平成11年度 第2回原子力政策円卓会議 議事録

平成11年度 第2回原子力政策円卓会議

1.開催日時:1998年7月13日(火) 13:30〜17:00

2.開催場所:サンケイ会館 5F サンケイホール

3.議題:高レベル放射性廃棄物処分について

4.出席者(敬称略):

 オブザーバー

 招へい者

5.議事録:
【事務局】それでは大変お待たせいたしました。定刻の時間になりましたので,ただいまより平成11年度第2回原子力政策円卓会議を始めさせていただきたいと思います。本日はご多忙の中,傍聴の方々を始め多数ご参加いただきまして,大変ありがとうございます。事務局より御礼申し上げます。
なお,開催に先立ちましてお願いでございますが,傍聴の皆様方におかれまして円滑な会議の運営にご協力いただきたく,よろしくお願い申し上げます。それでは早速ですが,当モデレーター会議の木村孟先生,よろしくお願いいたします。

【木村(学位授与機構長)】ただいまご紹介いただきました木村でございます。本日は大変お天気の悪い中,当原子力政策円卓会議第2回の会合にお集まりいただきまして,ありがとうございました。私はただいまご紹介いただきましたように,この円卓会議のモデレーターの座長を務めております。そういう関係で,まず冒頭,平成11年度原子力政策円卓会議について,簡単に主旨をご説明申し上げます。
 わが国の原子力政策の方向性をめぐり,昨年平成10年度に原子力委員会からの要請に基づき,第三者的な立場から,行政の評価,提言を行う機関として原子力政策円卓会議が設置され,5回の審議に基づき「エネルギー源の中での原子力の位置付け」「立地政策の振興についての対応」「国民に見える形でのエネルギー政策の議論」「政策決定プロセスの公開」等について提言をいたしました。その中で最も重要な項目の1つが,円卓会議の継続的開催の要望でした。
 今回の円卓会議は,この要望に応えて設置されたものです。ここでは,国民各層の間の原子力に関する議論を徹底して行うとともに広く公開し,原子力問題の状況をより明確に国民の皆様に把握していただくために,原子力委員会に,原子力政策の方向について積極的な提言を行うことを目的としています。このような円卓会議の目的が達成されるためには,国民の皆様の広い範囲から多様な意見がこの円卓会議に出され,それについて十分な議論が行われることがぜひ必要であり,皆様方の協力をお願いしたいと存ずる次第です。
 この円卓会議では,この会場に来ていただく皆様方を含め,円卓会議のあり方,あるいは議論の内容等について,ご意見をいただくことにしています。公募という形でいただいております。毎回の円卓会議で,前回円卓会議以降にいただいた公募意見の概略についてご説明していますので,本日も6月15日から7月12日までにいただいたご意見について,簡単に概略をご説明申し上げます。
 やはり会場内にいらした傍聴者からのご意見が多く,20通いただきました。その他いらしてない方から7通,合計で27通いただいています。性別については,男性がほとんどという状況でした。いつもどちらかというと,年齢の上の方からのご意見が多くなっていますが,今度は年代別は40歳〜70歳まで広く分布しています。職業別では会社員の方が多くなっています。地域別でいくと,やはり東京,大阪など,電力の大規模消費地の方からの意見を多くいただいています。
 ご意見の内容をかいつまんで申し上げますと,3点ほどにまとまるかと思います。原子力そのものに対するご意見については,わが国のエネルギー供給における原子力の位置付けについて再度検討すべきであるというご意見,それから脱原発に移行しているヨーロッパの環境先進国に学ぶべきであるというご意見などをいただいています。それから2番目のグループとしては,前回の円卓会議のテーマであった核燃料サイクルに対する意見ですが,コストが不明確である,コストについてよくわからないという不満のご意見,また「もんじゅ」についてはさらに徹底して議論をしてほしいというご意見が出ています。それからこれは毎回出ている意見ですが,円卓会議の運営に対しては「招へい者」,今日は「招へい者」という言葉はいかめしいのでやめようという話も出ていましたが,招へい者として専門家の方に来ていただくよりも,むしろ一般人,文化人,そういう方をお願いすべきであるというご意見,さらにはこれはかなり私どもも努めているつもりですが,円卓会議の内容をさらに広く一般国民の皆様に知らせる工夫をしてほしいというご意見が出ています。これまで1か月弱にいただいた27通のご意見の要約について,ご説明申し上げました。
 それでは,まず今日の出席者についてご紹介申し上げます。この円卓会議では昨年から5名のモデレーターが会議の運営にあたっています。まずモデレーターを紹介申し上げます。アイウエオ順でまいります。石川迪夫様,原子力発電技術機構の特別顧問でいらっしゃいます。小沢遼子様,もう皆さんご存じだと思いますが社会評論家です。茅陽一様,慶應義塾大学の教授でいらっしゃいます。それから中島篤之助様,前中央大学の教授でいらっしゃいます。それに私,学位授与機構長の木村です。それと毎回,原子力委員会のほうから木元教子委員にオブザーバーとしてご出席いただいています。
 次に本日の招へい者の皆様です。まず明治大学ならびに中央大学非常勤講師の市川富士夫様。東京大学教授の鈴木篤之様。学習院大学教授の田中靖政様。科学ジャーナリストの中村政雄様。原子力資料情報室共同代表の伴英幸様。東京大学教授の山地憲治様。以上です。
この円卓会議は5人のモデレーターがそれぞれ毎回2名,1人が座長,もう1人が副座長という役割をつとめることにしています。本日の座長は中島篤之助先生にお願いし,私が副座長を務めますので,よろしくお願いいたします。それではバトンを中島篤之助先生にお渡しします。よろしくお願いいたします。

【中島(元中央大学教授)】ただいま座長を命じられました中島です。まず本日のテーマについて簡単にご説明いたします。前回の第1回と今日の第2回は核燃料サイクル問題を取り扱うということになっていますが,今日は「高レベル廃棄物の処分」ということをテーマにして議論をしたいということです。
 ご承知のように,いままでわが国では,ウラン資源を有効利用するという立場から,核燃料サイクルの構築を推進するという政策をとってきました。わが国の推進する核燃料サイクルは高速増殖炉(以下FBR)によるプルトニウムの燃焼を前提としています。前回の第1回の円卓会議においては,主としてこのFBRの実用化に伴う諸問題が,その是非も含めて多面的に議論されました。論点がある程度明確にされたものと考えています。「もんじゅ」そのものの取り扱いと,「もんじゅ」も含めた幅広いFBRの研究開発の方向性についても,昨年度なされなかった多くの議論が取り交わされたものと考えています。
 それを踏まえ,今回の第2回円卓会議においては,高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題を中心に議論を行うとともに,再処理に伴って発生するプルトニウムの管理,すなわち核拡散についても議論を行いたいと考えています。
 第1回,第2回の円卓会議を通じて,原子力利用の一形態である核燃料サイクル全体について,一応の論点を網羅的に整理するとともに,今後のわが国のサイクル政策の進め方についても,その是非も含めて,何らかの提言に結びつけていきたいと考えています。
それではこれから,いわゆる招へい者によるプレゼンテーションをお願いするわけですが,順序はアイウエオ順でして,今日は市川富士夫さんからお願いいたします。プレゼンテーションの時間は毎回5分ということでお願いしていまして,5分では大体終わらないのですが,しかし5分でブザーを鳴らすというのも失礼ですので,5分をめどにお話をいただくということでご協力をいただければと思います。それでは市川さん,お願いします。

【市川(明治大学非常勤講師・中央大学非常勤講師)】市川です。大変難しいご注文なのですが,資料に私の発言要旨2ページ分があります。これを読んでも5分では終わらないだろうと思いますが,なるべく簡単にお話ししたいと思います。
 まず,今日の主要なテーマは高レベル放射性廃棄物処分についてということですが,廃棄物処分の技術的問題もさることながら,この会議は原子力政策円卓会議という名前がついていますので,最初に原子力政策との関連で高レベル放射性廃棄物の問題について少し触れたいと思います。
 ご存じのように,日本の原子力政策の中心というのは大きなものは2つあると思います。1つは低濃縮ウランを燃料とした軽水炉を大量に設置してきたということ。2番目には使用済みの燃料は必ず再処理をしてプルトニウムを回収し,そのプルトニウムを利用する,このような2つの柱がいままで続いてきたと思います。
 1番目の低濃縮ウランを使った軽水炉というこの柱は,日本とアメリカとの原子力協定というものが改訂に改訂を重ねてきていますが,それを裏付けられる形で今日まで進んできたものです。ところが,当初この軽水炉を日本に導入するに当たって,軽水炉というのはすでに実証済みのものであるという認識が非常に強く打ち出されたために,いろいろ問題が生じました。それにもかかわらず,これは日本の国の内外に,アメリカでもありましたし日本でもありましたけれども,いろいろトラブルが続出をしました。そのために非常に国民の原子力に対する不信というのが高まったわけです。日本では軽水炉は実証炉だからその安全研究というのはあまりいらないと言われていた時期があったわけですが,このトラブル続出以来,軽水炉に関するいろいろな安全対策について,実証試験という形で研究・開発が今日まで進められてきていると考えられます。
 2番目の柱ですけれども,再処理をするということと,そこで取ったプルトニウムを利用するということです。再処理についても,実は現在やっている再処理法は外国では実証済みであるという認識の下に東海村の再処理工場は造られています。ところが,それには技術的な誤認もあったわけですが,それはさておき,いまいろいろ東海村でもトラブルが続出してきたことはご存じだと思います。日本では実証済みだというと,日本での研究は必要ないという風潮が出てきますが,実際にいわゆる湿式の再処理について日本での研究が非常にスローダウンした時期がありました。ところが,最近はやはり日本でもやらなければならないということで,いろいろな研究が進められていますけれども,やはりそういう意味では基礎的な部分が非常に立ち後れたと言わざるを得ないと思います。
 こういうことを見ていくと,どうも日本の原子力政策というのは,政策がどんどん決定されていくけれども,それが技術の裏付けを持っていないという特徴があるのではなかろうか,そのように考えるわけです。そうすると,その間には矛盾が生じるわけですが,その矛盾はだんだんいわゆる下流に向かって増大していくわけで,その結果が今日の高レベル放射性廃棄物処分の問題にしわ寄せされてきていると考えているわけです。
 もう5分ぐらい経ってしまったかもしれませんが,もう少し言わせて下さい。それで,放射性廃棄物処分の前にまずこれが発生するわけですから,そこの部分だけ少しお話しします。
 最近使用済み核燃料を,いわゆる原子炉サイトの外に中間貯蔵するということが決定されています。それを伴う法改正もなされたわけですが,この中間貯蔵ということがなぜ出てきたかというと,これはご存じのように,再処理がスムースに行かない。東海村も動いていないし,六ヶ所村も遅れがちである。さらに海外再処理契約も終わってしまった。一方原子力発電所はどんどん造るわけですから,使用済み燃料は出る一方である。そうなるとサイトの中で貯めきれないところも出てくる。そこから出てきた発想です。
 ということは,使用済み燃料の行方というものについて,将来見通しがない,非常に困難であるということです。再処理しないわけですから,いわゆる高レベル廃液というのが出てきません。したがって,それをガラス固化したりするということも非常に遅れるわけです。中間貯蔵という方針が出てきたというのは,これは使用済み燃料そのものが,高レベル廃棄物として将来処分される可能性というものが,大きく登場したのではなかろうかと思うわけです。そうすると,これはいままでの原子力政策,あるいは核燃料政策というものに対して大きな変更を伴うことになるわけで,高レベル放射性の廃棄物処分,その処分の対象となるものが,ガラス固化体ではなくて使用済み燃料そのものになっていく,そういうことも考えられます。そのような点で,非常に大きな転機に立っているのではなかろうかと考えられるわけです。
一応そこまでお話ししました。あとはまた時間があったときに。

【中島】どうもありがとうございました。時間が大体倍ぐらいになっています。あとで招へい者相互の討論の時間がありますので,お話になれなかったことはその時にぜひ補足していただくようにお願いします。
それでは,次に鈴木さんお願いします。

【鈴木(東京大学大学院教授)】それでは,私のほうから3点ばかりコメントさせていただきたいと思います。
 まず第1点なのですが,この高レベル放射性廃棄物の処分をいかに今後進めていくかということを考える場合に,なんと言っても高レベルというぐらいですから,放射能が高く,また長く続くということにやはり注意する必要がある。したがって,基本的には慎重,確実,かつ安全に扱う,これが非常に重要だということは間違いがないと思います。これがまず第1点です。
 しかし,慎重,確実,安全にということを実際に実行しようとすると,これは多くの方々のご理解がないとできない。したがって,それに大変時間かかると思っているわけですが,それではただ待っていればいいのか,あるいはそれまでにもっと危険な状況になるのではないかということが場合によっては心配されるわけですが,私などからすると,高レベル放射性廃棄物の場合にはたぶんそのようなことはないのではないか。なぜならば,発生量が幸いにして非常に少ないのです。例えば,仮に概数で申し上げると,年間たぶん日本中で使用済み燃料は約 1,000トンぐらい発生しています。これを再処理した場合に,最終的にガラス状に固めた物がどのぐらいになるかというと,数百トン。使用済み燃料は数分の1になると思うのです。これは一見多いようですが,日本中でいま原子力発電によって生産している,あるいは供給している電気エネルギーというのは数千億 kWh, 3,000億 kWhぐらいだろうと思いますが,したがって,ガラス状に固められた高レベル廃棄物と発生したエネルギーとの関係で言えば,おそらく1 kWhあたりで1mg程度だと思うのです。ですから,この1mgという量は,普通の人は非常に量が少ないと思って下さると思うのですが,これは非常に量が少ないということなのです。
 これは,いまも市川先生から少しお話が出ましたが,安全に貯蔵するという立場からすると,これは比較的,技術的には容易にできるのです。したがって,多くの方々に最終的な処分ということにご理解いただくまで,これは安全に貯蔵しておくということは技術的には可能であると思います。ですから,何か危ない状態になるとは私は感じていません。これが第2点目です。
 第3点目なのですが,これが一番大事だと思うのですが,いま考えている方法というのは,地下の深い所,深度で数百メートルぐらいと考えている場合が多いのですが,その程度の深い所にしまっておくという考え方,そのための技術がいろいろ開発されているわけです。その場合,そのように深い所の地質は本当に大丈夫なのかということを多くの方々は心配されるわけです。そういうことをきちんと調べておく必要があるということにおいては,これはたぶん多くの方が賛成なさる。そういうお気持ちだと思います。
 その場合に大事なことは,実際にそのような地下の空間を調べてみるということなのです。これは私はぜひやるべきではないかと思う。実際その結果を見て,高レベル放射性廃棄物を地下の深部に埋設するという考え方が妥当かどうかは,その結果によって議論すべきなのであって,その地下の状況について十分調査しないで,ただ賛成だ,反対だというのは,私はあまり建設的な議論にならないのではないかという感じがします。
したがって,例えばこの円卓会議の場で,これは研究施設で結構なのですが,別に処分を前提にしなくて結構ですから,むしろ処分を前提にすべきではないと思うのですが,その地下の研究施設,これは造るべしということをご提言いただければ大変ありがたいと思います。ありがとうございました。

