原子力政策円卓会議(第6回)
議 事 録


原子力政策円卓原子力政策円卓会議(第6回)議事録原子力政策円卓会議(第6回)議事録原子力政策円卓会議(第6回)議事録会議(第6回)議事録 日 時: 1996年7月2日
     13:30−17:30

場 所: KKR HOTEL TOKYO


出 席 者


開  会

【中川】  それではただいまより、第6回原子力政策円卓会議を開かせていただきたいと存じます。ご参集、ご出席をお願いした責任者といたしまして、一言先にごあいさつをさせていただきます。
 この第6回円卓会議にご多忙中にもかかわらず、各方面の第一線でご活躍の皆様方のご出席が得られたことに対して、まずもって心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
 この原子力政策円卓会議は、4月25日の第1回以来、本日で第6回目となりますが、最初の4回の会議においては、各界各層の方々のご参加を得て、特段のテーマを決めずに幅広い観点から議論を行ってまいりました。それにより、原子力をめぐる大方の論点は出たものと考えております。前第5回目からは、明らかになったこうした論点、さらには課題や問題点等を踏まえまして順次分野を絞り、テーマを設定した上で、より深い議論をお願い申し上げしているところでございます。
 本日は、「エネルギーと原子力」という観点からの議論を皆様とともに深めていきたいと存じますが、一口に「エネルギーと原子力」と言いましても、これには開発途上国のエネルギー確保を含めた世界的なエネルギー受給の観点、あるいはまた地球規模の環境問題といったグローバルな視点も重要でございます。また、ライフスタイルを含めた社会の構造や生活のあり方、さらには省エネルギーとともに、最近特に期待が高まっている太陽エネルギーをはじめとする新しいエネルギーの開発への取り組み等々、多くのご議論があろうと存じます。このようにこの分野は非常に幅広く、また奥深いものでございます。そうした大きな分野ではございますけれども、本日はできる限り共通の土俵でご議論をいただき、コンセンサスを作ることができればと考えております。
 なお、前回の会議において、その前の会議で非常にご意見の多かった情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進については、モデレーターの先生方から、原子力委員会で必要な措置をとるようご要請がございました。原子力委員会としてはこれをしっかり受けとめ、鋭意検討を行ってまいります。
 本日もこれまでと同様に、皆様方による建設的な議論が行われ、この会議が実りあるものになることを心から期待を申し上げ、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは委員長代理、よろしくお願いします。
【伊原】  委員長代理の伊原でございます。この円卓会議につきましてご説明させていただきます。
 まず、円卓会議におきましては、議論を効率的に行っていただく。そういう目的でモデレーターの方々6名をお願いいたしまして、議事の進行と取りまとめ、これを行っていただくことになっております。
 本日は、東京大学名誉教授の茅さん、評論家の五代さん、日本経済新聞論説委員の鳥井さん、この3名の方にお越しをいただいておりまして、議事の進行をお願いいたすことになります。お三人でご相談いただきました結果、前半を鳥井さん、後半を茅さんで進行をお願いいたしまして、五代さんにはお二人のご支援をお願いする、こういうふうにいたしております。
 それでは、鳥井さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【鳥井】  鳥井でございます。前半の議事進行をさせていただきます。後半は茅さんにお願いをしたいと思います。
 最初になんですが、この円卓会議の趣旨だとか運営に関する基本的事項について、お手元に資料が配布されていると思います。ご一読いただき、会議の円滑な進行にご協力をいただきたいと思います。
 ポイントだけちょっとご紹介いたしますと、私ども、モデレーターの役割なんですが、参加者の意見を公平に取り上げて円滑な議事進行に努める。さらに会議において、またモデレーターも個人的な意見を述べることがありますと、こういうことでございます。
 もう一つ、先ほど大臣の方から、今までモデレーターの方から要請したことについて、真摯にご検討いただくというお話がありましたが、会議の中で今後の原子力政策に反映すべき事項、または検討すべき事項が明らかになった場合、関係省庁でも具体的に検討をしていく、こういうことになっております。
 この円卓会議なんですが、狭い意味で原子力についてご意見をお伺いするということではなくて、原子力をめぐる幅広い議論ができるように運営していきたい、こういうふうに思っております。この後も少しお時間をいただいて、会議の論点などについてご紹介をいたしますが、その前に、今日ご出席いただいている招へい者の方々をご紹介をさせていただきたいと思います。アイウエオ順でございます。
        (招へい者紹介)
【鳥井】  円卓会議は、最初の4回で様々な分野の多くの方々においでいただきまして、特定の分野にとどまらない自由な議論をしてまいりました。先ほど大臣からもお話がありましたように、原子力をめぐる大方の論点が、その4回で出てきたのではないかというふうに思っております。
 それで、これまでの議論、それぞれの回ごとに議事概要としてまとめてありましたお手元に配布されていると思いますが、大体問題点としましては、以下四つの点ぐらいに要約できるのではないかというふうに考えています。
 原子力と社会、特に安全安心に関する事柄、エネルギーと原子力に関する事柄、原子力と核燃料サイクルに関する事柄、原子力と社会とのかかわりに関する事柄と、この4点に集約できるのではないかというふうに考えております。それぞれ、その4点がどんな問題を含んでいるかということは、お手元の資料の中に含まれておりますので、ご参考にしていただければと思います。
 私どもモデレーターは、この4つの分野について、今後の円卓会議において順次議論を深めていきたいというふうに考えております。もちろんこの4分野の分類というのも、絶対的なものではなくて、お互いに非常に深い関係があるわけでございます。しかし、毎回時間が限られておりますので、議論を効率的に進めるという意味から、今、申し上げました四つの分野を回を追うごとに順次取り上げるという、そういう形にさせていただきたいと思っております。
 また、円卓会議の今後のスケジュールにつきましては、10回までが決定しておりまして、詳細につきまして、お手元の資料、原子力政策円卓会議の当面の開催についてという資料がございますが、そこをごらんいただければと思います。また、8回と10回につきましては、広く一般公募による参加や、原子力モニターの方々の参加を得て、議論の幅を広げたいというふうに思っております。本日、お集まりの皆様方には、一人でも多くの方々に一般公募がされているよという、こういう情報をお伝えいただければ幸い、こういうふうに考えています。
 本日は、先ほどの4分野の中のエネルギーと原子力に関する事項を取り上げるわけですが、具体的には、「原子力に代われるエネルギーは? エネルギーと原子力」というテーマを設定させていただきました。私どもといたしましては、世界のエネルギー情勢、ライフスタイル、社会経済構造とエネルギー受給、地球環境といった点、それから新エネルギーや省エネルギー、原子力エネルギーの意義といった問題、さらに、これらの二点を踏まえたエネルギー源の選択の問題などの項目が、とりあえず議論のヒントになるのではないかと思っております。もちろん、皆様の自由な発想でご議論いただければ幸いでございます。
 大変長くなって申しわけないんですが、回を追うごとにモデレーターのしゃべる量が増えてまいりまして、ここで1回から4回目までの円卓会議で行われた議論の概要を、私の方から若干、紹介をさせていただきます。詳しくはお手元の資料の、原子力政策円卓会議第1回から4回までに出された議論のポイント、資料3をごらんいただくとして、私の方から要点だけを申し上げます。
 まず、世界のエネルギー情勢、それからライフスタイル、社会経済構造とエネルギー需給、地球環境、こういった点では、WHOの予測では、世界の人口は2050年に倍増すると言われており、エネルギー消費の増大は必至である。こんな議論がありました。さらに、今後、大量生産大量消費の時代が終わるということは、大変多くの人々が共通する認識であり、我々がどんな生活を選択するかということについて議論が必要ではないか、こういう議論がありました。さらに、日本の電力消費をどこまで抑えられるのかという点について、きちんと議論をして共通の認識を持つべきではないか、こういう議論もありました。さらに、炭酸ガスや酸性雨など、環境に影響を与えるようなものを次の世代に残していくのはいけない、こういう議論もあったようです。
 次に二番目の新エネルギー、省エネルギー、それから原子力エネルギーの意義、こういった点につきましては、新エネルギーの現状はどうなのかという点についてちゃんと議論を行い、共通基盤をまず作るべきだ、こういう問題提起がございます。今後のエネルギー需要の伸びを考えると、有限な化石エネルギーだけに頼るのは不可能であり、また環境問題の観点からも将来のエネルギーとして原子力は必要だ、こういうご指摘もありました。さらに、原子力は深層防護の考え方のもと、環境負荷が小さく安全性にすぐれ、他のエネルギー源に匹敵する経済性を有するエネルギー源だ、こんなご意見もありました。
 また三番目のエネルギー源の選択といった点につきますと、高級な物質である石炭、石油を燃やすことはもったいないし、発生したCO2 は元に戻せない。そうでないエネルギーの取り方をするべきだ、こういうご指摘もありました。さらに原子力問題は好きか嫌いかではなく、一つのエネルギー源として原子力発電の割合がどのくらいであるべきかといったことを議論するべきだ、こういうご議論もありました。さらに、人間圏がエネルギー源を必要としている以上、原子力かその他かという選択の問題があるが、その場合、資源エネルギー問題、核廃棄物処理、巨大な技術システムをどう考えるか、そういった問題を考えておく必要がある、こういうご議論があったように思います。
 また前回、実は議事録が配布をされてないんですが、前回の第5回目では、原子力は安全か安心かというテーマで議論をいたしました。その中では、本日の議題になっております「エネルギーと原子力」という問題にかかわる議論はほとんどございませんでした。ただ一つ、ある方から、高速増殖炉の商業炉が5基、順調に2050年に稼働していると仮定し、なおかつ日本のエネルギー需要が現在と同じだとした場合、日本の必要とするエネルギーの1%ぐらいしか高速増殖炉ではつくれない。そうしたものを、日本のエネルギーの根幹とすることは、社会的安全の面から見ても重大な問題だといったご意見がありました。それに対して、安全安心のテーマとは異なるから別の機会に議論をしようよということが、前回のそういう扱いになっています。
 私どもモデレーターとしては、皆様に十分ご発言いただけるよう、会議の議事運営を務めるだけでなく、議論の流れを十分踏まえつつ、取りまとめをしてまいりますので、出席者の方々には日ごろお考えになっていることを、忌憚なく建設的にご議論をいただけたらと思っております。
 本日の議事の運営の仕方ですが、まず最初に舟橋さん、内山さん、古沢さんの3人の方から、議論の基調となる事実関係、視点、ご意見などについて、基調発言をしていただきたいと思います。それ以外の方には大変恐縮なんですが、ご自身の意見などについては、後の自由討論の場でご議論をいただければと思います。これは、これまで4回の会議の経験を踏まえまして、少しでも討論の時間を長く取りたいということでそういう運営方法を考えております。ぜひご理解いただきたいと思います。
 それでは基調発言に移りますが、まず、舟橋川越市長から基調発言をしていただけますでしょうか。

