<資料6-3>

1999年度
第1回円卓会議プレゼンテーション

招轄者 東大大学院教授 鈴木篤之、久留米大教授 鈴木 岑二
科学ジャーナリスト 中村 政雄 東工大教授 関本 博
電中研特別顧問 服部 禎男 原子力資料情報室共同代表
伴 英幸 原子力政策転換全国ネットワーク 中村 融

日時 1999年6月15日 PM1.00~5.00
場所 東京ビッグサイト会議棟レセプションホール(江東区有明)

 私はいさきか象徴的な話でプレゼンテーションを始めたいのですがFBR懇談会報告書に三菱マテリアル秋元社長が要旨次の様な補足意見を書かれました「元来軽水炉は資源の有効利用から見れば不完全なシステムで軽水炉だけでは燃料サイクルは完結せずやがて原子力全体が行き詰まってしまうでしょう。原子力が束の間のエネルギー源に留まるか、人類繁栄の手段たりうるか偏に高速炉実用化の成否による」と言うものです。又第1回原子力利用長期計画に既に高速炉での増殖が書き込まれてもいました。ですから原子力に未来が無くなるともんじゅに固執される方々がおられるのもよく判るのです。FER開発は確かに原子力平和利用のかなめなのです
 さて核燃料サイクルの実態はウラン採掘時にウランの10万倍の残土鉱滓等放射性廃棄物を捨て、濃縮時に劣化ウランを捨て、原発運転時に低中レベル放射性廃棄物を捨て、再処理時には大気中に放射性希ガスを、海中には液状放射性廃棄物を廃棄し更に高レベル放射性廃棄物を捨てて、劣化ウランとPuを作り、循環利用するのはPuだけです。リサイクルと違いその経路の至る所で多量の放射性物質を捨てるのでリサイクルと言う言葉の使用は適しせん。私は「Pu利用」と直裁な言葉を使いたいと思います
 さてPuという物質はウランと比較してほぼ50万倍の放射性毒性があると原子力安全委員会の目安線量で明らかです。又1994年1月の全米科学アカデミーの報告書「余剰兵器Puの管理と処分」で「厳密に経済的観点から解体核兵器から出てくる余剰Puは資産というよりは負債である」とされています。アメリカでは余剰Puは兵器級PuはMOX燃料に、原子炉級Puは硝子固化されます。理由は原子炉級Puはプルサ-マルに適しないからです日本で原子炉級Puでプルサーマルを実施するのとは大違いです。さて今から「プルサーマル」 「FBR開発」 「再処理」 「高レベル廃棄物処分」最後に総括しての意見を述べたいと思います。まずMOX燃料はウラン燃料の5乃至6倍もの燃費で経済性が成立しません。又今計画のPu富化度、燃焼度では安全を保証するデータ一が無く更に仏力ブリでの研究でMOX燃料使用の安全性に対する危倶がレポートされいてます。最近強調されるウラン節約は計画が最大限順調に行っても73年のPu賦存量が1年間延びる程度のものに過ぎない等「百害あって一利無し」でメリットの殆ど無い危険な「プルサーマル」計画は中止すべきだと提議致します。次にFBR開発について述べます。旧動燃はもんじゅナトリウム漏れ事故、東海再処理工場火災爆発事故、情報隠し等数多くの不祥事で、組織体質が到底開発研究を担える組織でなく、安全審査迄虚偽データで通す様な底無しの腐敗体質を露呈し又旧動燃が長年の莫大な資金をつぎ込んだ開発成果である濃縮高速遠心分離カスケードプラントは日本原燃からコストが引き合わぬと引き継ぎを拒否されるという為体でした。さて此処で特に核燃開発機構が「中長期事業計画」を国民の意見を聞かずに決定したのは独善的且閉鎖的な組織体質が継続され、又組織改革の目玉の「外部評価委員会」がこの様な計画をオーソライズされた事は旧動燃の改革が核燃サイクル開発機構になっても少しも改革の実が上がっていない事を示しています。そして現場で依然として「もんじゅ」に固執する非科学的体質が温存され「事業計画」とその現場での理解との間に見られる亀裂を含めて、旧動燃の改革を改めて審議し直さ無くてはならないと提議します。この核燃開発機構は「長中期事業計画」で、今後5年間の事業計画を理事会で決定されました。又仏の研究者ともんじゅの利用を含め「FBR実用化と高レベル放射性廃棄物利用についての共同研究協定」も結びました。旧動燃FBR開発計画は、原子炉開発のルールから外れていて工学的安全性が保証出来ず、経済性も確保出来無いものです。カルカー炉と瓜ニツのもんじゅでは、炉心崩壊事故の危険性が否定出来ず大事故の可能性があり、蒸気発生器の水-ナトリウム反応が核燃機構の研究で高温ラプチャで大変危険な事が明らかで、Na使用で耐震性確保に限度があり敦賀地方のM7クラスの地震発生の可能性に対処出来ない上、FBRの倍増年が90年で到底核燃料の有効な増殖は不可能で、その上FBRの建設費がトップ・エントリ型炉でも原発の1.5倍で到底経済性が成り立たちません
 この様にもんじゅからの出発てはFBR開発の展望は到底不可能です
 私はもんじゅでのFBR開発中止を提議します。イチから初めて溶融塩炉を含めてもっと出力密度の低いコントロール可能な炉型でのFBR開発を提議いたします。次に再処理について述べます。原発サイトの使用済燃料の蓄積問題が深刻で、このままでは数年を出ずに原発の運転を停止せざるを得ないと予想される問題から話を始めたいと思います。この問題解決の為ロシアでの中間貯蔵が提唱されていますがロシアの法律は中間貯蔵は再処理を前提としており、ロシアの政治的経済的混乱の状況も考えると到底実現不可能でしょう。使用済燃料の中間貯蔵施設は必要だと思われますので、長期の国民的論議が可能な公聴会等で透明な手続きを経て国民的合意を形成し 国会の法律制定で都市周辺に作る事を提唱します。核拡散防止の為「Puの余剰は持たない」旨の国際公約でPuを消費するプルサーマルの必要が強調されますが、実は原子力政策の見通しを立てて、各立地点がいずれも問題にしている「国民的合意を国が責任をもって作れ」という要請に応える必要性が考えられます。私は原子力政策の見通しを立てる為には再処理を中止するべきだと思います。この根拠は再処理は無事故でも環境への放射能汚染が避けられず又レッド・オイル爆発の危険性臨界量集積で核爆発の起こる危倶等安全性への不安が大きくその上装置に対する負担が大きく、絶えず故障が起る為操業率が低く、コストが到底引き合わない等深刻な問題が山積し、原子力政策の見通しを立てるのを妨げているからです。再処理を中止しPu余剰の発生を止め、こうして量が限定された余剰Puは硝子固化で処理処分して、国民的合意が得られる原子力政策の見通しを立てる事を提議致します最後に高レベル放射性廃棄物の深地層処分中止を提議します。深地層処分の安全性は科学的に実証されておらず近い将来に実証される望みもありません。又最近アメリカでコロイド状になって放射能が地下水に大量に溶解し更に今迄予想もされなかった速さで地下水が移動する事が実証され、環境への取り返しの付かない放射能汚染の危険が実証されました。高レベル放射性廃棄物の将来的利用を考慮して深地層処分でなく、浅地層処分乃至地上保管を選択するべきです。日本の深地層処分のみに固執する処分計画は根本的な再検討の必要が有ります。総括して言えばもんじゅは廃炉、再処理は直ちに中止、長期の公聴会等で困難を克服し何処か都市部で使用済燃料の中間貯蔵施設を建設運用し、高レベル廃棄物は淺地層処分乃至地上保管の選択を考慮し、量が限定された余剰Puは硝子固化で処分するべきです。「Pu利用」は当面中止し、原子力政策の整合した見通しを立て国民的合意を計る事を提案致します
 最後にグロバル・エネルギーセキュリティーの展望について語りたいと思います。半世紀近い長いレンジで固有安全性を持つ小型原子炉を開発し都市部に展開、高レベル廃棄物の消滅処理と利用を実現すること。FBRは基礎研究から再構築して実現性のある開発路線を選択しなくてはならないと思います。省エネ、新エネの技術的可能性をくみ尽くして、世界に誇れる日本のアイデンティティーを確立する明るい展望を開きたいものです