【中島】いまは大変短くまとめていただきました。それでは田中さん,続いてお願いします。

【田中(学習院大学教授)】私は原子力に直接には関係しない学問の領域,社会科学の領域で仕事をしている社会科学者ですので,私自身の専門領域のほうから本日は発言させていただきたいと思います。私の概要,発言要旨は3ページ以降にありますので,その中からかいつまんで主なところだけを申し上げたいと思います。
 第1の問題としては,私は社会科学者であるということを再度強調させていただきたいのですが,やはり高レベルの廃棄物の問題というのは,共通の関心と同時に異なる視点というものがあって,そこで議論というのを徹底的に行うべきだと私は考えています。1つは,これはもともとは欧米の思想ですが,「観念の自由市場」(free market place of ideas)という政治思想が18世紀以来,いわゆる民主主義の原理の中で重要な地位を占めてきています。やはり議論というのは,この「観念の自由市場」の中で徹底的にいろいろな意見を,いろいろな思想を闘わせて,そして最終的に判断を決めるというのが民主主義の原理と思います。この原理は,高レベル廃棄物の処分に関わるものとは言え,やはり守っていきたいものだと思っています。
 そのような見地から申しますと,そもそも高レベルの廃棄物ということについて,はたして日本人はどのぐらい知的な経験や学習を積んでいるのかという点が問われなければいけないと思います。原子力発電については20年の実績があり,われわれ自身の一人一人の知的な経験があるわけですが,この高レベルの放射性廃棄物というのは,将来の事象ですので,十分な経験もないし学習も積んでいるとは到底思えません。したがって,これは例えば本日のようなこのような催しを通じてわれわれが知的に情報を仕入れ,考えるという機会を積み重ねていくということが,今後もますます大事であろうと思います。
 それから第2点は,この高レベルの廃棄物の問題というのは,原子力発電ということと無関係では考えられない。ということは,原子力発電を是とする以上,そしてもうすでにわれわれは20年間この原子力発電の実績を持っているわけですから,その中から出てきている廃棄物の中にこの高レベルの廃棄物もあることを否定はできない。したがって,これは運命論的な話になるのかもしれませんが,われわれは原子力発電の当然の結果として出てきている高レベルの廃棄物を,安全に処分するということを前提として,特に安全にというところに強調点を置いて,将来考えていかざるを得ない。そういうところにわれわれは追いつめられているのだということの認識が出発点として必要であるということを,特に強調させていただきたいと思います。
 それから,原子力はまた日本の運命でもあります。われわれは国内にエネルギー資源をほとんど持っていません。ここに表を掲げておきましたが,化石燃料の84%をわれわれは第一次エネルギーとして外国に依存しています。国産と言われるエネルギーは水力と原子力しかないというのが現状です。かつて1970年代には,油が来なくなったということで,「油断」という新語が作られ、社会的なパニックが起こりました。それから現在はまた,一昨年の京都の地球温暖化防止会議の時に日本が自らを義務づけたように,炭酸ガスの排出規制というものに日本人は強くコミットしています。われわれのエネルギーを将来も確保して,なおかつ炭酸ガスの排出を規制するということからいって,やはりわれわれは国民の一人一人が化石燃料の利用をできるだけ少なくして,そしてその代わりの代替エネルギーとして原子力と再生可能な自然エネルギーをますます増やしていかざるをえません。21世紀にかけて,日本は必然的にこういうオプションをとらざるを得ないのではないか。この辺も多いに国民的な議論をすべきであると考えています。
 それから第3点ですが,この高レベル放射性廃棄物というものが得体の知れないものであるという感覚は,これはきわめて自然なもので,これは知識が乏しいからとか,あるいは素人だからとか,そのように軽蔑されるべきものではなくて,新しいものに関しては常に不安が伴うというところからスタートするのが社会心理学的に正しいアプローチだと私は考えます。したがって,先ほど鈴木先生が触れられましたけれども,はたしてこれが安全なのか,安心なのかということを確実なことにするためにも,高レベル放射性廃棄物処分を実施する前に,それを実体的に見える形で研究する施設を設け,そしてそこで十分な研究を行い,そしてその成果を公開するという積み重ねがきわめて大事であると思います。私はその時に,何も高レベル放射性廃棄物の専門家だけでなく,あるいはまた原子力の日本の身内だけが集まって研究するのではなく,研究プロジェクトや研究者を世界中に公募して,研究の成果を世界に公表するような先例を日本が始めるべきだと思います。そのようなことを原子力委員会にも,原子力安全委員会にも強くお願いしたいと思います。
 最後にプルトニウム問題です。日本が世界最初の核兵器のターゲットになった被爆国であるということは世界中の人間が知っていることです。しかし,私は1960年代以来,事あるごとにアメリカやヨーロッパの同僚たちから「日本はいつ核兵器を保有するのか」と聞かれ続けてきています。私は残念ながら,あまりよい答えを彼らにすることはできないのです。1990年代には,日本は核兵器を持つということは絶対にあり得ない。これは確証を持って言えることです。それから21世紀に入り,日本は2030年代までは核兵器を持つことはないだろうと思います。しかし,2030年以降は私にもわかりません。これが私の社会科学者としての答えです。アメリカの同僚もヨーロッパの同僚も大体2030年以降のことは「わからない」と納得しているようです。
これは1つは日本人の国民性が環境や時代の変化とともにどう変わるかということが予測ができないからです。世界中の国際政治学者,政治学者,あるいは社会心理学者たちが同意しているところです。この問題をどう取り扱っていくのかは,政治学や心理学の専門家だけの問題ではなくて,やはり日本人の国民の一人一人の意識と政治的選択の問題だと思います。今日たまたまプルトニウムの問題が出てきましたけれども,それをどう処分するのかということ以上に,日本人に関わる限り,プルトニウムを軍事利用のサイクルに回さないという仕組みを作っていくこと,世界中が納得するような核不拡散性の高い仕組みをどう作っていくのかということが,今後の非常に重要な課題であろうと思います。以上です。

【中島】どうもありがとうございました。最後に大変大きな問題も出ましたけれども,あとでいろいろ議論ができればと思います。
それでは中村さん,ジャーナリストの立場から1つこの問題を。

【中村(科学ジャーナリスト)】日本の電力の3分の1は原子力ですから,原子力から出てくる放射性の廃棄物は国民全体の問題でして,たとえ原子力発電に反対の人でも避けて通れない,共同に責任を負わなければならない問題だと思っています。
 それから,高レベル廃棄物というのは非常に怖いというイメージが一般にあると思うのです。原子力発電所より怖いと思われているのではないかと思うのですが,私は原子力発電所よりずっと安全だと思います。なぜなら原子炉は制御棒を付けておかなければ危険なのですが,廃棄物は別に制御棒を必要としないわけです。そのようなことがよくわかっているから,青森県の六ヶ所村ではヨーロッパから運んできた高レベル放射性廃棄物の一時保管を受け入れられたのだと思います。ですから,どうすればこのような六ヶ所村の理解を全国に広げるかというのが1つの問題です。
 それから,専門家は地下に処分をしようと計画をしています。これまでのいろいろな研究では10万年や40万年ぐらいは大丈夫だと言うわけですが,しかし私は,特に日本の地下は炭坑を見てもわかるように水でビショビショの所が多いですから,地下水に溶け込んで生活環境に上がってくるのではないかという心配をするのは当然だと思います。ですから,どこか地下処分をしようと思っても簡単に候補地は見つからないと思います。私は国民の理解を広めるには非常に時間がかかりますから,急いで地下に埋設をするということを考えるのは無理だと思います。
 しかし,青森県知事は「永久に六ヶ所村で引き受けたわけではないから,早いところ処分をする所を見つけてくれ」とおっしゃっているわけです。それに応えなければいけない。ですから,六ヶ所村の次にどこか地上に置く場所を早急に見つけるほうがよいと思います。そうすれば,青森に永久に置いておくわけではないということがはっきりすると思います。
 それで何十年間か百年近く経過をする間に,処分の方法も技術的に進歩するでしょうし,あるいは高レベル廃棄物というのは一種の資源ですから,その資源を有効利用できる方法も見つかるかもしれません。ですから,取り出し可能にしておくということは意味のあることでして,地下に穴を掘って,そこに取り出し可能にしておくよりも,地上に置いておく方がずっと安上がりです。
それから,将来国際的な処分場というものができるという可能性もあるわけで,ですから,私は六ヶ所村の次にどこか地上に置く場所,国有地でも島でもどこでもけっこうですが,何十年間か置くという場所を見つける。合わせて地下に処分をする研究も進めていくということで,この問題は解決できるのではないかと思っています。以上です。

【中島】どうもありがとうございました。それでは伴さんお願いします。

【伴(原子力資料情報室共同代表)】原子力発電に反対して脱原発を進めようという立場から,この高レベル廃棄物の問題について発言をしたいと思います。そもそも放射性廃棄物の問題というのが,原子力発電に反対する一番大きな理由の1つで,私の中でもそうですし,またその反対を主張する多くの方も,たぶんその問題が非常に大きなこととしてあって反対されているのではないかと思います。
 それはなぜかと言えば,原子力発電から生み出された放射性廃棄物というものの毒性が数十万年から百万年と言われているぐらい長く続く。それに対して人類の,ホモ・サピエンスの歴史で言えばたかだか4万年しかない。ほとんど永久的にその毒性が続くと見てよい。そのことが大きな反対の理由になっているのではないかと思います。
 その立場から見ると,人類は原子力発電をすることによって,高レベル廃棄物という非常にやっかいなものを生み出してしまったと思います。ここでまず必要なことは,もうこれ以上廃棄物を生み出さないようにしようと,これは原子力発電所を止めていくという政策ですけれども,そういう政策をまず取るべきではないかと思っています。そうすることによって,発生する放射性廃棄物の量というのは,この時点,あるいはちょっと先の時点かもしれませんが,総量というのが決まってくると思います。その総量を決めた中で,その部分についてどうするかということを議論すべきではないか。原子力発電を止めることによって,原子力発電に反対している人たちも初めてテーブルについて,すでに生み出してしまった放射性廃棄物についてどうするのかという議論が始められるのではないかと私は考えています。
 2点目,ではその時にどのような貯蔵なり,処理なり,処分のあり方があるのかということなのですが,現在の国の政策ではもう地層処分を基本方針とするとなっています。78年の長計から地層処分という言葉が出ていると記憶していますが,この方向ではやはり「始めに処分ありき」という形になっていますので,私は地層処分という基本方針を転換して,使用済み燃料,あるいはガラス固化体という形,いずれにしても高レベル廃棄物について,地上において長期間管理をするということを基本方針とするように改めるべきであると思います。これが2点目です。
長期貯蔵についてはどういうやり方がよいのか,地上と言っても本当に地面の上なのか,少し掘った所なのかとか,あるいはどのようなやり方がよいのかということについて,私の知る限りほとんど出ていません。検討されたとも思えませんので,そのことも含めて,つまり地層処分,あるいは地表での管理といったものを含めて総合的な検討をして,そのプロセスを含めて情報公開をすることによって,おおいに議論をして,はたして本当にどのような政策がよいのかということを詰めていくというのがよいのではないかと思っています。以上です。

【中島】どうもありがとうございました。それでは,山地さん,お願いします。

【山地(東京大学大学院教授)】私の発言の項目は資料の9ページ,資料5−4というところの1枚でまとめてあります。時間がないところなのに最初に余計なことを書いてしまったのは,私は旧円卓会議の時に1回,それからこの新円卓会議の昨年度に1回と今回と3回円卓会議に出させていただいたのですけれども,若干の不満なしとしないという気持ちがあります。と言いますのは,いままで提言をまとめてはこられたのですが,一番重要な提言が「円卓会議を続けることである」という提言で,存在することに意義があるというところにしかまだないわけです。しかし,もうかなり議論をして,われわれも呼ばれて議論をするのですが,ではこれはどうなっていくのだろうかということに関してやはり一抹の不満を感るわけです。やはりテーマと期限を決めて,「行政の評価をやり,提言を行う」と書いてあるわけですから,それをぜひ行ってほしい。余計なことですが,最初に一言言わせていただきます。
 本日のテーマの高レベル放射性廃棄物ですが,まず高レベル放射性廃棄物というのは何かということから考えてみたいと思います。普通われわれ専門家と言われる者から言うと,核分裂をした後出てくる生成物,Fission Productsという無機的な名前が付いていますが,要するに原子力の灰です。放射能を持っているから「死の灰」という文学的な表現をする方もいるのですが,これを指すと思うのですが,しかし広く言えば,使用済み燃料,燃えた後,原子炉から取出される燃料の中に入ってくる放射能すべてだろう。そうするとFission Products以外に,実は超ウラン元素,TRUというものが入っている。物理的に言えばこうなる。われわれはもっぱら高レベル廃棄物と言えば,ガラス固化体というイメージがあると思うのですが,実はこういう定義から言うと,まず使用済み燃料そのものというものも高レベル放射性廃棄物になるという認識が必要だということが1点です。
 また,再処理プロセスからの廃棄物のうち放射能レベルの高いもの,それはいろいろな処理の仕方がありますが,現在考えられているのは,ガラス固化体。次に半減期の長いTRUも問題になりますが,これは現実的にはガラス固化体に混ざってくる。これをどうするかということを併せて考えなればいけない問題だという認識が必要だと思います。
 そこで,ではどのように問題設定をするかということですが,つまり,高レベル廃棄物はしたがって放射能が高い。放射能が高いというのは重量あたりとかボリュームあたりの放射能が高いということです。それでいてしかも半減期が長い廃棄物も混っている,これをどう処理するかという問題です。使用済み燃料もあれば,再処理廃棄物の処理された固化体である場合もある。これをどう処理するかが問題なのですが,これに対してわれわれの態度として,ゼロリリース,最近ゼロ・エミッションとも言いますが,そのようなものを要求するのか,あるいは許容可能なリスクというコンセプトを持って,リスクはあるのだけれども,ここまで許容できると考えるか。これは大きな違いです。技術的に言うと,ゼロリリースはあり得ないというのが私の考えで,許容可能なリスクと考えざるを得ない。しかし,ゼロリリースを常に求めようとする指向性は必要なのですが,でも,許容可能なリスクという概念以外に処理はできないと考えています。ゼロ・エミッションというのは耳障りのよい言葉だけれども,それに惑わされないようにしたいということです。
 次には考慮する時間範囲をどうするかということです。高レベル廃棄物の場合,先ほどから数万年とか数十万年という話が出てくるわけです。一方ではまた次に置く場所を考えたらよいという,数十年あるいは百年というオーダーの考え方もある。これをどちらで考えるかはものすごく大きな差です。実は私は数百年派です。数十万年,あるいは数万年を超えるところをわれわれがいま議論をする,議論はもちろんやっていいわけですが,これを政策に反映するというのは無理ではないか。マンモスが数万年前に何か間違ったことをやって,地上の生物に大きな影響力を与えたといってわれわれが批判をするでしょうか。そういうことではないと思うのです。われわれができる範囲のことを一生懸命やる。もちろんその中で考え得ることがあれば考えるということで,私は数百年派ということです。
 しかし,数百年にしても,環境安全性に責任は必要でして,これを明確にする必要がある。また,費用はかかるわけで,いくらぐらいかかって,だれがどのようにその費用を負担するか,これも明確にする必要がある。それから,すでに存在する高レベル廃棄物がある。原子力から撤退しても,すでに存在する高レベル廃棄物をどうするか。これらをすべて踏まえて,ではいまからどうするか。このように考えていくべきだろうと思うのです。
 それでどのような選択肢があるか。実はもっと多様にあるのですが,かなり割り切って書きました。いま主流の考えは,ガラス固化して地層処分する。つまり,再処理廃棄物をガラス固化して地層処分をするということです。これは非常に明確化されつつあります。原子力委員会の専門部会とか,総合エネ調の原子力部会とか,あるいはJNCなどの努力によってこの方式は具体化されつつあり,これは非常に結構なことだと思います。国,実施主体,電気事業,それぞれの役割を決めていく。責任を明確にしていく。国は規制,実施主体は管理に責任を持ち,電気事業は費用負担をする。簡単に割り切って言えばこのような方向で,私はこれは結構だと思います。費用も見積もられていて,百年間ぐらいで3兆円ぐらいかかる。これは使用済み燃料4万トン相当だと思いますが,4万本分と称しています。私はこれは高いと思いますけれども,ただ費用見積もりが出たことは結構だと思います。これを他のオプションと比較するためのリファレンスに使えばいい。資金管理をどうしていくか,この3兆円をどうやって集めていくかも問題ですがテクニカルな事柄です。これは各論で出てくれば議論をしたいと思います。
 しかし,このような方向が一つ出たことはよいのですが,これで終わりというのではなくて,これで1つはできますよと担保しておいた上で,いろいろな選択肢を議論していくべきだと私は考えています。その選択肢としては,先ほどのローリングで置き場所を探していくというのもありますし,使用済み燃料処分というオプションもある。OECD/NEAの評価によれば,処分のほうが安いという評価もあるわけですから,これも検討に値すると思います。それから国際共同処分という考え方もある。これはもし人類的な原子力の課題となれば,これも不可能ではありませんし,よりよいものが見つかる可能性がある。
 またもう1つは,群分離,消滅ということを言われる方もいらっしゃる。これは私はリスクの点,先ほどの許容可能なリスクということから言うと,実はこれにものすごく期待する人がいるものですからオプションの1つであるけれども,期待しすぎは避けたいと考えています。ちょっと時間が長くなりますけれども,せっかく付けた資料ですからここで説明させていただきたいのです。
 一枚の資料の次に付けた長い論文はこの図を説明するだけです。17ページに図の3というのがあります。これはちょっと見にくい図で,短い時間で説明するのは大変なのですが,毒性とリスクというのがありますが,毒性という横軸を見ると時間が書いてあるわけです。10の2乗が百年,10の4乗が一万年,10の6乗が百万年なのですが,毒性を縦軸に見ると,S.F.という使用済み燃料がウラン鉱石並の毒性になるには,100万年近くかかる。V.W.と書いてあるガラス固化体だと一万年オーダーになる。TRU Freeという群分離,消滅をやると, 1,000年ぐらいになる。これはよさそうに見える。これが群分離,消滅のメリットです。ところが一方これを地層処分して,今度はリスクというほうを見ていただくと,ウラン鉱石の自然バックグラウンドとか,あるいは規制対象外になるレベルから,いずれも何けたも低いところのリスクの議論をしている。もし許容リスクを受け入れるとしたら,この差を認めることに意味があるのだろうか。あまりたいして意味はないのではないかというのが私の疑問です。これはちょっと余計なことを言いました。
大体以上でして,とにかく選択肢を明瞭にして,透明な議論をして,評価して提言していただきたいということです。

