原子力政策円卓会議(第1回〜第5回)における
論点整理

(1)エネルギーの中の原子力のあり方に関する議論

論  点

項  目

主  な  意  見

(1)-1 日本のエネルギー選択 (1)-1-1 エネルギー源の選択
  • エネルギー源の多様化は必要である。ただしその多様化したエネルギー源の中に原子力エネルギーを含めるのかどうかと言う議論には賛否両論がある。
  • 「原子力ありき」から始まるのではなく、「原子力がなぜあるのか。なぜ原子力か」という原点に立ち戻ることが重要である。
  • 石油価格の低落、規制緩和により化石燃料依存度が高まりつつある。原子力に対する根強い不安感が、原子力に対するモラトリアムを生み出しているが、エネルギー問題への対応はモラトリアムになってはならない。
  • エネルギー問題は安定供給と環境問題の2つの観点から長期的な視点を持って対応することが必要である。また、途上国および将来世代に対するエネルギー政策の議論が必要である。
(1)-1-2 再生可能エネルギーに対する意見
  • 再生可能エネルギーや省エネを進めるべきである。EUなどでは積極的に導入を促進しており、そのため産業振興等に貢献している。原子力政策の推進が再生可能エネルギーの導入促進を阻害している。
  • 再生可能エネルギーの役割は重要であり、将来に向けてその導入を促進していくべきであるものの、その技術面・コスト面などの制約により、早期の大量導入は困難である。将来的にも再生可能エネルギーのシェアを大きくすることは困難であり、本格的に取り組んだ場合でもシェアを何%までにできるか検討する必要がある。
  • 供給サイドでは新エネルギー等をうまく組み合わせることが重要であり、一定地域に過度に依存すべきではない。
(1)-1-3 原子力エネルギーに対する意見
  • 原子力利用の可能性について、原点に立ち戻って議論する必要がある。
  • 既存の世論調査結果(総理府、NHK)によれば、国民の原子力に対する容認率は下がりつつある。
  • 原子力が化石燃料の代替にはなり得ず、現在運転中のものは安定的に運転すべきだが、増設・拡大はすべきではない。政府のエネルギー需給見通しにおいて、原子力増設を前提としている点が問題である。
  • 原油価格の低減に伴う計画見直しもあっていいのではないか。
  • 原子力の必要性は認めるが、過去の政策・体制の反省を行い、どの程度原子力に依存するか検討する必要がある。
  • エネルギー源の多様化は必要である。ただしその多様化したエネルギー源の中に原子力エネルギーを含めるのかどうかと言う議論には賛否両論がある。
  • 放射性廃棄物の処理や安全性の問題があるため、原子力には反対である。
  • 原子力基本法第一条には「原子力利用の推進」が唱われているが、そのような前提での議論はできない。このような法の改正も視野に入れるべきである。
  • 原子力の発電量でのシェアは維持すべきであり、エネルギー消費が増えれば増設していくべきである。
  • 原子力に対する反対派の人は、絶対反対なのか、それとも安全面などに関する条件付きで反対なのかを明確にする必要がある。
  • プルサーマル計画やMOX、原発20機の増設などの計画は、猶予期間をおいて慎重に検討すべきである。また高速増殖炉は反対署名も集まっており、核不拡散上も問題なので見直すべきである。
(1)-1-4 エネルギー消費のあり方
  • エネルギー消費拡大路線の見直しが重要である。
  • 政府の2010年までの見通しでは、2%の経済成長、原子力モラトリアムを前提とすれば、2.7%の省エネルギーが必要とされている。年間2.7%の省エネルギーというのは、世界で最も省エネルギー化が進んだ石油危機直後の日本の省エネルギー率を越える値であり、このような省エネルギー化を進めるのは困難である。
  • 世論では、8割程度が生活水準は現状あるいは以前の生活水準で良いと言っている。つまりエネルギー需要は抑制の方向で考えても良いのではないか。
(1)-1-5 その他  
(1)-2 社会経済要因 (1)-2-1 エネルギー供給の安定性
  • 関西産業界では、エネルギー使用の効率化やリサイクルに努めているが、エネルギー消費量は増加する見通しであり、新たな電源は不可欠である。
  • 第三次石油ショックが起きれば、日本が如何にエネルギーを確保するかを本気で考える機会となる。
(1)-2-2 ライフスタイルの見直し
  • 大量生産・大量廃棄の社会のあり方を見直すとともに、原子力に頼らない新たな社会を我々は求めつつある過程にあるのではないか。
  • 市民の意思とは、「今までどおり電気を使い続けたい、しかし発電システムは安全であって欲しい。」ではないか。
  • 省エネのためにライフスタイルを改善することは、政策ですべきことではない。
(1)-2-3 経済の成長・安定
  • 政府の2010年までの見通しでは、2%の経済成長、原子力モラトリアムを前提とすれば、2.7%の省エネルギーが必要とされている。年間2.7%の省エネルギーというのは、世界で最も省エネルギー化が進んだ石油危機直後の日本の省エネルギー率を越える値であり、このような省エネルギー化を進めるのは困難である。
  • 政府見通しの前提である経済成長2%という値については、以下のような議論がある。
    • 需要横這いの前提に基づくものである。
    • 成長率が低いと、失業・年金の問題が出てくる。
    • 経済成長とエネルギー消費の伸びは同値ではく、経済とエネルギーのあり方の議論が必要である。
(1)-2-4 エネルギー源としての経済性
  • 化石燃料消費の制約がある。さらに、中国等のアジア諸国が日本並の産業力を有するようになった時、日本がこれまでのように石油が使えるのかという問題もある。将来にわたっての石油の入手可能性についても地元の納得を考慮するべきである。
  • 国際競争が激化している中、低コストで良質なエネルギーの確保は産業界にとって不可欠である。
(1)-2-5 環境影響(特に省エネ、CO2)
  • 原子力政策はエネルギー政策のみならず,温暖化対策等の環境政策、化石燃料消費の抑制問題等も組み合わせて総合的に判断されるべきである。
  • 省エネルギーについては以下の意見がある。
    • 原子力モラトリアムを前提とすれば、2.7%の省エネルギーが必要とされているが、このような省エネルギー化を進めるのは困難である。
    • 日本の若者は省エネルギーに無関心な層が多い。
    • 技術開発により、今後大幅な省エネを達成することが可能である。
    • エネルギー消費の増大を前提としない省エネルギー型の構築を図るべき。
  • 環境税に関しては多様な方法が考えられる。炭素税に関しては、税徴収対象のシフト、使用方法のシフトにより効果が得られるという意見と、省エネ効果は余り大きくないと言う意見がある。
  • 省エネは施策で実施すべきである。例えば石油価格が下降時にも省エネが進む政策や、NGOのような国民的運動支援など。
(1)-2-6 その他  
(1)-3 安全要因 (1)-3-1 技術的安全性
  • 安全性等の問題に対する適切な答えが提示されていないのではないか。我が国は高度な技術を保有しているにも関わらず、ソフト・システムの観点からみると弱い。推進側(政府、国、事業者)で安全性を立証する必要がある。
  • 原子力発電の現状を維持する場合でも、技術の継承は必要であり、技術基盤を維持する必要がある。
  • 原子力発電の安全性については、100%の安全はあり得ないという意見や、品質管理、安全装置の改善等により安全になっているという意見がある。また約1,000人が犠牲となっている航空機事故と比べて本当に危険なのかという問もある。
  • エネルギー資源が乏しい東アジア地域においては、今後原子力エネルギーへの依存が進むと考えられているが、安全面を考慮すると果たして適切な運営がなされるのか不安である。日本が協力できることは積極的に協力していくべきである。
(1)-3-2 核拡散の危険性
  • プルトニウムの利用については、社会的安全性も含め、核不拡散上も問題である。
  • 原子力に関しては、発電利用と兵器利用を混同して議論されているという問題がある。
(1)-3-3 その他  
(1)-4 その他  