1999年度

第1回原子力政策円卓会議参考資料
議題 核燃サイクル

(1)プルサーマルは中止を!
(2)もんじゅとFBR開発中止
(3)放射性廃棄物の処理処分政策

事実のみを尊重し、相互に啓発され、判り易い表現を!

招轄者 東大大学院教授 鈴木篤之、久留米大教授 鈴木 岑二
科学ジャーナリスト 中村 政雄 東工大教授 関本 博
電中研特別顧問 服部 禎男 資料情報室共同代表 伴英幸
原子力政策転換全国ネットワーク 中村 融

日時 1999年6月15日 PM1.00~5.00
場所 東京ビッグサイト会議棟レセプションホール(江東区有明)

(1)プルサーマルは中止を!

 プルサーマルを考える要点は次の諸点ではないかと思われる。
(1)核拡散と関連した国際公約からPuの余剰は持てない。
(2)プルサーマルの安全性は確保出来るのか?
(3)リサイクル効果があり、ウランの節約になるのかどうか?
(4)プルサーマルのコストはどうなるのか?
(5)MOX燃料の使用済燃料再処理はどうなるのか?
(1)核拡散と関連した国際公約からPuの余剰は持てない。
「Puの余剰を持たない」という国際公約は日本がPu利用を進めていく上でどうしても守らねばならない公約である。しかし現に既に日本は20トン近い余剰プルトニウムを保持している。そして今計画されているプルサーマルが予定通りに進められたとしても余剰プルトニウムは解消されないでむしろその量が増えていく。余剰プルトニウムは再処理をしない事でしかなくならない。余剰プルトニウムを持たないという国際公約を守る為にまずしなくてはならない事は再処理の中止であるその上で余剰原子炉級Puは硝子固化して処理処分すればよい
(2)フルサーマルの安全性は確保出来るのか?
 今の原子炉でプルトニウムが既に燃え発生熱量の3割の熱を出しており何の問題もその事で起こっていない訳だから安全性に問題はないと主張される。果たしてこの様な事が安全性を考える根拠になるものであろうか?
(イ)普通原発で燃えているPuはただの1%に過ぎない。しかし今計画されているプルサーマルでのPu量は4.1%もあって実に4倍以上である。量が増える事はそれだけ危険が増す訳で「量は質を変える」ので4倍にもなれば危険度は飛躍的に増す訳である(ロ)その上に今原発は発電単価を競合する他の発電単価よりも少しでも低く押さえたいので無理をして13ケ月運転・1ケ月定検が常態化している。ウランの濃縮度が4.1%に昂まり、燃焼度も随分高く設定される様になっている。これは原発自体運転で危険が増している訳である。これに合わせプルサーマルのPuが増え、燃焼度も上げて計画されている。元来ウラン用に設計された原発でPuを燃やすのは幾つもの無理が重ねられる事になる。それなのにこの様な他国では実施された事も無いプルサーマル実施条件が今回の計画では実施されるので余計危険である。安全性は極めてあやふいのである。
(ハ)普通のウラン用に設計されている原発でPuを燃やすと制御棒の利きが少なく共1割程度は悪くなり、MOX燃料の燃焼度が上がるとウランの場合よりも放射性気体の発生がひどく、燃料棒の傷みも心配され、その他燃料が過度事象を起こした時、炉自体の自己制御性も悪くなると言われている。これで危険だと決めつけはしないが、もし原発大事故になろうという時に、安全に事故を防止する能力が減っている訳だから、万一の時にウランなら大事故にならずに済む所が、事故防止機能が減った為に大事故になってしまう事が考えられる訳で、プルサーマルはやはり危険である。
 フランスのカブリ炉での実験でプルサーマルで燃料棒が傷んだという報告がある。これも実際に危険性が実証されたデーターと言える。
(3)リサイクル効果があり、ウランの節約になるのかどうか?
(イ)MOX使用済燃料の再処理は極めて困難で出来ても1回である。
(ロ)Pu放射能毒性がウランに比較して比較出来ない位に強い事を考えれば、又核拡散の為の核防護の事を考えれば、運搬、貯蔵、色々な操作時の被曝等考慮すればデメリットが極めて大きい。
(ハ)ウランの節約効果が言われるが、アメリカでは「プルトニウムは資産ではなく負債である」とされ原子炉級プルトニウムは硝子固化が当然とされる。日本で計画されているプルサーマルはこの原子炉級プルトニウムで行われる。ウランの節約効果もウランの73年の賦存量か1年増えるかどうか程度でデメリットと比較しメリットは少な過ぎる
(4)プルサーマルのコストはどうなるのか?
 MOX燃料のコストがウラン燃料と比較して5.6倍だと確認済みで幾ら原発の燃費が発電単価の1割であるとしても、発電単価が1円上がる程度だとはこれも確認済みで、今の状況で原発の発電単価が他の発電単価と競合している現状では極めて厳しいものだと思われる。
(5)MOX燃料の使用済燃料再処理はどうなるのか?
 MOX燃料が高燃焼度で計画の今回のプルサーマルでは、使用済燃料の再処理は極めて困難である。これからの研究課題でありコスとの問題も考えれば極めて厳しいものがある。こような諸点を検討してくれば、Puの利用は止め、特にアメリカで硝子固化が計画されている原子炉級Puでプルサーマルをする事は止めるべきだと思われる。
 危険で経済性もなく、リサイクル効果も期待出来ない訳であるからプルサーマルは中止するべきである。余剰Puは硝子固化処分が適当だ。
 参考資料(I)プルサーマルには経済性が無い。
1)通産省の試算で5~6倍になる事が12月2日の衆議院第2議員会館第4会議室での通産省と若狭ネットとの交渉で確認されました
2)プルサーマル実施でウラン資源が節約出来るといわれているがどうか
 ウランの可採年数は73年と現在言われているがウランの節約が出来ると言われるが、可採年数が1年延びる程度に過ぎない事が電事連によって確認された。関西電力は英仏再処理委託分のプルサーマルによるウランの節約分を2010年迄に「石油2千万トンの節約」と言われているが、これは2010年迄に関西電力管内で4%程度の節電が行われ、電力消費の伸びが2%程度押さえられれば引き合う量である。
参考資料(II)プルサーマルの安全性について
1)プルサーマルに因って制御棒の利きが悪くなり、過度事象時には普通の原発なら安全に収束出来る場合でも、1/3MOX炉心では過度事象の収束が出来ず、大事故に発展しまうという指摘が行われている
2)通産省によれば、 1998年9月30日に「本件の安全審査に使用されたデーターには、本申請の上限であるプルトニウム富化度13Wt%、集合体燃焼度45.000MWd/tの両者を満足させるような検証データーはない」とフランスでのプルサーマルと比較して、日本で予定されているプルサーマル実施の場合の条件に適合する様な検証データーはないという事を確認している。
3)フランスのCabliの実験では、ある条件ではMOXでは燃料棒が過熱して破裂するという実験結果が出て、プルサーマルの危険性が実証的に指摘されている。
参考資料(III)Puの余剰量
 ヨーロッパに日本のPuが12t程度蓄積され、国内には7t程度の蓄積があり、20t程度のPuの蓄積がある。