基 調 発 言

【舟橋】  川越市長の舟橋でございます。今日は、最初に発言をさせていただきまして大変名誉なことでございますので、心からお礼を申し上げます。
 私、川越市長として、今、川越市役所で1%節電運動というのをやっております。要するに原発の増加をこれで幾らかでも増やさないで済むというような方向に行けないかということを標題といたしまして、1%節電をいたしておるわけでございます。成績は後で申し上げますが、この点が大変話題となりまして、あちらこちらからいろいろ聞かれるわけでございまして、今日もそういった問題があったのかなというふうに思いますので、ちょっとこの点について、まず説明をしなきゃいけないなとこう思っているわけでございます。
 川越というのは、皆さん方、ご承知になっている方もいらっしゃいましょうし、あるいはまた、まだ全然知らない方もいらっしゃると思うんで、ちょっとパンフレットを差し上げたんですけれども、人口が32万とちょっとでございます。中堅の市ということが言えると思うんでございますが、埼玉県では43市ございますが、そのうち一番最初に市制をしいたものですから、75年ほどになります。川越は一番古いということで、いろんな面で一番の話の材料にされる市でございます。
 距離的には、池袋から東上線という、東武鉄道で30分で行けるわけでございまして、また有楽町線の地下鉄が入っております。有楽町から1時間とちょっとでございますが、さらにまた、JRで今、恵比寿まで延線いたしましたが、約1時間で恵比寿から新宿を通って、大宮を通って直通で行けるという場所でございまして、さらに西武鉄道では、新宿から1時間足らずで川越まで直通で行っているという格好でございまして、大変交通は便利でございまして、駅が10カ所ある市でございまして、大変珍しいわけでございますが、そういった町でございますが、大変古い町でございますので、町並みなんかは、やはり道路が細かったり、古い蔵のつくりの、観光客がそれでたくさんおいでになりますが、年間に400万ぐらいおいでになるわけでございますが、そういった非常に古い町でございます。町並みは知恵伊豆と称する松平信綱さんがつくった町を、今、踏襲しておりますので、中心街は。大変古い町でございますが、そういった市であるというご認識をひとつしていただきたいと思います。
 私は市長でございますが、原発の立地の場所でもないのに何でこんなことを始めたんだと、こう皆さん方、不思議なふうに思う方がいらっしゃると思うんですが、私は、市長としては市民の安全ということを考える点については、すべての面でこれを確保する義務と必要性を、私は痛感いたしております。実は私、弁護士でもございますので、将来の危険発生のおそれのあるものについては、これは厳しく対処する、放置することをしないという原則をとっておりますので、危険予知とかそういった予知の義務とかについては、業務上、相当注意をすべきであるというふうに思っております。
 今、問題になっているエイズの問題なんかも、ちょっとこれにひっかかると思うんですけれども、そういうふうに私はふだんから思っておりますので、この原発につきましても、やはり立地の場所ではないけれども、高速道路が、関越が通っておりますので、通過することもあるだろうなと思うんでございますが、燃料の輸送は。さらにまた過去におきましては、世界各国でそれなりの事故が起きておるということを聞いておりますし、先進欧米諸国では、計画の縮小とか、あるいは全然つくらないとか、そういうようなこともあるというふうに聞いておるわけでございますので、こういう意味におきましては、一たん事故が起きれば、宇宙規模の事故になる、地球規模の事故になる、こういうことを考えますと、やはり立地の場所でない私どもとしても、これは対岸の火災視をすべきではないというふうに私は考えておりまして、こういう行動をいたしておるわけでございます。
 直接のきっかけというのは、「もんじゅ」の事故後に議会で一般質問が出まして、これに対する取り組みということが出たのがきっかけにはなっておるわけでございますけれども、今言ったような点から、私は前々からいろんな面で考えておったわけでございます。それでちょうどいい機会であるから、チェルノブイルの10周年でもあるし、何か一つ川越市でもやりたいなとこう思っておりまして、1%節電と、こういうことで実は始めたわけでございます。
 ただ、私は今、無党派なんですけれども、世間的な分類からいたしますと、保守系無所属という分類をされる立場でございます。したがいまして、私のような立場の市長が、原発になんか触れるなと、こういうものは臭いものにふたをしておけばいいんだ、おまえさんの選挙には不利益になるよというのが、大体町の声であります。したがいまして、この会議が国民的合意ということでお始めになって、大変いいことだと思うんですけれども、大体あまりこういうのには触れないほうがいいというのが、首長さんのお考えじゃないかと私は思います。いわゆる場所については、賛成、反対が明確になると思うんですけれども、私どもにとりましては、余計なことかなということを考える方が実は多いんですね。ですから、正直のところ、こういうことをやるには勇気が要ります、私ども選挙をやる身には。正直のところ、そういう偽らざる感情です。ただ、避けて通れない問題であろう。そしてこの市民の安全を確保する。これにはやはり触れるべきであろうと思って、私もやっておるわけでございますけれども、実を言いますと、ちょっといくらか気になる行動だと、自分ながら思っているのが真実偽らざる心境でございます。
 したがいまして、私は今後もさらにまた、活動は続けるつもりでございますけれども、やはりこういった問題というのが、日本の原子力問題、原発問題につきましては、なかなかそういう意味では、国民全部がそういった考えは持っておっても、発表するというのは非常に難しいかなという、あるいはまた、人ごとであるという感覚をお持ちの方もたくさんいると思うんですね。電気は使っておっても、作るほうについては直接関係ないから、そんな論議する必要ないだろうという方が大部分かなと、こう思うわけでございますが、私としては、あえてこういった運動というか、活動を続けておる、こういう立場でございますので、この辺もご理解をいただきたいと思うわけでございます。
 それともう一つ、どうも弁護士ですからうるさいんですけれども、人間のやることで完全なことなんていうのは極限概念だと思うんですね。全くトラブルが起きない原子力発電というのはあり得ないであろう。ただ、地球を揺るがすようなアクシデントに至らないトラブル、多少、機械や何かというのはあるということは予測しなくちゃいけないと思うんですね。これは全くないと言えばうそになると思うんですよ。ですから、少なくとも情報提供とか説明には、多少なりともそういったトラブルが起きても、少なくともそのトラブルはこういった関係で起きるであろうとか、ここら辺はやむを得ないとかということぐらい、むしろはっきり言うべきだろう。というのは、いつもテレビやマスコミでどこの発電所でこういうことが起きましたというのが報道されますね。だからこれは、多少は人間のやることですからやむを得ない。しかしながら、地球汚染にいくようなアクシデントに至るということについては、ちょっと困るわけでございますから、そこら辺をどう阻止するか。そしてまた、そういう予測というのは全くないのか。あるということは言えないわけでございますけれども、そういう点について、素人にもわかるような解説をもっとPRすべきかなという感じは、私は持っております。実は私、弁護士ですから、原発については残念ながら技術的知識は全くありません。ごく初歩的な知識しか持っていない素人でございますから、そういう点については、もう少し解説の必要があるのかな、こういうふうに思うわけでございます。
 実を言いますと、今までの会議録を見せていただきましたが、賛成、反対という終局的には両方になっちゃいますね。議論をすれば溝が深まるばかりだというのが、この前の会議録にたしかあったと思いますが、この賛成か反対かという以外に、何らかのベストじゃなくてもベターな解決方法はないのか。現実に原子力が動いているわけですよ。その恩恵をこうむっております、私どもは。したがいまして、賛成、反対、もう一つの方法はないのか。そしてうまくこれを国民が納得するような方向で解決する方向はないのか。私はそういうことも思いを込めて、この節電の運動を始めておるわけでございます。
 これは、実は二つ、賛成、反対の、永久に平行線かもしれませんが、このほかに現実的な理論としては、現在、東京電力さんでも約4割ですか、原発に頼っている電力ですね。しかし、これはイギリス全体の発電所より、東京電力さんの発電所の方が多いそうですね、何か聞きますと。そうなりますと、資源小国の日本がまことに電力大消費国である。まだこれからもどんどんと伸びるだろう、夏の甲子園のときはもっと伸びるだろう、こういうことになりますと、電気を垂れ流し的にみんなで節電の努力をしないで使っておいて、夏は、西日のところでも電気を全部つけておいて、クーラーを最大限にかけてテレビを見ておる。こういうことをやりながら、発電所を作るなというのは、いささか消費者エゴであろうと、私はそう思います。いくらでもつくらなきゃならないという需要があれば、つくらざるを得ないんです。それは原発に結びつくのは当然ですよね。これは一番経済的、そしてまた効率的な発電が原発であるというふうに聞いておりますので、これはどうしてもそれにつながる。
 そういたしますと、これは、やはり私はみんなでできることは、少しでも電力を節約して、節約してどうするかというと、私の考えとしては、多少なりとも需要を抑えれば時間的な余裕ができる。要するに原発の安全性、さらにまた他のクリーンエネルギー、新エネルギーの開発の時間、そしてまた国民的合意を得る時間、あるいは既存の原発でも安全性を確保するためのいろんな行動とか点検ができ、整理ができるであろう。こういうことになりますと、やはりそれなりの時間が必要であろう、またよく考える時間も必要であろうと、こういうことでございますので、私としては、とにかくできるだけの節電をして、そういう時間的余裕をつくってもらおう。これが一つの賛成、反対と別個にまた、現実に存在する原発を前提にして、現実を無視することなくやれる方法かなと、こういうふうに思ってこの節電の一つにしているわけでございます。
 ただ、そのほかに、私の市役所としては、年間5億8,000万ほどの電力料金を払っております。これを相当節約いたしますと、大変行政改革にもなりますので、そういうことになりますと、この1%節電というのは、無理なく抵抗力なく自然体で、しかも原発に関しては関心を持っていただく、こういうことでございますので、一石三鳥かなと思って、私は実行いたしているわけでございます。
 賛成、反対の上にこの理論が果たして、両方の意見を弁証法的にアウフヘーベンして、高次な意見なんかになるわけないと思うんですけれども、少しはそういう第三的な意見があって、現実に稼働している原発を前提として、私は原発反対を言っているわけでもなし、今ある原発の施設を壊せと言っているわけじゃないんですね。あくまで存在を前提にして、しかし次の方法がどういうのがとれるか、こういうことを考えて提唱をいたしておるわけでございます。そういった意味では、時間的余裕もつくっていただいて、できるだけ節電というものをやりまして、いろんな意味で効果が出ないかと、こういうことに思っているわけです。
 この節電につきましては、急いで申し上げますけれども、4月から始めたんですけれども、私の調べでは、4月分と5月分2カ月で、合計して昨年の2カ月より3.27%減りました。電気料金は約1,030万減っております。これは電力料金が安くなっているんですね、大変ありがたいんですけど。それもプラスいたしましたので、この2カ月で1,030万をちょっと超える金額が安くなっております。この点は市民の税金を主体とするこの地方自治体のふところの状況としては、大変ありがたいことでございまして、職員に協力いただいておるわけでございます。
 これが一般家庭にまで普及いたしまして、みんなでそういうことができればいいなと思うんですけど、私は強制もいたしませんし、いいと思ったらやってくださいよ、電力料金が安くなるんですよということを今、言っているだけでございますが、この成果を見ながら、次の方法を考えていこうかと、こういうふうに思っているわけでございます。
 それから最後に、今日は新しいエネルギーの問題もあるようでございますので、ちょっとそちらにも触れないといけないと思うんですけど、私としては、特定の立場、特定の政治的な立場、それから背景イデオロギー、そういうものは一切なく、純粋にこの原発を考えて行動しているわけでございますが、そういう立場で考えてみますと、無理なく取り得る方法、ベストでなくてもベターな方法、先ほど言いましたように。今後の原発問題を考える、こういうことになりますと、これは国民にとりましてはやはり心配なんですね。素人である私も心配ですよ、原発は。だから、トイレなきマンションと言われるこの廃棄物の処理の問題がございますね。たとえ低レベルのものであっても、あのドラム缶に入れて埋めるということ、やっぱり地球の中にしまっておくという点についてはちょっと心配なわけです、今後について。ですから、これはあまり増えないほうがいいだろうという気持ちが私はありますので、こういう運動に関係するわけですけれども、やはりこれは、皆さんがいろんなことをお考えになって、原発という既に存在する、稼働している、私が恩恵をこうむっている、これを無理なくやわらかく包むような論議をしながら、他のクリーンエネルギーの普及に、やはりこれはかなりの資金を投じていただきたい。おそらく、「もんじゅ」以下でどれだけ資金を投入して研究費は出しているか、ちょっと細かくわかりませんけれども、これは他のエネルギーについては、まだちょっとそういった意味の補助援助が足りないんじゃないかという気がするわけでございます。そういうことで投じていただけるならば、開発がさらにまたできるであろう。また将来、原発がいわゆる灰色のときには、かなりなお金がかかることは間違いございませんし、廃棄物の処理については、大変また心配な点、また将来も金がかかるであろうということを考えますと、現段階から他の新エネルギーの開発には、もっともっと力を入れて金を投じていただく必要があるんじゃないか、私はそういうふうに考えております。
 それともう一つ、例えば災害の発生したとき、私も神戸のほうへ震災後行ってみたんですけれども、いきなり電気が消える、それからガスがとまる、水道もとまりますね。それから電話がとまる、通信どころか道路が途絶する。こういう中において、私どももまた生活していかなくちゃならないわけですけれども、川越は、できるだけのことをして対策をとろうと思って、今、水がなかったら生活できないというのが明白になりましたので、神戸に私ども、2万袋の食糧を送ったんですけれども、行きましたら堅いカンパンですと、水がなきゃ食えないということを言われました。ですから、水が重要でございますので、川越は今、9本ある井戸を地下水をくみ上げて、ふだん使ってない井戸でございますが、災害用の井戸を、7本あるのを9本増やして、さらに3本増やしています。これで大体一挙に100万から200万の、いきなりこれは供給できる体制を今整えておりますが、これについては、災害が起きてから全部発電設備をつけたんですね。したがって、全部電気がつくようになっております。
 そういうことを考えますと、やはりふだんからソーラーなり何なりで備蓄ができない電気、多少は備蓄できるんでしょうけれども、これは直ちに発電設備をつけて動かすわけですね、そういうのを。だからそういうことから考えますと、たくさんの種類のそういった発電設備というのを今後考えなきゃならない。家庭でも自分のところで発電設備、ソーラーや何かを考える、こういう時代がきていると思いますので、広くそういった意味でこれを考えて行動に移すべきであろうと思いますので、どうか新エネルギーについても、相当な予算を割いていただいて研究を補助していただく、こういうことによって普及するのではないかと、こういうふうに思っているわけでございます。
 時間をちょっと食ったと思うんでございますが、大ざっぱにはそういうことで、私、今後も節電運動は市役所で続けていきたい。大変職員が協力してくれまして文句を言う人がいないんです。お昼のとき、御飯を食べるときは全部消していますから、大変気の毒なんですけれども本が読めない。窓際で読んでくれ。市長室は窓際は全部電気を消しておりますから、3分の1常時とめておりますが、そういうことで、私、係長以下の職員を主体に対話をやりまして、市長室で。一人ずつ全部しゃべります。大体今、1,000人近くやっております。2,300人ほど職員がおりますが、40%ほどでやっておりますが、この点について、文句を言う職員は一人もいませんので、市長だから文句を言わないのかもしれませんが、大変趣旨を理解して協力していただいておりますので、多少なりとも原発に関心を持っていただく。そしてまた、それなりに節電をしていただく。こういうことでやっておりますので、ひとつご理解いただきたいということでございます。大変雑駁なまとまりのないお話で恐縮でございますが、終わらせていただきます。ありがとうございました。
【鳥井】  ありがとうございました。ちょっとご確認をさせていただきたいんですが、1%節電運動といいますのは、市の建物を対象にした。
【舟橋】  市の建物と市の施設全部でございます。学校も含めて。
【鳥井】  市民の方々には何かそれを……。
【舟橋】  それは理解してくれる方もいらっしゃると思うんですけれども、特別に市民に広げようということはやっておりません。様子を見ながら、そろそろ応援団がついてまいりましたので、自発的にやっていただきたいと思って期待をいたしております。
【鳥井】  ありがとうございました。
 それでは、次に内山さんの方からお願いをしたいと思います。
【内山】  電力中央研究所の内山でございます。お手元の資料4と、それとは別にA4一枚の資料があると思いますので、そのA4の資料に沿って説明させていただきます。
(−OHP−)
 エネルギーは目に見ることができない。そういうことから私たちはふだん、どのくらいのエネルギーを使っているのかということがわからないわけですが、OHPにありますように、この100年間で何と25倍、特に戦後から見ますと4.6倍にも膨れ上がっています。現在のエネルギー消費は、石油に換算しまして80億トン、一人当たりにしまして1.4トンの消費量になっております。そのうちの90%に相当するのが化石燃料でありまして、石油が40%、石炭30%、天然ガス20%と、いわゆる化石燃料によって私たちのエネルギーは供給されているという事実があります。これは過去も現在も、そして将来も変わらないということがまず基本認識として大事ではないかと思います。
 このように、大量のエネルギーを使うことによって私たちは、非常に豊かに生活を営む社会が築き上げられる。肉体労働等から解放され、快適で生活しやすい日々を送れるようになっております。
(−OHP−)
 一人当たりのエネルギー消費を見てみますと、先進国は途上国の10倍使っております。すなわち、世界の人口の15%の人が全体の52%のエネルギーを使っている。途上国は75%の人口ですが、消費量はせいぜい20%ちょっとぐらいです。特に多いのは、アメリカが日本の2.5倍、ヨーロッパでもオランダは、日本の1.8倍、スウェーデンやデンマークも日本の1.5倍と、一人当たりのエネルギー消費を見ても、欧米は日本に比べかなり大きな値になっております。そういうところでは、省エネが今後非常に積極的にできるかと思いますが、省エネ国として最もすぐれている日本におきまして、いろいろ省エネ研究をやっているんですが、なかなか難しい問題がございます。いわばエネルギーは、私たちは水や空気のように豊富に使っているわけですが、この世界の人口57億を、今、大量にエネルギー消費によって養っているわけです。もう決して、昔の時代に戻ることはできない、そういう時代になっているかと思います。しかし、エネルギーというのは、水と空気とは根本的に違っております。それは三つの点で大きく違っております。
 一つは、枯渇するものであります。
(−OHP−)
 我々の研究の結果によりますと、良質な石油はあと20年ぐらいで減産せざるを得ません。この結果、世界的にも合意が得られているような結果でございます。そしてまた別の問題としまして。
(−OHP−)
 二番目に環境を非常に汚染するということがあります。酸性雨の原因であるSOxやNOx、そしてまた温暖化の原因となっておりますCO2を大量に今、放出しております。今、世界で放出されるCO2 の量は、重さでいいまして 230億トンです。石油換算で80億トンのエネルギーを使っているんですが、それの3倍近い重さのCO2 が出ているわけです。炭素換算にしますともっと小さくなりますが、このように膨大なCO2 を今、大気中に放出しながら私たちは豊かな生活を営んでおります。
 それから三番目は、エネルギーを供給するためには、変換技術を絶えず維持しなければならない。そのためには、エネルギー産業の方々が日夜努力して、一生懸命安全性を確保しなければならない。これが太陽光に変わっても同じことです。太陽光でも、やはりそれを作るためには産業を維持しなければならない。また太陽光発電を維持するためには、膨大な維持の人手がかかります。そのように、エネルギーを供給するということは、技術が支えているということであります。その点からも水や空気とは根本的に違っております。
 豊かな経済発展、それに必要な大量のエネルギー消費、それに伴う環境汚染、この大きな課題がトリレンマ状態にあります。このトリレンマ状態は、今とても解決することが難しい状況で、21世紀に向けて人類に投げかけられた大きな問題かと思います。
(−OHP−)
 世界の人口が爆発的に増えています。先ほど指摘していましたように、2050年には100億人になろうとしています。あの図に示しますピンクの部分が途上国の人口であります。21世紀は途上国の問題とも言えます。この世界爆発的に増えています人口を支えるエネルギー、果たしていつまで使えるのか。
(−OHP−)
 このグラフは、横軸に人口、縦軸に一人当たりのエネルギー消費を示します。面積の部分がそれぞれの地域のエネルギー消費量になっております。左側が先進国、その隣が旧ソ連、東欧、そして一番下の赤いところが途上国であります。途上国の一人当たりのエネルギー消費は約先進国の10分の1、人口は全体の75%。今、その人口の赤い部分の人たちが、先進国のライフスタイルをまねて、一人当たりエネルギー消費を徐々に増やしております。と同時に、人口爆発の90%以上が途上国で発生しています。
 そういうことから今後考えられるのは、あの赤い部分の面積が横と縦に広がっていくということです。つまり、それが必要なエネルギーになるということです。先進国の一人当たりのエネルギー消費が半分になったとしましても、非常に大きな面積になるということがわかります。また将来100億になれば、それが非常に大きな面積であることがおわかりいただけると思います。
(−OHP−)
 このエネルギー需要、もし世界の一人当たりのエネルギー消費を一定にしたとします。と、一体、この地球上にはどのくらいのエネルギーがあるのか。特に化石資源についてまず紹介しますと、石油は、地球上で確認埋蔵量が1兆バーレルと言われております。安価な石油の量というのは2.2兆バーレル。そのうちの 7,000億バーレルがもう既に使われております。すなわち残されている量は 1.5兆バーレル。そのうちの1兆バーレルが確認されている量です。しかし、今後の技術進歩によりまして、あの図にありますように、4兆バーレルぐらいの資源は使えるのではないかという楽観的な期待があります。このグラフは、最新のWCの推計結果から出しております。またIPPCの資料も参考にしております。
 しかし、天然ガスや石炭は豊富にあります。そういうことを見てみますと、その表の一番右下にありますように、石油に換算しまして33兆バーレルぐらいの化石燃料はまだある。今の石油の確認埋蔵量の33倍に相当する資源です。では、この楽観的な資源量を、一体人類はどのくらいで消費してしまうんでしょうか。
(−OHP−)
 もし、今の化石燃料の消費トレンドを描いたとします。そしてまた、一人当たりの世界平均のエネルギー消費を一定にしたとします。将来120億で人口はサチュレートすると言われています。と、先ほど言った石油は2030年ごろをピークにもう減産します。天然ガスも2040年〜2050年をピークに減産します。図で言いますと、下のほうの山がそうです。その後を補うのが石炭です。すなわち2050年ごろから、石炭の消費量が急激に増えてまいります。そして2150年をピークにして、化石燃料のエネルギー不足が深刻になります。ちょうどハッチで示した部分が不足する部分に相当します。つまり、このグラフから2050年には本格的な代替エネルギーが必要な時代に入る。そのころから化石燃料には依存し切れない時代になってくるということです。そうしなければ、大量の石炭消費、それに伴う環境破壊、あるいは資源枯渇の問題、そういう不安問題等々に人類は直面するということです。
(−OHP−)
 しかし、こういった化石燃料の消費も、西暦から見た長い歴史から見ますと、400年〜500年です。1億年から2億年もかけて地球上に蓄えられた化石燃料を、人類は今、400年〜500年で使い果たそうとしているわけです。いわば一瞬としての時代ではないかと思います。
 このようにエネルギーは世代間で非常に不公平さがあります。我々は非常に質のいいエネルギーを先に使える。そして将来の人たちには低品位のエネルギーを回す、あるいは当然、原子力も将来は使うことは明らかであります。そうしますと、私たちは今、エネルギーの選択することができるんですが、将来の人には選択の余地はありません。
 子孫のためにも、代替エネルギーは特に2050年ごろから本格的に必要になりますので、今からその準備をしていくことが必要だと考えられます。
(−OHP−)
 21世紀の最大課題は途上国問題と言われています。人口増加の90%が途上国で発生しております。人口抑制はそう簡単なことではありません。途上国も先進国と同じような生活を望んでおります。人口抑制が地域紛争を激化したり、あるいは全体主義を台頭したりするおそれもあります。そのためにはどうしても安定したエネルギーを確保することが大事だと思います。
(−OHP−)
 特に途上国の問題は、都市への人口が急増していることです。現在、都市人口は先進国では75%ですが、途上国は35%、約15億人です。それが2025年には55%、42億人にまで増えようとしております。都市のエネルギーは、バイオマスや自然エネルギーではとても賄い切れません。いわゆる大型発電による商業エネルギーがどうしても不可欠です。
