平成11年度 第1回原子力政策円卓会議 議事録

平成11年度 第1回原子力政策円卓会議

1.開催日時:1998年6月15日(火) 13:30~17:00

2.開催場所:東京ビッグサイト 会議棟1F レセプションホール

3.議題:我が国の核燃料サイクルについて

4.出席者(敬称略):

 オブザーバー

 招へい者
説明者・招へい者

招へい者

5.議事録:
【事務局】
 それでは大変お待たせいたしました。定刻の時間になりましたので,ただいまより,平成11年度第1回原子力政策円卓会議を始めさせていただきます。
 本日はご多忙の中,傍聴の方々を初め多数ご参加いただきまして,大変ありがとうございます。事務局より御礼申し上げます。
 開会に先立ちましてお願いがありますが,傍聴の皆様方におかれましては,円滑な会議の運営にご協力賜りますように,よろしくお願い申し上げます。それでは早速ですが,本円卓会議モデレーター座長の木村孟先生,開会をよろしくお願いいたします。

【木村(学位授与機構長)】
 ただいまご紹介賜りました学位授与機構の木村です。モデレーターの座長を務めている関係で,一言だけご挨拶を申し上げたいと思います。
 わが国の原子力政策の方向を巡り,昨年,平成10年度に原子力委員会からの要請に基づき,第三者的立場から行政の評価や提言を行う機関として,原子力政策円卓会議が設置されました。昨年は5回の会議を行いました。その結果に基づき,エネルギー源の中での原子力の位置付け,立地地域の振興についての対応,国民に見える形でのエネルギー政策の議論,政策決定プロセスの公開等について提言をしたところです。
 その中で最も重要な項目の1つとして,この円卓会議の継続的開催の要望をいたしました。今回の11年度の円卓会議は,この要望に応えて設置されたものです。ここでは10年度と同様,国民各層の間の原子力に関する議論を徹底して行うとともに,広くこれを公開し,原子力問題の状況をより明確に国民に把握していただくとともに,原子力委員会に原子力政策の方向について積極的な提言を行うことを目指しております。このような円卓会議の目的が達成されるためには,国民の広い範囲から多様な意見がこの円卓会議に出され,それについて十分な議論が行われることが是非必要であり,その点国民の皆様のご協力を是非お願いする次第です。
 この円卓会議の進め方でありますが,本質的に10年度と変更はありません。私ども,後ほどご紹介申し上げますが,5人のモデレーターが主体となって会議の運営等を進め,事務局は民間のシンクタンク,具体的には三菱総合研究所に担当してもらうことにしています。今年度計7回程度開催する予定です。
 モデレーターの役割について少しご説明申し上げます。この円卓会議において原子力に関する幅広い議論を活発に進めるための議事進行役,あるいは関連する知見の提供者,発言者として会議の開催,運営を担当いたします。これは有識者として原子力委員会によって選出された者です。各回ともモデレーターのうち2名を選び,1人が主査,もう1人が副査という形で司会者という形で議事進行役を務め,他のモデレーターは参加者として関連する知見の提供や発言を行うこととしています。
 それではモデレーターの方をご紹介いたします。アイウエオ順で申し上げます。まず石川迪夫様,原子力発電技術機構特別顧問でいらっしゃいます。私の右隣り,社会評論家の小沢遼子様,それから慶應義塾大学の茅陽一様,私,木村です。最後が元中央大学教授の中島篤之助様です。
 円卓会議ではモデレーターに加え,公開の場で原子力を巡る諸問題についてさまざまな観点からご意見,ご議論をいただく方を,毎回各界からモデレーターの責任で招へい者としてお招きしております。今後もそうして行く予定です。本日招へい者としてお願いしました方をご紹介申し上げます。アイウエオ順で,久留米大学教授の鈴木岑二様,東京工業大学教授の関本博様,原子力政策転換全国ネットワークの中村融様,科学ジャーナリストの中村政雄様,電力中央研究所特別顧問の服部禎男様,原子力資料情報室共同代表の伴英幸様です。
 円卓会議では先ほど申し上げましたように,国民の皆さんのご意見をできるだけこの会議に反映させるために,円卓会議全般にかかわるご意見を募集をすることにしています。本年1月21日開催された10年度第5回の円卓会議以降に頂いたご意見の概要についてご説明申し上げます。
 本年の1月21日から6月14日まで,傍聴者としていらしていただいた方のご意見が10通,その他公募意見として29通,合計で39通届いています。性別では男性がほとんどでした。年代別では60歳から80歳までの方,職業別では会社員,および無職の方が半分以上を占めています。地域的には東京や大阪など電力の大規模消費地からのご意見が多くなっています。
 ご意見の内容ですが,簡単に申し上げますと,原子力そのものに対する意見については,原子力より自然エネルギーを促進すべきだとの意見,それから核エネルギーそのものに対する不安などの意見が多く出されています。原子力政策運営システムに対する意見については,政策の責任の所在を明確にしてほしいという意見,それから若者への教育を重視すべきではないかという意見が出ています。原子力の技術開発,安全性確保に対する意見については,原子力技術の他分野への応用が十分になされていないという意見,それから民間の力を活かしてコスト削減を実現することにより,核燃料サイクルを推進すべきであるとの意見などがありました。それから私ども,この円卓会議の運営に対するご意見としては,招へい者としてできるだけ多種多様な方々を呼んでほしいというご意見,それから電力大規模消費地に原発を立地することの是非についても議論をすべきであるという意見もありました。
 この円卓会議には先ほど申し上げたモデレーター,招へい者の他に,原子力委員会のほうから木元教子様に毎回ご出席いただいています。それから本日はいままでと少し趣向を変えて,核燃料サイクルの問題について,東京大学の鈴木篤之様から中立的な立場で少し全般的な説明をいただくこととしています。
 今日の会議は面白い取り合わせになっています。鈴木姓が2人,中村姓が2人いらっしゃいます。座長を務める石川先生かなり緊張しておられて,もし自分が鈴木さんと言った場合はモデレータのほうからどちらの鈴木さんかをはっきりするように注意して貰いたいとおっしゃっています。また,中島篤之助さんと鈴木篤之さん,これも似ています。余計な話ですが,大学の教授にしようと思ったら絶対に名前の一番下に「助」を付けてはいけない。助をつけると,教授になってもいつまでも助教授ということになりますので。中島先生はその点では問題であった,鈴木先生はよかったねということになります。
 それでは,以下の司会のバトンを石川さんにお渡しします。よろしくお願いいたします。

【石川(原子力発電技術機構特別顧問)】
 ありがとうございました。それでは本日,茅先生と一緒に司会役を務めさせていただきます。
 早速議題のほうに入りまして,本日と次回とで「核燃料サイクル」の議論を行うわけですが,両会に先立ち,鈴木先生から核燃料サイクルの全体像,現状と課題等について,20分ぐらいの説明時間でお願いしたいと思います。

【鈴木(篤)(東京大学大学院教授)】
 ご紹介いただました東京大学の鈴木です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私はいま木村先生からご紹介いただいて,名前が中島篤之助先生と似ているのですが,実は私は助教授時代に「鈴木篤之 助教授」ということになったのですが,ある時期「篤之助 教授」と間違えて郵便を出された方がいらして,昔偉い先生に「お前はいつ教授なったのだ」と怒られた経験があります。
 それではお手元に資料の5と資料番号がついているかと思いますが,簡単な資料を準備させていただきましたので,それに基づき核燃料サイクルの現状について,私が感じているところを簡単に述べさせていただきたいと思います。
 まず,最初にめくっていただくと「1.核燃料サイクルの概念」と書いてみたところがあります。これはよくご存じの方には申し上げるまでもないことですが,あらかじめ事務局のほうから,できるだけ基本的なところに立ち返って説明をしてほしいというご依頼がありましたので,そのような意味で簡単に説明させていただきたいと思います。
 まず最初に核燃料サイクルというのは当然のことながら,原子力発電を進めていく上で必要になる燃料サイクルのことで,基本的には天然ウラン資源を用いて原子力発電を行っているわけです。その結果,燃料廃棄物として使用済の燃料というものがまず出てきます。したがって,核燃料サイクルの基本的な流れというのは,天然ウラン資源を使って原子力発電を行い,エネルギーを発生するわけですが,その結果出てくる使用済燃料をどのようにするかということかと思います。
 参考までに火力発電の場合には,化石燃料を資源に使って発電を行っており,この結果燃料廃棄物としては主として二酸化炭素が発生しているのはご存じの通りです。
 そこで,核燃料サイクルの選択肢として,細かく分けるとかなり多様なものが考えられるわけですが,現在よく議論されるものをあげれば,この3つかと思います。
 選択肢の1ですが,軽水炉,現在の世界中のほとんどの原子力発電所が用いている軽水炉と呼ばれている原子炉,これで発電を行う。その時にワンススルー型,非リサイクル型と言ってもよいかと思いますが,天然ウラン資源を使って発電を行った後に使用済燃料が出てきますが,これをリサイクルすることなしにそのまま廃棄物として処分するという関係,これを軽水炉ワンススルー型と呼んでいます。
 この場合の燃料資源の所要量というか,消費量,これを簡単に説明しますと,わが国の場合原子力発電所として標準的な大きさというのは 100万kWの発電所です。この 100万kWの発電所を1年間運転すると,通常の稼働率,設備利用率80%と仮にすると,約70億 kWhの電気が取れるわけです。この70億 kWhの電気エネルギーを生産するために必要な濃縮ウランの量というのが,約30トンです。この濃縮ウランを生産するのに必要な天然ウランの量というのが 180トンくらい。残りの 150トンは実は使わないでそのままになっているというのが状況です。この 180トンの天然ウランを用いて,70億 kWhの発電をしているわけですが,その結果燃料として直接使った濃縮ウラン30トンがほとんどそのまま使用済燃料となります。現実には若干違うのですが,ほとんどそのまま30トンの使用済燃料となります。この中身を調べてみると,ウラン,プルトニウム,FP( fission product)とちょっと専門的な用語を使いましたが,これが核分裂を行って生成されたもので,これがエネルギーを生産してウラン,あるいはプルトニウムが変わったものです。これが 0.9トン,約3%,プラスマイナスはありますが,30トンのうちそんな程度です。プルトニウムが全体の1%ぐらい,ほとんどはウランのまま残っているわけです。
 そのワンススルー型の場合には,この使用済燃料30トンをそのまま高レベル廃棄物として直接処分を行うということで,そこに括弧付き30トンと書いてありますが,使用済燃料をそのままと言っても,そのままの形で廃棄物とすることは難しいと考えられますが,これは実際にまだ実行した所はありませんので,通常はそれにかなりいろいろな物をプラスして廃棄物とするということが考えられていますが,いまは暫定的に30トンのものが廃棄物になると書いてあります。
 次に選択肢の2ですが,これは同じ軽水炉を使うのですが,使用済の燃料の中に含まれているエネルギー資源として残った物,これはリサイクルしようという考え方で,この場合は天然ウランの消費量 180トン,ワンススルーが 180トンだったのですが,これが 120トンぐらいに減るかと思います。その意味は使用済燃料30トンのうち,ウランが28.8トンと大部分ウランが残っています。これはほとんど天然ウラン相当のもので,したがって,約30トンの天然ウランがあると思っていただいてよいわけで, 180のうち30を引くと 150になります。さらになぜ 120まで減るかというと,この 0.3トンのプルトニウムというのが,ウランに換算するとエネルギー生産性から言って約 100倍の価値があります。したがって,これがさらに30トン分の天然ウランに相当するということで,その 180から 150になり,さらに30減らして 120になる。ということは,リサイクル燃料というのは約10トンぐらいできるという勘定になります。それで濃縮ウランを別に20トン作って,両方で30トンの燃料を作って発電をすることができる。30トンのうち10トンで残りの20トンはどこにいったのかということなのですが,これは再び再濃縮という行程を経て,再び資源としてそのまま取っておくほかないという状況になるわけです。
 しかし,さらにそこにFPが 0.9トン,この場合も存在していますので,これを,約1トンですが,これを約10倍ぐらいに薄めて高レベル廃棄物,この場合はガラス固化体と称する物になりますが,10倍に薄めて10トンの高レベル廃棄物として処分されることになるというわけです。
 さらにもう1つの選択肢が高速炉でして,高速炉というのは基本的には濃縮ウランを使わなくても発電ができると考えられるものです。したがって,資源の利用率が非常によくなるということです。同じ発電をする場合に,特段新しい技術を採用しないとすれば,30トンの使用済燃料がそのまま出てくるわけです。この30トンの使用済燃料のほとんどは再濃縮を要しませんので,原理的にはほとんどリサイクル燃料として使えるわけで,したがって,もともと天然ウランを消費しなければいけない量というのは非常に限られています。私の大雑把な試算では2トンぐらいでよろしいかと思います。したがって,この2トンのものがFP 0.9,1トンになりますから,ちょっと話が飛んでいるかもしれませんが,30トンの使用済燃料のうち依然としてFP 0.9トンが残っています。この 0.9トンを10倍にして10トンのガラス固化体になりますが,このFP 0.9トンがエネルギーに変わったわけですから,もともと天然ウランの消費量は2トンですから,2トンのものから 0.9トンということは,約50%の資源利用率ということになります。
 それに対して選択肢の1の場合は 180から 0.9ですから,これは簡単に割算をしていただけるとおわかりですが 0.5%,選択肢2の場合は0.75%ぐらいになる。それが高速炉になれば,潜在的には50%ぐらいの資源利用効率になる。これが核燃料サイクルの概念です。
 時間が限られていますので急がしていただきますが,次に「2.核燃料サイクルの特徴」について簡単に説明させていただきます。まず基本的なものですが,これを原子力発電と火力発電を比較するような形で説明しますと,原子力発電の場合は資源の消費量が少ないというのが最大の特徴,長所かと思います。これは1万分の1以下と書いてありますが,これはよく「原子力は火力に比べて資源の利用効率が 200万倍ぐらい高い」という説明があるかと思います。これは間違いないのですが,これは理論的な数字で,現実にはいま申し上げましたように0.5%ぐらいしか資源を使っていませんので, 200万倍を 200分の1にしなければいけなくて,1万倍ぐらいの効率しかないということで,逆に言うと1万分の1以下の資源の消費量で済んでいる。
 燃料の廃棄物ですが,これは先ほども申し上げたように,約10倍に薄めて廃棄物にしていますので,先ほどの天然ウラン 180のうち燃料廃棄物になっている部分は30トンぐらいですから,約6分の1になりますが,したがってさらに6分の1ぐらいにしたものだ。そこを10万分の1以下と書いてあります。
 次に短所ですが,よいことばかりでありませんで,放射能が非常に高い。使用済燃料の放射能は,もともと使う前の燃料ウランの約 100万倍ぐらいあります。非常に放射能が高いので,したがってその取り扱いに気をつける必要がある。これがいわゆる原子力発電の安全性ということになっているわけです。
 次にワンススルーですが,「軽水炉のワンススルーは使用済燃料の管理が比較的単純でコスト的に有利」と書いてあります。つまり使用済燃料で発生したものを,特段溶かしたりする必要がありませんので,そういう意味では比較的単純でコスト的に有利,二次廃棄物の発生量も少ない。それからプルトニウムを分離しないために,核拡散上の心配が少ないということもあるかと思います。他方ウランの資源利用率が低い。いま説明した通りです。それから高レベル廃棄物中は使用済燃料のままですから,プルトニウムを含んでいる。それから将来のエネルギー供給不安に応えにくい。つまりこれは資源をそのままいわば使い捨てるという考え方ですから,資源面におけるいろいろな制約が新たに加わってきた時には,それへの対応が難しいという意味です。
 次に選択肢の2の軽水炉のリサイクルですが,これはいま申し上げたように,ウラン資源の節約効果がある。高レベル廃棄中にプルトニウムを残さない。将来のエネルギー供給不安に対するある程度の備えになるということかと思います。他方,短所ですが,再処理および再加工を必要としますので,使用済燃料が一度発生しますが,これをもう一度溶かしてまた燃料体に固めるという作業を必要としますので,そういう意味で安全対策が複雑になり,定性的に言えばコストがかかる。それから2次廃棄物が発生する。プルトニウムにするために核不拡散上の対策を要する。このような点があります。
 次に選択肢の3ですが,高速炉リサイクル,この場合はご説明しましたように,ウランの資源利用率が桁違いに高い。高レベル廃棄物中にプルトニウムを残さない。さらに,高速炉の場合は,原子炉の特性から考えて,放射能をより消滅させる効果があるということも長所の1つかと思います。それから,将来のエネルギー供給不安を緩和できる。これは天然ウランの利用効率が桁違いに高くなりますから,エネルギーの供給不安というものに対しては,相対的に言えば相当の緩和効果があるということかと思います。
 短所ですが,これは軽水炉リサイクルとほとんど同じです。再処理,再加工を要し,安全対策のコストがかかる。2次廃棄物が発生する。プルトニウムを分離するため,核不拡散上の対策を要する。さらに,高速炉技術の開発に時間がかかるということも,現在の時点で考えれば短所ということかと思います。
 次に3点目ですが「各国の核燃料サイクル計画」について簡単にご説明します。
 アメリカですが,ここは基本的に現在軽水炉ワンススルーを取っていて,再処理リサイクルを約20年くらい前に再処理リサイクル政策を変更しました。使用済燃料の直接処分にいま現在専念しています。ただし,直接処分の候補地も決定しているのですが,初期の計画に比べると大幅に遅れています。高速炉開発は80年代から実質的に断念しています。
 次にフランスですが,ここはリサイクル政策を基本にしています。高速炉も現在「フェニックス」を利用しています。ガラス固化体,高レベル廃棄物の処分の実施に向け,有力候補地での研究開発を最近開始しました。高速炉を初め,将来の計画については,2006年に検討すると。長期的な計画については2006年にそれまでの研究成果等を勘案して決めるという計画になっています。
 次にイギリスです。ここは括弧付きですがリサイクル政策が基本です。ただし,イギリスの場合は,ガス炉が主流で軽水炉はほとんど使っていません。したがって,リサイクルは現実には実施していません。むしろ再処理工場を運転していて,その再処理工場による再処理サービスを日本を初め外国向けに提供しています。高速炉開発は「もんじゅ」なみの原子炉をすでに20年間運転したことがあり,現在はその運転を停止しています。
 次にドイツですが,こちらはリサイクル+ワンススルーということで,両方の考え方を併用していこうという考え方になりつつあります。再処理は海外委託のみで,高レベル廃棄物の処分候補地決め調査を進めていますが,州政府の許認可手続きなどに時間がかかっていて計画が遅れています。高速炉開発は「もんじゅ」なみを建設したまま中止しました。
 スウェーデンですが,こちらはワンススルーを基本としています。2010年までの原子力全廃を目指しています。現在,実際はまだ閉鎖をしたものはありません。次に高レベル廃棄物処分の研究開発を早くから手がけていて,この面でもスウェーデンは大変進んでいますが,立地難に遭遇しています。
 次にロシアですが,こちらはリサイクル政策が基本です。特に高速炉が中心で,BN-600という名前のついた「もんじゅ」よりも大型の原子炉を運転して,現に発電を行っています。高レベル廃棄物処分については,数か所の候補地を検討中です。
 中国もリサイクルが基本です。これは民生用再処理と,高速炉の開発を現在計画中で,高レベル廃棄物処理については有力候補地を選定中です。
 最後に日本ですが,ご存じのように日本はリサイクル政策が基本でして,六ヶ所村の再処理工場を建設中で,高速炉開発は「もんじゅ」事故でいま停滞中。高レベル廃棄物処分については,2000年までにこれまでの研究開発を取りまとめて,合わせて実施主体の設立を予定しているということです。
 最後に,それではどういうことが現実に課題になっているかということについて,簡単に説明させていただきたいと思います。これが最後の「4.核燃料サイクルのバックエンド対策,使用済燃料の管理」という部分です。冒頭説明しましたように,原子力発電に伴う核燃料サイクルは,結局は使用済燃料をどのように管理するかということに尽きると言っても過言ではないかと思います。この絵は途中に波線で区切ったところがありますが,この波線より上の部分は,いわゆる原子力を必要とするのかしないのかという議論の部分かと私の理解しているところで,本日は原子力発電について,それを今後原子力発電を前提とした場合に,その使用済燃料をどうするのかという,番号で言うと40番という番号を付けたところから議論することかと思います。
 この場合基本的には日本の場合,これまで再処理(53番)をして,しかも国内が原則(65番)で,海外(66番)はあくまでも補完的なものであった。そして,国内の処分(92番)をするという考えたで進めてきたわけですが,ご存じのように現在すでに中間貯蔵(52番)というものが実質的に進みつつあり,ここで言うサイト内貯蔵(64番)というのは発電所の中のサイト,発電所サイトの中,発電所の中に貯蔵容量を増やしたり,場合によっては施設を新たに作って,そこに貯蔵する。こういう考え方を再処理(53番)と併せて進めていく。いずれ国内の再処理(82番)を行う。こういうことで,さらに高レベル廃棄物は国内処分(92番)する。このようにいわば複線化を図りつつあるということになっているかと思います。
 さらに,これはいろいろな社会的な要請もあり,中間貯蔵(52番)のうちのサイト外貯蔵(63番),原子力発電所の外に貯蔵施設を作る。それをしかも国内にもちろん作るということで,さらにそれでいずれは国内の再処理(82番)にまわす。こういう考え方がさらに現在検討されている。こういうことが日本の状況かと思います。
 それに対して,諸外国を見ると,ただいま幾つかの国の例を申し上げたように,直接処分(51番)を考えてる国もあります。それからサイト外貯蔵をしたあと,これを国際的な共同プロジェクトで考えるということを考えている国もあります。そのようなことで,全世界的に見ると,この使用済燃料の管理については,いろいろな多様な展開を図りつつ,いわば柔軟性を持った計画を進めようということで,しかしやはり基本的には高レベル廃棄物の処分を最終的には行う必要がある。こういうことがいま現在いろいろな各国が取り組んでいる状況かと思います。
 以上で簡単なご説明とさせていただきます。