【中島】どうもありがとうございました。これで一渡り,いわゆる招へい者からのご発言を終わりました。それでは,議論は3時くらいまで続けてコーヒーブレイクにしたいと思いますが,次の議論に移る前に2,3分ここで休憩を取らせていただます。その間に相互の討論でどういうことを言うかということを考えておいていただければと思います。それでは休憩に入ります。2時25分から再開します。

−−休憩−−

【事務局】短い時間で大変恐縮ですが,そろそろ会議のほうを再開させていただきたいと思います。会議場の中にお入りいただいてお待ち下さいますよう,お願い申し上げます。まもなく会議のほうを再開させていただきます。よろしくお願いします。

【中島】それではそろそろ会議を再開したいと思います。よろしいでしょうか。それではこれから大体3時をめどにして,前半の議論をしたいと思います。これは招へい者相互の間で,いまお互いにプレゼンテーションを聞いておられて,疑問なり何かを提示していただくことから議論を始めたいと思います。最初に市川さん,何か先ほど言い残しがありましたから,まずその辺から始めて下さい。

【市川】それでは,先ほど途中までで時間がなくなってしまいましたので,残りの部分を簡単にお話しさせていただきたいと思います。これはページでいくと2ページの3というところになる本題と言えば本題ですが「高レベル放射性廃棄物処分の方策について」というところです。
 先ほどから出ていますように,日本では高レベル廃棄物の処分と言えばガラス固化して深地層に隔離する,このような方向が,何かもうほぼ決定したかのように進められているわけです。しかし,確かに先ほど話しましたように,政策的に先行して技術が追いかけていくということがあったわけですが,この高レベル廃棄物処分については,時間がまだ十分な余裕がある問題でして,決してそのような政策先行的なことをやるべきではないと思うわけです。
 例えば固化体を作るという問題にしても,ガラス固化体というのが必ずしも最善の方法であるのかどうか,他の方法というのも提案はされている部分はあるわけですが,そのようないわゆるオプション的なものについて,本気になって国がオプションの可能性というものを取り組む姿勢があるかどうかというのが非常に問題ではないかと思います。
 例えば原子炉の場合軽水炉が政策的に先行していたために,もっと安全な原子炉ということで,固有な安全炉とかいろいろアイディアが出るわけですが,アイディアが出てもはたしてそれに対して研究開発を進めるだけの裏付けがあるかというと,事実上ないわけですから,これはもうアイディアだけで終わってしまうということがあるわけです。高レベル廃棄物の問題についてはそのようなことがあってはならないと思いますし,そのような点では,もっといろいろな処分の可能性について,広くいろいろなお金とかの保障も含めて,平行して進めていくという政策が必要ではなかろうかと思うわけです。
 ここにも書きましたけれども,例えば地下水との関わりなどに関して,2000年レポート,第2ドラフトとかいろいろと出ていますけれども,一方では,これはアメリカの地下核実験場でのデータから,いままでプルトニウムというのは吸着するから地下水中の移動は非常に遅いと言われていたのが,意外と粒子状のものにプルトニウムは吸着してコロイド状になって地下水中で速く移動すると,そのようなデータが出たりしているわけです。したがって,決して結論を急いではならないと私は思うわけです。
 それから,消滅処理と群分離というのが先ほどから出ているわけですが,要するにいわゆる高レベル廃棄物処分の対象となる非常にたくさんの放射性物質の混合物です。その中から比較的危険度の高い物と低い物を分けたり,あるいは将来役にたちそうなものを分けたり,そういうのが群分離という考え方ですが,また一方ではこの群分離をして,それを加速器や原子炉に入れて無害な,あるいは害の少ないものに変えようというのが消滅処理ですが,群分離と消滅処理とだけが結びつくのではなくて,地層処分のためにまた群分離をするという考え方もまた一方では出ているわけでして,そのような多様な考え方というのが今後進められていくべきではなかろうかと思います。3の問題について補足をさせていただきました。
核拡散の問題はまた別ですから,後に議論の時にまた申し上げたいと思います。

【中島】どうもありがとうございました。それではどなたからでも結構ですが,手を挙げてご発言を要求していただければ,議論を進めるのに便利かと思います。はい,中村さん。

【中村】私も市川さんがおっしゃるように,時間はあると思うのです。時間はあるわけですが,政治的には時間がないのです。青森県知事は「六ヶ所村の次に処分をする所を早く見つけろ」とおっしゃっているわけでしょう。「まあまあ」と言ってうまく説得できればいいですけれども,知事さんも世間に向かって公約をされているわけですから,そうは延ばせないだろうと思います。その問題は,やはり単なる技術だけで解決できる問題ではないです。ですから,知事さんが当面安心されるような案を出す必要があると思うのです。そのために私は,六ヶ所村であと30年か50年したら別な所に移しますという場所を見つけるのは,地下処分場の候補地を見つけるよりも早いと思うのです。ですから,そのようなことで時間を稼いで,あとはあわてずにゆっくりやっていったらいいと思います。

【中島】どうでしょうか。そういうお考えが出ているわけですが,それを引き受ける所があるかというのがまず問題だと思うのですが,中村さんその点については,どこかあると思いますか。

【中村】あると思います。つまり,地下にということになると,地下の構造を調べたり水はどうとか,あるいは水に溶けてどのぐらいのスピードで移動するとかしないとかというようなことになりますが,地上でしたら,大きい活断層があって,近々地震が発生するという場所でなければよいわけです。国有地とか,できれば人が住んでいない国有地の無人島のような所であればなおよいと思います。個人的には長崎県の元の炭坑の軍艦島,あの地上に設備を造ればよいと思うのですが,長崎県ですからなかなか難しいのではないかと思いますが。地上に50年ぐらい置く場所でしたら見つかると思います。それは地下より早いです。何とかしなければ,これはどうしようもないわけです。

【中島】おそらくその場合は,「何年間置きます」ということをはっきりしたほうがいいですね。

【中村】そうです。

【中島】青森の場合も結局非常に心配しているのは,ずっとそのまま置かれるのではないかということを心配しているわけですから,同様によそに移しても,うちがずっと永久処分場は困るという考えでしょうから。

【中村】青森がお受けしているのはヨーロッパから持って帰ったものだけで,国内の再処理場から出たものは,たとえ一時的とはいえ預かるとは言っていないわけです。ですから,早急に一時保管をする場所は見つけなければいけないわけです。

【中島】なるほど。どうぞ。

【小沢(社会評論家)】素人考えだと,いつも地下,地下とずっときたはずなのですけれども,いまのように地下に入れるならきちんとそれの研究をしなければだめだというお声があって,それよりも地上ならよいだろうというのは,いつ頃から起こってきたのですか。

【中村】いや,だれも言ってないですよ。

【小沢】言ってないのですか。今日初めて出たわけではないですね。内々にそういう話は出ているのだけれども,なのですか。

【中村】私は2〜3年前から言っていますけれども。ヨーロッパに行って聞くと,イギリスなどではオプションの1つとして,フランスもそうですけれども, 50〜100年ぐらい地上に置いて様子を見ようというオプションはあります。

【小沢】日本はなぜ最初から地下ということでもめてきたのですか。

【中村】ヨーロッパが地下に埋設するということを考えたからでしょう。地下に置いておけば,一番人間から隔離できるからいいと思ったのでしょうね。

【小沢】そういう考え方は,相当安直でまずいのではないですか。

【中村】いや,だから,そこのところは見解の相違なのでしょう。専門家は地下が一番いいと思うし,素人はやはり地下は怖いなと思う,そういう見解の違いなのでしょうね。私は素人の発想でこの問題に取り組んだほうがいいと思うのです。

【小沢】そうすると,鈴木先生にお伺いしますけれども,先ほど先生も「地下はちょっと」とおっしゃっていましたけれども,それは納得しない人たちがいるから,ちょっと地上にしてみようということなのですか。

【鈴木】ええ,やはりこれは安全性について十分注意したほうがよい廃棄物であることには間違いないわけで,したがって最終的にどのような状態にするかについては,一般の人たちに安心してもらう必要があるのはもちろんなのですが,それだけではなくて,専門的にもここなら大丈夫だということをきちんと確認する必要があるわけです。それで,専門的に考えた場合には,地下と安直に考えているというよりは,長期間の安全性ということを考えた場合には,少なくとも地上に置いておくよりは地下のほうがいろいろな意味で優れているだろうという考え方で,地下深部に埋設するという技術的な方法が検討された。
 しかも,そのことだけでコメントしますと,今年の4月にアメリカの地下の埋設処分場というのが実際操業を始めたのです。これは非常に大きなことではないかと思うのです。地質的な環境というのが大丈夫かどうかというのは長期間大議論をやったのですが,これでよいでしょうということになって,これは一般の方々も納得され,実際処分の埋設が始まったのです。ですから,地下は,そもそも考え方は非常に無理があるということでもないのかなという感じはしています。ヨーロッパでも,かなり本格的にそういうことが実現に向けて進んでいる所もあります。
 ただ,だからと言って,これは簡単に多くの方々が納得されるということでもなさそうだというのは明らかです。そこで,中村さんのご提案は,何というか,次善の策というか,実際地下深くに埋設するということが事業として始められるに至るまでは相当の期間を覚悟せざるを得ないだろう。したがって,その期間をどうするのかということを考えた場合は,地上の施設に確実に保管しておくということでいいのではないか,そのほうが現実的ではないかということですね。それは最終的な状態ではないということは,たぶん中村さんもお考えだと思うのです。そういうことだと思います。
 私はそれは選択肢として十分あり得ると。ですから,私は今日いろいろなご意見を伺っていて,要するに,選択肢を示し,情報をいろいろ提供して多くの人にこのことについて納得できるようなプロセスが必要だと,私もその通りだと思います。
 その通りで,地上の貯蔵施設を考えるということもよいことだと思うのですが,しかしやはり最終的な処分の状態としてどのようなものがよいかについて,検討は加えていったほうがよいと思うのです。その検討を加えるというのは,単に勉強をしているということではなくて,実際研究をしてみるということだと思うのです。それを先ほどこの場でお願いしたわけです。実際の地下の空間を調べてみる。そして,多くの方にそこに入ってもらって,見てもらう。そういうことが,多くの人がよいのか悪いかのという判断をいただく場合に,おおいに参考になるだろう。
いま日本では地下の研究施設を造ることについても賛成していただけない。これは私の知っている限りでは日本だけです。

【小沢】それは民間レベルで納得できないということですか。

【鈴木】民間レベルというか,地元の方々,およびそういうことに反対している方々がいらっしゃるということで,いわゆる一種の立地問題ですから,これも難しいことではあるのですが,しかしこれは私は今日のような議論を今後とも続けていくに当たっては,やはり研究は進んでいないと,実際どういうことなのかということが,単に想像で議論をするだけであって具体性は出てこないのではないか。こう思います。

【中島】ありがとうございました。田中先生,この問題について,社会科学者としての立場からどうお考えですか。いま出ている議論についてです。

【田中】ありがとうございます。これは,いろいろなことが同時並行的に進行しなければならないことだろうと思うのです。まず1つは,安全性の確保,それから安心を獲得するための研究,それから研究の施設。特に先程来鈴木先生が言っておられるように,深地層,つまり深い所の地層というものがいったい人間にとって何であるのかということに関して,われわれは実体験を持っていないのです。たぶん専門家の方でもよほど特殊な方でないと,地下 500mの下まで潜ったという経験を持った方は非常に少ないと思うのです。専門家ですら地下数百メートルという知的な,あるいは実際的な経験のない状態なのですから,まして非専門家の場合は,地中に高レベルな廃棄物を一時置いておき,そして最終的には埋没してしまうのだ,永久的にその場所に埋めてしまうのだと言われても,なかなか理解できません。理解ができても不安が残るのですから,理解できなければ一層不安が残ります。これは専門家といえども説得力に欠くということがあると思います。したがってやはり深地層を研究するための研究施設は造らなければならないし,そしてそれはやはり一般市民に公開して,深地層の体験を共有してもらうということが1つ重要なことだろうと思うのです。
 そこで私は先ほど申しましたように,これは国際的に公募するということでもよいではないか。そのような国際的な共同研究や,国際的に人の流れが起こってくるようなところから,国際的な高レベル廃棄物の処分というものの,よりグローバルな枠組み,あるいは計画というものの芽が出てくるかもしれない。
 もう1つは,最終処分場の施設,あるいは事業化ということです。中村さんは先ほど,そういう所もある,土地もある,あるいはそういう地域社会がある,ということを示唆なさったけれども,しかしいまのところで手を挙げる地方自治体があるでしょうか。最終処分場がはたして魅力的なものであるかどうかということに対しては,条件が全然示されていないのです。ただわかっているのは放射能の「ごみ」が来るというだけ。これは産業廃棄物であれ,生活廃棄物であれ,放射性廃棄物であれ,とにかく「ごみ」が来るということだけでは引き受け手はいない。やはり引き受けてもらうには,それなりの条件が揃わなければいけない。では,どのような条件を揃えるのか。これが事業化ということを平行して考える場合の非常に重要な要(かなめ)の1本だと思われます。したがって,こうした社会的,経済的な条件の研究も同時平行的にやらなければならない。
 それからもう1つ大事なのは,やはり,最終処分場がどのようなものになるのかという「イメージ」。これは国民にも,地元住民の人たちにも,あるいは有識者にも,いまだに最終処分場のイメージははっきりしていないわけです。せめて有識者やジャーナリストに対しては処分場の「イメージ」ができるような情報をたくさん提供してもらわないことには,判断のしようがない,ということがあります。これは情報提供の問題でもあります。
ですから,処分の計画者たる者は,3つぐらいのことを一度に平行してやらなければならない。しかし,無限に時間があるわけではなく,せいぜい将来20〜30年の間にはいろいろなことに着手して,かなり進行していかなければいけないという,きびしいタイムスケジュールでやらなければならない。特に現在「中間貯蔵」と称して仮に置いてある,例えば青森県というようなところでは,数十年の余裕ではなくて数年の余裕しかないかもしれない。もしどこかへ移して地上に保管しておくのだったら,その代替地を準備するのには数年の余裕しかない。というような時間の尺度が,制約条件としてあるということでしょう。処分場を計画する時は,各部分をばらばらにではなく,それを平行して全体的,包括的に計画しなければならない。大変難しい連立方程式を解くということだろうと思います。

【木元(原子力委員会委員)】ちょっと私からいいですか。いまの関連なのですけれども。

【中島】はい。どうぞ。

【木元】私の頭の中の整理をさせて下さい。最終的に地層に処分するという考えがまずわれわれの中に共通認識としてある。その上で話を進めていくプロセスの中で,50年と中村さんは言われたけれども,一時的にでもよいから,地上できちんと管理して方法もあるだろうとおっしゃった。けれども,それは先ほどちょっとご発言があったように,六ヶ所村の場合でも「一時的にわれわれは引き受けていますよ。ただ早く最終処分地は決めて下さいよ」という話があるということでした。先ほどの鈴木先生のお話にもありましたが,仮に一時的というか,50年のタームかもしれませんが,地上で保管するとしても,引き受ける側としては,最終処分地を決めてもらうならばここで保管してもよいという条件つきにならないのかどうか。やはり最終的な処分地という意味ではないですね,地上管理は。そこは最終処分になるというご発言ではないですね。

【中村】地上にはとりあえず六ヶ所以外に50年置いておくということですね。ですから,最終処分地ではないわけです。最終処分地は地下になるとは限らないと思いますよ。たぶん,地下だろうとは思いますけれども,もっとよいアイディアが出るかもしれない。

【木元】そうすると,それもいま田中先生がおっしゃりましたけれども,平行してやることにはもちろん異議がないということ。

【中村】もちろん。

【木元】それだけちょっと確認させていただきました。ありがとうございました。

【中島】よろしいですか。どうぞ。では伴さん先に。

【伴】その平行して研究をやるということなのですけれども,先ほどもありましたように,具体的に名が挙がっている幌延とか瑞浪とかはすごく強い反対運動があって,やはりそんなにすぐうまくいかなし,その中には非常に不信感があると思うのです。私は先ほど量を確定することによって,その不信感が少しでもなくなって,同じテーブルに付けるのではないかという話をしたのですが。
 もう1つは,結局地層深い所を研究して同じような場所というのはないわけだから,そこを研究して適地となったらそこに埋めるしかないという方向に持っていかれるのではないかという不信感というのがあるわけです。ですから,一概に花崗岩質の地層と言っても,どこも同じというわけではないですから,その不信感をどうやって取るのかという話になってくると思うのです。
そこで,一概に研究はよいと言ってしまうのではなくて,むしろ先にどのようなルールでやるかというルール作りとか,あるいは例えば廃棄物政策法のような法律でここまではとにかくやる,でもそこは最終処分地ではないよというようなことをきっちり枠をはめることが必要です。それで研究のルールとか主体とかいうものを,月並みな言い方をするといまの核燃機構は自分のところも捨てたい物を持っているわけだから,ですからもう少し違う人たちが研究する。これは、例えばのことですけれども,そのようなにルールををあらかじめ決めて,しかもそれを法的にきちんと整備しておいて進めていくほうが,スムースなのではないかという気がします。