(−OHP−)
 今、アジアを中心に原子力の開発が進んでおります。中国、インドネシア等々で計画が目白押しであります。たとえ先進国が今、原子力をストップしても、エネルギーが不足するアジア地域におきましては、原子力開発は不可欠であります。しかし、不安な要因は、原子力はやはり安全性を確保するために技術的なレベルを高めなければならないものです。そうした技術基盤のない途上国において、原子力開発が進むという懸念は非常に心配であります。それのためには、先進国が何とか技術的にそれを支援せざるを得ないのではないかと思います。
(−OHP−)
 原子力と自然エネルギーとどっちを選ぶのか。よくそういう議論がされているわけですが、私は両方必要だと思います。それではライフサイクルから見て、両者の比較してみますと、どういう結果になるのか。ライフサイクルというのは、建設から運転、解体、発電設備、燃料施設、それぞれについて、エネルギー投入量、及び資材投入量を分析した結果であります。
(−OHP−)
 自然エネルギーの発電は発電設備だけです。しかし原子力は、燃料サイクル、フロントエンド、そしてバックエンド、すべてが含まれます。当然、石炭も燃料を採掘してからそれから発電し、また灰を捨てるまでのプロセスが全部含まれます。このプロセスすべてについて、先ほどの建設、運転、廃棄の投入エネルギーを調べ、またそれから直接、間接に発生するCO2 発生量を調べました。
(−OHP−)
 30年間のプラント寿命の間、もしそれぞれのプラントが100万キロワットの設備をつくったとき、どのくらいの電気を社会に供給できるのか。これは年間の設備利用率でほとんど決まってまいります。原子力や火力は年間の設備利用率が75%です。それに対しまして、地熱、水力、風力、あるいは太陽光といったのは、自然の作用でもって年間発電できる量が少なくなってまいります。太陽光の場合、日本の例で言いますと、大体年間12%です。つまり、もし火力や原子力100万キロワットの電気を社会に太陽光発電で供給したとしますと、600万キロワットの設備をつくらなきゃいけないわけです。今、政府が進めています家庭用のPVパネル、太陽光電池、それが3キロワットです。すなわち200万世帯に設置して初めて原子力発電所1基分の電気が賄える。問題は、200万世帯の電源をだれがメンテナンスするんですかという、非常に大きな問題があります。
 また、設備の利用率が低いということは、集中発電の送電も不利だということです。集中発電設備は、送電線の効率を非常によくするわけです。太陽光の場合、年間12%ですと、そのために送電線をつくりますと、キロワットアワー当たりの送電コストは6倍になってしまうわけです。ですから、結局、自然エネルギーはそれぞれの需要地で使う。そういう点では、家庭の屋根に設置するのが一番いい方法なわけです。それを考えましても、自然エネルギーが原子力や火力という大型電源を凌駕して、社会の中心電源になるということはまず考えられません。この図でおわかりいただけますように、ライフサイクルから見ますと、青い部分が自分で先ほど建設、運用、あるいは廃棄の際に消費してしまうエネルギーでございます。黄色い部分が、社会に供給できる電気の量であります。明らかに自然エネルギーに比べて火力、原子力が大量の電気を社会に供給できることがわかっていただけると思います。
(−OHP−)
 今日の大量エネルギー消費、それには大型電源がどうしても不可欠です。またCO2 の問題が別の問題としてあります。CO2 を抑制する電源はどういうものか。これはこの分析結果によりますと、やはり再生可能エネルギー、そして原子力が最もすぐれております。火力発電はこの図から見てもおわかりいただきますように、発電時の燃料から膨大なCO2 が出ております。このように、CO2 を抑制するためには当然、再生可能エネルギーや原子力の導入が必要になります。
(−OHP−)
 これはお手元のA4の裏にありますが、各種エネルギーをそれでは比較してみますとどういうことか。結局、すべてを満足できるエネルギーは一つもないということです。石油は、21世紀、来世紀初期には途絶の心配があります。それから、電気の信頼性としまして、変動の大きい再生可能エネルギーは、安定したエネルギー源ではありません。それがある意味で、経済的に非常に不利にしております。しかし、再生可能エネルギーは、環境性では非常にすぐれております。環境性では、石炭が非常に大きな問題です。そして安全問題では、原子力に対する不安感があります。しかし、この安全問題もよくわかりません。
(−OHP−)
 これはフリシェの論文から図に描いたものですが、過去の大型プラントのリスクを分析した結果ですが、それによりますと、石炭火力が最も大きなリスクになっています。黄色い部分がまだ不確実性があるんですが、自然エネルギーです。これは化学工場等におきまして、セルを製造するときに化学物質を使う、あるいは風力もそういった機器を作る、あるいはそれを輸送する過程での事故等々を考えてみますと、小さいものが積もると非常に大きくなるという一つの例であります。
(−OHP−)
 大規模な大型技術は果たしてそれでは本当に事故は、リスクは高いんだろうかということですが、これは過去100年間の自然災害と人工災害を比較したものです。横が災害の大きさでありまして、縦がその頻度であります。上のほうに水害、嵐、あるいは地震、火山、そういう災害がありますが、大型事故はその下に位置しております。つまり、過去の歴史的な経緯からもわかりますように、人間は大型災害を自然災害以下にするという努力をしているわけです。
 最後まとめますと、私たちのエネルギー、私たちというのは、地域間、あるいは世代間、それを考えたエネルギーではないかと思います。そういった公平さを考えながら、これからのエネルギー技術開発をしていくことが大事だと考えています。以上です。
【鳥井】  ありがとうございました。大変たくさんのデータを示していただいたと思います。
 それでは、古沢さん、お願いいたします。
【古沢】  今、お話にあった私たちが大変大きな転換期にきているということでは、前半部分はほとんど同じ現状認識です。ただ、結論部分がちょっと違うんです。つまり、大型大量集中型の発電施設でやっていくという展望を示したわけですけれども、私は分散型への転換を展望しています。つまり、大規模集中型のライフスタイルは、21世紀にかけては大きく変わるだろう。それに対応するようなエネルギー供給のあり方を今から作るべきじゃないか。自然エネルギーの問題点はたくさんあるわけですけれども、私の結論としては、今、大きくその自然エネルギー、あるいは再生エネルギーに向けてのエネルギー革命が始まっている、あるいは始まろうとしている。それをどういうふうに先取りして、その体制に私たちを導くかという、その課題があるのではないかというのが結論です。
 細かい点、また少しいろいろと例をお見せしたいと思いますが、前半部分、全く同じなんですけれども、私たちの今生きている、20世紀の時代が大変な時代だと、つまり、私たち人類がかつてなかった大量の資源やエネルギーや、あるいは情報も含めてですけれども、展開している。これは100年単位で私たちが大変な幾何級数的なすさまじい勢いの発展パターンをとり、これが21世紀も永遠にこうやって成長パターンが続いていくというふうに、果たして展望できるか。これは私はできないと思っているわけです。
 一例を挙げますと、これは全く逆な図ですが、ちょうど正反対ですね。これは地球上から消えていく生物の種の絶滅速度、これが急速に20世紀に拡大しているわけですね。こういった形で人類だけがこの自然や資源やさまざまなものを一方的に使っていい状況はもうなくなってきている。これも全く先ほどのお話と一緒ですが、かつての、まあ、古代の人間に対して現代人、これは高度産業化社会の中で、アメリカの70年代から80年ぐらいのレベルですけれども、一人当たり何キロカロリー使っているか。つまり、古代の人たちに比べれば100倍のエネルギーを使っている。こういう私たちの発展パターンをとっているわけですが、ただ、これは時代の変化だけではない。現在の時点でも、国別の一人当たり消費するエネルギーの場合、これも大体 70倍〜80倍の差があるわけです。そしてその一部の人たちが大量に使っている状況がある。
 この問題というのは非常に大きなテーマだと思います。つまり、すべての人たちがこういった形で大量消費型の集中利用型のパターンに、みんなが平等だから行くんだというふうに前提を立てるのか。この突出している部分をいかに減らしていくのかという、そういう発想に立つのか、これが大きな分かれ目だと思います。
 現に、例えば今日モデレーターの鳥井さんの新聞の中に関連記事が二つありました。たしか資源エネルギー庁が、これから夏にかけて、大変暑い夏に対して冷房の温度を1度、ですからここの温度も1度下げていただきたいわけですが、そうしますと、高知県全体が1年間消費するエネルギーがそこで節約されます。そういう省エネのキャンペーンの紹介がありました。
 もう一つは、東海原発の解体廃炉をめぐっての話ですね。これからますます2005年、2010年とかけて、大量の原発の廃炉処理が問題となる。廃炉コストは織り込んでいるということになっているわけですけれども、その値段も多分、私の予感では、今の倍、2倍、3倍と、「もんじゅ」じゃありませんけれども、廃炉の過程というのは、これから開発していく技術ですから、非常に甘い予想になっている。今のところ電気料金の2%何とかと言っていますけれども、これはもっとコストがかかってくる。そういう大変な影のコストというものがこれから出てくる。つまり、大量集中型のこのパターンでそれに対応していく展望に立てるのか、そうでないのか、大問題です。
 これはさっきと全く同じ図なんですが、この中で途上国の消費が増えてくる。一番下が途上国ですね。一番上がOECD諸国のこれから2000年、2010年ということで、ただ、こちらの大量に消費しているこのパターンが、将来こういうふうに、エネルギー消費の拡大が続いていく。私たちはこれをいかに下げていくか。途上国が上がってくるというのは、これは仕方がないということなんですけれども、我々の方のライフスタイル、消費のパターンをどれだけ下げていけるのか、あるいは使い方をどういうふうに変えていけるのか、ここが大きな分かれ目だというふうに思います。
 そして、おそらく、これも議論がありますけれども、途上国の問題に関して言えば、日本の貢献といいますか、これはいろいろ出ているわけですけれども、少なくとも日本の省エネやさまざまな効率ということで言えば、途上国レベルで、例えば消費量が倍になったとしても、効率を途上国のレベルの流通の無駄やロスを省き、省エネその他の効率レベルを倍にする。つまり、量が多くなっても資源依存度といいますか、消費量は同じレベルで今の倍の効率を上げることができる、そういう可能性は十分あると思います。国際協力といいますか、それは、そういった分野での重要課題だと思います。
 もう一つ、長期的に見たときに、私たちが今課題となっているのは、先ほどと同じですけど、非再生的な資源、あるいはそこから出ていく廃棄物、あるいは廃熱ですね。こういったものを自然の許容量の中にいかに抑え込むか。今までは非再生資源、枯渇性資源のものをどんどん拡大して使っていく、あるいはそこから出てくる廃物や資源を何とか処理していこうという流れできたわけですけれども、この部分をいかに拡大するんじゃなくて縮小していくか、あるいはこういう廃物や廃熱その他のいろんな環境負荷をいかに減らしていくか。そしていわゆる再生可能、あるいは更新性といいますけれども、そういった形での、あるいは循環的な利用の中にいかに押さえ込んでいくか、これが長期的な私たちの展望すべき課題なんですね。
 そういう意味でいくと、原子力というのは、残念ながらいわゆるウランということなんですけれども、高速増殖炉に関してはまた問題がありますけれども、いわゆる枯渇性資源であります。つまり、使えばなくなってしまう。高速増殖炉の問題はまた置きますけれども、もう一つは、廃熱、廃棄物、あるいはこうした廃棄物ということで言えば、これは私たちは共存、少なくとも今の現段階では共存できるような状況にない。どういうふうにそれを共存させるかということで私たちは未来を展望していくのか。そうではなくて、いかにどういった形で方向転換のプロセスを作るか。つまり、再生可能な循環型のシステムにどういうふうに私たちが適合できるのか、これがエネルギー政策の最大の課題ではないかというふうに思います。
 そして、実際にそういった方向に向かって動いている。先駆的な動きがぼちぼち出始めているわけですね。これは有名な例ですが、デンマークのエネルギー計画、なかなか理想通りにいきませんけれども、少なくともエネルギー消費を伸ばさない。15%削減していく。そしてCO2 も削減していく。こういうデンマークの計画、これを軌道に乗せるために大変な努力が払われているわけですね。実際にエネルギー消費のこの伸びは、日本も一時とまっているわけですけれども、デンマークの場合、引き続き90年代以降も、これをいかに止めるか、あるいはより削減していくかということで進めています。
 これはこの議論の中に出てきたと思いますけれども、有名な例では、いわゆる自然エネルギーの中の風力発電ですね。こういったものをいかに定着させるかというのに関しては、70年代から大変な努力を傾けてきたわけですね。これはよく出ている図ですけれども、こういったものを普及させるために大変な支援政策を行った。つまり、デンマークの場合には、70年代から80年代にかけて、国の政策として原子力は取らない、そういう国民の決定の中で政策を実行したわけですね。そして環境負荷をかけないようなエネルギー資源ということで、分散型の資源、そして、これは風力ですけれども、バイオマスとか、あるいはコ・ジェネとか、いろんな分野を手がけているわけですが、こういった技術を7年〜8年かけてコストに乗せる。そのための国民的な支援体制をひいたわけですね。それがこのような形で世界市場において7割ものシェアを獲得し、十分な技術力ということで国際貢献にも役立っていく。そういったことが一つの引き金になって、例えばこれは風力におきましてはそういう風力発電の一つの産業革命的な動きが各地で出始めている。例えばカリフォルニアとかそういった地域で、まだ地域、局地的だということはありますけれども、爆発的に展開している。デンマークにしても、カリフォルニアにしても、エネルギー消費の電力の中の5%規模で普及し始めているわけです。
 そのような例で言いますと、例えば同じカリフォルニアですが、サクラメント市ですね。州の都ですけれども、そこでも、これは89年に住民投票で原子力発電所を閉鎖して、そして再生型エネルギー、あるいはいわゆる省エネを進めていく、そういうエネルギープロジェクトがスタートしたわけですね。これは象徴的な写真です。これがもう廃炉になって解体にはまだいっていませんけれども、こういうふうな形でのエネルギー転換にスタートを切っている。そのコンセプトとしては、いろんな動きがあります。例えば交通ですね。私たちの家庭用の消費のうちのCO2 レベルで言えば4割近くは、実は自動車によるエネルギー消費になりますけれども、それがこういうふうな形のガソリンスタンドじゃなくて、ソーラースタンド(写真)を設置しているんですね。こういったものを設置し、カリフォルニアでは2003年、あるいは2005年で全自動車の5%とか、あるいは一割はそういうふうな電気自動車、ないしソーラー自動車のような形のものを展開する。そういう未来に対する一つの目標を持って展開する。そのための様々な方法論を編み出していくという、そういう政策をとっています。
 政策的にはこういうふうな形で、再生可能エネルギーへの転換とともに、いわゆる省エネの形でのエネルギーを生み出す。つまり、電力を新しくつくらなくても、省エネで浮かしている部分で供給の余地がこれだけ上がってきているというような話です。あるいはすぐ隣の、これは有名な話ですが、デービスという小さい町ですけれども、そういう一帯では、ソーラー住宅やあるいは交通のシステム、そういったものの中で電力の消費は25%削減し、いわゆる暖房用のそういったガスの消費とかは半減にする。これは5年間ですけれども、の中でそういったことを実現する。つまり、そういう計画や政策をいろんな形で実際レベルで取り上げていく、あるいはいろんな例が始まっているわけですね。
 これは同じカリフォルニアのエネルギーの委員会ですけれども、ラウンドテーブルがありまして、さまざまな市民や産業界や、あるいは市民団体、環境団体の中でいろんな協議が重ねられ、その一つのテーマですね。これは住宅地域、それからいわゆる業務用のビルディング、そこのための省エネの基準を作る。毎年毎年厳しくなっていくわけです。ということは逆に言うと、消費量が減っていくということ。より少ないエネルギーでその居住環境を維持する。そのための基準をどんどん上げていくという、そういう技術革新を誘導していくわけですね。
 そういうふうなこういう基準づくりですとか、あるいは今日、川越の市長さんからの話がありましたけれども、自治体の取組みが重要です。例えば有名なドイツのフライブルグですね。これはやはり同じ自治体として、ヨーロッパの中では環境自治体ということで有名な地ですが、例えばこのフライブルグの市で言いますと、80年代10年間で電力消費が25%減ったわけです。職員や建物は大きくなっているのに、全体としてはエネルギーが減っている。将来的にはそれをまた減らしていこう。暖房用のガスの消費量は、80年から90年の10年間で4割減ったわけですね。そういうことを実現しているわけです。
 これはドイツの例ですし、もう一つは、これはイギリスの例ですけれども、レスター市という町ですが、これもイギリスではエンバイロメント、環境都市ということで有名です。ここも80年代から90年にかけて10年間で、電力消費が市の建物ですけれども、16%削減。そしてここは将来的に2025年にかけて、電力消費量は半分にするという、そういう目標を立てています。
 またこの市がリードして、いろんな自治体が協力関係をつくっています。またその周辺地域がランカシア地域ですけれども、その地域の中でやはりこういう大きな協議会をつくりまして、2025年に向けて地域全体の電力消費の目標を2割削減していく。こういう目標を立てて、また実際にそれを自治体がリードしていくという、そういう実践が行われています。
 そういうふうにして今、起きているのは、いわばエコロジーといいますか、エネルギーに関しても含めてですけれども、私たちのライフスタイルや社会システムのトータルなあり方を変えていこうという、そういう時代が始まっている。これは化石エネルギーだけじゃありません。さまざまな資源は、ここにありますように有限です。埋蔵量というのは非常に将来的に伸びていく可能性があるわけですけれども、かなり水銀ですとか錫とかそういったものは、7割〜8割を掘り尽くしてきているわけですね。そういう意味で私たちは、有限な資源をいかに大事に使うか。そういった課題をすべての分野で今、求められている。実際にそのためのいろいろな技術革新とか、あるいは産業界における大きないわば産業革命、エコロジー的な産業革命が進行しつつある。いかにより少ないもので、その量をまたより有効に使うかという、ここが今、さまざまな分野の私たち社会全体の取り組む課題になっているわけです。
 少なくともエネルギーに関して言いましては、先ほどもありましたように、自然エネルギーは非常に欠点が多いわけですけれども、潜在的な量としては非常に大きい。日本全体のエネルギーで言えば、私たちが消費しているエネルギーの100倍の太陽のエネルギーは、これは全部使うわけじゃありませんけれども、その可能性はある。そして実際に、風力発電で言えば、そういう適地ということでの算出されますけれども、今の消費量の2割、20%は、例えば風力発電で潜在的には可能である。これをいかに実現できるかということの、そのプロセスをどういうふうに作るかということが実は課題である、政策であるというふうに私は考えます。
 そして、実際にまだ日本はヨチヨチ歩きの初めなんですが、技術的には十分に普及する技術を持ちながら、それを支える社会的な、あるいは政策的な基盤が整っていない。風力発電にしても、こういうふうにして拡大している、これは一つの例ですね。これは同じようにソーラーエネルギーに関しても、似たような図ができると思います。そしてこれをちょっと重ね合わせますと、将来の動向が見えてきます。つまり、ここに線が二つありますけれども、これも概念図なんですけれども、ソーラー等の自然エネルギーの価格は普及とともに急速に下がっていくはずです。つまり、私たちは今、原子力がキロ9円ですか、そういった形の値段、そして再生自然エネルギーというのはもっと10倍高いとかいろいろありますけれども、少なくとも風力に関してはかなりのレベルになっている。いろんなコスの比較ですね。つまり、これが従来型の化石やあるいは原発も含めてのコストですけれども、これは現時点ではそういう値段ですけれども、果たしてそれがさまざまな処理の過程、あるいはリスクの過程、そしてそれから後始末をどういうふうにするかというようなコストでは、コストはこれから上がってくるだろう。
 それに対して自然のエネルギーを中心としたさまざまな分野のコストは、今、これはアメリカの例ですけれども、年率10%ぐらいのレベルでコストが落ちています。たしか80年代から90年代にかけて、コストは5分の1になっているはずですね。そしてそれはどういう政策と展開が進むかによって、このカーブは決まります。今のところコストはまだまだ高いというのが現実で、さまざまな政策的な導入がなければ十分にいかないわけですね。コストもいろんな計算の仕方によって違ってくるわけですが、原子力、これは日本とアメリカと比較しておりますけれども、こういう値段ですね。日本の場合、こういうふうに横並びになっていますけれども、ただ、風力にしても、太陽光にしても、これは今の暫定的な値段でありまして、将来的にこれが普及していく。つまり、大変な技術革新の普及の過程をとった場合には、半導体等に見られるような、非常に量産効果と価格の大きな転換点がいつ来るかというレベルで、今始まっているわけですね。
 ですから、私たちが、5年先か10年先か、先ほどのお話ですと、たしか2050年ですか、ここが一つの分かれ目だと。だからその分かれ目に向けて、大規模集中型でさらにそこを乗り越えていこうとするのか、いわゆる分散型のライフスタイルシステムの中でこういう対応をしていくような、そういう方向にとるか、国民的な大きな選択を、我々は問われているというふうに思います。従来型の発想でいくのか、そうでないのか。
 実際に消費というレベルでは、産業界はかなり努力しているわけですが、残念ながら、民生、運輸、こういったものがどんどん上がっているわけですね。そしてこういうトータルな資源の利用、あるいはエネルギーのトータルな利用、こういったことも考えていかなきゃいけない問題なんです。ここに特にライフスタイルの問題を一つ入れますと、これは後で問題になるかもしれませんが、いろんな市民団体の中で一つの問題提起が、2年ぐらい前ですか、市民エネルギー研究所でしたけれども、エネルギー消費を減らしていくようなプログラムをいろんな形でできる。技術的な展開というのは一つの方法ですが、もう一つは、私たちの国のあり方そのものを、あるいは社会のあり方そのものをもうちょっと考え直そう。そうすると、そこだけでもエネルギー消費というのは大きく変わってくる、消費の傾向が変わってくる。
 例えば物の生産消費、そのレベルをなるべく抑えていく。つまり、経済的な規模を上げていかないというわけですね。つまり、経済成長型に対して脱成長型の日本経済ということを想定して、そこでは場合によっては所得も増えない。いわゆる経済のある意味では停滞現象というような状況に対して、マイナス面としてとらえるか。逆に低成長を一つの基本的なベースとして、その中でどういった暮らしを立てるかという、そういう社会設計、あるいは生活設計を場合によって私たちは考えておく必要があります。これは果たして今の日本の国民の社会に受け入れられるかどうかということは問題がありますけれども、現実には多分、積極的にそれを受け入れるか、あるいは私の感じでは、いやいやながらでも、ヨーロッパそのほかは70年代から低成長の中でいろいろな苦労をしているわけですけれども、そういういわゆる低成長型の資源消費を含めて、さまざまな経済的な規模を含めて、ある安定したレベルでその中の中身をどういうふうに変えていくか、そういう大きな考え方といいますか、価値観の変化を迫られるのではないか。それをいやいや受け入れるのではなくて、そこのマイナス面を逆に積極的に受け入れた上で、私たちの生活、社会のプラスの面のあり方を検討していくような、そういう構想も必要ではないか。その辺は市民エネルギー研究所が提起している一つの例ですね。
 ここでは、宣伝広告、さまざまな商品の需要拡大ということをある程度抑えて、経済規模、所得の規模ももうそれほど上がらない。場合によっては落ちるような事態も考えて。そうしますと、実際にそこから生じてくるエネルギーの消費というのは大きく落ちてくる。非常に厳しい場合には、90年時点よりも25%、エネルギーの消費は実は下がってしまう。これを停滞経済というふうに見るのかどうかということですね。
 これも非常に極端な例になるかもしれませんけれども、いわゆる経済規模ということで言うと、一人当たりGNPの換算で言うと、例えばイギリスの一人当たりのGNPという規模で、もし日本の生産性ということを考えた場合には、例えばこれで言うと、94日分休んでも、日本の生産力といいますか、そういった規模は維持できる。それを受け入れるかどうかは別として。ですけれども、94日というのは、年間3カ月強、私たちは3カ月をゆっくり休んで、そのかわり所得は増えない。ですけど、物もあんまり使わない。そしてどんどんライフスタイルも集中型の、いわゆる通勤や交通の大変激化した、そういう忙しい経済社会の中で生きていくのか。所得は増えないけど、ゆっくりとしたそういうライフスタイルを身の回りにつくっていくようなそういう社会をイメージしていくのか。そういうことはこういう数字から見ますと、一つの考えるきっかけとして提示されているのではないかというふうに思います。
 実際にもっとミクロな、私たち日常生活のライフスタイルそのものですと、例えば食べ方一つも、高エネルギー型の、内山さんの話にもありましたけれども、こういうものと、いわゆる自然に即した生活で健康で、そしてなおかつエネルギー消費、環境負荷の少ないライフスタイル、食生活、こういう個別のケースでいろいろな道が幾らでも出てくるわけですね。ですから、ミクロもマクロも、私たちは大きな転換の中で未来は新たに展望できる。政策を大きく変換すべきな時代じゃないかというふうに思います。以上です。