【石川】
 どうもありがとうございました。核燃料サイクルの全般について鈴木さんからお話をいただいたわけですが,私は先ほど鈴木先生とつい口慣れているものですから言ってしまったかもしれませんが,この円卓会議は「さん」付けでやらせていただくことを原則としていますので,一つよろしくお願いいたします。間違えて「先生」などと呼んだらご容赦下さい。
 それでは招へい者の方々から大体5分間くらい,核燃料サイクルについてどのように考えているかというプレゼンテーションをいただきたいと思うのですが,これまではアイウエオ順に回っていたのですが,今年は2年目ですから,逆回りにしてみようかと考えていますので,伴さん,一つお願いします。

【伴(原子力資料情報室共同代表)】
 原子力資料情報室の伴です。私は原子力発電に反対して,脱原発を目指すという立場から発言をさせていただきます。したがって,核燃料サイクルについても,撤退ということを主張しています。今日はその核燃料サイクルの観点からの話になります。一部は原子力のことにも絡んでくるかと思います。
 私が原子力発電に反対している最大の理由というか,原子力発電を止めて,他の電源に取って代わっていったほうがよいと思っている最大の理由は,この発電システムが多種多量の放射能を作り出すということです。そして,これらの人工の放射能が人類とは共存できないと考えるからです。発電所や再処理工場からは,日常的に放射能が放出されています。これは管理放出と呼ばれていて,法律的には許されている範囲内の放出ではありますけれども,日常的に放出されているには間違いありません。そして,もし万が一,放射能を大量に放出するような事故が起きた時には,その被害というのはチェルノブイリの事例でわかるように,非常に大規模な被害になり,かつ費用の点でも事故被害の対策の費用というのは膨大になるし,その影響というのが非常に長時間にわたって続く。そういう大量の放射能放出の事故の恐れがないかというと,確率論的には非常に小さいと言われているけれども,やはり消えていない。いつ何時起こるかわからない。
 そして,先ほど鈴木さんの話にありましたように,使用済燃料が出てくるわけで,あるいはそれを再処理しても,高レベル廃棄物(ガラス固化体)というような形で出てくるわけで,その毒性というか放射能の寿命というか,それが非常に長期間にわたって続く。数十万年から百万年という期間続く。それを人間の環境に放出しないための方策というのがあるのかというと,いまのところそれはない。核燃料サイクル機構も1万年ぐらいまではと言っていますが,そこから先は保証の限りではないわけで,いずれ環境に漏れてくる。遠い将来にそれが環境汚染に繋がっていく。そのようなことを考えると,もし原子力に依存しないで,他の電源によって,原子力は電気を作るシステムですから,他の電源によってそれが代替できるのであれば,やはりそちらを選ぶべきではないかというのが私の考えです。
 例えばいま,サイクルで計画されているMOX利用,プルサーマル利用について言うと,放射能が日常的に出るのもそうですし,事故の危険性というのはウラン燃料に比べればやや高い。安全余裕の切りつめた運転であると言われていまして,その分やはり危険性がやや高くなっているということに不安を感じていますし,MOX,プルサーマルの使用済燃料について言えば,ウラン燃料に比べて発熱量も高いですし,その分影響も長期間に渡る。数十万年というオーダーで言えばあまり変わらないかもしれないけれども,当面のところの発熱量その他,放射能毒性ということについて言うと,MOXのほうがウランより強い。
 プルサーマルをやるのに,ではきちんとした合意が得られているのかということなのですが,合意形成のための対話というか,説明会を続ける一方で燃料の製造はどんどん続けてきていたわけで,ここに至って,確かに形の上で幾つかの県で知事の合意というのが得られていますけれども,しかし,アンケート等によるとプルサーマル利用に反対の人はやはり依然として30~40%ぐらいの人がいるし,不安を持っている人にいたっては7割ぐらいの人がまだ不安を持っている。この時期に急いでやる必要があるのだろうかと非常に疑問に思っています。
 それはまた後で触れるにして,次にプルトニウム利用のうちの再処理ということについて言うと,日本はイギリスとフランスに委託をして,国内では東海に再処理工場があるという状況ですが,その再処理による環境への放射能放出は,原子力発電所に比べて非常にたくさんの割合,私たちの言葉で一般的な言い方をすれば「原発1年分を1日で」というように,非常に環境に対する汚染の度合いが強く,そして現に再処理の先進国というか,かなり古くから続けていた地域では,フランスとかイギリスでは周辺に白血病といった健康被害が出ているという報告もあります。そういったことを考えれば,やはり他に代わる代替電源を探していくべきではないかと思っています。
 もう1つの観点は,核拡散の問題です。いまは平和利用ということを進めて,その中で核兵器開発というものをどう止めるかということで条約を作り,国際原子力機関が相当なエネルギーを割いて核拡散を防止している,査察を行っているという状況ですが,大規模な再処理とプルトニウム利用を続けて,プルトニウムを保有したということになれば,それはやはりいつ何時核開発というところに繋がるかわからないし,日本などは潜在核保有国などと言われているわけで,その危惧というものは常にあるわけです。
 また,再処理,プルトニウムの取り扱い技術というものが平和利用のうちにいろいろな国に広がっていけば,やはりそれは実質的に核拡散に繋がると私は思っていますし,平和な時代がいまずっと続いてきているわけなのですが,今後とも続くことには,インド,パキスタンの核実験等を見ていると非常に危惧を感じます。そうすると,電気を作る時にそんなリスクを負ってやらなくてもよい道があるのならば,やはりそれを選ぶべきではないかと考えています。
 最後の点はコストの問題ですけれども,これはいま大量の赤字国債などが発行されていて,こんな事例は当たっているのかどうかわかりませんが,日本が普通の株式会社だとすればとっくに潰れているような状況だと思います。国だからそのようになっていない。そこで,その中で多大な開発を続けていく,コストをかけていくということに,どんな意味があるのか疑問に思っています。実際に高速増殖炉開発にはこれまでに1兆数千億円の費用が投じられてきて,今後2兆円以上の費用が投じられると言われています。それは非常に膨大な金額になりますし,現行の長計では2030年頃に技術的な見通しをたてるということですが,高速増殖炉開発が最初に始まったのが59年とすると,今年で40年,それから30年先にもまだ技術的な見通し,これだけお金をかける必要があるのか。それだったら,違う電源を考えたほうがよいのではないかと考えているわけです。
 では違う電源があるのかという話になると,実は私はエネルギーというか電気の効率利用,コ・ジェネとかそういうシステムとか,これまでの円卓会議でも出ていましたけれども,新エネルギーといったようなこと,風力であるとか,太陽光であるとかバイオマスであるとか,あるいは,マイクロ水力などもそうでしょうが,新しいエネルギーと言われるそういったものを多様に取り入れていけばできるのではないか。現在それが広まらないのは,技術的な問題というよりか,むしろ制度的な問題でいま広がっていない。ですから,この制度というものを変えて,他の電源に置き換えていくということを主張したいわけです。
 最後に,ではこの円卓会議に何を提案したらよいのかと思って考えたのですけれども,原子力政策なのですが,これも円卓会議の前のところでありましたが,原子力だけを特別に扱うのではなくて,他の電源を含めて総合的にメリット・デメリット,技術的な潜在的な可能性,どこがネックで止まっているのか,そういったことを総合的に評価するような,そのような機関をどこかに作って,いろいろな人が入って,そのような評価活動というものをやってほしいと思うし,提案したいと思います。
ちょうどいま六ヶ所再処理工場も延びましたし,建設費が2兆1千4百億円かかるということも発表されています。「もんじゅ」も止まっていますし,東海再処理工場も止まっています。プルサーマルも海外に委託しているプルトニウム分を消費するということですが,実際にはいま計画されている向こう2年間分の燃料製造手当のみと聞いています。したがって,いまの時期は非常によいと思います。ですから,この時期に急がずに,そういう総合的な評価をしてほしいと思います。少し長くなりましたが,以上です。