 “もんじゅ”の七つのの危険性

1)Puカミウランの50万倍危ない。

 “もんじゅ”は高速増殖炉でPuを大量に使います。そのPuはウランU238の46万倍の人間に対する放射能毒性がある。Puは空気中に目にも見えない微粒子となって浮遊し、呼吸の時に肺に入り、長期間ここに留まり、更に骨の表面に移り、ここに吸着されて殆ど一生の間留まる。この為に20年、30年の間には誰でもほぼ100%癌になってしまう。放射能毒性の大きいPuを使うので“もんじゅ”は非常に危ないのである。
 例えば美浜事故の時に放射能が確かに漏れたが、この程度なら大丈夫だと言われた。しかし、もしこれがPuだったとしたら、とてもそんな呑気な事は言っていられない。何しろ耳かき一杯のPuが1億人の人を20年、30年の間には確実に癌死させると言うのだから大変だ。
 資料(I)Puの危険性について
1)ウラン(U)とは違って、Puはα崩壊を行いα線と言う放射線を出す
この線は薄い紙1枚でも止まる様な放射線である。身体の中に入るとPuの目に見えない小さい小さい微粒子から絶えずα線が出る。この放射線はPuの微細粒子の回り1センチ足らずの中で止まってしまい、このごくごく小さい範囲の中、精々2,300個程度の細胞を痛め付け続ける。そして2,30年位で、遂にはここからガン細胞が確実に出来てくるのである
 2)空気中に浮かんでいたPu微粒子は呼吸で身体の中に入り、肺に入る
肺から排出される迄の生物学的半減期が非常に長く、2年近く出ない。肺から出て行っても、更に骨の表面に沈着して一生そのままだと言われる。だから肺癌、骨癌が誰でも20,30年の問に100%起こる事になる。
(消化器官から酸化Puは殆ど吸収されず又排出も早いと言われている)
3)原子力安全委員会の1981年5月29日決定の「プルトニウムを燃料とする原子炉立地評価上必要なプルトニウムに関する目安線量について」によって計算すれば、酸化物として吸入した場合Pu-239の年摂取限度は0,26マイクログラムであり、ウラン238の酸化物吸入の年摂取限度の120,000マイクログラムと比較すればPuはUの46万倍の影響がある事になる。つまり同じ量の放射能が漏れたとしても、Uなら安全な量でもPuなら危険だと言う事になる訳である。ウランの約50万倍危険だと言う事になる訳である。
4)安全審査では炉心崩壊事故が発展した場合の想定はなく、重大事故、仮想事故も共に小さな事故しか想定していない。事故時にも格納容器の健全性が保たれるとしているので、その最大の放射能放出量は全炉心内蔵量1500万Ci(キュウリー)の内の51Ci、割合にして僅かに0,00034%(30万分の一)である。何としてもこれは不当に低い想定である。そして原子力委員会の指針にしたがった評価でも、もしも仮に1%は愚か0,01%のPuが放出されたとの想定においてさえも住民の被爆は目安線量を上回り、もんじゅの立地は認可不可能という事になる
 因みにWHSH1400(ラスムッセツ報告)によれば(政府が何時も引用する報告)軽水炉の事故時のPu放出でさえもPWRで0,4%,BWRで0,5%を想定しているFBRに於ての0,00034%という原子力委員会のPu放出想定量が如何に低いものであるかが判る。安全審査の想定が不当に低いものであったと指摘せざるを得ない
5)ここに述べた様に原子力安全委員会が決めた、放射能の広がり方の計算法で計算したところ、もし事故の時に炉心から1%のPuが出たとしたら遥かにはなれた京都や大阪の人でも、Puを呼吸の時目にはとても見えない空気中のPuの微細粉を吸い込んだ場合の安全かどうかを見ると、原子力安全委員会が決めた年摂取限度以上のPuを吸い込む事になり、まして福井県の人は到底助からないと言う事になる

