってもらいたい。
□バックエンド関係
┌─────────────────────────────────┐
1│・基調発言において、廃棄物政策について長計通りにいかないのではとい│
│ う指摘があり、原子力委員より、現在専門部会、懇談会等で検討を進め│
│ ているとの説明がなされた。 │
│・これに関連して、原子力委員会の考え方は楽観的であるとの意見が出さ│
│ れた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 廃棄物政策について、長計通りいかないのでは、との指摘もあったが、現在、原子力バックエンド対策専門部会、高レベル廃棄物処分懇談会を設けて、技術だけでなく、広く社会及び国際社会の問題として取り上げようと精力的に検討を進めているところ。
- 廃棄物などの非常に大きな問題に対し、原子力委員会の考え方は楽観的であり、これでは国民の不安への答えになっていない。
- 再処理しようと、直接処分しようと高レベル廃棄物の処分は必要であり、その実現のために最大限の努力をしたい。
[《基調発言》における関連意見]
□バックエンド関係:6番目意見
┌─────────────────────────────────┐
2│・放射性廃棄物の処分に関して、安全性、コストについて国民に充分説明│
│ するとともに、研究を進めデータを蓄積するべき。また、一般廃棄物と│
│ の量の比較など質の違うものとの比較は国民の理解を得られないという│
│ 指摘がなされた。 │
│・これに関連して、今後研究を進め、コストについても確実な試算をして│
│ いきたいとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 核廃棄物は発電量に比例するので、エネルギー不足をあおって、エネルギーを消費する政策を続けていくことは不安。核廃棄物の処分は安全か、または安全に管理できるかの情報を十分に出してほしい。そうすれば一般国民も、発電施設を、今後限りなく増やすかどうかを考えることが出来る。
- 高レベル放射性廃棄物の処分コストは、1kWhあたり数銭から10銭程度との試算が示されている。まず、この考え方の根拠を国民に知らせてほしい。また、これは処分コストだけしか含まれておらず、それ以外に入ってくるべき処理、貯蔵、中、低レベル放射性廃棄物等の費用は見えてこない。放射性廃棄物処理・処分コストの全体を国民に分かりやすく情報公開すべき。
- 核廃棄物のPRに関して「一般廃棄物に比べて1年に1000本しか出ない」等の表現が見られるが、全く質の違うものを比較に出すのはかえって不信感を招き、これでは国民の理解を得られない。
- スウェーデンでは、20年前から高レベル廃棄物の地層処分の研究所を作ってデータ蓄積をしている。日本は、そうした実証データが少ない。今後、国民が判断できるよう、そうした研究を進めていくべき。
- 放射性廃棄物の処分コストは、電気料金に入るが、CO2の処理はカウントされない。そうした面で、放射性廃棄物処理コストは環境保全コストともいえる。
- 放射性廃棄物処分のコストについては、不確定要素が多く、現在は、概算で試算している段階で、kWhあたり数銭程度と過大なインパクトを与えるものでないと、いうことが言える程度。今後、詰めていくとともに、スウェーデンの研究所みたいなものを作り、より確実な試算をしていきたいと考えている。
┌─────────────────────────────────┐
3│・廃棄物の問題は、我々の世代の責任としてまじめに考える必要があるが│
│、原子力の推進とは別に議論するべきであるとの意見が出された。 │
│・一方、これに関連し、原子力の推進の是非に関わらず廃棄物の問題は難│
│しい問題であり、原子力の推進と別に議論する、しないの問題ではない │
│と意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 現在、廃棄物はあるので、これについては我々の世代の責任として、きちんとまじめに考えていくべきであるが、産業の利害とは独立して、つまり原子力の推進とは別に議論するべき。スウェーデンのように一応将来は原子力を廃棄するとなっている国では議論がしやすい。
