平成11年度 第6回原子力政策円卓会議 議事録

平成11年度 第6回原子力政策円卓会議

1.開催日時:2000年1月13日(木) 14:30~17:30

2.開催場所:東條会館本館 4階 呉竹の間

3.議題:今後の原子力政策のあり方

4.出席者(敬称略,順不同):

 オブザーバー

 お招きした方々

(敬称略,順不同)

5.議事録
【事務局】それでは大変お待たせいたしました。定刻になりましたので,ただいまより平成11年度第6回原子力政策円卓会議を始めさせていただきたいと思います。本日はご多忙の中,傍聴の方々を始め多数ご参加いただきまして,大変ありがとうございます。事務局より御礼申し上げます。
 なお,開会に先立ちましてお願いでございますが,傍聴の皆様方におかれましては円卓での円滑な議事進行にご協力賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。それでは早速,原子力政策円卓会議のモデレーター会議座長の木村孟先生に議事進行のほうをお願いしたいと思いますが,木村先生は東京工業大学学長を務められた後,現在学位授与機構の機構長というお立場でお仕事をされておられます。それでは木村先生,よろしくお願いいたします。

【木村(学位授与機構長)】ただいまご紹介いただきました木村でございます。まだ年が明けて2週間もたっておりませんが,大変多くの皆様方に第6回の原子力政策円卓会議にお運びいただきまして,ありがとうございました。衷心より御礼申し上げます。
 まずこの原子力政策円卓会議の主旨につきまして,簡単にご紹介を申し上げます。
 わが国の原子力政策の方向性をめぐりましては,昨年平成10年度に原子力委員会からの要請に基づき,第三者的立場から,行政の評価や提言を行う機関として原子力政策円卓会議が設置され,5回の審議に基づきまして「エネルギー源の中での原子力の位置付け」「立地地域の振興についての対応」「国民に見える形でのエネルギー政策の議論」「政策決定プロセスの公開」等につきまして提言をいたしました。その中で最も重要な項目の1つが,円卓会議の継続的開催の要望でした。
 今回の円卓会議は,この要望に応えて設置されたものであります。ここでは,国民各層の間の原子力に関する議論を徹底して行うとともに,広くこれを公開し,原子力問題の状況をより明確に国民に把握していただくため,原子力委員会に,原子力政策の方向について積極的な提言を行うことを目指しています。このような円卓会議の目的が達成されるためには,国民の広い範囲から多様な意見がこの円卓会議に出され,それについて十分な議論が行われることが必要であると考えます。国民の皆様のご協力をお願い申し上げる次第です。
 以上が11年度の原子力政策円卓会議の主旨であります。次に恒例になっておりますが,毎回この円卓会議の席上で,国民の皆様から寄せられましたご意見について簡単にご紹介をすることにしています。今回も同様にさせていただきます。前回,第5回が開催されました10月30日から昨日1月12日まで,ご意見をいくつかいただいています。会場に来られた方から13通,その他公募意見として8通,合計21通いただきました。性別では毎回だいたい同様でありますが,4分の3が男性です。年代別では30歳から50歳までが4割,60歳台から80歳台までが3割となっています。職業別では,これも毎回同様でありますが,会社員の方が多くなっております。また今回は,前回の開催地が九州の福岡でありました関係で,福岡地方から半分以上のご意見をいただきました。
 ご意見の内容でありますが,本日のテーマであります「今後の原子力のあり方について」関連では,「将来,安全で高効率の代替エネルギーが登場するまでは,安全性に神経を配りつつ原子力を活用するしかないのではないか」というご意見,それから「これからの原子力業界では行動力,決断力,社交性を持った優秀な人材を育てていくべきである」とのご意見もいただいています。9月30日に起きました東海村JCO事故関連では「現場での徹底した意識改革,教育訓練が必要である」というご意見,「国民の皆様の信頼を取り戻すため,さまざまな問題が発生した時には,隠すことなく速やかに事実を報告してほしい」というご意見などがありました。この円卓会議の運営に関しまして「テーマが広いとどうしても議論が拡散してしまうため,もう少しテーマを絞り込んで議論をすべきではないか」というご意見がありました。前回は福岡で開催しましたが,JCOの事故を切り離さず議論をいたしました。これについては「評価したい」というご意見をいただいています。いただきましたご意見をまとめますと,以上のようになります。
 それでは,引き続きまして,本日の原子力政策円卓会議にご出席の皆様をご紹介申し上げます。10年度から,できるだけ原子力委員会から独立して距離を保つということで,この原子力政策円卓会議は5人のモデレーターで運営をしています。まずモデレーターをご紹介申し上げます。原子力発電技術機構特別顧問,石川迪夫様。社会評論家,小沢遼子様。慶應義塾大学教授,茅陽一様。元中央大学教授,中島篤之助様。それに私,木村です。またオブザーバーとして毎回原子力委員会のほうから木元教子様にご出席いただいています。
 次に,私どもは「招へい者」という言葉を使っていますが,お招きした方々をご紹介申し上げます。本日は私どもの念願が初めてかないまして,国会議員の先生方6人にご出席いただいています。アイウエオ順でご紹介申し上げます。公明党衆議院議員,井上義久様。自由民主党参議院議員,加納時男様。民主党衆議院議員,辻一彦様。社会民主党衆議院議員,辻元清美様。自由党参議院議員,戸田邦司様。最後が日本共産党衆議院議員,吉井英勝様。以上に加えましてジャーナリスト2人にご参加をお願いしています。日本経済新聞社論説委員,鳥井弘之様。科学ジャーナリスト,中村政雄様。鳥井様と中村様には何度もこの円卓会議にご出席をいただいています。
 この原子力政策円卓会議では,毎回このモデレーターの中から当番を決めまして座長(司会)と副座長(副司会)を設けています。その座長と副座長が会議を引っ張っていくということになっています。今日は座長として茅陽一様,副座長として石川迪夫様をお願いしています。それではマイクロフォンを茅先生にお渡しいたします。よろしくお願いいたします。

【茅(慶應義塾大学教授)】それでは本日座長を務めます茅です。よろしくどうぞお願いいたします。
 本日はいま木村座長からのご紹介のように国会議員の方々を中心にお招きいただいたわけですけれども,したがいまして今日の議論の内容というのは特定の原子力問題に絞るのではなくて,日本における原子力を今後どうするかというやや広い視点でいろいろご意見をいただきたいと思います。やり方ですが,こちらでは大体このように考えています。まず,国会議員の方々にお一人7分ずつお話をいただきます。7分と馬鹿に区切ったみたいですが,最初私は5分から10分と考えていたのですが,むしろ国会議員の方はぴしっと時間を細かく決めてほしいというご要望があったそうで,私はそれに従ったのですが,どのぐらい正確なのかは,皆さんおわかりなるかと思います。そういうことで一応7分ということになっているのですが,その辺はご自分で自己制御をお願いしたいと思います。一応6人の方々にお話をいただいた後で,鳥井,中村のお二人には今回はこの6人の国会議員の方々のご発言に対してコメントをしていただくという形でお願いしたいと思います。大体同じように5分から7分ということでお願いできればと思います。そうしてそれが一渡り終わった段階で,一応休憩を取らせていただきます。たぶん15分か20分になるかと思います。この休み時間には皆さんのご意見を参考にして,モデレーターで協議をして,何を中心に議論をするかを考え,それを後半の冒頭に私のほうから提案させていただきます。そして,それに基づいて,皆様のほうから活発なご議論をいただきたいと考えています。
 私のほうで一応提案を出しますけれども,何せ今日の方々は自分のご意見をおっしゃるということにかけては,それはむしろご商売と言ったほうがよい方々ですので,私はあまり引っ張るようなことはしないほうがよいと考えていますので,よろしくお願いいたします。
 それから,皆様方の呼称ですが,国会議員の方々は先生と呼ばれるのは慣れていらっしゃるのだろうと思うのですが,こういう席ですので,これは一切「さん」付けにさせていただきますので,ご了解をお願いしたいと思います。
 もう1つ,この会議でモデレーターが,いま申しましたように5人おりまして,そのうちの2人,私と私の隣の石川さんが座長と副座長を務めますが,あとの3人のモデレーターの方は随時議論の中でパネリストの1人として発言をしてもよろしいということになっています。その点はご容赦をいただきたいと思います。また原子力委員会から木元さんがやはりおいでになっていますが,木元さんについてもこの点は同じと考えています。そのようなことで,この後は進めさせていただきたいと思います。
 原子力のどの問題かというのは,先ほど申し上げましたように,政策全体と申し上げましたが,具体的なポイントについてはイグザンプルをお手元にお配りしました円卓会議のご案内の中にいくつか書いてあります。特別に私のほうからご紹介することもないと思いますが,例えば今後の原発の新増設をどう考えるか,あるいはJCOの事故がありましたけども今後こういった原子力関連施設の安全性をどうするか,あるいは核燃料サイクルをどう考えるべきなのか,高レベル廃棄物を含めて,廃棄物といった問題をどう処理するか,あるいは,原子力にはいろいろな国民の方々の意見があり,円卓会議もその国民の意見を反映する1つの重要な場だと私どもは思っていますが,そのような国民各層の意見を原子力政策に反映するにはどうしたらよいのか,こういった問題がいろいろあるかと思います。これにつきまして,ご自由にご意見を出していただければと思います。
 いずれにしましても,この円卓会議が,いま申し上げましたように国民の意見をできるだけ反映するという主旨で出ていますし,皆様方,国会議員の方々は国民の代表として選ばれた方々でいらっしゃいますので,実りあるご意見をいただくことを私どもは期待していますので,よろしくお願いいたします。
 それでは発言をいつもアイウエオの最初のほうの方にはお気の毒なのですけれども,やはりアイウエオ順ということになりますので,ご了解をお願いいたします。それではまず井上さんからよろしくお願いいたします。

【井上(公明党衆議院議員)】公明党の井上義久です。私どもの党には「ベストミックスによるエネルギー安全保障の確立」という基本政策があります。それも踏まえて,原子力発電ということについて,私見もだいぶ入るかと思いますけれども,お話をさせていただきたいと思います。
 まず,原子力発電につきましては,エネルギーの安定供給であるとか地球温暖化対策としてのCO2の削減効果という観点,しかも日本の総電力量の3分の1を占めるという現状を考えると,相当長期にわたって原子力発電がわが国の基軸エネルギーと位置付けられるのではないかとまず考えています。一方原子力発電所の事故が相次いでいますことや,先般のJCOの臨界事故等関連施設での事故,またそれに対応する安全審査や規制のあり方について,行政に対する不信もありますし,それから何よりも放射性廃棄物,特に高レベルの廃棄物の処理方法が不確定であるということなどから,国民の間に原子力発電に対する不安が高まっている現状ではないか。そういう意味から言うと,改めて国民的なコンセンサスを作る必要がいまあるのではないかと考えています。
 そのような観点から原子力発電所の新増設ということにつきましても,新規立地が現実的に,これは地域の事情等があって非常に困難になっているということと,それから電力業界にとっても,規制緩和でいわゆる電力事業者の新規参入等もあって,経済性という問題についても再検討すべき時が来ているのではないかという意味で,全面的な見直しが必要であると思います。それから,先ほども指摘いたしましたけれども,廃棄物の処理方法の確立のスケジュール,これを大幅に前倒しをしてその方向性について国民の理解を得るということがいま一番大事だろうと思うわけです。
 それから,省エネの問題,自然エネルギー,代替エネルギーの供給ということについて,政策目標を大幅に引き上げ,またそのための研究開発予算を大幅に拡充するということで,エネルギーの需給バランスも含めて,この新増設ということについて見直しをすべきではないか。
 いずれにしましても,現状の原子力発電については,軽水炉の安全確保,それから廃棄物の処理方法の確立ということに,いま総力を結集していくべきではないかと考えています。
 次に核燃料サイクルの問題ですけれども,先般高速増殖炉(FBR)懇談会の報告では,これまで核燃料サイクルの中核に位置付けられていましたFBRについては,将来の非化石エネルギーの有力な選択肢として実用化の可能性を追究するための研究開発をすることは妥当とされているわけですけれども,その趣旨については私も理解しているところです。しかし,あくまでも実用化の可能性を追究するということであって,FBRが将来の原子力発電の主流と指摘した平成6年の原子力長計(原子力開発利用長期計画)と基本的な路線が変わったと私は認識しています。したがいまして,可能性を追究するための研究開発を進めるということは私も必要だと思いますけれども,FBRについては,軽水炉とは比較にならない技術的な困難さというものもありますし,何よりもプルトニウムを扱うという意味で,実用化は当然そうですが,研究開発についてもやはり十分な時間と慎重な対応が必要であろうと思っています。
 FBRの実用化が不透明になったことに関連しまして,核燃料サイクルについても抜本的な見直しがいま必要なのではないか。特に国際的な核不拡散という問題もありまして,これまでの全量再処理という考え方についても再検討すべきではないかと思います。当然余剰プルトニウムをどうするかという問題があるわけですが,これも当面プルサーマルでということで方向が示されているわけですけれども,これも先般のMOX燃料の検査データのねつ造ということが明らかになって延期を余儀なくされているわけで,ただ余剰プルトニウムを持たないためにということだけで,核燃料サイクルの実施を急ぐべきではないと思います。核不拡散は核不拡散の問題として,外交的な努力というものを改めてきちっとするようなことを優先し,プルサーマルについても,関係住民の十分な理解を得られるように慎重にやるべきだろうと考えています。
 それからこれに関連して,「もんじゅ」の運転再開については慎重な対応が求められるであろうと思っています。関係住民,関係自治体の合意を得ることは当然ですが,安全審査についてもそうですし,それから運転再開にあたって,やはり技術的な検証をもう一歩踏み込んでやらなければいけないのではないかと考えている次第です。
 原子力問題は国のエネルギー政策の基本に関わる問題ですし,特にその中核に据えられた核燃料サイクルについても,これは円卓会議等の場もそうですけれども,国会においてもきちんと議論を積み重ねるということが今後必要であろうと認識をいたしています。以上です。