他の招へい者の所感

【鳥井】  ありがとうございました。
 お三方からご発言をいただきました。大変データに基づいた、しかも示唆に富んだご意見をいただいたと思います。これからの討論に大変大きく役に立ったと思います。
 それでは、ただいまの基調の発言に対して、他の招へい者の方々から、簡単にご感想というか、コメントをいただけたらと思います。後で十分討論の時間がありますので、お一人、二、三分で、今のご三方の基調講演に対するご意見を言っていただけますでしょうか。
 まず、アイウエオ順で碧海さんの方からお願いをできますでしょうか。
【碧海】  二、三分ということですので、自分自身が今日ここへ出てきて、どういう立場で発言するかというようなことを、本当は触れないといけないかと思ったんですが、今は、今のお三人の方の発言に絞ってコメントさせていただきます。
 舟橋さんのお話の中で一つ私は気になりましたのは、1%の節電ということですが、省エネルギー、特に原子力とのかかわりでの省エネルギーとか節電というのは、私はやはりピークを下げるということを考えないと、全体としての節電ということではないのではないかという気がするんです。それで、確かに1%の節電、省エネルギーというのは、一般的な生活の知恵としては、これは必要なことですし、それから、一般消費者にとっても必要なことだろうというふうに思うんですが、ただ、原子力をとにかく減らすとか抑えるというためには、消費の一番伸びる、わずか1週間の間のピークのところを減らすことにもっと結びつけて、説明されたほうがいいのではないかというふうに思いました。
 内山さんのご発言は、実は私は仕事柄今まで、もう既にそういうお話を大分聞いておりますので、内容的には非常に参考になるんですが、この円卓会議でこういうお話を毎回やられるのかなというのは、ちょっと気になったんですが、今回は「原子力とエネルギー」ということなので、特にやられたのであろうというふうに思いますが、何かちょっと、もう既に聞いているというふう気がいたしました。
 逆に古沢さんの方のお話では、私は生活者の代表のつもりですので、特にライフスタイルのあたりは、言うは易くて非常に難しいことが多いのではないかというふうに思っております。例えばアメリカなんがでやられているようなシェアード・ハウジングというような、つまり、他人同士が共同生活をするというようなことをすれば、これは光熱費の節減とか、エネルギーの節約には絶対結びつくんですが、そういうことは、例えば日本の場合には非常に難しいだろうというふうに思っておりますので、そんなことは一例として感想を申し上げました。
【鳥井】  ありがとうございました。
 それでは、荻本さん、お願いいたします。
【荻本】  最初まず、舟橋市長からのお話でございますが、大変いい発想で私も感銘を受けまして、実は先ほどピークを抑えるのがまず先決だというお話がありましたけれども、私は、そういうことでやはり節電をして省エネを推進するということは、非常にいいことでありまして、ぜひ必要だと思っておりまして、私も後でそんなお話をしたいと思っておりました次第でございます。ぜひひとつ、もっと輪を広げていただきたいというふうに考えております。
 内山さんのお話は、実は似たような仕事をしておりますものですから、大体私の認識と同じでございますが、認識をきれいに整理できたということで大変参考になりました。大体おっしゃる通りのことを私も認識しております。
 それから古沢先生のお話でございますが、あちこちでいろんなことをやっておられるということで、これは一つ参考にして、自然エネルギーの普及に役立てるということはいいと思いますが、すぐというふうに誤解されると困りますので、そこの辺のところを少しうまく、皆さんの認識を間違いないようにしないといかんじゃないかという感じがしております。ぜひ参考にはしたいと思っておりますが、それだけですべてがうまくいくというふうには、ちょっとまだ納得いきかねると思っておりますので、また後ほど議論したいと思います。以上でございます。
【鳥井】  ありがとうございます。
 加藤さん、どうぞ。
【加藤】  今、3人のお方の発言を聞きまして、賛成、反対、中庸という感じで、まさに総論としては、すっかり出切っているんじゃないかと思うんですね。だから、あとは、一人一人がエネルギー問題を自分の問題として考えることが大切なんで、それをどういうふうにして普及していくかということになると思うんですね。だから、これから各論としてどういうふうに位置づけていくかということが一番大事なんじゃなかろうかということを感じました。
 そして、私自身は、後からまたいろいろお話しさせていただきますけれども、個人的には、原子力開発推進には反対の意見を持っております。私は小説家ですけれども、大変昔から野性生物が好きで、1975年から89年にわたって東京港の野鳥公園の設立のときに、あんまりそういうリーダー的なことはできないたちなんですけれども、何となくかかわり合って、一応代表としてずっとやっておりました。原発の運動にはかかわっておりませんが、個人的には反対の意見を持っています。
【鳥井】  ありがとうございます。
 隈さん、どうでしょうか。
【隈】  今の議論、集中型か分散型かというのは一つの論点だったと思うんですが、集中型、分散型というのは、エネルギーの問題だけで集中型、分散型を論じてもしようがないんではないかという気はしております。都市構造の、集中型、分散型ということの論点を入れると、例えば集中型の都市構造のほうが逆にエネルギーの全体のトータルの消費は少なくて済むんではないかとか、でも、なおかつ人間はやはり田舎に住みたい人もいるだろうから、そういう人たちの気持ちをどうするかという問題もあります。エネルギーだけに絞らないで、集中型、分散型の議論をしたいなというのが一つです。
 あともう一つは、ライフスタイルの話が問題になったと思うんですが、そういうライフスタイルというか、気構えの問題はもちろん大事ですが、例えばもう少し大きな住み方の制度の問題ですね。といいますのは、例えば建築基準法や都市計画法があって、こういう家しかつくれない、こういう集合マンションしかつくれないという現状があります。そのときにはどうしてもこんなふうにエネルギーを使わざるを得ない。例えば具体的な話で言いますと、マンションは全部南面して冬至で4時間の日照がなきゃいけないという規制がありまして、その結果、逆に夏場のピーク時の電気量はどうしてもこういうふうになってしまう。そういうような制度の問題を抜きにして、気構えの問題だけを話していても、なかなか難しいかなという気はいたしまして、その辺の制度と気構えの問題、両方を絡めて議論をしたいなというふうな感想を持ちました。
【鳥井】  ありがとうございます。
 竹内さん、どうぞ。
【竹内】  私は、この中で唯一、電力会社の人間でございますが、実は昨年まで原子力発電所の責任者で勤務しておりました。そういう面で私は現場にいる人間たちが本当に日本のエネルギー−−原子力といっても、やっぱりエネルギーなんですが、その根幹を担って、24時間、365日、一生懸命やっている姿を何かの形で紹介したいと思ったんですが、ちょっとこれにそぐわないんで、それは避けますが、ここ10年ほど私がやっておりますのは、原子力問題をできるだけわかりやすく理解していただこうということを、微力でありますが、私、やっているつもりです。
 そういう面で、先ほどの舟橋市長さんのおっしゃられたこと、多くの方は、ああいう心配とか不安を持っておられるんですね。したがいまして、私は、今日のお話、非常によくわかります。しかし、1%節電、それはぜひ、エネルギーの多消費がこのまま続いていいのかどうかという、我々だって疑問を持っているわけですね。ただ、現実には、電気というのは非常にクリーンで、安全であり、今後、ますます高齢化社会あるいは女性の社会進出の中で伸びていくのは、これはやむを得ないし、一方我々電気事業というのは供給義務がありますから、伸びていく以上は、それをサプライする義務がございます。じゃ、どのくらい伸びるのかというと、これも私どもはわかりませんが、現実には2%とか3%伸びていきます。どこまでいくのかというと、これこそ神のみぞ知るですが、例えば日本に比べると北欧なんか3倍使っているわけです。3倍までにいくのは我々としても困るんですが、やはりトレンドとして伸びるのは、したがって、それをサプライしなきゃならない。
 さて、そこで、そういうふうに省エネをやってくださるのは大いに結構だし、先ほど古沢さんの意見のようにフライブルグの話もあったし、いろいろ省エネであるとか何かという試みは、エネルギー問題というのは非常に大事ですから、やっていただくのは結構ですが、さて、それが即原子力をやめるということについては、先ほど内山さんのおっしゃったように、いろんなトータルとして考えて、やはり原子力は今後のことで、私は必要だと思っております。それはなぜかというのは、先ほど申しましたように、私はわかりやすく原子力を何とか普及に努めたいと思っておりますので、必要ならば、市長さんのところへ行って幾らでもご説明申し上げますが、1%の節電は大いにやってもらいたいけれども、それが即原子力じゃないよというのは、私は非常に残念だと思います。
 それから、先ほどの内山さんの話は総論的に非常にデータをよく説明されていただいたと思うんですが、ああいう問題は多くの人がわかってないんですね。だから、そこをどういうふうに知っていただくのか、今回の円卓会議もその目的の一つだと思うんですが、もっともっと関係者が努力しなきゃいけないと思っております。
 それから、最後の古沢さんのお話は、これはおもしろいんですけれども、おもしろいのと実現可能なのかということについては、私は、エネルギーなんていうのはまさしく現実の問題なんですね。したがって、宗教とかそういうものじゃないものですから、であるからといって右上がりの、いつまでも成長経済が望めるのかといったら、これは多少は我々は考えるけれども、いきなり生活レベルをがくんと落としてということになればいいけれども、それは実現が難しいんじゃないかなというのを率直に感じました。
 以上でございます。
【鳥井】  ありがとうございました。
 では、十市さん、お願いいたします。
【十市】  私、先ほどご説明いただいて、問題点は既に出されたんですけれども、エネルギーというのは、石油から始まりまして、石炭、天然ガス、あるいは原子力、新エネ、いろいろあるわけですけれども、これはどのエネルギーをとっても、それだけで、今、我々が直面している問題を解決できるものはないという基本的なそういう認識に立っております。それは先ほど内山さんのほうから若干触れていただきましたから繰り返しませんけれども、そういう観点から言いますと、先ほど古沢さんがおっしゃった、分散型のエネルギーで今後考えるべきだというお話があったんですけれども、それと大規模集中型という二つの考え方を私は対立的に考えるべきではないのではないかというのが基本的な考え方です。
 例えば分散型のエネルギーとして太陽エネルギーですとか風力とか、最近、廃棄物ごみ発電、いろいろ出てきておりますけれども、特に再生エネルギーについて申し上げますと、過去二十数年間、サンシャイン計画、あるいは最近はニューサンシャイン計画ということで相当技術開発をやってきまして、かなり実用化に近いところまで少し見えてきたかなという認識を持っております。
 ただ、問題は、分散型の問題点は既にいろいろ指摘されておりますけれども、実は大規模のシステムがないと分散型自体も生きてこないという問題があると思うんですね。分散型だけでクローズしようということはなかなか私は難しいと思うんですね。今のような少なくとも工業社会を前提にする限りはですね。ですから、そういう意味では相互依存の関係であるべきだという気が私はしております。
 ですから、これからも新エネルギーを含めて、もっと開発に力を入れて、実用化に近いような形でやるべき。これはもちろんそのとおりでありますけれども、地球全体の長期的な問題を考えましても、原子力の重要性というのはそれなりに位置づけをきちっとして、我々はどの程度、これから原子力に依存していくかということについての議論をきちっと詰めていくべきではないかと、そういうふうに私は考えております。
 それから、舟橋市長のお話、省エネルギーの問題、これも大賛成で、地方自治体で積極的にやっておられて、大変感銘を受けたわけでございます。ただ、問題は、省エネルギーの難しさは、総論と各論で相当ギャップがあるということであります。例えば技術の面で言いますと、確かにいろんな家電製品ですとか自動車をとりましても、効率はものすごくよくなったんですね。ところが、人間というのは、効率がよくなってくると、よりいい、大きな車、大きなテレビを使いたいと、これは自然な人間の欲望でございます。ですから、そういうところまで社会として、規制と言ったら強すぎるのですけれども、ある程度のそういうものに対する規制、コントロールを社会として設定していくべきかどうか。これは極めて民主主義社会の基本にかかわる問題だと思うんですけれども、そういうところまで入り込んで議論していかないと、省エネルギーの問題というのはなかなか先に進まないところに来ているんじゃないかなと、そういう印象を受けました。
【鳥井】  ありがとうございます。
 それでは、藤井さん。
【藤井】  私、太陽エネルギー利用のほうに手を染めていまして、お三方の意見は非常に参考になりました。しかし、それに意見を述べさせていただく前に、円卓会議の設置目的のところで、ちょっと書き方がまずいんじゃないかと思うんですね。それは、「原子力の研究、開発及び利用についての国民的合意を形成するために」という文言ですが、あたかも原子力を、今後もずっと推進していくということの前提のもとに、この円卓会議を設置するというような意味合いにとれます。しかし、原子力といえども、これは全エネルギーの一環でございまして、やはりエネルギー政策全体の中で位置づけしていくものであろうというふうに私は考えますので、この辺の書き方にもう一考あってしかるべきでないかというふうな気がいたします。
 さて、お三方のいろいろな意見があったわけですけれども、今、化石燃料にしても、原子力にしても、これは限られた資源を使っているエネルギー源でございますので、こういったものを使っていくと、早かれ遅かれ、これは枯渇するということは目に見えているわけです。それに加わって、いろいろな環境問題が取り沙汰されています。その環境問題をクリアしながら、しかもエネルギー問題に我々はどうかかわっていくのか。その辺が非常に難しいところだと思います。
 今までいろいろと議論を伺っておりまして、それから、今までの過去4回の円卓会議議事録も見せていただきましたが、しかし、重要なことは、ある事柄について、いろいろな結論が出てくるわけですけれども、それの前提条件が変わると結論も全部変わるということですね。ですから、前提条件をきちっとしなければならない。私自身としては、21世紀を迎える、こういった難しい時代に入ったときに、今までみたいな前提条件で議論していても、将来、いつかは必ず行き詰まるだろうというふうな気がいたします。それで、限られた地球と限られた資源、しかも後世に負の遺産を残さないという、このことを肝に銘じた上で、我々としては今、何をしなければならないか、その辺のところで議論を詰めていかないと、将来、また同じような問題に突き当たるだろうというふうに思います。
 細かいところにつきましては、また後ほど、もし機会がありましたら述べさせていただきたいと思います。
【茅】  今のお話、どこの点をおっしゃったのかわからなかったんで確認させていただきたいんですが、我々の手元には、「円卓会議開催に当たっての基本的事項」資料1というのがあるんですが、おっしゃったのはその1の事項のことでしょうか。
【藤井】  目的のところですね。
【茅】  会議の趣旨というところでしょうか。
【藤井】  目的のところに「原子力の研究、開発及び利用についての国民的合意形成に資するため」とあります。
【茅】  それはここにないんですが、どこの資料でございましょうか。資料がちょっとわからないんですが。
【藤井】  今日の資料の中にはないと思いますが、前もって配られた資料がございましたけれども、その中に「原子力政策円卓会議の設置について」というような表題のついた資料がございまして、その中の「目的」のところを取り上げさせていただきました。
【茅】  今、私の手元にないんで、わかりませんが、我々の方として了解しているのは、資料の1にある基本事項でございますので、そこに関する限りは、そういうことはございませんので。
【藤井】  ああ、そうですか。
【鳥井】  先へ進ませていただきたいと思います。
 舟橋さん、古沢さんにはご発言いただきましたので、森田さん、お願いいたします。
【森田】  私は、地球温暖化問題を今、研究の対象にしておりまして、地球温暖化をどこまでくいとめられるかという研究にとって、原子力という問題は避けて通れませんものですから、我々の研究の対象にしております。
 地球温暖化問題と原子力ということを考えたときに、原子力というのは、地球温暖化問題を解決する一つのオプションであるということには間違いないわけでございますけれども、ほかにも幾つかのオプションがありまして、そのオプションの中で原子力はどれだけすぐれているか、あるいはどのようなバランスで原子力を持ってくるかということが今、一番ホットな論争だというふうに認識しております。
 そういう面から内山さんの最初のご報告というのは、その議論の一番の出発点として非常に私はいいものだと思いました。ただ、今日のディスカッションの大きなテーマが、原子力に代われるエネルギーはということでございまして、その中で、今、世界的な論争の中で、今日、内山さんが触れられなかった非常に重要なポイントがあると私は思っております。多分、内山さんはお気づきになられていると思うんですけれども、そのポイントについて少し後で補足していただければと思います。
 それは何かといいますと、バイオマスエネルギーの話でございます。バイオマスエネルギーは、おっしゃるとおり、伝統的なバイオマスエネルギーというのは、これは非常に限界があるということはよく知っておりますけれども、新規にバイオマスエネルギーを開発して、そのコストいかんによっては、エネルギー導入のシナリオというのもかなり崩れていくだろうというふうな論争が今あるわけでございます。それはどちらが正しいということは、今、言えないと思いますけれども、そこのところについて内山さんの方から説明を補足していただければと。それが一つです。
【鳥井】  ありがとうございました。
 それでは、少しお休みをいただいて、約15分、お休みをいただくということで、ちょっと値切らせていただいて、3時半から再開ということにさせていただいてよろしゅうございましょうか。後半は自由なご討議をいただきたいというふうに思っております。
 それでは、3時半に再開ということで休憩に入らせていただきます。

