原子力政策円卓会議(第1回)議事概要
- 日 時:平成8年4月25日(木) 13時30分〜17時50分
- 場 所:日本海運倶楽部国際会議場
- 出席者:
- モデレーター
- 茅 陽一 東京大学名誉教授
- 佐和 隆光 京都大学経済研究所長
- 招へい者
- 池田 こみち 株式会社環境総合研究所 常務取締役副所長
- 岸田 純之助 財団法人日本総合研究所 名誉会長
- ケント・ギルバート カリフォルニア州弁護士
- 笹森 清 全国電力関連産業労働組合総連合会長
- 庄田 武 静岡県副知事(原子力発電関係団体協議会会長代理)
- 鈴木 篤之 東京大学教授
- 鷲見 禎彦 関西電力株式会社 取締役副社長
- 高木 仁三郎 原子力資料情報室 代表
- ばば こういち 放送ジャーナリスト
- 樋口 恵子 東京家政大学 教授
- 平山 征夫 新潟県知事
- 藤目 和哉 財団法人日本エネルギー経済研究所 常務理事
- 原子力委員会
- 伊原 義徳 委員長代理
- 田畑 米穂 委員
- 藤家 洋一 委員
- 依田 直 委員
- (敬称略 五十音順)
※中川科学技術庁長官(原子力委員会委員長)は、国会審議終了後に来場、挨拶。
- 議事概要
注:文章整理の関係から表現が必ずしも発言どおりではない場合がある。
参考別紙:
- 「原子力政策円卓会議の開催に当たって」(中川 原子力委員会委員長挨拶)
[別紙1]
- 「招へい者より事前に提出のあった発言要旨」
[別紙2]
《招へい者の意見発表》
各招へい者は、別紙の発言要旨に基づき、順次意見表明を行ったが、その内
容を項目別にまとめると以下のとおり(参考別紙「招へい者より事前に提出の
あった発言要旨」参照)。
□エネルギー関係
- エネルギーについて、足りないから原子力が必要という議論が先行してい
るきらいがある。代替エネルギー、エネルギー需要の抑制の可能性を含めた選
択肢の政策を議論した上で、システム選択がなされるべき。原子力エネルギー
への依存を高めないで、自然エネルギーなどの代替エネルギーの利用の促進が
どの程度補完し得るのかを議論するとともに、今後のエネルギー源を総合的に
考えて、省エネルギーを進めて行くべき。
- 省エネルギー、新エネルギーの積極的導入と併せて、原子力の継続的、漸
増的利用が不可欠であると同時に、原子力発電の、なお一層の経済性向上もま
た不可欠。
- 現在の世界のエネルギー需給をみると、その大半が先進国により消費され
ているが、人類は誰しも豊かな生活を享受する権利を等しく有している。今後、
アジアなどの経済成長に伴うエネルギー需要の伸びを考えると、有限な化石エ
ネルギーだけに頼るのは不可能。また、近年は、温暖化等、地球規模の環境問
題もある。このようなことを考えると、将来のエネルギーとして原子力が必要。
- 国は原子力開発とともに、クリーンエネルギーへの取組姿勢も示すべき。
- 電力需要の増加に応えるという従来型の発想を改め、需要抑制、縮小再生
産といったオルタナティブな選択肢にも配慮すべき。
- エネルギー資源の乏しい我が国は、原子力発電にある程度依存せざるを得
ない。安全と環境の保全、地元の理解を前提に国のエネルギー政策に協力して
いくことが、新潟県のエネルギー政策に対する基本的考え方だが、なぜ、この
地域に原子力発電所なのかについて合意形成のあり方について問題提起したい。
- 代替エネルギーは、21世紀になっても原子力発電を肩代わりするわけには
ゆかない。また原子力なしのシナリオは地球環境問題の解決の観点から見ても
難しく、日本の原子力発電は電源の1/3程度を担うことが不可欠。
□原子力一般
- 原子力エネルギーは二酸化炭素、大気汚染の観点から「環境にやさしい」と
の主張がなされてきたが、Life Cycle Assessment(LCA)的に後世への負担など
を全体的に考慮した上で、位置づけなり意味なりを考え直す必要がある。
- 原子力の開発利用は、安全性、地域との共生などが大切。特に安全確保は
大前提であるが、この点、日本の原子力発電所はトラブルが国際的に見ても非
常に少なく、利用率も高水準を達成している。
□リサイクル政策関係
- 現在の長期計画で初めて盛り込んだ先進的核燃料リサイクル技術開発の優
先度
- 現在の長期計画で初めて盛り込んだ先進的核燃料リサイクル技術開発の優
先度を高めて、開発を加速してほしい。今の再処理、高速炉関係の技術は、核
