1999.7.14
文責 原子力政策円卓会議事務局
平成11年度 第2回原子力政策円卓会議 議事速報
1.開催日時
1999年7月13日(火) 午後1時30分〜午後5時00分
2.開催場所
サンケイ会館 5階 サンケイホール(東京都千代田区大手町)
3.テーマ
高レベル放射性廃棄物処分について
4.出席者(敬称略)
モデレーター
石川 迪夫 | 原子力発電技術機構特別顧問
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小沢 遼子 | 社会評論家
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茅 陽一 | 慶應義塾大学教授
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木村 孟 | 学位授与機構長(副司会)
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中島 篤之助 | 元中央大学教授(司会)
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オブザーバー
招へい者
市川 富士夫 | 明治大学理工学部非常勤講師;中央大学商学部非常勤講師
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鈴木 篤之 | 東京大学大学院教授
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田中 靖政 | 学習院大学法学部政治学科教授
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中村 政雄 | 科学ジャーナリスト
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伴 英幸 | 原子力資料情報室共同代表
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山地 憲治 | 東京大学大学院教授
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(敬称略 五十音順)
5.議事の概要
- 木村モデレーターより、会議の主旨の説明、公募意見の紹介、モデレーター・招へい者の紹介。
- 招へい者のプレゼンテーションを行った後に、自由討論。
6.発言要旨
市川 富士夫
- 日本の原子力政策は、低濃縮ウラン燃料を用いる軽水炉、使用済燃料の再処理の二つを柱としている。
- 軽水炉や湿式再処理がそれぞれ実証済み技術という前提で導入されてきたが、実際にはトラブルが生じ、国民の不信を招いてきた。
- これまで原子力政策は先行的に決定されてきたが、技術的な裏づけが不足している。このような政策と実際の技術の乖離はサイクルの下流に向かうほど著しくなっているので、高レベル放射性廃棄物処分の問題もこの点を考慮して検討されるべきである。
- 高レベル放射性廃棄物の処分は、ガラス固化、地層処分の方針で進められているが、群分離、消滅処理といった方法に対する検討が不十分である。
- 使用済燃料の最終的な処分方法が不明確なままであり、さらには使用済燃料そのものが処分対象となる可能性もある現状において、急いで政策を決定するべきではない。
鈴木 篤之
- 高レベル放射性廃棄物の処分に際しては、慎重、確実、安全が重視されるべきである。
- ガラス固化された高レベル放射性廃棄物の発生量は1mg/kWh程度であり、この位の少量であれば、技術的に安全な貯蔵は可能である。
- 貯蔵場所として適切なのは地上なのか、地下なのかという議論は、地下貯蔵が本当に安全なのか否か実際に調べて明らかになったときに結論が出る問題である。従って、そのためにも地下の状態を調べる施設を作って研究するべきである。
田中 靖政
- 原子力発電については、30年以上の学習、経験が積み重ねられてきた。これに対して高レベル放射性廃棄物については、未学習、未経験の部分が多く、これらを補い不安を払拭できるよう、議論を積み重ねる必要がある。
- 高レベル放射性廃棄物は、安全に処分していかざるを得ないものと認識して対応していかなくてはならない。その処分は慎重かつ安全になされるべきである。
- 原子力発電を行うことの意義は、エネルギーセキュリティー確保、地球温暖化防止等といった観点から重要であると考えられる。
- 高レベル放射性廃棄物の処分を行う前に、関連する研究がもっと進められるべきである。
中村 政雄
- 現在、日本で発電される電力の1/3は原子力発電によるものであり、廃棄物問題は避けて通れない国民全体の問題であるという認識が必要である。
- 高レベル放射性廃棄物を急いで地下に埋設するのは適切ではない。一定期間、地上で保管している間に、並行して新たな処分技術が進展することが期待できる。