1)炉心が危ない。

 高速増殖炉の炉心は炉心崩壊事故と呼ばれている炉心溶融とこれに伴い、続いて起こる核爆発と言える爆発、更にこの後臨界に伴う連続する核爆発が起こる危険性がある。
1)高速増殖炉は高速中性子を使う事によって、核燃料を増殖出来る様にした炉である。しかし高速中性子を使って炉心の燃焼(連鎖反応)を行うには熱中性子を使う普通の原発とは違って非常に無理をしなくてはならない
 その非常な無理を可能にする為に、
イ)燃料を普通の原発では3%程度の濃度のウランを使うのに、高速増殖炉では何と平均21%程度のプルトニウムを使わなくはならない
ロ)燃料を普通の原発よりうんと密に詰めなければならない。例えば普通では燃料棒の間の間隔は3,4mmであるが、高速増殖炉では何と燃料要素の間隔が僅かに1,4mmしかない。
ハ)この様な事の為に、高速増殖炉では炉心からの出力密度、つまり熱の出方が普通の原発よりも3倍もありしかも運転中の燃料要素の温度は普通の原発よりも250℃以上も高いし燃料要素の中心温度が約2350℃で表面温度が約500℃だから1,75mmの距離で実に1850℃もの温度傾斜があり非常に厳しい極めて冷却条件に余裕がないと言える
 運転温度が高いのでステンレス系の金属を燃料要素に使っているから燃料要素は伸び縮みが激しくその為曲がり易い。燃料要素の間が狭いので伸びると燃料要素が曲がってくつ付いたりする。するとそこに冷却材が来なくなるので温度が上がり燃料が溶融し、これが広がっていく。燃料が溶融すると21%ものプルトニウムがあるので燃料が集まると核爆発を起こす臨界量を越えてしまうので原爆の爆発と似た爆発が起こる。この事故はULOFと呼ばれて恐れられており、こうなると原子炉の蓋は吹き上がり、隙間からナトリウムが吹きだし、原子炉容器の配管も歪んでしまう。この爆発で溶融した燃料が上部のナトリウム中に吹き上げられるので続いてナトリウムの蒸気爆発が起こり、この爆発で再び溶融燃料やバラバラになった燃料が再び下方に押しつけられて圧縮される。こうして急激に燃料が下方に押しつけられて臨界量を越えた時には、それこそ本物の原爆と同じ爆縮による爆発が起こり、NTT500Kg以上の爆発が起こり、炉は吹き飛び、チェルノブイリ事故の100倍量とも言われるプルトニウムを主とした放射性物質が環境中に吹き上げられ、その恐ろしきはPu量が桁違いに多いので原爆と比べてもその被害の広がり等その恐ろしさは物凄い。まさに世界の終わりと言わなくてはならない。これが高速増殖炉の最も恐ろしい事故の姿である。
 動燃側のこの事故に対する対策として我々が知り得る事は燃料要素に対してワイヤースペーサー、スペーサー・パットそして燃料要素をラッパ管に入れて区分けする事でこの事故に対する対策としている。
 しかし一切の資料が公開されていないので、これがどの様に有効なのか?これでこの事故が防げるのか解明出来無い。ただ常識的に言えばこの程度の対策で充分だとは思われない。事実“もんじゅ”には原子炉容器の底に、この事故が起こった場合の万一の時に備えて“お皿”が用意されており絶対にこの事故が起こら無いと言う確信が無い様に見える。
 そして何よりも不安なのはこの様な“お皿”ではこの種の事故が万一起こった場合には到底防げ無い事がドイツのカルカー炉の安全審査の論議の中で既に明かになっているのである。即ち、この安全審査で世界的な専門家が集まって明らかにした事は、“冷却装置を備えたお皿” コアー・キャツチャーでもこの事故がいったん起これば防ぐ事は不可能だと言う事である。まして“お皿”では単なる気休めにしか過ぎない。そしてこの様なものを設け無いではおられないと言う事は“万一の時にはCDA事故が起こり得る”と考えているとしか思えない訳で、単なるお皿を用意する様な動燃の対策では矢張り不安と言わざるを得ないのである。
 資料(1)炉心の構造的特性の問題点
 炉心の出力密度、核燃料密度が極めて高い為に、炉心崩壊時には再臨界事故による核爆発が懸念される。冷却材の温度が高く、流路か狭く燃料の中心部はPuの融点に近い温度になり冷却に余裕が少なく炉心溶融の危険が高い。原子炉停止系が一通りしかなく緊急停止の失敗=暴走の懸念がある。又緊急炉心冷却系が無い事は配管破断時等に冷却が充分かどうか懸念が強い。炉心の中性子束の密度が大きく、照射による金属材料の脆化、劣化、スウェリング(膨潤)が激しく燃料の破損等が懸念される
 燃料被覆管の厚さは伊方2号炉の0,62mmに対して僅か0,47mmに過ぎず“もんじゅ”では燃焼に伴って、沢山の気体状の死の灰が作られ燃料被覆管の内外の圧力差は70気圧にもなり極めて厳しい条件である
(2)炉心の自己制御性の問題点
 軽水炉の場合は反応度がほぼ最大値に近く、正の反応度が添加され難しいが、FBRでは様々な要因で正の反応度が添加され易くそれが制御され難く、反応度事故につながりやすい事が懸念される
 即ち、冷却材中でのボイドの発生、冷却材の温度上昇による膨張、燃料体の変形によって燃料密度が大きくなる場合には正の反応度が添加され、ドップラー効果で負のフィードバックが働く作用もあるが、短時間に大きな反応度が添加された場合鼠算式に連鎖反応が増大して反応度事故が起こり炉心燃料が破壊される可能性がFBRでは否定出来ないこの様に軽水炉と違って「炉心溶融」=「原子炉暴走」が起こる可能性が高い訳である
米国EBR1事故は僅か2秒の停止操作の遅れで炉心溶融が起こった。
(3) 1990年9月9日10時フエニックスでほぼ100%で運転中に僅か1/4秒の間に3回の異常な出力の振動が起こり、緊急自動停止で収束した。この種の事故ははっきりしているだけでこれ以前に3回は起こっていた。アルゴンガスの泡が原因と考えられ、このれを完全に防止したのにかかわらず、又起こった訳で検出出来無い程度の炉心の変化で、鋭敏に出力異常が起った訳で、反応度事故が未知の事で起こる可能性を示した。
(4)この事故に対する安全審査はどのように行われたか?
 この様な事故はHCDA(Hypothetical Core Disruptive Accident)=仮想的炉心崩壊事故と呼ばれて兼ねてより論議されて来ている。
 アメリカ、ドイツではFBRの安全審査時にこの炉心崩壊事故が大きな論議となり、この事故時に放出される大きな機械的エネルギーによって起こり得る事故の規模が論議された。ところが日本の安全審査では異例の「技術的には起こることは考えられない事象の解析」という項目が設けられたが、この項目は立地審査上の重大事故でもなく、仮想事故でもない、極めてあいまいなものでこの特別に設けられた項目が安全審査能の上でどの様に位置付けられるものか何等明確にされていない。
 そしてこの項目については安全評価の経験もなく、実証データ一も無いと原子力安全委員会も認めたのだが「確率が低い」事を理由に常識的な安全評価に必要な「保守性の仮定も取っておらず」安全審査では根拠不明としかいいようがないままにこの炉心崩壊事故を問題として取り上げ無いで終わっているつまり形だけは取り上げたが実質の審査はしていない
 即ち、安全審査では、「技術的には起こることは考えられない事象の解析」という項目では日本の安全審査委員会がこのような事故についての安全評価の経験もなく、実証データーも持っていないことを認めていながらそれにもかかわらず事故の確率が低いと言う事を認定している。これは原子力安全審査指針集のP495に(5)「事故よりさらに発生頻度は低いが結果が重大であると想定される事象」いわゆる5項事象と呼び安全審査ではこの事故が起こった場合でもTNT火薬にして125Kgに相当した機械的エネルギーが放出されるがそれでも格納容器は安全だとしている
 しかしこの事故について専門的に研究している科学者がこの事故が起こった場合にはTNT火薬で500Kgからそれ以上の機械的エネルギーが放出されるとしているのと比較して、ここでも安全審査では「保守性の仮定」つまり最大限の事故を想定せずに事実上の安全審査を回避している
 「保守性の仮定」を取っておれば当然このような機械的エネルギーの放出による格納容器の安全性を審査しなくてはならないはずでありこの場合には格納容器の破壊が想定されて当然でこうなれば安全審査の結論は認定不可能と言う事が予想される訳なのである
 ドイツのRSK(原子炉安全委員会)は1987,9,30-10,1内外から専門家を集めて特別会議を開き「ナトリウム冷却高速炉の仮想的炉心崩壊事故に関する勧告」をまとめるという位この事故を重視している
 そして州の認可当局はドイツの安全審査の15段階の13段階まで審査を通っていたものをこのCDA事故に対する対策のために設置しなくてはならない安全装置の費用を考慮し経済的に成り立たない事もあって最後の段階で認定を許可しなかったのである
 ビーナスコード、ジンマァーコード等でのカールスルーエ原子力研究所のシミュレーションが否定されて、CDAの可能性は否定できなかった。