兵器開発からスタートしたが故にそもそもの「ゆがみ」を持っている。平和利
用では使用済燃料中のアクチニドも再利用を図るべきだが、現在の再処理方法
では利用するまでには至っていない。
- プルトニウムは在庫量や存在状態などを公表し、計画の透明性に留意する
ことが肝要。
- リサイクル本来の目的は資源の保護と環境の保全。リサイクルコストは一
種の環境保全コストという視点が重要。
- 原子力の燃料であるウランも有限な資源。現在は、0.7%のウラン235しか
利用していないが、今後はリサイクルにより残りの99.3%を活用し、21世紀
のエネルギー供給に資することを期待。ただし、プルトニウムは戦略物質でも
あり、利用に当たっては、透明性、核不拡散に留意することが重要。
- プルサーマル計画については、国レベルでの議論はなく、事業者と自治体
の問題とされているが、国は責任をもって国民的合意の形成を図るべき。
□高速炉開発及び「もんじゅ」関係
- MOX燃料を最も効率的に利用する高速炉は、なお長期の研究開発期間を
要する。
- 「もんじゅ」の事故は原子力の安全性に抵触するものでないが、ナトリウ
ム技術に関する習熟度の向上の必要性を示唆。今後はナトリウム技術の開発に
特化した新しいアプローチが必要。
- 「もんじゅ」の事故は「設計不良」による「振動」が原因。福島3号機の
事故も、美浜2号機の細管破断事故も同じく、設計変更の対応がとられている。
流体があるところでは、振動による事故を起こさないことが重要。常陽の良好
な運転実績がもんじゅに反映されているのか、温度計の設計をなぜ変えたのか
が疑問。
- 平和利用の側面から、ウラン資源を全部利用するという原子炉(高速増殖
炉)を完成する役割を日本が担っていると考えている。もんじゅ事故から多く
のことを学んで、原型炉、実証炉というふうに段階的に着実に計画を進めてほ
しい。
- 動燃の事業推進における国民参加の場を設営することが必要。
- 「もんじゅ」の設置申請に際し、安全審査を受けた上で安全と結論され、
設置 が許可された。「もんじゅ」の事故の責任はどこにあるのか。
- 「もんじゅ」事故は社会問題として対策を講じるべきである。
□バックエンド関係
- 原子力の前半部分はほぼ完成しているのに、後半部分は未完成である。M
OX燃料の軽水炉利用の方法もあるが、高速炉への橋渡しを、余剰プルトニウ
ムを持たずに行うのは困難。使用済燃料の中間貯蔵の準備を開始すべき。
- 高レベル放射性廃棄物の処分は最も大きな課題。計画の進展や処分技術の
内容が外からもわかるように進めることが肝要。
- バックエンド対策については国民全体で考えるべき課題であり、国が真剣
に取り組み、早急に将来見通しを示すべき。
□安全関係
- チェルノブイルのような危険な炉は早期廃炉にすべき。又、技術過信は禁
物である。
- 原子力発電所については安全性の確保が第一であり、安全審査、検査体制
の充実強化が何よりも肝要。
- 従来、国や事業者は、原子力について「安全」とPRしてきたが、謙虚に
危険であることを認めた上で、だからこそきちんと安全を考えるという姿勢で
取り組むべき。
□国際関係
- アジアの開発途上国の原子力利用に関しては、技術的な支援とともに、そ
こで働く労働者がリスクと安全を理解し、しっかりした安全管理システムの構
築により危険を回避することが必要。労働組合としても国際的連携の下に協力、
支援する考え。
- 国際的関心の高まりに伴い、より一層の情報公開が大切。「もんじゅ」、
「ふげん」を国際的協力に供することも考えられる。
- 国は今後原子力を開発していこうとしている開発途上国への安全問題につ
いて積極的に力を貸していくとか、核爆弾・核ミサイルを安全なようにしてい
くということに関する技術支援、経済援助等にもっと積極的に取り組むべき。
さらに、唯一の被爆国として、核実験、核兵器等へ断固たる姿勢を示すべき。
- 開発途上国の人口爆発による環境悪化が問題視されているが、日本では明
治維新以来人口が4倍程度に増加しているし、またエネルギーの多くは先進国
で使っている。エネルギー、環境問題は開発途上国だけの問題ではない。
- 日本は東アジア地域の原子力開発利用、安全確保、核不拡散について協力
すべき。
□教育・理解増進関係
- 日本のエネルギー教育は海外に比べて遅れており、日本のエネルギー事情