【茅】ありがとうございました。それでは次に,加納さん,お願いいたします。

【加納(自由民主党参議院議員)】自由民主党の加納時男です。先週の1週間私はアメリカに行っていました。お手元のレジメを見ていただきますと,ポイントが書いてあります。1月2日に日本を発ちまして,ネバダ州のヤッカマウンテン,それからニューメキシコ州のWIPP(Waste Isolation Pilot Plant)と言っていますが,TRU(超ウラン元素)の廃棄物の処分場,ケンタッキー州のパデューカのウラン濃縮工場等を見てワシントンに入り,ワシントンでDOE(エネルギー省)のモニーツ次官,NRC(原子力規制委員会)に入りダイカス筆頭コミッショナー,それからマクガフィガンコミッショナーと個別に会談をしました。こういった見聞を通じて,この日曜日に帰ってきたばかりですが,私はアメリカの原子力に変化の胎動を感ずるものであります。
 「アメリカの原子力はだめだ」とよく言う方がおられますけれども,全然違います。現在でもアメリカの約20%の電力は原子力でまかなわれており,既設のプラントは安全性が著しく向上した上に,稼働率が上がりまして,非常に経済的になっている。経済的にはコスト競争力が十分あるというのが実態です。
 しかしながら,アメリカでは79年以来,原子力の新規投資がない。これも事実であります。投資のない理由は大きく2つあるというのが今回の議論でありました。1つは初期投資が大きいということです。先ほど井上さんもおっしゃったように,自由化が進んでくる,そして短期的に資本を回収したいというウォール街の投資筋の本音からすると,投資の回収期間が長い原子力というのは非常に魅力に欠けているというのが1つあります。
 もう1つは廃棄物問題が未解決,これも井上さんが言われた高レベル廃棄物の処分が決まっていない出口のないものである,これがアメリカの新規投資を阻害してきた原因であるというのが意見でした。
 この2つについて新しい動きが出ています。1つはNRCでも確認したのですが,ライセンスをいままでは複雑だったものを単純化する。ワンステップライセンスに変えたということです。大きなインパクトがあるだろうと思います。それから次世代炉,次のジェネレーションの炉について,AP600ですとか,あるいはシステム80プラスとか,日本でも成功しています,GEと日本の東芝,日立,東電をはじめ電力会社が協力して開発したABWR,改良型の沸騰水型原子炉ですが,これがアメリカでも非常に高い評価を受けていました。こういったものがおそらくこれから次の投資が行われる時の候補になるであろうということを関係者は一様に言っておられました。
 もう1つの変化は廃棄物問題が動き出したということであります。1999年,去年はアメリカの原子力にとっても歴史的な年であったと思います。何と言ってもWIPP,要するに放射性廃棄物,TRU廃棄物を隔離する施設です。パイロットプラントでWIPPと言っていますが,世界ではじめて,TRU廃棄物ではありますが地層処分を現実に開始した。机上の空論ではなくて,現実に始めたということが重要であります。私も地下 650mの岩塩層をエレベーターで4分半でシャーッと降りまして,ドラム缶が3段積みにずらっと並んでいるところを見てきました。すでにここへの搬入は9か月間で25回行われています。いまのところ軍事用のTRU廃棄物が中心でありますけれども,これが大きな1つの事実として歴史を変えるのではないか。
 もう1つは,ヤッカマウンテンです。これも日本でヤッカマウンテンはうまくいっていないという話でありますが,去年,後半になりますけれども,実現可能性の報告書が出まして,これがリリースされ,公聴会を開き,パブリックヒアリングをやっています。その状況も見てきました。こういったところから,本年には最終レポートがまとまる,そしてもちろんEPA(環境保護庁)の評価もあります。いよいよ鍵を握るのはDOE長官が来年これを大統領に勧告するかどうかどうか,「やりましょうよ」と言うかどうか,大統領が議会に対して諮るかどうか,諮るようであると私は思っています。議会はどうかということでして,仮にネバダ州の自治体が反対しても,連邦議会が議決すればそちらが優先するという最高裁の判決がすでに出ていますから,いま申し上げた3つのキーセクションがゴーと言えば,アメリカのヤッカマウンテンは前進する。今日現在まだもちろんわかりませんけれども,大きな分岐点にあるということを感じました。
 WIPPでは非常に印象深いことがありまして,ここはもともと岩塩層が非常に厚い所なのですが,農業がある,その他に鉱山業があって石油も掘っていたわけです。鉱山業の経験があるために,地下を掘るとか,あるいは鉱山に伴うリスクとベネフィットのバランスをよく考えていた,そういう地域性があったのでしょうか,初期の段階からぜひ自分の州に,自分のカールスバッドへ持ってきてくれということをニューメキシコ州で言っていたということです。これは関係者に全部確認を取ってきました。「 Not in my backyard.私の庭は嫌だよ」というのが原子力でよく言われるのですが「Please in my backyard.(どうぞ私の庭に)PIMBYではないか」と言ったところ,これは非常にうけまして,「これからアメリカでPIMBYという言葉を流行らせよう」などと言っていました。
 もう1つ申し上げると,地球温暖化問題はまだアメリカでは大きな話題になっていませんが,これが話題になれば間違いなく原子力選択は前進するのではないか。そして,以上の状況を勘案すると,私のお会いした関係者は一様に「これから10年ないし15年以内に原子力発電所の新規発注ができるのではないか」と予測して言ったことが大変興味深いところでありました。
 私のレジメの後半の「原子力を考える視点」については,このセッションの後段のところで議論をしたいと思っていますが,テーマだけご紹介だけしておきますと,科学技術を考えるポイントは私はリスクとベネフィットのバランス感覚だと思います。井上さんが先ほどおっしゃったように,原子力発電所には大変なベネフィットがあります。長期経済性,エネルギーセキュリティ,環境適合性というメリットがあるけれども,同時に他の科学技術と同じように潜在的な危険性,リスクがあります。事故の可能性,高レベル廃棄物の最終処分,核兵器への拡散の懸念,私は否定しません。私は11年前からテレビで「原子力は潜在的に危険だ」と申してきました。危険だからやめるのではない。危険だからこそ,技術的に社会的にコントロールしてベネフィットを享受するというのが現代文明に付き合う人間の知恵ではないかと思います。ありがとうございました。

【茅】ありがとうございました。それでは,辻さんお願いいたします。

【辻(民主党衆議院議員)】私は日本の電力の3分の1,34%を原子力発電が供給しているという事実を踏まえて,それからCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)やいろいろな問題をずっと考えてくると,かなりな期間,原子力に一定の依存をするということは必要なことであるし,避けることはできないだろうと思っています。ただ原子力は非常な利便性の反面において,安全上の問題,また先ほどお話にありました高(レベル)廃棄物の最終処分の問題等々がありますので,増やせばよいというものではないと思います。そこで,現実にこのエネルギーの問題を考えた時に,これから社会がエネルギーがどんどん,もっともっといままでのような状況で増えるのかどうかということがあると思いますが,まず,一定の増大するとするならば,するということを前提に置けば,まず第一にこのエネルギーの問題は省エネを徹底する必要があると思うのです。
 これはかつて第一次石油ショックの時に,わが国は2億9千万トンの原油を輸入していましたが,あれだけの経済発展をした中で,1億キロリッター原油を節約したという事実があって,世界に誇る省エネ政策と技術を開発したという誇りが,実績があります。これをもう一度生かすことが大事ではないか。
 それからもう1つは,新しいエネルギーの開発の問題をやはり考えなくてはいけない。産業用の大動力を得るには全く新しい核融合等のエネルギーが開発されないと,なかなか難しいと思いますが,太陽光発電を利用して,例えば夏の甲子園の非常に電力がいる時に,クーラーとこれを直結して,発電用量のピークを崩すというようなことはかなり大事な問題ではないかと,そういう点で新エネの開発,太陽光もありますし,地域によっては風力であるとか,燃料電池等々,多くありますが,考えてみると原子力開発に相当にお金をつぎ込んできた,これは大変大事でありますが,同時に新エネルギー開発につぎ込む予算は全体を見ても非常に少ない感じがする。本格的にお金をつぎ込めば,太陽光発電でも大量にパネルを公共施設にでも貼れば,コストダウン,あるいは光の変換率の技術的なものも倍ぐらいにできるでしょうから,コストを下げるという方法をやはりお金をつぎ込んでやるということが大変大事なのではないか。そして,どうしてもエネルギーが増大する部分を新エネルギー等の,省エネと新エネの開発でまかなえないならば,これはいまの状況では原子力発電によってこれを補っていく,カバーしていく,こういうことが基本的にあってよいのではないかと思います。
 それから,原子力長計の見直しですが,新型転換炉の開発が中止され,それからFBRが50年先でないと実用化が立たないと言われている中,原子力長期計画,長計の基本であった前提は大きく崩れてきている。いま全部残りをプルサーマルでやみくもにやってしまおうというような考えになっていますが,これは非常に大きな変化である。そういう意味で長計の見直しをきちんとやらないといけないのではないか。そしてプルサーマル,中間貯蔵,さらに高速増殖炉等々をどのように位置付けするのか,これをきっちりやらないことには,国民的な合意や理解は得がたい,やりにくいと思います。その点を力を入れることが大事だろうと思います。
 それから,プルサーマルはデータねつ造というものが非常に影響して,非常に信頼が崩れた感じがします。したがって日本で,外国の例だけを挙げてそれで実証試験はいらないというのではなしに,地道な実証試験をわが国の原子炉,軽水炉できちんとやって積み上げをするということが信頼を回復するまず第一歩ではないかと思います。
 それから,先の問題ですが,使用済み燃料をどうするか。アメリカはワンススルーで使い捨て方式を採っています。欧州やわが国はこれを再処理して,もう一度核燃料サイクルで生かそうという道を取ってきました。私もロスアラモスやヤッカマウンテンをこの間1月にずっと見て,夏はロシアでもずい分チェルノブイリを見てきましたが,アメリカでもワンススルーだけではなしに,使用済み燃料を 300年間ヤッカマウンテンの山の中に置いて,どうするかは蓋をせずに次の世代に委ねるというような方向がかなり出ている。
 そういう点で,使用済み燃料をどうするかということは,これはすぐ再処理をして能率の一番悪いプルサーマルで早く使うのが,はたして資源小国のわが国のいき方であるかどうか問題があると思います。むしろ私は必要な使用量のプルトニウムを取り出すためには再処理をやっても,その他の部分は中間貯蔵によって,法案も成立しましたから,そこに水式でも乾式でもよいですから,蓄えて,貯蔵しておく。そしてこれから30年ないし40年,日本や世界の科学技術がどれだけ進歩するか予測はできない。科学技術の進歩を待ってあとの対処を考えてもよいのではないか。これは1つの資源小国が資源を本当にある意味では温存していく点からも考えてみる必要があるだろうと思っています。
 それから「もんじゅ」の問題ですが,これは私は,ずい分いろいろ政府や核燃サイクルも努力をしていますが,徹底した総括をやはりここではやらないといけない。それは原因の追究であるとか,いろいろな面ではずい分報告書が出ていますが,例えば1つの例ですが,フランスのスーパーフェニックスではいわゆる小規模ナトリウムの漏洩に対する火災対策等はずい分と論議をして,公聴会もやって,対応している。それを3年半ぐらいはわが国は資料を手に入れながら倉庫の中に置いていたという事実があります。
 それから,温度計等は11年も前に短尺効果というのをきちんとフランスでは公聴会等で発表しているにもかかわらず,11年間放置をして事故が起きた何か月か後に現地を見に行っているという,こういう点では,必ずしも海外の例などに十分学んだとは言えない。
 その時の責任は一体どこにあるのか。原因追究だけでは済ませない。科技庁や原子力安全委員会の当時における責任をあきらかにする。そこまで総括をしないと意味がないのではないかと思います。
 「もんじゅ」のほうで,ロシアでも原子炉研究所や物理研究所,BN600といういろいろ所長さんが集まって論議をずい分しましたが,ここでも日本の「もんじゅ」の事故,後の実験において新しい知見として界面腐食という新しい問題が出てきたのです。ところが,これについて科学技術庁,核燃サイクル,第1次チェック機関と第2次チェック機関の原子力安全委員会の界面腐食に対する見解が食い違っています。ですから,私はこれらはきちんとした再実験をやって,この統一を図るということが大事,そうでないと国民の側から見れば,第1次チェック機関,行政府の見解と,第2次チェック機関,原子力安全委員会の見解が違っているのでは,ちょっと安心していられないという感じがしますから,こういうことをきちんとやるということが大事ではないか。そういうことを世界の学者等に,一度全部専門家に集まってもらって論議をするとか,このようなことをやることが,「もんじゅ」再開を論議する前になされるべきことではないかと思います。
 それから,原子力安全委員会の改組,拡充が必要である。これは原子力安全委員会の状況をずっと見てみると,1つは現在の陣容では2次系,周辺部に起こる事故等についての目配りは,安全審査,あるいは後の対策でも目配りがきかないということです。第2は,政策推進と安全規制の同居は,やはり緊張感を欠く恐れがある。アメリカのNRCや日本の金融監督庁のように,これを完全分離独立させて,私は8条諮問委員会から,3条諮問委員会に移して,原子力安全委員会の分離と強化を図らなくてはいけないのではないか。そういう意味で,私の民主党のほうは原子力安全規制委員会設置法案をすでに用意して次の国会に提出する準備もしているということもご報告しておきたいと思います。
 それから,後で申し上げますが,資料公開を徹底してやってもらいたい。都合のよいものは出ても,本格的に本当の資料の提出は,いままでわれわれが国会論議の中において,なかなか難しい。とことん追いつめて,手を挙げない限りは,本当の必要な資料はなかなか出てこない感じがしますので,そういう意味で情報公開の中できちんとした資料公開をぜひやってほしい。
 高(レベル)廃棄物の問題は後でまた論議を申し上げますが,アメリカのネバダの砂漠のような所は日本になかなかない。 1,500mの溶岩の山に 1,300m地点で,新幹線より少し小さい穴を掘って,そこへ3キロほどの穴を掘って,いま廃棄物を並べて試験をしていますが,なかなか日本にはそういう条件というのは難しいわけですから,どう廃棄物を処理するか。これは原子力で残された最大の重要な課題であると申し上げて終わりたいと思います。以上です。