───休憩───


自由討議

【茅】  それでは、予定を少し遅れましたけれども、また、中川大臣は所用で遅れられますが、時間もありませんので、始めさせていただきたいと思います。
 私、茅でございますが、後半の司会をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 そこで、始める前に、先ほど藤井さんからお話のございましたご指摘の点ですが、探しまして、該当の箇所を見つけたんですが、それは何かというと、3月15日付、原子力委員会決定、「原子力政策円卓会議の設置について」という文書がありまして、その最初の目的のところに、「原子力の研究、開発及び利用についての国民的合意形成に資するため原子力政策円卓会議を設置する」と、こういう文書がございます。これに対してのご指摘ではないかと思います。
 これに関しましては、これは実は原子力委員会の決定で、この会議そのものではないんですが、これを受けて、モデレーターとして私どもが依頼を受けましたとき、この内容は、原子力の推進という意味ではなくて、原子力の、極端な言い方をすると、改廃を含めて、あらゆる意味での議論で、その上での国民的な合意形成という意味ですので、例えば合意によって廃止するということになれば、それはそれで一つの答えであるという解釈でお引き受けいたしました。したがいまして、そういうことですので、これはおっしゃったような意味ではないということでご了解いただければと思います。
 また、資料1にございますのは、円卓会議側の資料でございまして、そこにそのように私は書いたつもりなんです。ついでに申し上げますと、第1回の円卓会議の際に、この会がどういう意味になるのかというご意見がたくさん出ました。一番多かったご意見は、この会が、いわゆるガス抜きになるのではないか。みんなに言わせるだけで、それだけのことで終わらせるのではないかという疑問が何人かの方から提出されました。それに対しまして、私どもの考え方としては、そういうつもりは全くないと。こういう会議でご意見のかなり一致を見た部分については、積極的にモデレーターとして相談して、原子力委員会の方に対応する措置を要望するということをお答えしてあります。そして、その前提条件に基づきまして、前回、たまたま私自身は出席しておりませんけれども、そこで情報公開の問題について、今の原子力委員会の運営方式が必ずしも理想的ではないというご意見が多かったために、情報公開という、こういうことについての具体的な要望を原子力委員会に佐和さんから言っていただいておりまして、これはたまたま、わりと最近だったので、議事録がここに出てないんですけれども、それを原子力委員会が真摯に受けとめて約束をいただいております。これは、先ほど中川大臣が一番最初におっしゃったことが、それを反映しております。
 具体的にどういうものが出てくるか、それはまだ我々としても出したばかりですので、わかりませんけれども、いずれにいたしましても、そういう形で、この会議でご意見が多かったものにつきましては積極的に原子力委員会側に対応を検討してもらうというふうにモデレーター一同考えておりますので、そのようにご理解いただけたらと思います。
 さて、後半の議論のやり方でございますけれども、今、三人の方の貴重な発言をベースにいたしまして、いろんなご意見が出ました。これはさまざまな側面からのご意見ですので、まとめるということはちょっと難しいんですけれども、私の目から見ますと、こんなことが多かったのではないかと思います。
 今、問題になっておりますのは、エネルギーの供給の中で果たして原子力というのはどういう位置になるのか、あるいは極端にいくと、なくてもいいのかということが議論のポイントになるんだと思いますが、その場合のかぎとなるのは、他のエネルギー源が今後どのように発展し得るのか、あるいはさせるべきなのかという問題が一つあるわけです。太陽エネルギーはその典型的な例ですが、その形として、例えば分散電源、あるいは分散型のエネルギーシステムという議論が当然入ってまいります。もっとも太陽エネルギーといっても、誤解を避けるために申し上げますと、私が申し上げているのは、太陽光発電のような直接的なものだけではなくて、間接の利用、風力もそうですけれども、あるいは水力、さらにはバイオマス、こういったものをすべて入れて考えるべきだと私は思っておりまして、そのような側面でご議論いただけたらと思っております。
 それから、分散と集中というご議論がかなりありましたけれども、私、この話を伺っていて思い出しますのは、1977年、エモリー・ロビンズが『ソフトエナジーパス』という本を出して大変な反響を招いたことでございまして、もう 20年前になりますけれども、我々エネルギー関係者が必死になって議論したことを思い出します。変な話になりますが、私はロビンズというのは73年から知っておりまして、長年の友達ですけれども、あのとき、その論文を読みまして、これだけ彼の言ったことというのは激烈なことだったのかというんでびっくりした記憶がありますが、しかし、それが現在に及んで大変大きなインパクトを持ったものだという印象がございます。その意味で分散と集中というのは、今でも非常に重要な問題だと思いますけれども、こういう側面をどう考えるのか、あるいは隈さんのように、単なるエネルギー問題ではなくて、もう少し社会全体の問題として考えるべきだというご意見もございまして、この辺は原子力の問題と絡めて少しお考えいただけたらと思っております。
 それからもう一つは、エネルギーの需要を今後、どのぐらい抑制できるか。いわゆる省エネルギーという問題でございます。これについて舟橋市長の話は大変示唆に富んだものだったと思いますけれども、いずれにいたしましても、省エネルギーをやるという場合に、どういう方法で、どこまでできるのかというのが問題かと思います。この場合には、舟橋さんのお話のように、目標を設定するというやり方もございますし、あるいはライフスタイルを変えるという長期的な考え方もあります。ただ、私はいつも省エネルギーというのを議論する場合に、切り分けなければいけないと思っておりますのは、効率化という意味での省エネルギーと一般的な節約、あるいはやや我慢をするという意味での節約というものとは切り分けて考えなければいけないと思っております。その意味で、単なる省エネルギーといいましても、効率化という意味での省エネルギーと、やや我慢的な意味での省エネルギーと分けてご議論いただければ誤解がなくなると思いますので、その辺はよろしくお願いいたしたいと思います。
 実は、こういった問題全体は、先ほど藤井さんのお話にもございましたように、本来はもう少し大きな観点から議論すべき問題だと思います。我々の人間社会が、この有限の地球の上にあって、有限の資源を食いつぶし、そして有限の環境の中で生きている。こういった基本的な問題があって、その中で発展する文明社会のサステナビリティーをどうするかというのがまさに基本の問題だろうと思います。
 私、実は1970年からローマクラブというのに関係いたしまして、そういう視点で二十数年生きてまいったんですが、そういった意味では、こういったものの重要性、あるいはそういったところから議論することの重要性が痛いほどよくわかっているつもりでございます。ただ、限られた時間が、わずか1時間45分という時間でございますので、そこからまた話を始めますと、多分、それだけで終わっちゃうというおそれがございますので、そういうことは皆様百もご承知だと思いますので、そういった総合的なサステナビリティーの議論というのは一応頭の中のベースとして持っていただくことにして、議論としては、さっき申し上げましたように、新エネルギーをどのようにして導入するか、あるいは導入できるのかといった問題、それから、省エネルギーの問題、そして、そういう方策によって原子力というものが果たして要るのか要らないのかという側面に目を向けてご意見をいただければと思います。
 先ほど鳥井さんからのお話がございましたように、私、モデレーターをいたしておりますが、もちろん、個人の意見はございます。たまたま私自身がエネルギー屋でございますので、当然、いろんな意見がございますけれども、この席では、モデレーターとしてできるだけ皆様のご意見を仕分けて、議論がうまく進むように持っていくつもりでございますので、その点、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、最初に、舟橋さんがもうすぐご退席になるということですので、先ほどいろいろご意見もありましたので、先に一言お願いできますでしょうか。
【舟橋】  大変申しわけございません。どうしても公務で、私、出なくちゃならないところがあるものですから、先に失礼させていただきますが、私も不完全なお話をして大変恐縮だったんですが、今、お話が出ましたように、大変効率的に、例えば夜間電力を貯蔵して、翌日使うというのは非常に安くできるという、これも一つの節電なんですけれども、私の方は、やはり使うのを制約するという節電を、これはそのほかに考えます、まだこれから。安く作るというのは当然、私ども公金を使って電気を使っているわけでございますから。ただ、少なくても消費量を、みんなで節電しようというのは、節約のほうで、今言った、技術的に夜間電力にするとか何か以外に、1%という目標は、必ずそれより上にいくということを考えていたことと、それから、先ほど話が出ましたように、ピーク時が一番重要だと。これは私もそう思います。そういう話が市役所の中で出ております。先ほど申し上げましたように、西日のかんかん照るところで電気を全部つけて、クーラーをフル満タンにして、テレビを見ているというのは、これは大体、甲子園を見ているということを想像していただきゃいいんで、このときにいかにクーラーを何度下げると幾ら安くなると、これを大体計算している人もおりまして、そういうところまで、ふだん、節電を始めますと、いろんなところに発展してまいります。
 ですから、一つの波紋として石を投げてみまして、今、その反響を見ているところなんですけれども、全国から私のところに手紙が参りまして、激励の手紙やら、いいことだというお褒めの手紙やら、たくさん来ておりますので、そういう意味では今まで節電を考えたことなかったと。それが新聞を見て、そういうことをやっているというんで非常に感心したとか、水道の水は出しっ放にして、湯水のごとくだけど、電力はウナギ登りと言うと。これを考えなかったというのは、なるほどなと。これから実行しますとか、そういう手紙が来るわけです、全国から。ですから、一つのきっかけとなって、そういう意味で節電の方向にかなり一石を投じて波紋が起きているなという感じがいたします。
 もう一つは、新エネルギーの方ですけれども、私、今、市長ですけれども、新米市長でございまして、まだ一期目でございます。一期の終わりごろですが、ただ、私は家族が、実は女房のおやじもおふくろも、じいさんも、みんな代議士でございますので、私自身が代議士秘書をやっていた方が長いんです。ですから、行政的な意味では、どうしても日本の場合には、予算を一つの方向にうんと使うという例が多いんじゃないかという気がいたします。だから、そういうことをちょっとへずって、もうちょっと新エネルギーの方に向けられないかという気持ちはあるんですよ。ただ、今、私、国政を離れていますから、全然そういったのをやっておりませんから、わからないんですけれども、新しいエネルギーの方向にもうちょっと目を向けていただく必要があるんじゃないのかと、国も。という気がいたすわけです。
 そんなところでひとつ、簡単でございますが。
【茅】  ありがとうございました。
 それでは、ほかの方のご発言をお願いしたいんですが、恐縮ですが、後での録音の都合もございますので、ご発言のとき、必ず名前をおっしゃっていただけませんでしょうか。それから、お一人の発言は5分以内にお願いしたいと思います。
 それでは、どうぞ。どなたからでも結構です。
【藤家】  今、市長さんがお帰りになるというんで、今日問いかけられた問題にお答えしてよろしゅうございますか。
【茅】  どうぞ。
【藤家】  特に安全に関して舟橋さんが幾つかお話になっているので、それについてお答えしたいと思います。
 いろいろな情報をそれなりに提供してまいっているわけでございますが、少なくとも日本の原子力のこれまで50基運転中でございますが、ご承知だろうと思いますけれども、放射能が漏れるような事故は、それによって公衆に災害が及ぶような事故は一度も経験してないことは十分ご認識いただけるところだろうと思っております。ただ、情報がこれで十分だと思っておりませんので、いろいろ考えたいと思っています。
 それから、この間もお話があったんですが、高速増殖炉の関連について、事故によって開発が停止したんではないかということを再度お話ししておきますと、フランスのスーパーフェニックスは火災によって中断いたしましたけれども、今、再び運転を行っているところでございます。問題を克服した結果、やっております。
 それから、ドイツのSNR300につきましては、これも燃料装荷を州政府が認めなかったために運転ができなく、結局、経済的な理由もあってできなかったということでございますが、この西ドイツのSNR300は運転まで入っておりませんが、ナトリウムを運転中に一、二回、ナトリウム漏えいを経験して、それは修理したということです。その現場を私は見たことがございます。
 それから、イギリスの話でございますが、イギリスはご承知のように、原子力先進国でございましたけれども、ガス冷却炉の経済性がということから軽水炉に移りました。もう一つは、高速増殖炉の開発をしておりましたが、これもサッチャーさんの「コマーシャル・アウェアネス」という民間移転の中で、これも停止された。その背景には、北海油田が出たというのが相当大きな理由になっているようでございます。これは、先々回にもご質問がありましたけれども、PFRで40本の蒸気発生器の細いチューブが壊れたということがございました。これは相当大きな事故であったわけでありますが、これも原子力の安全という、放射性物質の漏えいという観点からは、そのような状態には至りませんで、これにつきましても、修理した後、運転を開始しましたんですが、現在はもう、それの成果が上がったということで中断になっております。このようなことがありまして、確かに高速炉、いろいろ経験しております。
 それから、旧ソ連圏へ行きますと、カザフスタンにBN350。これはこの20年に15回ぐらいの漏えい事故を起こして、いろいろ苦労したんですが、今はまだ順調に動いていることは申し上げておきます。
 このような情報は、そのときそのときに出しているわけなんですけれども、なかなか一般に伝わらないで、もどかしさを私なんかは逆に考えているところでございます。今後とも、そういった情報公開で努力していただきたいと思いますが、同時に、ぜひ、そういうことに接触していただき、関心を持ち続けていただきたいと思っております。
【舟橋】  わかりました。そういうトラブルがあると。しかし、アクシデントまでいってないと、こういうことですね。
【藤家】  はい。
【舟橋】  だから、必ず、全然何もありませんよということにはならないということなんで、むしろそういうのを積極的に見せていただいた方がいいかなと、こういうつもりでございますので。
【藤家】  新聞情報では、いつもIAEAのイベントスケールということで、レベル幾らという情報は毎回出しているわけでございますけれども、ちなみにチェルノブイルは7、スリーマイルは5、日本では今まで一番大きなのが2でございます。そういう意味で日本の場合には放射性物質が出てという話じゃございません。スリーマイルも人身事故には至っていないということであります。ぜひそういうことにも接していただければありがたいと思っております。
【茅】  よろしいでしょうか。
 それでは、ほかの方、どうぞお願いいたします。
【茅】  先ほど申し上げましたように、新エネルギーと省エネルギーという問題があるんですが、なぜ私がどっちにもしなかったかと申しますと、原子力という側面から言いますと、両方とも絡んでいるものですからね。したがいまして、どちらからでも言っていただいてよろしいというつもりで申し上げたわけです。ですが、皆さんの議論がある程度出てくれば、片方の方に議論が集中することは当然ありますし、そうしたら、それによって動かしたいと思います。ですから、どちらからでもご意見いただければ、それでもって対応いたしますので。
【藤井】  それでは、円卓会議を始めるに先立ちまして、いくつかの事柄について議論していただきたいということでしたが、その中に省エネルギー及び新エネルギーに関してという項目があったかと思いますが、その件について発言させていただきたいと思います。
 いずれにしろ、先ほどちょっと申し上げましたように、現に現在の社会はハードエネルギー依存型の社会になっておりまして、現在はそれでもまだ石油もあるし、天然ガスもあるし、云々ということで、当面はそれである程度いけるだろうということになっております。けれども、それも21世紀半ばぐらいには多分使えなくなるだろうというようなことを考えますと、今、茅先生からお話がありましたように、省エネルギーといえどもいろいろありますが、要は、限られたエネルギーをいかに効率的に使うかという知恵を出さなきゃいけないということ。それから、使い方の問題ですが、必要度に応じて選択的にエネルギーを使うことをやらなければならないだろうと思うんです。
 具体的にどういうことかといいますと、あることをするときに、これはあってもなくても、我々の生活にそれほど大きな影響を与えないものは、できるだけ使わないようにするという考え方も一つあっていいんではないかと思います。
 それから、省エネルギー型の社会、具体的な話をさせていただきますと、例えば東京の真ん中に、車をみんな転がして走るような、こういったスタイルは省エネルギー型の社会ではないということで、むしろもうちょっと輸送のエネルギーにしても、エネルギー効率のいいような使い方ができるようなシステムといいますか、そういった構造の再編成、それからライフスタイルを我々は変えていくというようなことを、何らかの形で実行できるような制度なり、法制面での対応も今後必要になるだろうというふうに思います。
 それから、環境の負荷、これは定量的にもいろいろ指標があると思いますけれども、例えば炭酸ガスの問題で言いますと、単位熱量を得るのに相対的に石炭はCO2 の排出が非常に多い。それに比べると石油は多少低くなるが。天然ガスはもっと低くなるというようなことで、そういった環境負荷の大きさに比例して、それなりの税制上の問題を考えるべきです。ヨーロッパでは、炭酸ガス税や、いろいろありますけれども、もうこういった問題にそろそろ取り組まないと、世界から日本は取り残されていくんではないかと思います。また、炭酸ガスの問題は国際的にも公約がございますので、それを真剣に対応していく必要があるだろうというふうに思います。
 いずれにしろ、だれでも嫌なことは言いにくいと思いますけれども、もうそんなことを言っている時期ではないだろうということです。
 それから、できるだけ自然エネルギーの利用を積極的にやっていかないといけない。自然エネルギーは非常にエネルギーの密度が低いし、云々ということが言われているわけですけれども、しかし、例えばこれは一つの例ですけれども、太陽エネルギーの地球に届く量、これは全部使えるわけじゃございませんけれども、その量は、例えば我々が使っているエネルギーの約3万倍ぐらいのエネルギーが来ている。すなわち、1,500億メガワットぐらいのエネルギーが来ている。ですから、これをいかにうまく我々は使いこなすかという、しかるべき技術の開発といいますか、知恵を出すといいますか、そういったことが必要だろうというふうに思われます。
 これは余談ですが、この間、ある本を読んでおりましたら、1キロワットアワーのエネルギーというのは一体どのぐらいの能力をもったエネルギーだろうかというような話がございました。それで、1キロワットアワーのエネルギー量は、例えば1キロワットの電力を1時間使用した量で、これは大した量じゃないなというふうに我々は感じるわけですけれども、私はこれを読んで成る程と感じたわけですけど、1キロワットアワーのエネルギー量というのは、10キログラムの重さのものをエベレストの山上に4回持ち上げるのと同じぐらいのエネルギー量だというふうに書いてあるんですよ。それで、本当かなと計算してみたら、そうなんですね。ですから、富士山ですと、10回、10キロのものを持ち上げるぐらいのエネルギーに相当するんだということです。1キロワットアワーのエネルギーってすごい能力だということを改めて感心をしたといいますか、驚いたというか、再認識しました。
 そういうことで、太陽エネルギーにしても、そのエネルギー密度は馬鹿にできないし、今、茅先生からお話がありましたように、風力もそうだし、波力もそうだし、バイオマスもそうだと思います。また、日本海側は太陽のエネルギーは冬、使えないじゃないかと言われますが、その代わり風力もあるし、波力もあるしということで、そういったいろいろな自然エネルギーをうまく使い分けしながら、かつ、お互いに足らざるを補てんするということは必要ではないかというふうに思っております。
【茅】  今の1キロワットアワーの話、私も後で計算してみますけれども、それはともかくとして、ありがとうございました。
【内山】  今の藤井先生のご意見は異論は全然ありませんで、そのとおりだと思います。ただ、省エネと新エネに対して、私、一番心配しているのは、供給力と信頼性のなさ。つまり、エネルギーで一番大切なのは、安定供給だと思います。水や空気のように今は使っているわけですから、水や空気のように社会に安定に供給しなければならない。これが一番大事ではないかと。それを長期的にいかに確保できるかというところが基本にあると思います。
 そうしますと、まず、新エネですけど、これは非常にローカリティーがある。地域性が非常に高い。カリフォルニアは世界でも最も風況、あるいは太陽光にすぐれた地域なんですが、現在、カリフォルニア州だけで風力発電は1万7,000基あります。その電気でカリフォルニアのエネルギーは3.5%供給しています。日本に1万7,000基つくれるのかな。私も随分風車をやってきているんですが、これはなかなか難しいなと。そんな風況のいいところはないです。1万7,000基も。また、たとえつくれるにしても、カリフォルニア以上に日本全体でエネルギーを使っていますし、また、それが減らない限り、それを賄う量というのは非常にわずかなものであると。
 それから、太陽光発電ですが、これも非常にローカリティーがあります。カリフォルニアに太陽光を設置すれば、日本の設備利用率の2倍、同じものを設置すれば2倍の電気が出るわけです。ところが、日本は曇りとか雨とか、非常に天候不順が多いわけです。それを考えますと、日本の家庭の屋根に全部つけていろいろやっているんですが、メインの電力供給源にならない。ですから、非常に努力しても−−努力することは大切だと、これからいろんな面で資金援助をしていかなきゃならないと思いますけど、しかし、将来のエネルギーを支えるものとしては不十分であるということはおそらく結論は出ていると私は思います。これは特に日本においてはそういうことです。
 じゃ、世界を見たらどうなのかと。これはまた非常に難しい問題あります。砂漠に太陽光パネルをばっと敷きつめれば、世界のエネルギーを賄える、そういう夢のような話も中にはあります。しかし、それが本当に実現できるかどうかというのは、だれもまだわかっていません。ですから、まだ、その不確実性があまりにも大きい問題ではないかと思います。
 それから、省エネの方で少し言わせていただきますと、私もごみ発電の導入に関しまして随分いろいろ努力してきました。自治体等に働きかけて、何とかごみ発電を、発電だけでなくて、熱供給としていろいろ普及させていく。しかし、日本の場合は、特にエネルギー需要の多い東京あるいは関西、そういう主要都市における温熱需要の少なさ、いわゆる熱供給というのは、1年間を通して熱需要が非常に高くないと、なかなか普及しないわけです。ですから、北欧とかヨーロッパのように特に温熱需要の高いところ、これはインフラができているわけです。そういうところでは簡単に入ることができるんですが、日本のようにむしろ冷房負荷のほうが高いところはそう簡単にはいかない。ですから、そういう問題も含めて、まず何が可能なのかということを考えていかなきゃいけないと思います。実際に日本中のごみの熱を全部、エネルギー源として利用できたとしますと、計算しますと、日本の今の総エネルギー需要の1%が供給できる。そういう値になっているわけです。
 そういうことも含めて、可能性というのをもう少し定量的に明らかにしていくことが大事ではないかと私は思います。
 以上です。
【茅】  今の内山さんの話は、現在の技術では、自然エネルギーあるいはごみ発電のようなものは問題が多過ぎるということであって、将来ともこういうものはあるべきではないと言っていらっしゃるわけではないわけですね。
【内山】  違います。ただ、技術が進歩するというのは非常に時間がかかることです。もちろん、夢のような技術進歩がいつ出てくるかわからないって、私も期待を持っているんですが、しかし、そういう夢にまだ頼れない現実があるわけですから、そういう点を考えないといけないと思います。
【荻本】  私、ここ十数年、新エネルギー、省エネルギーを担当して開発しております関係上、それからもう一つは、メーカーの集まりであります日本電機工業会で新エネルギー技術委員会の委員長をやっております関係上、その辺のことを、泥臭いことをいろいろやっておりますので、現実に即した泥臭い話をちょっとご紹介したいと思います。
 ご存じのように、一昨年ですか、閣議決定されました新エネの導入大綱でターゲットが出ておりますが、その数字をご存じかと思いますが、もう一度ご紹介いたしますと、太陽光発電が、現在3万キロとか4万キロぐらいなんですが、それが2000年で40万キロ、2010年が460万キロということです。風力は、先ほど古沢先生のお話で、現在は1万2,000キロぐらいというようなOHPがございましたけど、これが2000年で2万キロ、2010年で15万キロということでございます。それから、燃料電池、現在、3万キロ動いています。
 100カ所で動いておりますが、これが2000年で20万キロ、2010年で220万キロと、こういうことになっているわけです。それから、先ほど出ました廃棄物発電ですが、これは今、50万キロぐらいですか、それが2000年のターゲットが200万キロ、2010年が400万キロと、こうなっています。コージェネはちょっと大きいんですが、今、1,000万キロぐらいありまして、それが2000年では1,452万キロ、2010年が1,912万キロと、こうなっているわけです。
 これでコージェネとか燃料電池、これは省エネルギーということで必要なわけでありますが、現在、ともかく約2億キロの発電設備を持っているわけです。これと比べますと、2000年あるいは2010年のキャパシティーを見ましても、非常にわずかなものであるということでございます。
 実は、この数字、それでは可能かということでありまして、いろいろ議論しているんですが、非常に難しい数字なんです。私どもが実はいろいろと高いターゲットをかけてくださいということで国にお願いをしたんですが、そういうことでターゲットは決めていただいたんですが、いざやろうとなると非常に大変な数字でございます。
 そんなことで、その辺のところをよくご認識願いながら議論した方がよろしいんではないかというふうに私は考えております。
 まず、太陽光で申しますと、今、生産能力が日本で1年に1万7,000キロぐらいですね。世界中で6万キロぐらいというふうに認識しておりますが、今、このターゲットをクリアするためには、直ちに生産量を4、5倍に上げる必要があるわけです。今、4、5倍に上げるというと相当の投資が必要でございますし、電池メーカー、そこまでなかなか踏み切れないというのが現状でございます。
 もう一つは、現在、半導体のシリコン材料の端材と申しますか、不良品だとか、あるいは捨てたものをもらって使っておりまして、これがあと一、二年たつと、25%ぐらい、これから伸びるというようなことを想定しますと、原料がなくなると。新たな原料を手当てする必要があるというような問題も出てまいりまして、そのためには、いわゆるソーラーグレードのためのシリコンをつくろうということでいろいろ準備はしておりますが、そう簡単に間に合うものではないということでございまして、その辺からも制約が出てまいりますので、コストの問題、いわゆる生産設備、それはコストに関連しますが、それから今の原料の問題、こんなことでまず問題があります。
 コストでございますが、これは今、住宅用のモニター制度で推進していただきまして、非常にコストは下がってはおりますが、おそらく、今年時点でもキロワット100万円ぐらいということでございまして、原子力とか火力の建設費に比べると4、5倍になっているということでございますので、どこの方でも簡単につけるというわけにはいかないだろうというふうに考えております。
 そんなことで、太陽についてもいろいろお話は結構でございますが、なかなか問題があるなという認識でおりまして、もちろん、私、そういう開発を推進する立場でございますので、一生懸命やっておりますが、一生懸命やっているなりに、現実の姿を見ますと、非常に難しいなということで困っております。
 もう一つの手は、アモルファスにするとか、薄膜化ということもございますが、これも技術開発しておりますが、これにも時間がかかるという問題はございます。
 もう一つ例を挙げますと、燃料電池でございますが、これはまず2000年に20万キロということでございますので、これを達成しますには、今、200キロぐらいの設備があるんですが、それを700セットぐらいセットしなきゃいかんと。そうしますと、これだけでも、現在のユーザーの希望価格とコストとの差額をもし国の援助でお願いするとすると、百数十億から200億ぐらいかかるわけです。それをお願いしていますが、なかなかうんと言っていただけないというような現状でございまして、そんなことで非常に苦慮しております。
 もう一つ、時間がございませんのですが、省エネにつきましてもいろんなことを考えておりますが、例えば高温ガスタービンの開発だとか、それから、さらに高温のMHD発電だとかいうようなものを考えておりますが、それもそう簡単にはまいりませんので、そんなことで現実はいろいろ厳しいものがあるということを認識しながら考えますと、どうしてもエネルギーとしては原子力をある程度、頭の中に入れましてやっていかざるを得ないだろうというふうに認識しております。
 時間がございませんので、言いたいことを言えませんが、とりあえず新エネのご紹介だけしておきます。
【竹内】  先ほどから新エネルギーの話が出ていまして、内山さんがカリフォルニアの砂漠に太陽パネルを並べるということをおっしゃられたんですが、私、実は非常におもしろいというか、これぞ工学だなという経験をしたことがあるんですが、カリフォルニアのソーラーワンというところに行ったら、風が吹いておったわけですね。20メートルかになると、みんなパネルを横にしちゃって、もうそこで発電をやめている。風が吹いて太陽光できないんですかということを所長に言ったら、いや、竹内さん、全然違うんだということを言うわけですね。なぜかというと、砂漠であるために、雨が降らなくて、パネルが汚れちゃって、これは発電が非常に効率悪くなって困る。言うなれば、我々が見ると、砂漠であるから非常に適していると思うわけですね。ところが現実は、工学的にはそうじゃないという局面を私は知らされて、ああ、なるほどそうかなと思いました。
 であるからといって、私は新エネルギーとか、そういうのを排すべきじゃないと思っていまして、先ほど舟橋市長のときにも申し上げましたように、省エネであるとか、新エネルギーも、どんどん進めるべきだと思うんです。しかし、今も荻本さんですか、お話のあったように、量的には、私は大量のエネルギーあるいは電力と言ったっていいかもわかりませんが、それを賄うものは無理だと思います。ただ、無理であるからやめるということじゃなくて、どんどんやるべきであるけれども、メインのエネルギーには、あるいは産業規模として期待するのは無理じゃないかと思います。
 エネルギーあるいは電気というのは、ご存じのように、一瞬たりとも止めるわけにいかない。まして産業規模ということで考えると、エネルギーあるいは電気というのは、必要な量が必要なときに、そしてかつ−−私は最も安くなんて、そんな日本はもともと油を99.7%輸入している国ですから、ほんとに安いということまで言いませんが、かなりの経済性を持って得られなきゃいけないわけですね。そういう面で言いますと、いろいろ皆さんご意見あるかもわかりませんが、原子力しか当面ないと思っています。
