1. 要約
原子力発電に反対し脱原発を目指す立場から放射性廃棄物について意見を述べます。原発から発生する放射性廃棄物問題は原子力発電に反対する大きな理由の一つです。それは、生み出された人工の放射性物質が人類とは相容れないと考えるからです。
この観点から見ますと、放射性廃棄物に対する現在の国の政策には大きな疑問があります。相容れないこの廃棄物はすでに発生してしまっていますし、原子力発電を続ける限り発生し続けます。そこで、まず必要なことは、放射性廃棄物をこれ以上発生させないこと、すなわち原子力発電および再処理・プルトニウム利用をやめ他の発電システムに替えることだと考えます。それによって放射性物質の環境への放出は止まります。さらに、発生している放射性廃棄物の総量が確定します。総量を確定することによって、いわゆる原子力発電に反対する人々もその処分・処分の議論に加わることができ、放射性廃棄物の処理処分にたいする真の国民的議論ができるようになると考えます。
次に、現在の国の政策は放射性廃棄物を埋設処分することにありますが、この政策を転換して、放射性物質の漏洩に対応できる形で管理する必要があると考えます。具体的には、低レベル放射性廃棄物は埋設を中止して地上での保管とすること、高レベル放射性廃棄物は地層処分する政策を改め、回収可能な形で長期管理すること、廃炉への対処についても同様に、解体撤去せずに密閉管理とすることです。
国の政策は「埋め捨て」を基本方針としていますが、この基本方針を改めて、地表での回収可能な長期管理の選択肢についても十分に検討し、徹底した国民的議論を行うことを通じて方針を決定することが必要だと考えます。
2. はじめに
原発で生み出された放射性物質は一部が環境へ放出されます。また、再処理工場からも放射性物質が環境へ放出されています。その放出は運転が続く限り日常的であり、特に原発が集中して立地している地域で数十年にわたって放出が継続する場合に人体への悪影響が心配されます。生み出された放射能のうち、環境へ放出されなかった分は放射性廃棄物となります。放射性廃棄物は放射能のレベルで区分されて処分されることになっています。検討されている区分は、高レベル放射性廃棄物、超ウラン廃棄物、高ベータ・ガンマ廃棄物、低レベル廃棄物、放射性廃棄物でない廃棄物などです。このうち処分が実施されているのは低レベル放射性廃棄物のみです。
これらの廃棄物に対する国の基本方針はいわゆる埋め捨て処分で、これには大きな疑問があります。
3. 低レベル放射性廃棄物
原発から出る低レベル放射性廃棄物は青森県六ヶ所村で埋設処分されています。将来的に300万本の廃棄物が埋設される計画で、第1期20万本分について埋設が行われています。埋設を私たちは「埋め捨て」と呼んでいます。計画では、ピットと呼ばれるコンクリート製の箱の中に廃棄物ドラム缶を入れ、さらにドラム缶の間をコンクリートで固め、上蓋をし、その上に盛り土をかぶせる方法がとられます。そうして300年間にわたって監視されることになっています。
埋設される廃棄物ドラム缶の一部に腐食があることが98年に明らかとなりました。腐食ドラム缶への対応は電気事業者、日本原燃、科学技術庁の3者の話し合いで決められています1。腐食はかなり前から明らかとなっており、すでに1982年頃からステンレス箔による補修をおこなってきているようです。99年1月からはこのような腐食ドラム缶が埋設されています。腐食は穴あき部分だけに存在するとは考えられず、そこの補修だけでは十分とは言えません。ドラム缶の腐食は埋設後の早い時期に放射能の漏出が始まることを予想させます。
埋設完了後に放射能が漏出してきても、再び掘り起こして漏洩に対処することはしません。仮に井戸水など飲用水に放射性物質が混入すれば、井戸水の飲用禁止という対策がとられるだけです。ですから300年管理と言いますが、実質は埋設が完了した時点で管理は終わると私は受け止めています。
従って、漏洩が検出されたときにそれが防止できる対策が可能となるように、現行の埋設処分は再考されるべきだと考えます。