について現実をはっきり示すべき。
- 原子力の中で最も不安が持たれている放射線や放射能について、専門外の
人の正しい理解を促進するための努力が必要。
- 原子力の必要性については、今後ともひとりよがりではなく、ディスカッ
ションをしながら、国民的コンセンサスを得ていく努力が重要と認識。
- 技術的な問題に対して素人が異論を述べると非科学的な反論として専門家
から反発がある。しかし、すべて「科学的」が正しいかどうかも疑問である。
教育においても、長いこと中学では技術・家庭科が性別で分けられ、女子は技
術から疎外されてきた。これからは、科学・技術を学ぶ女性を育てると同時に、
女性がこうした問題に積極的に発言し、議論する場を設けてほしい。科学・技
術の場にも男女共同参画があってこそバランスのとれた発展ができる。
- 国民的合意には、活字ではなくテレビ、それも生中継が有効。エネルギー
問題は国民にとって非常に重要な問題であり、例えば「エネルギー生テレビ」
を2年間、毎週6時間程度やるべき。ファクシミリ等を活用しても、1億数千
万人のうち数万人程度しか参加できないだろうが、それでもかなりの議論がで
きるはず。
□社会と原子力関係
- 小学校2年のときグランドキャニオンの下にあるウラン鉱山で、ウラン鉱
石をもらって、長年タンスの上に飾っていた。危ないとも思わなかった。あの
ころのアメリカは原子力を信じ、技術を崇拝する雰囲気だった。
- 今のアメリカで新たに原子力発電所を建てることはもう無理であると思っ
ており、大変残念。国民が話し合って必要性を議論しても当分建設は無理。フ
ランスでは次々出来ていて、電気を輸出するほどになっている。これは民主主
義のあり方の差だと思う。今は、中央集権が強い国が原子力発電所を作ってい
て、国民の声が政府に届く国では作っていない。この現状は、国民が原子力に
ついて十分に理解していないか、理解していて阻止しているかのどちらかの理
由による。
- 原子力発電は危なくないと信じてきたが、その信頼は長年少しずつ薄くなっ
てきた。これは信頼が事故により何度か裏切られてきたため。事故が起きたこ
と自体は不思議とは思わないし、チェルノブイルをのぞけば他は大した事故で
はないと思っている。
- 技術そのものは信じており、ほとんどの問題は技術により解決できると思っ
ている。しかし、技術を扱っている人達の体制についてきちんと考えないと、
その技術は国民の信頼を得られない。
- 科技庁、原子力委員会の存在は原子力行政の中では薄い感じ。失った信頼
を取り戻すためには国の強力なリーダーシップが必要。また、原子力安全委員
会は動きの見えやすい組織とするべき。
- 地方自治体としては、国のエネルギー施策に協力するという考え方から原
子力発電施設の立地に関連する諸問題に対応してきたが、実際には地方の現場
における国の役割が少ない。国はエネルギー施策等のきちんとした説明を地道
に地方で行ってほしい。
- 地方における広報活動の拠点として、例えば、科技庁の連調官事務所と通
産省の運転管理専門官の機能結合を図り、地方に原子力広報専門官を置いては
どうか。
- 1970年時の生活でどれだけ不自由するか、その限度を消費者として受
認できるか、原始に戻れなくても高度の経済成長時の生活を享受できるデザイ
ンを描いてみてはどうか。
- 21世紀は「後始末の世紀」と考え、国家百年の計が求められるとき。
- 8月に行われる新潟県巻町の住民投票は町有地の電力会社への売却の賛否
に関するもの。その結果は、法的拘束力をもたないものであるが、住民の意思
決定の一つであり、以前の議会の原発推進決議の扱いがどうなるかなどについ
て議論がなされている。
- チェルノブイリ事故は特別であり、日本の軽水炉とでは炉型、安全管理体
制が違うことについて国民に理解を求めるべき。
□立地地域と消費地関係
- 原子力への依存を深めていくことの是非に関して、国内でも立地地域と需
要地域の問題、リスク・費用の負担、精神的社会的負担といった広い議論が不
足している。広い視点から立場の違う人たちが集まって、どのシステムを選択
するかを決定すべき。現在まで、原子力政策はどちらかというと、産業振興や
地域振興の側面が強調されてきたように思える
- 原子力の問題は立地道県だけでなく消費側の問題でもあり、都市部を含め
た全国的な理解を得る努力が必要。