 その原子力については、やれ廃棄物である、あるいは安全性、いろいろご意見があります。それはこのパネルでも何回も出ていますし、あるいは廃棄物は今後、また議論されると思うんですが、私が総合判断して、やはり、当面は原子力、また原子力も、今は軽水炉ですが、やがては高速炉につなぐ努力を我々がやっていくべきじゃないかと思っております。
 以上でございます。
【森田】  今の議論を、私、第三者の立場で聞いていて、よくわからないのは、原子力政策というのを50年、100年のオーダーで考えるときに、どうして新エネルギーのコストが今のコストで非常に強調されなきゃいかんのかということがよくわからない一つのポイントです。
 それからもう一つは、長期的に考えたときに、そういった新エネルギーは量が足らないということの主張についても、もう少し客観的に幾つか議論したほうがよろしいかと思うんです。実は、今、地球温暖化の将来のCO2 の削減のシナリオを分析しているモデルというのは約40ぐらいのモデルがございますけれども、そのモデルの半分以上が、原子力に全く頼らなくて、エネルギーを供給し、なおかつ温暖化を食い止めるというようなシナリオを書いているんですね。そういうことが実際にありながら、どうもそこの議論がこういう場でなされないというのは、私、非常にフラストレーションを感じるわけですね。
 それは何かといいますと、それはバイオマスエネルギーなんですね。バイオマスエネルギーの今の見積もりに対して、私は賛成しておりません。賛成しておりませんけれども、この論争を僕は避けるべきではないんじゃないかなという気がいたします。といいますのは、私自身、モデルを動かしておりますけれども、モデルというのは非常に多くの仮説の上に立っております。したがいまして、仮説というものに対して幾つかの幅で物を考えていかなきゃいかんということ、それを前提としてものを言っているわけでございますけれども、これから途上国の発展のためのエネルギーの確保ということを考えたときに、絶対量はかなりのもので供給しなきゃいかんと。供給しなきゃいかんけれども、あまり石炭、石油で供給しますと、地球が温暖化してしまう。じゃ、自然エネルギーのうち、ソーラー、それから風力、それで供給するシナリオを書いても、おっしゃるとおり、あるところで限界が生じてしまうんですね。だから原子力かと、そこのポイントに一つの論争があるんじゃないかなと。
 要するにバイオマスの供給のシナリオなんですけれども、これは林産バイオマスとか作物のエネルギー、そういったものを使うような方式なんです。これ、多分、内山さんがずっと避けられていたのは、僕、避けられる理由はよくわかるんですね。今、ここの議論が不確実。非常にデータが少ない中で非常に誇張されてやられております。私はバイオマスを論じるときに幾つかの問題点がある。問題点があるけれども、それを入れることによって原子力が必ず必要というシナリオだけでなく、そうではないシナリオも書けるんだぞということを幾つかの研究者が示して、そこが論争になっているということを私は言っているわけでございます。
 じゃ、問題は何かといいますと、やはりコストでございます。長期的にどのくらい下がるかわかりませんけれども、今、バイオマスを使うとコストが大変高いです。でも、今の原子力政策のオーダーに持っていったときに、果たしてどうかという議論がございます。それから、環境汚染とか自然保護の問題がありますね。要するに森林を切ってから、またそこに植えていくなんていうようなことをやりますと非常にいい生態系が壊れてしまうというような問題がございます。
 ただ、もっとしんどいことは、バイオマスを供給していくときに、農地との競合を起こすという主張があるんですね。これは今のところ私どものモデルは確かめてないんですけれども、食糧供給をやる農地とバイオマスを供給する土地との間で競合を起こしてしまう。だから、食糧問題との兼ね合いが出てくるんだろうというような批判もございます。私はそちらの方はそんなに大した問題はないんじゃないかな、何とかそこの土地はあるんじゃないかと、今、予想しておりますけれども、もっとしんどいのは、バイオマスを供給するときに、先に木を切って、それで供給しちゃって、その後、植えていきますと、最初に木を切った部分の炭酸ガスが大気中に蓄積するんではないかというおそれがあります。そういうような問題も幾つかございます。
 ただ、私は、そういうものはもっと検討して、要するに原子力の場合はかなり万全を期して検討されるんですけれども、こういうものは、いやいや、危ない、危ないという、いや、こういう問題もあるというところで、検討のどうも手が抜かれているんじゃないかなと。もう少し、このあたりの検討をしっかりやるべきじゃないかなということを私は要望したいと思っております。
 それからもう一つ、このポイントには、多分、原子力の推進の立場の方から反論があるのは、これは純国産エネルギーにならないと。要するに日本というのは、土地が非常に少ないので、そういったバイオマスを供給するような、そういったものにはならないという反論が出てくると思います。ただし、私は、この議論についても少し問題があると思います。私、事務局の方から送っていただきました資料を見ておりますと、第2回目に東大の山地さんが増殖炉の開発、こういったものはエネルギーのセキュリティーということよりも、むしろ地球公共財としてのエネルギーを開発していくべきだと、こういうご主張をされていました。ですから、日本としても、地球公共財としてのエネルギーを開発するときに、原子力というものの技術革新を分担するのか、それともバイオマスという技術革新を分担するのかというような、もう少しグローバルな視点があっていいはずだし、そういうところからもう一回、原子力というものを見直すいいチャンスではないかなという感じがいたします。ですから、どうもそこの議論が抜けておりますので、もう少しそこの議論を活性化していただいたほうがよいと思います。内山さんのお気持ちはよくわかるんです。非常に不確実な情報をベースにしてなかなか議論できないということはよくわかるんですけれども、ここは避けて通るべきではないんではないかというふうに思う次第でございます。
【茅】  バイオマスの議論ということになりますと、わりと限られた方だけの専門的な議論になってしまうので、時間を限っただけやりたいと思いますが、というのは、森田さんの今のお話だけで終わるわけにはまいりませんので、問題として大事ものですから。ただ、今言ったように全員の方が参加できませんので、4時半までということにさせていただきますが、バイオマスの問題についてご意見のある方、手を挙げていただけますか。じゃ、古沢さん。
【古沢】  例えば日本の森林の資源ということで言いますと、今、1億立方メートル、1年間にそれだけの森林が成長してきているわけです。それで実際利用されているのはどれだけかといいますと、2,000億立方メートルぐらいなんですね。つまり、利用価値があるものが幾つかある。ただ、コストの問題はもちろんありますけれども、例えば日本の場合を見た場合に、国土の7割は山林、森林、67%ですけれども、私たちが使っているのは、農地と都市居住を含めての半々、15%ずつぐらいなんですね。ですから、私たちが議論して狭いと言っているけれども、私たちが住んで利用しているのは3割ぐらいの土地の中で、7割は実は、ある意味では未利用的な潜在的力を持っている。利用の仕方も、生き物がいるわけですから、全て人間だけが利用すべきものではありませんが、ただ、そういう可能性を持っていると。つまり、潜在的な可能性は、例えばバイオマスということ一つだけ見ても、かなりあるということは十分認識すべきだと思います。
 あともう一つ、再生型エネルギーのコストの点なんですけれども、多分、私は10年間で10分の1というコストの計算は可能性あると思うんですね。つまり、原子力は10年間で10分の1のコストになるかどうか。また、それから先、20年間、30年間、競争力、どうだ。そういう議論を立てていただきたいと思います。
【内山】  バイオマスは確かに原子力とは別のオプションとして、世界的に長期的なエネルギー供給源として期待されております。ただ、IPCCや、「IIASA」のレポートの中では、日本での利用ポテンシャルはゼロというふうになっておりましたけど。一つは、非常に育ちやすい地域、そういうところですと、すぐに再生可能になって、短期に植林が進んでまいりますが、北になると20年とか、そういうパスで育っていかないといけないということは、必要なエネルギー源をある意味でサイクルで考えてみますと、数倍の土地が要るわけですね。そういう基本、非常に広大な土地を要するということ。もちろん、バイオマスエネルギーそのものが化石燃料に比べればエネルギー源として数分の1のエネルギーしかないという問題もありますけど、その両方を考慮して将来のポテンシャルを考えていかなきゃいけないと、そういう不確実性も含めながら、もう少し定量的に明らかにしていく必要があると思います。
【森田】  その点、定量的に把握していかなきゃいかんということは、私も大賛成でございます。それは研究者の一つの役割だと思いますね。ただ、前半の部分、日本ではバイオマスはなかなか栽培に適してないからということについては、じゃ、プルトニウム自体も利用していこうと思った場合に、もはや日本だけでどうするということじゃなく、非常にデリケートなエネルギーになっているわけですね。そういうときに、日本が今からどこかの国と提携しながら、地球公共財としてのエネルギーを開発するという視点であれば、それは可能なんではないか。だから、そういうような視点を日本の国のエネルギー政策の中でも持ち込んでいただきたいということでございます。
 私は原子力をだめだと言っているわけじゃございませんで、地球温暖化の、要するに中長期的に考るなかで、中期的に考えた場合には、原子力なくして今の目標といいますか、CO2 の安定化のターゲットは達成できないということは重々承知しております。ただ、その次のステップのところで、原子力しかないという議論というのが、そこは本当にそうなのか、私はある可能性があったら、それを定量的に把握すべきであるということを申し上げているわけでございます。
【内山】  私は原子力だけとは一度も言っていません。同じように、あらゆる可能性を追求することが大事だと思っています。ただ、信頼性、いわゆる供給源としての信頼性が最も大切ではないかというふうに指摘しております。
【竹内】  バイオマスについては、私、あまり知識ありませんが、ただ、スウェーデンで12基の原子力があって、それを当面やめましょうといったとき、バイオマスの議論があったと思うんですね。あそこでは、早くできる柳を植えて、それで(エネルギーを)何とか回収する。ところが、最近のスウェーデンの動きを見ると、やはり原子力をやめるというのも無理であろうということで、正式に見直したということは聞いておりませんが、向こうでは問題あると思っていますというふうに聞いています。であるからといって、私は、バイオマスを含めて、何も新しいことをやるべきじゃないとかということじゃなくて、もっともっと可能性を私は追求すべきだと思うんですが、そういう中で、原子力をやっている人間は、何かそういう新エネルギーを排除しようとしている、それとは全然私は違う。ぜひご理解願いたいと思います。
【十市】  私もバイオマスの専門家じゃないんですけど、今の話を聞いていて、新しい技術というのはいろいろあるわけで、供給のポテンシャルも、ソーラーエナジーがまさしく先ほど来言われている話なんですけれども、非常に大きいわけです。この議論を聞いていて感じることは、エネルギーの問題というの、要するに時間の要素と量的な問題をきちっと評価しないと、可能性は幾らでもあるわけですね。問題は経済的に今の社会のシステムにちゃんとそれが入っていくのかどうか、それにはどれだけの時間がかかるか、どれだけコストがかかるかということをきちっとやらないと、私たちはちゃんとした議論ができないと思うんですね。
 私自身は、どちらかといいますと、あと寿命が50年しかない石油だとか天然ガスの問題をずっと研究しているんですけれども、あと50年でなくなるという議論が一つの前提になっているようでありますが、実は、石油の世界あるいはガスの世界でも大変な技術革新が進んでいるんですね、今。生産するためのコストも非常に安くなっていますし、回収率もかつては30%しか地下にあった石油が回収できなかったが、今は50%とか、そういう意味では化石燃料も大変技術革新が進んで、安い価格で提供されていると。逆にこれはまた新エネとか省エネが進みにくい理由でもあるという一つのジレンマだと思うんです。
 原子力との関係で申し上げますと、ヨーロッパの国、アメリカ、例えばドイツですとかイギリス、こういう国は原子力をあまり増やさないという政策をとっているわけですね。それじゃCO2 を削減するために何をやっているかというと、結局、今やろうとしているのは、天然ガスを使った発電、コンバインドサイクル発電という非常に効率のいい、いわゆる在来型のエネルギーを使って、これをやろうということで、今、大々的にやっているわけであります。新エネルギーももちろん、ドイツだってやっていますし、イギリスもアメリカもやっておりますけれども、これは相当時間かかるわけですね。電力供給の10%、20%というような非常に大きなウエートを占めるには相当時間がかかると思います。やるべきだと思いますけれども。
 そういう視点から言いますと、日本はそれじゃどうかと。今申し上げた3つの欧米の国というのは、実は石炭が50%以上、発電のソースを占めているわけです。国内に豊富な資源があったということが一つの歴史的な流れだと思うんですけれども、日本はご承知のようなことで、石炭から石油ということでどんどんエネルギー転換が進んで、オイルショックの後、それから、石油の安定供給が非常に問題だということもあって、今、エネルギーの多様化ということで、原子力であり、天然ガス、LNGを使った発電、あるいは石炭という形で非常に多様化が進んできているわけですね。
 ですから、私は、そういう中で日本の将来を考えた場合も、新エネルギーはもちろんこれからもっとやっていくべきだという立場でありますけれども、それは時間的な要素を考えて、そういう中で在来型のエネルギーというのか、技術革新もあって、かなり重要な役割を果たしております。原子力もその一つだと私は思っておりますので、どうもバイオマスの議論というのは、これは確かに50年、100年先という非常に超長期の世界で言うと大事だと思うんですけれども、現実の世界というのは、今申し上げた在来型のエネルギーでかなり動いているという、そういうことを踏まえて考えて議論すべきじゃないかなと、そういう気がいたします。
【藤井】  今、バイオマスの話が出ておりますので、一言つけ加えさせていただきますと、木植えてバイオプランテーションという形でエネルギー資源を作るという話もございますし、去年、フライブルグに行きましたら、先ほどちょっと話が出ておりましたけれども、そこでは一カ所に生ごみを全部集めまして、そこから出るメタンガスでコージェネレーションシステムで発電し、系統に電力を流し、そこからの廃熱は、その近くのアパート群に温水として供給している。これは確かに量としては少ないかも知れませんが、こういったことをする姿勢が大切だと思いますね。ですから、小さいからだめだとか、これはメインにならないから、考えないとおっしゃってないとは思いますけれども、こうした小さなエネルギーの積み重ねが、やはり大きなものになるということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。
【茅】  ありがとうございました。
 それじゃ、先ほど申し上げましたように、バイオマスの話はこの辺にしたいと思いますが、たまたま私自身もこういった分野に身を置くものですから、全く何も言わないというのも自分に対して、ややしゃくなので、一つだけ申し上げさせていただきますと、バイオマスのエネルギーが将来的に非常に期待が持てると言っているのが欧米に非常に多いことは事実だと思います。それは、森田さんが言われるように、そういった問題に対して日本側の評価は比較的低いと。ただ、これをもう少し、本当にその可能性がどの程度あるのかということについて具体的に細かくチェックした例があるかというと、実は意外に少ないんですね。森田さんはよくご承知のように、ヨハンソンの厚い本がありますが、あの『リニュアブルエナジー』という本を見ても、実はそこのところはよくわからない。かなり仮定なんですね。ですから、バイオマスというのは考えてみますと、非常に広大な地域を使うものですから、地域事情を細かく調べるという大変な作業が必要なので、現在の段階では、本当のことはだれも知っていないというのが現状だと思います。
 その意味では、将来を考えますと、もっとバイオマスという問題についてきちんとした調査、あるいは研究を行うべきであるというのが私の持っている考えでございまして、私個人も、日本の例えばNEDOなどに要望は出しているんですけれども、そんなことで、私はその意味では森田さんがおっしゃるように、バイオマスの評価あるいは研究開発をもっとやるべきだというご意見は賛成です。
 ただ、長期的に考えた場合にはそうだというだけであって、現在、先進国でバイオマスの意味をある程度をわかっているところはほとんどない。ブラジルの、問題はございますけれども、アルコール発酵ぐらいの例なものですから、そういうことを考えますと、長期の問題という意味ではバイオマスは非常に重要ですけれども、今から中期的な三、四十年の範囲でということになると、バイオマスというのはかなり問題があるのではないかというのが個人の意見でございます。
 それでは、先ほど申し上げましたように、まだご意見があるかもしれませんが、それは後ほど言っていただくことにして、あと1時間ほどございますが、もう一つ、省エネルギーという問題がございます。これはどなたでもご意見が多分おありだと思いますし、また、今後を考えた場合、エネルギーの需要をどう考えようかというのは私は大変大事な問題だと思います。ご承知のように、1990年以降、世界の国で、特に先進国はそうですけれども、単位GNP当たりのエネルギーが増加している国がほとんどでございまして、アメリカがわずかながら下がっている。よくなっているというだけで、ほかは全部悪くなっているわけです。こういう状況で省エネルギーということをどうやって進めていくのかというのは、関係者の共通の大きな問題なんですけれども、もしこれがこのままいくならば、いかに省エネルギー可能性があるといっても、現実には答えにならない。したがって、先ほどの舟橋さんのおっしゃったようなやり方も一つの案だと思いますが、省エネルギーというのが一体どの程度に考えていくべきなのか、あるいはどういうことをすべきなのか、この辺について、先ほど申し上げましたように、ライフスタイルであるとか、あるいは規制であるとか、あるいは場合によっては経済的なインセンティブとか、いろいろあり得ると思いますけれども、皆様の方からご意見をいただければありがたいと思います。
【碧海】  もう既に省エネルギーのほうのテーマに入られましたけれども、自然エネルギーについて一つだけ言わせてください。というのは、私は原子力の長期計画のほうの原子力懇談会の委員というのを以前にいたしましたけれども、そのときに、普通の人の立場で感想を書けという原稿をご依頼いただきました。つまり、普通の人とは何だろうと。そのときさんざん考えさせられたんですが、そういう意味では、本日も、私はおそらく普通の人の代表なんだろうと。そういう意味で、これはどうしても意見をある程度言わないと、先ほどから拝見した限り、あまりにも普通の人が少な過ぎるという気がいたしますので、5分以内に極力抑えますが、先ほどからどうしても発言したいと思っておりました。
 自然エネルギーについては、実は女性は非常に自然エネルギーを待望しております。これはいろんな調査をしても、懇談会などに出ましても、必ず出ます。自然エネルギーをどうしてもっと利用しないんですか。NHKさんなんかも番組でわりあいとバラ色の扱いをされますので、女性たちはみんなそう言います。電力会社はなぜもっと自然エネルギーを開発しないんだ。私はそういうとき、たまたま電力会社の仕事をしていた関係もあって、自然エネルギーについては、これは電力会社が開発するとかいうことよりも、もっと、つまり、皆さんが住んでいらっしゃる地方自治体あるいはそういうコミュニティ、このレベルでは自然エネルギーの利用というのは考えられるだけした方がいいんじゃないかと。あるいは太陽光の利用というのは、個人のレベルでもできるんですよということは言っております。
 けれども、私はつい最近、自分のうちを直しまして、非常に高気密、高断熱のうちを建てて、これはライフスタイルとも関係があるんですが、自分のついのすみかとして、そういう家を選びました。けれども、そのときに太陽光発電は選びませんでした。なぜかというと、これは過去の63年間の体験から、個人の家庭で、先ほどメンテナンスの話が出ておりましたが、メンテナンスが非常に難しい器具を作るのは、これは実に苦労の種になるということを痛感しているからなんですね。ですから、私は、個人の家で太陽光発電というのは非常に趣味的に、そういうことに感心のおありの家族がいらっしるならいいけれども、少なくともそういうことにわりに無関心な家族の住む家で、例えば主婦がそのためにきりきり舞いさせられるような、これは私は絶対勧められないというふうに思っておりまして、自分は逆の省エネ型の住宅を選びました。
 これは省エネともかかわってくるんですが、昨年までは私はエアコンは一台もないうちに住んでおりましたけれども、今度の省エネ型のうち、これは極めて省エネ型のうちでして、窓ガラスも3層ガラスというようなうちなんですが、これで昨年までのエアコンを使ってない状況と比較して、その後の1年はエアコンも取りつけたんですけれども、エネルギー消費は約3分の1になりました。ですから、そういう意味では、私はこの選択は正しかったというふうに思っております。
 ただ、一般の生活者に関して言うならば、そういう選択が十分にできるような情報が本当に伝わっているのか、あるいは説明がされているのかというと、これは非常に不足していると思うんですね。というのは、省エネルギーとか原子力の問題というのが専門家のレベルからおりていくという形で今までどうしても説明がされる、情報提供がされるという傾向があったからじゃないかと。今日の円卓会議のお話を聞いておりましても非常に専門的なお話があるわけですけれども、もうちょっと暮らしている人の立っているところから、だんだんにその人たちが持っている関心を広げていく形でエネルギー問題とか原子力の問題とかに膨らませていく、そういう手法というのを何とか考えないと、結局、遠い原子力の問題になってしまうと。ほんとは遠い原子力よりは近いエネルギーで、家庭内の生活に使われるエネルギーの問題というのは、生活者は関心がないわけではありませんで、例えば電子レンジの使い方一つとっても、電子レンジが実は消費電力が500ワットじゃなくて、1,000ワットなんだよというような話を一つしても、これは非常に女性たちは喜ぶわけですよね。だから、私は、情報提供そのものも、もうちょっと工夫をしなきゃいけないんじゃないか。
 とりあえずやめさせていただきます。
【加藤】  ただいまのお話に重なるところもあるかもしれませんけれども、どうも議論が技術論の方に流れていってしまいまして、勉強会としては非常に、私、役に立ちましたけれども、エネルギーの問題というのは、個々の人間と、それから、人間だけじゃなくて、地球にはほかの生物も暮らしておりますから、そういう生物たちを中心とした議論じゃなければならないんじゃないかと。そこから外れていってはいけないんじゃないかと思うんですね。
 そうしますと、今、碧海さんのおっしゃいました暮らし方の問題も含めて、むしろエネルギーの開発の問題については、これは文化論ではないかと思っています。そして、文化の視点からエネルギーの問題を、原発などの問題を考えてみますと、またちょっと違った形での結論になってくるわけで、私が一番ひっかかっているというか、どうしても嫌だと。幾らいろんなデータをそろえられても、原発は嫌だという本質的な抵抗を感じて、それはどうしても多分なくすことはできないだろうと思っているのが、文化の視点から見た原子力利用のことなんです。
 それだけだとわかりにくいので、すごく下手なんですけど、絵をかいてきまして、それをOHPで出してみたいと思いますけれども、今までの議論を停滞させるような感じになるかもしれないんですけれども、でも、私は、基本的にこういうことから出発、いつもいつもここの部分を忘れては、どんな技術の話も、専門的な話もできないんじゃないかと思うので、それをあえて、ちょっとさせていただきたいと思います。
 長々としゃべりません。すぐに終わります。しゃべるよりは、図を見ていただいたほうが、私の下手な話よりわかるかなと思っただけなのでかいてみましたけれども、あくまでも私の考え方ですので、こういうふうに考えない方もあるいはあるかもしれません。大体、今までの自然と人間の文化というのはわりあいに対立的にとらえられてきたと思うんですけれども、私はそうではなくて、自然を、例えば大きな円にするとしますと、その中に人間もまた含まれるだろうと。人間も、ですから、生物の一種だろう。人間が生物の一種だとすると、当然、そのほかにいるいろいろな動物、人間のエネルギー問題には全然無関係の、人間の必要としているエネルギーにはあんまり関係ないような動物も、当然視野に入れて考えなければならないということなんです。
 それで、あえてここに書いてあるわけなんですけれども、人間が自然に含まれるということは、つまり、人間がつくり出している文化も、この自然の中に含まれるということです。だから、暮らし方も含めて、あるいは文学をはじめとする芸術とか、音楽とか、まあ、産業もその中に入りますし、娯楽とかスポーツとか、その他、人間の営みは、ほとんど文化の範疇に入ると思っています。だから、自然があって、人間の文化があるわけです。でも、忘れてはならないのは、そのほかにあるいろいろな動物たちの文化もあるということです。タンチョウヅルやなんかも、こういうふうにいますし、それから、非常に個数的に衰えてしまったので文化も衰えてしまったんですけれども、シマフクロウの文化もここにあるし、例えば、ブナの文化、動物だけじゃなくて当然、森林の文化もあるわけです。ブナの原生林の文化もあるということです。それから、犬、猫のように、本当に人間に依存している文化は、この人間の領域の中にあると思います。
 大体こういうふうに、文化と自然という関係では、自然の中に含まれているものだけが本当の文化と呼べるものだと私は思っていまして、個々の生物は、みんなその文化を持っていると思っているわけです。
 ところが、この現代のいろいろな先端技術がどんどん発達してきますと、ここに、こういうふうに人間が飛び出してくる部分があるわけです。飛び出してきて何が悪いだろうかということを言う人もいます。これは、その人の価値判断によるわけなんですけれども、私の意見を言いますと、こういうふうに飛び出している部分は、例えば、原発のような、原子力利用だと思うんです。それで、そういうふうに、ほかの飛び出している技術もありますけれども、こうなった場合、これをみんなが妥当として、そしてこれをみんなが使うようになった場合には、ここの文化に、人の文化というものは、ほとんどこっちの外側に飛び出してきてしまうということになると思うんです。そのときに問題になるのは、やはりここの飛び出したところにいっぱい穴があきますよね、自然に穴があく。自然に穴があいたところは、目に見える形では、事故による破壊とか、環境破壊とかいろいろあると思うんです。それはそれで、すごい危険性があるんですけれども、何よりも私が一番嫌だと抵抗しているのは、人間が飛び出した場合、人間は自然の中の生物ではなくなってしまうわけです。人間はその進化の中で、生物として今あるわけなんです。私たちがするすべての営みは、この自然の中に位置づけられた人間としての営みをしているわけなんですけれども、飛び出してきたものがほとんど人間になった場合、これはもう人間とは呼べない。非生物的存在、何と言っていいかわからないんですけれども、とにかく自然な人間じゃないし、地球の生き物でもないというような、人間の顔形はして、一見はそうでしょうけれども、やはりそうではない人間になってしまう。小説を書く私は、人間というものを非常に信頼して、それを観察しているものですから、そこにはみ出す部分において、非常に抵抗しているわけです。ですから、人間が人間でなくていいのかどうかという、これは人間の文化にかかわる大事な問題ではないかと思います。
 ちょっと簡単ですけど、大体、説明をこれで終りにさせていただきまして。あと、それに伴って、何が何でも新しい、自然の循環に基づいたような新しいエネルギーは可能かどうかではなくて、どうしてもやっていただかなくてはならない。そして今、宇宙船が飛ぶような時代ですから、そういうことは、普通の市民である私たちの常識の範囲では可能であろうというふうに思っております。
【茅】  ちょっと、お話を私が十分わかっていないと困るものですから、その意味で伺っておきたいのですが、今、人間が外側に飛び出すという例として原子力をおっしゃったんですが、今の話だと、ほかのでもそういう考え方が当然あり得るわけだと思うんですが、例えばほかの例というのはどういうものでしょうか。それを言っていただくとわかるんですが。今、例えば宇宙船とおっしゃいましたが、宇宙船もそうなんですか。
【加藤】  それは、言葉の問題ではないです。あとは、私の考えでは遺伝子工学とか、宇宙開発のある部分とか、そんなようなことなんですけれども。
【鳥井】  今のお話と関連して、私がいつも疑問に思っていることがあるんです。関西電力の方がいらしたら怒られるかもしれないんですが、黒部ダムを見に行きまして、あれ、実はものすごい自然破壊だったわけです。あれで30万キロワット発電しているだけなんですね。つまり、どういうことかというと、あそこのダムの面積というのは、人間が太陽の光線を独占しちゃった結果だと思うんです。太陽発電というのを考えましても、これは多分、人間が太陽の恵みを独占するんだろう、面積が広がってくるんだろうという感じがする。バイオマスにしても同じことがあるんじゃないかと思うんです。
 それが、本当に許されるんだろうかというのが、大変強く今の文化との絡みで考えているところでございまして、50億人という人間が住んでいたときに、自然エネルギーというふうにおっしゃって、それは公害がないとか、リスクがないというふうにお考えのことがあるわけですが、まとめて言いますと、自然エネルギーを人間がどんどん使うということは、太陽の恵みを人間が独占して、ほかの生物に与えないということに等しいんじゃないかというふうに、実は私は感じることがありまして、黒部へ行ったとき、これでいいのかなというのを私はものすごく強く感じたんですけれども、いかがでございましょうか。
【茅】  加藤さん、今のは何か……。
【加藤】  あまり専門的なことはわかりませんけれども、別に、太陽の恵みはすべての生物の上に注いでいるから、人間が利用しても、ほかの生物に行かないということはないんじゃないでしょうか。専門家の先生もいらっしゃると思うんですけれども。
【藤井】  今の鳥井さんのお話ですけれども、確かに自然エネルギーといえども、そういった大規模な形で使う、要するに自然に大きな負荷をかける使い方もあるので、やはりこれにも限度があると思います。例えば、アスワンハイダムもそうだし、中国も大きな水力発電所を作る計画が進行中ですけれども、ああいった大規模なものをつくりますと、やはり気候の状態が変わる可能性もあります。
 ですから、やはり限度がありまして、負荷の度合いの程度を考えないといけない。その負荷をできるだけ小さくして、いかにうまく使いこなすか。負荷がゼロとなる系があるとは申し上げませんけれども、負荷が小さい系があることは確かです。ですから、知恵を出さなきゃいけないということを申し上げたいわけです。
 例えば、太陽電池をある地域一面に張りめぐらせて、発電をし、それを他の地域に供給するなんていうことを余り考えないほうがいい。ですから、これはやはり分散型エネルギーシステム向きです。それから今、加藤さんが言われましたように、やはり人間は、環境の中の、地球の中の一生物にすぎないという、この辺のところの認識をしておく必要があるでしょう。ですから、人間だけが地球上に生き延びることは絶対できないわけです。やはり人間のエゴといいますか、あまりそればかりむき出しにしてはいけないと考えます。