3)ナトリウム火災の危険性

 ナトリウムは極めて反応性に富んだ金属で、水と激しい爆発反応を起こして水素を発生する。空気と触れるとやはり爆発的に燃え上がる。
 Naは又セメントに触れると激しく燃え、これを崩してH2を発生する
 “もんじゅ”の安全審査は1980年から1983年に掛けて行われたのだが、プール火災と言われる配管からNaが漏れて床にたまり、床の上で広がりながら燃え上がるという火災については確かに安全審査が行われた。動燃はこの安全審査に基ずいて1次系についてはNaが強い放射能を帯びる事も考慮して、配管が通る部屋は窒素ガスで満たし、部屋の壁は鋼で内張りをして、Naが漏れても空気と触れ無いので燃えず、仮に燃える様な事になったとしても内張りの鋼が守ってくれるので、部屋を作っているセメントとNaが反応して、部屋のセメントが崩れる様な事にならない様にしている。しかし2次系については窒素は満たさず、内張りの鋼も腰の辺までしか張らず、燃えるNaがNで満たした下の部屋に導かれてプール火災が起こっても大丈夫だと考え、コストの関係もありこの様に設計した訳である。所が1986年のスペインの経験からプール火災ではなくて、スプレー火災がNaの漏れた時に起こると言う事が判った安全審査ではこの点についての審査は判っていなかったから成されていないので、動燃がこの点に付いての実験を行って大丈夫であると言う事を言っているが、これは極めて問題である。第1、安全審査をせずに動燃が代わりに大丈夫ですと言うのは日本の安全審査の体系、法的なあり方から許されるはずの無い事である。しかも2次系でスブレー火災が起こったとしたら部屋中が霧の様になったNaと空気との激しい反応でプール火災の何倍もの激しい爆発的な火災が起こる訳で、内張りをしていない腰より上の部屋の壁は、たちまち燃えるNaと反応して崩れ、部屋がつぶれてしまうと言う事が充分起こり得る訳である。こうなれば事故がただで済むはずはなく、1次系にも波及してどの様な大規模て、致命的な事故に発展するか想像する事も出来ないのである。
 資料1)スプレー火災はスペインで日本の安全審査が終わった86年「プール火災ではなくて比べ物にならない非常に激しいスプレー火災が起こる」と言う事が判った訳で、安全審査ではスプレー火災が起こる事を知らないままで審査をした訳です。スプレー火災が起これば部屋が鋼の内張りをしてあったとしても温度が異状に高かく安全は保障出来無い訳ですから大変です。まして“もんじゅ”の2次系の状態では到底持たないと思われます
 当時動燃はNa火災の場合に500度以上の高温は測定されないとしていた。しかし今日ではこの時点で千度に近い高温が燃焼時に観測されていたことを隠していたことが判明している