【石川】
 どうもありがとうごさいました。それでは次に服部さんにお願いいたしますが,いまのプレゼンテーションは約12分ですので。

【伴】
 すみません。

【石川】
 いや,結構です。私のほうが止めろと言わなかったのですから,かまわないのです。服部さん,少し時間のほうの配分を考えてお願いします。

【服部(電力中央研究所特別顧問)】
 では要点だけ。私の仕事はまったく伴さんのご指摘の放射能,原発恐い,核拡散,それにお答えするためにやってきたような,何かそういう心境で,いまこれは伴さんと毎日付き合ってわかってもらいたいなという気がしました。
 中身に入らせていただくと,地球環境,どうもエネルギーは,私は他の風力,太陽,バイオマスには大賛成です。おおいにやるべし,ばんばんやってほしい。しかし,それでも足りない。どうしてもある地域では風はない。太陽もない。雨ばかり降っている,どこでもというわけにはいかない。どうも原子力はそうとう大きな役割を果たさなければならないと,これは絶対条件ではないか。そうするとそこで,どうもいままでの原子力ではなしに,次の世紀の第2フェーズ原子力は,PAでなくて,パブリックがアクセプトする原子力ではなくて,PR,パブリック・リクワイアメント,またはパブリック・リクエストで,人々の求めるものをやらねばならない。何が求められているか,半分ぐらいはわかるのですが,これでどうだろう,これでどうだろうと意見を聞いてやっていく。そういう時に,今の経済,日本のリストラもよく言われていますが,人々は何を求めているのか,原子力もまさにしかりになったなと思います。第2フェーズ原子力はPRだと。
 そして,ここで原子力の立派な活用というと,いままでのは立派でなかったかと叱られてしまうのですが,人々の求めるものというのは相当に立派なものが要るのです。先ほどの伴さんのご指摘は全部すばらしい。「俺はあなたが好きだよ」と言われるぐらいのものを説明して,わかってくれたというようにしなければならないという感じがしました。
 たまたま私は動燃に8年いて,民間でFBRをとの動きで電中研に移り,その時に再処理の安い物を探せと言われ,アメリカのアルゴンヌ研究所,やはり世界一と言われていますが,CP-1,シカゴパイル1号発祥の,シカゴ大学がマネージしている,平和利用に意識が強く,軍にはあまり協力しないという哲学を持っているアルゴンヌの国立研究所,これは1つの伝統です。そこに安い,しかも原爆になり得ない再処理をやっていることを気づいていました。その「なり得ない」というわけは以前はよくわからなかったのですが,ようやく最後にわかったのです。
 カーターさんが1977年~1980年まで,INFCEで世界中2年半の大討論で,FBR,再処理を止めてしまおうと。あれは危ない,恐い,止めようと。その後立ち上げてきたアルゴンヌ,そのINFCEの議論を背負って立っていたアルゴンヌが「人類とカーターさんと両方に答えるプロジェクトです」と言って立ち上げたのがIFR計画です。それが乾式再処理であり,金属燃料高速炉です。共和党になったためにという言い方もあるかもしれませんが,カーターさんの後からはDOEが年間なんと100億円という金を毎年使って,これこそ人類へのプレゼントである,答えだと思い詰めて,ずっとクリントンさんになるまでやり続けてきました。
 その乾式再処理に目をつけて,「安い物を探せ」ということで,電中研の立場上安い物に飛び込んだ。そうしたら,何とそこで金属燃料というものが飛び出てきた。そこで金属燃料に思い詰めている人たちが,私に金属燃料のよさを申し上げましょうと。たくさんありました。うんざりするほどありましたが,3点ほど申し上げます。
 「本質的に安全です」とおっしゃるのです。これは何かというと「どんな事故でも必ず炉心の温度が上がります。温度が上がると,燃料は溶けてしまいます。金属は非常に低いところで,酸化物の2千何百度Cと違って,何と千度Cでもう溶けてしまう。どんどん溶けてしまう。その時に,試運転を過ぎればもうフィション・ガスがグレンバウンダリーに分布してしまっていますので,そのガスが膨らむのと,金属が柔らかくなって液になるのとで,フワッとポップコーンというか綿菓子のように膨らんでしまって,泡状にしかなり得ません。純液体にはなり得ません。完全にグレンバウンダリーにガスが分布している金属が,溶けた場合には泡にしかなれません。その時はガス圧で被覆管がどんどんパンクしますが,そのパンクした被覆管から燃料の泡がスプレー状に飛び出て,冷却剤の中に浮いているだけです。炉心は消えてなくなります。これを究極安全とわれわれは自信を持っています」と,猛烈な自信なのです。「反応度は完全に喪失。周辺の人に心配になるようなエネルギーは絶対に出ません。したがって,皇居の本丸に作って下さい」と彼らは言い続けていました。それが金属燃料の彼らの自信でした。とてつもない自信です。
 それから炉心の反応度保有量,全出力の時に燃料温度が低いのです。これは熱伝導度が酸化物の10倍だからです。そして2千何百度でなくて,全出力とゼロパワーでたった 200度高いだけです。そのために高出力時の反応度の損失,いわゆるドップラー効果,負の反応度ということで,温度が上がるほどたくさん反応度が失われて,その分だけ制御棒を抜かなかったら温度が高くなるために反応度が足りなくなるため出力が上がらない。それを制御棒を抜いて,反応度を与えて,そしてフルパワーにする。それが従来の原子炉屋の常識です。制御棒が要るのです。
 ところが,金属燃料だと制御棒がいらなくなってしまう。温度差がたった 200度その分は小さな原子炉ですと冷却材の温度係数が強く負になるので,タービンのパワーを上げれば,自然にたくさん熱を持っていって,原子炉の入り口温度は下がって,その分の冷却材の負の温度係数でぴたっと必要反応度を補償して,制御棒なしで,フルパワー,ゼロパワーときちんと追従します。これも,本当に驚くべきことを知りました。したがって,この炉の設計では,制御棒はありません。つまり,小型炉にしたら運転員不要ということになりました。
 そして負荷追従運転です。酸化物燃料はペレットが砕けたりクラックが入ったりして,被覆管との緩衝で負荷追従を毎日猛烈にやるというところまで行っていません。だからベースロードにします。けれども,金属燃料は鉛のようで,被覆管よりも柔らかくて,「負荷追従運転を毎日やって下さい。そして,何十年でも,破損という言葉は金属燃料に関係ありませんから」と。
 そのようなことで,金属燃料の3要素,究極安全,運転員不要,そして毎日の負荷追従運転ができる,これをベースにしていますが,私は根本的にはやはり複雑さを逃げるために,一般の人が安心するために,小型の原子炉を提唱しています。5万kW,1万kW,マキシマム8万kW。そしてヒューマンエラーを避けるために運転員不要です。
 最後に付け加えますが,金属燃料の小型炉でしたら,燃料を交換しないために反射体のリングを少しずつ移動して,ずっと上の方に上げて行くのですが,そういう設計概念にしましたら,何れは燃料無交換になるということになりまして,まず10年ものを設計していますが,この30年でも燃料無交換というのが,実はIAEAから非常に惚れ込まれ,もうIAEAとの協力は8年くらいになります。最近は,ロシアのプルトニウムを燃やすにはこの缶詰原子炉がよい,核管理が容易だからとNATOが提唱して,ロシア科学アカデミー本部で,プルトニウムを燃やすにはどういう原子炉が良いかの専門会議に呼ばれた。そうしたらアメリカの科学アカデミーも繋がっていて,トップの長老達が来ていました。ローレンスリバモアからカールワルターさんが来ていまして,この燃料無交換,運転員不要,金属燃料小型炉,そしてシンプルだから大量生産によい,しかも金属燃料だから究極安全だと興味を持たれまして,昨年の10月からこれの評価にDOEの予算がつき,ローレンスリバモアとカリフォルニア大学,特にイスラエルから呼んでいるグリーンスパン教授を中心にして検討が始められています。それをボストンで今回発表していました。それを聞いてつい2日ほど前に帰ってきたところです。カリフォルニアグループは日本とこれを共同でやることを望んでいます。以上です。

【石川】
 ありがとうございました。新しい原子炉の概念までお話しになりました。
 では,続いて中村政雄さん,お願いします。

【中村(政)(科学ジャーナリスト)】
 私は原子力のリサイクルを含めた開発路線は,ここらで再検討するのにちょうどよい時期だというのが結論です。つまり,日本だけではありませんが,どうも原子力は少し急ぎすぎたように思います。アメリカもそうなのです。
 例えば,アメリカはいまでもそうですが,日本に濃縮ウランを提供していますが,アメリカの3つの濃縮工場だけでは世界の需要にとても追いつかないと考えて,日本に対し濃縮ウランのかわりに発電炉でプルトニウムを使うことを強制した時期があります。1974年の8月6日のことですが,アメリカの連邦議会の上下両院合同の原子力委員会で,当時のレイという原子力委員長は次のような報告をしています。1982年に日本では27の原子力発電所 2,800万kWが動く。そのうち8つに対してはプルトニウムを使わせると,強制をしているわけです。
 そのようなこともありまして,日本では濃縮ウランも自分で作らなければいけない。さらには再処理をして,プルトニウムを自前で使えるようにしようと急いだわけです。いまとなっては高速増殖炉はとても間に合わなくて,最初は80年代には実用化すると言われていたのに,それがだいぶ先になったということです。
 そういう急いでいた時代は,日本の開発路線をいろいろ検討する余裕がなかったと思います。再処理をすれば高レベルの廃棄物が出ますし,しなければ使用済の燃料が溜まりますから,どちらもどこかに置いておくという場所に非常に迫られていますので,これは大急ぎでやらなければいけない問題です。その場所さえ確保すれば,ゆっくり考えるゆとりが出る時期だろうと思います。
 それから,プルトニウム利用については反対のご意見もありますが,私は人類にとって必要な資源だと思います。つまり,エネルギーの将来を50年, 100年, 200年もさきで考えなくても,いまは使わないアメリカだって必ずこれは必要になるエネルギー源だと思います。核融合なんて 100年経ってもだめでしょうし,新エネルギーにも限度があります。そのうち第3次オイルショックでも起きれば,また世界中があたふたするわけです。私はこれは将来必要な資源だと思います。
 それでは,大急ぎで使わなければいけないかどうかというところに多少議論の余地はあるかと思います。アメリカはウラン燃料に比べて5倍ぐらい値段が高いからあわてなくてもいいのではないかという言い方をしていますが,本当に高いのかどうか。日本にとってワンススルーとリサイクルをするのと,いまの状況下で経済的にいったいどちらがよいのかどうかということを,これまで日本の国内で十分に議論されてこなかったと思うのです。それだけのゆとりがなかったわけです。この際それを議論して,なるほど,プルトニウムはやめた方がよいとか,やはりやらなければいけないということが,よく皆さんにわかるようにする必要があります。専門家だけが議論していて「これが大事だ」と言っても,そうは思わない人の方が多いという状況の中で強行すれば,「なんだか隠している」ということになって,せっかくの資源の使い方として国民のサポートを得られないというのはもったいないやり方です。そういう議論をするだけのゆとりが,いま時間的にあるのではないかと思っています。そういう意味で,この計画の再検討というのはよい時期にあると思います。安全性については全く問題ないと思っています。
 それから,高速増殖炉は実用期が2050年。「もんじゅ」の延長上で将来の高速増殖炉ができるのかどうかということを,議論ができる時間的なゆとりが今あるのではないでしょうか。あの延長上に将来があるというなら,「もんじゅ」の研究をずっと続けていけばよいと思いますが,私はあの延長上に将来の高速増殖炉はないのではないかと思うのです。違うタイプを考える必要があるのではないかと思うのです。
 では,いま「もんじゅ」はどうするかということですが,あれは動かせば電力は発生して,それを売れば収入があるわけです。その収入がどれぐらいか,維持するのにどれぐらいの費用がかかるのか,研究的価値がどのくらいあるのか,プラスマイナスを経済的にはじけばよいと思います。はじいた結果がプラスであれば,できるだけ長くあれを運転すればよいし,マイナスであれば,できるだけ早く止めてしまうほうがよいと思います。
 いずれにしても,止めるにしても,せっかく作ったのですから何年か動かした方がよいと思います。動かすならできるだけ早く動かしたほうがよい。止めてあのまま放っておいても,相当維持費がかかるわけです。税金が無駄ですから。
 ではかわりのものはどうするか。先ほど服部さんが言われたような不拡散性の高い小型炉という可能性も含めて急いで議論をしてほしい。サイクルについては,動燃と電力の間の橋渡しが非常にうまくいかなかった。そのために濃縮ウランの設備は故障が起きるのでしょう。再処理の設備はまだ動いていませんが,動けば故障が出るでしょう。どうも技術の移転がうまくいっていないように思います。そういう開発体制のあり方も,検討すべき課題だと思っています。以上です。

【石川】
 時間的なご協力,どうもありがとうございました。では中村融さん,お願いします。

【中村(融)(原子力政策転換全国ネットワーク)】
 最初に3つほど象徴的な話をしたいと思います。高速増殖炉懇談会で,三菱マテリアルの秋元社長が「高速炉が開発されないと原子力の未来はない」という話を補足意見として書き込んでおられるのです。第1回の原子力利用長期計画で,すでに高速炉の増殖計画が書き込まれています。結局,核燃サイクルというようなことを言われるのですが,それの要は,高速増殖炉なのです。これがだめになればすべてだめになるということだと思うのです。
 それからもう1つの点は,核燃サイクルという言葉が使われるのですが,私はこれはサイクルではないと思っているのです。というのは,循環利用できるのは単にプルトニウムだけで,最初から終わりまで非常にたくさんのものを放射性廃棄物として捨てているのです。本当に循環ではないと思いますので,私は核燃サイクルという言葉を使わないで,プルトニウム利用という言葉で表したいと思います。
 それから,プルトニウムというものがどういうものなのかということですが,これは原子力安全委員会のめやす線量で,放射性の毒性がウランと比較しても50万倍あるということが書き込まれています。全米科学アカデミーの「余剰兵器プルトニウム管理と処分」という報告書の中では,余剰プルトニウムは資産ではなくて負債なんだと言われています。結局,アメリカでは原子炉級のプルトニウムはプルサーマルに適さないということで,ガラス固化をするというオプションが考えられています。プルサーマルとして使われるのは,兵器級のプルトニウムに限られているわけです。これは日本のプルサーマルとまるで違うということです。
 プルサーマルについて,あるいは高速増殖炉開発について,再処理について,高レベル廃棄物について,それぞれ私の意見を述べさせていただいて,最後に総括しての意見を述べたいと思います。
 プルサーマルは,MOX燃料を使うと発電単価は大体1円上がると言われています。経済性が成り立たないのです。いまのプルサーマルの計画では,これは安全を保証するデータはありません。そういうことははっきり言えると思っています。
 それから,MOX燃料を使っていく上での危惧が,カブリの実験でもはっきりレポートとして出てきています。最近,これをやれば,プルトニウムあるいはウランが節約されるということが言われるのですが,これは本当にたかが知れているのです。73年の賦存量がまったくうまくいっても,1年延びるかどうかという程度のことであるようです。百害あって一利なしということですから,プルサーマル計画はやめるべきだということを提議したいと思います。
 それから,FBRの開発についてですが,旧動燃は非常に多くの不祥事を起こしまして,組織体質が,とうてい研究開発を担えるような組織ではない。安全審査に対してでも,虚偽のデータを出しているというようなことで,腐敗は極まっている。長年の研究開発の成果である濃縮高速遠心分離カスケードプラント,これは日本原燃から引き継ぎを拒否されました。こういう体たらくです。こういう核燃開発機構が中長期の事業計画をこの間決められたのですが,国民の意見を聞かずに決めておられます。これは独善的で閉鎖的な組織体質がまだ残っていると言わなければしょうがないと思うのです。組織改革の目玉である外部評価委員会が,こういう事業計画をオーソライズされるということは,旧動燃の改革はまったく実を伴っていないと思うのです。私は特にここで提議したいのですが,核燃開発はもう一度根本的に改革を図ってもらわなければいけないのではないかと考えます。
 それから,核燃開発機構は中長期計画をこの間決められたし,FBRの実用化と高レベル放射性廃棄物利用の計画があるわけです。それをフランスと一緒になって,専門家同士でやっていくという協定を結ばれました。旧動燃の高速増殖炉開発計画というのは,工学的安全性は保証できないのではないかと私は思っています。経済性も保証できない。炉心崩壊事故で大事故が起こる可能性があります。蒸気発生器の水-ナトリウム反応では,旧動燃は安全審査にこれを出さなかったのですが,高温ラプチャーでウエステージで事が進むと考えられていたようですが,本当はこの高温ラプチャで大変なことになるということはわかっていたようです。そして,ナトリウムを使うために耐震性に限度があります。倍増年は90年だといわれていまして,有効な増殖はとうてい不可能だと思います。経済的に言うと,実証炉のトップ・エントリーということが言われたわけですが,これは原発の 1.5倍の建設費がかかるということですから,経済的にとうてい成り立たないのです。ですから,「もんじゅ」の延長線上での高速増殖炉開発というのはやめるべきだと思います。今日からもう一度始めて,溶融塩炉なども視野に入れて,出力密度の低い,コントロール可能な形で,今日も言われている小型炉などはそうだと思うのですが,究極の安全性を保証できる炉型で,高速増殖炉開発を進めてほしいと思います。
 それから再処理ですが,これは中間貯蔵ということがいま言われていまして,使用済燃料が溜まって困るということです。ロシアで「これを何とかならないか」という話もあるようですが,とうてい無理ではないかと思うのです。ですから,私は長期の国民的論議を公聴会などをやって,合意を形成した上で,国会で法律も作って,都市周辺に中間貯蔵施設を作る,運用するということをしたらどうかと思います。

【石川】
 中村さん,時間のほうをちょっとお考えになって下さい。

【中村(融)】
 すみません。
 そういうわけで,プルトニウムはアメリカと同じように,余剰プルトニウムについてはガラス固化をするという形で,再処理をやめてもらいたいと思っています。
 それから,深地層処分ということが言われているのですが,将来これを利用するということも言われていまして,一方では安全性の問題もありますから,深地層ではなくて浅地層,あるいは地上保管ということで考えた方がよいだろうということを言いたいと思います。
 最後,グローバル・エネルギー・セキュリティと言われるのですが,そういう点では原子力を服部さんが言われたように長いレンジで開発を考えて,本当に究極の安全性を持った原子炉,小型の原子炉,都市部に展開できるような原子炉,コ・ジェネができるような原子炉,こういうものを作っていってほしいと思います。FBRは,最初からもう一度研究を立ち上げてほしい。「もんじゅ」から出発して,その先には何もないだろうなということを言いたいと思います。
 それから省エネ,新エネですが,これの技術的な可能性は非常に大きいと私は考えています。これを汲み尽くして,そこで日本が開発したオリジナリティにあふれた技術を,世界に向かって日本のアイデンティティとして主張できる,そういう日本になってほしいということを夢見たいと思います。