【古沢】  私も使い方のあり方だと思うんです。だから、もちろん、トータルにどんどん使っていく−−原子力がいいか、自然エネルギーかという問題、もちろん供給の問題がありますけれども、供給をいくらでもどこかに依存して、それを増やしていくという方向ではない、つまり、いかに供給部分でも負担を減らしていける方向、つまり先進諸国は、将来、例えば幾つかが実際にやっているように、2020年には25%、4分の1、あるいは半分にという非常に大胆な、そういう方向でどうできるかというのが一つです。
 つまり負荷を減らしていくということと、今度、我々、消費の側で、例えば電力だけで言うと、私たちの生活でだんだん非自然的な、つまり電力に依存するというのは、非常に便利なんだけれども、ある意味では非常に負荷をかけている。つまり、例えば電力で言えば、たしか2割ぐらいが冷蔵庫とエアコンですか、その部分ですね。エネルギートータルじゃないんですけれども、家庭の場合ですね。そこがまたどんどん増えてくる。だけど、例えば、我慢するというのが一つの手ですけれども、もちろん、そこにいかにインセンティブをつけるか、具体的には、冷蔵庫の場合ですと、5年か10年かで単位当り電力消費は3分の1とか、エネルギー効率では3倍、4倍という形で出てきたわけです。ですから、そういうふうなインセンティブをどうつけるかということで、まず、そこの効率の部分で、これからの需要に対して、エネルギーの供給を増やさなくても、それだけのメリットといいますか、効果を発揮できる。それは、可能性はあると思うんです。増やさなくてもできる、そういう技術は今できるだろう。まず第一点としては、負荷をこれ以上かけないという点に立つ方法論が一つあると思います。
【茅】  今のご説明は、私には必ずしも十分わからなかったんですが、最初は藤井さんのお話と同じように、鳥井さんもご質問に対して、やはり環境に過度に負荷を与えるような使い方はやめるべきだということで、これは大変よくわかるんですが、その後は省エネルギーのお話ですね。ちょっとそれは別の問題でございますね。
【古沢】  そうです、省エネルギーです。使用削減と効率化と二つ分けて考えています。
【伊原】  先ほどの加藤さんのお話、まことにごもっともで、人間だけが地球の上でのさばっていちゃいけないわけです。そこで、自然の循環、自然の生態系というのは非常に重要である。そこで、前にも松井さんのご説明がありましたが、宇宙の創世以来、あるいは地球の創世以来、放射性物質というのは地球の中にいっぱいある。そこで、自然の放射線というのを我々は常に受けているわけです。
 私は、たまたま関西で生まれて育って、そのときは、あそこは自然放射線が関東よりかなり高いんです。例えば、単位を−−難しいから、関西では地球から、地面から120単位ぐらい受けている。関東の方は例えば80単位ぐらい受けている。そうすると、40単位ぐらい差があるわけです。しかし、それによって、関西の人と関東の人とが、自然放射線の影響で大きな差がある、例えばこっちが、がんが多いとか少ない、そういうことは全くないわけです。したがいまして、自然放射線の変動の範囲内に原子力活動があるならば、これは許されてしかるべしという言い方はまずいかもしれませんけれども、加藤さんのご発言で言えば、飛び出していないと理解していいんじゃないかと思います。
 原子力発電所は、実際は、この変動の幅のまた2桁下ぐらいの影響しかないんです。それも、発電所の敷地のすぐ外に、1年間へばりついている人がいたとしまして、その人に対しての影響が、自然放射線の変動の幅の中よりも2桁少ないんです。だから、一番飛び出していないのが原子力だという説明もあり得るんです。しかし、心理的には非常にご不安があるというのは事実です。チェルノブイルがあるじゃないかとかですね。しかし、少なくとも日本では、自然放射線の変動の範囲の2桁低いところという、一番飛び出していない。例えば、ほかのエネルギーですと、酸性雨が出てきて、鳥に被害を与えるとか、そういうことがあるわけです。ですから原子力は、少なくともそういう意味で一番飛び出していないとご説明させていただきたいと思います。
【加藤】  さっきのお話の中では、野性生物を視野に入れたいという話と同時に、やはり人間が生物であるという時点にとどまらなければならないと私は思っているんです。だから、そのためには、やはり原子を取り出して利用するような形は、自然とはかけ離れた存在だから、外に飛び出してしまうだろうということを言ったわけです。
【藤家】  文化論、あるいは文明論という観点から、私、実は3月まで大学におりまして、退官記念の講演が、自然との調和、人間社会との調和を原子力が持ち得るかということでお話ししました。
 私は、宇宙のエネルギー源を考えましたときに、自然の原子力と人工の原子力しかあり得ない。今、我々が使っている原子力は、過去において、地球上に自然に発生したものを使っているわけで、いずれにしても人間がやるのは、今の加藤さんのようなお話でいきますと、自然に学ぶ以上のことはできないだろうという認識では、私も変わるところはございません。
 そういう観点から原子力と太陽を見たときに何か違うのか。確かに放射性物質が地上に残されるかどうか、これは決定的な違いです。したがって、私は太陽をやるのも非常に大事だと思っていますし、積極的にやっていただきたい。ただ、これは、決して相互に排他的にやる話ではないと思います。そこで、何が共通点として我々に要求されているかというと、リサイクル社会を形成するだけの能力をお互いに持っているかどうか。今日、いろいろな方と−−大学の先生は、特にそういう観点からいろいろな夢を話されたんですけれども、これは、私が理解する限りにおいては、リサイクル社会が形成できるかということだろうと思っています。
 日本の原子力も、これは昭和30年代の初めから、まさにそのリサイクルができるということを大前提にしてやってきたことは、ご承知のとおりであります。先ほどちょっとプルトニウムの話が出たわけでありますが、我々は平和利用に限ってこの原子力開発をやっていることはご承知のとおりであります。プルトニウムを実際に扱えるかどうかということが、原子力がリサイクル社会を形成できるかどうかとほぼ同じ意味を持っています。だから、先だってもアイリーン・スミスさんが、「プルトニウムを使って、2050年に5基をつくってどうするんだ」というお話があったわけですけれども、私は、やはりここがポイントになって、まさにリサイクル社会。
 私どもは、まだ究極の原子炉というのを見つけていないんです。しかし、究極の原子力に要求される条件は非常にはっきりしています。エネルギーが取り出せて、新しく燃料がつくり出せて、放射性物質がつぶせて、しかも安全が確保できる。この4つの条件を満足するのが、私はみずから整合性のある原子力システムだと思って、ずうっと大学で研究してきたわけです。その辺は、まだあまり一般的になっておりませんが、そこへ向かう途中において、そのプルトニウムを使った高速増殖炉というものが存在する。その段階で、リサイクル社会が原子力にも確立されるという確信を持っているものですから、今、申し上げたような意味で、私は原子力にずっとかかわってきている。その究極の姿へ向けての開発が今あるんだ。
 よく考えていただきたいのは、今の石油文明をつくり上げる、それは人類が火を発見してからこれまでにどれだけの時間をかけてきたか。今日、内山さんのお話にもありましたけれども、次第にそこから脱却しなきゃいけない時期が近づいているということは、皆さんご承知のとおりです。その後に来るのは、やはり自然の原子力である太陽か、人工のエネルギーか。今、我々が使っているあれとは、かつて地球上に存在した話なので、それを今再現しようとしているということですから、私は、これがリサイクル社会を形成する上で十分な可能性を持っている、そこまで行くのも、そう早いとは思いません。これは一つの新しい文明を築いていくわけですから、5年や10年でというわけではないと思います。
 ただ、この間、アイリーン・スミスさんが言われたように、2050年に5基という話にはとてもならないと思う。そのときに……。
【茅】  すみません、この間のときに出られた方はこちら側だけなので、あとは出られておりませんから、その話はやめていただけますか。
【藤家】  いずれにしましても、そういった意味で、自然エネルギーであれ、今の原子力であれ、リサイクル社会が形成できるか、ここは非常に大きなポイントだと思います。リサイクル社会が形成できて、なおかつそれが自然に合わないとおっしゃれば、これはもう話にならないと思います。
【茅】  今の藤家さんのお話は、多少わかりにくいところがあったので、私なりに単純に解釈しますと、要するに、我々は自然エネルギーを使っているけれども、もともとは太陽の核融合のエネルギーを使っているんじゃないか。それに近いものをできるだけ、我々は似た性質のものを地上で実現していこうとしているのが原子力であって、その意味で言うと、原子力が自然のものでないということにはならないということをおっしゃりたかったんですね。
【藤家】  はい。
【茅】  わかりました。では、ほかの方どうぞ。では、森田さん。
【森田】  リサイクルに持っていくということについては、私は大変いいことだと思うんです。ただ問題なのは、今言われたような完璧なリサイクルに持ち込むときのコストの問題なんですね。私はいつも、あるエネルギー源が長期的に長持ちするということは、ある理想的なリサイクルに持ち込んだときのコストがどのくらいになるだろうかということを常に考えるわけです。私の研究で使っているようなモデルを見ますと、そこのコストを少しつつくだけで、全然状況が変わってくる。要するに長期的に見れば、原子力のリサイクルのコストをどのくらい見積るかによって、今後、長期的にマーケットで受け入れるかどうかというのが決まってくる。そこのところの見通しが、私はもう一つよくわからなくて、これはむしろ質問なんですけれども。
【茅】  ありがとうございました。実は、今、ここでプルトニウム、あるいは燃料リサイクルの話になりますと、ちょっと本筋から離れてしまいますし、それはまた別途のところで議論をいたしますので、申しわけありませんが、その辺はちょっと今日はやめていただけますでしょうか。
 というのは、時間があと30分しかございませんし、先ほどの議論の後半で、省エネルギーということを申したんですが、たまたま古沢さんの方から「省エネルギーはまだ可能性が随分あるんだ」というお話がございましたので、できればその辺を中心に、むしろ皆さんのご意見をいただけたらと思います。
【内山】  資料4の27ページをもしできたら開いていただきたいんですが。
 そこに「電力における省エネルギー対策」あるいは「電源構成の今後の課題」なんですが、それをまとめてございます。やはりこれからは供給だけでなく、需要サイドでも積極的に電力対策を図っていくべきだということが書いてございます。省エネもおっしゃるとおり、各需要サイドで電気利用機器、あるいは断熱等々で、ポテンシャルとしましては、我々の研究調査によりますと、いわゆる機器をベースにした省エネは、10%ぐらいは可能だという結果が出ております。ただ、これにもちろん、先ほどから、いろいろライフスタイルが変わって節エネルギー、節約ということが入れば、それプラスアルファということで、さらに期待できる。
 さらに、やはり何がこれから課題かというと、ピークが非常に伸びる。ご存じのように民生需要が非常な勢いで伸びておるわけですので、それをどういうふうに対策を立てるのか。実は太陽光発電も、そのピーク対策にはなるわけです。夏場の暑い時期に太陽光が照るわけですから。そうしますと、設備の価値は3割か4割ぐらい可能性があるわけです。ところが、太陽光がたくさん入ってきますと、今度は系統の信頼性というものが出てくるわけです。具体的に言いますと、大体10%ぐらい入りますと、電圧や周波数が変動し始めます。その対策を立てるためにはバッテリーが必要になる。ではそのバッテリーをどういうふうに使うかといいますと、夜間に大型の火力や原子力のエネルギーを蓄えて、その変化に合わせて平準化してあげる。すなわち、それによって太陽光の普及を促進してあげることができる。もし、そのまま太陽光の電気をバッテリーに蓄えますと、非常に高価な電気なんです。それを蓄えてまた使うようになりますと、30%ロスしているんです。それを考えますと、太陽光や自然エネルギーを普及する場合には、どうしても大型電源の支持が要るわけです。その辺を考えますと、これからはやはりエネルギー源というのは、そのように多面的に開発して、さまざまな形で省エネルギーを図っていかなきゃならないと考えております。以上です。
【茅】  ありがとうございました。実は後半の話は、省エネルギーというよりも、また自然エネルギーの話に戻っちゃったんですが、今の内山さんのお話は、全般を−−ちょっと先ほどの古沢さんのお話と対応しますと、省エネルギーは大事だが、内山さんのところの推定では10%ぐらいだ。先ほどの古沢さんのお話では、3倍も4倍もというお話がございましたが、ちょっとその辺は、大分開きがあるような気がいたしますけれども、そういうことですね。
【内山】  はい。
【藤井】  古沢さんに一つご質問申し上げたいのですが、途上国の経済発展ということと、人口の自然増というのは、どういうふうに考えの中に入れていらっしゃるんでしょうか。
【古沢】  申したかもしれませんけれども、消費のレベルをどこまで考えるかということと、途上国でもいろいろな条件がありますね。ですから、単純に途上国の人口掛ける需要がどんどん増えていく、その分が資源として、エネルギー源として、トータル、負荷としてかかってくるというふうに言えるかどうかということに私は疑問−−つまりその需要に対して、どういう使い方をするかによるんですけれども、省エネその他、国の一つの使い方で言えば、日本ぐらいの持っているエネルギー効率とか、そういったことを導入することによって、需要の拡大に対して、省エネ的な対応策で、ある程度見通しがどこまでつくかというのは先の見方なんですけれども、当面の、例えば2010年ぐらいまでの中での、途上国を含めての大きな人口爆発、エネルギー消費拡大。近代的な工業技術とか、そういった集中型のものに関しては、なかなか対応できない部分もあるかもしれませんが、全体の消費量の需要に対してのエネルギー消費の、ただそれがストレートに、消費全体の拡大にならないような方策が立てられるんじゃないか、立てるべきじゃないかというのが主張なんです。
【十市】  今の点に関して、例えば中国の例を挙げますと、人口は日本の10倍ぐらいで、第9次5カ年計画で、2000年まで計画を持っていますね。電力で言いますと、中国全体は2億1,000万キロワットぐらいですけれども、毎年8%の成長をしようとしているわけです。ということは、毎年1,600万キロワットを現につくっているんです。それは石炭火力であり、足らないから原子力もやろうという、現実にはそういう形にものすごく動いているわけです。
 省エネルギーはもちろん大事です、日本もさまざまな協力を今、中国とか途上国にやっておりますけれども、それはそれで、やらないといけませんけれども、今おっしゃったように、そう簡単に需要増加を押さえるのは、極めて難しいという気がいたします。
【茅】  今の、中国の場合には、電力はそうなんですが、エネルギー全体としては、大体4%ぐらいの省エネになっています。
【十市】  伸び率はそうですね。
【茅】  いやいや、省エネルギーの率がです。
【十市】  それは、GNPの伸びに対して、エネルギーの伸びが低いという意味ですね。
【茅】  そうです。それの理由なんですが、それは自立的にやっているのではなくて、むしろ政府が、エネルギー需要の伸びが大きいと供給が間に合わないということで、かなりいろいろな規制を引いているわけですね。そういったことで、むしろ規制という形で省エネルギーは実現されているというのが、私の理解なんですけれども、これはつけ加えです。
【鳥井】  私の感じですと、まず、途上国は発展の初期の段階でお金がないわけですね。省エネの大変進んだものを買えと言っても無理ですので、やっぱり垂れ流しみたいなものから工業化が進んでいって、工業化が進まないことには、人口問題とかなんとか、いろいろな別の問題とも絡んでくるわけですね。ですから、そんなにうまくいくかなというのが、いけば本当にすばらしいんですけれども、いくかなというところがあって、難しいなと思っているのが常日ごろです。
【藤井】  省エネルギーって、これはやり方の問題なんですよ。例えば、先ほどちょっと、高断熱住宅の話がございましたが、実は私も、実験用に住宅をつくりまして、それで、どのぐらいのエネルギーでまあまあの生活ができるかということを今やっております。この家は、外部から電力は全然引いておりません。すべて太陽電池の電力で賄っています。それでもちゃんとテレビも見られますし、ステレオも鳴るし、冷蔵庫も動かしています。出力は大体、つけている太陽電池の容量で1.5キロワットです。私がこれを造ったのは12年前です。ですから、そのときはいろいろな規制がございまして、35ボルト以上の電圧は管理責任者を置かなきゃいけないとか、いろいろな制約がありましたので、電圧は12ボルト、それでインバーターをつけて、100ボルトのACに直して使うというようなことをやっております。それで、当然、ここでは外部から電力をもらっていないものですので、蓄電池は設置してございます。今、それから10年たっていますが、まだちゃんと動いております。ですから、太陽電池をあまり嫌がらないで、ぜひ試していただきたいと思います。
 次に、省エネルギーの件ですけれども、そこでは、自然からもらうエネルギーしかないものですので、いかにして少ないエネルギーで、どうやって生活できるような場を作るかということに、随分知恵を絞りました。そのために、ここは煌々とは電気を灯しませんが、その代わり、できるだけ天窓を多くつけて、そこから光を室内に入れています。長野県の方につくりましたので冬は寒い反面、夏は冷房は必要ございません。そのため、光と熱を入れて、冬の昼間はできるだけ電気をつけないようにしようとか、太陽電池で送風機を回して太陽熱で得た温風を床の通すとか、それから雨水を利用するとか、いろいろ工夫をしています。もちろん雨水を利用するとき、地下のタンクに貯水しますと、使うとき、ポンプでくみ上げなくてはいけないということで、ここではちょっと格好が良くありませんが、軒下の高い処にタンクを置きました。ですから、バルブをひねるだけで、家の中に水が入るようになっております。
 要するに、省エネルギーというのは工夫が必要だと思いますよ。ですから、我々は今までは、あるシステムがあって、これを前提として、どうやって省エネルギーを図るかということをしてきましたが、これからは、いかにしてこれだけの少ないエネルギーで、できるだけ快適な生活を構築するのかということに知恵を絞る必要があるだろうと思います。それは一つの例ですけれども。
【茅】  ありがとうございました。
【隈】  今、藤井さんの言われたように、確かに省エネルギーは、個人の工夫の問題が非常に重要だと思うんですけれども、一番最初に申しましたように、建築行政、都市行政というのとエネルギー問題は非常に関連が深いと思うんです。ですから、エネルギー問題をいわゆるエネルギー行政だけで話していてもしようがないのではないか。そのやり方は縦割り行政の、戦後50年間のやり方そのままではないか、という気はするんです。
 例えば、つい最近、有楽町に東京国際フォーラムという建物ができまして、もう皆さんご覧になったかと思いますが、ガラスの大きなアトリウムがございまして、あのアトリウムは何の機能があるかと言いますと、実はほとんど機能がないんですね。あれがなくても普通のホールに入っていけるんです。あのガラスのアトリウムのために多分、何百億円というお金をかけて、機能はほとんどない。それで、それのエネルギーコストをこれから毎年、都民がどれだけ税金で負担していくかと考えると、東京都民をやめたくなるぐらい、気の遠くなる話です。
 あのときは新しいデザインを求める、それも国際化の時代だから、ということでコンペが行われまして、アメリカの建築家が選ばれました。そのとき、全くエネルギーの問題と関係なく建築行政、都市行政は進んでいた。その問題というのは、これからいろいろなところで繰り返されるおそれが非常に高いのではないかと思うんです。省エネを言現した1軒の家ができたとして、さっきの碧海さんのお話でも、エネルギー的にみて完璧な家ができたとしても、その家を建てるところが、東京から何十キロも離れたようなところしか建てられないとなると、それの通勤を始めとして、全体としてみると、非常に大きなエネルギーコストがかかってくるわけで、やはり、基本的には都市行政の問題がエネルギーの問題を誘発していると言えるわけです。そういう二つの問題を一体の問題としてとらえる視点がないと、これからはだめではないかなというふうに強く感じるんです。
【茅】  はい、ありがとうございました。
 それでは、碧海さん。
【碧海】  民生用の消費が増えているというお話があるんですが、そういうときによく、家庭でエアコンをつけてテレビを見ているというお話もあるんですけれども、実際には、昭和30年の初めごろの、例えば、関東の普通の住宅の契約アンペア数が10アンペアだったのが、今は平均で30アンペアにしかなっていないわけですから、そういう意味で言えば、家庭の電気の消費だけを考えた場合には3倍ですね。その間に、世の中がどういうふうに変わったかというと、例えば、男女共同社会になったという、女性の社会進出とか、あるいは寿命が、50歳が80歳になるとかという、これは非常に激しい社会の変化だと思うんです。
 そういうことを考えますと、私は、家庭の需要が本当にそんなにぜいたくなのか、もうこれでとめなきゃいけないのかというと、おそらく一般の平均的な家庭は、決してまだまだこれでいいという状況にはないんじゃないかと思いますし、それから、今の女性の社会進出の問題なんかを申しますと、私は、民生用と一言で言ってほしくない。少なくとも家庭に関しては、もっともっとエネルギー消費の実態というのを、特にこれは、何と言っても日本は男性社会ですから、男性がもっと家庭でのエネルギー消費の実態を把握してほしいという気持ちがございます。
 じゃあ、女性は把握しているのかと申しますと、実はこれも把握していないんですね。というのは、電気のこととか、エネルギーのこととか、例えば、ワットとか、アンペアとか、ボルトとかといった非常に身近なことに関してすらも、ほとんど教育されていないですから。ですから結局、エネルギーといっても何だかよく、自分の使い方も、どうしたら省エネルギーができるかもわからないという状況が続いていると思うので、私は、女としてどういう生き方がしたいか、どういう人生を送りたいか。例えば80まではどういう生き方をしたいんだという、自分の暮らし方、それこそライフスタイル。それと、だから私はエネルギーはこういうふうに使う、私はこう使いたいんだということが、ちゃんと選択できるようにしなければ、生活者の満足度は決して上がらない。だから、決して豊かだなんて感じていないという気がするわけです。
 外の社会は違いますよ、私は日本のビルの状況を見たりすれば、決してこれはぜいたくじゃないとは言えないんじゃないかというところもあります。
 もう一つだけ、私は、一般生活者というのは、太陽の恩恵をまず食べ物でしっかり受けていますし、今ここにおいでの方たちだって、マイクや、照明や、この着ているものはみんなもちろん、ほかのエネルギーを使っているわけですが、ここで私がしゃべり、動き、これはまさに太陽のエネルギーのおかげですね。太陽のエネルギーを食べ物という形でとっているから、人間として生きているのであって、ですから、そういう意味で、私は太陽エネルギーはしっかり利用していると思っています。
【茅】  ありがとうございました。今までのお話の中で、省エネルギーのことと、ちょっと私なりに見ますと、家とかビルといったもの、これの省エネルギーについては可能性はある程度ある。それについてはやはり工夫が大事だというお話と、行政の中の省際といいますか、省際問題というのはかなり大きな障害ではないかというご指摘がございました。実は私もかなり同感でございまして、そういうことを常に感ずることが多いわけです。
 もう一つは、今の碧海さんのお話は、家庭におけるエネルギー消費、俗に言う民生、これは業務も入るんですけれども、これが日本では依然として伸びているんですけれども、これは必ずしもぜいたくではないというお話で、今後の省エネルギーということを考えた場合、これをどう考えるかというのには、一つの問題提起のようなお話だと思うんですが、今のようなことに関しまして、ほかの方々から、なおご意見はございますでしょうか。
【荻本】  ただいまのご意見、私も同感でございまして、確かに、今ではまだ豊かさを感じていないのが平均値的な話でございまして、実は科技庁さんの委託で、資源協会が二、三年前にライフサイクルエネルギーの分析をやられたのがありまして、それは、東京近辺の郊外で4人家族で生活しているというモデル家庭をセットしまして、そこでのライフサイクルエネルギーを勘定したデータがございます。それを見ますと、今、冷暖房が大体34%ぐらい使っているんです。あと車、これは1,800ccぐらいだったと思いますが、そんな車を持っていまして、それが17%ぐらいのエネルギーを使っている。住宅が7.6%とか、食生活が17%、こんなようなことでございまして、それを見ますと、やはり冷暖房が一番問題になるということでございますので、これからまだまだ、生活はどうしても冷暖房については、もっと増えてくるだろうと思いますので、そういう意味で、全体の消費は増え勝手になりますけれども、やはり冷暖房システムについてもう少しよく考えて、ここで省エネを図るべきだというのが一番のポイントかと思っております。
 そのためには、家を断熱だとか、あるいは高気密だとかいうこともございましょうし、冷暖房システムも、例えば輻射方式にすると、何割ということで省エネになります。そんなようなシステムをやるとか、そんなようなことを、これからだんだん考えていくことが必要ではないかと思っておりますので、またそういう方法もあると思います。以上でございます。
【茅】  では、内山さん。
【内山】  日本のエネルギー消費全体で見まして、産業が消費している部分が50%あるんです。ですから、省エネを考える場合は、単に今言った民生、民生でも家庭は15%ぐらいですけれども、運輸が25%ぐらい。そういう点で、総合的に省エネを図っていかなければいけない問題だと思います。
 産業の省エネの一番難しい問題は、現実の大量生産システムを変えない限り、これはなかなか難しい問題が基本にあります。ですから、果たして、産業がこの大量生産システムを変えて、かつ雇用を維持し、経済を豊かにできるか、皆さんの生活を支えることができるかというところにかかっているわけです。それに対しては今、情報化とかいろいろ、可能性を秘めた新しい産業が出ているんですが、まだ未知の段階にあります。可能な限り、新しいエネルギーを使わない産業を興していけるかどうかにかかってくると思います。
 それから輸送に関しまして、これは、過去、皮肉なことに、日本の経済発展がモータリゼーションで発展してきた。それがすべての原動力になってきたわけです。それがある意味で輸送のエネルギー需要を非常に増やしてきた事実があります。省エネ、省エネと叫ばれたのですが、逆にエネルギー消費が増えてしまっているということがありまして、やはり社会の経済発展とエネルギー消費というのは、関係が深い問題ですので、また、それが個々の人の雇用、生活の基盤、そういうものとも関係していますので、なかなか簡単に理念で物事が進まないという点もあります。そういう点で、可能なところから一つ一つ詰めて、省エネを図っていくことが一番大事ではないかと思います。
【茅】  ほかに、それでは竹内さん。
【竹内】  先ほどは、新エネルギーは進めたほうがいいですよ、原子力と対立しませんよということを申しましたけれども、やっぱり我々の電力としても、省エネと何も対立するわけではなくて、地球の資源、いろいろなことから考えれば、このまま野放図に伸びていくのは、これは我々だって疑問に思っているわけです。ただ現実問題、今、内山さんが言われたように、あるいは碧海さんが言われたように、まだまだ、電気あるいはエネルギーの消費は増えてしまうわけです。したがって、それを何とかしなきゃならない。一方、地球環境の問題あり、人口問題あり、あるいは人間長生きすれば、それだけエネルギーがかかってしまう。人口が増えればそれだけ……。
 今日は内山さんは示されなかったんですが、エネルギーの消費と人の寿命は完全にリニアになっているわけです。というようなことから言って、「あなた、もういいかげんに生きるのやめなさい」と言うわけにいかないわけです。また、同じような理論が、先ほども言った、発展途上国がもっともっと使ってくる、そういう中で、やっぱり我々は何とかしなきゃならない。それの選択が、また原子力にいっちゃうわけですが、そうだと私は信じているし、またそれに光を当てたいと思うんですが、その中でも、やはり我々は、省エネは小さいけれども進めなきゃならないと思っています。それは決して対立することではないと思っています。以上です。
【茅】  ありがとうございました。
 それでは最後になりますが、加藤さんが手を挙げていらっしゃいましたね。
【加藤】  その消費の方なんですけれども、とにかく大量の消費をするお役所とか企業とかが変化すれば、随分違うんじゃないかと思っております。
 今回、初めてこの回に出席させていただくのに、たくさんの資料とか、いろいろなお知らせを送ってもらいましたんですけれども、驚くばかりの、このぐらいの量になりまして、同じ内容のが重なっているんです。それで、事務処理をもう少し簡潔化すれば、その半分のエネルギーで済むんじゃないかと思って、まず、科学技術庁が、ぜひ省エネを実行していただきたいなと。日本人の特性だろうと思うんですけれども、本当に親切に送ってくださる気持ちはよくわかるんですけれども、もう少し、この際、緊急事態ですから、省エネを心がけたほうがいいんじゃないかなという気がしました。
 もう一言だけ言いたいんですけれども、さっきの話ですけれども、同じ太陽でも、太陽の恵みを利用するのと人間が小型の太陽をつくり出すのとでは、歴然とした文化の差があると私は思っております。
【茅】  ありがとうございました。前半の方は、事務局がよくお考えいただきたいと思います。私も同感でございますので。
 まだ、ご意見はあると思うんですが、時間がもう5時半になりまして、4時間の長丁場でございましたので、皆さんも大分お疲れだろうと思います。実は私も、そう疲れないという年ではなくなりましたので、そろそろこの辺で切り上げさせていただいたらいかがかと思います。
 今日は、新エネルギー、省エネルギーと原子力という関連について、いろいろご意見をいただくということで考えていたんですけれども、新エネルギーの可能性、省エネルギーの可能性というところに皆さんのご意見がいって、原子力との絡みについては、まだ十分ご意見をいただけたとは正直言って思っておりません。しかし、これはやはり時間の制約があるものですから到底無理なので、私自身としては、今後の円卓会議の中で、今日いただいたお話をベースに、もう少しその辺を詰めるような議論をさせていただいたらいいのではないかと思っております。
 これは前にも何べんも、この円卓会議では繰り返していることでございますけれども、本日の議事につきましては簡単な概要をつくりまして、これは人の名前が入りませんが、それを公開する形にいたします。それから、人名が入ったものにつきましては、ここでちょっと時間がかかりますので、多分一カ月近くかかると思いますが、そういったもので議事録をつくりまして、これも公開をするという形をとりますので、ご了解をお願いしたいと思います。なお、もちろん見ていただきます。
 それでは、これで終わりにしたいんですが、最後に中川大臣にごあいさついただきたいんですが、その前にちょっとアナウンスだけ申させていただきます。
 この円卓会議、今回6回目でございますが、最初のときから、いわゆる一般公募の方に参加をしてもらうべきであるというご意見が非常に強くございました。それに対しての対応を事務局側と随分相談いたしていたんですが、やっと可能になりまして、第8回7月24日、第10回8月22日、これは広く一般公募を行って、一般国民の方にも参加していただくという予定になっております。開催場所は、8回目が神奈川県、10回目は福井県で開催するということになると思います。なお、一般公募の締め切りは今週の金曜日7月5日でございますのでよろしくお願いいたします。一人でも多くの方にこの一般公募が行れているということをお伝えいただいて、ぜひ一般の方々のご意見をいただきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