【茅】ありがとうございました。それでは次に辻元さん,お願いいたします。

【辻元(社会民主党衆議院議員)】辻元清美です。私は今回の東海村の事故に至るまでの一連の「もんじゅ」以降の事故を見ていて,「これらの事故でわが国の原子力行政は大きくは変わらない」というような発言を政府の中でもする方が多々いらっしゃるわけですが,そういう認識に立っている限り,私は改善されないのではないかと強く懸念を抱いているのです。今回の事故もそうですけれども,「これらの事故で原子力というものを扱うことの本質が見えた」というように発想を転換して,「それではどうしていくか」と考えていかなければいけないと思っています。それはやはり,現実的に考えて,原子力の依存度を低くしていかざるを得ないのではないかというように思うのです。
 いままで,例えば,いま政府は温暖化の問題などを取り上げて,(原子力発電所の)20基増設が,先ほどから出ていますが,これは現実的に無理だと思うのです。現実的に立地できない,2010年までに20基増設を温暖化の1つの対策の大きな柱とするということはできもしないことを言っていると当時から言われていたわけです。私は温暖化防止京都会議,それからその事前のボンのプレ会議にも現場で参加してきました。ここでもやはり各国から集まった人たちが,原発に頼らない独自の政策をいかに強めていくかということを議論していこうとものすごく盛り上がっていたわけです。実際に日本の政策としても,2010年までに20基建てられないのに,これを据えているというのは政策を立てるものとして非常に無責任だと思います。
 さて,そういう中で1つは,これから原発を増設していくということについては,これははっきり見直しをする。それから老朽化の問題が出てきています。老朽化の問題では寿命を60年に延ばすという話が出てきていますが,これは非常に危険性が高いと考えます。先ほど2次系統の事故の話が出ましたが,この寿命を安易に延ばすことはしない。そして,日本はむしろ,まもなく廃炉という問題に直面するわけですから,この廃炉についての研究を世界に先んじて高い技術を持つ国になるように,この廃炉研究に予算をかなりシフトしていくべきではないかと思っています。
 それから,核燃料サイクルについては,特に高速増殖炉「もんじゅ」は,いままだナトリウムを流していますけれども,私はこれもストップしたほうがよいと思うのです。なぜかと言うと,コスト的な面でも「もんじゅ」は電気代だけで,いまの維持費でひと月 8,000万円かかっています。止まってからこの間 500億円「もんじゅ」に使ってきました。私はこれ以上コストをかけることも不可能だし,いったんナトリウムを止めてしまって,ストップさせるということをまず先にした上で議論をしていくべきだと思っています。高速増殖炉については,これはコスト的な問題も最近はあちこちの雑誌などでも指摘されるようになっていますし,私はもう破綻しているということを認める段階が近いのではないかというぐらいせっぱ詰まってきているのではないかと考えています。
 プルサーマルについては,データのねつ造の問題が出てきましたけれども,それ以前にやはり高速増殖炉が破綻し,これ以上,日本はプルトニウムを出すことはできないと思うのです。それをプルサーマルでという解決方法自体も前に進まない状況になってきていますので,私はこのプルサーマルも,もちろんこれ以上プルトニウムを出さないように転換していくと同時に見直すべきだと思います。
 その中で先ほどの温暖化の問題なのですが,WWFとか,いろいろな団体が提案しているヨーロッパの削減の政策を見ても,原発を中心に据えない削減の具体的なプロセスを示している国はたくさんありますし,当時温暖化問題のプロジェクトを担当していた時に,私たちも,当時は与党のプロジェクトだったのですが,原発20基増設なしのシミュレーションについて,いろいろな研究者の方に集まっていただいてペーパーにまとめたものがあって,絵に描いた餅ではないと私は思っています。
 さて,そういう中で,ではどうしていくかということなのですが,よく,自然エネルギーを促進しようと言ってもコストが高すぎると。実際現状ではそうだと思うのです。ところが,この自然エネルギーに関する研究についても,いままで予算をそんなに多く取ってきたわけでもないという現実がありますので,私は,例えば原子力については原研とか旧動燃のようなものすごく大きな予算を投じた集中した研究機関があるわけですが,この自然エネルギーなどについての集中した研究機関を予算をとって,いきなり原子力並のものを作るというのは予算の関係で非常に難しいかもしれませんけれども,同等程度のものを目指すぐらいの思い切ったシフトが必要ではないかと思っています。
 その中で,もう1つ国会の関与ということなのですけれども,国会の中で原子力政策については科学技術関係とか通産関係とかバラバラになっているのです。そこで私はエネルギー対策特別委員会のようなものを作って,省庁縦割りではなく議論するシステムが必要だと思います。これは教育であったり,運輸であったり,建設であったり,すべてのことがこのエネルギー政策にはかかわってきます。今回事故もありましたので特別委員会を国会の中に設置して,そこで集中的に議論をしていく。その選択肢の中に,私はやはりいままで原子力推進一辺倒できたと言っても言いすぎではない政策でしたけれども,そうではなくて,原子力に頼らずにはたしてやれるのかどうかと,脱原発に向けて進めるのかどうかということの研究であったり議論であったりということもしっかり選択肢の中に位置付けて,国会内外で議論を進めていくべきだと考えています。
 最後になるのですが,この原子力の問題になったら,すぐ推進派対反対派のような,非常に古い構図があったように思うのです。私は推進派も反対派も両者が一緒に,ここがちょっと問題になるのですが,「いやだ」という人が出てきそうなのですが,脱原発に向けてのシナリオ作りを選択肢の1つとして,はたしてシナリオ作りができるのかできないのか,これは推進派の人も考えなければならない段階にきたと思うのです。イデオロギー対立とか,過去の政治の構図,力関係によって,何だか推進,反対で色分けされたようなあり方は,もう変えていかなくてはいけない。私なども行くと「あなたは反対派でしょう」と言われるわけです。今やすべての人が,脱原発ということを,やはりビジョンに入れないと話にならないのではないかと私はいま強く思っています。以上です。

【茅】ありがとうございました。それでは次に戸田さんお願いいたします。

【戸田(自由党参議院議員)】自由党の戸田です。いままでいろいろご指摘が出ていますので,なるべくだぶらないような形でお話し申し上げたいと思います。まず,電力の問題ですが,例のCOP3でCO2の問題が大きく取り上げられて,いまの目標は1990年比でCO2を6%削減するというような数値が出ていますが,いろいろなシミュレーションを検討してみると,6%ぐらいカットしても温暖化は防げないというのが真実ではないかと思っています。数値はいろいろな数値が出ていますが,少なく見積もっても30%ぐらいカットをしないと地球の温暖化は防げないというようなところが実態ではないかと私は思っています。
 そういった面から考えてCO2をそれほど増やさないで,それで電力を供給していく。これは非常に難しい問題があると思いますが,やはり原子力発電に頼らざるを得ないということだろうと思います。
 何でも都合よくできるような方式というのは世の中になかなかありませんで,やはり使用済み核燃料のサイクルの問題,放射性廃棄物の最終処分の問題,その辺については,いままで政府側が示してきたところでは,最終処理がはっきりと示されていない。そこにやはり原子力発電に対して反対される方々の論拠も出てくるということではないかと思っています。
 自然エネルギーの問題がありまして,自然エネルギーの占める割合を3%ぐらいまでという目標がありますが,風力などですとコスト面からいってかなり可能性が高いと思います。これまた政治サイドの問題で,やはりそれに対して補助金を与えるとか,あるいは税制上の優遇措置を講ずるとか,そういったことがないとなかなか伸びていかないのではないかと思います。
 現在国会サイドに超党派で「自然エネルギー促進議員連盟」というものを作って勉強を初めていますが,例えば風力発電などについては相当可能性が高いというようなことではないかと思います。
 今後の原子力,新しい炉を設置していくことについては,先ほど辻元さんからもいろいろいご指摘がありましたが,やはり相当の困難があると見ないとならないと思いますから,省エネ,その他あらゆる方法を講じて,それでできるだけ電力の供給に損はないようにしていかなければならないというところではないかと思っています。
 それからもう1つ,「もんじゅ」の話とかプルサーマルの話が出ていますが,今回プルサーマルについて容器のデータのねつ造というのがあって,それで先送りされてしまうということがあったわけですが,これとFBRの問題というのは若干似通ったところがありはしないかと私は思っています。つまり,プルサーマルについて,あのようなことを,大したことではないのではないかと思ってやったかもしれませんが,そのようなことが結局日本の原子力政策に大きな影響を与えてしまう。それから,「もんじゅ」の事故でもそうではないかと思いますが,あの事故の原因というのをよく見てみますと,私はもともと技術屋ですから,特にそう思いますが,あのような設計をすること自身があってはならないと思いますし,また現場でそれを組み立てている人がこれはどのようなことで働くのだということを考えれば,必ずあのような事故が起きるということは想定できたのではないかと思うのですが,その辺はやはりああいったものを扱っていく,非常に危険度の高いものを扱っていく技術者のモラルというところに行き着く話ではないかと思っています。
 高速増殖炉について,「もんじゅ」の話ですが,私は十分な検査をして,確認を取った上で,あれだけ予算をかけて始めたわけですから,現時点で採算に合わないということかもしれませんが,将来の問題としてぜひ実験をして問題の解決をしておくべきではないかと思っています。
 それから,先般のJCOの事故の関係ですが,新たな法案を2本,先の臨時国会で通しています。1つは「原子炉等規制法」の改正,それからもう1つは「原子力災害対策特別措置法」という法律です。この2つの法律をよくよく見てみますと,事故を予防するということについては,あまり有効な手だてがないということをはっきり示しているような思います。事故が起こった時にいかにして災害を少なくするか,災害をどうやってコントロールしていくかというところに主眼点が置かれている。そういうことを考えると,これらの法律はあのような事故に対しても根本的な解決にはなっていない。そうなると,やはり原子力を扱っている技術者の良心というか,素養といったことに頼らざるを得ない部分ではないかと思います。そういったことで私は原子力に,特に原子力の安全に関わる仕事をしている人たちに,そういった責任感というか,良心,素養というようなことをきちんと持ってもらうような仕組みがいまから非常に大事になっていくのではないかと思っています。以上です。

【茅】大変ありがとうございました。それでは吉井さんお願いいたします。

【吉井(日本共産党衆議院議員)】日本共産党の吉井英勝です。私は問題を2つに分けて発言したいと思います。
 1つはエネルギー,環境情勢と言っている問題についてです。60年代以降の高度経済成長政策,そこでやった大量生産,大量消費のこの経済社会構造を,基本的にはこの枠組みを続けていくのか,それともこれを思い切って省資源,資源の循環型,省エネルギーの社会経済構造に転換していくのかという,この問題です。前者を前提にする限り,エネルギーの問題の解答というのは,結局需要の急増,それに基づく原発増設などを必要な選択肢とする発想に至らざるを得ないと思います。この点ではいまも大型店が次々と深夜営業を行うとか,自動販売機などだけでも,全国の自動販売機でおそらく原発3基分ぐらいの電力を使っているでしょうけれども,あるいはもっとになるかもしれませんが,そういう問題をやはり後者に述べました方向へ,社会経済構造を切り替えていくという,その中から原発増設をやめて新エネルギーの開発やエネルギー転換効率をうんと高めていく,そういうことに全力を挙げて取り組んで更に省エネルギー,省資源の技術開発などに力を入れることによって,全体として解決に至るという道が開かれてくると思います。
 もう1つの,2つ目の問題は,では原発そのものの新増設をどうするのかということ,あるいは原発をどう考えるかという問題があります。現在の原発と核燃料サイクルというのは,基本的に言って未完成で,未成熟な技術だと考えています。これは先だってのJCO臨界事故の事故調報告の中でも,成熟技術と未成熟技術の接点での問題等々指摘もありましたが,基本的に言って今日そういう問題を持っている分野です。ですから,未成熟な技術の段階での新増設というのはするべきではないと考えています。もともと今日の原発技術そのものが,原爆とそれを運搬する手段としての原子力潜水艦のために開発された軽水炉技術をそのまま転用して 135万キロワットの発電所へとスケールアップしてきたものです。この軽水炉技術が,これが原発技術の中で最高のものなのか,完成されたものなのかという点でまず問題があると考えています。より安全な原子炉という発想に立つならば,例えば未臨界のままに置いておく原子炉,必要な時に次々と中性子を打ち込むという発想もありうるわけですし,あるいは高温・高圧を避けるということからすれば,高圧を避けて高温を利用するという点だけからすると,液体金属冷却にも一定の合理性はあるわけです。地震対策ということで考えれば,固有安全炉の考え方というのは重要になってきます。
 要するに基礎に立ち返った研究と安全技術や廃棄物処理の技術開発など原子力発電というのはシステム全体として発展途上のものなのだと,そこが非常に大事なところだと考えていまして,ですから将来の選択肢にはなりうるものと率直に考えています。
 今日の原発推進というのは,いろいろな問題を持っていますが,何と言っても問題解決をすべて先送りしながら進めてきて,いま重大なさまざまな問題,行き詰まりに直面しているというのが現状だと思います。原発増設で使用済み核燃料の貯蔵プールが一杯になってきた。限界に来たから,今度は中間貯蔵だと。これは危険施設の拡散という問題になりますし,これを再処理によって回避しようとすれば,今度はプルトニウム余剰という国際的不信を招くもとになります。プルトニウムを燃やすと言っても,高速増殖炉はいま未完成ですし,仕方なくプルサーマルに進むと言っても,プルサーマル自体がまだデータが十分ではありませんが,一層危険な原発を増やしてしまうということになります。超ウラン元素の急増だとか,高次化したプルトニウムの高レベル放射線の問題など,さらにやっかいな問題にも直面します。しかも大量の高次化したプルトニウムを含む使用済み核燃料の再処理というのは,これは技術的にきびしい条件に曝されて,簡単には解決できるものではありません。高レベル放射性廃棄物を数万年先までの,子孫にまで責任を持たせるというわけにはやはりいかないと思うのです。そうすると,せめて現役世代の間に責任を持って処理できる半減期のもの,現役世代で処理できる放射線レベルにまで引き下げる技術の開発などが必要になると思いますが,短寿命化などの技術は,これも現在できていません。つまり,原発というのは将来の選択肢として基礎研究の大事なテーマであり,それが本当にシステムとして完成された時には,将来の選択肢になりうると思いますが,完成された技術体系になっていない段階で,それを強行するというのは間違った選択だと考えています。
 すでに到達した電力の3分の1が原発からというこの状況から,転換を図る現実的な取り組みが重要であって,同時に国民の9割の人が,これは総理府などの調査でもそうですが,いまの原発には危険なものを感じると回答しているという,ここをやはり重視するべきで,苛酷事故などを想定した,そういう技術基準に基づく総点検と,それに基づいて危険な老朽化したものの廃炉処分など,いまの原発の危険から国民の安全を守るという取り組みについては,これは原発賛成の方もそうでない方も含めて,全力を尽くしていくというのが今日の共同した緊急の課題だと思います。
 最後に一言,JCO臨界事故の事故調報告について触れますと,原発安全神話の一掃と独立した規制機関の設置,事務局体制の拡充を述べたことは,私は率直に言ってこれは前進だと見ています。その立場をうんと進めるならば,今日の原発政策の転換ということに,やはり行き着かざるを得ないと思うのですが,そこは曖昧にしてはいけないところで,苛酷事故を含む審査基準の確立とプルトニウム循環方式の放棄,いまはその立場で臨むことがJCO臨界事故の教訓の中から生み出されてきているものだと,そのように考えています。また後ほどそれぞれの皆さんとのご議論と関わりのあるところは発言したいと思います。どうもありがとうございました。

【茅】ありがとうございました。これで国会議員の方6人のお話が終わったのですが,それではこの方々のお話に対するコメントという形でジャーナリストの方お二人にご意見をお願いいいたします。最初に鳥井さんお願いいたします。

