<資料5−1>

嵐 英憲    (団体職員)

テーマ:今後の原子力のあり方について

 日本は、世界で最初の被爆国であり、広島・長崎と戦禍における被災者・被爆者は膨大な数に上ります。故に、原子力や放射能に対する抵抗・拒絶感は、類を見ないほど大きくまた根深いものがあるように思います。
 それが現在の原子力発電や核燃料サイクルに関する大きな障壁となっているのは、周知の事実でありましょう。しかし、原子力に対する考え方が、今日の日本のエネルギー事情などを無視した政治的・社会的不適合を訴える団体の無責任な言動や、これをあたかも正義であるかのように過剰反応を示す一部マスコミの報道などに懸念を覚えます。

 日本はエネルギー自給のできない弱小国であり、しかもエネルギーの長期安定性を考えるならば、現在のところ原子力発電に頼らなければならない現状であるのに、この事実を無視し、代替電源の具体的な提案もなく、潜在的な危険性を表面化し、これのみを強調して、原子力を放棄しようとするのには反対の考えを呈したいと思います。特に、このような過剰反応が社会問題をひきおこしているにも関わらず、その報道姿勢を改めようとしない不勉強な一部のマスコミにも苦言を呈したいと考えています。

 日本のエネルギーを考えるとき、その現状と原子力の必要性を広くきちんと認識させて行く運動が必要ではないかと考えます。
 そのためには、1)原子力の実務経験のエキスパート集団による迅速なトラブル対応チームの編成(マスコミならびに一般への的確な情報提供)、2)省エネルギー運動の推進によるエネルギーの重要性・原子力の必要性などの教育宣伝、3)学校教育を含めたエネルギー教育、(ものづくり日本の技術力の認識・評価とその継承も含めた)技術教育、4)サマータイム制度の導入による省エネルギー効果とエネルギーに対する危機感・認識の向上、などが必要であると考えます。

 私ごととなりますが、電力会社に入社して、原子力発電所の計測分野に14年あまり従事した経験があります。その後、労働組合という立場で原子力の状況を見させていただいていますが、ノントラブルを目指し、真摯に努力を重ねる姿勢、安全を最優先に考える姿勢は、原子力発電所のあらゆるところで常に見受けられるものです。
 当然、作業に従事する人間自身が常に「安全」を心がけ、安心して働ける職場づくりを 担っていると考えます。結果的にこのことが原子力発電の「安全」につながるものと考えています。

 原子力を取り巻く環境は、地球温暖化の元凶となるガスを出さないクリーンなエネルギーであるという追い風と、新規立地の困難性などの向かい風との狭間で、大きく揺れるものと考えます。
 しかし、現状で原子力の必要性を訴え続け、理解を求めていく姿勢こそが、21世紀の日本のエネルギーを支える根幹だと思います。私も微力ながら、これからも原子力の理解活動に積極的に取り組んでいきたいと思っています。

以上