<資料5>

平成11年度第1回原子力政策円卓会議

平成11年6月15日

核燃料サイクルの現状について

東京大学工学部  鈴木篤之

1.核燃料サイクルの概念
2.核燃料サイクルの特徴
3.各国の核燃料サイクル計画
4.核燃料サイクルのバックエンド対策
   (使用済み燃料の管理)

1.核燃料サイクルの概念



2.核燃料サイクルの特徴

  長所 短所
基本
(対火力発電)
資源の消費量が少ない。
(1万分の1以下)

燃料廃棄物の発生量が少ない。
(10万分の1以下)

放射能が高い。
(使用済み燃料の放射能は燃料ウランの100万倍)
選択肢1
(軽水炉
ワンススルー型)
使用済み燃料の管理が比較的単純でコスト的に有利。

2次廃棄物の発生量が少ない。

プルトニウムを分離しないため、核不拡散上の心配が少ない。

ウランの資源利用効率が低い。

高レベル廃棄物中にプルトニウムを含む。

将来のエネルギー供給不安に応えにくい。

選択肢2
(軽水炉
リサイクル型)
ウラン資源の節約効果がある。

高レベル廃棄物中にプルトニウムを残さない。

将来のエネルギー供給不安に対する備えになる。

再処理及び再加工を必要とし安全対策が複雑でコストがかかる。

2次廃棄物が発生する。

プルトニウムを分離するため核不拡散対策を要す。

選択肢3
(高速炉
リサイクル型)
ウランの資源利用率が桁違いに高い。

高レベル廃棄物中にプルトニウムを残さず、放射能の消滅効果がある。

将来のエネルギー供給不安を緩和できる。

再処理及び再加工を必要とし、安全対策が複雑でコストがかかる。

2次廃棄物が発生する。

プルトニウムを分離するため核不拡散対策を要す。

高速炉技術の開発に時間がかかる。


3.各国の核燃料サイクル計画

  基本 備考
米国 ワンススルー 軽水炉ワンススルーが基本。再処理リサイクル政策を変更し、使用済み燃料の直接処分に専念。ただし、処分候補地も決定しているものの所定の計画に比べ大幅な遅れ。高速炉開発は80年代から専念。
フランス リサイクル 軽水炉及び高速炉(フェニックス)によるリサイクルが基本。ガラス固化体高レベル廃棄物の処分の実施に向け、有力候補地での研究調査を開始。高速炉をはじめ将来の計画については、2006年に検討。
英国 (リサイクル) リサイクルが基本。ただし、ガス炉が主流のため実施していない。再処理サービスを日本をはじめ外国向けに提供。高速炉開発は、もんじゅ並の原子炉を20年間運転して停止。
ドイツ リサイクル
+ワンススルー
リサイクルとワンススルーの併用を志向。再処理は海外委託のみ。高レベル廃棄物の処分候補地を決め調査を進めているが、州政府の許認可手続きなどで計画が遅延。高速炉開発はもんじゅ並を建設したまま停止。
スウェーデン ワンススルー ワンススルーが基本。2010年までの原子力全廃を目指すが、閉鎖は実施されていない。高レベル廃棄物処分の研究開発を早くから手掛けるも立地難に遭遇。
ロシア リサイクル リサイクルが基本。とくに高速炉が中心でBN-600というもんじゅより大型の原子炉を運転中。高レベル廃棄物処分については、数カ所の候補地を検討中。
中国 リサイクル リサイクルが基本。民生用再処理と高速炉の開発を計画中。高レベル廃棄物処分については、有力候補地を選定中。
日本 リサイクル リサイクルが基本。六ヶ所再処理工場を建設中。高速炉開発はもんじゅ事故で停滞中。高レベル廃棄物処分については、2000年までに、これまでの研究開発成果をまとめるとともに、実施主体の設立を予定。


4.核燃料サイクルのバックエンド対策
(使用済み燃料の管理)