【鳥井(日本経済新聞社論説委員)】コメントをできるような立場かどうかよくわからないのでありますが,皆さんのお話を伺って率直に1つ感じた第1点であります。それは日本という国は世界の中で大変お金持ちの国だし,世界全体からいろいろな資源だとか何かを面倒をみてもらって,それでここまでわれわれは豊かな生活ができるようになったわけです。そういう国が,エネルギーの問題で自分のことだけ考えていてよいのかということは非常に強く感じることであります。やはり世界の将来のエネルギーに対して日本の技術開発というのがどのように役にたつのかということをしっかり念頭に置く必要があるという気がいたしました。
 あとは少し個別的なことを述べさせていただきたいと思うのです。何人かの方が「国民の理解,コンセンサス」というようなことを言われたのですが,実はどのような状況になったらコンセンサスができているのか,国民が理解しているのかというのは大変難しい問題でありまして,そこを少しきちんと考えないと,いまの状態がコンセンサスができているのやらできてないのやらよくわからないということがいつまでも続くということがあるような気がします。
 それから,新エネルギーを大いにやるべきだとか,ベストミックスというようなお話が出てきたのですが,ベストであるとか,そういうことを判断する物差しというのは何なのだろうという感じがします。ある視点から見れば原子力のほうが新エネルギーよりずっとよいですし,ある視点から見れば新エネルギーのほうがよいということが言えるわけです。そこをはっきり議論をするためには,はっきりさせないといけないのかなという感じがしました。
 それから,いまの安全規制の問題がずい分出てきたわけですが,日本の国というのは不思議なことで,何か事故が起こるともうちょっと安全にしようよと言ったら,「さあ,国,ちゃんとやれ」と言うのです。それでずっとやってきて,政府がこんなに大きくなってしまったようなところがあるわけです。例えば,これはサイクル機構の方から聞いたのですが,東海村の辺りでは原子力事業者がネットワークのようなものを組んで,お互いに監視しようというシステムができつつあるやに聞いたわけです。そのような民間の動きというのをいかに取り込んでいくかというのはきわめて大事なのではないかという気がしました。
 私は7分も話すことはなくて,あと1点で終わってしまうのですが,もう1つは,新エネルギーに資金をかけて大研究所を作れというお話,もっと資金をかけるべきだというお話は多数あったような気がするわけですが,研究開発にお金をかけたほうがよい分野と,マーケットの創出にお金をかけたほうがはるかに有利である場というのがあるのだと思います。例えば太陽エネルギーを考えても,いま何を悩んでいるかというと,普及するかしないかというところに悩んでいるわけです。普及して一定の市場が出てくると,自ずと研究開発は進むわけです。自動車の研究開発は政府がお金を出さなくてもどんどん研究開発が進むわけでして,そういう意味でマーケットの誘導という政策手段というのを少し真剣に考えるべきではないかと感じたわけです。たぶん,原子力についても同じことが言えるだろうと思いますが。
 それから最後に吉井先生がおっしゃった「原子力の技術が未熟か,成熟しているか」,これは技術というのは常にまだまだ未熟だと思ってよりよいもの,より安全なものを目指して研究開発をしていくのが当たり前,大事なことでありまして,これは成熟したもの,絶対大丈夫だと言ったとたんに,いろいろなことが起こってくるわけに決まっているわけです。原子力政策そのものはやはりまだまだ技術は未熟なのだという視点で進める必要が大いにあるということで,その意見には大変賛成であります。以上であります。

【茅】ありがとうございました。それでは最後になりましたから,中村さん。

【中村(科学ジャーナリスト)】私は6つの政党の政治家が来て下さって,いろいろ意見を述べて下さったことは大変いいと思うのです。つまり,エネルギーの問題がいかに重要であるかということは国民はわかっているわけですが,具体的になぜ重要なのか,どれほど重要なのか骨身にしみて考えてはいないわけです。そういうきっかけを与えて下さることになれば非常によいと思うのです。ですから,新聞やテレビがどんどん今日のことも報道していただければよいと思います。
 では,十分それに値するほど突っ込んだ意見が出ているか。時間が短くて,とてもそこまで行っていません。いろいろなご意見が出まして,私はこの議論をずっと続けてほしいなと思うのですが,かなりの方のご意見の中に「原子力に頼らずにやっていけるかどうか,1つ国会の中に超党派で議論をする場を設けろ」とありました。これは私は非常によいことだと思います。
 賛成・反対を超えて議論をしようではないかという辻元さんのお話は非常によいのですが,その時に難しいのは,原子力に頼らずにやって行けるかどうかというのはいまの時点だけを考えてもだめなのです。日本のエネルギーの自給率というのは原子力を入れても18%しかない。原子力を引けば一次エネルギーの 5.5%しか自給をしていないのです。そういう状況で,将来オイルショックがもう一回起きた時に大丈夫か。あるいはオイルショックは起きないけれども,日本はいまお金があるからいくらでも石油を買えるのですが,日本の技術の現状,経済の現状を見てみると,石油はあるけれども,意外に輸出がふるわなくて,経済がふるわなくて,石油を買うドルがなくなるという心配もあるわけです。実際30年前までそうだったわけですから。そういう時に一体どのぐらいの自給率があればよいのか。食糧の自給率が41%で心細いから,農林省は10年以内に50%にしようと言っていますけれども,こちらは,エネルギーはもっと低いわけです。一体どのぐらいの自給率であれば安全なのか。一体その自給の中身をどのようにしたらよいのかというところにまず立って,エネルギーの問題は議論をしていただかないと,風が吹けば何とかなるという調子の議論では困ると思うのです。そのようなことを真面目に,本気で考えて実行して下さるのは政治家しかないと思うのです。ですから,今日6人の方が出てきて下さって,口火を切っていただいたとすれば,非常によいことだと思います。
 いままで国会でもエネルギーに関する議論というのはありましたけれども,それっきりで線香花火のようなことでなかなか継続をしませんし,それから突っ込んだ議論にもなりませんでした。東海村の事故が起きて,たしかに不安を感じる人が増えて,「原子力がなくてもよい」あるいは「なくても何とかなるのではないか」というように考える人が少し増えたと思います。本当になくても何とかなるものなら,不安の種の原子力など,私はなくてよいと思うのですけれども,いや本当になかったらえらいことになるな,あってもこの程度の自給率では大変だなと,私は思うのですけれども,本当にそうなのかどうなのかという議論を,これからやっていただきいと思うのです。
 具体的には,お話を伺っていますと「現状程度はよいけれども,新増設についてはちょっと待った」というご意見が多かったように思います。いまのところ経済成長が足踏みをしているからここらで1つ考えるよいチャンスではないかとお考えなのだろうと思うのです。そうであるなら,早いところその徹底した議論をやっていただきたいと思います。「もんじゅ」の話が出ましたけれども,「もんじゅ」を動かすかどうかというような問題は,あのまま置いておけば1か月に電気代だけで 8,000万もかかるし,いろいろかかりまして,年間 100億近い維持費がかかるわけです。ですから,やめた方がよいならやめればよいし,せっかく 6,000億もかけて作ったのだから,動かせばそれ相応の技術のレベルにあるわけですから,データが採れるわけです。それは将来あの型の高速増殖炉はやめて小型のものにするとか,別のタイプにするとか,そのように変わるにしても,やはりせっかく作ったものを動かせば,それ相応の技術的な成果はあるだろうと思うのです。ですから,私は早く動かしたほうがよいと思います。ところが何となく,いますぐ動かすことについては世論が承知しないというような空気があるようですけれども,どうすれば早く動かせるか,そのために徹底した議論が事前に必要だとおっしゃっているのなら,その議論をさっさとやっていただいて,私は結果を早く出していただきたいと思います。個人的には「もんじゅ」は何年か動かしたら止まることになるのだろうとは思うのですけれども,しかし,せっかく何年か動かしてデータを採るのなら,国家経済から見ても,早く動かしたほうがいい。ですから,評論家的におっしゃらずに,早く動かして技術の結果を得るなら得るというようにやっていただきたいと思いました。

【茅】ありがとうございました。それでは,これで8人のパネリストの方々の,正確には招へい者と言うのだそうですが,その方々のご意見をいただいたわけです。実は最初に7分というお話をいただいて,本当かなと思ったのですが,きちんとそのようになったので,正直言って,大変私も感心いたしました。私もこのように今後はやりたいと思っています。いずれにしましても,時間が現在4時10分前ぐらいです。したがいまして,最初のお約束通り,ここで休憩を取りまして,休憩の後で議論を1時間20分ぐらいさせていただきたいと考えています。それでは休憩にいたします。

【事務局】それではこの辺で休憩に入らせていただきたいと思いますが,初めに円卓の先生方がご退場になられますので,その間に事務局よりお知らせがございますので,恐れ入りますが,傍聴の皆様方はそのままご着席をお願いいたします。再開は4時10分でございます。
 繰り返しになりますが,会議の再開は4時10分とさせていただきたいと思います。トイレ,それから1つだけですが,公衆電話が4階のフロアにございます。トイレは出口を出られまして右手の奥にございます。また会場内の両サイド,皆様方お座りの後ろ側になりますが,いまパーティションで区切られているところを外しまして,そちらのほうでドリンクサービスをさせていただきたいと思いますので,ご利用下さい。また,本日は会場を出られましたロビーが大変狭くなっていますので,できるだけこの会場の中でお過ごしいただければと思います。また,トイレなどで会場を一度お出になられた場合には,再入場の場合に胸にお付けのバッヂを確認をさせていただく場合がありますので,よろしくお願いいたします。また会場内は禁煙となっていますので,おタバコをお吸いの方はロビーの奥の喫煙所でお願いいたします。それでは20分ほど休憩に入らせていただきます。よろしくお願いいたします。

--休憩--


【事務局】それでは円卓の先生方もご着席になられましたので,本日の原子力政策円卓会議,後半の議論にむけて再開させていただきたいと思います。それでは茅先生よろしくお願いいたします。

【茅】それでは後半1時間20分ほどを再開させていただきたいと思います。まず,先ほど皆様からいろいろなご意見をいただいたわけですが,その中で1つ確か辻元さんからだったと思いますが「脱原発シナリオを提示すべきだ」というご意見があったのですが,実はこういうご意見は円卓会議,今年度になりましてからいままで5回,これで6回目をやっているのですが,5回の中で何度か出てきまして,われわれモデレーターもこれは大変重要な提案だということで重く受けとめています。この円卓会議7回目を終了した後,モデレーター側から提言を出すことにしていますが,その提言の作成の中では,この考え方を何とか考えて取り入れたいと現在は考えています。ということで,われわれ自身もそういう問題を非常に大事だと思っているということをご理解いただければと思います。

【石川(原子力発電技術機構特別顧問)】選択肢の1つとしてです。

【茅】それから,この後の議論ですが,皆様のご意見を参考にしまして,いま休み時間にモデレーターの間で協議をしましたが,そこで出てきましたのは,次のような問題にある程度絞って議論をしていただいたらいかがかということです。
 最初は,皆様の間からも何度かご意見が出たのですが,国会,あるいは国会議員の方々がこの原子力の問題について,具体的にどの程度どういう形で議論を展開すべきなのかという問題です。原子力政策の上に当然国会議員の方の意見が反映されることが非常に重要なわけですけれども,それをどういう形でやるのがよろしいのか。特別委員会というご意見もありましたし,あるいは別の形もあろうかと思います。先ほどどなたかからか自然エネルギー議員連盟という話もありましたが,私も先日依頼を受けまして,そこで話をさせていただきましたけれども,そういった議員連盟的なもの,原子力問題議員連盟というものも考えるのも1つの方法かもしれませんし,いずれにしましても,国会議員の方々が積極的にこの現在の原子力の問題に対して取り組んでいただくということが,われわれも大変重要なポイントだと思っていまして,それをどのような形でやるのがよいのか,当事者である皆様方のご意見をぜひいただきいというのが第1点です。
 2番目は,この原子力問題の1つのポイントというのが,ご承知の「もんじゅ」の扱いです。これについても皆様方からいろいろご意見が出ましたが,現実に存在している,止まっているけれどもそれの運転というか,維持するだけでかなりのお金がかかる。また,建設には非常なお金がかかった。ですからいずれにしても処置は早く決めるべきだという中村さんのご意見というのは大変もっともなことだと思うのですが,「もんじゅ」をどうするかという問題について,皆様方にご意見を少しいただいたらというのが2番目です。
 3番目はこれと絡んだ問題で,やはりわれわれとして処置をしなければならない重要な問題だと思っているのが,高レベル廃棄物問題です。好むと好まざるとにかかわらず,過去三十数年原子力発電所を運転して,その廃棄物が出ているということは事実です。これをどこかに処理しなければいけないということだけは確かでして,こういった問題をどのように考えていくのか。これについては,もちろん技術的にどうするかということについてのいろいろな提案がありますし,それについてのいろいろな対応の方策が議論されていますけれども,いまだ具体的に実行されるには至っていません。この問題に対してどう対処すべきなのかというのは,私は非常に大事な問題だと思いますので,この辺についての皆様方のご意見をいただきたいと思います。
 もちろんこれ以外にもいろいろ問題はあるかと思いますが,とりあえずいまのような問題を考えてみたのですが,順番でやってみたいと思います。と申しましても,いまの3つを全部片づけなければいけない,それ以外の問題はやらないという意味ではありませんで,皆さんのご議論の成り行きによっては,最初だけで終わるということもあるでしょうし,逆にその3つ以外のものにさらに議論を進めるということもあり得るかと思います。その辺は臨機応変にやらせていただきたいと思います。
 そこでまず,国会の中で,国会議員の方々にどう原子力政策に関わっていただくべきなのかという問題ですが,この問題について少し皆様方のご議論をいただきたいと思います。この後はもうどなたでもけっこうですので,挙手していただきまして,指名いたしますから,ご意見をいただきたいと思います。それでは最初にまず,加納さん。

【加納】自民党の加納です。国会でどのように議論するのか。実は私も参議院をやっていまして1年半近くになるのですが,議員になる前に,国会に私は参考人で呼ばれたことがあります。衆議院でも参議院でも呼ばれました。その時びっくりしたのは,大変失礼ですけれども,国会議員の方はほとんどわかっていないのではないかと言っては失礼なのですけれども,変な質問ばかりするわけです。新聞で見出しに載ったことだけを基におっしゃっているので,国会議員としての,次の世代に対して,われわれの世代が何をしなくてはいけないか,何をしてはいけないかといったような議論に基づいてエネルギーの選択を責任を持ってやるという議論ではなくて,例えば「環境とエネルギー」といった時に呼ばれたのですけれども「世界ではCOP3で6%とか7%とか5%と言っている。相場としては,君,いくらぐらいかね」と。このような感じですから,これは全然違うと思ったわけです。
 そういう意味で,私はエネルギーの問題は特定の科学技術だけの問題ではなくて,経済の問題でもあり,教育の問題でもあり,もっと言い換えれば,われわれの生き方,生き様,先ほども同僚の議員の方がおっしゃいましたが,われわれのあまりにも過剰すぎるライフスタイルをどう変えて,過剰からシンプルに,使い捨てからリサイクルへ,循環型社会を作っていくのにどのようなことをやっていったらよいのか,これはエネルギー政策の基本中の基本だと思います。ですから,省エネルギー,ライフスタイルの刷新,それからエネルギー変換効率の改善,これはまさに技術の問題です,それから原子力を選択する,あるいは選択しない,いろいろな議論があると思います。
 こういったことを含めて議論するのが,例えば文教委員会とか科学技術委員会だけでは狭いのかなと思います。議員になってから,私は参議院なのですけれども,科学技術と文教が一緒になった委員会があり,それから経済産業というのがあり,原子力は主として経済産業委員会で,私もそこに入っていますので原子力をずっと議論していますが,やはり議論をしていくと必ず必要となるのが教育の問題であるとか,建設,インフラの問題もあります。そういう意味ではいろいろな省庁の方に来てもらって議論をするわけですけれども,そういう意味では1つの方法は特別委員会を作って,そこでいろいろな省庁を連動したようなもので,大臣とか政務次官,総括政務次官とかいろいろ来て,バランスがあってけっこうですけれども,それで超党派で議論をする。
 私も国会に入って痛感したのは,イデオロギーの対立というのはかつてはありました。いまでもごく一部には,原子力は死ぬほどきらいという方と原子力しかないと思いこんだ両極の方はいますけれども,ほとんどの国民もほとんどの国会議員も,必要であることは間違いないのだけれども不安なところもあるなというのが,大体の大まかなところだと思うのです。そういう意味ではまさに超党派で,超省庁というか,省庁にわたって議論をすべき格好のテーマであると思いますし,特別委員会を作るということには,私は賛成であります。
 そこでは省エネルギーから新エネルギーから原子力から,いろいろなものを含めてパッケージの議論をしていきたい。エネルギーのセキュリティだとか,環境適合性だとか,長期経済性とか,そういうことを抜きにして,ただ原子力をやめるにはどうしたらよいのかというのは,言葉は悪いですけれども,幼稚な議論なので,こういうものを含めた議論をレベルの高い国会議員の議論をぜひやってほしいと思います。