- 「もんじゅ」、巻原発の動きを見ても、限定された地域の問題となりつつあ
る原子力発電を中心とした国のエネルギー政策については、これまでの枠組み
では解決できない状況となっている。国には責任をもって、国民や立地地域の
住民の意見を聞く等、新しい枠組みをつくってほしい。
- 立地地域の合意形成については、従来にも増して困難になってきており、
立地地域とそれ以外の地域との負担のあり方なども考慮した施策等が必要であ
る。
- 電源三法交付金制度の地域振興策のみで原発立地を進めていくのは困難で
あるが、一方で恒久的地域振興策を図ることが重要である。現在の電源三法交
付金制度には、建設終了後の地域振興が不十分であること、交付金使途に使用
制限があること等の問題点があり、これらの改善について検討してほしい。
□円卓会議関係
- 今回のような公開の場での議論が見せかけのものにならず、実質的なもの
として意思決定に反映されることや、他の分野でも前例として有効に生かされ
るものになることを希望する。
- 円卓会議そのものの位置づけが不明。「円卓会議」が批判的な一般の意見
をどれくらい汲み取れるか不明確なままスタートしているとの印象。その点が
明確でない以上、ここで原子力の是非について議論を行うことは不適切。また、
人選のプロセスが明確でない。さらに、最初に国民的合意ありきは問題。円卓
会議が開かれた経緯を考えれば、原子力長計の全面見直しを議論すべき。形を
作り、意見を聞き、最終的に原子力委員会が決めましたでは、従来と変わらな
い。円卓会議が、「意見を聞き置く場」、「形づくりの場」とならないよう希
望。
- 「円卓会議」、「地域フォーラム」、「シンポジウム」を通して立地の必
要性について国民の合意形成が促進されることを期待する。
□情報公開関係
- 開かれた議論は、情報の開示により皆が公平に情報を持つことからスター
トする。技術のわかりにくさに加え、それを扱う人間への不信感もある。技術
(ハード)だけでなく、手続き、制度といった枠組み(ソフト)に関する透明
性、さらに、枠組みをみんなで共有するためのコミュニケーションが必要。
- 原子力に依存しないシナリオ作りを国民参加でやるべき。逆戻りするかも
しれないが、これをしないと先に行って問題が大きくなる。情報を分かりやす
く提示し、今回のような開かれた議論を継続することが重要。
- 事故発生時の情報公開、情報連絡はなるべく現場の判断に任せるとともに、
情報公開には分かりやすさが大切。
- 原子力の情報公開は、最近多少は変わってきていると認識しているが、依
然不十分。国や電力の「広報のための情報公開」という姿勢や「成果の公開」
ではなく、情報公開は、「プロセスの公開」こそが必要。
- 前回の長計改定時の「ご意見を聞く会」は批判の声を反映せず、「形づく
り」の場でしかなかったとの印象。プルトニウム政策についての「5年間のモ
ラトリアム」の提案も、結局は議論の過程も示されず、反論の場も与えられな
いまま、受け容れられなかった。計画進行を重視するのではなく、あらゆる問
題点を掘り出して議論をすることが重要。
- 国民的合意形成の大前提は「情報公開」である。さらに、「情報を知った
時にどういう形で国民が参加できるか」を明らかにすることも重要。円卓会議
においても重要なファクター。それには、従来型の国や電力の一方的な広報で
なく、全員が参加して意見を述べられる場が必要。
- 原子力発電に対して国民的な合意形成を進めていくために、情報公開を徹
底し、様々な情報を分かり易く幅広く国民に伝えていくことが重要。
- 原子力、特に高速増殖炉については、国民の監視のもとにおかれている状
況と言え、情報は一切、正確に公開するべき。
《原子力委員の総括的見解》
- これから、多くの観点から議論をしていく中で、論点が比較的早く明らか
になるものについては、原子力委員会や専門部会の場で鋭意議論を詰めること
ができるように取りはからいたい。
- 幅広い貴重なご意見をいただいて感謝。世界のエネルギー全体のあり方、
その中での原子力の役割等を含めて意見をうかがえたことは大変有意義。
- 原子力委員会は、現在の長期計画の策定の際にも多くの方にご参加いただ
くとともに、国民の御意見を伺ったが、まだまだ不足であると認識。そのため、
円卓会議において摘出される様々な問題に対して十分に対応していく。