- また、これと並行して現在の六ヶ所村の貯蔵場所以外の新規貯蔵場所の選定も進めるべきである。
伴 英幸
- 現在以上の放射性廃棄物の発生を抑え、その総量が確定してから、これらの処分方法についての議論を行うべきである。
- 地層処分が既に基本政策として推進されていることが疑問である。処分方法についての十分な議論が済むまでは、放射性廃棄物は地上で保管して、回収可能な状態で長期管理されるべきである。
- 放射性廃棄物の処分については、多くの選択肢を提示し、徹底した国民的議論を通じてその方針が決定されなくてはならない。
山地 憲治
- 原子力政策円卓会議での議論の取り扱いを明確にしてほしい。
- 使用済燃料も高レベル放射性廃棄物になるという認識が必要である。
- 高レベル放射性廃棄物の処分方法を検討する際は、処分の期間はせいぜい数百年を視野におくべきである。政策を論じるのに数万年後までを考慮してというのは無理がある。
- 処分方法の選択肢を示した上で議論が行われるべきである。ただし、群分離、消滅処理が有効かというのは疑問だ。
- 処分方法について、規制は国、管理は実施団体、費用負担は民間事業者という役割分担が明確になっていること、100年間で3兆円程度というコストが示されているという点は評価できる。
○自由討議
●「高レベル放射性廃棄物処分方策」について
- 最終処分については、青森県知事の公約もあり政治的には時間がない。処分場の候補地が見つかれば、後は時間をかけて技術的問題に対処すればよい。地上で50年程度貯蔵するというのであれば、場所が見つかるであろう。
- 欧州が地下を選択したことに加え、地下であれば人間環境から隔離できるから専門家は地下の方が安全と思うが、素人は逆に地下では不安になる。素人の発想でこの問題に取り組んだ方がいいと思う。
- 地上に高レベル放射性廃棄物を置くのは処分ではないが、回収可能な状態で地下に置けば、いずれ処分に移行することもできる。回収可能性を保証した地層中の保管であれば受け入れられるのではないか。
- 地層処分の議論では後世の人に影響のないようにというが、事前評価のみならず後世の人がモニターできることが必要である。地上処分というのはそういった考え方の反映ではないか。
- 各国の計画でも回収可能性についてある期間を考えることとなっている。日本の原子力部会での議論でも、同じではないが300年程度は監視を続けることになっており、ある意味で回収可能性を意味している。
- 青森の貯蔵施設で50年、更に新しい地上貯蔵施設で50年貯蔵すると、合計100年貯蔵でき、その間に色々な技術が生まれる。
- 使用済燃料の中間貯蔵施設も探さなくてはならないが、これには貯蔵期間の定めがない。使用済燃料の保管は現実の問題であり、信頼が得られているかどうかにかかっている。
- 最近の状況を見ると研究施設の設置のめどはついているのではないか。また、一時的に保管するにしても、次の搬出先の保証がなければ、それもできなくなる心配がある。
- 技術の進歩は早く、政策決定と技術とに溝がある。例えば地層処分に関する2000年レポート第二次ドラフトは出たが、これを見ると政策決定時からの技術の進歩がわかる。
- 何万年か後の人にとって資源としての価値が有るかという議論はあるが、廃棄物を埋設したことについて倫理的な問題が残る。
- 安全性の担保が重要であり、リスクが許容範囲であれば倫理的にも問題はない。どの位安全なら安心なのかが問題であり、安全と安心を近づける努力が必要である。
●「高レベル放射性廃棄物処分研究」について
- 地下については検討し、研究する必要があるが、日本では地下研究施設を作るのにも地元などから賛成してもらえない。立地問題であり難しいが、研究が進んでいないと処分の具体性は出てこない。
- 仏では回収可能なオプションを残すような方向性がある。専門家ほど、地下のことが分からないことを強調する。地下何千メートルのことは分からないというのが科学の現状であろう。
- 現在、技術的には100点ではないが合格点であると思う。アメリカ等の例を見ると、技術的には成果はあるが社会的には受け入れに至っていない状況。
- スウェーデンのストリーパ計画は、国際的プログラムとしての研究施設であるが、地層は処分に適しておらず処分場にしないことを明示している。研究は厳しい条件で行った方がよいので日本でもそのような場所に研究施設を作ればよいのではないか。
- 地層研究を先行して行うことについて、どこも同じ地層はないので、研究の結果、適切と分かれば、そこが廃棄物処分場になるのではないかという不信感が地元にはある。ルールを作り廃棄物政策法のような枠をはめて進めていく方がスムーズではないか。
- 研究施設が最終的に処分場になるのではという点は大きな問題ではない。県には建物建築の許認可権があり、廃棄物を入れるかどうかは地元との契約、約束により決まるものである。
- 研究所の処分場への転用は心配である。核燃料サイクル開発機構の第二次とりまとめを見ると、処分する地層をあらかじめ決めている。報告書では結晶質岩としているが、幌延は堆積岩であり、なぜ研究するのか疑問である。