【石川】
 どうもありがとうございました。急かせましてすみませんでした。それでは,関本さん,お願いします。

【関本(東京工業大学教授)】
 東工大の関本です。大学で働いている者として,社会の現状にとらわれずに素直な目で見た核燃サイクルについての考え方を述べさせていただきたいと思います。
 資料6の中の6-2で簡単なものを用意しています。1枚で書かれていますので,たぶん5分以内で説明させていただけるのではないかと思っています。
 まず核分裂,核融合,自然エネルギーというものについて一般的に考えさせていただきたいと思います。どれも非常に長期のエネルギーで,自然エネルギーはまさに太陽の続く限り,地球の続く限り使えるものであろうと思いますし,核融合も海水中の重水素を使うとこれも地球の寿命程度あります。核分裂ですが,これは海水中のウランを使い,それから先ほど鈴木篤之さんが一番最初に説明されたような利用の仕方をすると, 100万年のエネルギーになるということ。これは簡単に示せます。 100万年というと,人類が 100万年前はどうであったかというと,ホモサピエンスというものはいなくて,北京原人とかそのような感じのものだったはずで,十分なエネルギーだろうと思っています。核分裂は人類究極のエネルギーと言ってもよいのではないかと私は思っています。
 この核分裂,核融合に対して自然エネルギーというのは,非貯蔵エネルギーで,低密度エネルギーというきわめて使いにくいエネルギーになっています。そういうわけで,いまでもある所では利用されていますし,将来も利用されていくと思うのですが,この使い勝手の悪さのゆえに,ほぼ永久にすべてのエネルギーを賄うには至らないのではないかと思っています。思っているだけであって,それを論理で厳密ということではありません。いまある技術だけだったら,いま想定できるものだけだったら,私はそれは無理であると断定できると思います。
 なぜこのように断定的に言うかと申しますと,人類の文明は高密度の貯蔵エネルギーを利用することによって発展してきたという考え方を持っているからです。まず生物の発生から見ていくとそのようなことがわかると思うのですが,一番最初に生物が現れたときには,例えば光を利用するものであれば,太陽が照っている時だけ何かそのエネルギーを使って活動していたということなのでしょうが,それが生物として非常に発達したのは,光合成ができるようになったからであると言われています。植物が出てきて,そういう光合成ができるようになって,地球の住める所を埋め尽くすぐらいにバッと広がったということです。
 しかし,植物というのはたしかに非貯蔵エネルギーである光を貯蔵するわけで非常によいのですが,貯蔵するということにものすごい体積を必要とします。そのために動けないわけです。非常に勝手が悪い。そこに動物というものが現れた。貯めているエネルギーを盗み取って,自分のエネルギーとして使う。活動ができるようになったわけです。このようにして,動物の方が生物としてはるかに高度な活動をできるようになったということだと思います。
 しかし,動物,イヌ,ネコのたぐいというものは,そのエネルギーを自分の行動のエネルギーとして使うのが限界で,それが人間として文明を築くためには,もっと高密度エネルギーを,運動だけではなくて他の文化的なものに利用する必要があった。そういう時にそこに化石エネルギーがあり,それを使うことによって文明が発達した。要するに,われわれが活動しているときに作られているエネルギーではなくて,それ以前に,つまりすでに蓄積されていたものを使うことによって,文明が発達したということです。
 この化石エネルギーだけだったら,まさに人類の文明は21世紀の終わりかあるいは22世紀で終わるということだったのだろうと思うのですが,文明が発達してきたと同時に科学が非常に進んだ。蓄積エネルギーは化学エネルギーだけではない。化学エネルギーの100万倍の高密度な蓄積エネルギーである核エネルギーをみつけた。核エネルギーには核分裂エネルギーと核融合エネルギーがありますが,核融合は非常に難しくて,先ほど中村政雄さんが言われたように私の目の黒いうち,いや私の孫の目の黒いうちでもおそらく実用化は無理ではないかと思っていますが,核分裂に関しては,燃料を積み上げれば,原子炉を作ることができたということで,人類にとっては非常に使いやすいエネルギーがみつかったということです。
 ただ,このエネルギーを使うにあたって,人間はやはり使い勝手のよい方から始めていった。軽水炉で使うというのが,いわば経済的にもその他の理由でもよかったということで入っていったのですが,そこで研究を続けて,オプティマイズしてしまった。これが下に書いてあるローカルオプティマムです。人類は非常に努力して軽水炉という技術をオプティマイズしてしまった。
 そこで,実は私が思うに,いま言った 100万年のエネルギー,これはそのローカルオプティマムの延長線上にはないものなのです。鈴木篤之さんが一番最初に言われたように,軽水炉ではだめでそれをやるには高速炉というものが必要になってくるわけです。
 その高速炉ですが,実は私は鈴木さんが言われたようなものよりも,もう少し理想的なものを目指すべきだと思っているのです。

--OHP(関本①)--


 先ほど鈴木篤之さんの最初のご説明で皆さんおかしいと思われたところがあると思うのです。2トンのウランを使って,そして 0.9トンのFPが出てくるということです。そうすると,その残りの 1.1トンはどうなっているのかということですが,それは大体がここで言うアクチノイドとして残ってしまいます。それを本当は燃やせばよいのですが,いまの技術では,これが無害と考えられる廃棄物といっしょに外に出てしまうことになる。濃度を充分にうすくするのは可能ですが,100万年の利用ということを考えると,廃棄物の絶対量が問題になってくると考えています。
 私自身は 100万年のエネルギーとしてこの核エネルギーを使うには,このエネルギーセンターの中に,理想的にはすべての放射性廃棄物を閉じ込めておく。そのためには高度な分離技術を開発し,無害のものだけを外に出せるようなシステムを構築していく必要があるのではないか。そう思っているのです。ただ,こういうことを言うと「それはいいじゃないか。すぐやれ」と言われるのですが,これは非常に難しい。普通の分離が,例えば1/ 1,000の不純物でよいというところが,そのさらに1/ 1,000ぐらいまで純度を高めて廃棄しなければならないということになるわけです。
 では,そういうところをどうすればよいか。これは現状として確かにきっちり皆さんのコンセンサスを得られていないと言う方もおられますが,専門家の目から見るとそれなりに当座はしのいでいると私は思っています。ただ,それだけではだめであると。ローカルオプティマムのところに満足していてはだめであって,われわれ人類が 100万年のエネルギーとしてそれを考えるのであれば,その方向の研究を続けてほしい。そういう研究を私はやっていると,多くの研究者が思われるかもしれませんが,実は私の立場から見ると,そういう研究はまったくされていないと言ってよいほどです。

【石川】
 そろそろ結論のほうをお願いしたいと思います。

【関本】
 他の太陽エネルギーとかいろいろな自然エネルギーの研究を見ていると,私は非常にうらやましくなります。社会からも非常にサポートされており,予算もたっぷりつけていただいている。それに比べて,このような長期の核分裂の利用は非常に誤解をされていまして,そんなものはいらないじゃないかというような形で,金もつかなければ人も来ないということになっています。こういう状況は是非とも早く改善しないといけない。それが最後の結論です。

【石川】
 どうもありがとうございました。急がせてどうもすみません。では,次に鈴木岑二さん,お願いします。

【鈴木(岑)(久留米大学教授)】
 資料の6-1に発言の要旨をつけてありますが,そのうちの検討の視点のところだけ,若干の補足も含めてお話ししていきたいと思います。
 内容的にはそこに書かれている通りのことですが,その文章に若干補足しておきますと,私はFBR無用論ではないということが1つ,それからもう1点は,FBR抜きのいまの軽水炉系の原子力でも,世界のエネルギー需給あるいは環境問題に対して,そうとう大きな寄与をしている,そういう寄与はまだかなりの期間続けられるでしょうという判断をしているということを,その文章については補足しておきたいと思います。
 核燃料サイクルの議論の焦点は幾つかあると思いますが,その中でFBRの問題がやはり非常に重要かと思います。冒頭の鈴木篤之さんのご説明に則して申し上げると,私の発表要旨のプリントの中に「『FBR抜きの原子力には魅力がない』というような思い入れ」と書いてありますけれども,私がこれまで原子力の問題でお付き合いをいただいた専門家の方,ほとんど全員がこういうことを言っておられます。よく考えてみると,鈴木篤之さんの資料の1,それから2はこれを言われていると,改めて私は感じたわけです。
 ところが,例えばサイクルで言えば選択肢の3が相当するわけですが,これを実現するには実際にはお金が要るわけです。そしてまたこれが実現されたときの効果の評価,それもまた世界的なエネルギー需給情勢の中で評価されるべきことなのです。資源がたっぷりあるときに,資源の節約の効果がこの程度ありますということは,おそらくエネルギーの供給手段の選択の上でほとんど意味を持たないという場合が,おおいにあり得るだろうと私は考えています。ですから,この検討の中で,FBRに関連しては,そもそものFBRの狙いは,資源問題の解決を安いコストでできますよというのがうたい文句であったわけです。これは原子力長計の中にも,確かそういうことが書かれた時期があるわけです。
 そうではないでしょうと。私のレジメでいくと2番の所に情勢の変化のことが書いてありますが,そういうFBRはなかなか作れそうもないという感じが非常に強くなってきたと思うのです。ですから,選択肢の3を実現できればそれは非常に望ましいという点には私はまったく同意するのですが,いったいどういうFBRでそれができるのですかということを,いままでの「もんじゅ」以来の路線の見直しということも含めて,検討が行われるべきではないかと考えています。とりあえずそれだけです。

【石川】
 非常に要領よく,かいつまんでお話しいただきまして,どうもありがとうございます。
 ちょうど3時です。したがって,ここで20分間のお休みをいただきまして,いまのお話に従っての討論は休憩後に行いたいと思います。それでは3時20分まで休息をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。

--休憩--


【事務局】
 それでは円卓の先生方もご着席になりましたので,本日の原子力政策円卓会議の後半の議論に向けて再開させていただきたいと思います。それでは石川先生,よろしくお願いいたします。

【石川】
 それでは午後5時まで後半の部を開始させていただきたいと思います。ここで鈴木篤之さんは前半の部では説明者としておいで願ったのですが,後半は一般の方と同じ招待者として自由にお話をしていただきたいと思います。
 前半の部では,いろいろ言いたいことがありながら我慢をしておられたと思いますので,3分ぐらい何かコメントがあればどうぞ。

【鈴木(篤)】
 特にありませんが,最後に鈴木岑二さんが私の資料についてコメントを下さったので,それについてだけ補足させていただきます。
 私自身この資料をまとめるにあたって,一通りこういうことだと私は理解していますということを資料としてお示ししたわけで,私自身は鈴木岑二さんが言われるように,高速炉は何がなんでも必要不可欠なものだということで原子力開発が進められるべきだというような感じとは,個人的には少し違うような気がしています。
 おっしゃるように,経済性を含めて,いろいろな資源制約の問題,国際的な動向等々を勘案しつつ開発を進めていくべきだと思っています。今日いろいろな方々から高速炉についてはご意見が出ていたかと思いますので,そのことについてだけ少しコメントさせていただきます。

【石川】
 ありがとうございました。それでは前半の部を振り返ってみますと,今日はきわめて技術的な問題がたくさん出たわけですが,同じ問題点をめぐって,完全に意見を違うというかベクトルが違うというものが非常に多かったように思います。しかしながら,異口同音に出てきたことは,核燃料サイクルについて議論をもっとやっていこうということと,どうやらFBRが意味がなければだめではないか,もしくはそれをやっていってエネルギーの安定を長期間のものにしたいと。休息時間の間モデレータの中で話をしていたわけですが,今日はFBRを中心に。
 では,どんな議論をやっていけばよいのか。「もんじゅ」についてあれが悪い,これが悪いと言っていても,原子力政策に対してあまりよい提言とはなりませんので,FBRについていったいどういうことを,もちろん核燃料サイクルという土台があるわけですが,どういう議論をすべきかというところから入っていきたいと思います。ご自由にご発言いただければと思います。服部さんどうぞ。

【服部】
 再処理の話を抜いてFBR,FBRもあるのですが,先ほどから再処理は,隣の伴さんは核不拡散,それから核にご賛成かと思ったら中村さんも鈴木さんも皆さん再処理だけはいやだという共通点を見まして,あれっと思ったのです。それに対して,アルゴンヌの答えた爆弾にならない再処理ということが,真剣に日本で議論されていないということに私は驚きました。米国に行くたびに「あれは日本はどう評価しているのか」と質問されて,私は返事のしようがないということが続いています。乾式再処理についてアルゴンヌは「キュリウムが同伴します。キリュウムを除くことはできません。爆弾は不発弾にしかなり得ません。カーターさんへのお答えです」というのを10年やったわけです。これについて日本で議論が盛り上がっていない。私は非常に残念に思います。
 キュリウムが絶対に分離できない。不発弾にしかでき得なかったというアルゴンヌのカドミウム陰極にプルトニウム,アメリシウム,キュリウム,ネプツニウム。関本先生がアクチノイドはどうしても困ると。困りません。このプルトニウムとまったく一緒に同伴して燃料の中に行きます。それがなぜ日本でこのように議論され尽くしていないのか。どうして盛り上がっていないのかが,私は残念でしようがありません。以上です。

【石川】
 議論が少し専門的になってきましたが。関本さん,どうぞ。

【関本】
 服部さんは少し誤解をしておられるところもあると思います。キュリウムが一緒にいくというのは,核不拡散上非常によいと。要するに,spontaneous fissionで中性子を出すということで,爆弾が作りにくいということになっています。
 ただ,私が再処理のところで非常に難しいと思っているのは,核拡散もさることながらそれ以上に難しいのは,私のいっていた核センターの外に,安全なもの,これは出しても十分よいというものを出す時に,アクチノイドが混じりこんでくるということが避けられないという意味において,非常に難しい問題だと言ったわけです。
 これはただ現状では,廃棄物に対して私の言っているようなすごい純度は達成できませんので,その場合地層処分とかそういうものをしなければいけないでしょう。しかし,将来 100万年のエネルギーとして使う場合には,地層処分すら必要のないような,そういうものを目指した研究をすべきであろうと思います。これは研究の方向性の問題です。それを言わせていただいたということです。

【服部】
 誤解しておられると言われましたが,私は誤解していないつもりなのです。TRU,それが危険だと言われる。放射線と健康の勉強をし直していただきたい。誤解していません。放射線の基準のことを,別の条件で誤解しているという前提が,関本先生の頭の中に入っています。

【石川】
鈴木篤之さん。

【鈴木(篤)】
 関本さんは同じことをおっしゃったんですが,つまり,マイナーアクチノイドというか超ウラン元素も系の中からできるだけ出さないようにするべきで,それが可能なのだと。服部さんのアイデアもそうなのですね。それはできますよと。

【服部】
 燃料の中に入ってしまう。

【鈴木(篤)】
 そうです。それは関本さんも同じことを言われて,将来それを目指すべきだと言われたと思うのです。

【服部】
 そうすると,乾式再処理はもうできています。そうなっています。そして,微量のことを言われますが,微量はどうして問題にされるのですか。

【関本】
 乾式再処理の場合でも問題だというのは,乾式再処理で原子炉の中に入れる方は別によいわけです。不純物が入ってくるということを乾式再処理の方はかなり気にしておられますがそれはよいのですが,それで廃棄物の方に持っていく方,つまりFPだと思っているほうの中にアクチノイドが含まれている。

【服部】
 ですから,それがなぜ問題なのですかと。放射線と健康影響を勉強し直してほしいと申し上げたのです。

【関本】
 わかりました。それは毒性のバランスを満足するような条件を満たすレベルが非常に低いから,要するに服部さんの言うのは……。

【服部】
 ICRPが4桁狂っているというのは,世界中でいま大騒ぎになっています。

【関本】
 4桁はよくわかりませんが,現行の規制値が厳しすぎるという話はよく聞きます。ところで,服部さんが言われたのはいわゆる濃度基準の話なのです。いまICRPも世界も,すべて放射能というものは濃度基準で判断しています。これ以上薄ければ大丈夫だと。そういう場合には,はっきり言えば薄めればよいのです。水でバーッと薄めれば,少量のものだったらみんな濃度基準以下になるという話なのですが,私が問題にしているのは 100万年のエネルギーなのです。そうするとこれはものすごい量になります。つまり,要するに地球上の全放射能量を増やしているのかいないのかという,こういうスケールの話なのです。

【服部】
 それを,もう少し健康影響を勉強して下さいと,私は申し上げているのです。自然放射線は1/ 100に下がってしまっています。はっきり言えます。それをもう一ぺんやらないと。

【石川】
 服部さん,一般の方も来ておられるところで,非常に細かいところで議論をされていると思うのです。

【服部】
 ですから,これは別のセッションでやりましょう。1日でもいいですよ。

【石川】
 ですから,話を少し変えさせていただいて,全般的な核燃料サイクルの中のFBR,あなたの言われていることと少し離れていきたいと思います。中村融さん,どうぞ。

【中村(融)】
 先ほど少し触れたのですが,中長期利用計画,私はこれを国民の声を聞かずということを申し上げたのですが,結局安全委員会でも原子力委員会でも,物事を決められる場合に,国民の意見を聞いて,その意見を参考にしながら決めていくということをしておられましたね。これについてはまったくそういうことがないわけです。そこが1つ問題だということを指摘したつもりです。
 ここでもう1つ,先ほどはしょってしまったのですが,この中長期の事業計画では乾式の再処理を行うと,それから炉型についても,あるいは燃料についても,あるいは冷却材についても,多様に考えていくということがはっきり書かれています。ところが,福井新聞によると,竹内敦賀本部長が談話を出されてそれが記事になっているのですが,これを一部取り出すと誤解を生むのかもしれませんが,「もんじゅ」の線を太くする,これが一番中心なのだと,「もんじゅ」がなかったら何もないんだというようなこととか,そういうことで,乾式についても一応文献を調べることはするけれども,それはやるだけだというような,私の理解で言うとそういう感じで談話が出ているわけです。
 中長期の事業計画の中に書かれていることは,炉型から燃料からあるいは冷却材から,根本的に基礎から考え直していくということが打ち出されていると,私はこれを読み取ったのです。それを竹内氏は現場の意見を代表して言われていると思うのですが,はっきり食い違っているのです。こういう状態では,いまの核燃開発機構はうまくいかないのではないかと思うのです。やはりこの辺のところが1つ大きな問題だと思います。

【茅(慶應義塾大学教授)】
 中村さん,実は周りの方もおられるんで,何をリファーして言っておられるのか,はっきり言っていただかないと他の人がわからないので,いま示された文書が何である言っていただけますか。

