<資料5−7>

今後の原子力のあり方について

藤井 冨美子

 日常生活において私たちはエネルギーを空気や水と同じように当然あるものとして気安く取り扱っています。一旦電気が止まると家庭生活もできなくなるどころか、あらゆる社会機能が止まってしまいます。この冬経験した些細なことで改めてエネルギーの大切さを思い知らされました。
 わが国の電気エネルギーの大部分は火力発電と原子力発電によってまかなわれています。火力発電の燃料の原料である石油、天然ガス、石炭や原子力発電のウラン核燃料はほぼ100パーセント輸入に依存しています。
 わが国は天然資源に乏しく、エネルギー原料のみならず多くの原料を海外から輸入しております。私たちの体のエネルギー源である食料も輸入に依存しており、世界有数のエネルギー源の輸入大国です。
 わが国が国として自活できるのは、言うまでもなく海外から輸入した原料を加工して工業製品にして輸出する構図で発展してきました。これは欧米の先進技術を素早く吸収し、日本人のもつ勤勉さと器用さで優れた工業製品を大量低廉に生産し、世界から受け入れられたからといわれます。これまでの画一的な教育はこのような産業構造に合った大量の質の良い技術者、テクニシャンの人材育成に合致するものでした。しかし今日、貿易摩擦が頻発し、今までのように輸入した原料を工業製品に加工して輸出することが困難になりました。これからは独自の基盤技術を開発し輸出することの重要性が叫ばれています。また、高齢化と少子化、価値観の多様化が進み21世紀を担う人材育成が大いに議論されています。このため個性豊かで失敗をおそれないタフさと好奇心豊かな人材育成が求められます。そのような要求から学校教育のあり方が問われ教育課程審議会で検討が行われ、平成10年11月に新しい教育指導要領が発表されました。私自身、幼児教育・初等教育者の養成に携っており、このような特徴を備えた人材育成には幼少時の教育の大切さを認識しています。

  教育関係について

 日本ではエネルギー、とりわけ電気、ガスを無見識と思われる大量に使用しているきらいがあります。省エネ・効率利用に努める必要は勿論ありますが、今後の高齢化・少子化・国際化の進む中で快適な暮らし、高度の産業を維持発展させてゆくにはエネルギー確保が極めて重要なことはだれも否定しないと思います。しかし、教育先進国を自負する日本において、小学校、中学校、高等学校でエネルギー、特に1/3 の電気を供給するまでに育った原子力について、どれほどの科学的知識が教育されているのか疑問です。エネルギーに関しても取り上げ正しい知識を広めたいものです。

  環境関係について

 あらゆる産業が、今後、環境に優しいリサイクル化(循環型)に向かう中で、原子力だけは、当初からリサイクルを目指しながら発展してきています。しかし原子力はいろんな産業の中で情報公開が進んでいると思われますが、原子力発電所における事故の対応のまずさなどマイナスのイメージばかりが多く流れ、われわれ市民には先端的なリサイクル産業と言う受け止め方が出来ないのが現状です。リサイクル社会の大きな流れの中で、一般産業廃棄物と違い、深刻な影響をもたらす放射性廃棄物は現代の技術で最良の手段をとって進められている事実を、前向きに受け止めていけたらと思います。
 また国をはじめ、原子力関係者は積極的に説明会や円卓会議の場を設けて努力されていますが、多くの市民は情報の理解にあまり耳を傾けないのが現状ではないでしょうか。

  新エネルギーと原子力エネルギー

 現在の世論・マスコミには原子力の負の部分ばかりが注目されています。現在の軽水炉(加圧水型・沸騰水型)の安全性レベルの高さは認知されておりません。また、高レベル放射性廃棄物の処理処分についての真剣な取り組みについても同様です。
 一方、新エネルギー、特に地球環境に優しい典型である太陽光・風力発電はあまりにも安易に高い評価されすぎていると思われます。すぐにでも原子力に代わるエネルギーと誤解されています。太陽光は2010年までには500万Kw(稼働率では1/10)、風力は15万Kw(稼働率では1/3)の目標が立てられていますが、費用、立地、安定供給等様々な条件からなかなか実現は難しいのが現状です。ちなみにこの時点での発電に2.5億Kwの設備が必要と予想されます。

  エネルギーの利用形態

 エネルギーを利用するのに最も使い勝手がよく質の良いエネルギー形態は電気エネルギーといわれいます。現在自動車はガソリン・エンジンで駆動していますが、理想的な自動車はCO2 やNOX のような廃ガスを出さず環境に優しく制御も容易な電気自動車といわれています。既にガソリン・エンジンと電気駆動をハイブリッド化したエコカーが市販されており、より完全な電気自動車を目指して世界中の自動車メーカーが開発にしのぎを削っています。
 電気エネルギーがクリーンといっても、発電するのに火力発電には石油・石炭の化石燃料を使いますし原子力発電には核燃料を使います。前者は廃ガスの他、資源の枯渇という問題があり、一方後者は放射能という厄介なもんだいがあります。

 おわりに

   チェルノブイリの原発事故による放射能汚染で末代に及ぶ深刻な被害をだし原発にたいする安全性の信頼が著しく低下したことも事実です。
 特にわが国は広島、長崎の原爆の洗礼をうけた国民として放射能には過敏です。しかし、今ますますエネルギー需要は増大し、エネルギーなしには人は生きていけないというジレンマがあります。これからの発電の本命は原子力発電になるのではないかと思います。 それは絶対放射能漏れを起こさない原子力発電のハードウェア技術が確立され、それを運用管理するソフトウェア技術が確立すると確信しています。ウラン燃料を燃やしてできるプルトニウムを燃料として再利用するプルサーマル発電計画もいよいよ実施に移されると報じられています。
 私は海外の原子力施設視察団の一員としてイギリス、スイス、フランスのヨーロッパ3ケ 国および中国の原子力施設を見る貴重な機会を得ました。原子力発電に対する対応は国によって相違はありますが、放射性廃棄物処理施設もオープンで、発電によって生じた熱を家庭の給湯や植物栽培に利用し、発電所周辺の住民と仲良くやっているという印象をうけました。しかし、高レベル放射性廃棄物保管計画が確立している国は未だないということでした。わが国ではガラス固化体にして深地層に埋める計画で研究がすすめられています。早期に研究が実を結び安全な保管方法が確立することを願っています。