【茅】はい。では,辻さん。

【辻】私も昭和46年に参議院に入ってから,一時落選した時がありますが,いま衆議院におりますが,22年ほど福井県という特殊な原発の 1,200万kWからの容量を持っているそこに,しょっちゅう問題が起こるという関係で長い間関わってきたのです。
 1つは特別委員会を作られるということは,それは結構だと思うのです。ただ常任委員会の場で,常任委員会というのは,やはり国会の機能から言うと非常な位置付けがありますし,ここでじっくり本当はやらなくてはいけないのではないか。ともするとこの常任委員会でわりと深く踏み込まずに終わる場合がありがちなのですが,これをまずどうするのかという問題があると思うのです。
 資料公開等,いまは情報公開というのでかなりできるようになりましたが,例えばわれわれが昭和49年か50年前後に大飯原発 100万kW というのが初めてですが,それらの資料公開を求めた時は,わら半紙に10枚ほどが資料でした。同じくらいのアメリカの発電所を国会図書館で調べてみると,青焼きにすると1mぐらいの写真の資料があるのです。それぐらい日米間においては資料公開の格差があったのです。本当に資料を要求してやると,いままでは,政府のほうは決して積極的に出そうとはしないです。とことん追いつめて,手を上げるまでいけば,だんだん出してくるのですが,大体そういう性格のものだった。しかし,いまは情報公開というものがあらゆる面で要求されてずい分進歩してきたと思うのですが,やはり国会の機能として,科学,原子力関係の資料を広く公開させて,与野党の議員の中,専門学者の中で共通の資料を持って安全問題を論議するということをすべきだという,国会の果たした機能は私は少なからずいままであったと思うのです。
 それから,どうしても安全問題を中心にやるものですから,政策の面は必ずしも十分でなかったと思うのですが,それはあまりにも次から次へと原子力の事故が多すぎるのです。どんどん出てくる。それに追われていた感がある。
 しかし,いまプルトニウムをどうするか,それからプルサーマルにせよ,高速炉にせよ,プルトニウムをどうするかという問題になると思うのですが,それは長計に関わってくるとすれば,政策論議をどうしても本格的にやらざるを得ない時にはいま来ていると思うのです。そういう意味で,特別委員会を作られるということは結構だと思うのですが,常任委員会の機能をやはり拡充する,拡充するというか十分に発揮させるということが大事ではないか。
 資料は,かつては専門の学者間における安全論議のために資料を要求した。あるいはわれわれの論議のために要求した。いまは国民が安心するために,情報は公開されなければ,原子力政策はなりたたないという時期に来ていると思うのです。そういう意味で非常に幅は広くなったから,国会はご批判はいろいろありますが,われわれは衆参両院を含めて,相当な役割を規制の面,あるいはチェックする面,資料公開の面では,果たしてきたということは事実であろうと思っています。以上です。

【茅】少し質問させていただいてよろしいですか。実は私は国会の構造というのはあまり詳しくないのですが,参議院と衆議院と,常任委員会というのは違う名前で違うものがあるわけでしょうか。

【辻】いいですか。

【茅】はい。

【辻】簡単にお答えしますと,委員会の構成が違うのです。衆議院はいま科学は科学技術委員会ですが,参議院のほうは文教と一緒になって,先取りをされたのでしょうが,文教科学委員会となっています。ですから,それらは,扱う問題は,原子力は具体的に参議院のほうでは産業経済委員会で扱うのです。それは参議院のほうで話してもらって。余分なことを言って,ごめんなさい。
【茅】わかりました。
【小沢(社会評論家)】先ほど辻さんが,いまもちょっと触れられましたが,長計の前提が大きく崩れて,これは見直しが必要だとおっしゃっていましたね。その一番大きな「崩れた」と断言できる点はどこだとおっしゃったのですか。

【辻】それは,長計はまず第一にFBR,高速増殖炉の開発によってプルトニウムを燃やして使う。それから新型転換炉を開発して使う。3番目にプルサーマルに使うとあったのです。ところが,新型転換炉は実験的にはプルトニウム燃焼では成果があったのですが,事実廃炉になる。そして大間に,下北半島に造る予定された新型転換炉はもう採算が合わないからというので,電力業界の意見でやめるようになったわけです。そうすると,新型転換炉の開発がとまる,FBRも50年先でないと実用化しないとなった時に,使用済み燃料を再処理すればプルトニウムは出てくるわけですから,それをどうするかということで,結局プルサーマルにほとんど使うことになった。そこに脇役のプルサーマルがいま主役に躍り出ざるを得ないという状況に置かれています。ですから,そこらに前提が大きく変わってきたのではないか。それらを踏まえた長計の見直しが必要であろうと思っているのです。

【小沢】それは可能なのですか。長計を大きく変えろという議論は国会でできるのですか。

【辻】それはできます。数がなければ決まりませんけれども,意見はできます。

【井上】国会の仕組みから言いますと,原子力と行政が既存の原子力発電所については,通産省,それから核燃料サイクルについては科学技術庁ということで,二元化されていたということがあります。したがって,エネルギー問題という角度では,大体商工委員会,それから核燃料サイクルは科学技術委員会ということで,国会の中も二元的に議論されてきた。法律もそれぞれにかかってきたという状況があるわけです。
 これが省庁再編で原子力行政については経済産業省に一本化されるということと,原子力安全委員会が総理府の所管で体制を作り直すということになるわけですから,国会の議論としては,経済産業省を所管する常任委員会できちんと議論をしていくというのが基本だろうと思います。
 ただ,長計について言いますと,これは閣議了解です。閣議で決定するわけです。ですから,国会がそこに関与するということは,これは議院内閣制ですから,与党の責任ということになるわけですが,これを国会の中で議論をして,国会の議論も参考にして閣議決定をするということは必要だと思いますけれども,国会の中で特別委員会で議論をしたから,それがそのままストレートに長計に反映されるということは,なかなかこれは難しいわけです。
 逆に言うと,国会で直接関与できるようにするためには,これは法律にならないといけない。そうすると,例えばこれはどこまでどのように国会の中で議論をするかということは別にあると思いますけれども,例えばエネルギー基本法のようなものを法律にするということがない限り,これは国会の中で例えば特別委員会を作ってもあまり,それは議論としては,例えばこういうところにおける議論と同じように,どの人がどういう考えを持っていて,どの党はどういう考えを持っているかということは明らかになりますけれども,それを具体的に国の政策として確立していくということにはなりません。議論という意味で言えば,常任委員会というところできちんと,例えば長計が出る時にきちんと議論をする,そういうことの積み重ねが一番よいのだろうと思います。

【小沢】でも,反映はしない。

【井上】議院内閣制ですから,与党の中できちんとそれを議論をして,それは当然長計に反映していくということになるし,それから国会の議論も当然それは踏まえて閣議決定というのはもちろんするわけです。国会がある意味で国民的なコンセンサスを作る,先ほど少しそういう議論がありましたけれども,国会の中でさまざまな意見が出て,国会としてのおおかたの方向性が出るということは,私は国民的なコンセンサスができるということだろうと思います。この原子力政策に関して言うと,やはり国会の中できちんと議論をして,各党のおおかたの方向が一致するというところまで議論をしなければいけないだろうと思います。

【茅】戸田さん,どうぞ。

【戸田】私は参議院の議員運営委員会の理事をやっていまして,いま検討の仕組みなどについてもお話がありましたが,私は国会というのは立法府であると同時に,行政の1つ1つを監視していく,立法府サイドから政府に意見を言うということももう1つの機能だと思っています。
 先ほど加納先生から特別委員会の話がありました。衆議院と参議院と,若干構成が違っていまして,委員会の名称が違うとか担当が違うとかということの他に,参議院には調査会というものがあります。これは,長い時間をかけて1つのテーマをきっちり詰めていくということをやっています。この調査会というのは,衆議院サイドでは今回憲法問題調査会というのを初めて作りましたが,参議院サイドにはいままで3つの調査会がありました。ですから,そういう調査会でじっくり問題を検討していって,最終的には決議にするとか,法案にするということを通して政府に申し入れをするというやり方があると思っています。
 常任委員会でやるべきだというのは,これはもう当然のことですが,他の法案に追われたり,それから休会になるともう動かなくなるわけですから,やはりこういう国の非常に重要な問題で,しかも長期間にわたって検討がいるというようなことについては,調査会を活用するのも1つの方法ではないかと思っています。

【茅】辻元さん。

【辻元】私は国会の科学技術委員なのですけれども,以前国会の委員会でこのようなフリーディスカッションのエネルギーに関しての場を持ちましょうという提案があった。結局やってみたら各党10分ずつとか,途中からは口を挟むなとか,ルールが決められてがんじがらめになってしまって唖然としたことがあったのです。いまのままだと国会での議論の仕方をだいぶ変えないとこんなことはできないのです。
 変える方法としては,1つは自然エネルギー促進議員連盟というのができましたが,ここで議論すると言うもの。自然エネルギー促進法を作ろうということで,私も入っているのですが,けっこう自由に,どんどん提案することはできる。勉強してくればくるだけそれが具体的な法案作りにプラスになるという,切磋琢磨する場であると思うので,この議員連盟を,すごく大事にしたほうがよいと思っているのが1点です。
 それと,では国会の中の常任委員会でどのように取り上げればよいかと言ったら,常任委員会の場合,各党の利害関係とかその時の政治状況によって,別のもめている法案があったら,全部こちらの委員会に影響してくる。エネルギーの問題はそういうものとは性質が違います。超党派でそれこそそういう政治状況に振り回されずに考えなくてはいけない問題だけれども,常任委員会になるとどうしてもそういう弊害が出てくる。
 そして,エネルギー長計そのものを閣議了解にしておいてよいのかどうか。法案1つ1つは,私たちはそれぞれのところで審議するわけです。ところが,エネルギーの一番根幹のこの計画自身が閣議了解になるものだから,これがひとたび国会承認事項ということになれば,国会の方も,うかうかしていられなる。非常に大事なことの信託を受けるわけですから。ですから,私はこのエネルギー長計をはたして閣議了解にしていてよいのかというところを見直すことで,国会の議論が活性化するのではないかと具体的には思います。

【茅】吉井さん。

【吉井】国会はやはり正規の機関です。ここをもっともっと重視して生かしていくことをやらなければいけないと,これは国会に身を置いている者が主張して実現しなければいけないわけですが。
 いまもお話に出ていましたけども,常任委員会が法律案審議中心にどうしてもなってしまって,ですから,法案以外に,さまざまな分野についてのチェック機能を果たさなければいけないわけですし,あるいはいろいろなエネルギーの長期計画その他の議論をどんどんやっていく,それは非常に大事なことですから,そういう点では,いまの常任委員会の中でどんどんやっていく。
 お話にありましたように,参議院と衆議院では,参議院は経済産業ですから,本来なら通産省,エネ庁が出ていって説明するところを科技庁もいっているわけですが,逆に衆議院の場合ですと,科学技術委員会と商工委員会では通産省を呼んでという2つの場があるのですが,私は両方に身を置いていますからどちらでもしゃべるのですけれども,科学技術委員会でやっても通産大臣も出てきてきちんと議論をすると,やはりそのような仕組みに変えていくこととか,科学技術委員会だから科学技術庁長官だけが出てきてやるということではなくて,関係にあるものについては大臣も出てきてきちんとやるとか,そのようにすれば,これは国会そのものがずい分この内容で深められるものになりますから,それは私たち自身の努力としてやっていきたいと思います。
 それから,いまも出ていましたように,まさに原子力長計などについて,国会の関わりのないところで議論されて,そもそも議論がまた別なところであって,そして原子力委員会などで議論をされて,そして閣議決定してとなってきて,国会が全く関わりがないわけですから,いくらその問題を議論しても,いわば聞き置くに留めるということにすぎない。このあり方をやはり,一番大事なところは,それはどうしてもこの法律案にしてということであれば,それは仕組みを法律案で変える方法と,長期計画そのものを法案化するような形とか,そこの一工夫をすることによって,やはり国会がきちんと議論をして決めていく。そうでないと,国会も関与して責任を持った原子力の長期計画とか,そういうものが出てこないという,いまのそういうところは私たちも,これは皆さんとご一緒に議論をしながら,改めていくようにしたいと思います。

【茅】加納さん。

【加納】ちょっと補足ですけれども,私は常任委員会で議論してはいけないということは言ったつもりはないのです。いままでお話に出たように参議院では省庁編成を先取りして経済産業常任委員会というのがありますから,そこでエネルギー問題は現実に議論をしています。けれども,衆議院のこともちょっと頭にあったものですから,商工委員会と科学技術委員会と分かれていますから,そういう意味では特別委員会のほうがよいのかなという気がしています。
 もう1つ大事な点は,調査会は確かに参議院にはあるのですが,調査会はしょせん調査なのです。私はやはり調査も大事だけれども,調査の上に立法活動をやる。立法活動のために行政も監視していく。こういう役割を国会が果たすという意味では,やはり法律,エネルギー基本法のようなものを議論する。こうなると,まさにこれは立法府としての面目躍如だと思うし,そこでいままで確かにエネルギーの法律はあるのですけれども,省エネ法だとか新エネ法だとか原子力についても規制する法律だとか,いろいろなものはあるわけです。電気事業法とかガス事業法。言葉は悪いけれども,全部縦割りなのです。こういったものをパッケージにして,そもそもエネルギーの選択として,哲学として何を考えるのか。この間,われわれは中小企業基本法というのを改訂したわけですが,同じようにしてエネルギーについてもエネルギー基本法というようなものがまずあって,そのベースの上に省エネ,新エネ,原子力,いろいろなものを位置付けていくということ,これが大事だと。それらをどういう政策手段で誘導していくのか。いわゆる国民的な合意というものは,国会の場で,国民から選ばれた国会議員が決めていくというのが大事だと思います。
 もう1つだけ追加すると,原子力長計を閣議了解ではなくて,国会の決議にするとかいろいろなご意見がありますが,これも議論をしたらよいと思うのですが,私の意見は閣議了解事項だと思っています。なぜならば,これは執行に属する部分で,執行は私は行政の仕事であり,閣議である。ですから,これをついて,監督するのは国会で十分に呼び出したり,あるいは原子力委員の方とかにおいでいただいてお話を承るとか,いろいろと意見交換をするというのはもちろん大事ですけれども,われわれは国会議員としてはあくまでもそれは行政を監督するというところの仕事であって,われわれの基本任務はエネルギー基本法をいまこそしっかりと作るべきだと。そして各個別法の間でぎくしゃくがあったとすれば調整できるような,そういうパッケージのものを,これは超党派でまさに議論するのに一番ふさわしいと思うのです。それをやるとすれば特別委員会かなと思っただけです。