- 円卓会議において原子力政策に反映すべき事項については委員会自ら弾力
的かつ真摯に対応し、詰めるべき事項は科学技術庁や通産省の行政側において
検討を進めてもらう。
- 平成6年6月22日付で「長期計画改定に関するご意見への対応について」
という資料を公開しており、このなかで、5年間モラトリアムの提案への対応
について、原子力委員会として整理し、回答している。
- 情報公開は、広く様々な意見を得て、それを踏まえた上でわかりやすい情
報を可能な限り的確な表現によって説明する必要がある。国民の理解を得るた
めの工夫が必要。
- 情報公開に関する特別な法律を制定し、政府全体として行政における情報
の公開を的確に行うという動きがあり、この動きの中で原子力関連の行政情報
の公開について基本的な考え方を十分踏まえながら行う必要がある。
- 原子力を単にエネルギーでなく、総合科学技術として捉えることが必要。
- 「利用」という観点から脱却して「調和」という観点で、原子力をとらえ
直すことが重要。
《自由討議》
モデレータの提案により、円卓会議のあり方、情報公開のあり方及びエネルギー
と原子力について討議することとなったところ。討議のポイントは次の通り。
□円卓会議関係
〔円卓会議の意義〕
- このような場を持ったこと自体をまず評価すべき。さらに、議論の結論を
どう政策に反映させるか工夫してほしい。
- 原子力関係者は狭い世界に閉じこもりがち。このような場で色々な人の意
見を聞くのは重要と考えており、今後とも続けてもらいたい。
- 具体的に政策に結びつくまでのプロセスが長いかもしれないが、円卓会議
を開催すること自体が一歩前進であると評価する。
〔運営の方法〕
- 4時間は非常に短く、こういう場を常設とし、テレビの生中継で流しても
らいたい。そうすれば、一般の人々もファクシミリで意見を送る等により参加
できる。
- これまで原子力にあまり関心を有していなかった人々が、円卓会議を経て
今後どう考えていくかが大切。
- 各回の議論に次回以降の議論がきちんと積み上げられ、共通の認識、結論
が得られるよう工夫してほしい。
- ガス抜きだけではない会議であってほしい。論点整理を是非お願いしたい。
- エネルギー問題について、今回議論して中途半端に終わらせるのはよくな
い。
- 今回の意見を速やかに取りまとめ、次回の会議に反映してほしい。
- 自由討議のテーマに取り上げられなかったテーマに関しても貴重な意見が
今日の参加者の意見の中にある。次回以降にそれらを重点的に取り上げてほし
い。
(モデレーター意見)
- 円卓会議の開催期間は広く意見を聞きつつ判断。円卓会議で明確になった論
点については、早期に原子力委員会側で検討してもらう。
〔参加者の人選〕
- 原子力委員と異なる意見を持つ人を入れることが重要。
- 地域で反原発運動をしている人を含めて女性を呼んでもらいたい。また、
若い世代の人の意見を聞く場を設けてもらいたい。
- 人選は、このような形式で実施する4回まで通してみないと一概には言い
切れないが、かなり公平に選んでいると思う。
- 今回はテーマが広すぎ議論しようがない。もう少しテーマを絞ればその知
見を有している方が自ずと浮かんでくる。
- きちんとした考えを持つ人のみならず、何が正しいのかわからないと言う
人も含め、いろいろな人の意見を聞くべき。
- わからない人にも参加する権利と義務がある。そういう者が参加しやすい
ような状況を作ることが情報公開であり、円卓会議の考え方のベースとなるべ
き。
- 背後に多くの情報チャンネルを持つNGO(非政府組織)の参加を求めるべ
き。
- 一般の人を募集するなら、少なくとも書類審査し、一通りの知識を持って
おり、しっかりした意見を持っている人にするべき。そうでなければ議論は進
まない。
- モニターと円卓会議の注目度は全然違うのだから、やはり円卓会議として
円卓会議の概要やその場での議論を説明した上で一般募集するべき。コストが
かかると言うが、そういうところで手を抜くと不信感が増大する。
- エネルギー問題に関する教育を強化し、まず国民がベースとなる基本的な
知識を得た上で議論をしてほしい。
- メンバーは、新鮮な人、若い人を出してほしい。
(モデレーター意見)
- できるだけいろいろな人を呼ぶとの趣旨で人選を行った。参加者についても
招へい者の意見を積極的に聴取したい。