4)蒸発器、過熱器での事故

1987年2月27日AM9時43分48秒英国の高速増殖炉(PFRでの大事故)は1本の蒸気発生器細管がギロチン破断を起こして10秒経つか経た無い内に、40本がギロチン破断に近い破断を起こし、他に70本近い細管が変形したと言うもので、これは日本では長い間秘密にされて専門家の間ても知られていなかったが、ほんのここ2,3年でようやく真相が明らかになった。この時に中間熱交換器もまさに破壊される寸前になっていた事が判明しており、もしそうなっていたらどうしようもない大事故になっていたと言われている。所が日本ではこの事故が起こる前に安全審査が行われ、細管が破断した場合に周辺の細管にどの様な影響が及ぶかについて、当時の知識から僅か3本の周辺細管が影響を受けて破断すると言う想定で安全審査を行っているのである。この英国の事故以後は細管破断の影響が周辺に及ぶその及び方がそれ迄の考え方では駄目で、まるで違った新しい考え方で事故想定をしなくてはならないと言う事が常識となって居る。今動燃はこの事故について、
(1)SGのの設計を変えた事。  (2)細管を螺旋状に形成した事。
(3)事故時圧力を逃がす圧力解放板又反応物収納容器を設けている。
事により、安全性が確保されるとしている。しかしこれには当然疑問がある。つまり英国のPFRと同じ原因で細管の破断は成程起こらないかもしれないが、“もんじゅ”でも安全審査で当然ながら、別の原因で細管のギロチン破断は想定されており、仮に原因が英国のPFRと違っていたとしても細管破断の周辺細管への影響の波及については同じ様に考えなくてはならないハズであり、当然に3本ではなくて一度ギロチン破断が起こったという仮定を置くのならば、当然40数本の細管が破断すると言う想定で事故解析をして安全審査をしなくてはならないはずである
 ここでも安全審査以後の新しい知験を取り入れて“もんじゅ”の安全審査がやり直されなくてはなら無いと言う事が言えるのである。
資料I
 英国のPFRでの事故は幸いな事に過熱器で起こったのだが、中間熱交換器には何と設計基準事故で想定された圧力12ミリバール(mb)よりは少ないが11,5mbの圧力が掛かった訳で、わずか0,5mbギリギリの所で中間熱交換器に事故が波及せずに済み、からくも大事故にならずに済んだ訳であるが、これがもし蒸発器で起こっていたとしたら、とてもこの程度では済まず、中間熱交換器まで破壊され、1次系の放射能の強いNaが大量に放出されるという大事故に発展していた訳である。
資料II
 英国のPFR迄は細管破断の周辺細管への伝播については、ウエステージ現象(これは漏れたNaが水と反応して出来る腐食性の苛性ソーターや酸化ナトリウムのジエット流が隣の細管に当って科学的に、又機械的に削る作用で隣接細管が破断すると言う考え方であった)と考えられた
 模擬実験も行われたが2次破損についてはむしろ冷却効果迄が期待出来ると考えられ、破損伝播現象についての深い考察はなされず、精々周辺の2,3本の細管の破断で済むものと考えられていた。むしろこの時に出来る圧力波がどうの様な影響を与えるのかが問題にされていた。
 PFR以後事故調査の結果、周辺細管への破断の伝播はウエステージ現象等では無く、Na-水反応による発熱により伝熱管が1200℃を越える発熱により急激にその機械的強度を高温ラプチャで低下させた事が明らかにされている。であるから日本の安全審査で3本しか周辺細管が破断しないとした安全審査の想定はもはや成り立たないのである。この様に考えれば圧力解放板、生成物収納容器に因ってこの様な大規模な、爆発的な事故を大過なく収束する事は期待出来ないと思わざるを得ないのである。
 今日、動燃がこの点についても当時、細管破断の反応機構がウェステージ現象ではなく、安全審査で認定されている4本破断程度では到底収まらないものであることを知っていたのに隠していたのである
資料III“もんじゅ”の伝熱管は蒸発器では80mもの長い管(外形31,8mm,厚みは蒸発器は3,8mm、高温の過熱器では、3,5mmと薄い)を螺旋状に、ヘリカルに、ぐるぐると曲げたものである。80mという長い管は無いから10mの管を溶接して作られており、これは大きな欠点で溶接部は肉厚となり熱的にも耐久力に欠ける事になる

5)もんじゅ”は地震に弱い

“もんじゅ”は運転中と運転停止時とで温度差が非常に大きい。この事から機器の伸縮に耐える為に安全上の困難が生じる。
 “もんじゅ”は軽水炉に比較して運転時の温度が200℃位高い。比熱がNaは水と比較して小さいので運転を停止した時には温度の低下が激しい。この様な訳で“もんじゅ”では運転温度が高いだけでは無く、温度の上下が激しい。だから原子炉圧力容器から始まって、配管、中間熱交換器(直管型で底の方はべローズにして伸縮を吸収する様になっている)SG(2つに別れていて蒸発器と過熱器に別れて伸縮を吸収する為に80mものヘリカルコイル型になっている)等全てに渡って伸縮、熱衝撃に耐える様にする為に出来るだけ薄く、しかも地震等に耐える為に機械的強度を確保するべく厚くするという矛盾した要請の妥協の上に設計が行われている
 これが致命的な困難を“もんじゅ”の設計の上に投げかけている訳でありとても原理的に安全が確保されるような設計では無く妥協の上に成り立っている設計なのである
 資料Ⅰ“もんじゅ”の原子炉容器は伸縮に耐える為に据え付けずに宙吊りにして真ん中で支える様にしている。当然地震に弱い。
 資料II熱衝撃に耐える為に原子炉容器は薄くしてある。内径が7,2m-7,8m(高さにより違う)高さは17,8mもあるが、総てステンレス・スチールで出来ている。つまり出力が2倍も大きい伊方2号よりも内径が2.2倍、高さが1,5倍も大きい。それなのに厚さは、伊方2号が20cmの厚みがあるのに“もんじゅ”は5cmしかない。運転時の圧力が低いからこれで良いのだと言われるが、仮にそうだとしても地震には弱いことは確かである
 資料Ⅲ同じ理由で配管も薄くしてある。例えば軽水炉の主配管は厚みが7cmもあるが“もんじゅ”はたったの1cmである。温度変化による伸縮、又緊急停止等の熱衝撃に耐える為に全て薄くしてある訳だが、成程軽水炉とは違って圧力は低いから耐圧から言えば薄くて良いが少なくとも衝撃には弱くなり、従って地震には弱い構造だと言わなくてはならない。専門家の間では、軽水炉よりもまず3,7倍は地震に弱いと言われている
 その上配管は伸縮を吸収する為に長く曲がりくねって作られており、伸縮の為に固定する事が困難である。この為に次の様にしている。
1)伸縮により移動が余り起こらない処を捜して固定する。
2)移動が大きい処では(イ)ゆっくりした移動は止めない。 (ロ)急激な移動は止める。と言う事が出来る様な止め方をしている。 (ハ)スナバというものを使う。スナバには2種あり、油圧式防震器、機械式防震器を使うが、油圧式は振動がきた時にゆっくりした振動なら(機器の伸縮等)スリット(細い透き間)から油がゆっくりと漏れて動く事が出来るから移動が可能で、急激な振動なら(地震等)スリットから油が漏れて動く事が出来無いから停止させられると言うものであり、機械式というのは、非常に大きいフライ・ホイールが止め金具についており、ゆっくりした動きなら(機器の伸縮)フライ・ホイールが動くので振動にしたがって止めてある位置が動けるが、急激な振動なら(地震等)フライ・ホイールの大きな慣性の為に動け無いと言うものである。そして油圧式は1次系では放射能の為に油が駄目になるので使えない。いずれにしても複雑になるだけ故障の可能性は高まる。
資料Ⅳカード・ペッセルは果たして事故からの万能の守護神たり得るか?
 一次系の総ては、ガード・ペッセルと呼ばれている言わば2重容器で守られている。しかし熱応力対策からこれも肉厚わずか4cmと薄く原子炉容器以上に弱い構造となっている。もし万一配管と原子炉容器からNaが漏れ出る様な事があったとしてもこのガード・ペッセルで受けて、原子炉容器の中のNaの水位が燃料位置よりも高く保てる様に設計されていると言われる。この様にこのガード・ペッセルが緊急炉心冷却装置のただ一つの代役として機能する事を考えると、例えば配管が破損内至何らかの事故から、はずれて暴れる等の事でカード・ペッセル自体が破損して“Na貯め”としての機能を喪失する事も考える得る訳で「最後のただ一つの緊急事態の砦」である事を考えれば危倶は免れない。これに関する「保守的な事故想定」は、つまりガード・ペッセルが破損する等と言う事故想定は安全審査で成されていない。原理的には安全審査では「保守的な事故想定をそれぞれの安全装置について成されなくてはならない」訳であるから、当然ガード・ペッセルの事故想定が成されていなくてはなら無い訳である。