【茅】中島さん。

【中島(元中央大学教授)】一番最初に井上さんがおっしゃったのですけども,例えばプルサーマル問題に非常に関係のある核拡散問題というのは,これは本来外交的努力で私はかなり解決するべき問題だと思うのです。ところが,日本では,特に外務省が,はっきり言えば原子力と関係ないようなことになって,立ち入れないのか何か知りませんが,この方面の議論がほとんどないことを先ほど指摘されまして,外交的努力を改めて行うべきとおっしゃったのですけれども,それをどうやってやったらそうなるのか。つまり,結果だけが,技術的にプルサーマルだとか何とか言って,プルトニウムを処理することだけに,私の言葉を使えば,日本の政策は矮小化されてしまっている。そのように思っていたものですから,大変適切なことをご指摘いただいたと思って拝聴したのですが。

【井上】いまお話があった通りの問題意識です。要するに核不拡散の立場から余剰プルトニウムを持たない,それが世界に対する日本の平和利用の証しであるという前提でこれまですべて計画が立てられているわけです。しかしFBRが実用化の見通しについて不確定な状況になった,プルサーマルについても,延期を余儀なくされているという状況で,とにかく燃やさなければいけないということで,何かそういう切迫感で,拙速にことを運ぶことではなくて,核不拡散という問題は,日本の国の国際的な信用度という問題ですから,それはそれで別立てで外交的努力をきちんとした上で,エネルギー政策としてきちんとプルトニウムの問題については扱うべきである。そういう整理がいま必要なのではないか。こういう問題意識です。

【辻】ちょっとそれについて。

【茅】辻さん,どうぞ。

【辻】日本とか欧州の諸国は,商業用の発電所の使用済み燃料を再処理をして,プルトニウムを取り出す。ここからプルトニウムが出てきます。ですから,中間貯蔵をやって,先に延ばす道もあるのです。今度はアメリカとロシアはサート1のように,核削減条約を結んで,それぞれ兵器の弾頭から50トンずつのプルトニウムを取り出して,軍事転用以外に置くと決めていまやっているのです。私もアメリカもロシアもこの間,冬と夏と見てきましたが,われわれは発電所のほうから入ってプルトニウムをどうするかにぶつかる。それから,核削減のほうから入ってもやはりプルトニウムをどうするかという問題にぶつかるということで,ロシアもアメリカも,初めはアメリカのほうはカーター以来の大統領の方針でプルトニウムは燃やすのに使わないとやっていたのです。しかし,ロシアのほうが,これを資源として考える。あるいは燃やさなければプルトニウムの組成が変わらないから,軍事転用の危険があると。こういう点からそれを譲らない。アメリカとロシアは,結局アメリカもMOXで一応は燃やす道をオプションで採っている状況です。これを見ると,どちらから入っても,やはりプルトニウムをどうするかということにぶつかっていくのではないか。
 そういう意味で,われわれは技術論をやっていたにしても,いまプルトニウムの問題になると,世界の核拡散をどうするのか,それから大量のプルサーマルなどをやることによって,日本がプルトニウムの大量消費の社会の引き金を引くのかどうか,そういう問題がわれわれの分野からもやはり論議をし,検討する時に来ていると思います。

【茅】中村さん。

【中村】先ほどエネルギー政策についてお話がありました。いまは行政がエネルギー政策を決めていますね。しかし,それは立法府,国会が決めたらどうだというお話でした。どちらがよいのかということなのですが,私は国会のほうが議論に透明性があると思います。長計などでも議論はすることになっていますが,実質は分科会でやりますから,ほとんど非公開に近いような状況で,国会のほうがやはりマスコミの注目度も高いですし,私は国会で議論をして,国会が決めるということのほうが,透明性があってよいと思うのです。
 ただし,政治家は,原子力を推進したいと思っている人でも,次の選挙で原子力をあまり前に出すと落選するかもしれないと心配になる場合がある。そうすると腹の中で思っていることと違うことをおっしゃる。現実にそういう方があったわけですし,外国でもあります。これは仕方がないという面もあるわけですが,しかし,何かその時その時の時代の流れを読んで,フラフラされると困るわけです。エネルギーの問題というのは日本の存亡にかかわる長期的な重要問題ですから。ですから,私は目先の選挙で党の主張や政治家の意見が左右する心配が薄いのならば,国会で議論をして,国会がエネルギー政策を決めるということはよいと思います。

【茅】吉井さん,どうぞ。

【吉井】私はいま中村さんのほうからお話がありましたように,これはやはり基本的に国会で議論をして決めると。確かに,おっしゃったように選挙を心配するとかいろいろあるかもしれませんが,結局それは長期的には国民の皆さんが判断して,そこだけでフラフラすると政党として支持を受けなくなるわけですから,短期的にはあり得るかもしれませんが,やはりそれは長期的な問題としてエネルギーの根幹に関わる問題ですから,国会でよく議論をして透明性のあるところできちっと政治的に決定していく。そのようにするべきだろうと思います。
 なお,もう1つありましたプルトニウムに関する問題で,かつて外務省の研究された文書,これは内部文書ですが,日本は核兵器を持たないと,しかしプルトニウムを持ち核技術を持つことができるのだぞという,海外から掣肘を受けずに核抑止の力,核兵器を持っているのと同等の力を持つという方向を,外務省などでは内部的には検討されたと,そういう文書もあります。ですから,私はこれは科学技術委員会でのエネルギーでの議論とともに,このような問題についても,その場合は外務省の人も呼んだりして,透明性のある議論というものを国会でやって,国際的にもプルトニウム問題で不審を受けないという取り組みが大事だと思っています。

【茅】井上さん。

【井上】原子力長計を法律にすべきか,あるいは国会承認事項にすべきかという問題ですか。先ほど加納さんからご指摘があったように,エネルギー基本法を作るとすれば,その中で原子力の位置付けというのは出てくるわけで,長計は5年ごとに見直すわけですから,そういうことから言えば,行政の権限に属することなのだろうと思います。その辺をちょっと分けて考えないと,原子力だけ取り出して,原子力長計だけ法律で国会承認事項ということになると,では日本のエネルギー政策全体はどうなるのだということになりますから,その辺は立て分けて考えたほうがよいのではないかと思っています。

【茅】辻さん。

【辻】原子力長計の問題ですが,政府のを見ていると「大きく見通しが変わって狂ってきた。だから見直しをしなければならない」と,そこをなかなか認めたがらないのです。「プルサーマルは,ちゃんと長計に初めから書いてあります」と。「後から出てきたではないか」と言っても,だからそうなると「見通しが狂ったのか」と言うと,これは否定しない。だけど「長計が間違ったか」と言うと,それは「そうではない」と。こういう論議です。
 ですから,なかなか原子力委員会だとか,あるいは他で率直なそういう論議がどれぐらいされるのかという点については,やはり疑問を持つ。そうなると,国会の場で論議するのがよいと思う。ただ言われたように,皆生身の議員ですからいろいろ難しいこともありますが,われわれがやってきた中では,それは議席をかけるぐらいの覚悟をしないと,原子力問題は本当は踏み込めないと思います。
 ですから,そういう方がそれぞれ皆いらっしゃるのではないかと思いますから,国会の論議に本格的にやるということ,それは法案として出るのもあるし,それから国会の承認事項として出す場合もあるし,とにかく国会が何かの関与をするということをきちんとやらないと,意見だけを言って,注文をつけて,あとは全部執行機関のほうでやるというのでは,もうここまで来るといけない,そういう感じがします。

【茅】では,吉井さん。

【吉井】これは原発の見通しと,それから実績値なのです。これは1983年の見通しが一番上なのです。それに対して,90年見通し,94年見通しとだんだん年代を先送りして,スライドさせて,しかしなかなか勾配はあまり変えようとしないのですが,実績値は下なのです。明らかに乖離しているわけです。ですから,こういう点では,やはり予算だって,単年度ではありますが毎年国会できちんと議論して,大きな赤字が出れば,それはどうなのだと大問題になるわけです。そういう点ではエネルギーの長期見通しなどについても,きちんと議論をして,大きな乖離がある時には,それはなぜなのかとか,どこをどう見直していくのかとか,将来問題についての議論というものを,やはり国会できちんとするようにしないと,私は,これは国会で議論をして決めていくという仕組みに変えていくべきものだと思います。
 なお一言だけ付け加えますと,この長計の前提として,かつては高度成長の時代は,エネルギーの需要も,水の需要も,それから都市計画ですと人口の伸びも,全部右肩上がりの一直線にやってきて,とにかくこの直線に合わせてすべての計画はしていくというやり方をやってきたわけです。それはいま,高度成長の発想というのは崩れてきているわけですし,そういう中でエネルギー長計,原子力長計などについても,根本に立ち戻った議論というのをやはり国会できちんとやって,そして長期計画を定めていくという,これが私は本来の筋だと思います。

【茅】辻元さん。

【辻元】私も国会で議論をして,いままでの長計では,いろいろ言ってもあまり反映されないというのは皆わかっているわけです。では,発想を変えた長計を議論できるのかと言ったら,やはりずっといままで官僚の人たちが,1つの考え方に基づいてやってきて,なかなか難しい。でも,社会は多様化して,社会的な状況も全体的にふまえてからエネルギー政策を考えなければいけない。いままでのこういうラインで来ていたのを,社会的にいろいろな事故もあったし,不安もあるから変えようと言っても,官僚のみなさんは自分たちでやはり変えることが不可能。非を認めなければならなくなるから。そうするとよく言われるのは,「国会の方々が変えろと言われたから,仕方がないから変えます」などと言いながら,内心「よかった」と喜んでいる人もいるのです。本当は自分たちで変えたいのだけれども,なかなか方向転換できない。ですから,こういう方向に方向転換をしていいのではないかというようなことを,いちいち国会議員の口を借りて言わせるために説明に来られる官僚の人もおられるわけです。
 そういう意味で言えば,私はやはり,国会で議論を活性化していくというのは,急に何か国会議員が自分たちの意図で党利党略でなんでもかんでも変更していくというようにもならないと思いますので,長計を国会承認事項に変えたほうがよいというのが1つです。
 もう1つ先ほど外交的な視点ということで,もう1つこのエネルギーの問題で,例えばMOX燃料の輸送,それから再処理を委託する場合の各国との条約とか,これは全部外務省が処理しているのです。外務省が例えばフランスからベルギーに持っていく場合は,ベルギーとの取り決めの外交上の文書とか,たくさん関係してこのエネルギー政策が成り立っていますので,そういうものを総合的にやはり点検する必要がある。
 先ほどの話にちょっと戻るのですが,特別委員会がよいのか何かはわからないのですけれども,やればやるほど奥が深くて,多方面に渡るものをこのまま,それは外務省で,これは科学技術庁でとバラバラにやっていくことは,これだけ海外との関係も深い中でのエネルギー問題になってくると,危険ではないかという危惧を感じるのです。何かよい方策がないか,今日もぜひ他の方の意見も聞きたかったのです。

【茅】はい,小沢さん。

【小沢】私は先ほど中村さんがおっしゃったのと,ちょうど逆のことを考えているのです。中村さんは「原子力のことを言うと落選するかもしれないからと思って,本当は賛成なのだけれども表に出さないで,反対を言う」とおっしゃった。私はまだ反対を言うならよいけれども,本当はちょっとわからないのに,後押ししてもらったり,選挙資金が潤沢になるために,本当は批判しなければいけないところを,黙ることで行ってしまうということがいままで多かったのではないかと思っているのです。
 私は納税者で,独身ですから,国会議員の皆さんはご存じでしょうけれども,本当にえらい税金を取られますから,無駄にされることにすごく腹が立つわけです。ですから,ちゃんと使ってほしいと思うので,どこかで議論をちゃんとしてほしいと思う。国会では何を考えているのか。
 先ほど井上さんが,井上さんはいま与党でいらっしゃるけれども,もう新規立地は困難だし,電気会社の経済性の点から見てもこれから再検討が必要ではないか。それから廃棄物に関しても国民の理解を得ることはややちょっと難しいのではないかというようなことをおっしゃっている。こういう議論というのは,私たちには聞こえてこないのですよ。私は2年間この円卓会議をやったのだけれども,国会は何を考えているのだろうか。例えば先ほどひと月に 8,000万でしたか,あれだってどうするのだというのも,ここでは何回も何回も言っているけれども,あんなに国民の税金を使っていくのに,皆なぜ黙っているのと,これはすごく腹が立つわけです。ですから,見えるところで議論をしていただきたい。
 それでどれを選ぶかはやはり国民が選ぶので,議論が見えてこないというのが一番恐いところなのです。賛成しても反対しても,それは自分の考えでやって落ちてしまうのは仕方がないし,黙っていて当選するというのもちょっとずるいと思うけれども,何か少なくとも考えておられることは見たい。だから,特別委員会だろうが調査委員会だろうがよいのですが。議論をしているのが見えるのは「朝まで生テレビ」ぐらいですよ。あれではやはりちょっとまずいと思う。

【井上】誤解のないように申し上げようと思うのですけれども,私は先ほど言いましたように,エネルギー長期計画,原子力長期計画を見直さなければいけないのではないか,特にいま最重要な課題は廃棄物の処理体制の確立ということ,そこに総力を挙げるべきではないかというのが私の基本的な考えです。
 いま小沢さんがおっしゃった問題に関して言いますと,国会の中で議論は行われているのです。いま私は科学技術委員会ではありませんけれども,大体皆さん科学技術委員会の中で相当精緻な,それから突っ込んだ議論も行われているわけです。われわれがここで言っていることは委員会の中でも主張しているわけで,それが外にうまく発信されていかないということが問題なのだろうと思います。
 例えば国会のテレビで,委員会はほとんど,全部オープンになっていますし,それから最近Cネットで大体の委員会はほとんど24時間体制で外に出ています。国会の中でこういう議論がされていますよということをもう少しPRし広報することが必要だとは思います。議論が行われていないことはない,しかも別に隠しているわけではない。そこのギャップがあるのだろうと思います。

【小沢】お話ししていれば,議論があるだろうなということはわかりますからね。

【茅】辻さん。

【辻】国会の議事録を,皆さんどれぐらい関心を持って読んでいらっしゃるかわからないのだけれども,あの中に,法案の審議関係,例えば中間貯蔵をやっても,動燃の法改正案でも,十何時間か,二十何時間かやっているわけですから,その中身はそうとうな踏み込みをやって論議しているのですよ。ですから,国会で何をやっているかわからないとおっしゃるけれども,議事録を読んでいただければ,およそ何をやっているかということはわかると思うから,ぜひそれを一つ読んでいただきたい。