【中島】はい,山地さん。

【山地】この議論で,1つキーワードになるのは,回収可能性(retrievability)ということだと思うのです。地上に高レベル廃棄物を置くのは処分ではない。貯蔵です。地下に置くのはいずれ処分に移行するという筋書きだと思います。ですけれども,回収可能性というの条件があれば,置いておけば,それを地下に置いても,それは一時的な貯蔵ということになり得るわけです。しかし,いまは処分概念として地層処分を考えていますから,retrievabilityというのは非常に言いだしにくいというのはよくわかるのですけれども,あるところまでは回収可能であるということをきちんと保証しておけば,地下でも一時貯蔵,長期貯蔵ということになりうるわけです。処分の研究をされている方には非常に扱いにくい概念だと思うのですが,回収可能性というものを使って,地層処分と言わず,地層中に保管するという考え方の中に入れていくことができる。
そのような努力をしないと,いま伴さんがおっしゃったように「実験でとりあえず研究するのです」と言っても,処分もそこになってしまうのではないかという不安を解消できないのではないかと思うのです。それを解消できなければ,やはりとりあえず地表だとなる。地表は必ず処分ではないから,いずれどこかに行くということですから,だから受け入れられる可能性がある。私はですから,回収可能性というのを,処分を考える方でも技術的にある程度保証していく,実現可能なものにイメージを作っていく,これが大事ではないかと思います。

【中島】はい,どうぞ。

【茅(慶應義塾大学教授)】いまの問題に関連するのですが,実は私は前からそれは言っていたのですが。地層処分の議論というのは前からあって,その時によく言われるのは「埋めておいて,後世の人が知らなくても全然平気なように」という説明をされるわけです。しかし,私自身が非常に気にするのは,後世の人がたまたまそれによって被害を受けて,それを昔われわれがやったことであると知ったら,たぶん大変に怒るであろうという気がするのです。つまり,やはりそういった意味で,後世の人に知らせなくても大丈夫なようにというのは,一見いいように見えるのですが,非常に安心できないだろうと思うのです。
 ちょっと違う話のようなのですが,私がそれで思い出すのは,1980年代にご承知のようにテクノロジー・アセスメントというのが非常に流行った時代があるのです。ところが,現実的にはそれはほとんど根付かなかったわけです。なぜ根付かなかったかというと,事前に評価する,そしてそれで終わりというのでは一般の人々は納得しないのです。むしろ事後で評価しないとやはりだめなのです。ですから,やはり考えられる方法というのは,最初もちろん事前に評価することも必要ですけれども,ずっとそのあともウオッチして,何かあったら直ちに対処できるような体制を作っていくということだろうと思うのです。
 この問題でもそうで,単に地層の中にガラス固化体で埋めて,そして封じ込めて後は知らないというのでは,やはりそこに住んでいる人が安心できないだろう。ですから何らかの形で,常に後世の人でもそれをモニターして管理できるだけのものを残しておくべきだと。そうすることによって,いま山地さんが言われたように回収することもできるだろうし,対応することが可能だ。ですから,この問題に関しては,地層処分であれ何であれ,そういった可能性を必ず作っていくということが私は基礎だと思うし,そういう主張を前に何度かしたことがあるのですが,結局今に至るまで,その考え方はどうも政府のドキュメントにはあまり出てきていないのです。これは木元さんがよくご承知のことだと思うのですが。
そういった意味で,今日出た地上貯蔵という話も,実はそのような考え方の反映ではないかと私は思っているのですか,これは木元さんはその辺の事情をよくご存じだと思うのですが,政府のほうでは何か反応はないのでしょうか。

【木元】私もはっきりお答えする資料は、確実なものとして今は持っていませんけれども,いままで私どもが鈴木先生とご一緒にこの高レベルの処分問題をずっとやらせていただいた懇談会で,やはり基本的には最終処分をするのだ,だけれども,これは後世の人がわかるようにはしようという話は十分出ているのです。ただ,文言としてきちんとそれが法的に担保されているかということは,それはできていない。だけれども,観念としては,何年先になったにしてもここにはこういうものがあるのだと,そしてやはり回収可能だというものも明示する必要があるのではないかというご意見はかなり出ているのです。ですから,いまはそういうことがまだ確定はされていませんけれども,そのようなニュアンスが,かなりきちんと報告されているのは事実だと思います。

【中村】私がお答えします。私は原子力委員会の高レベル廃棄物懇談会のメンバーで,最初にそういう発言をして,途中でもやりましたけれども,最終報告書を見るとまったくそれはねぐられています。

【中島】そういうことだと思いますが,このretrievabilityな処分は,フランスがちょっとそのように戻りましたね。ある意味で一番地層処分が進んでいると言われていた国が,やはり回収可能をオプションとして残すというように明確に変わりました。日本はその前にどうするかという話がまだ決まっていないのです。ですから,そこから始めなければ。それが田中さんが言われた3つぐらい平行してやらなけければいけないというご意見だと思うのです。
 やはり,原子力委員会は,木元さんはオブザーバーという資格で出ておられるだけですから,ここで原子力委員会の責任などということは言いませんけれども,やはりかなりお役所としてはいままでの方針を変換することになりますから,それはかなり大きなフリクションが起こるだろうと思います。しかし,われわれとしては,提言することはモデレーターの意見さえまとまれば可能ですから,今日の議論は大変貴重であったと思うのです。
もう1つは地下処分ということについては,私は国際学術連合(ICSU)が最初にハリソン委員会を作った時に,その委員のメンバーであった東京大学の上田誠也さんから,「お前たち原子力屋はやばいものは目の前から消そうとして地下処分をするのだろう」と言われて大変困ったことがあります。地下のことを知っている人ほど,地下はわからないのだということを強調されますね。ですから,地質屋を集めて「何千メートル下はどうだ」と聞くと「わからない」という返事がくるのが科学の現状だと思うのです。ですから,そういう意味では地上のほうがずっとわかっているということは確かに言えるのではないでしょうか。

【木村】私は現在は研究者ではありませんが,地盤についての研究を30年ほどやってきました。そのような立場から,世界の研究の状況についてコメントしたいと思います。
 いまから25年ほど前,私が英国に居ました時に,すでにケンブリッジ大学では核廃棄物地下埋設の研究をしていました。かなり危ない研究をやっていたので,びっくりしたことを覚えています。フランスでも同じような研究をやっていました。ですから,たぶん彼らはそういう研究をある程度土台にして,地下埋設ということを打ち出したと思うのです。それが日本に入ってきて,それがよいのではないかという一応の結論が出たのではないかと思うのです。地盤の研究者として申し上げると,深い所なら安心だということはないのです。あるフランスの研究者が特殊な実験をやって,かなり深い所に廃棄物を埋めても動くというウォーニングを出しています。これは全面的に支持はされていないのですが,1つの可能性として私どもの分野でかなり広く受け取られています。そのようなこともあって,ヨーロッパは多少地下の深度に埋設するということに対して反省をし始めたのではないかという気がします。
 それから,もう1つ先ほど鈴木先生が言われたアメリカについては,私どもの専門の研究者は,いまから15年ぐらい前にいっせいに地盤環境の分野の研究を始めました。ですからアメリカでは既に汚染物質の地盤内の移動のようなことに対して,非常に厚い研究者層ができています。私はアメリカで地下処分が始まったというのは知りませんでしたが,彼らはある程度のバックデータを蓄積したのではないかという気がします。
ところが,日本では,地盤が非常に汚染されているのに,これまではほとんど研究が行われていないのです。そういうところの立ち後れがこの原子力の領域にまで影響しているのではないでしょうか。

【中島】どうもありがとうございます。そろそろ3時ですから,小沢さんの発言で休憩に入ります。

【小沢】午前中の議論の流れで言いますと,そうすると,「政策は決定しているけれども,技術の裏付けがないままにきた」と市川さんはおっしゃいましたし,それから田中先生は「処分する前に,処分を研究する施設を作るべきであった」とおっしゃいました。この2つの点というのは,皆様の共通の認識と理解してよろしいのですか。

【田中】いまの点はすでに,現在の長計に書いてあるわけです。ですから,これは私はただ言い直しているだけです。特にこれをやらなければ困りますよということを……。

【小沢】皆さん,今日のそこの点は異議はないということでよろしいですか。それで午後の議論につなげてよろしいですか。司会ではないので,質問なのですが。

【鈴木】いや,市川先生が言われた「技術的にまだ十分検討されていない」,あるいはいま木村さんがお話になった点,確かに研究というのはある意味では常に前進していかなければいけなくて,これでもう研究は終わりましたということはないのだと思うのです。ですから,私はこれからも研究は必要だと思っていますが,ただ何というか,例えば先ほどちょっと例としてお示ししたアメリカの例は1つの例に過ぎないのですが,この地下の空洞を掘ったのは日本のメーカーなのです。ですから,そういうのを技術がないというのかなと言う気もするのです。これはある意味では程度問題なのですが。私は結論として申し上げたいのは,繰り返しになりますが,木村先生がおっしゃるように,地下についてはよく調べておく必要があるのです。そのことはやはり研究できる施設をぜひこれは造っていただけないかなと。少なくともそれについてご理解を得られなければ,実際の廃棄物を持ち込んで処分するということはもっと難しいわけですから。
 私は先ほどからお話に出ていたので1つだけコメントしますけれども,研究施設が処分場になるのではないかということについて,少なくとも地元の方々がご心配だというのはよくわかるのです。ですから,そうではないということをご説明する必要があるのですが,大事なことは,研究している間は,そこには廃棄物は持ち込まないということなのです。ですから,これはそういうことが条件としてきちんと約束されていれば,そこが実際に処分場になることはあり得ないわけです。廃棄物を持っていかないわけですから。
ですから,そういうこととちょっとretrievabilityの話はちょっと違っているのではないかという気はします。retrievabilityについては,実は茅先生の原子力部会の報告書の中にも,そういうことがニュアンスとして入っているのですが,たぶんまだ十分そういうところが報告書から読みとれないのだと思いますので,これについてはもし休憩のあと時間があればご説明させていただきたいと思います。

【中島】よろしいでしょうか。それではちょうど3時ですので,事務局からアナウンスして下さい。

【事務局】それではここで休憩に入らせていただきたいと思います。円卓の先生方がご退場になられますので,いましばらくご着席のままお待ち下さい。
 会議の再開は15時20分,3時20分とさせていただきたいと思います。それまでにご着席いただき,お待ち下さい。トイレのほうは会場を出てすぐ右手のほうにあります。また先ほどと同様にドリンクサービスを行っていますので,ぜひご利用下さい。あと受付にてお渡ししたバッジですが,再入場の場合にご確認をさせていただく場合がありますので,必ず胸のほうにご着用をお願いします。また会場内は禁煙となっていますので,おタバコをお吸いの方はロビーを出られて,左奥の喫煙所でお願いいたします。それでは20分間の休憩に入らせていただきます。

−−休憩−−

【事務局】それでは円卓の先生方もご着席になられましたので,本日の原子力政策円卓会議,後半の議論にむけて再開させていただきたいと思います。中島さんよろしくお願いいたします。

【中島】それでは,前半の議論に続いて議論を続けたいと思います。最初に先ほど鈴木さんが何か言い残したことがあったようですが,よろしいですか。

【鈴木】retrievabilityと英語で言っていまして,つまり廃棄物を地下に埋設したものを,もし必要性があれば再び取り出すことを可能にするかどうかということです。このことはどのような状態にしても,そこに廃棄物があることがはっきりしている限り,必要があれば取り出すことは可能なので,これもまた程度問題なのですが,しかしおっしゃるように「廃棄物を埋設したら,これはまったく管理をしなくても大丈夫です。ですから,一切関知しません」というような考え方がもともと難しいことは明らかです。
そのような意味では,いまもう各国の計画の中で「いずれにしても,retrievabilityを少なくともある期間は考えましょう」ということになっていると思います。日本においても,例えば原子力部会が出した報告書の中で,これは処分に実際にどのくらいの費用がかかるのか,あるいは処分を実施する事業主体はどのような要件を持っているべきかということが主たる議論のポイントだと思いますから,retrievabilityそのものは主なイシューではなかったのですが,その報告書の中で,少なくとも埋設後 300年程度は管理を続けることになっています。これは別の言い方をすればretrievabilityが確保されている。
それで 300年がよいかどうかということももちろん技術的に評価しなければいけないのですが,そのこと以上に,社会的にそのようなことが理解されるかどうかにかかっていると思います。これは私は今日の会合でも冒頭に申し上げましたように,そのようなことは焦らずに納得いただくまで続けることは可能だと思うのです。
ですから,これは私どもの説明が稚拙というか不適切で,要するに「埋設をしたら,何もしなくてもこれは安全なようにできるのです」と多くの方に受け取られているようですが,たしかに「技術的にはそのようなことが説明できるぐらいまで,いろいろな手段を講じておきます」という考え方はいまでもあるのですが,だからといって管理を全くしないということではないことを,改めてここで申し上げておきたいと思います。

【中島】なるほど。よろしいですか。

【小沢】しつこいようですが,皆さんここでは,地下埋設は当分見直すという考え方は一致していらっしゃるのですか。軍艦島は別として,むしろ地下に埋設して貯蔵することについては,なかなか国民の理解を得がたいと。

【鈴木】ですから,いろいろな技術開発をし,また実際の地下の空間を見ていただいたりして,そのようなプロセスを経た結果,「やはり地下に埋設をすることはいいだろう」と思っていただけるのではないかと私は期待していますけれども。

【小沢】いま人が入って,皆で「なるほど」というような,見られる地下があるのですか。

【鈴木】いまでも見ていただけるのですが,ただしそれは,高レベル放射性廃棄物の処分のためにもっぱらここでこのような研究をしていますというところではないのです。そこは処分場にすることはないと,そのような約束をしなければいけないと思うのですが,仮にどこか別な所に処分場を造るとすればこのような所なのですよということをご説明しわかっていただけるようなものは,日本にはないのです。

【小沢】ないのですね。

【鈴木】それはないです。ですから,部分的なものはあるのですが,いま申し上げたような意味で,研究施設が建てられているということはないのです。
ところが,日本の場合は海外と共同研究をこれまでもずっとしていまして,そのような共同研究の成果が相当あります。そのような意味では,それは先ほど伴さんも言われていたのですが,どこかを調べておけば他のところも全部同じだということはないのですが,しかし,具体的に地下はどのような所なのか。例えばこれは地下発電所とか石油備蓄基地があります。これは同じように地下に大きな空洞を造ってやっているわけです。これを見ていただくだけでも,ある意味では地下とはどのような所か,これは相当わかっていただけると思います。
それならば全国にありますけれども,しかし,高レベル放射性廃棄物を埋設することはどのようなことなのかを,それを前提にして大きな施設を造って,多くの方に見ていただくようなことが可能かというと,日本ではそれがまだできない。これは外国に行くと,有名なよく名の知れた所があるのです。

【中島】ニッカマウンテンとかね。

【鈴木】それはあるのですが,まだ日本にはない。このような状況です。

【小沢】そうすると,先ほどからしつこく伺っていますが,処分方法,施設についての研究開発が同時に進行すべきだったのに遅れてきたことが,この貯蔵についても相当大きな齟齬を起こしているという市川先生の指摘は,共通認識だと考えてよろしいのですか。

【中村】いや,研究が遅れたよりも,何よりも……。

【小沢】政策が先行した。

【中村】いえいえ,そんなことをクシュグシュ言ってみてもいまさら仕方がないですね。ですから,処分場を決めようとしても住民の合意がなければだめだ。合意を得るには相当時間がかかるでしょう。ですから,時間をかけてゆっくりやるしかないわけです。急いでも,ゆっくり時間がかかるわけですから。けれども,青森県知事は「早く次の場所を見つけろ」とおっしゃっていますから,そちらの対策は急ぐ必要がある。地下に処分場などそう簡単に見つかるわけがありませんから。