【中村(融)】
 福井新聞に載っている竹内敦賀本部長の談話と,中長期事業計画との食い違いを申し上げているのです。

【茅】
 それは核燃料サイクル機構の作った中長期……。

【中村(融)】
 FBRの開発についての……。

【茅】
 ですから,それを言っていただかないと,他の方がわからないということです。

【石川】
 それは原子力委員会が作ったものではありませんね。

【中島(元中央大学教授)】
 核燃サイクル機構の話が出まして,私は先ほど中村さんから指摘をされた運営審議会の委員の1人です。ですから,当然それも見ています。先ほど発言しようかと思ったけれども,どうせまたおっしゃるだろうと思ったから,言うのですけれども,運営審議会というものを誤解されていると思うのです。そういうことをオーソライズするような機関ではありません。あくまでも責任は,核燃サイクル機構の理事会が負うものなのです。そうでなければ,私はああいうところには,責任を追わされるような運営審議会には参加しません。要するに,外部から出て,いろいろ自由な立場から意見を言えと言われたから私は参加したのです。ですから,中長期事業計画は出てきます。たしかにこういうことをやりたいと思っています。それに対しては議事録が出ていますが,いろいろな角度からいろいろな意見が出ているわけです。
 FBR開発のことについて言えば,これは原子力委員会が西沢さんを委員長にするFBR懇をお作りになって,原子力委員会として方針を作られているわけです。核燃サイクル機構を作ったときに,こういう仕事をやれということは法律で決められているわけです。逆に言えば,総理大臣にところに一度計画が上がって下りてきて,そういうものになっているのです。

【中村(融)】
 外部評価委員会と理事会と運営審議会とありますね。それぞれあれなのだと思うのですが,私は外部評価委員会について申し上げているわけです。

【中島】
 外部評価委員会というのは何ですか。それは知りません。誤解があるようだということだけ申し上げておきます。

【石川】
 簡単に言うと,国民の意見を聞かないでFBRについての物事が進んでいるとの御発言が有りましたが,核燃料開発機構についての法律というのは国会で決まっているわけで,いろいろなことを全然議論しないでやっているということはないのではないでしょうか。
 ちょっと話題を変えたいと思いますが。伴さん。

【伴】
 FBRについて議論すべき点は何かというようなテーマなのですが,普段思っていて是非議論してほしい点を幾つか申し上げたいと思います。
 1つは,先ほども言いましたが,すでに40年経過してあと30年で技術的可能性の見通しを得るとなっていて,先ほどどなたか,2050年ぐらいが実用化だろうと言われていたと思います。そのようになってくると,まず実用化というのはどういう姿なのか。コスト面もあるのでしょうが,初めから終わりまで 100年ぐらいかかるわけですが,実用化というのは何をもって実用化と言っているのかということが,だんだん曖昧になってきています。一基だけが動けば実用化なのか,いやそうではないはずだと。しかも,そのエネルギー供給上に意味を持つような形で実用化できるのかどうかというようなことです。
 それからもう1つは,これは「もんじゅ」を動かす必要はもうないのではないかと私たちが思っている1つの根拠ですが,核燃サイクル機構の役割として,実用化までの開発をして,次に引き継いでいかないと役割が果たせない。その次は日本原電が新しい実証炉の開発をする,となっていますが,そのタイプが「もんじゅ」とはだいぶ違っている。そうなってくると,もう違うタイプのものが企画されていて炉型も決まっているのに,「もんじゅ」のような,引回し構造とか言っていますが配管の非常にたくさんあるような形のものを動かしていくことの意味がどこにあるのかというのが,私としてはいま1つわからない。自分としてはもう意味はないのではないかと思うのですが。

【石川】
 その2点ぐらいにまず絞ってやってよろしいですか。いままで40年やっていた,いま聞くと,さらにもう30年ぐらいかかる,そういうことで本当に実用化できるのかどうか。また,その可能性はどうなのか。
それから「もんじゅ」を作っていく理由がはたしてあるのかどうかということですが,この辺りは鈴木篤之さんがこれまで一番ご関係があったと思いますが,どのようになっているでしょうか。

 
【鈴木(篤)】
 私の個人的な感じを申し上げると,まず実用化ですが,これまで「もんじゅ」は原型炉と称するもので,さらに実用化に向けて複数の原子炉を建てて,そして二千何十年かに実用化しますという,これまで描いていた構想が少し変わりつつあるというのは確かだと思います。これはいろいろな理由があると思いますが,技術的も面もあると思いますし,鈴木岑二さんなどもご指摘の資源制約の問題等々,諸外国の状況などを考えると変わりつつあるというのはそうだと思います。
 そこで,将来実用化に繋げていくためにどういうことが必要なのかということを,この際よく考える必要があるということではないかと思うのです。それで中村融さんも異議をされた中長期事業計画にも,幾つかの選択肢を今後は考えていきたいということになっています。したがって,その実用化というのは,これまでのように線を引っ張っていけば,外挿していけば自然にそうなるということではなさそうだということははっきりしてきたと思うのです。自ら研究開発に取り組んでいくことによって,実用化を実現していくという状況に,いまあるということではないかと思うのです。ですから,実用化の条件を自ら開発し探していくということだと思うのです。
 それで一番大事なのは,おっしゃるように経済性だと思うのです。経済性というのもなかなか一元的には表現しにくいというか,表しにくいものだと思いますが,私自身は開発のプロセスにおいて「もんじゅ」をどう考えるかということですが,「もんじゅ」の場合はいわゆるループ式というのですが,ああいうタイプの高速炉は将来あまり実用性がないと見る見方もあるので,「もんじゅ」を動かしてもしょうがないのではないかというご指摘がありましたが,もともと研究開発は自らいろいろ試みてやっていくということからしても,実は研究開発というのはある型をもうここで決めてそれでまっしぐらということのほうが,むしろそれに反するのです。
 ループ式の特徴というものがあって,例えばいろいろなメインテナンスがやりやすいとか,ああいう大きな事故になっては困るのですが,いずれにしても将来の実用化に繋げるために新たな機器に取り替えてみようということも,定性的に言えば,おそらくループ式のほうがやりやすい。メンテナンスもやりやすいということがある。したがって,いまの「もんじゅ」の形のものをそのまま拡大していけば実用炉ができるということではないと思いますが,ああいうナトリウムを使って,そしてきちんと発電を行い,これがどんないろいろな工学的な課題を持っているのかということを見極めつつ,着実に開発していくというのも1つの考え方だと私は思います。

【石川】
 それでは,関本さん。

【関本】
 いまのご発言で,いままでの日本の開発姿勢が変化してきたと思ったのですが,この動きをむしろ歓迎しています。「もんじゅ」の位置づけを,実用化までをとらえた非常に確実なステップの中の1つとするのではなく,これからどういうことが起こるかわからない,将来非常に不確実な状況における1つの大型装置としてとらえていただくのは,非常に結構なことだと思っています。
 それと同時に,いま鈴木さんのお話の中では,ナトリウム冷却,それから酸化物燃料までは言われませんでしたが,そういうところに関して非常に注意しながらお話ししておられたような感じがします,私自身はこのような不確実な将来というものが来たこういう状況においては,そういうところももっと枠を外して広く取り上げるのがよいのではないかと思っています。今迄のものに比べて,それほど大型を作る必要はもちろんありません。しかし,そういうものをもし推進するとするならば,それに必要な実験設備などはきっちり揃えてやっていくべきだと思っています。
 抽象的な話ばかりになりますので少しだけ具体的にお話しすると,冷却材などもいろいろありまして,ガスとか鉛,鉛ビスマスなどありますが,私は最近,鉛や,鉛ビスマスを冷却材に使った原子炉の研究をしておりますので,少しだけこれについてお話しさせていただきます。
 もちろん,これは水と急激な反応をしません。例えばいままでの高速炉だと中間ループなどを作って,できるだけナトリウムと最終的な水や蒸気とを離そうとしているということがありますが,例えば鉛ビスマスのような炉だと水とのそういう急激な反応がないので,原子炉容器の中に蒸気発生装置を入れるというようなコンパクトなデザインすら考えられているということがあります。そのようなコンパクトな装置ができると,これはやはりコストにも影響してくるわけで,先ほど鈴木さんが現状ではコストが非常に重要だと言っておられたようなところがうまくいくのではないかと思っています。
 ちなみに昔,ロシアのリャプンツキーという人が高速炉を開発する時に,冷却材を何にするかということでかなり検討されたようです。その時やはりナトリウムが採用されたのですが,それはダブリングタイムを短くするためだったといわれています。しかし安全性の面から言うと鉛とか鉛ビスマスのほうがよかったというようなことを記録に残しているということです。このようなことで今ロシアの人たちは鉛や鉛ビスマス非常にプロモートしているということがあります。一応,そういうことを参考までにということで。

【石川】
 ありがとうございました。小沢さん,どうぞ。

【小沢(社会評論家)】
 中村政雄さんは先ほど「少しゆっくりしたらどうだ」とおっしゃいましたよね。それをもう少し。内容はいまの話に絡みますか。もし全然絡まないなら,別のところで伺いますが。

【中村(政)】
 実用というのは電力会社が2つ以上複数作ることを実用と私は思っています。そうなるまでに50年以上あるでしょうから,「もんじゅ」をずっと続けるのか,新しいタイプの研究に切り換えるのか,考えて判断をする時間はあるように思うのです。ですから,そのことをやったらいいと思うのです。
 「もんじゅ」というのはせっかく作ったのだから動かしたらいい。地元は早く動かしたい,サイクル機構も特にそう思っているわけですね。それが妥当かどうかという議論をして,よかろうということだったら,早く動かしたほうがいいというのが1つです。
 ゆっくりやれというのは,「もんじゅ」の延長上に実用があるというのかどうか,それとも別のタイプをやらなければ,あれはだめだということなのかどうかをはっきりさせることが大事だ。根本的に改良するか部分的に改良するかは別にして,とにかく「もんじゅ」を延長しても実用化の時期が来ないのなら,どこかでやはり切り替えなければいけないでしょう。今は,どんな方向に切り替えたらよいかという議論をする余裕があるのではないですか。10年もかけて議論しろというのではないですよ。1年か2年,短期間にやったほうがよいわけですが,議論をする。
 その議論とは別に,「もんじゅ」をせっかく作ったのだから早く動かしたいという人と動かすなという人がいるわけですから,どちらがいいのか議論をして,早く結論を出してほしいと思いますね。
 大体, 6,000億円もかけて作った物を放ったらかすという手はないわけです。ナトリウムが漏れて大事故だと言いますけれども,私は化学の爆発を勉強しましたけれども,ガソリンがこぼれて爆発するほうがよっぽど危ないですよ。ナトリウムが漏れたくらいであの炉を放棄するなんてとんでもない話だと思います。
 しかし,あの炉はもう動かして研究する必要はない,電力も作る必要がない,まったくマイナスだけだと言うなら,やめたらいいです。だけど,動かすといくらかメリットがあるでしょう。デメリットもあるなら,メリットとデメリットを早く出して,比較をして,メリットがあるというなら早く動かしたらいいじゃないですか。
 動かすに当たっては,地元の知事さんには順番があって,どちらのほうが先だとか後だとかそういう議論をなさっているようですけれども,そういう議論と関係なしに,技術開発は知事さんの立場とは違うわけですから,早く動かしたらいい。そのために議論をやったらいいのではないですか,ということです。

【石川】
 服部さん,同じ議論ですか。

【服部】
 伴さんの基本議論が飛んでしまったのです。伴さんの議論を煮詰めてから,ここへ行かなければ。

【石川】
 いませっかく話が煮詰まっていますから,ちょっと待って下さい。

【小沢】
 鈴木篤之先生の言われたのと,やはり近いと思うのです。私もそうだろうなと思うのですけれども,その「議論をしたほうがいい」というのは,例えばどういうところで議論をするのでしょう。

【中村(政)】
 こういうところでもいいですよ。どこでもいいですけれども,やはり専門的な議論をしなければいけません。専門家がやはり半分か3分の2必要ですよね。でも,専門家だけで議論をしてきたから原子力行政はおかしくなったということにイエスと言う人が多いものですから,私は3分の1か半分くらいはど素人を入れて,素人が聞いても「なるほどそうだな」という議論をしていただきたいと思いますね。そうすればいいじゃないですか。

【石川】
 中村融さんは先ほどから「もんじゅ」は止めるべきだというご議論ですが,いまのお話は,せっかく「もんじゅ」があるのだし,「もんじゅ」の上のところに実用炉があるというわけではないのだから,「もんじゅ」を大いにに使って勉強すればいいじゃないかという話ですが,その点についてはいかがですか。

【小沢】
 議長,ちょっと待って下さい。それに関して。FBR,その呼び方をできれば日本語で,高速炉なら高速炉と言っていただけますか。別のものかと私などは思ってしまいますし,アンサートンというのはわかりませんので,なるべくわかる言い方でひとつお願いしたいと思います。

【石川】
 ごめんなさい。高速増殖炉をFBRと呼んでいるのですが。

【中村(融)】
 私は,いま政雄さんが言われた議論には反対なのです。というか,それを議論したらいいと言われているので,そういうことになると思うのですけれども,要するに,炉心崩壊事故の危険性がやはり否定できないということが1つです。
 それからもう1つは,先ほども少し申しましたけれども,「もんじゅ」の安全審査ではウエステージ,ウエステージというのはまた説明しなければいけないと思うのですけれども,要するに細管が割れて中から吹き出してきて,その機械的な力で周囲の細管が傷んでいくということで安全審査をしているわけなのです。ところが実際には旧動燃のデータで高温ラプチャーと言うのですけれども,出た途端に 1,000度以上のものすごい高温がばっと広がり,その温度で周囲の細管がまいっていくということですので,安全審査では4本だということになっているのですけれども,その程度でおさまるものではなかろうということは言えると思うのです。

【石川】
 ちょっと細かいところに入っているようです。しかし炉心溶融というのはとことんのことを考えれば,どんな原子炉でも,どんなに安全に作っても起きるのではないでしょうか。それが心配だから研究をしない,してはいけない,こういう議論でしょうか。

【中村(融)】
 そういうことではなくて,これは石川さんはよくご存じのことなのですけれども,カルカーの安全審査というような形で,あれは世界的に専門家を集めて論議しましたね。そういうところで,やはり計算のコードはジンマーという形で呼ばれていますけれども,今度の臨界核実験などの計算をやるのに使うような計算方式ですが,そういう形で計算をした結果,やはり最終的に否定ができなかったということで……。

【石川】
 先ほど言いましたように,どんなものでも炉心溶融というのは起こり得る。

【中村(融)】
 やはり,ふつうの原発とは全然違います。

【石川】
 あまり専門的になりますと一般の皆さんに分り難くなりますので話題を変えます。伴さんのほうから提案のあったテーマ,いまのところに「もんじゅ」は動かさない方が良いのではないかという点について。

【伴】
 中村政雄さんが,建設費に 6,000億円かけたからあれは動かさないともったいないというような話で,高速増殖炉懇談会も確かそのようなニュアンスのことが報告書に書かれていたと思うのですけれども,私は,地元ではまだ合意に達していないと思います。賛成の人もそれはいると思いますけれども,地元の中には反対の人もやはりいます。したがって,その運転に当たっては地元の合意というものが絶対必要で,それには本当に時間をかけて議論をしてほしいと思っています。
 その時にメリット・デメリットというものを十分議論すればいいということは私も賛成で,「もんじゅ」を動かすことのメリット・デメリットというものをはかって, 6,000億円投資したけれども,いまここでもう一ぺん再開に踏み切って泥沼に入るよりかは目をつぶって 6,000億円失敗したというほうがいいという結論が出るかもしれない。そういう議論を先に十分にした上で,それをもって地元合意というものを得てほしいと思います。

【石川】
 はい,どうぞ。

【鈴木(岑)】
 いまの点に関連してですけれども。この「もんじゅ」の問題に限らず,これまでの原子力の大型の研究開発に,ある意味では共通していた問題だと思うのですけれども,研究開発ですから当然よい結果が出る場合もあれば,出ない場合もある。悪いほうへ行った場合には,本来期待していた目標にはなかなか近づけそうにない。ないということがはっきりしたら,やはりその時点でさらに続けるかどうかというのは,きちんとレビューすべきなのです。
 「もんじゅ」の継続運転の話も結局,研究用としては使えるというような話というのは,たぶん副次的な効果にすぎないのだと思います。本来の目的があやしくなった時に,副次的効果のほうの議論で,そのプロジェクトをなおかつ生かしていこうというような発想を捨てないといけないだろうと私は思います。

【小沢】
 要するに,「もんじゅ」はそういう意味では……。

【鈴木(岑)】
私は,「もんじゅ」がどういう意味で使えるかということについて専門的な判断能力はありません。

【石川】
 ただ,判断をする時に副次的なほうを優先させてはいけないと。だから,そこのところはしっかりと判断をしなさいというサジェスチョンですね。

【中島】
 もう少しはっきり言いますと,こういう問題だと思うのです。「もんじゅ」を動かす,動かさないと言っていますが,いま,「もんじゅ」は動いているのですよ。ナトリウムを回しています。回さないとおかしくなってしまいますから。それで年間 100億円かかるのです。そういうことが運営審議会には報告されます。そうすると,私ではありませんが,ある委員が「それは国民に対して無責任じゃないか。一刻も早く動かせ」という議論が当然出るわけです。