【茅】辻元さん。

【辻元】確かに議論はしているのですけれども,エネルギー政策全体をどのようにすればよいかという視点での議論は,私は不十分だと思うのです。この間,科学技術委員会は事故処理委員会ですよ。事故ばかりあるのです。例えば,「もんじゅ」の報告書が出る日に,アスファルト固化施設が爆発してしまったとかで,事故対応に追われまくっています。それはそれでやらなくてはいけないけれども,エネルギー全体をどうするかという議論に至らない。
 例えば温暖化の時はやったのですよ。地球温暖化防止会議があった時は,超党派で,いろいろなアイディアを持ち寄りました。アイディアを10個ずつぐらい持ってこようと。どういう省エネ策があるか,小さいものから大きいものまで持ってこようと。それでいろいろな省庁の人に来てもらってやったら,かなり出るのです。そういうものを何か非公式にでも作りたいなと思って。
 例えばその時に,私は公立学校を全部ソーラーシステムで電力を供給するようにしようと提案した。子供の教育にも,やはりエネルギーとは何かを教えるのにも役立つ。それから日本国中にある郵便局全部をソーラーにして,町には必ず見えるところにソーラーがあるような,何かそういう目に見える政策を実現しようと呼びかけた。そうすると郵政省が関係してくるし,文部省が関係して,ブワーッといっぺんに関係省庁が増えるわけです。でも,そういうアイディアを総合的に出しあえるような場を,国会議員が率先して作っていかないと。
 辻さん,議事録は読まないですよ。読んでも,あまりおもしろくないし,何か夢が広がらないというか,だから,工夫が必要だと思います。

【辻】それに,簡単ですが,われわれのずっとやっている議事録などは,今度は新聞記者の皆さんとか,いろいろな関心のある人が読むと,やはり国会はここまで踏み込んで論議しているかということを理解していただく方もあるので,無味乾燥な議事録ではあるけれども,ぜひ読んでいただきたいと思います。

【茅】はい。では,マスコミ関係ということで,鳥井さんどうぞ。

【鳥井】国会か行政機関かという話がずっと続いていたのですが,私が1つ感じますのは,専門性のようなものがあるのだと思うのです。例えば「原子力発電所の安全性をどのぐらいに設定してほしいです」というのは,これは原子力の専門家の仕事ではないのです。われわれ市民が「このぐらいは安全にしてよ」というところなのです。ところが,いままでは原子力専門家が「このぐらいにすればいいだろう」と言ってやってきたところなのです。そういう部分というのは大いに国会できちんと議論をしてほしいわけです。
 それをではどうやって実現をするのかという話は,これは専門家ではないとわからないわけでして,これがよいとか悪いとか素人が言ってもしょうがないわけでして,そういう点については,やはり専門家の方たちの会合というのも必要なのだろうと思うのです。
 ですから,市民の側の社会の問題を専門家があまり勝手に決めないでくれという意味では国会がおおいにやってほしいし。では,技術の本当に専門的なことは,全然技術と関係なく言われても困ってしまうよと。例えば太陽電池の発電効率を 100%にしろなどと言ったって,これは技術の応えようがないわけでして,そういうところの仕分けというのをして,行政と国会との役割分担というのがあるような気が,私はいまのお話を伺っていてしたわけです。市民の側がものを言わなすぎた,専門家が自分の専門でないことまで決めすぎたというのが,私はいままで反省という感じがします。

【茅】吉井さん,どうぞ。

【吉井】長計をまず政府が決め,それに伴って毎年毎年予算化されてきますね。例えば来年の概算要求で言うと,原子力関係予算が 4,843億円で,新エネルギーが 914億円と。1992年からトータルしますと,来年の概算要求を入れて,原子力関係が大体4兆 2,000億円なのです。

【小沢】1年間でですか。

【吉井】いえいえ,92年度からトータルで,来年度概算までの。それで新エネルギーが 5,000億ですから,原子力関係は8倍です。確かに毎年毎年の予算は国会で議論をするのです。予算が通ると,官僚の皆さんのほうからすると「国会の先生方が多数でお決めになったことですから」というので,そういうことで官僚のほうは免罪されるわけです。こういう姿はよいのかというのは,やはり根本的にあると思うのです。
 これはいろいろな分野であります。ちょっと原子力と違う例だけ1つ挙げて申しわけないですが,3年ほど前に諫早干潟の水門を閉め切った時に,これはずい分農水省の幹部と話をしました。そうすると,「もう実態に合わないではないか」と議論をしても,「しかし,国会の先生方が予算を通してお決めになりました」ということで,いかに無駄な公共事業とわかっても,絶対にやめようとしない。
 ですから,私はそういう点では原子力の長期計画の問題などについても,そこをうんと国会で議論をして,そしてその上に立っての,あと執行の面になると,まさにそれはある意味では官僚の皆さんがこの分野でこういう予算を組んで出したいとか,それは政府予算を作っていく上で関わっていくでしょうけれども,それはそれでまた国会で議論をするのですが,その大元になるところは,国会で議論をしないまま行ってしまうというところに,しかもそのことによって官僚が免罪されてしまっている。私はそれで官僚が悪いというような議論に短絡的に行ってはやはりまずいと思っているのです。その点では国会の責任,国会の関わりが非常に大事だと思っています。

【茅】ありがとうございました。実は,いま時間は5時でして,1時間ほど経過してあと30分しかないのですが,この国会でどうすべきかという議論は,大変に皆さんから活発にご意見をいただいたのですが,ここで皆さんに伺いたいのですが,先ほど申し上げたように,当初一応3つ,特に後半は「もんじゅ」と高レベル廃棄物の問題を考えたのですが,30分しかないですけれども,それに切り替えて議論をするのがよいか,あるいはこの議論をどうせだから徹底的に最後までやられるのがよいか,どちらをお選びですか。これはむしろ単純に挙手していただくほうがよろしいと思うのですが。パネリストの方だけで,8人の方です。このまま続けたいという方は手を挙げていただけますか。では,切り替えるということについてご賛同の方は。(後者に挙手多数)では,よろしいですね。
 そうしますと,いままでのご議論は大変いろいろいただいたのですが,基本的なことと言えば,行政府と国会という立法府の両方でこういった政策の問題は決まるのだけれども,もう少し国会がコミットすべきである,もっと国会の中で議論もすべきだし,いろいろな形でのコミットの仕方があるということについては,どうやら皆さん同じようなご意見であったと思います。
 ですから,われわれとしては,そのことを体していろいろ提言の中にも反映したいと思いますが,皆様方もぜひその精神を今度は国会の中に生かしていただければと思います。

【石川】この間JCOの事故がありまして,そして10kmの避難についてですが,内閣が後になってオーバーと言われるくらいやるとお話になられましたね。それまでは地方自治体のほうでいくらマイクが怒鳴って「事故があります」などと言っても,皆さん外に出て遊んでいたのが,夜の10時頃ですけれども,あの放送があって,あくる日になると皆シーンと静まりかえって家に閉じこもっているのですよ。私は10㎞圏の住民です。政治家の皆さん方はよく冗談で,「いや,われわれはあまり信用がないから」などとおっしゃっておられますけれども,政治家の方々の信用というのは,それほど強く「大きい」のです。
 したがいまして,ぜひエネルギーの議論も十二分に国会でやっていただきたい。原子力の問題もいろいろな問題がありますけれども,政治家が活発に議論をやっていただければきわめて国民の方に納得していただける道ができると思います。ぜひ議論を活発に,政府か国会かというのは私は興味はありませんけれども,ぜひやっていただきたいと思っています。

【茅】ありがとうございました。それでは,先ほどお約束しましたように,後半の問題があるのですが,これは予定を多少変えまして,「もんじゅ」だけということになりますと後が消えてしまいますので,核燃料サイクルの問題,これには「もんじゅ」の問題も当然出てきます。それと同時に高レベル廃棄物といった問題,中間貯蔵の問題すべて絡んできますので,こういった側面について皆様方のご意見をいただきたいと思います。
 特にわれわれとして一番関心事は,先ほど中村さんがおっしゃいましたように,「もんじゅ」をとにかく早く決着をつけてほしいということでして,そういったことについてどういう考え方があり得るか。実は先ほど皆様方からご意見の中にも,推進すべきだ,つまり再開すべきだというご意見と,そうではないご意見と,いろいろありましたけれども,ここでその辺のことについてご議論をいただければと思います。ではまず加納さん。

【加納】発言させていただく前に,先ほどの議論で言いっぱなしになるとまずいので1つだけ言わせて下さい。新エネの予算について吉井さんから数字が出ました。おっしゃる通りです。原子力対新エネルギーは予算は大体いま5対1です。ところが,2010年になって,思いっきり新エネを拡大した,最大新エネ拡大シナリオにおける電力量の比率をみると,原子力対新エネは90対1であるということも,同時に申し上げておかないと不公平になると思います。90対1のものに対して,現在5対1で,つまり新エネは不当に冷たく扱われているのではないかというのに対して,必要以上に厚く遇されていると私は言いたい。
 また辻元さんのご発言の中で,ソーラーを子供に見せる,これは私は賛成です。加えて原子力も全部子供に見せたいと思います。これを付け加えておきたい。
 そして,茅さんのお話のFBRに入りますが,先ほど茅さんのほうから「日本のことだけ議論をするな。世界を見ろ」と言われました。それの私の答えです。
 21世紀の後半の世界はどうなるのか。間違いなく起こるのは発展途上国の人口がますます増えて9割を占める。彼らのエネルギー原単位が上がる。原単位が上がって人口が増えるから,掛け合わせたエネルギー需要は膨大に増える。これは当たり前で,先進国をはるかに上回るエネルギー需要になります。
 そして,彼らが化石燃料を使っていく限り,化石燃料の値段の逼迫,例えば石油とか天然ガスの枯渇だとか需給の逼迫,値段の高騰,そして石炭を使うことによる環境問題,地球温暖化の問題の顕在化,こうなると私は原子力シフトが起こってくる可能性が非常にあるのではないかと思います。
 現にいま世界で原子力はやっていないと言うけれども,とんでもないので,運転中は32ヶ国,建設計画中は20ヶ国あるわけです。例えばアジアだけを見ても,これから建設するあるいは計画,いま建設しているものが45基, 3,400万kWも現実にある。中国で16基,これは計画中も入っています。インドも計画中を入れて16基,韓国6基というように,原子力はどこもやっていないのではなくて,やっている。しかも途上国でどんどん出てくるというところで,これからウランは,いまは確かに需給は安定していますが,必ず逼迫してくる時期が来るだろう。となると,21世紀の後半世界でウラン資源の有効活用は必ず大きなテーマの1つにはなる。その場合にFBRは重要な選択肢の1つになる可能性がかなり強い,と私は思っているわけであります。
 先般アメリカに行きましたけれども,やはり同じ問題意識があって,「もんじゅ」を動かす・動かさないという議論はアメリカでは直にはありませんでしたけれども,私の意見を申し上げさせていただくと,将来必要となるFBRとすると,その第一歩である「もんじゅ」を,少なくとも安全審査をスタートさせることを,私は提案したい。すぐに動かすとは言いません。安全審査を,先ほど他の委員も言われたように十分にやって,そして動かしてだめなものならばだめ,必ず成果が出ていますから,成果があるものは成果がある,そして同時に合わせて金属冷却を含めて,ナトリウム以外の金属冷却とか,いろいろな方法を含めて研究開発を進めていく。
 ですから,「もんじゅ」型しかないというのは私は反対です。しかし,「もんじゅ」をやめてしまえというのも反対です。慎重の上にも慎重を期してやっていくべきだろうと思います。
 よく「出羽守」と言いますけれども「アメリカではやめている。イギリスではやめている。では,では」と言うので「出羽守」と言うのですけれども,これはFBRとか何かは出羽守ではいけないと思います。やはり日本はよその国がやらなければやらないのではなくて,よその国がやらなくても,茅さんがおっしゃったように世界の,未来の世代に向けての責任として,日本の持っている強い技術であれ,資金であれ,これを使えるのが日本しかなければ,日本がFBRのトップリーダーとなって,世界に貢献するという道も十分に考えられるのではないかと思います。ありがとうございました。

【小沢】そういうちゃんとしたものがバケツでひっくり返ってしまうから,問題になっているのですよ。原子力政策に皆が悩んでいるのは,おっしゃる前段階の理屈はよくわかりますよ。大演説は。でも,バケツをどう考えるのですか。

【茅】ちょっと,小沢さん,発言するのに手を挙げて言って下さい。

【小沢】はい。ごめんなさい。あまり,何も知らないみたいに大演説しないで下さい。

【茅】はい,どうぞ。辻さん。

【辻】いいですか。福井県の知事が「『もんじゅ』の再開論議をする前に,まず長計の中において『もんじゅ』をどのように位置付けるか。こういうことをきちんとやってもらわないといけない」ということを,非常に強く言っていますね。それは三県知事,原子力の発電所が集中しているのは,福井・福島・新潟ですから,その三県知事の提言も「長計の見直しの中にこういうものをどう位置付けるか明確にしてくれ」と言っているのです。それが1つです。
 それから,地元の自治体,責任者として知事の事前の了解がないと,そう安全審査にも私は入れないと思うのです。ですから,そういう意味では地元知事の了承ということが非常に大事なのです。ですから,その場合に,いま言った位置付けと,もう1つ,私には地元になりますが,考えてみると,先ほど申し上げましたが,やはり報告書を見ても「原因追及に挑む」と書いてあるけれども,行政が,科学技術庁や原子力安全委員会がああいう審査の過程,あるいは事故が起こる過程で,責任を取らなくてはならないところがいろいろあるはずなのです。そういうことは,ほとんど報告書を見ても触れられてはいない。そこまで踏み込んだ総括というか反省がないと,いかないのではないかというのが1つです。
 それから,この間私もロシアに行って,物理科学研究所や原子炉研究所の所長さんとも会う機会があって論議をした時に,非常に関心を持っているのは,日本の「もんじゅ」で起きた界面腐食という新しい問題です。これに非常に関心を持っている。しかし,いま報告書を見ると,第一次チェック機関である科学技術庁と,核燃サイクルは一緒ですが,そこの報告,見解と,それから原子力安全委員会の専門スタッフによる見解と食い違っているのです。そうすると,こういう新しい,いま「もんじゅ」の高速増殖炉の中で一番問題になるような新しい界面腐食という問題について,第一次と第二次のチェックするところが見解が違うのでは,国民としてはやはり安心を持てないと思うのです。ですから,そういう問題をきちっと再実験等によって,見解を統一してやるということ。そういうことをやらないと,なかなか現実に「もんじゅ」をいま抱えている地域の皆さん,特に知事あたりの理解も難しいのではないかと思うのです。
 ですから,再開問題を論議する前に,もう少しやらなくてはならないことをきちんとやることが大事ではないか。私はそう思います。