【小沢】見つからないのですか。

【中村】住民の合意が得られるわけがないでしょう。けれども,知事さんが「急げ」とおっしゃっているから,何かしなければいけないでしょう。ですから,私は2番目の,地上に置いておく場所をとりあえず用意すると。そうすると,六ヶ所とそこで合わせて50年ずつで 100年,もう少し短いかもしれませんが,その間に処分の技術も進むし,一般の方々の理解も深まるし,あるいは再利用するような新しい技術も生まれるかもしれない。放っておくわけではなくて,研究は研究でどんどん並行してやらなければいけないということです。

【中島】はい,市川さん,どうぞ。

【市川】基本的には地下に造るといっても,処分場ではなく研究施設でも,おっしゃったように非常に抵抗が大きいわけです。その根本にあるのは,やはりいままでの原子力政策に対する国民の不信があるからだと,私は言いたいわけです。ですから,この高レベル廃棄物の問題でも同じ繰り返しをすべきではないと言いたいわけです。
それから,地上保管について言えば,まさにいまどこかを探さなければいけない羽目に陥っているわけです。それはなぜかというと,先ほど言いましたように,使用済み燃料の中間貯蔵所を造ることに法改正で決まっており,どこかにそれを探さなければならない。これはまさに高レベル廃棄物そのものですから,それをどこかに,しかもこれは期間の定めがない,いつまで置くという定めがないやり方ですから,地上保管所がいまおっしゃったように 100年になるのか,それはわからないわけです。
ですから,先ほど中村さんがおっしゃったような地上保管所は,高レベル廃棄物というか,ガラス固化での地上保管所ではなくて,まさに使用済み燃料の地上保管所として現実問題になりつつあるということだと思います。これがうまくいくか,いかないかというのは,本当に信頼を得られているのか,いないのかということに繋がっていると思います。

【中島】どなたか,はいどうぞ。

【伴】研究ということにまだ少しこだわっているのですが。研究期間中はそこには放射能を運ばないという話もありましたし,では終わったらどうなるのかということもありますが,やはり1つ研究をするにも,処分するための研究と,どう規制をするかという研究は自ずとニュアンスが違ってくると思うのです。
ですから,研究に進む前にそのルールのようなものを先に決めて,どのような範囲で,だれがどのようにするということを決めた上で,ある限定した目的を持った上で研究に入っていかないと,やはり「何でもかんでも,捨てるための研究ではないか」と言われかねません。本当に処分のためにきちんとしたものを出すための研究だとすれば,自ずとそのルール作りが先にあってしかるべきではないかと思うのです。ちょっと繰り返しになりますけれど。

【中島】しかしそのような研究は,例えばもうすでにスウェーデンなどのストリッパーで鉄鉱山を利用して,国際共同研究がやられたわけです。それに参加した者に聞きますと,実は研究をすればするほど,地下は地下水があって厄介だというのが出てくる結論なのです。
私は日本でむしろ,一番遅れているというか,もう少し進めたほうがよいのではないかと思うのは,日本にどのような地層があるかについて,少なくとも科学者なり専門家は,あそこならよいだろうという場所が全然言われないわけです。それが市川さんの言われる政策だけが先行して云々ということですね。
日本の地層が難しいことは確かですが,例えば第三者の地質学者というのが,難しいけれども。いままでのいきさつがあって,動燃では残念ながらだめだと思うのです。そこに地質屋さんがいないわけではないけれども,研究もしていますが。地質調査所なんて名前をあげてはいけないのかもしれませんが,しかるべき委員会を作って,ここはこういう地層であるというデータを出せないものでしょうか。これは座長の権限を逸脱して,招へい者の意見になっていますが。そのようなことを早くやらないと,それで具体的に話ができると思うのです。はじめからガサガサの地層の所で地下研を造ってみても,あまり意味がない。幌延などは,私はそれに近いのではないかと思っているのですが。

【中村】いま座長がおっしゃるのは,将来,処分場にしたらいいような場所を選んで研究所を造るという意味ですか。

【中島】ある意味ではね。しかし,それは地元との約束でしないのならば,それと同じような所を別に探すことになるから,何か所か選ばなければいけないでしょうね。私はそう思っているのです。その辺が具体的な技術的な進展なしに,政策だけ「処分しますよ」と言ってしまうと,伴さんが言うように「研究所といっても,どうせ政府のやることだから,最後になったらそのまま置くよということになるのではないか」と,これは皆そう思っていますよ。そこが難しい。

【木元】よろしいですか。原子力委員としてではないのですが,茅先生も鈴木先生も中村さんも,高レベル放射性廃棄物の処分懇談会でご一緒でした。その中でいろいろ議論をさせていただいたときに,たしかにスウェーデン,スイス,アメリカとかは10数年から20年前に日本よりずっと前から研究を始めている。たしかに日本は遅れたかもしれないけれども,そのようなものを学習しながら,例えば最終的に地層処分をするならば,学習したものをまた日本型に当てはめてやろうではないかという考えがあるように思うのです。
その中で,例えばいま現実に,北海道と岐阜にその研究施設を造らせていただきたいということがある。私がこの委員会に入らせていただいたときには,皆さんがおっしゃったように大変な抵抗があったのですが,いろいろな議論を重ねていくうちに,まだぎくしゃくした部分は残っていますけれども,それでも2歩,3歩と前向きになってきて,今度の選挙の結果を見ても,「ここで研究はいいじゃないか」という立場の方が勝ったという事実があります。ですから,遅々としているけれども,研究施設として日本ができる限りのことはそこでやれるような目途が若干ついてきたかな,という感触は持っているわけです。
その上で中村さんがおっしゃったように,これはご一緒にやりました中にも,中村さんの言葉としては出ていないのですが,長期性への対応ということで,「自分たちはどう対処したらいいか。こういうオプションもあるではないか」ということは,実は書いてあるのですね。ただ,それが文言としては曖昧かもしれない。けれども,そのようなニュアンスを残しながら確かにここには書いてある。そうすると,いまいろいろな議論が錯綜しているのですが,最終的にはこれは何とかしなければならない,ということは明確化されている。
そうすると,一時的に 100年か何か知りませんが地上に保管をするけれども,そのときに「これは 100年,あるいは50年ここに保管しますけれども,最終的にはここに持っていきますよ」という保証がなければ,青森と同じように,それがなければ研究施設もできなくなることもあり得るかと,そこが少し心配なのです。
そうすると,何か追いかけごっこのようなところが出てくるので,ここで毅然として,最終処分の方向を改めて出すことをしなければ進展しないものなのかどうなのか,それともいまの段階でここまでできる,ここまで考えている,ここまで研究をしたいということを提示するのがよろしいのか。どうなのでしょう。その辺が見えないのですが。

【中島】それはそうなのですが,今日の議論で高レベル廃棄物の処分という場合に2つあるのです。1つはガラス固化体といういままであったイメージと,それから使用済み核燃料そのままというもの,両方が出てきているわけです。ガラス固化体になるためには再処理が前提になるわけです。中間貯蔵という問題が出てきたということは,全量再処理はしないということを事実上認めたことになっているわけです。
むしろ,今後のもっと広いテーマで言えば,核燃料サイクル全体をどう構築するかという,先ほど山地さんが言われたことから言うと,とりあえず日本の再処理能力としては,外国再処理を再度やらないとすれば,青森がいつ動いて,それが800トンきちんと動くのか。そうではなくて,半分ぐらいしかしばらく動かないのかということが,具体的な事実でしょうね。ほとんど東海のは90トンでさえ動くかどうかわかりませんから。そうすると,使用済み核燃料がどれぐらい残るかということが,むしろはっきりしてくるのではないでしょうか。そうすると,そのようなものを何とかしなければならないというのが,いま核燃料サイクル問題で直面していることだと思うのです。同じく高レベル廃棄物の処分というよりも,とりあえずの処置として出てくる問題は,そのようなことではないか。
ですから,その辺について,原子力委員会が,むしろいままでは全量再処理という方針をはっきりおっしゃっていなかったにせよ,長期計画はほぼそのような方針で,発足以来来ておられた。大転換をしようというのなら,「大転換しますよ」ということをおっしゃったほうがよいのではないかと,私はかねがね思っているのです。それを言わないで,中間貯蔵とか最終処分と言えば,これでは国民は納得しないでしょう。 credibility gapの1つの原因は,政策が変わらざるを得なくて変わったにせよ,「変えますよ」という積極的な態度がないと,私は国民の不信はなかなか……。

【木元】ちょっとよろしいですか。そういう方針は出せないと思います。

【中島】そうですか。

【木元】それは短い視野の中でしか論議できないことですし,私個人の感じですが,それは出ないと思う。先ほどから,再回収をして,もう一度使うという議論がもう出ていますよね。そのときに,いまの議論も絡んでくるような気がするのです。ですから,そのような議論は,長期的に,非常に長期的に見た場合と,当面これは中間貯蔵でやるけれども,全量処理をするとか,処理しないという論議とは違っていると思います。

【石川(原子力発電技術機構特別顧問)】誤解を招かないように言っておいたほうがよいと思いますが。いまの中島さんのお話は,中間貯蔵をすることによって再処理を半分あきらめたと結論づけられましたがそれは正しくなくて,そういう道も出てきたかもしれないけれども,中間貯蔵をするということは,全部再処理しないでいくということとは同義語ではないですから,その点を決めつけて議論を進めるのはいかがでしょうか。この議論をこのまま続けるのはやめられたほうがよいと思います。どうも失礼しました。

【中村】それと議事進行上ですけれども,廃棄物の量がどのくらいかというのは,なかなか予測が難しいと思いますが,仮にこれ以上出ないとしてもいまあるものをどうするかという問題はあるわけですし,ヨーロッパからも運ばれてくるわけですから,とにかく次の場所をどうするかということは,量のいかんにかかわらずやらなければいけないことだと思いますが。

【小沢】それで原子力に対する反対,原子力発電所に対する立地の反対があって,一方で今度は廃棄物の問題があって,反対というか,不信感を持っているということでは根は同じだと思うのです。ですから,この場では,こんな議論をしても仕方ないとか,いつまでもやっていても仕方ないとかいくらでも言えるけれども,毎日原子力の問題を論じているわけではない一般の人たちの地元で,そのような議論が起こったときに「いや,その問題はもう古いんだ」と言ったのでは通らないと思うのです。
ですから,政策として何が変わったのか,あるいは,問題が起こったのだとしたらここだけは解決できる,というところを探さないといけないのではないか。技術と政策の溝はますます増大しつつあるという市川さんのご指摘は,「本当は,そんなことはない」という議論が起こるところではないかと思ったのに,先ほどすんなり通ってしまったものですから,私はしつこくそこにこだわって,「これは共通項なのですか,皆さん,これでいいんですか」と伺っているところなのです。

【中島】わかりました。

【小沢】政策が間違っているのだとしたら,変更は簡単だと思います。いろいろ問題があっても,それは変えていけばいいのだから。けれども,技術がどんどん溝を深めていくということだったら,専門家の集団の中でそのような指摘があるのに,そのまま通したのでは大変なことですから。

【木元】技術は,鈴木先生も先ほどおっしゃったけれども,かなり高いレベルのものを日本は持っているのではないですか。そこは鈴木先生が先ほどおっしゃったことですが。

【市川】現在の技術のレベルと,高レベル廃棄物で言えばガラス固化地層処分というものが決定された時期とは,かなり技術の進歩が速いですから,大きな食い違いがあるわけです。それを私は言っているわけです。

【中島】もう少し具体的に,普通の人にわかるように。

【市川】「普通の人にわかるように」と言われますと困りますけれども,例えば深地層処分ということについて,最近これは核燃料サイクル機構から2000年レポートの第2ドラフトが出ていますね。私もこのようなものをいただきまして拝見しましたけれども,たしかにそれを見ると,「こんなに進んでいるのか」と思いたくなるような内容の厚さがあるわけです。
しかし,いまから20年ぐらい前に,基本的にいまの深地層処分ガラス固化が決定ではないにしても,事実上,それ以外にあり得ないような形で出た頃には,もうほんの数ページぐらいの裏づけのものしかないわけです。それではその後,原子力委員会はどうか知りませんが,どのようなことが行われたかというと,そのことが可能であることを証明するための研究を進める,そのような形で進められてきたわけです。ですから,地層処分,ガラス固化以外のことについては,ほとんど注意が払われないままきた。このように言ってよいと思うわけです。

【中島】そういう意味ですね。

【鈴木】よろしいですか。小沢さんのご指摘の,技術的にどうなのかということについて,少しコメントをさせていただきます。これは技術的にもう100点満点なのかということになると,これはなかなか難しい。ですから,合格点がつけられるのかどうか。つまり,今後,地下深部に処分することを検討するだけの技術的な根拠というか,これまでの実績があるのかということで申し上げると,私はあると思います。
なぜならば,先ほど申し上げたように,高レベル放射性廃棄物そのものではないのですが,それと比較的性質の似ているものを対象に,実際に地下深部の埋設処分がアメリカで始まっているのです。それから,カナダの例を申し上げると,カナダでも同じように深部地下への埋設が考えられているのですが,ここは技術成果報告書的なものを出して,いろいろな評価がありました。その結論は,技術的には十分な成果が出ている。しかし,これは社会的にまだ十分,多くの人が理解するまでには至っていない。このような評価です。これも技術的には,ある程度の評価が得られているのではないか。
それから,ヨーロッパに行きますと,例えば比較的小さな国ですがフィンランドのような国は,かなり具体的に実際どこに処分をするかということも含めて,技術的な検討が進んでいます。ですから,これも技術的には相当の水準に達していると私などは見ています。これは幾つか例を申し上げたわけですが,技術的には一応,このような可能性を今後とも検討するだけの準備はできているのではないかと思います。
むしろ,私が先ほどから申しあげていますが,例えば中島座長がストリッパーの例をおっしゃっていますが,これはスウェーデンの地下の研究施設です。これはたしかに昔,鉄を掘っていた廃鉱山で,せっかくだからこれを研究に使おうではないかということで,国際的なプログラムができたのです。これはいい例ですが,処分場にしないということを最初からはっきり明示していたのです。
ですから,処分場としての条件は整っていないのです。いろいろ割れ目が多かったり,岩のしっかりしていないところがあったり,もちろん地下水の流れも複雑です。しかし,研究としては,むしろそのほうがよほど研究になる。実験というのは,むしろ条件を厳しくしてやっておくことがいい場合が多い。ですから,私は,日本で何か研究施設を造る場合でも,そこは処分場にするのだ,あるいは処分場に近い条件なのだということを,あまり気にしないほうがいいと思います。むしろそのようなことに向いていない,けれども,ここを調べておけば,実際の処分場はおそらくもっと考えやすいだろうというところを選んで,研究施設を造ってもいいのではないか。
 そのようなことを通じて,私は「技術的には既に十分,準備は整っている」と申し上げましたが,それは100点満点ではないわけですから,さらに次のステップにいく。しかも,カナダの例のように技術的にいいからというだけでは,このような問題は解決しないのです。ですから,多くの方から社会的理解を得られるなステップはどうしても必要で,そのためには技術的にもより磨いていくプロセスが必要なのです。そのようなことを先ほどから申し上げていたのです。

【中島】はい,どうぞ,田中さん。

【田中】先ほど小沢さんがおっしゃっていた研究施設と,それから伴さんが繰り返しておっしゃっている不安ですね。研究施設としてスタートしたものが,最終的には処分場になるのではないかという不安,これは私はそんな大きな問題ではないと思うのです。
なぜかというと,そのような建造物を造るときには,許認可権は地方自治体にあるわけです。極端に言えば,県が認める。当該市町村が認める。さらに現在の状態では,これは何も高レベル廃棄物に限りませんけれども,産業廃棄物の処分場でもそうですが,周辺市町村の合意,同意がいるのです。ですから,そのときに契約というとおかしいですが,約束ごととして,将来処分場にしない,あるいはホットな実験には使わないとか,これはむしろ地元から出てくる拘束的な条件なのです。
ですから,出ていく側が地元のいろいろな拘束的条件をそのまま飲むか。あるいはそこで若干の交渉を行うか。これもまた,交渉ごとで決まるわけです。けれども,やはり交渉で決まるのですから,それは両方の要求が合わないと実現できない。ですから,そのときにきちんと決めればいいことです。決めなければ(計画が)スタートしないという因果関係がありますから,それほど心配することではないというのです。

【小沢】私は研究施設の心配はしていないのですが,処理をどうするかということで,最後にヨーロッパからどんどん戻ってきたり,いろいろいままでやっていたことを,日本のどこでやるのかということを早く決めないと……。