6)“もんじゅ”は検査、補修が難しい

“もんじゅ”の原子炉容器は軽水炉よりも遥かに過酷な条件で使用され、内部の構造も複雑で当然絶えざる検査、補修が必要なのに関わらず、原子炉内部の検査、補修等が不可能である。
 Naの液体は金属であるから当然水とは違って透明ではない。従って外から内部をレンズで見て、原子炉容器の壁を検査する事は出来無い。又電気的な方法で検査しようとしても、Naその物が金属なので容器の壁と区別が出来無い訳でこれも不可能である。原子炉容器の中はNa溶液が極めて強い放射能を帯びている事から当然に人間が近付く事は不可能な訳であるから、ロボットを使う様な遠隔操作でなくては原子炉容器の中を検査をする事も出来無いし、まして補修等は不可能であるのだが、上記の様な訳で遠隔操作をすることが不可能なのである。しかも“もんじゅ”の原子炉容器は軽水炉と違って絶えず厳格な検査と補修が不可欠なはずなのである。
 資料I原子炉容器は軽水炉の場合とは桁違いに激しい放射能を浴びるので激しい劣化現象が起こる。これはまず軽水炉の3倍程度である
 資料Ⅱ非常に狭い透き間をうまくNa溶液を流す為に、極端に言えば至る処にNaの流れを調節する為の金属の板を取り付けているこれが外れる事故も起こっており、もしそうなれば炉心溶融が起こり大事故となる
 資料Ⅲ原子炉容器の上部1/3から上はNの気体を満たしており、Naの液面が波立って、原子炉容器のフタに取り付けられている精密な測定用機器にこの波が接触すれば機器が壊れるので、これを防ぐ為に言わば“落とし蓋”の様なデップ・プレートが取り付けられている。これも外れた事故が過去にあった。勿論大事故になる危険がある
7)“もんじゅ”は全くの無駄でしかない。それも壮大な無駄でしかない。左のような報告書があります。この中にウランの価格が100ドル/ポンド以上になれば、FBRの建設費が原発の1,1倍以内でコストが引き合うと記載されています。OECDのデーターからの予測ではFBRの実用時期とされている2030年でもウラン価格は50ドル/ポンド以下であると予想されている居ます
 向坊隆元元原子力委員長代理は「2030年に国としてFBRの実用化ができるかどうかについては何の根拠も持ってないし、何の責任もない」と語り、倍増時間が90年であることについても「倍増時間の検討は原子力委員会としてはしていない。倍増時間がどの程度でなければいけないかが判明した段階で倍増時間の研究をしていけばよい」と語っている。
 実証炉に関連して電力会社の研究したメモでは、実証炉の倍増時間は90年とされており、このことを聞いて久留米大学の鈴木岑二授は「倍増時間が90年だということは増殖炉とは言えず、エネルギー問題に有効だとは言えない」と語っている。
 動燃・動力炉開発推進本部副本部長 柳沢 務氏は「倍増時間を改善する研究はすでに始めているが、今のままの燃料では駄目で燃料を変えなくては駄目だ」 「全く新しい研究が必要だ」と語っている。
1)ウラン価格が100ドル/ポンドでも、FBRの建設費が原発の1,1倍以内でなければコストが引き合わないのに、“もんじゅ”の次のエントリー型の実証炉でも日本原電の板倉哲郎常務によれば、1.5倍であるということだからこの面から言ってFBRは建設費から考えてコストが引き合う可能性は現段階では見通しが無いと言わなくてはならない
2)この間題が解決されるためには、配管の省略だけではなく、中間熱交換器の省略、2重管を使ったSG、ガードペッセルの1部省略格納容器の省略等々の技術開発が完成しなくてはならない。これらの技術開発は進められているが技術的な困難が大きく、今これが将来可能であるかどうかの見通しも立てられていない
3)燃料コストの問題は2030年以降、余程ウランの需給が逼迫していなくしてはウランの価格が100ドル/ポンド以上になる可能性がないので燃料コストが引き合う可能性はない
4)言われている国産エネルギー生産の可能性は全く新しい燃料の技術開発がなければウラン資源の60倍もの利用は夢でしか無く、今の段階でこれが可能な様に言うのは嘘としかいいようがない。
 結論的に言って、今の技術開発の段階ではFBRのコストが引き合う可能性は無く、FBRで準国産エネルギー生産の可能性も無い。将来の技術開発の可能性にかかっているというしかない現状である。しかも今それが出来るという可能性があると断言する事も出来無い。
 このような状況で当初350億の予算で初められ、現在迄に6000億といわれる国費がつぎ込まれた“もんじゅ”はここに述べたFBRの実用化に必須な技術開発に何ら貢献せず、運転することによって尚4000億以上の国費を浪費する。 “もんじゅ”の運転は無駄、それも壮大な無駄としかいいようがない。
 一度決めたことだからという理由だけでこのようなことが許されて良い訳がない。今、根本的な見直しが要請されていると言わなくてはならない