【茅】では,吉井さん。

【吉井】3つのことに触れたいと思います。先ほど加納さんがおっしゃったエネルギーの問題について,やはり全体としての核燃料サイクルを考えるときの基本になりますから。2010年のお話があったのですが,実は私は新エネルギーというのは太陽光だけを考えているわけではありませんで,エネルギー転換効率をうんと高めることとか,これは例えば現在火力,五十数%もありますが,かりに50%の比較的高いものに合わせるとして,大体10%あまり石炭,LNG,石油とそれぞれ高めることができますが,石油は実際なくすという方向にいま向かうわけですが,この総火力だけで考えると,個別に50%に上げていくと,2010年に石油火力の 677億kWh をなくす,それだけ下げるということにしても,まだ全部補って,まだ十分それに匹敵するぐらいの新しい電力は生まれてくるわけなのです。それは原発増設を抑止する力になります。
 それから火力プラス原子力で10%高めますと,これは原子力は大体34%ぐらいのエネルギー転換効率ですが,平均的な原発の34基分が新たに電力が生まれる。これはエネ庁資料から計算が出てくるものです。
 次に核燃料サイクルということで考えた場合には,私はここで1つ大事なのは,かりに高速増殖炉が成功したとしても,すべてのシステムを含めてうまくいったとして,これは大体寿命は1000年です。21世紀,22世紀のお話がありましたが,それは私は大事なのですが,同時に人類社会というのは,例えば鹿児島の上野原遺跡からでも1万年の歴史を持っているわけで,今後数億とか数十億年の人類史上の可能性を持っているわけですから,長い目で見たときに,高速炉は成功したとしても,やがて人類史からすれば非常に短い期間しか持たないわけで,もっと新たなエネルギーというものをやはり考え出していかなければいけないものだと,そういうスケールの大きな視点に立ったエネルギーというものを私は一面考えなければいけないと思います。
 3つ目の問題は「もんじゅ」の扱いですが,「もんじゅ」はやはり中止をする。それから,高レベル廃棄物などについても,埋め立て処分という結論を簡単には出さない。つまり,それはサイクル全体としてまだ本当に未成熟なわけですから,そういう中で例えば高速炉にしても,これは鳥井さん,中村さんの非常に専門的に取り組んでいらっしゃることでもありますが,例えば高速炉の中に増殖しない小型の高速炉の考え方とか,そういうものもあるし,それから金属冷却の金属としてナトリウムがよいのか,あるいはもうすでに大体終わった感じですが,その他の金属,あるいは溶融塩炉も含めて,もっと広い基本的な研究というものを,いつのまにか「もんじゅ」のタイプになってしまったわけですが,もっと基本的な研究があるでしょう。高レベルの廃棄物処分については,やはり基本的に高レベルのものを増やさない,生み出さないというそういう技術をどうするのか。これはプルサーマルその他をやればやるほどどんどん増えるわけなのです。それを増やさないということと,もう1つはやはり短寿命化をする研究というものを本格的に取り組んでいかないと,日本の場合には地震国でもあり,プレートのずい分重なった所ですから,本当に安全な所というのを,2万年,3万年先を見通していま言えるのかという,そういう基本的なところに立ち返っての検討というものが必要だと。そういう点では「もんじゅ」は中止して,基本に立ち返った基礎的な研究から進めていくべきであると思います。

【茅】いまのお話は,ちょっと私はわからなかったのですが,確かに短寿命化といった,要するに消滅処理といった方法での研究というのはやっているわけですけれども,少なくともいまある高レベル廃棄物がなくなるわけではないわけです。したがって,先ほどおっしゃった埋め立て処理を単純にやるべきではないというと,答えは何に求めるとお考えなわけですか。

【吉井】私はもう少し時間をかけて,埋め立て処分の対象になるものについて……。

【茅】そうすると,しばらくの間は貯蔵して処分を待つという意味ですか。

【吉井】とりあえずはそれでないと,技術的な結論は出てこないだろうと思っています。

【茅】わかりました。辻元さん。

【辻元】私も「もんじゅ」は中止すべきだと思います。1つは「もんじゅ」の事故以降,東海村のアスファルト固化施設の爆発,それからMOX燃料の輸送器のデータの改ざんとか,この高速増殖炉にまつわる事故,事件が相次いで起こってきたわけです。
 そのたびに「いや,ウランはまた値段が高騰するかもしれない。将来のエネルギーのために」とずっと言われ続けてきたわけなのですけれども,いま加納さんがおっしゃることは私も以前に加納さんにお聞きしたことがあって,ずっと言われてきた論理だと思うのです。その論理が破綻してしまったのではないかと申し上げているのです。
 ですから,私は,うまいこといってないではないかと。東海村も動いていません。輸送器も止まっています。それでMOX燃料も実際に使えない。これはそれぞれ小さな事故とか,ちょっとしたことでは済まされない事態だと思います。
 ですから,私は信頼回復という意味でも,それからこの高速増殖炉が夢の高速増殖炉と言う方もいるけれども,そうではなかったと私は思っている。それからコスト的な面を見ても,旧動燃に対してはいま累積の赤字が1兆6千億円ぐらいあるのです。高速増殖炉研究にかなり使われてきました。たくさんお金を使ってきたから,ここで廃棄せずに,もったいないからやると深追いすればするほど,私はこの欠損金が増えていくと思う。
 いままでだれも決断ができなかったのですよ。ですから,私はここで中止ということをいったん決めるべきだと思います。3年ぐらい前までだったら,中止などというのはちょっと少数者だというような感じだったけれども,いまは違うと思うのです。そちらが多数に変わってしまった。ですから,私は勇気を持って,政治の場での決断で中止すべきではないかと思っています。
 いつも,ウランが高くなるかもしれないと,何か脅し文句と言ったら変ですが,そういうことばかり言ってきたけれども,もうあまり通用しなくなっているのではないかと思います。

【茅】はい,加納さん。

【加納】別に1つ1つ反論する気はないですけれども,ウランは,私は世界のウラン協会の会長を2年間,副会長を2年間,合計4年間やっていたのです。

【辻元】では,いつ頃高騰するのですか。

【加納】これはもう,先ほどお話しした通り,21世紀の後半には間違いなく私は逼迫する恐れがあると言っているわけです。ですから,それに備えて,ではその日になってやればよいではないかと言うけれども,高速増殖炉のような技術は,ある日突然思いつくというのではなくて,たゆまざる技術の開発の積み重ねの上にあるということを第一にお話ししておきたい。
 2つ目に申し上げたいのは高レベル廃棄物ですが,先送りしたらどうかという議論があります。これも1つの選択肢だと思いますけれども,私はやはり現在の世代が,現在の廃棄物について責任を持つ,独立自尊と言いますか,その精神が大事だということを,先週もアメリカでまさに意見が一致したわけですが,民主党系の方とも共和党系の方とも議論をして一致したところです。アメリカは自分たちの世代でとにかくやろうということで,ヤッカマウンテンもやっているし,現にWIPPがもうスタートをした。現実にスタートしたわけです。これは非常に大きな出来事だと先ほど申し上げました。
 そういう意味で考えていくと,私ども日本としては,次の来週から始まる,1月20日からの通常国会に,高レベル廃棄物の処分事業に関する法律を国会で立派に議論をしていただいて,そして決めていきたいと思っているわけであります。なかでも,国がこの高レベル廃棄物事業についてしっかりとした責任を持つということを,明確に書き込むことを私は主張したいと思っていますし,そういう方向で出てくるだろうと思っています。処分実施主体を決めていく。現在の世代からお金を集めて負担をしていくということで,先送りをしないということが大事だと,この2点を申し上げておきたいと思います。

【茅】辻さん。

【辻】高レベル廃棄物処分の問題ですが,先ほどお話もあったと思いますが,アメリカのネバダのヤッカマウンテン等を見ると,大砂漠の中にできた 1,500mぐらいの溶岩の中腹 1,300mに,新幹線のちょっと小さいぐらいの穴を掘って,そこに最終廃棄の試験をずっとやっているのです。そういう状況を見て,その中で地下水は 600m下だと言うのです。ところが,わが国がいま廃棄物を最終処理しようとするのは,地下,海水の下,スウェーデンもいろいろ他にもありますが,なかなか水と触れたらこれは大変な問題だから,場所を選ぶのは難しいですね。ですから,そういう点が1つです。それから日本に砂漠のようなああいう所がないので,どうやるかという非常に大きな課題があります。
 それからもう1つは,ロシアのイワーノフという次官とも論議をした時に「アメリカがプルトニウムを廃棄物を最終処分で捨てるというけれども,なかなか信用ができない」と言います。なぜかというと,プルトニウムは組成が変わらない形で地下埋没,永久処分をしても,50年たってそれを掘り出して,また軍事転用しようとすればできる,と。だから,それだけでは安心ができないと。ですから,プルトニウム自体の組成を軍事転用できない形に変えない限り,それはロシアの技術では燃やすしかいまそれを転換する道はないと思うので,ここらがまだアメリカと詰めきれない。ですから,アメリカがそういう地下に埋没してプルトニウムを保管するというのなら,永久処分というけれども,再び軍事転用の可能性があると。そうなるとロシアはウラルの山脈に穴を掘って,そこへプルトニウムを保管しなければならないと言っているのです。
 そこらを見ると,このプルトニウムを,核弾頭から来たプルトニウムも,いまわれわれの直面している原子力発電所から出てくる再処理からのプルトニウムも,いま同じ共通した問題にあたっているのではないか。それをやはり国会の場で十分な法案も出るでしょうから,十分論議をする,今度は論議をする必要があると思っています。

【吉井】一言だけいいですか。

【茅】どうぞ,吉井さん。

【吉井】私は現役世代が結論を出して,いまの世代が結論を出して,プルトニウムで言うと,もっと長いのもありますが,普通のものでいったら2万4千年が半減期です。いま2万4千年先の世代の子孫に管理の責任を持たせる。結論を出すのはいまなのですが,2万4千年先までの世代に責任を負わせる。こういうことが許されるのかという問題がやはりあると思うのです。ですから,その点では消滅処理なり,短寿命化なり,この分野の研究に本格的に取り組まないと,私は簡単に結論を出せるものではないと思います。

【石川】ちょっとよろしいですか。辻さん,吉井さんの御二方にちょっとお伺いしたいのですが。「あとのほうに先送りをする。」もしくは「水の中に入るからプルトニウムは,使用済み燃料は大変だ。」というお話ですが,そういった水の中に入って大変かどうかというのは研究をしてみないとわからない話ですね。こういった研究もしてはいけないと,こういうお話なのでしょうか。そういう研究はやるべきだというお話なのでしょうか。このような研究はせずに,消滅処理だけ研究をやれというのも,これまた妙な話だなと思って伺っていたのですが。この点はどうですか。

【吉井】私のほうは,穴を掘って埋めるほうの研究ということではなくて,使用済み燃料は基本的に原発サイトで貯蔵しておいて,将来的な問題は消滅処分,短寿命化等の研究をまずやるべきだという考え方です。

【石川】穴を掘ってする研究をしておいても損はないのではないでしょうか。

【吉井】それは,私は日本の地質上,これだけプレートの集中した所で,地震国で,かりにそれだけを取り出して独自の穴を掘った研究をやったとしても,それは数万年単位での責任を持てる結論は出せないだろうと思います。

【茅】鳥井さん。

【鳥井】まず,高レベルの問題は,確かに将来いろいろな技術が開発されるかもしれないわけではあるのですが,そのすべてを将来の技術開発にかけて期待してよいのかというと,必ずしもそうではなくて,将来の技術はやはり将来の問題に適応する必要があるのだろう。いまの問題というのは,いまやはり解決する必要があるのだろうという感じがするわけであります。
 それから,数万年にわたって地層が大丈夫か大丈夫ではないかというのはどうしてわかるのだと。しかし,専門家の間にはわかるとおっしゃっている方もけっこういらっしゃるわけでありまして,われわれ素人がそれはわからないはずだと言っても,これは実は先ほどの専門性の問題で違うわけです。
 そういう意味に立つと,専門家のおっしゃっていることが正しいのかどうかという話を,何かやはりどこで保証してほしいわけです。例えばサイクル機構がお願いをしている先生方が大丈夫だと言っているだけではちょっと心配だ,地質学会のようなところで,地質学会が適当かどうかはいろいろ議論があってわからないわけですが,何か学術会議でもよい,学術会議のその機能があるかもわからないわけですが,そういう第三者の専門家集団に何か評価を委託をして,なるほどいまの地質学者が言っていることは正しいのだということになったら,実はそれをわれわれは信じるしかないのだろうと思います。そんなことを信じられないと言っても,これは専門性の問題であって,始まらないのだと思うのです。
 それから,「もんじゅ」の問題ですが,動かしてデータを取ったらよいではないかという議論があるのですが,何のデータを取るかというのは,それをどう生かすかというのがはっきりしないと,何を測るかわからないわけであります。そういう意味では,将来の核燃料サイクル,私は核燃料サイクルをきちんとやらなかったら原子力をやる意味はほとんどないと実は思っているのですが,その将来の核燃料サイクルのあるべき姿のようなものをある程度イメージをして,こういう道もあるのだ,こういう道もあるのだ,こういう道もあるのだ,だったらこういうデータをいまのうちに取っておくべきだね,という大まかな筋が見えてから,少なくとも「もんじゅ」を動かすなら動かすのであろうという感じがするわけです。ただ動かせばよいというものではない。

【辻】ちょっと,いまのことに。

【茅】短くお願いいたします。

【辻】先ほど鳥井さんのほうで提起されたのですが,国際的な会議,専門の学者,それから専門家に集まってもらって,相当な時間をかけて,この「もんじゅ」の問題,これもロシアとか相当な経験を持っているし,またアメリカもイギリスもドイツもあるわけですから,そういう専門家が「もんじゅ」についても,それから高廃棄物の最終処分問題についても,やはり地球的な問題ですから,国際的な専門家と学者が集まって,本格的な,1日か2日来てやるというのではなしに,期間を長くしてもよいから十分論議をして,国際的な学術的な論議の角度から,一定の方向論議をしてもらうということも,われわれがいよいよ国会でそういう論議をして決断しなければいけないという時,非常に大事なことでないかと思います。そういう意味で国際的な会議は,高レベルの問題それから「もんじゅ」の問題について,ぜひ本格的に開くべきだと思います。

【吉井】1つだけ,ちょっといいですか。

【茅】はい。

【吉井】この問題は,学者の皆さん方の中でもいろいろな考え方,説があるわけですから,それから十分データが揃っているかといったら,これはこれからの問題がずい分あると思いますから,これ自体,かなり時間をかけて研究しなければいけないと思うのです。
 ただ,一言だけ,専門家のお墨付きで事故を繰り返したという事例がいままでずっと続いてきたわけですから,ですから,地下埋処分の新しい安全神話に走ってはならないという,そこだけは基本に据えて,その上で議論はよくやっていくことは,その点では鳥井さんのお考えと私は完全に一緒です。

【茅】ありがとうございました。他にもいろいろ皆さんまだご意見がおありだと思うのですけれども,何しろ時間というのは有限なものですから,これだけはどうしようもないので,もうすでに5時半になりましたので,大変残念なのですが,ここで議論は一応切らしていただきたいと思います。
 ただ,私はいまずっとご意見を拝聴していたのですが,国会議員の方々がこれだけ熱を持って「もんじゅ」の問題なり,高レベル廃棄物の議論を真正面から戦わせていただけるということであると,国会も捨てたものではないという気が大変いたしまして(笑),こんなことを言うと大変申しわけないのですが,ぜひそういった議論を今後とも国会の中でやっていただきたいというのが,私どものたぶん一致したお願いであろうかと思います。よろしくお願いいたします。
 本日はどうも大変ありがとうございました。

【事務局】それではこの辺で原子力政策円卓会議を終わらせていただきたいと思います。
 円卓の先生方,長時間のご議論大変ありがとうございました。また,傍聴の皆様方におかれましても,本日は長時間最後までご静聴下さいまして,本当にありがとうございました。事務局より厚く御礼申し上げます。

--終了--


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