閉 会

【茅】  それでは、最後に中川大臣、ごあいさつをお願いします。
【中川】  本当に長時間にわたりまして、さまざまな観点から貴重なご意見を伺いまして誠にありがとうございました。
 いろいろご意見を私自身ずっと聞かせていただいて、多くの視点や考え方のきっかけを与えていただいた、また大変興味深く伺いました。私自身もいろいろなことを、さまざまな角度から考えていかなければならないとずっと思っておるのでございますが、そういう中でもそれぞれの意見が大変参考になりました。実はこれは茅先生また碧海さんもご経験なさっておられたのではないかと思いますが、先般、社会経済生産性本部のエネルギー問題特別委員会というところで、ある種のご提言をいただいたのを新聞記事で拝見しまして、その中に私、大変関心を持ちましたのは、この新エネルギー、省エネルギー、あるいはエネルギー全体の問題を地域として考える、そうした意識向上に向けた対応のために、自治体を中心に実行可能な行動計画をつくったり、今日の舟橋さんもその一つかもしれませんが、また成功事例の共有化をしたり、あるいは人材育成を含む全国のそういうレベルの交流をする枠組みとして、都道府県あるいは市町村、そういった自治体の中にエネルギーの担当者会議を設けたらどうだろうかとか、また県民会議、市民会議といったものをどうだろうかというご提言がございました。これは私は非常に大事なことだと思って、実は今、関心を持っておるところでございます。また、できればいろいろな関係省庁とも話してみたいことだなと思っておりますが、今日のご議論をいろいろ伺いながら、やはりそれぞれのご意見をこの円卓会議にとどまらず、広くみんなで共有できる議論にしていけるかというためにも、これは極めて重要なことだと感じております。今日のご意見を聞いて、さらにその意を少し深くしたというのが正直な気持ちでございます。
 やはりエネルギーの問題というのは、一人一人の国民に自分の問題として、真剣に、まさにどう生きるべきか、加藤さんのお話にございましたが、地球の中で人間の節度はどうあるべきなのか、人間としての生き方あるいはまた欲望といったものをどうコントロールしていくべきなのかという問題も含めて、それがとりもなおさずエネルギー論になってくるんだろうと思いますが、そういう問題を、本当に一人一人のお互いが真剣に考えるということが非常に大切なんだと私は思います。今だけじゃなくて未来も、そして日本だけじゃなくて世界も考えなきゃなりません。安全環境、いろいろな面から考えていかなければならない。古沢さんのご意見、私なりに、示唆に富んでおられるお話だと思いますが、具体的にそれじゃ、その前提条件はどういう条件があり得るのか、さらにまたご研究の成果等ございましたら教えてもいただきたい、こんなふうな感じも持ちました。
 いずれにしても、茅先生からお話がありましたとおり、今日出ましたご意見、私どもなりにしっかりと受けとめて、政策に生かすべく努力を続けてまいりたいと思いますが、論議がなお一層深まらなければならないテーマも、茅先生がお触れになられましたがあるような気も私もいたします。これからもいろいろご協力をいただきまして、ぜひともお互いのより良き今日から明日へ、責任を持った答えが出せますように、ひとつまた今後とも各分野でよろしくお願い申し上げたいと申し上げまして、心からお礼のごあいさつにかえさせていただきます。本日は本当にありがとうございました。

─── 了 ───

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