- スウェーデンや米国でもまだ使用済燃料処分のめどは立っていない。この問題は原子力をやるやらないに関わらず難しい問題であり、原子力をやめれば、廃棄物問題が議論しやすくなるという言い方をするのはおかしい。
- 原子力をやめれば、廃棄物問題が議論しやすくなるというのは、原子力の推進とは独立に、廃棄物問題を議論しなければいけないという趣旨だ。
□エネルギー源の選択
┌─────────────────────────────────┐
1│エネルギーについては、経済性、環境保全等も含め総合的に考える必要が│
│あるとの意見が出された。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 火力発電から出るCO2は長期的に温室効果で影響があるとされている。原子力発電は、CO2を出さないが、放射性廃棄物が発生する。しかし、我々は、これは安全な処分が可能と考えている。全体を対比し、選択を考えていただきたい。
- 米国のように高い、安いだけで電源を決めてよいかは疑問。経済性も無視できないが、環境保全コストも含めて日本では原子力の意義を考えていくことが重要。
- 原子力しかないという方向ではなく、いろいろなトライアルがあっていいと考える。国には、科学技術の総合エネルギー政策を求めたい。
┌─────────────────────────────────┐
2│エネルギー源のリスクに関して、どのエネルギーを使用してもリスクは伴│
│うが、省エネに努力した上で、太陽エネルギーの方向にすべきである。し│
│かし、それにしてもアセスメントをきちんと議論するプロセスが必要であ│
│るとの意見が出された。一方、太陽発電だけで、石油、石炭を使わないで│
│済むことにはならないとの指摘がなされた。 │
└─────────────────────────────────┘
(議事の概要)
- 原子力はリスクがあるというが、原子力をやめるとリスクはないのか。どっちにしろ、いろいろなリスクがあり、何を選ぶかは時代認識。
- どんなことをやってもエネルギー消費に伴うリスクはあるが、一番いい選択は、可能な限り省エネルギーに努力した上で、最終的には太陽エネルギーの方向にするべきと考えている。ただ、それにしてもリスクがないということはなく、アセスメントをきちんとして議論するというプロセスが必要。はじめに原子力ありきではダメだ。
- 現実的な仮定(日照時間5時間以上、建築面積は75m2以上、切り妻と寄せ棟の南斜面の半分におく)で太陽エネルギーの試算をすると95年の最大電力の11%、94年の発電電力量の2%程度。太陽発電は大いにやるべきであるが、これにより、石油、石炭を使わないで済むということにはならない。
《大臣退席時挨拶》
- 廃炉したあとその場に原子炉をつくれるかどうかは地元の御了解・御理解が得られた場合であり、原子力委員会がそこに原子力施設を建てると決めていることではない。
- 全体のエネルギー事情との関連で原子力の長期的な見通しについては、エネルギー需給見通しを踏まえて原子力委員会も持っている。
- 本円卓会議は総理の指示によって設置しており、報告もしている。決して軽いものではない。
- 放射性廃棄物、使用済燃料の問題は重い問題。リサイクルしてもしなくても、高・低レベル放射性廃棄物の処分地は必要ということはご理解いただけると思う。使用済燃料を暫定的に発電所で保管するべきという意見もあったが、地元の了解は得られない。これも踏まえて議論するべき。
- 最終処分地は地元の了解なしに一方的に決められない。それまでの立地条件、実施主体の確立等を考えると、やはり2010年くらいになるのではないかと思う。
- 地域振興について、研究所、交付金、電気料金の割引などについて最大限努力したい。その他の問題についても地元の意見として出来る限りの努力していきたい。
- 原子力の行政組織についてもいろいろご意見があったが、安全委員会は単なる諮問機関ではないと考えている。
《伊原原子力委員会委員長代理閉会挨拶》
- 本日は、「原子力開発利用政策のあり方」、「核燃料リサイクルの意義・展望」まで踏み込んだ議論となったが、大変有意義な議論であった。
- 本日の議論をしっかり受け止め、これからの原子力政策に的確に反映してまいりたい。
「円卓会議」目次へ