【田中】返ってくるものと,日本で再処理をするものと両方いるのですよ。いまの六ヶ所がパンクするというのは,先ほどから中村さんが心配をしておられる通りです。ですから,それについては処分場ではなく,とりあえず貯蔵場を考えておこう。そして,時間をかけながら,そのような処分場の事業化ということの細かい詰めもやらなければならないでしょうし,それから,青写真の上で事業化ができても,事業体が実際に事業を開始するような土地がなければ,地面がなければだめですから,その土地探しも並行してやらなければならない。それも事業化の中の1つの大きな事業の中身ですね。
それから,もし損害が起こった場合にどうするかということから,それを引き受けてくれる所にただお願いをするだけでいいのか。その条件というのはこちらから提示しなければいけない。つまり,これはすべて押しつけるわけにはいかない問題でしょう。ですから,その場合の条件をこちらから提示するのは,こちら側の,つまり処分を進行させるほうから何らかの「有利な」条件を提示することになるのではありませんか。宅地を含め他のすべての場合,そうですね。と,私は思うのです。

【中村】私も小沢さんのご質問にお答えいたします。私も世界中の廃棄物処分の研究をしているところを調べてみましたけれど,鈴木先生がおっしゃったのと同じことを感じました。技術的にはもう合格点に入っていると思います。けれども,社会的にそれを受け入れてもらうことが,フィンランドを除いては非常に困難です。ですから,それをどうするかということが政府の政策でもありますし,それは基本的に間違っていないと思います。ですから,政府の政策が根本的に間違っているとは思いません。

【中島】はい,どうぞ。

【伴】揚げ足を取るわけではないのですが,研究施設についてはあまり心配されていないと,小沢さんはおっしゃいましたけれども。

【小沢】いえ,研究施設を造るときに,それがまた転用されるのではないかという心配を先にしても仕方がないと私は思っているだけなのです。

【伴】これはちょっと私も違う意見で,やはり心配なわけです。それをまた蒸し返してはいけないのかもしれませんが,もう1回だけ言いたいと思っています。
それは,核燃サイクル機構ですか,動燃がとりまとめた第2次とりまとめ,第1ドラフト,いまは第2ドラフトまで出ているのですが,たまたまコピーしてきたのは第1のほうですが,それで地層の処分場を造る技術的な部分のときに,前提として硬岩系の,つまり結晶岩質というか,そのような所をあらかじめ決めて,それでこのようにやれるということを出しています。その硬岩系のところを決めるのも,わりと岩の強度等を平均で取ったりいろいろ問題はあると思うのですが,とりあえず結晶岩質のところを決めてやっている。
そうすると,幌延は堆積岩ですから全然違うのです。いま,そこで研究したいと言っている。それは何のためなのかということが,当然疑問として出てくる。動燃はそのような全然違う場所を1つ例にあげて,これでやれるよという設計をやっている。
 ですから,やはりまた戻るのですが,何のために研究をするのか,最初にルールをきちんと作っていかないといけないのではないか。また繰り返しになって申しわけないのですが,1回だけそのことを言いたいと思います。

【中島】どうもありがとうございました。どうぞ山地先生。

【山地】なかなかコメントしにくいですね。私の分野ではないのですが,私なりに整理して考えますと,前半の議論の中で技術的には時間は十分あるのだけれど,政治的な時間がないという指摘がありました。そのねじれがすべてをわりとうまく説明するかなと思って聞いています。
技術的に合格とおしゃるけれど「それなら,なぜ研究所がいるのですか」という質問になりますね。研究所がいるということは,技術的にももう少し何かをやらなければいけないことがあると,私は素人ですから思います。けれども,かなり見通しがあるということであれば,将来有望な地点でチェックをすればそのほうが効率的ではないか。これも常識的には思うわけですが,そのようにサイトを見つけようと思ったら,政治的には非常に難しくて,一歩も進まなくなる。
したがって,一般的で,そこには廃棄物は持っていかないという条件なら建ちやすい,技術的知見もある程度得られる,そのような研究所を造りましょう。そのようなことではないかと思うのです。技術的にはそれでも間に合うと。高レベル廃棄物の処分はかなり先のことで相当待てるから,いますぐにやらなくてもいい。しかし,政治的にはこれではもたないから,そのときには緊急避難で,地表でもう一度50年ぐらい溜められる場所を造ろうではないか。そういうことであれば,それを素直におっしゃれば,私は国民はこれを理解できないほど愚かではないだろうと思うのです。どうも政治的に時間がないところを,本当に政治的に考えて,ちょっと無理をしてストーリーを作っているように思います。

【小沢】いつでもぶつかるのは,そこですよね。

【中島】では市川さん,どうぞ。

【市川】技術的云々というのは,単に地下に穴を掘って中に建造物を造るという技術ではないわけです。そこに実際に放射性物質を入れて,場合によっては数万年か,もっと長いかわかりませんが,とにかく非常に長期の間そこに置いておいてどのような変化が起こって,将来われわれの子孫に地下水汚染等によって影響を与えることがないかどうかというところまでを含めた問題とお考えにならないと,単に穴を掘って物を埋める技術,あるいは地下に建造物を造る技術ということではないというのが,この問題の特徴だと思うのです。
もう1つ,少し離れた話になるかもしれませんが,もしご意見を承ることができればありがたいのですが。よく言われることですが,今,後世の人にという話が出ましたが,何万年か後の人にとって,実際にそこにあるものははっきり言って何の役に立たない物です。それが資源として利用できるかどうかということはありますが,実際に数百メートル下に埋めて,しかもそれを埋め戻すわけですから,それについて資源としての利用価値がはたしてあるかどうか,これは非常に問題だと思います。
いずれにしても,そのようなわれわれがエネルギーを使ったカスのようなものを,われわれが地下に埋蔵したことについての,大げさに言えば倫理的な問題が残ると思うのです。それについて私はよくわかりませんが,例えば田中先生などのご意見はいかがかと思ったのですが。

【中島】いまの問題は一種の倫理の問題というか,後世の子孫に何かを残すのかどうかという問題ですね。先生のご意見は。

【田中】ですから,やはり安全性の担保がそこで非常に問題になるのではないでしょうか。先ほど山地先生が言っておられました。つまり,「ノーエミッション」(全く放出がない)というのはimpossible(不可能)で,unlikely(ありえない)ことだと。しかし,その「エミッション」,あるいは「リスク」が許容範囲であれば,倫理的に何らさしつかえがない。ですから" How safe is safe enough."ということがよく昔から言われてきましたが,「どのくらい安全なら本当に安全なのか」ということには,主観的な問題と客観的な問題の両方があるわけです。
つまり,生物的に安全な線量の許容範囲と,人々がそれで安心できるという心理的な許容範囲とが必ずしも一致していないところに問題があるわけです。それを何回も繰り返して「みんなで」話し合う。これは安全だということと,それなら安心できるねというところを,話し合いながらできるだけ近づけていく努力が必要だろうと思うのです。いまは努力がなされてはいるのですが,確実に成功しているかどうかというと,まだ両側,つまり知覚する側と知覚してもらう側との努力にボタンのかけ違いのようなものがまだ存在しているように思われます。

【中島】先ほどストリッパーの例が出ましたけれども,釜石で実際に動燃が原位置試験をやっているわけです。ところが,あれも調べてみるとよくわからないのですが,われわれが知ったときには「ああ,そんなことやっていたのか」ということから始まっているわけです。全然,公開されていない。そのうちに反対が起こってやめてしまった。このような経過になっています。ですから,最初のボタンを間違えたというか,手続きがというか,その辺はむしろ政策が遅れていたのかもしれません。
幌延の場合は,また全然事情が違います。誘致したわけです。ですから,強いて言えば,どこか地下実験としてふさわしい地層の自治体が,「うちでやってください」ということを言ってくれるのを,まさか原子力委員会は待っておられるわけではないでしょうけれど,そのようなことでは進まないと思うのです。積極的に「科学者が調べたら,こういうところと,こういうところはいいところだ。どうですか」というぐらいのことでやらなければ進まないのではないでしょうか。これは中間貯蔵施設についても同様だと思います。

【田中】いまのような問題は,先ほどの蒸し返しになりますけれども,北海道の場合には道といってもいいかもしれませんが,道庁,道議会,さらに言えば労働組合,それと主力地方紙,この4つぐらいの組織が「ほぼいいだろう」と合意をすれば,地元の地方自治体のほうも,まあ同じような歩調でいく。ですから,合意の獲得というのは個人の合意も最終的にはそうですが,いまのような組織の合意も大事です。
私は先ほどの伴さんのご発言に異議を申し立てているわけではないのですが,ご心配が少し過ぎるのではないかと思っているのです。いまの現状では,大体そのような四間の同意というか,感覚的な合意というか,それがほぼ達成されているという見方があるわけです。
これも1つの例でして,それが誰であっても,こうした安定した状況を乱すような条件を作りだすというのは,明らかに約束違反と考えられます。北海道のケースは,他のいろいろなところの前例としては非常に重要なケースの1つだと考えてよろしいのではないかと思います。以上です。

【中島】あそこは幌延があるために,今度は中間貯蔵施設も受け入れないということを,道知事が表明してしまっているのです。私は北海道にそのようなところがなければ,他はもっとないと思うのです。ところが,幌延ということがあったために,歴史的な事情だと思いますが,かえってそうなっていることもありまして,「その辺も思いきってやめたらどうか」とこの間の核燃サイクルでも言ったのですが,私が言っても中村さんと同じで,聞いておかれたというだけの状況でした。なかなかこれは難しいです。

【小沢】難しいことを言っても,やはりわりと過疎の貧しい所に廃棄物を無理やり持ってきて,やがて放射能がしみ出して,その辺の魚は死に,木は枯れ,皆いつの間にか骨が曲がってしまうのではないかというのが,一番正直な最初の反応です。ですから,これに対してどう答えるか。組合と地方紙が一致したらという考え方では,私はやはり違うのではないか。どういう手立てがあるだろうかと思いますね。

【中島】はい,どうぞ。

【中村】ですから,嫌がるものを無理やりに押しつけるのはだめなのです。青森県の六ヶ所村は高レベル廃棄物を一時的に受け入れていますね。嫌がるのを無理やりに,泣く泣く引き受けたわけではないのです。地元に行って,聞いてごらんになればいいのです。彼らは安全だと思っているのです。そして,そこに核燃料税という多額の税金が注ぎ込まれるのですが,これは青森県,あるいは六ヶ所村にとってプラスだという判断です。
高レベル廃棄物はたしかに放射線も出すし熱も持っていますけれども,人が近づけないようにしておけば安全なわけです。きちんと安全なように設備はできているわけです。ですから,安全な設備ができていて,しかも地元にメリットがあるから,私はあそこの方々は引き受けてくださったと思うのです。「いますぐ出ていけ」という声は,それは1人や,2人はいらっしゃるかもしれませんけれども,まずないですね。
ですから,六ヶ所村の皆さんを見ていただいて「なるほど,そうか」ということをわかっていただくのが一番いいと思います。いまのように,何かおどろおどろしいものを押しつけられるというイメージを,まず消すことから始めなければだめです。

【小沢】そうですよ。ですから,どうやったらよいかということでやっているわけでしょう。

【中村】ですから,小沢さんのような方が,いまそのような所でそのような発言をなさることが……。

【小沢】そんなことないですよ。

【中村】頭の中にそういうイメージがあるから。

【小沢】もちろんありますよ。

【中村】だから,現場に行って見ていらっしゃればいいのですよ。

【小沢】見ましたよ。見ても,それで一斉に世の中が「はい,来て下さい」とならないのは,黙っていてもそういうイメージがあるからで,それを払拭していくためにこのような会議だってやっているわけではないですか。

【中村】そうですよ。

【小沢】ですから「頭の中で考えるな」と言われても,考えていますよ。だれだって。

【中村】ですから,一般の人はもっと考えるわけ。

【小沢】そうです。

【中島】ですから小沢さん,その通りなので,例えばダイオキシンについては,この間ダイオキシン対策法というのができました。けれども,こっちのほうはまだ法にはなっていないですね。私はそこを言っているのです。原子力委員会が考えなければいけないところは。といって,そのような法律が簡単にできるかというと,ダイオキシンとは違いますから,これはなかなか難しいです。けれども,やはり必要かもしれませんね。

【木元】ちょっとよろしいですか。いま小沢さんがおっしゃったことは,私もエネルギーの勉強,特に原子力の勉強を始めてから痛感していることなのです。例えば怖い情報というのはわりあい早く伝わりますよね。ではそれに対して,推進する側,国でも,事業者でも,どのような情報を,どのような形で,だれが伝えたかということになると,残念ながらきちんとできていなかった。全部よかれと思ってやったことが,結果としてかえって不安になったり,不信感になったりして返ってくるような広報の仕方,情報伝達の仕方を行っていたということは否定できないだろうと思うのです。
例えば,サイクル機構の話をすれば,かつての動燃ですが,よくないことをしたなら「ごめんなさい」と謝るけれども「だけれども,やらなければならないことはこういうことですよ」という,堂々とした,毅然とした態度が欠落していたのですね。ですから,自分がこの国のためを思って,こういう形で,例えば原子力発電をやる,処理処分の問題にしてもこういう形でやろうということがある。それは国民の生活を維持しようという発想ですから,そのためにやったことでも,よくないことがあればそれはしっかり謝るけれども,この目的のためにはきちんとやるのだという姿勢を,もう少し堂々と出す方策を考えていかなければいけないと思う。
ところが,いま小沢さんがおっしゃったように,発電サイトのある地方に行くと,自分たちは被害者である,消費地なり,あるいは推進する国なり事業者は加害者という意識の構図ができているでしょう。そこを払拭していかない限りだめなのです。どうして加害者なのか,どうして被害者なのか。
けれども,中村さんもおっしゃったけれど,そのサイトの中でよくお話をしてみると,例えば青森で言えば「私たちのところにこういう日本で唯一のサイクル基地ができた。日本のエネルギーの供給を支えているのだ」という自負もあります。誇りを持っている部分がある。けれども,それを否定するように,「あなたたちの所には迷惑施設が来ているのだ」と言われてしまう。それから「ここは地の果てです」と,広報する担当が言ったりする。
このように,きちんと,ものごとを考えずに安易に言い合っているという状況があります。原子力行政を進める上で,このことはものすごく基本的なことだと思う。広報は非常に大事な役割を担っているので,見直されなければならない部分は多々あると思います。それができていなかった。

【小沢】原子力関係の技術は充分信頼できると,いつもこうした会議では強調され承認されたように話は進んでいくけれども,ドロドロというのは中村さんが言ったので私はドロドロだと思っていませんが,何かそこはかとない不安という一番原始的な感情のところで足を取られている。これをどうするのかについて,もっと大胆に議論をしてよいと思うのです。

【木元】私も,小沢さんも同じだったと思うけれども,例えば原子力に関して言えば,被爆国であったという印象があるから,それは拭いきれないですね。ですから,原子力発電は怖いものだということが最初にありました。それと放射線というものもよくわからなかった。けれども,不安だから怖いという思い,わからないから不安が生まれて,不安ができてくるからなおさらそれが怖いものにつながっていく,という構図がありますね。
ですから,やはり何らかの形で自分も勉強しなければいけないけれども,もしこの行政を進めるのであれば,もっとわかりやすい形で広報をしていかなければいけない。ここはこのような形での円卓ですが,そうではない形でもっと深く一般の方々とフラットな形で話し合う機会があったり,お互いに疑問をぶつけ合う機会があればいいのではないかと思うのですが,では具体的にどうすればよいか。やはり出張会議でもしなければいけないかな,と思っているのですが。

【中島】はい,どうぞ。

【石川】話が少し本筋からそれていると思うのですが,その解決法としては,先ほどからおっしゃっているように10万年で見るのか, 300年で見るのか,どちらにしても長い時間ですよね。私の専門だけれども,原子力発電は5年,10年で見ていかなくてはいけないものですが,いま山地さんがおっしゃった場合でも 300年で見るわけでしょう。それぐらいの時間的なゆとりを放射性廃棄物は持っている。
となれば,教育でしょうね。きちんと放射性物質,放射線の影響についても,これは天然自然にもあるわけですから,きちんと教育をしていく。その中から,正しい解答を皆さん方に持っていただくことが一番いいだろうと思いますが,そちらのほうに話が行ってしまいますと,今日の高レベル廃棄物からずいぶん話がずれているように思いますので,先ほどおっしゃっておられたように,一体どのような政策があるのか,それからどのように考えていくべきというところに話を戻したらいかがでしょうか。

【木元】関連はしていると思うのですが。

【中島】よろしいですか。いま,石川さんが言われたことで教育の問題まで話を広げると大変ですから,今日のテーマということで説明をした,再処理をして出てくるプルトニウムの管理の問題,核不拡散と結びついて,この問題は今日は全然議論されていないと思うので,それについての皆さんの意見を伺えたらと思います。
ここでは,再処理に伴って発生するプルトニウムの管理,すなわち核拡散についてとなっていますが,意味はおわかりだと思います。山地先生からでも一つどうか,先ほどもご説明はなかった……。