- 一般の募集は、原子力モニターを利用することを考えている。モニターは、
応募した以上、原子力の問題には関心があると思われる。そのような方を加え
て会議を開催したい。
- 若い人、地域の女性、一般からの参加について、モデレーターとして努力し
たい。
〔意見の政策への反映〕
- 円卓会議の場では相互議論の場を保証すべき。
- ここでの議論が何らかの形で政策に反映されるには、それをチェックする
ような常設の委員会が必要。
- 大きなプロジェクトを実施する際には、批判的な意見を持つ人にもアセス
メントさせ、国民に提示し、判断してもらうべき。
(原子力委員意見)
- 参加者の意見について原子力委員会の見解を示すだけでなく、さらにそれ
についての反論を聞くことが必要だと考えている。
(モデレーター意見)
- 意見は必ず異なるものであり、意見が全て同じになることはあり得ない。
意見を反映させるという意味は、採用する理由や採用しない理由を明確にする
ことだと考えている。
□情報公開関係
〔情報公開の意義〕
- わかりやすい情報で理解を得る情報公開ではだめ。透明感は、情報の相互
交通により得られるもの。
- 公開の場だけでなく、いかに国民にその議論を見てもらうかが重要。
- 情報公開にこれまでにも努力してきたが、わかりにくいと言われる。しか
し、わかりやすくすると本質がわからなくなってしまうという問題がある。
- 情報を公開するか否かの判断は、結局は担当官庁が行い、そのプロセスが
透明でない。
- 時代は直接民主主義の空気が強くなっている。住民投票がどんどん行われ
てくる時代的な趨勢は、政策決定に自分の意見を反映させたいとの人々の気持
ちの表れ。従来の代表者による民主主義への不信が現れている。情報公開の中
では直接民主主義的な方向に対する認識が重要。円卓会議もこうした方向の中
で考えるべき。
- 代表者による民主主義でなければ国民投票になる。国民はすべての問題に
ついての知識を一度に持てないので、国民投票による直接民主主義は無理。し
かし、代表者に信頼して任せるために一番重要なのは情報公開。
- 情報を持たない人が生データにアクセスできることを保証すべき。わかり
やすくするために加工された情報では、どの程度信頼できるのか。
- 情報を提供するタイミングも重要。モニタリング情報のようにリアルタイ
ムで公表しないと意味がないものもある。
- 情報提供者が誰であるかを明確にしておくことが重要。
- 電力会社が情報を全て公開しているという認識では困る。
- 電力会社の情報公開は、広報の立場としてしか情報公開しないから発信す
る側と受け手の側のズレが大きい。
(原子力委員意見)
- 情報公開については、この円卓会議の場が双方向の情報公開の場として役
立つものと考えている。
〔情報公開の手法〕
- 常設の円卓会議を開催し、テレビの生中継などによりいろいろな人たちが
参加できる方向に向かってやることが情報公開を考える上で重要。
- インターネットを使える人は一部で、TVと組み合わせて使っていくべき。
- 日本版Cスパン(事務局注:24時間、生で会議の模様を流すケーブルT
V局)が早くできればよいと感じた。
〔安全と情報公開〕
- 安全に厳しい原子力では、情報を隠すと犯罪と見なすくらいの厳しさが必
要。
(原子力委員意見)
- ナトリウムが絶対漏れないというのは技術者の奢りであり、そうではなく
機械装置は壊れることもあり、その場合でも大丈夫であると説明するべきであっ
た。
- 事故の時、現場の判断で多くのことができなかったことは残念。原子力安
全委員会で情報公開、伝達の対応について検討しているほか、動力炉・核燃料
開発事業団も今までのやり方を見直している。
□エネルギー関係、その他
- アンケート結果によると環境問題の意識が高まっている中でライフスタイ
ルを10年前に戻しても構わないと考えている人が多い。しかし、街の作りはエ
ネルギーを消費する構造となっており、日本の昔からの風を利用する等自然エ
ネルギーの利用を考えたものに街づくりそのものをかえていかないといけない。
- 地方分権が言われている中で、原発という全国の電力需給に係る問題を考
える際、地方と国の関係をどうとらえるかが、大きな問題である。
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