【石川】
 動かすというのは,炉心のほうを動かすという話ですか。

【中島】
 そういうことです。いま,二次ループのほうのナトリウム3分の1だけを回さないと維持できないわけです。そういう非常にお金のかかる装置になっていることは確かです。
 ただ私は,先ほどの原点の問題に返って一言言いますと,核燃開発事業団がなぜあのように硬直化してきたかというのは,核燃開発事業団の責任であるより,中村政雄さんのほうが言われた,いままでの計画がむしろ非常に硬直化しているのです。しかも逆に,いま成果を上げている部分がまったく無視されているのです。
 例えば大洗にある「常陽」という原子炉,これは1度も事故を起こしていないのです。これと「もんじゅ」が関係なくなっているということが不思議なのですけれども,そういうことがある。それから「ふげん」です。これはやめるという計画にもかかわらず,地元が動かしてくれと言っている。あれは国産の動力炉で,プルトニウムを一番たくさん燃焼させた原子炉という実績を持っているわけです。私は仕方ないから「これは原子力委員会の方針が間違ったのではないか」と言っているのです。ですから「あれはもう少しきちんともう一度評価し直して,あの当時,コストが高いから実用炉にならないといったような判断とは別に,核拡散防止の上から言っても有用な原子炉であるという見方ができるのではないか。もっと手を入れてきちんと動かせ」というようなことを言っているわけです。しかし,中長期事業計画の審議では,それは言いますけれども,運営委員会の某委員がそう言ったからといって,すぐにそういう計画になるような組織ではありません。1つの意見として,聞いてはいただいたということにすぎませんので,オーソライズしたというようなことを言われると「それは違いますよ」ということを申し上げておきたいのです。

【中村(政)】
 いまのような意見も入れて,率直な議論をやったらいいのですよ。

【小沢】
 それで,「もんじゅ」はどうなのですか。

【中島】
 「もんじゅ」はどうするかと言えば,これは先ほど中村政雄さんも言われましたけれども,これは放射能が漏れたわけではないわけです。ところが,さっき言った硬直した体質があるから「絶対ナトリウムを漏らさないぞ」ということを言っていたのです。そのことが不信感のもとになっています。私はこれから「もんじゅ」を動かして何かやるとすれば,「とにかく何回かはナトリウムくらいは漏れますけれども,ご承認下さい」ということを地元に説明しろと言っているわけです。そうでなければ実験開発できないですよ。まったく何もやらないでやれなんていうのは無茶な話で,けれども,地元のほうはまた論理が別なのです。何しろ選挙がありますから。
 「いつ動きますか」と私は聞いたわけです。そうしたら,「2年間動かさない」ということが理事会からの返事です。それはなぜかと言うと,地元の納得をまず得なければいけない。それから,35か町村全部回ったけれども,だれも「うん」とは言ってくれない。それが現状です。地方選挙は終わりましたから,地方選挙が終われば多少進展するでしょうと。それはまことに日本的な話で,科学技術の開発の話とは別の次元の話にわれわれは取り組まざるを得ないわけです。

【石川】
 伴さん,どうぞ。

【伴】
 先ほど中島さんが「もんじゅ」の事故で,あれは放射能は漏れていないと言われましたけれども,それはちょっと違うと思います。あの事故の報告書にも,放射性のトリチウムが推定値で 4,400万ベクレル漏れたと書いてあります。それから,燃料の中などから出てきた,トリチウムがナトリウムと一緒に漏れています。それが事実関係で私が「おやっ」と思った点です。
 もう1つは,先ほど年間 100億ですか,ナトリウムを溶かして動かし続けているからなのですけれども,私はそのようにかたや動かして待っている必要性が本当にあるのかと疑問に思います。十分な議論をするためには,燃料を取り出してナトリウムを抜き取れば,別に毎年 100億をかけないで済むわけですから,そのように燃料を取り出して,ナトリウムを抜き取ってしまって,それからその議論をするというようにしていったほうがいいと思っています。

【石川】
 ありがとうございました。ナトリウムもれとトリチウムの関係というのは,ちょっと私は知らないのですけれども。これは科技庁の方がそちらにいらっしゃるようですから,事実関係ですから,ちょっと調べておいていただきたいと思います。
それでは鈴木さん,先ほどから待たせていますけれども。

【鈴木(篤)】
 小沢さんからのお話で,鈴木岑二さんの本来の目的,これが達成できなくなったものを副次的な目的にすりかえるというか,それを強調して大型のプロジェクトを続けることに問題があるというご指摘は,ある意味ではその通りだと思うのですが,「もんじゅ」に限って考えると,「もんじゅ」については,これは原型炉,次は実証炉,次は実用炉,そういう3段階というか,そういうステップで行けますよという絵を描いたことは確かなのです。ですから,そういう意味での本来の目的は原型炉としての役割にあるのだと,つまり,次は実証炉で次は実用炉,しかもそれがベースになりますよと,こういうことが変わりつつあるのは,先ほど申し上げましたようにそうだと思うのです。
 では,これはなぜかということを考えますと,鈴木岑二さんはご専門だと思いますが,それは例えばエネルギー需要がどうなんだとか,ウランの需給がどうなんだとかいう諸般の情勢にも影響されます。ですから,このように非常に時間がかかる大型のプロジェクトについて,本来研究開発というのがそのようになっていたこと自体におそらく問題があるのです。
 そこで,それでは「もんじゅ」をどうするかということなのですが,例えば先ほど十分議論して時間をかけるべきだという話があるのですが,私は小沢さんが言われたようにどのように議論するかが大事だと思うのです。それはどういうことかとううと,「もんじゅ」はどうすべきかという議論をする時に,例えば,ではMOX燃料というものは将来どうなのだ,例えばナトリウム冷却というのは本当に冷却材としてどうなのだという議論をしなければいけないですね。
 その時に経験がなくて,外国でこうだったからということだけで議論していても,こんなむなしいことはないのです。明らかに酸化物燃料と冷却材としてナトリウムがどういうものかということをエンジニアリング的に経験を積まないと,これは本当の判断ができないと私は思います。ですから,そういう経験を積みつつ,的確な判断をしていくような,そういうプロセスが大事ではないかと思うのです。これは決して副次的な目的にすりかえることではなくて,要するに高速炉というものを少しずつでもいいから日本で開発していこうとする場合には,そういうプロセスが必要な気がするのです。

【石川】
 服部さん,どうぞ。

【服部】
 一番大事なことを最初に,伴さんが「実用化とは何ですか」と。そして,中村さんは,実用化への道の中に「もんじゅ」の延長線はあるのかゆっくり議論したいと。その辺で,鈴木さんは経済性と話された。私はもう1つ,経済性と言いますけれども,その陰に本当に根本を決めているのは,信頼性だと思うのです。
 経済性だけではたしてユーザーがどんどんその商品を発注するだろうか。何が起こってもすぐ止めなければいけない,そういうことが起こりやすい。そこの根本に信頼があるのです。そしてたくさんどんどんこれを作ってもいいなと,軽水炉と並べてこれのほうがいいぞとなるのは,やはり信頼性です。すばらしいものが生まれてきたな,高速炉には惚れるよと,そこにいくには経済性の,お絵かきと言っては失礼なのですけれども,信頼性という工学者の一番大事なことを飛んで,経済性の議論がはたして本当のところでき得ているのだろうか,うそではないだろうか,根本に信頼性の問題があるのではないか。そう思います。
 実用化への道は何だろう。そこで伴さんが,実用化とは何ですかと。それは,ユーザーが惚れてこれをどんどん発注したくなる,それが実用化だと思うのです。軽水炉以上にこれに惚れたよ,今度は高速炉にしようよ,どんどん増えていくよ,それが本当に実用化をやってのけた時だと思うのです。
 それへの道を50年だどうのこうのではなくて,もっと早くもってきて,そして2年でできてしまう小型炉はいいなとか,R&Dは1年で終わってしまう,信頼性か,小型炉は単純だな,何もトラブルないな,それで小型炉にたどり着いてしまったのです。実は私は動燃からユーザーサイドに入って,実用化へ,おまえ旗頭だぞと言われた時からこの信頼性のことを1人で思い詰めてしまったのです。

【小沢】
 服部さんがご覧になって「もんじゅ」はどうなのですか。惚れられないのですか。

【服部】
 これは信頼性の面で,まず社会は非常に厳しいのです。そうすると,たくさんのコンポーネントがありますとすぐトップ記事になってしまうのです。止めなければいけなくなるのです。すると稼働率が非常に悪くなるのです。同じものをどんどん作っても,慣れていないナトリウムに,関本先生は鉛とおっしゃったけれども,ナトリウムに私は慣れていくのだ,これが工学の道だという鈴木先生の意見に大賛成なのです。「もんじゅ」をやり続けたい。しかし,世間はもうメタメタに文句を言うでしょう。また止まる,また壊れている,強引に動かしていると。しかし,それは工学者の運命ではないだろうか,いつの日にか,やり遂げなければいけないのでないだろうか。
 大型炉も要るのです。小型炉だけで世界中ハッピーではないのです。大型炉も先進国はほしいのです。だから両方の道がやはりイエスだと思います。ナトリウムは乗り切らなければならない,そういうすばらしいものではないだろうかと思います。

【小沢】
 要するに「もんじゅ」に惚れてはいるけれども,世間がうるさいから寄り添えない。

【服部】
 だから,これは非常に謙虚に,世間と相談してやり続けなければならないのではないだろうかと思います。それが工学の道ではないだろうか。経験,これがすべてです,工学の基本である経験を積むために。やめたら永久に経験を積めません。鉛に替えた,鉛をこれから経験積むといって,はたして鉛を簡単に充分経験を積めるか。ぽんぽん切り替えるのは,私はちょっと待って下さいと言いたいのです。世界中は皆で40年もナトリウムでやってきた。

【小沢】
 そうすると,ユーザーが惚れられないものとして「もんじゅ」はあるのですか。

【服部】
 まず,小型炉は惚れるかもしれません。これはシンプルだから。しかし,大型炉もそのうちにユーザーが惚れるほど信頼性を上げていくと思います。

【小沢】
 私がしつこく伺っているのは,本当は惚れているのだけれども,世間がとやかく言うので添い遂げられないという意味なのかと。

【服部】
 やはり,世間だけではないです。そんなに止まりっぱなしでは,どうもこれは心配でやはり止めたいなというのが次々と起こっては,ユーザーも経済性が成り立ちません。

【小沢】
 未熟なわけですか。

【服部】
 はいそのとおりです。でも経験は積むべきです。

【石川】
 木村さん,どうぞ。

【木村】
 いまの服部さんのご意見ですが,信頼性の問題ですね。私は原子炉に関しては全く素人ですけれども,外から眺めていて信頼度が高くならないのは,情報が1ヶ所からしか出ていないためだと思うのです。いま実際に原子炉を扱っているところは1ヶ所しかないわけですから。いまのままでは.どんな会議をやって議論しても,なかなか信頼性は増さないと思うのです。原子炉というのは非常に複雑な技術が必要で大変にお金のかかることですからこれに関する研究自体が非常に難しいとは思いますが,やはり基礎的な研究を,いろいろなところ,大学なりそういうところでやれるようなシステムを作って,そこから,例えば旧動燃がこうだと言った時に,いや違うよ,こういう考えもあるよと言えるような素地を日本で作っていかないと,なかなか信頼性は増さないと思うのです。
 おそらく関本さんずい分苦労しておられると思っていますが,その辺で原子力関係の研究をしようと思ったらお金というのは非常に取りにくいのだと,私は専門外だけれども思っているのですけれども,その辺のところはやはりどうしても日本としてやっていかないといけない。

【服部】
 おっしゃる通りです。

【木村】
 それからもう1つ申し上げたいのは,まだ議論には出ていないのですが,アメリカではやめた,ヨーロッパではやめた,だから日本でやらないという議論は私は非常に危険だと思っています。ごく最近半年程英国に住んで,EUを冷やかな目で見ていた英国人がいまや , We are Europeansつまり我々はEUの一員だということをはっきり言うようになっているのに驚きました。EU全体では,エネルギー問題というのは少なくとも現状ではある程度サチャレートしています。アメリカはもちろんですからこれらの国々と日本を同列に論じるというのは非常に危険であって,やはりエネルギー源の確保については相当犠牲を払ってでもやっていかなければいけないのではないかと強く思っています。

【石川】
 中村融さん,どうぞ。お待たせしました。

【中村(融)】
 言いたいことがいろいろあったのですけれども,私の発言に関連してもいろいろ出ているのですが。中島さんの言われたように,旧動燃の責任ではないと言われた意味はよくわかるのです。いろいろあると思うのですけれども,1つの問題を言いますと例えば「もんじゅ」が発電をしたということですね。発電炉ということになっているのですけれども,実は5%の出力で30分送電しただけなのです。蒸気発生器の過熱器のほうは使っていない。そういうことで言いますと,私は2次系と3次系とのマッチングがやはりうまくいっていないのではないかということはいまでも疑いを持っておりますけれども。そういうことも含めて,先ほどのナトリウム漏れの問題もそうですけれども,要するにやはり基本的に開発体質から外れていたというように私は総括できるのではないかと思うのです。
それからもう1つ最後に言いたいことがあるのですけれども。例えばドイツの場合は,カルカーの廃炉に至るまでに,ドイツの場合は2つのグループにそれぞれの安全評価をやらせたわけです。1つは,ドイツの原子炉安全委員会のほうに委託した。もう1つのほうはそういう高速増殖炉に対して批判的な研究者であったヨハン・ベネッケン博士を中心とするグループ,そういう形でやっていった。
 結局両者の結論は,RSKのほうは安全,ベネケン博士のほうはだめだという形で出て,最後に連邦議会のほうがそれを試運転させようというところまでいったのですけれども,結局,州政府のほうが最後のところで止めたわけです。日本で私が言いたいのは,鈴木さんが言われたことなのですけれども,ここで「もんじゅ」について本当にどうしていくかということを議論する場合に,そういう批判的な立場のグループにも委託して,やはりドイツのような形ではっきりとした形で結論を出す,そういう方式をやはり望みたいということを思います。
 それから最後に,伴さんがおっしゃったように,ナトリウムを抜いてお金のかからない形で「もんじゅ」を置いておいて,そういう形で議論を進めるという形を望みたいと思います。

【石川】
 それでは,話をFBRをどのようにしていくか。に切り換えたいと思います。これまでの議論はだいぶ「もんじゅ」のほうにぐっと片寄っていたと思います。これ以上「もんじゅ」を煮詰まらせても意味が有りませんから,全般的な意味で高速増殖炉をどのようにやっていくか,という方向性の議論をしていきたいと思います。向かうかどうかですね。
【茅】
 いま石川さんがそういうことを言われたのですが,私はそれにまったく賛成なのです。なぜかと言うと,結局今日の皆さんのご発言を伺ってみても,やはりプルサーマルの問題にしても再処理にしても,詰まるところはFBRを必要と考えるかどうかにかかっているわけです。その時に,その問題についての議論をしないでプルサーマルの議論をしても,あるいは再処理の議論をしても片手落ちになる。またいま「もんじゅ」の問題を言っていますけれども,「もんじゅ」が確かにいろいろな問題を持っていることは皆さんのご意見でわかるのですけれども,ではそれで「もんじゅ」が仮にだめだとした場合に,FBRという路線を全部放棄することになるのか,それはまた意見が皆さん違うわけですね。そういった意味で問題を切りわけてやらないと,ここでやった結果というものが後にうまく繋がらないものですから,そういった意味で,話として「もんじゅ」の問題と,FBRという路線を本来やるべきかどうかということを分けて議論していただきたい。これが私の思っていることです。

【石川】
 ありがとうございました。中島さんどうぞ。

【中島】
 この核エネルギーの利用というのはやはり相当長期的に考える必要があるので,例えば「もんじゅ」だけではありません,FBRをやらなければいけない理由として,資源問題かあるわけですね。あるいは経済問題かもしれません。ところが,海水からウランが採れるという技術が発展しつつあると思うのです。これを仮に50年というスコープで見ますと,あるいは完全に実用化されるかもしれない。問題は,そちらのほうにどれだけお金をつぎ込んで,海水からウランを採るという技術を,いま芽が出ているだけです。それに原子力委員会はきちんと着目して奨励する方法をとって何年かごとに評価をしていくと,FBRは当分要らない,もっと先でもいいよということになる可能性が非常に高いわけです。そういうものがこの計画をどうするかのバランスだと思う。正直申し上げて,いままで残念ながら日本ではそういうことはあまりやっていないのです。
 先ほど私は動燃を弁護する意味ではなくて,結局,過去においては非常に1本の計画だけで,つまりかなり硬直化した計画だけで「常陽」の次は「もんじゅ」でその次は実証炉ということでそれに突っ走る,それに必要なものだけをつくるということをやってきました。それが間違いだったという反省が十分だったかどうかというのは,いまからでもやれるわけです。これからやっていかなければいけない問題だと私は思うのですけれども。もっと平たくいけば,さっき1兆 6,000億円かかったと言うけれども,実際「もんじゅ」そのものには 6,000億円くらいでしょう。けれども, 6,000億円もかけてしまったものをやめられないというのは,明らかにそこの技術者,科学者の責任であるよりも政治の問題です。
例えば「むつ」が 1,000億円です。あれがやめられなかったのです。みんな,やめたいと思っていた原子力船むつが,結局最後,一応,実験航海まで行くわけです。当時私は学術会議にいて原子力委員の方々にお目にかかっても,皆さんおやめになりたいと思っているのだけれども,やめられない。やめるいい理由は母港がないということだったのです。ところが,その母港を政治家が探してきてしまった。だから,またやらなければならないというので,そういうことが過去の開発史ではあるわけです。
 「もんじゅ」は母港が要らないのですよ。母港に代わるようなうまい理由があればやめられますけれども,日本の現在の社会を考えると,やはり 6,000億円使ったものは何らかの形で活用しようという,これは常識なのです。これは科学上の理論,さっき私が言ったようなこととは別に,何とかしなければということしか出てこないのではないかと私は思っています。