4. 高レベル放射性廃棄物
高レベル放射性廃棄物の処理・処分は特に困難です。処分技術やコストに加えて、社会的受容の困難が大きな問題となります。
この問題に関して、原子力委員会は高レベル放射性廃棄物処分懇談会を設置し、98年5月に「高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について」を公表しました。その考え方は地下の深い地層に処分する(地層処分)ことに置かれています。発生した高レベル廃棄物を地層処分する考え方は78年9月改定の原子力長期計画から示されて今日に至っています。策定された長期計画を見る限り、他の選択肢を含めて十分な検討がなされ上で地層処分が選択されたようすはありません。
技術的な面は核燃料サイクル開発機構(旧動燃)が研究をしています。98年9月「地層処分研究開発第2次取りまとめ第1ドラフト」、11年4月に同第2次ドラフトが公表されています。この中では高レベル廃棄物ガラス固化体を入れるオーバーパック耐用年数が1000年として設計されています。そして、せいぜい1万年程度は大丈夫とされていますが、高レベル放射性廃棄物の毒性が数十万年から百万年続くことを考えれば、これで十分とはとても言えません。地層処分は後の世代に重大な禍根を残すことになりかねません。
98年12月9日にフランス政府はエネルギー文書を公表しました2。これは、フランスの省間会議の結果として発表されたものです。その中で、高レベル放射性廃棄物に関して、後の世代が選択できるように、これまでの地層処分のみの方針を転換して、貯蔵に関する研究を行うことを決定しました。この動きはフランスだけではなく、その他の国も回収可能な形の管理へと方針を変えつつあります。
放射能の毒性に対する現在の技術の未熟さを考えれば、地層処分を前提とせずに、回収が可能な形で監視する方法を取るべきだと考えます。
国の方針では2000年を目途に処分主体を設立し、その処分主体が処分地の選定をすることになっています。しかしながら、処分地の選定は至難の業と思われます。この社会的受容の困難を克服するためには、廃棄物をこれ以上生み出さないことを前提とすることが必要だと考えます。
5. その他の廃棄物
再処理を行うことによって発生する超ウラン廃棄物や原発の解体によって発生する高ベータ・ガンマ廃棄物などがあります。これらの放射性廃棄物も同様に埋め捨て処分をせずに回収可能な形での長期管理にすべきだと考えます。
原子力発電を止めることによって、放射性廃棄物の発生を止めることができます。その場合、すでに発生した低レベル放射性廃棄物と使用済み燃料と発電所本体が廃棄物として残ります。さらに、再処理を止めることによって、再処理から発生する低レベル廃棄物や超ウラン廃棄物、高レベル廃棄物ガラス固化体等の発生が止まります。そして、すでに発生した使用済み燃料が高レベル廃棄物として残ります。
原子力発電を止めた後の発電所は解体撤去することが方針とされていますが、解体すれば、そこから低レベル廃棄物、高ベータ・ガンマ廃棄物などが出てきます。放射性廃棄物でない廃棄物は一般の廃棄物として扱えるようにするものですが、むしろ建物のコンクリートや鉄材などの再利用に道を開くものです。そのような処分方針を改めて、廃炉後は発電所を密閉したまま長期管理に移すことが必要だと考えます。
6. 結論
放射性廃棄物はこれ以上発生させないことが必要です。すでに発生してしまった放射性廃棄物は処分(埋め捨て)する政策を転換し、地表において回収可能な形で長期管理するべきだと考えます。
7. 提案
原発を止めた場合と原子力を進めた場合、再処理をする場合と再処理をしない場合などのモデルケースを定め、発生する廃棄物の総量を推定する作業を行い、地表での管理、埋設処分などのケース、また、廃炉原発を解体撤去するかそのまま管理とするかなどについて、第3者機関を作り、徹底した検討を行うこと。
検討結果を公表し、どの選択肢を採用するかについて、国民的議論を進めること。