(3)放射性廃棄物の処理処分政策

 所謂トイレ無きマンションと言いならわされてきた原子力の平和利用に伴って発生する放射性廃棄物の処理処分問題は(1)使用済燃料が原発敷地内であふれようとしている(2)低レベルと呼びならわされているが、実際には諸外国では中レベルと分類されているものも含まれており、この量は極めて驚くべき量に達している。この中には極めて半減期の長い放射能も含まれている訳で、低レベルと言う言葉からのイメージとは違って、この処理処分も大抵の問題ではない(3)ウラン採掘に伴う残土、選鉱に伴う鉱滓という放射性廃棄物の問題もある。人形峠では60トンのウランの採掘に伴いその10万倍をも上回る量の残土、鉱滓の問題が未だに解決していない(4)そして更に劣化ウランの問題もある。まして(5)高レベル廃棄物に至っては人間が触る事も出来ず、長年に渡って冷却迄続けなくてはならない致死的なものである。
 これらをどの様に安全に長年に渡って処理処分をする事が出来るかは原子力の平和利用にとって最も肝心な課題である。
(2)低レベルの問題は6カ所村の処分場で大量の廃棄物が受け入れ可能になっているので当面問題はない。しかしあまりに大量に1ヶ所に集積する事は問題があり、埋め捨てにした後で被曝の問題が可能性として考え得る事も含めて、今後に問題がある事は記憶されなくてはならない。
(5)高レベル廃棄物の問題は極めて深刻である。私は深地層処分には反対である。地下で放射能が溶け出して地下水によって拡散され、取り返しのつかない広範囲の放射能汚染を生じる可能性があるからである。深地層に埋め捨てにして大丈夫だという保証は得られていないものと考える。
 近時、フランス等を中心として半減期の長い放射性物質の消滅処理研究とも関連して、高レベル廃棄物の将来的な利用を考慮して、高レベル廃棄物を地上保管乃至浅地層処分するべきで、深地層処分には反対であるという意見が有力となっている。
 私はここでまとまった提案としての放射性廃棄物処理処分政策を敢えてたたき台として提案して見たいと思う。
(3)残土、鉱滓の問題は軽視する事無く、直ちに安全性の高い処分方法を専門的に幾つか選択肢を考えた上で、国民的規模の審議会等で長期の審議を経た上で、国会レベルで決定するという国民的合意の手法で処分方法を決定、速やかに実施するべきである。

前提となる諸条件

低レベル、高レベルについて考える前提としては、差し当たりPu利用を半世紀以上のレンジの長い課題として設定し、当面再処理は全面的に中止する事が必要である。(1)これに伴って使用済燃料の問題が出てくるがやはり国民的合意を得られる方法によって中間貯蔵施設を都市周辺に作る事が必要だと思われる。当然だが原発は30年の寿命の尽きるに伴って漸減していくという安楽死の展望を持つ事になる。
 固有の安全性を持ち、都市部に建て得る小型のコ・ゼネレーションの可能な炉型を開発して、放射能の消滅処理と利用を計る研究の進展に伴って原子力の平和利用の展望を、長いレンジで計る事が必要だと思われる。
 当然Pu利用が伴わない限り原子力に未来はない訳であるから、溶融塩炉等発熱密度が安全にコントロールし得る新しい炉型をか開発してU238の利用を研究開発していくべきである。
 かくして日本の原子力基本法に謳われている自主、民主、公開が文字通り確保出来る原子力の平和利用の展望の基に研究開発を展開していく事が望まれる。(3)(4)このような前提条件が整えば残土、鉱滓、劣化ウランの問題も国民的合意の基に処置することが可能だと考えられる。
(5)この様な展望の基に高レベル廃棄物の処理処分は地上保管乃至浅地層処分で都市部において処理処分する事が望ましい。
 いずれにしても国民的な長期にわたる審議会、公聴会を経て透明な経過で原子力政策を国民に徹底的な情報公開を前提として国会をベースとする政策決定のプロセスに依拠することによって、原子力村から出て国民的広場での決定によって合意の基に進める事が望まれる。
 参考資料(I)フランスでの深地層処分についての動き
☆深地層処分でなく、地上乃至浅地層処分について
フランス議会技術選択局(OPECST)とフランス国家評価委員会(CNE)の報告書でそれぞれ発表されました。将来の廃棄物の再利用も考え「再回収可能性」のある処分方法を選択肢として選ぶ必要性を強調しており、つまり浅地層処分とか地上処分の必要性を強調しています。
 参考資料(Ⅱ)米国での深地層処分についてのレポート
☆コロイドが運ぶプルトニウム
 1月7目付英国科学誌「ネイチャー」に掲載された米国立ローレンス・リバモア研究所、Dr A.カースティング氏の論文です。
 コロイドになることで溶解度が上がり、今まで考えられていたよりも多量に放射能が溶ける事と、地下水の移動速度が今まで考えられていたよりも遥かに早いという事が述べられている。
 最後にエネルギーセキュリティーの問題に関連して提案して置きたい。
 今日新エネルギーは新エネルギー導入大綱を根拠として、とても望ましいエネルギーであるが精々2~5%程度の量的な可能性しかなく期待は出来ないと声高に主張されている。
 これは大きな間違いである。新エネルギー導入大綱は前提が幾つも設けられており、その前提があまりにも不自然なもので平たく言えば間違っている。エネルギー調査会の資料で言えば、昨年迄の風況調査がまとまり風力発電の可能性は1億7千万KWh余であり、採算に乗り商売になり儲かるとしてその可能性が此処2~5年で大きく飛躍する事は確実である。
 太陽電池は今10%の発電能力のパネルが商売として各家庭に設置されており、その可能性は1億3千万KWhである。今20%の発電能力のパネルが実用化寸前であり、これが実用化されれば2億6千万KWhの可能性がある。いずれにしてもこれら新エネルギーについては先行投資が必要なのであり、この先行投資のデメリットをもっぱら各家庭に押しつけてその普及を計るという政策自体が聞違っており、新エネルギーの可能性をくみ尽くし得る政策を立てて、国としてこの普及に責任を持たなくてはならない。開発費が潤沢に供給される前提でならば、二千年初頭にはエネルギーセキュリティーを充分確保できる見通しが立つものと考える。今日、グーローバルセキュリティーが確保されなくてはならないのは勿論であり、その意味で東アジアでのエネルギーセキュリティーは極めて日本にとって大切であり、これなくして日本の将来はないものと考えられる。
 その為には日本の公害防止の技術移転を行って中国などのN、SO、更にC0迄の排煙除去システムを開発利用する様にするべきである。
 太陽電池の中国を初めとして東アジアでの展開は極めて有望であって、これも是非とも推進されなくてはならない。
 省エネの可能性は技術的には電力で5割にも達するという論文もある訳で精力的に国を挙げて省エネの方向に政策誘導を計る事で1.2割の省エネも可能である。勿論生活レベルが基本的に確保される事を前提としてである。この様な新エネ、省エネ等に大きな夢を持って、未来に果敢に挑戦する事が是非共必要であり、この点で日本が世界的なアイデンティティを誇れる様な未来を持ちたいものである。
文責 中村 融