【山地】核不拡散の問題は今日のテーマであるという認識はあったのですが,かたや高レベル廃棄物ですからずいぶん扱いにくいなと,そのようなこともあって,先ほどの1回目の発言では触れなかったのですが。回収されたプルトニウムがある場合には,それは速やかに使うということ,日本の政府もそのように基本方針を持っていると思いますし,私もそう思います。その点では,現在着々と進みつつあるプルサーマルという形で軽水炉で使っていくということが,わが国における再処理で出てきたプルトニウムの最もよい使い方であると考えています。核不拡散そのものとなるともっと話が飛んでいきますので,1回目はこれぐらいにして,皆さんのご意見を伺ってから,また議論があれば議論を進めたいと思います。

【中島】順番に,伴さんはこの問題をどのように考えていますか。

【伴】まず1点目は,再処理をもうこれ以上しないで,とにかくプルトニウムの発生量を止めることが必要だと思います。いまのプルサーマルにしても,ほとんど生み出されたプルトニウムの消費をどうするかというところから規定されてきているように私は理解をしていますので,とにかくこれ以上生み出さない。国内の再処理はいま止まっていて,この秋から再開という話もありますけれども,そのような意味で言うとそれは再開すべきではないと思いますし,海外については,いま日本のプルトニウムは全部で24tくらいあると思うのですけれども,数字は荒っぽいですが,そのうちの19tぐらいはイギリスとフランスにあります。毎年3tから4tぐらいはそちらのほうで増えていっているのです。特にソープ(THORP)が動き出してからはどんどん増えていく。ですから,それを放ったらかしておいて,どう使うかという前に,とにかく再処理をストップするというのが1つです。
それから出てきてしまったプルトニウムについて,私はMOX燃料にしてプルサーマルで使うというのにも非常に危険が伴うし,決してよい解決方法だとは思っていません。あえて言うならば,アメリカも解体核兵器のプルトニウムをどう扱うかという2つのオプションをとっていて,1つはプルサーマルのようなMOX利用,もう1つはガラス固化という形になっていますけれども,放射性廃棄物と混ぜてガラス固化する。ガラス固化の方をとって,出てきた分については仕方がないのでそのように処理すべきであって,残しておかないようにすべきだと思います。

【中島】中村さんは。

【中村】ワシントンに出かけて,向こうの軍事専門家とか国際政治学者などに伺いますと,近い将来日本が核武装するのではないかという懸念は,確実に持っているように思います。ですから,それを打ち消すためには,プルトニウムのバランスをシートを非常にクリアに示すということ。それからIAEAの査察に対して,査察委員に疑惑の念を持たれないような態度を取るということです。
それから,日本の電力業界のトップでも原子力委員会のトップでも,アメリカに出かけて行って,ナショナルプレスクラブのようなところで,日本がいかに平和利用に徹しているか,しかも原子爆弾を持つことのメリットは日本の場合にはゼロでマイナスばかりですので,そのようなことをよく説明をするということが大事だと思います。

【中島】田中さんは先ほど少しこれについてコメントされましたけれども。

【田中】やはり日本は核拡散防止条約上の責務を非常に忠実に履行して,少なくともIAEAに対しては常によい子であり続ける。それは具体的には2つの方法があると思います。1つは計量管理。ことに戦略的な核物質,プルトニウムと高濃縮ウラン等に関しては計量管理の水準が非常に高水準だという世界的な定評がありますから,これを失わないように。失うはずがないのですけれども,それをさらにレベルアップしていくということ。あるいは世界のリーダーシップを発揮するということ。メカニカルにも計量管理の方法論的にさらに世界的に寄与するということが必要かもしれません。それから第2の点としては査察の面でも,外国からの査察を受け入れるのは当然ですけれども,むしろ日本が積極的に査察官という形で,世界の核不拡散体制にもっと寄与するということが世界的に要求されているにもかかわらず,日本はそのような意味での人的寄与が非常に少ないという面で不満が聞かれます。それはやはり将来,日本の国内の問題として改良すべきであろうと思います。
ただし,対米ということになると,いま,中村さんが言われたような疑惑が常にある。そこから出てくる議論,つまり日本に対するサジェッションが伴さんが言われたことなのです。要するに,これはいつもはアメリカで聞く議論をこの場でまさに伴さんから伺ったという印象を私は受けました。「再処理をしないで,使用済み核燃料の形でとっておけ。プルトニウムを取り出してしまうから疑惑を受けるのだから,そのままにしておけ。何だったらアメリカで引き取ってやる。」という,いわゆる「ワンス・スルー・サイクル」の支持者たちもアメリカには多いのです。
しかし,これは日本の国際的な責務からしますと,「平和利用をしています。しかし,自分の国でやったことが自分の国で始末できないという状態でやるということは,いかにもこれは日本の技術力と,それから日本の国民のインテリジェンスということから考えて,ちょっと口惜しい。」ということになります。ですから私は,いつもアメリカ人がそのような議論を出す時には言うのです。「これはわれわれが核燃料サイクルを完結して,なおかつ核拡散しないという状況をできるだけ長く保持するのが(日本の国内)政治の問題であって,たぶん日本の政治家も官僚も今さら日本が核武装をするということの無意味さということを十分理解しているであろうし,国民もそう思うだろうから,全く心配はいらないよ」と。これは中村さんの議論と同じです。伴さんには申しわけないですけれども,伴さんのお話からそのような印象を受けました。

【中島】では鈴木さん。

【鈴木】まず1点は核拡散問題に関連して,まず国内において核拡散のリスクという可能性を何とかしなければいけない。それは皆さんもおっしゃいますし,私も同感です。その方法は,これもご指摘のあった情報公開を徹底すること,それから,それに必要な技術開発に積極的に取り組むこと。それで,私はいままでの実績を見ても,この点については相当の評価を得ていると理解しています。
第2点目は,むしろ核拡散問題が憂慮されるのは,普通に考えれば日本の国内というよりは,国外なのです。特に私が思うには,やはり現実に心配しなければいけないことは,量的に非常に多いという意味でロシアだと思います。このロシアにおける核拡散リスクというものについて,日本ではこれはよその国の話だというように考えがちなのですが,これはいかがなものか。つまり,これから21世紀に向けて核拡散の問題というのはまさに国際的な問題であって,しかも冷戦が終結して新しい秩序というものが必要になってきている時に,日本がそれに対する積極的な取り組みに協力をするということがないとまずいのではないかと思います。これが2点目です。
3点目は,じつは話題が高レベル廃棄物からプルトニウムに振れたのですが,こういうプルトニウムの問題も核拡散の問題から見て,あるいは核不拡散の観点からどうですかという議論になると,結局プルトニウムは使うのか,使わないのかという単純な議論になってしまうのです。単純な議論と言うのは適切ではないかもしれませんが,私は今日の議論で感じているのは,例えば高レベル廃棄物処分の問題であっても,貯蔵という話が出てくると,貯蔵なのか処分なのか二者択一というような感じに議論が振れるのわけです。これはたぶん現実的ではないのです。私が申し上げたいのは,その処分は必要なのです。しかし処分だけというのは,現実には難しい局面がいろいろ生じる可能性があります。したがって貯蔵も必要なのです。けれども,貯蔵ということを安易に貯蔵だけでよいということを認めると,処分をまじめに考える人がいなくなるのです。ですから,処分ということがどうしても必要なのです。これに向かって考えていく。あるいは実現していく。その両方が必要です。つまり複数の選択枝を常に持っているということが非常に重要です。
 これはプルトニウムも同じで,プルトニウムを再使用というと,全量を再処理して,プルトニウムを出して,それを無理無理使うという人もいますし,これはどんどん使うと資源が節約になってよいのだという人もいますし,いろいろなのですが,いずれにしてもプルトニウムを使うのか,使わないのかという議論なのです。
これは極端でして,私が思いますには,適切な量を再処理し,適切なタイミングでそのプルトニウムを資源として有効に利用できる技術と仕組みを用意していく。しかし,併せて,それはあわてる必要はないのであって,その使用済み燃料は貯蔵していくということも考えていく。そのようなことが必要なのです。ですから,私は核拡散はどうかとか,議論をAなのか,Bなのかという選択をせまるようなアプローチというのは,いかがなものかと思いました。

【中島】市川さん。

【市川】私はこの核拡散問題について,発言用紙の中では5行ばかりしか書いていませんが,これは極めて基本的なことをただ書いただけです。基本的なことですので,繰返しての話かもしれませんが申しますと,核拡散問題というのは,原子力の利用の仕方が軍事利用と平和利用とあるということに関する矛盾だと思うのです。その矛盾を解決するために1つこのような方法が生み出されているわけです。日本の国民の合意としては,これはいつも私はよく言うのですが,いわゆる原子爆弾禁止世界大会が日本で最初に開かれた頃に,その大会で決議のようなものを第1回の大会でも,第2回の大会でも上げている中で,原子力を福祉のために利用するということは基本的に大切なことである,そのためには核兵器が完全に無くなるということが前提であるというような主旨のことを,1回目も2回目も言っているわけです。したがって,これは国民的合意と考えてよいのではないか。
それの次に,実際にこの原子力を日本で始めるに当たって,いろいろな心配がありました。それが日本学術会議の中で議論された中で,平和利用に限定するということはもちろんであるけれども,それを担保するために,保障するために,幾つかの原則を作ろうということで,自主,民主,公開の原則というのが作られたわけです。ですから,これは平和利用の担保のために作られた原則だということを,やはり忘れてはならないと思い,ここに書いたわけです。
もう1つ別の観点から申しますと,核物質管理センターというのが,いまあるかどうかわかりませんけれども,そこで出されていました大分前に出された報告書の中に,このようなことがありました。それは,核拡散には4つの方式があるというのです。その1つは,国家が公然と行う核武装です。2番目には,国家が非公然と行う核兵器の生産です。3番目は国家でない個人またはグループが公然と行う,つまりこれは核物質を強奪して云々という問題だと思います。その4番目に,国家でない個人またはグループがこっそりと,そのようなものを盗んで,そして核兵器を作るとか,あるいはそのようなものをみせびらかして脅かすとか,そのような類の4つのことがあるのです。
 1はこれはどうしようもない問題だとして,問題は核拡散防止の方法としては,大きく分けると保障措置といって計量管理と査察というものの組み合わせからなされる方法と,それからもう1つは,核物質の防護という方法があるわけです。保障措置というのは,物質を管理するという思想からきているものですが,核物質の防護というのは,どちらかと言うとそれに携わる人間を管理する方向にいきがちなものなのです。それでその報告に出ていましたのは,核物質防護というものがあまり行き過ぎると,先ほど言いました2番目の,国がこっそりと核武装するということに対する国際的透明性を妨げる,というようなことが書いてありました。私は非常に興味を持って,それをいろいろなところで引用させていただいているのですが,そのような意味で核拡散防止と言えども,この自主,民主,公開の原則というのは,非常に重要であるということです。
しかし,残念なことに最近の安全審査書類などには空欄が幾つかあって,1つは商用機密のためであって,1つは核物質防護のためである。そのようなことの理由による安全審査書類上の空欄などが出ているわけです。やはりこれは,大体核物質防護のためというところは,プルトニウムに関係するところがあるわけですけれども,実際には私たちが見ても部屋のどこにどのような装置が置いてあるというようなところも空欄になっていることが多くて,まったく意味のないことをやっている。むしろそのようなことが国民に対する透明性を失うということで,非常に問題ではないかと思っていたわけです。

【中島】また,これは大きな問題が出てきてしまいましたけれども,一応,そのようなご意見があったということは,非常に貴重な発言ですので,記録に留めたいと思います。

【茅】私のほうから皆さんに伺いたいのですが,いまたまたまプルトニウムの話になったのですけれども,現実に伴さんが言われるように,現実に日本としてどこにあるかはともかくとして,保有しているプルトニウムがかなりあるわけです。ですから,これは賛成とか反対という問題ではなくて,現実にこのプルトニウムはどうするかという処理だけは決めなければいけない。その場合,1つの答えは山地さんが言われたようにプルサーマルなのですけれども,はたしてプルサーマルが皆さんがお考えになる最良のソリューションになるのか。あるいは他の方法を考えている方もあるかもしれませんから,他の方法をオプションとして考えておられるのか,その辺についてだけを私は伺っておきたいのです。
プルサーマルと言われる方は,よくわかりますから,その意見はおっしゃっていただかなくてけっこうなのですが,プルサーマル以外の処置,例えばそのままの形でどこかに保管するという方法もないとは言えないのですけれども,それ以外の方策をお考えになっている方いらっしゃいますか。

【田中】これは「どれが」ということではなくて,やはり「これもあれも」式のやや混合的な解決しかないと思うのです。つまりもうすでに単体としてのプルトニウムはあり余るほどある。世界はその単体の量を知っていますから,いざ弾頭を作るとしたら何発作れるぐらいのことは,口では言わないけれども,そのようなことを計算して知っている。しかし,これは仕方がないのです。プルトニウムは増え続けると思いますけれども,ただそれが永久に加速度的に,幾何級数的に増えるというのは少し問題であるから,そうするとどのような形で増えるのを減らしていくかということを考えていかないわけにはいかない。どうも使用済み燃料のような形でしばらく置いておいて,そして再処理のスピードを少し減らしていかないと,21世紀にはプルトニウムが溜まる一方になってしまうのではないか。まず再処理を減速して,第2に,使用済み核燃料の形でしばらく置いておく。
それから第3番目が,今度はそれでもやはり現在他の国,特にヨーロッパで進められて技術的にも信頼がおけるであろうところのMOX燃料として燃やせるものは燃やす。その3つの組み合わせ,どのような組み合わせがオプティマルかということは,これは計量的に計算しなければいけないと思います。オペレーションズリサーチ的に考えれば数量的な解が得られるでしょう。いずれにしても,やり方としては,その3つを全部やらないと日本はやっていけない。どれか1つではかえって破綻が起こるのではないかと私は恐れます。

【伴】私は先ほど最初に言って,アメリカの例を出したから少しうまく思いが伝わらなかったのかも知れませんが,私はMOX燃料で消費するということはやめて,放射性廃棄物と一緒に固めて,ガラス固化という形で人が容易に近づけないようにするのがよいという意見です。

【中島】しかし,MOXで固めるということと使用済み核燃料というのは,同じようなものですよね。廃棄物と混ぜて固化するわけですから,同じではないかという気がします。

【伴】発電で使うか,使わないかというところが違うわけです。

【中村】違うアイデアは,やはりFBRの研究をするということです。私としては,「もんじゅ」の延長上ではなくて,また別のアイディアのほうがおもしろいと思うのですが,いずれにしましても,とにかくFBRというのは,何十年か後には必要なものだと私は思いますので,その研究のためにプルトニウムは必要になってくると思っています。

【市川】先ほどはプルトニウムに関することは申し上げませんでしたので,少し話をさせていただきます。
いわゆるプルサーマルという形で,プルトニウムを使うというのは,もっともプルトニウムの無駄使いだと考えています。本来,鈴木先生がおっしゃったように,私はプルトニウムを絶対に使うなという考えは持っていません。資源として利用価値があるのなら,しかもそれが安全に利用できるものであるならば利用すればよいと思うのですけれども,残念ながら現在の高速増殖炉では,それが果たせないであろうと思います。したがってプルトニウムの安全な利用方法というのは,今後開発を進めていく必要があると思いますけれども,プルサーマルをやるために再処理をしてプルトニウムを分離するというようなことは,まったく意味のないことである。したがって,もし必要があるのなら必要なだけ再処理をして,後は再処理をしないで置いておいたほうがましであると考えます。

【茅】念のためですが,私が申し上げたのは,再処理をしようとしまいと,いまはとにかくプルトニウムがあるわけです。ですから,それを処理する手段として何をオプションとして考えておられますかということを伺ったので,これ以上再処理する・しないというのはまた別の問題ですので。

【山地】私の発言も誤解されると困りますので,発言します。私もいま茅先生がおっしゃったように,何らかの理由でいまプルトニウムがある。それをどう使うかというときには,プルサーマルが1番でしょうと申し上げた。今後積極的に再処理をするかどうかは,まずプルトニウムを利用する用途を確認して,それに応じて再処理をすれば良いということです。プルサーマルのために積極的に再処理したほうがよいという意見ではありません。

【中島】もっとはっきり言えば,現在プルトニウムというのが,ウラン資源が欠乏してどうしても必要だという状況ではないと私は思っているのです。ですから,将来の資源としては,何かの利用法が生まれてくるかもしれない。本命はやはりFBRであろう。でもそれは,現在の「もんじゅ」のようなFBRではないかもしれないというのが,いま皆さんの大体おっしゃったことだと思います。