【石川】
 中島さん,「もんじゅ」からそろそろ離れよういう方向で。中村融さん,よろしいですか。

【中村(融)】
 いまおっしゃった点ですけれども, 6,000億円は無駄であっても,泥沼になってもっといるということもあり得ますからね。それはやはり考えなければいけないと思う。
それはそれとして,いま茅さんがおっしゃったことですけれども,私は高速増殖炉は服部さんのおっしゃったような小型炉,そういう形で考えていくということは可能だ。しかし,「もんじゅ」のような形で考えていくことは,究極の安全性とか固有の安全性とか言いますけれども,そういう点で非常に危惧があまりにも強過ぎるから,これは無理だということを言いたいと思います。

【石川】
 関本さん。

【関本】
 私は言いたいことが2つあってどちら側から申し上げようかと思っているのですけれども,1つは海水ウランの話,もう1つはいま話題が移りました小型炉のことなのです。

【石川】
 両方やって下さい。

【関本】
 それでしたら,まず海水ウランのほうなのですけれども,軽水炉と高速炉を考えた場合に,高速炉は軽水炉の 100倍と言うといろいろ異論が出るかもしれませんが, 100倍くらい燃料を有効に使えるということで,電気のコストに占める天然ウランのコストの割合は,高速炉の場合 100分の1くらいになってしまうわけなのですね。ですから,高速炉にすればその海水ウランはいまでも使えるくらいのものと考えてもいいと思うのですが,軽水炉の場合はなかなかそこのところが難しいと思っています。
 それから非常に海水ウランのものでも安くなって,例えば軽水炉がそれを使ったとしても石油とか石炭あるいは天然ガスよりも安く発電できるというようになればそれを使っていくということになるのでしょうけれども,この場合でも資源論は解決できたということですが,廃棄物のところをきっちりと押さえていく必要があると思っています。
 それから,その後,小型炉のほうなのですけれども,話としましては小型,小型という話が続いているのですが,私は実は問題は,非常によく見える安全性というところにポイントがあると思っています。どういうことかと言いますと,小型にしていきますと例えばいろいろなところの安全装置がどんどん要らなくなっていくということなのです。
 例えば,制御棒を誤って抜いたとします。そうしますと原子炉は超臨界になって暴走していくわけです。そういう時に普通の原子炉ではどういうことになるかというと,それをいち早くキャッチして,安全棒が原子炉の中に入って,原子炉を止めるというようなことになります。原子炉が安全になっていくと,例えば小型にして安全にしていきますと,原子炉が暴走した時に止めるような制御棒が必要でなくなってくるわけです。全然何も動かさなくても炉心の温度はある値以上には上がらない,そのようになってしまう原子炉が可能です。それから,例えばポンプが止まってしまった。そうすると原子炉を冷却できませんからどんどん温度が上がっていく,そういう場合でも例えば小型の原子炉……。

 
【石川】
 関本さん,ちょっとご注意申し上げますが,それは小型とは関係なくて固有の安全炉ですね。小型と言われると完全に科学技術的に間違った情報を皆さん方に与えますから,ちょっとこの点は注意させていただきます。

【関本】
 固有安全炉です。そこを同じように使ったというのは,服部さんの言っておられる小型炉というのも,私のやっている小型炉というのもそういう固有安全をねらった小型炉になっているもので,こういうことを申し上げたのですけれども。そのようなことが,例えばポンプが止まった時でも,そのままにしておれば大丈夫というような原子炉が可能なことは可能なのです。
 ただし,それは同時に,固有安全を満足するために,例えば出力密度を下げるとかスケールデメリットをこうむるとか経済性にはね返るようなことが起こるわけです。だから,そういうところでどのようにわれわれが判断するか。つまり人工的な安全装置が信頼できるということであるならば,それで安いものができるし,あるいはそういうものは私は全然信じない,機械は必ず故障するし,人間はすぐ失敗するしというようなことであるならば,出力密度とか全出力とかいったレベルを落とすことによって,固有安全を獲得した炉を設計するということは可能です。それは将来,要するに使う側とかみんながどのように判断してどちらを採用するか,そういう問題であると思います。

【石川】
 中村政雄さん。

【中村(政)】
 私は高速炉は必要だと思います。つまり,せっかくウランを燃料として利用を始めたわけですから,できるだけしゃぶって有効に使いたいと思います。長い,これからの人類の歴史を考えるとウランは貴重な資源ですし,それをプルトニウムに変えて燃やす時に高速炉のほうが圧倒的によく燃えるわけですから,開発をする必要があると思います。ただし,その炉形がいまのままでいいかどうかという議論はしたらいい。1,2年かけて議論をするだけの十分な時間的ゆとりはあると思っています。

【石川】
 ありがとうございました。伴さん,どうぞ。

【伴】
 高速増殖炉と高速炉という言葉が,いま2つ出てきていると思いますね。

【小沢】
 F何とかはどちらですか。

【石川】
 FBRというのは高速増殖炉が正しいですね。

【伴】
 それは,動かしながら自分で新たなプルトニウムを作って自分の燃料にしていくというようなことで,夢の原子炉とか言われていたわけなのです。国の政策というのはそれを進めていこうという政策で,高速炉というのは,うまいこといかないから出てきた亜流のような感じで私は思っていますけれども,本来は増殖をすることに意味があるとして設定されている政策だと思います。それを考えた場合に,私の思っていることは,いま国の政策として高速増殖炉の路線をとるのはやめてほしい。それは1つには,これは一番最初の繰り返しになるけれども,放射能とか廃棄物問題,核拡散とかいろいろな問題が出てくるのですけれども,それに加えてコスト的なところで非常に高くついてしまう。
 先ほどちょっと出てきたダブリングタイムとかいう言葉がありましたけれども,簡単に言うと,自分の増殖した分の燃料を自分が使えるまでにどれくらい時間がかかるというような意味だと思うのですが,違っていたら説明して下さい。それがいまの評価で40年とか90年とか言われているのです。そうすると,高速増殖炉の一生の間に自分が使う分のエネルギーを増殖しないということになってくるわけで,国の将来のエネルギー政策の重要な柱としてそういったものを定めていくというのは,もうやめたほうがいいのではないかというのが私の意見です。

【石川】
 どうもありがとうございました。鈴木篤之さん,ダブリングタイム90年というのがよくマスコミにも出たりしているのですが,ここでちょっと正確な定義と,どういうことなのかわかりやすくお話しいただけませんでしょうか。

【鈴木(篤)】
 ダブリングタイムというのは原子炉だけではなくて,原子炉を動かすのに必要な燃料サイクルも含めて言っていることが多いのですが,それに必要な燃料,これを自らが生産するまでに要する時間,こういう感じだと思っていただいてよいと思います。それが90年云々いろいろな議論があるようですが,私はこの議論は,将来今後,例えばエネルギーの需要がどう伸びるのか,あるいは原子力発電が今後日本でどのように進展していくのかということに合わせて考え得ることであって,いまわれわれが考える高速炉,あるいは高速増殖炉でもいいのですが,これはダブリングタイムいくらと決まっているわけではないのです。
それから燃料サイクルのほうで言えば再処理,再加工,これに要する期間がどのくらいかということにもよるわけで,これは結局,日本全体でどのくらいの再処理能力を持ち得るか,またそれを必要とするかといういろいろな状況によるわけです。ですから,これが決定的な高速炉を進めるかどうかのファクターではないような気がします。

【石川】
 ありがとうございました。

【鈴木(篤)】
 私はちょっと追加的に,第二ラウンドといいますか,「もんじゅ」の話は「もんじゅ」の話として,高速炉あるいは高速増殖炉を今後日本で進めるかどうかという議論についてコメントさせていただきます。
 私は最初に申し上げましたように,実用化ということを考えると,それは相当時間がかかりそう,しかも,いろいろ条件次第だとなります。一言で言って非常に先の話だということになりますと,そんな先の話を何でいまこんなに一生懸命研究開発しなければいけないのか,当然そういう素朴な疑問が出てきます。私が思うには,なぜ研究開発を必要とするのかということで考えれば,これはやはり一言で言うとセキュリティというか,日本でエネルギーをどのように全体的に確保していくべきかということとの一環で決まっていく問題だと思うのです。
 ある程度原子力が必要だと,ここから始めたほうがいいと思うのですが,ある程度原子力が必要だとした時に,その原子力というもの自体をどのように日本のエネルギー源の1つとして考えていくかということ。これは先ほど中島さんのご指摘で関本さんもおっしゃったことにも関連するのですが,例えば確かに海水ウランが利用可能になる。高速炉が実用化できるようになれば,海水からウランを採るような非常にコストのかかる技術であっても,資源効率が極めて高いですから資源経済的には実用化し得るわけです。そういうものが一種のセキュリティなのです。
 つまり,ウランの世界の市場がどうなるにしても,海水ウランについてはそんなに心配は要らないでしょうから,そのような状況,そのような技術的なポテンシャルを日本として持っていこうということだと思うのです。これは海水ウランを選択するか高速炉を選択するかという以上に,選択肢として海水ウランと高速炉を組み合わせる選択があり得るわけですね。そのようなものが1つのセキュリティです。
 しかも私が思いますには,経済的に勝つかどうかという前に,やはり世界のウランの市場も将来的に安定的なほうがいいと思うのです。もちろん石油その他のエネルギー科学も将来的に安定的なほうがいいわけです。その安定的である中で,日本の原子力の使い方というのが,安定的であるという状況にふさわしいような使い方をしていることが,結果的にいわばそういう状況を担保することになるのではないでしょうか。これは一言で言うとバーゲニングパワー,例えば石油を買う場合について言えばそういう言い方をすることもありますが,技術セキュリティと私は言っているのですけれども,要するに日本のエネルギーの使い方,原子力の使い方というのが,非常に外のいろいろな状況の変化に対して抵抗力があるというか,資源効率が高くてどういう状況になってもそんなに大きな影響を受けないという状況を作っていっている。そういうことがやはり世界に対して非常に大きな発信,エネルギーの使い方というかエネルギーの需給をどう考えていくかという場合の貴重なメッセージになるのではないかなと,これはまったく個人的意見ですが,そのように思います。

【石川】
 ありがとうございました。服部さん。

【服部】
 ちょうど亡くなったシスラー会長が,昔「高速炉が実用化されたら世界平和が来る」と,その時は「エネルギー量から」と言われたようですけれども。その後追加の議論があって,いま鈴木さんの言われたような「世界中を海の水は訪ねて歩いています。どこかにウランがあるからではありません。ウランを持って,水がすべての国を訪ねています。エネルギー平等論,エネルギーのセキュリティの飛躍する国がものすごいことになります。世界平和が登場するでしょう。高速炉というものの実現は,おそらく人類の大革命ではないでしょうか」と,いま,鈴木さんのお話でそのことをふっと思い出しました。失礼しました。

【石川】
 ありがとうございました。中村融さんどうぞ。

【中村(融)】
 世界的にエネルギーセキュリティーというものが21世紀を展望する場合に大事だということは,だれが考えても当然のことでしょうね。それがいまの場合,ここの議論ではウラン,原子力と出てくるのです。しかし私はやはり新エネルギーとか省エネとかいうことの技術的な可能性というものがもっと議論されなければいけないし,これを汲み尽くす形の技術開発というものを是非考えていく。それはやはり非常に大きなポテンシャルがあるものだということを最後にやはり強調したいと思うのです。

【石川】
 どうぞ。

 
【小沢】
 いつもそういう話になるのですが,原子力をどう考えたらいいのか,要するにどんなにすごい大事なことを議論しても,結局,地元がOKしなければできない状況っていまありましてね,その地元とは何かというと,これは学者でもなければ専門家でもないのですよ。いま,そういう人たちが決定権を握る時代にあるわけです。だからこそ,こういう会議をやっているのだと思うのです。
 私は先ほどから鈴木篤之さんのお話を聞いていると,そのようにお考えになる学者の方々が,例えば前はかなり硬直した見方をしていた,あるいは原子力政策のやり方をしていた時代もあったと。しかし,いろいろな状況の変化の中でどういう選択肢があるのかということも真剣に考えているという,そういうことがもっと早く知られていたら,しかも平易な言葉で政治的に汚されずに伝わっていたら,私は日本の原子力に対する考え方は,もっと国民的レベルで変わっていただろうという気がするのです。
 私にとって初めは原子力は夢だった。いまでも私は,どんな問題があるにせよ,これはお金を費やして先端技術としてきちんと勉強していく分野であってほしいと思っているのです。けれども,ある時からこれがとんでもないものになって,金食い虫になって,何か非常に政治的にも困ったもので国民のお荷物になっている。この経過というのは,私は,2度も3度も,当事者がそこのところを区分けしてもらいたいと前から申し上げているのですけれども,もっとああいうお話を聞いていたら私は疑問の持ちかたが違っていたと思います。いろいろな危ない面もありながら,そのことをみんなが承知しながら,その時々に需要や供給,いろいろなことのバランスの中で考えていくことだったんだと。危ない面も確かに考えてあるけれども,しかし,こういう面で大丈夫なんだと思える面がもっと強かったと思うのですね。
 いま,ゆとりを持ってそのことも考える時期に来ているのですかと。反対派は何でも押しつぶせ,あるいは賛成している者はけしからんというような意味ではなくて,そういうことを合わせて考えていかれるゆとりができたというご判断なのですかと,先ほど中村先生に伺ったのです。そうなったら本当に,この円卓会議が繰り返しその話をしていく一番いい場になるかなと感じがいましているのです。

【石川】
 ありがとうございました。その関連で中村さんどうぞ。

【中村(政)】
 高度成長期というのはみんなが前を向いて走ったのです。ですからそんな脇を向いたり議論をしたりというゆとりが社会的になかったのですね。いろいろな理由によって,考える時間が持てる時期が来たということだと思います。

【石川】
 鈴木岑二さん,どうぞ。

【鈴木(岑)】
 いままでの議論の中で,1つは高速増殖炉についていろいろ考えるゆとり,本当にゆとりがあるかというのは,この円卓会議でも1度何かの機会で議論をされたほうが私はいいと思います。私個人的には50年までのウランの累積需要で 300万~ 500万トンくらいの範囲だろうと思いますから,従来よりは相当ゆとりを持って,ウラン需給の面から言って考えるゆとりはあるということだろうと思います。それが1つです。
 それから,もう1つはやはり高速増殖炉についていろいろな概念,かつては捨て去られたような燃料と冷却材の組み合わせとか,そういう議論が専門の方から次々と出ているわけですけれども,それを一度やはり総ざらいして,もう一度見直して,研究を進める意義がある概念は何かということを,きちんと議論する場がやはりどこかに必要だろうと思うのです。
 その時に,どういうビジョンの下で高速増殖炉について考えるかということなのです。先ほど新エネルギーについての意見が中村融さんから出ましたけれども,長期,もう21世紀の少なくとも中頃までを見通して考えた時に,新エネルギーが入ってきてエネルギー需給に一定の役割を果たす条件というのは,エネルギーの需要側から見ると増分はほとんどゼロ,あるいは増分はマイナスですというような需給環境を作り出せた時に,新エネルギーのような非常に分散型の供給単位でも十分それを追加的に毎年入れていくということの効果は大きいと思うのです。
 そのような見方を前提とすると,日本の条件で考えたらやはり期待される高速増殖炉のイメージというのは,服部さんが冒頭におっしゃったのと同じになるのかどうかはわかりませんけれども,エネルギー需要あるいは電力需要の増分が小さいという条件にぴったり合うようなタイプの概念,そのような基準を何かやはりしっかり持って,その上でいろいろな,かつては捨てられたような概念,新しく生まれてきた原子炉の概念を選択していく,そういう議論をやはりどこかできちんとやる必要があるのではないかと私は思います。