- 技術的に合格点なら、なぜ研究所が必要なのか。処分場として有望な場所の方が研究所として望ましいのではないか。
●「社会的受容性」について
- 専門的には、長期安定性を考えると地下が優れている。多くの人が納得するためには、地下を見てもらう必要がある。
- 安全確保、安心確保のための研究が重要であり、国際的な共同管理構想も含めた施設の整備が重要。事業化において、最終処分場の建設が自治体にとって魅力的となる条件整備が重要。また国民、地元、有識者、ジャーナリストなどがイメージできるような情報を多く提供すること。これらを包括して計画し、並行して進めなければならない。
- 回収可能性は技術的評価も重要であるが、社会的に受け入れられるかが問題。
- 技術開発や、国民に実際に見てもらうといったプロセスを進めていくことによって、結果的に国民に地下の埋設が良いと思ってもらえることを期待している。
- 現在、国民に地下の埋設がどのようになっているか見てもらう施設はないが、類似の施設として地下発電所、石油備蓄基地等の地下施設はある。また海外の成果もある。
- 過疎の貧しい所に廃棄物を持っていって、将来住民に障害がでるのではという不安が一般人の最初の反応である。
- いやがるものを無理矢理押しつけるのは駄目であり、六ヶ所では安全だと判断し核燃料税も有りメリットが有るから受け入れた。
- 原子力が恐いという情報は早く伝わる。これまでどういう情報をどう伝えていくかを十分検討してこなかった。毅然とした態度で堂々と説明するという姿勢を示す方策を考えていくべき。そのためには広報が大事であり、広報体制を見直すべき。
- 原子力は最先端技術であるのに、なぜ原始的な不安心理に足を取られるのか。
- 放射性廃棄物をどう扱うかについては、十万年で見るか、三百年で見るかの問題であり、そうなると教育が重要な課題となる。
●「核不拡散」について
- 回収されたプルトニウムは、プルサーマルにより速やかに使用すべき。
- 再処理はこれ以上行わずに、プルトニウムの発生を抑えるべき。既に再処理で生じたプルトニウムは、プルサーマルで使うのは危険である。ガラス固化処理して再利用できないようにすべきである。
- 米国の中に日本が核武装するのではないかという懸念がある。プルトニウムのバランスシートを明示すべき。また、IAEAの査察に疑惑を持たれないようにすべき。対外的に平和利用に徹していることを積極的に説明すべき。
- 日本は核拡散防止条約の優等生であるべきで、世界のリーダーシップをとるべき。外国から査察を受け入れるだけでなく、査察官の派遣など人的貢献を行い、世界の核不拡散に寄与すべき。
- 国内では、情報の公開を徹底し、核不拡散技術開発を進めていくべき。国外では、ロシアの核拡散リスクの低減に積極的に協力すべき。
- 核不拡散は原子力の軍事利用と平和利用との矛盾である。平和利用のためには核廃絶が必要であり、平和利用を担保するために学術会議が自主、民主、公開の原則を提案した経緯がある。また、核不拡散の手段として、保障措置と核物質防護があるが、核物質防護が行きすぎると国際的な透明性が下がる。
●プルトニウムの扱い
- 使用済燃料として保管、再処理してプルトニウムを保管、MOX燃料として使用のどれか一つの方策ではなく、混合的な解決しかない。三つ全てやっていく必要がある。
- FBRは何十年か先に必要になってくると思うので、FBRの研究のためにプルトニウムが必要である。
- プルサーマルは、プルトニウムの使い方としては無駄使いだと思う。安全に利用できるのなら利用すべきだが、現在のFBRではそれができない。プルサーマルをやるために再処理するのではなく、必要な量だけ再処理すべき。
- すでにあるプルトニウムはガラス固化体にして、地上管理で直接処分を行うべき。とりあえず地上で管理することを基本政策とし、その後どうするか、研究や議論を進めるべき。
- ワンススルーは使用済燃料の永久貯蔵を意味するが、中間的に貯蔵しておき、将来再処理できる選択肢を残しておくべき。
- 既に分離してしまったプルトニウムは、人が近づけないように放射性廃棄物と混ぜて、ガラス固化すれば、使えなくなる。
●FBR路線の継続について
- 個人的にはFBRには反対だが、研究、議論することに異議はない。
- FBRを何のために作るのか議論をすべき。プルトニウムがだぶついている状況で増殖すれば、核拡散の可能性が高まる。技術の保有により国際的な貢献が可能となる。研究であれば経済性を無視していいが、コストが高いのに実用炉を作ることについては、国際的にも疑念を持たれる。
- FBRでは、増殖比を下げてプルトニウムを燃やすこともできる。
● | 本資料は原子力政策円卓会議事務局の責任で作成したものであり、速報版のため内容に不十分な点が含まれ得ますことを、あらかじめお断りいたします。
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