【石川】伴さんにお伺いしたいのですが,先ほど一番冒頭に「プルトニウムを作るのをやめるように,不信感も多いのだし」という話を伺いましたし,いま「プルトニウムも高レベル廃棄物も使用済み燃料も全部ガラス固化体にして」という話を伺ったのですが,プルトニウム量の制限いかんの話は別にして,伴さんとしては,高レベル廃棄物,これは使用済み燃料も含めたというちょっと広い意味に解釈して,これはガラス固化体にして地上に保存するのですか。地下に処分するほうがよいとお考えなのですか。何十万年も管理しろという話にもつながるのですが,その辺りをちょっと伺わせていただくと非常に参考になるのですが。

【伴】すみません。ちょっと整理が下手だったのかもしれません。すでにあるガラス固化体,私は再処理はすべきではないと思っていますので,いまの段階で例えば再処理を止めたとすると,溜まっている使用済み燃料はそのまま直接処分されるべき対象となると思います。

【石川】直接処分ですか。

【伴】それは地上管理ということになるのですが。

【石川】地上管理ですか。

【伴】はい。ですから,必ずしも全部をガラス固化体にしてと考えているわけではありません。

【石川】いまあるMOXとか,高レベル廃棄物はガラス固化体にしてということなのですね。

【伴】あるプルトニウムは……。

【石川】出さないために,伴さんのお考えは……。

【伴】高レベル廃棄物は,すでに分離していた時に出ていますよね。ですから再び混ぜ方はいろいろあると思いますけれども,混ぜて……。

【石川】それはずっと地上でもって管理せよと言われるのでしょうか。それともずっとではなくて,やはり研究みたいなことを進めていって,うまい処分方法をそのうちに考えるという話なのでしょうか。それはどちらなのでしょう。

【伴】とりあえず地上で管理という方針をたてます。

【石川】ある程度たてて。

【伴】いまは地層処分というのが,国の方針ですね。

【石川】方針だとおっしゃっていられる方が多いですね。

【伴】基本政策とする,と。ですからそれを変えて,地上で管理するということを基本政策として,その上でさらに地上で管理する場合,それから処分する場合ということについては,2つのオプションで研究を進めていって,そしてどちらを選択するかについては,プロセスを含めて公開をして,全体の議論にします。
その時に,研究を進める時に何度もこだわったのが,捨てるための研究だけではだめなので,もう少し研究に際してのルールを決めておく。

【石川】そうおっしゃってましたね。そうしますと,もう1度念のために伺いたいのですが,研究をしていくこと自身については必ずしも反対ではない。前も,将来のエネルギーのオプションとして,伴さんは前回も,反対ではあるけれども高速炉の開発というのはオプションとして入れることには必ずしも反対ではない,と。

【伴】検討課題の1つとして入れることには,反対ではない。

【石川】それと同じように考えてさせていただいてよろしいわけですね。どうもありがとうございました。

【中島】よろしいですか。いや,そのように問題を戻そうと思ったら,そういう議論になってしまった。

【石川】いや,非常に大事な点をおっしゃっていただいたと思います。

【中島】さてそうしますと,高レベル廃棄物の処理処分ということで,直接処分対プルサーマルというような,そのような利用なのかという問題が,いまの状況ですと両方あり得る。二者択一的にどちらかだということではなくて,今日の議論というのは,2つのオプションを持っているということになったのだと思ってよいのでしょうか。つまりワンススルーなのか,再処理なのかということで言えば,必要なだけ再処理をする。

【田中】厳密に言うと,「ワンス・スルー」ということは,使用済み核燃料の中間貯蔵ではなくて,永久貯蔵です。永久保存ということになるわけですから,私はそうとも考えないのです。これはあくまで中間保存的に置いておいておくこと,つまり永久にそのまま置いておくということではなくて,再処理もできるような状態にしておく。つまり,オプションを先延ばしをするというと表現が悪いのですが,必要に応じてどうにでも方向を,若干調整することができるような柔軟性を,いまは持っていてもよいのではないかろいう意味で私は申し上げたわけです。

【中島】私もそれはその通りだと思うのですけれども,そうすると政策としてそれを表現するのは,かなり難しくなりませんか。いままでのように,ある意味で一本槍のようなものは,当否はともかくわかりやすいのだけれども,相当国民にきちんと説明をしないと,こちらも何か曖昧,こちらも曖昧という印象を与えないでしょうか。

【田中】「再処理する」という原則には何ら変更はありません。しかし,要するに問題なのはタイムスケールなのです。タイムスケールの問題で,貯蔵している時間に若干フレキシビリティを与えるということだけでして,いますぐということではなくて,それを5年とか10年とか遅らせるということも考えられるというくらいのフレキシビィリティです。説明はそれほど難しいことではないように私は思いますが。

【中村】私もそう思います。スローダウンです。方向が大きく変わるわけではない。

【小沢】研究その他はどんどん続けていくと。これは皆さん,これに関連しては,同意しているわけですね。それは,伴さんも。
それから,少なくとも伴さんは,ガラスに入れておけば大丈夫であるというところまでは認めているわけですね。

【伴】プルトニウムの話では,すでにある物についてどのように処理をすればよいかということを考えた場合に,人が容易に近づけるようにしておいたら,これは核兵器に転用されるかもしれないしどのような使い方をされるかもわからない。そうなると,すでに分離してしまったものについて,抽出したプルトニウムについて,どのように人が近づけないようにするかというところで,1つはMOXという,燃やしてしまえば使用済み燃料になってしまうので容易に人が近づけないようになると思うのですけれども,私はそちらの方向はとらないで,放射性廃棄物と混ぜておけば,これは人が容易に近づけないわけだから,核拡散に対して非常に抵抗性があると言われていて,その道がよいのではないかと思っているわけです。

【中島】それはその通りなのですが,日本で少し混乱があると思いますのは,核兵器から出てくるプルトニウムと,原子炉から出てくるプルトニウムは違います。アメリカが考えていることと,伴さんがいまおっしゃったことは同じことです。3分の1はMOXで燃やします,残りは放射性物質と混ぜてガラス固化します,これはHippelさんがそのようなことを前から言っていましたからその通りだと思うのですけれども,日本の場合には,アメリカがそうだからと言ってそれと同じというのは,私は必ずしもそうではないと思うのです。というのは,始めからかなりダーティなプルトニウムが出てきて,しかも再処理をしなければそのまま使用済み核燃料で置いておけるわけでしょう。

【小沢】置いておけるのですか。

【中島】置いておけるというか,混ぜるということをしなくてもいいわけです。

【伴】ですから,今後再処理をするかしないかということは,もうしないわけです。ですからこれ以上は発生しない。でも24tぐらいある。それをどうするかという時に,私はガラス固化を主張して,中島さんはそれは核兵器にはあまりならないものだから,そんなことをする必要はないと。

【中島】ならないとは言っていません。使用済み核燃料も立派に核兵器になるということは,アメリカが実験をしていますから。そのことを言っているわけではないけれども,処理の方法として,わざわざ混ぜてガラス固化にするということはどれだけ意味があるのかという気がするのです。

【石川】伴さんがおしゃったことは私は非常によくわかるのですけれども,プルトニウムを使うこと自体に信念的には反対であるから,使わないようにするのには,いまあるのはいろいろなものを混ぜこぜにしてガラス固化体にしてしまって,もう使えないようにしようというお話なのですよね。それで,私が確認したかったのは,いろいろな議論がありますけれども,こういった高レベルみたいなものの最も安全な方法としてはガラス固化体なのかなと思ったものですからお伺いしたわけです。伴さんも,ある程度そのイメージは持っておられる。あとはもっと勉強をしろという話ですよね。

【中島】それでは他にご意見はありますか。なかなか難しい議論で,まとめるのはどうも議長の能力にあまりますけれども,だいぶいろいろな論点は出たと思っています。

【小沢】紛糾はしませんでしたが,いろいろな議論が出ました。

【茅】ちょっとよろしいですか。時間があまりあるわけではないですが,やはり基本の問題は何かと言いますと,本来FBRという路線を,オプションであれ何であれ,追求するかやめるのかというのが,かなりポイントにあるわけです。私が伺っている範囲ですと,いま積極的にこのままやるかということは別として,皆さんの中にはFBRという路線が,オプションとしてはやはり考えるべきだというように聞こえるのですが,私がまだはっきりわからなかったのは,伴さんはそうなのか,あるいは全然違うのか。たまたま石川さんのご質問に対しての答えからしてよくわからなかったので,その辺だけはちょっとはっきりさせていただきたいのです。

【伴】自分としては,FBR,高速増殖炉の開発には反対です。ですからそれはすべきではないと思っています。しかし,その全体で議論をする時には,あらかじめそのFBRの部分だけを除外して,いろいろなオプションを出して,それで議論をしようと言っても,そのようなことを言っていけば,だんだん原子力は除外して何かせいという話になるわけですから,そのような主張はできませんから,その検討の1つとしてテーブルに上げて,いろいろ出した上で,全体の総合的な評価の中で選んでいくということの道筋をとることについては反対ではないということです。

【茅】ということは,FBRの研究をやること自体については異議は唱えないと考えてよいのですか。それとも違うことですか。

【伴】研究というのの,今度はどこまでを研究というかという話になってくるかと思うのですけれども。

【茅】もちろんそれはそうですが。「もんじゅ」を動かすとか,そのような話では全くなくて,FBRというものを,自分としては全く認めないというのではなくて,皆さんがオプションとして議論することについて,あるいは検討することについては,異議は唱えないということですね。わかりました。

【田中】いま,茅さんがおっしゃったことと,それから伴さんがお答えになったことと,基本的には私は伴さんに賛成なのです。ただし,FBRを何のためにするのかということは,もう少し日本政府として(というとおこがましいのですが,)明らかにする必要があると思うのです。つまり今ある将来の計画がFBRの実用炉の完成であったとしたら,私はいま実験炉の段階でも反対です。なぜかと言いますと,それは核拡散の可能性に関して,内外に非常に多くの誤解を与える怖れがあるのです。なぜプルトニウムを増殖しなくてはいけないのでしょうか。日本は経済性から考えて,なぜそんなに高いプルトニウムを,ただでさえだぶついているプルトニウムを,さらに増殖するFBRを実用化しようとしているのか。「国際核燃料サイクル評価」(INFCE)の昔から言われた疑問です。しかし,このFBR技術を持っているということは,世界のニュークリアテクノロジーの上から言って貢献できることだから,実験炉として使うことには差し支えありません。しかし,日本政府が外国に対して誤解のないように努めるということであるならば,FBR技術開発の目的を少しはっきりさせられたほうが私はよいと思います。

【茅】おっしゃる通りなのです。おっしゃる通りなのですが,多少モデレーターというのも全体のまとめ的な感じでどうしても動くものですから,本当はそこまでやりますと,結局何のためにFBRをやるのかという基本論になるのです。ということは,FBRの主張というのは,基本的に言うとウランの効率的利用というところにあるわけです。ところがその議論だと,今度ははたしてエネルギー資源をどのように考えるのかという元の議論に戻ってしまって,それをやるとどう考えてみても10分では終わらないのです。非常に欲求不満な形で話が残ってしまう可能性がある。したがって,そこまでは提示しなかったわけです。
 ただ,少なくともこのFBRというものを,皆さんがこれまでの発言の中で,どのように位置付けていらっしゃるかということがある程度はっきりわかりませんと,いままでの議論が,少し理解できない部分がいろいろあるわけですから,その意味で伺ったわけです。そういったことで,私の質問がやや舌足らずであったことは認めます。

【中島】まあ,確かにその通りなのです。エネルギー問題としては,ウランが例えば2050年まで心配ないのだということになったら,開発の仕方は変わるわけです。プルトニウムを無理に使う必要はない。ただ,技術としてはやっておこうということに変わると思うのです。

【田中】解体された弾頭から出てくるたくさんの戦略的核物質も,また灰色のマーケットに回るということも考える必要もあると思います。いま,私から茅先生に申し上げたのは,そのことも考えた上での話です。

【中村】FBRと言っても増殖比を上げないで,高速中性子でもって効率よくプルを燃やすということもあるわけです。そこまで含めてFBR,ちょっと広い意味で私は必要だと思っています。

【小沢】実用炉としてですか。

【中村】将来的には実用炉です。

【木元】大変に議論が深まっていると思うのですけれども,田中先生のご意見で研究ベースの実験炉をやるということですが,一般的に受け止められるのは,最終的にはこれは実用化することが目的であるということがあるように思うのですけれども,そのことについてはどのようにコメントをいただけますか。

【田中】研究炉だったら,いくら金をかけても,経済性を無視してもよいのです。けれども,向こうに見えているものが本当の実用炉だったら,いまのところの技術では,そこでできてくるプルトニウムは価格が非常に高いのです。ですから,経済性を無視したプルトニウムをなぜ日本はほしいのかと言われた時に,答えにくいのです。これはもう「国際核燃料サイクル評価」(INFCE)の時代から,アメリカ人やヨーロッパ人から散々問いつめられたことなのです。ことにMITの連中は,常にコスト,それから経済性ということで攻めてきているわけですから,20年来の疑問にいまだに答えが出なくとも不思議ではない。それが私の先ほどの発言の中身なのです。

【小沢】ちょっと待って下さい。そうすると金食い虫だという批判を受けつつも,実験炉だと言って置いておこうということですか。

【田中】研究というのは,もともと金食い虫です。新しい技術をやるというときには,必ずしも実用化の時に必要なような経済性ということは,直目的でもないし。

【小沢】でも,それでは相当高速炉に対する政策を変えなくてはいけないのではないですか。いままでは,それが実用されなければ日本のエネルギー問題は解決されないという感じで,これまできているのではありませんか。

【田中】であるとすれば,エネルギー資源論をもう一度関係者から提起し直してもらい,この原子力エネルギー資源論をもう少し詰めて,そして改めてFBRの将来の存在理由を明らかにする必要がありませんか。

【石川】その間に入れておかなくてはいけないのが,昨年の動燃改革に際して吉川さんが,高速増殖炉をやるというのは将来のエネルギーを考えるとき人類全体の保険だと,このように決めておられます。ですからいままで進んできていた路線から,あの吉川さんの論文でもって変わったと思います。それを政府が認めておられるわけですから。ですから,田中さんが言われるのとは違いますけれども,保険的な意味なのでしょう。

【茅】念のために,日本政府がどう考えてFBRを推進しているかということと,田中先生がどう考えられるかというのは,別な話なのです。

【小沢】それはそうですけれども,先生のご意見はそのようなご意見ですねということです。

【田中】それはまさにその通りです。

【中島】なるほど。よろしいですか。そろそろ時間ですので,特に言っておきたいというようなご発言はありますか。

【木元】それでは田中さんに,もう一言お願いします。 そうすると,「もんじゅ」は研究のためであるから,再開してもよいと思いますか。

【田中】よいと思いますよ。あれはそのまま存続して,これまでの投資を無駄にしないためにも,できるだけ早く安全を確認して再開してよいと思います。

【中島】しかし,はっきりしておかなければいけないのは,やはりあれは西沢先生の委員会の結論が一般の人には非常にわかりにくいのです。つまり,いままでのところを相当変えたのだ,つまり実用炉をずっと先に延ばしたのだから変わったのだというご意見と,いや1つも変わっていないではないかというのと両方あって,クリアではないところがいまこのような議論が出てくる1つの根拠になっていると思うのです。ですから,その点で今度の原子力委員会が長期計画で「もんじゅ」の扱いをどうなさるのか,非常にはっきりする必要があると思います。国民の目にわかるようにしたほうが,私はよいと思うのです。

【木元】今日のご議論などは大変有意義だと思います。

【中島】そうですか。それでは時間ですので,そろそろ終わりにしたいと思います。それで平成11年度の第1回,第2回はいわば専門の方々をお招きして,つまり原子力に大変詳しい方々で議論していただこうと,それは核燃料サイクルという面倒な問題だからだということであったわけです。実は第3回以降はまた昨年と同じように,むしろ専門家であるという方は遠慮していただいて,一般の方々に集まっていただいて,何を議論するかと言うと,先ほど読みましたように「エネルギーの中での原子力の位置付け」,先ほど田中先生がおっしゃいましたような資源論も含めて,日本の将来のエネルギー問題の中での原子力の位置付けという問題に戻ることになろうかと思います。
第3回は8月の23日。つまり来月の23日ですが,場所は東京ビッグサイト,前回やりました所です。テーマは大きな広いテーマで「今後の原子力のあり方について」ということで開催することになっていますので,ぜひご参加希望の方はお申し出いただくようにお願いしたいと思います。
それでは今日はこれで終わります。雨の天気の悪い中を,貴重なご意見をいただきまして,まことにありがとうございました。
それでは,事務局どうぞ。

【事務局】それではこの辺で本日の原子力政策円卓会議を終わらせていただきます。
始めに,円卓の先生方,長時間のご議論大変ありがとうございました。できれば拍手でお送りいただければと思います。
傍聴の皆様方におかれましては,本日は長時間最後までご静聴下さいまして,本当にありがとうございました。事務局より深く御礼申し上げます。

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