【石川】
 ありがとうございました。関本さんどうぞ。

【関本】
 私はFBRは資源問題を解決したということなのだと思いますが,やはり問題点としては安全性と廃棄物のようなもの,それと核拡散だろうと思うのです。最初の安全性というのはいろいろなレベルがあり,現在でもかなりきっちりやられており,私はそれほど心配はしていないのです。廃棄物には,先ほど申しましたように非常に困難な問題があると私には感じられるのですが,それをこれから,時間が許されていますのでやっていけばいいと思います。
 あとの核拡散のほうが実は伴さんが最初に言われたのだけで議論として出ていなかったのですけれども,私自身は核拡散というのは原子力を利用したほうがかえってきっちりとコントロールできるのではないかと思っているのです。原子力を全部やめてしまった時,核のコントロールというものをこれから半永久的にやることになるわけですけれども,それをどのようにやっていくのかということを,そのあたり何か伴さん,考えを持っておられるのかどうかちょっとお聞きしたいのですけれども。

【石川】
 ありがとうございました。廃棄物については次回やることになっています。そして,あと残り時間が20分くらいになりまして,先ほど伴さんが提起された問題の中で,実用化の可能性があと30年くらいなどと言っているけれどもそれは本当に見通しがあるのかという問題と,いま関本さんがおっしゃられた核拡散と2つ,
両方はとてもできない。どちらをやりましょうか。

【小沢】
 今日は実用化ではないですか。

【石川】
 今日は実用化のほうがいいですか。それでは関本さん,伴さん,よろしいですか,核拡散の問題は次回に回して。それでは実用化を,あとはたして30年,どのように見通しがあるのか。40年もやって,いつまで経ってもまだまだではしようがないじゃなかいというご意見ですね。

【中村(政)】
 50年ではないですか。

【石川】
 50年ですか。ごめんなさい。50年でも結構です。

【中村(政)】
 いや専門家が集まって,50年と一応結論が出たような気がするものですから,私は50年と思っているのですが。

【小沢】
 前から50年と言っていませんか。

【中村(政)】
 前は2030年頃と言っていたのですけれども,いまは2050年と言っていますね。

【中島】
 これは1つは関本さんがおっしゃったことなのですけれども,いわゆるローカルオプティマム,いま原子力の世界では軽水炉がローカルオプティマムで,現在の軽水炉というのは,私だけの意見かもしれませんが,しようがない非効率な発電装置だと思うのです。効率が30%しかないわけです。いろいろな制約条件があって,これを上げるわけにいかないわけです。しかし,それしかないのだという形で大型化し,例えば新型の沸騰水型炉でABWRというものがあります。これは 135万kWにするのだと言うけれども,これをいまから作って30年経った時代の時に,私は旧時代の恐竜の残存物みたいなものになりはしないかと。いま電力会社は喜んであればかりやっているけれども,ちょっと考えたほうがいいのではないかと実は思っているのです。ローカルオプティマムになっていてなかなか転換しにくい,おっしゃる通りだと思うのですけれども,やはり転換しないとね。
 80年でしたか,例のTVA(テネシー渓谷開発公社)をやったリリエンソールがやはりニュースタートということを言って,われわれは資源や人材を軽水炉につぎ込みすぎたという本を書いているわけです。しかし,それ以来,事態は変わっていないのです。やはり転換が必要だとすれば,そのことをセーブする必要があるのではないかと私は思います。とにかく70%は海水を温めているだけというのは20世紀の遺物ではなかろうかと私は思うのです。

【石川】
 中村さん,どうぞ。

【中村(政)】
 南アフリカがこれから開発をしようとしている小型の高温ガス炉の熱効率は45%,熱出力26万kW,電気出力11万 4,000kWです。ですから,そういうようなものもあります。

【石川】
 鈴木岑二さん。

【鈴木(岑)】
 実用化の時期云々というところにテーマがいっているはずだと思いますので,いつごろ実用化できますかなどていうのは,いまだれが考えても判断できるはずがないわけです。ただ大事なことは,エネルギーの長期的な需給,あるいは電力の長期的な需給の面から考えて,このくらいの時期というような目標設定は私はできると思うのです。その時に,早ければ早いほど計算上は効果が大きく出るのは当たり前なのです。ただ,そういう考え方をしていると,結局「もんじゅ」の延長線上の炉概念しか日本では選択の余地がありませんという議論に落ち込んでしまいかねないので,その辺は多少幅を持たせると言いますか,30年先なのか50年先なのかわかりませんけれども,一応いろいろなエネルギー全体の需給環境の中で,このくらいの時期にはこういう性能を持った高速増殖炉がほしいというような目標設定は私はあったほうがいいと思います。いつ,それができるかという話はちょっと,あまりいま議論しても仕方のない話で。

【石川】
 目標設定はあったとしても,これまでのようにそれを何でもかんでもつじつまを合わせて守るんだということはしないほうがいいと。

【鈴木(岑)】
 そうしないと再処理工場でも,これはまた別の機会の議論になるのでしょうけれども,私の考えでは高速炉用にプルトニウムはとっておいたほうがいい。ですから,高速用のプル需要が出ない間は,六ヶ所村の再処理工場は規模を縮小するか運開時期を延期するかというようなことが必要になってくるだろうというところまで,セットでみんな考えなければいけない話なわけです。

【中村(融)】
 いまのお話は非常に共感できるのですけれども。結局やはり究極というか固有というか,いろいろ表現はあるのですけれども,そういう安全性が本当に確保できる増殖機能が保証できるような高速増殖炉というものが目標設定として出てくるはずだと思うのです。そういうものがやはり,レンジとしては50年というレンジで本当に基礎から立ち上げていく。「もんじゅ」ではだめだということを言いたいのです。

【石川】
 服部さん,どうぞ。

【服部】
 先ほど実用化の話で信頼性を申し上げたのですが,工学者というのはまず信頼性を気にしなければいけない。確率論のグループで信頼性の連中と議論しますと,水は数千年の経験がありますと。水炉はどの機器にもものすごく膨大なデータベース。そしてナトリウムは現在ポンプ,バルブ,リレー,それからサーモカップル,あらゆるシステム,例のfailure rate,10の(-5)乗fail/hour,10(-6乗)fail/hour,小さなコンポーネントまでハンドブックが全部あります,それがナトリウムについては未だ2桁高いというのです。それほどマチュアしておりません。その2桁高いのが充分下がってくるのはいつなのか。高いままでは,ユーザーはナトリウム炉に発注できません。そこで先ほど木村先生があちこちでナトリウムに慣れるようなことがずっと進められるべきだと……。そうです,データベースです。信頼性のハンドブックを作るのでも,同じソースからのものはなるべく採用しません,マルチのデータベースです。

【石川】
 ちょっと簡単に言いますと,普通の軽水炉はずい分経験があるからずい分信頼性は高いのだが,ナトリウムというのはあまり経験がないので2桁くらい信頼性が低いよと。

【服部】
 それを手に入れたい,データベースを。上げていきたい。

【石川】
 上げていく……。そのためには?

【服部】
 「もんじゅ」も要る。信頼性を経験で上げていきたい。

【石川】
 また「もんじゅ」のほうに変わったのですけれども。

【服部】
 そして,木村先生,あちこちでデータを取る努力が要るのではないか。賛成なのです。

【石川】
 鈴木さん,どうぞ。

【鈴木(篤)】
 実用化については私も先ほど少しすでにコメントさせていただきましたので,そこのところは申し上げませんけれども,要するに1つ大事なことは,例えば鈴木岑二さんが再処理も高速炉の時代が来るまで待ったらどうかと。これは1つの考え方としてはあると思うのです。あると思うのですけれども,結局実用化というのは待っていては来ないのですね。技術開発ということをやる場合には。やはり経験です。いかに経験を積むかという経験の積み方については議論すべきだと思うのですけれども,単に待っているとか,そういうことで,私の理解する範囲ではなかなか技術というものは実用化というものには届かないと思うのです。
 例えばABWR,先ほど中島さんがちょっと引用されたのですけれども,これは石川迪夫さんのほうがお詳しいと思うのですけれども,私の記憶ではABWRの開発もABWR的なものを考えようと構想し出してから,たぶん20年くらいすでに経っているのではないかと思うのですね。そういうものなのですね。新しいコンセプト,完全に新しいと言えるかどうかわかりませんけれども,いわゆる普通のBWRがたくさんあるわけですから。いま実用化されていますね,ABWRは。これは何年かかるのだと言われたら,そういう例がすでに厳然としてあるわけです。
 これをいま服部さんもおっしゃるようなナトリウム冷却の原子炉で実現していくというのは,確かに相当時間がかかることを覚悟しなければいけない。しかし私は,これはむしろニーズにもよると思うのです。つまり,将来そういうものを必要とするということになると,これはあせってはいけないのですけれども,当然そのニーズにこたえるようなインセンティブが働きますから。
 ですからむしろ,いま大事なことは,いまからどういうものだというものを決めるというよりは,高速炉がやはりコンセプトとして必要だと考えるならば,これをどうやって技術的に開発していくかというプログラムの問題だと思います。そんな感じがします。

【石川】
 ありがとうございました。関本さん,どうぞ。

【関本】
 私もそういうことで賛成です。いま50年ということを言われたのですけれども,50年というのは非常に長い期間でして,それからいま鈴木さんがおっしゃったようにニーズが重要なのですが,私ニーズというのはある時突然出てくるのではないかと。いま非常に高速炉がだらだらしているのは,ニーズがないということであろうと思います。ニーズが出てきた,本当に環境問題が大変になったとか,いろいろなことでそれこそ高速炉を使わねばならないという状況が,ある時,それはいつになるかわからないのだけれども,ある時確実にやってくるように私には思えるのです。それがやってきた時,どれだけの時間的余裕があるかということが1つの問題であって,その時,あと20年か30年くらいで必ず完成してくれというようなものであるとするならばそれこそ実験炉から実用炉までの期間としても短くなく,現在はあわてないでいろいろな広い範囲で,広くよいものを見つけるという形の研究をするのが適切なのではないかと思っています。

【石川】
 ありがとうございました。伴さん,どうぞ。

【伴】
 実用化の時というのを問題として出したのは,見えないものに対してどれだけ力を注いでいくのが合理的なのかみたいな問題提起だったのですけれども。ここにいる原子力を専門とする方はその延長上で何か解決を見出そうという,それは当然のことかもしれないですけれども,リタイヤするというのは非常に難しいと思いますが,そのように聞こえてきてしようがない。
秤にかける作業というのがどこかに必要だと思うのです。そちらに投資していくのが本当に合理的なのか,違う道もある,それはどうなのだという,そういう議論が何か必要なのではないかなと思っていて,秤にかけるもう一方のところは一番最初に言ったコ・ジェネとか省エネ,新エネルギーです。先ほど鈴木岑二さんは,エネルギー需要というものが増えないことを前提にしたら可能性があるというようにおっしゃいましたけれども,まさにどう減らしていくかということも,エネルギー消費というものが増えるという前提で物事を考えていくのか,どう減らしていくかという発想で考えるのかで,大分これは違ってくると思っていて,新エネとか省エネを主張する私としては,どう減らしていくかという議論をすべきだと思う。それを一方のところに置いて判断をしていくならば,やはり先が見えないのに投資をするよりは,技術的にはある程度確立している,そしてそれが広まらないのはむしろ制度的な問題だというところの解決のほうに,向かっていったほうがよいのではないか思うわけです。

【石川】
 伴さんの主張少し分りづらいのですが,省エネとかコジェネ,そういうものは選択肢のうちなのだけれども,FBRは絶対いけないと言われるのですか。それともFBRも1つの選択肢だとおっしゃっておられるわけでしょうか。

【伴】
 いや,私は選択肢としては外してほしいと。

【石川】
 原子力反対だからね。それはご希望で。ただ,考え方としては選択肢として入ってもよいわけですね。

【伴】
 議論の中に,テーマに乗せることについてはもちろんそうです。初めからそれを排除してというようには思っていません。

【石川】
 非常にクリアーですね。茅さん,どうぞ。

【茅】
 時間がもう5時に近いので,議論するというつもりではなくて,いままで私が伺っていたところでの,このような理解でいいかということだけ伺いたいのですが。
 どういうことかと言うと,FBR自身がはたして必要か否かという問題について,中村融さんと伴さんの場合には,中村融さんの場合には安全度ができてくればあり得るのではないかということを言っておられますけれども,基本的には省エネルギー,あるいは新エネルギー,私は新エネルギーという言葉はあまり好きではないのですけれども,いずれにしても新エネルギー,そういったものでカバーできるはずだという考え方を持っておられる。それに対してFBRというものがやはり本質的には必要だと考えられる方は,結局資源的な側面として,ウラン資源の有効利用という面からも,それから他の自然エネルギーに対しても疑問があるためにFBRがやはり必要だと考えておられる。
 その場合,私が伺いたいのは,省エネルギー,新エネルギーということを伴さん,中村さんはFBRのいわば代わりの選択肢としてとっておられるのですけれども,ほかの方々はそれが唯一の選択肢,FBRがない場合の選択としては考えられないということで,FBRをサポートしておられるというように私はとっているのですが,それでよろしいかということなのですか。

【伴】
 結構です。

【中村(政)】
 おっしゃる通りです。

【茅】
 わかりました。

【木元(原子力委員会委員)】
 ちょっとすみません。もう時間がなくて恐縮です。

【石川】
 短くやって下さい。

【木元】
 大変今日は勉強になりました。私はこの核燃料サイクルの論議をする場合,もう少しもめるかと思ったのです。ところが本当に今日は,基本的にはスタンスの違いはあったにしても,大人の議論を聞かせていただいたという気がしています。今後またこれを展開させていただきたいと思うのですが。
 先ほど伴さんが口火を切られて,大変よいご提示があったのですが,伴さんのお話の中で1つ,原子力委員の立場から申しますと,「もんじゅ」のナトリウム漏れがあった時に,私どもは放射能は外部には漏れていないという情報しか手に入っていないし,中島先生も聞いていないとおっしゃった。だけど,伴さんはお持ちになっていらっしゃるというので,私も責任があるような気がして科技庁のほうに伺いましたら,ちょっとコメントしていただけるようなのです。やはり,これはこの場で出た話ですので,ここできちんとしていただきたいので,お願いできますか。

【石川】
 それを聞こうと思っていました。こちらへ来てください。すみませんが,お名前と職名を。

【武山(科学技術庁)】
 科学技術庁の原子炉規制課長の武山です。先ほど伴さんから2次系のナトリウムにもトリチウムが含まれていたというお話がありました。それは,厳密に伴さんは申されたと思います。「もんじゅ」の場合には,燃料の被覆管というのはステンレスでできていますので,燃料の中で生成したトリチウムがそのステンレスを通過して,微量ですけれども1次系のナトリウムに入ります。それを熱交換する際に,1次系からやはり2次系にまた微量のものが流れています。この辺りはわれわれ事故調査をした時にも承知していまして,事故調査の過程では,周辺環境のいろいろな資料を分析いたしました。その中でもトリチウムについて分析をしており,まったく通常時の場合と問題がないという結論を出していますし,その部分については5月23日の報告書に明記して,公表させていただいています。
 したがいまして,トリチウムが含まれていましたのは,2次系のナトリウムが床面に漏れた建物の中では確かに測定されましたが,周辺環境には有意なものは出ていないということです。

【石川】
 ありがとうございます。

【伴】
 異論あり。「周辺環境に出たけれども,それは測定できなかったから」というように言ってください。ダクトが破れて,外へナトリウムが漏れてまた巻き込んだというのがあるのですけれども,そういう過程で微量には出ている。ただ,それが少なくて拡散するために,測定器にはかからなかったというように言われたら,それは私はそう思います。けれども,外へは出ていないと。あの2次系の部屋の中だけだという話ですと,ちょっと異議を唱えたいと思います。

【小沢】
 そうですね。そういう言い方をするからいけないのよね。本当にあれがいけないよ。

【石川】
 武山さん。

【武山】
 申しわけございません。確かにまったく漏れていないかというと,そこのところの確証はありません。しかし……。

【小沢】
 測れなかったのね。

【武山】
 測れなかったと言うよりも,2次系に含まれているものそのものが非常に微量ですので,出たものがエアロゾルで,燃焼したものですから,ナトリウムがそのまま漏れたわけではありませんので,それは出ていないと言っても言い過ぎではないのではないかと,このように考えています。ですから,本当に厳密に言えば,微量分析のレベルで言えば,伴さんがおっしゃる通り多少は出ていたかもしれないということは認めることになりますけれども,有意なものではないということが真意です。

【石川】
 ありがとうございました。いまのような情報で,言い方のところに,納得の仕方に,多少差があるようですけれども,この件は終わりたいと思います。
 私の時計では5時1分,1分進んでいますので,ちょうどいま5時です。今日はこれでおしまいにしたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。
 それでは,今日は皆さん方参加していただいて,先ほど木元さんが言いましたように回ごとにこの円卓会議,意義ある議論ができるようになって来たと思いますし,今日も非常によく噛み合った議論が出たのではないだろうかと思っています。また,傍聴の皆さん方も長時間ありがとうございました。それでは,今日は
これで閉会させていただきます。

【事務局】
 それではこの辺で,本日の原子力政策円卓会議を終了させていただきたいと思います。円卓の先生方,長時間のご議論をありがとうございました。それから,傍聴の皆様方におかれましても,長時間ご清聴いただきましてありがとうございました。事務局より御礼を申し上げます。

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