(2)運営システム/情報開示に関する議論

論  点

項  目

主  な  意  見

(2)-1 原子力の運営システム・制度の運用 (2)-1-1 原子力委員会
  • 原子力委員会における議論のプロセスや活動内容が、国民全体から見えて理解してもらえるように、透明性を確保し、説明の責任をもたせるべきである。また、円卓会議における検討内容をぜひ政策に反映してほしい。
  • 原子力を含むエネルギー全体を対象とした「総合エネルギー委員会」のような組織を各省庁から独立した形で設立し、エネルギー政策全般に対する企画立案機能をもたせて、検討を行う方法が考えられる。逆に、「総合エネルギー委員会」は経済産業省の所管で十分という考え方もある。このように、「総合エネルギー委員会」に対するイメージは人によって様々であるため、まずはその機能について検討する必要がある。
  • 原子力委員会には、日本だけでなくアジア全体へのエネルギー安定供給に関する点など、幅広い観点から検討してほしい。また、今後の検討内容としては、放射性廃棄物、使用済燃料、廃炉などの点を重点的に行ってほしい。
  • 原子力委員会は科学技術庁や通商産業省に対するイニシアチブをとることが重要である。この点では内閣府に置かれることは評価できるし、さらには国会に原子力特別委員会を作る方法も考えられる。
  • 原子力委員会は単に産業界の追認をするだけであり、何もしてこなかったため、存在意義がない。廃止するべきという考え方もある。
  • 原子力政策についてなぜ原子力委員会という委員会形式で検討を行うのか、という原点に立ち戻って検討する必要があるとともに、原子力委員会そのものに対する評価が必要である。さらに立ち戻って、なぜ原子力が必要なのか、という点も検討が必要であるが、現在の原子力委員会もそのような点について検討する機能は備えている。
(2)-1-2 原子力安全委員会
  • 原子力安全委員会のダブルチェックは形骸化しており、1次審査はやめて2次審査を徹底的に実施するなど、規制を一元化するべきである。その際、米国のNRCのような強力な組織とする必要がある。
  • 安全規制行政については、規制の決定過程における透明性の確保と情報交流、効果的な規制の推進の方法と体制が必要である。
  • 安全委員会については個別の事業についてのみ規制するのではなく、安全についてより包括的に考えるようにすることが必要である。組織としては内閣府に移ることになるが、安全委員会については独立させた方が良いと考えられる。
(2)-1-3 原子力開発利用長期計画
  • 長計については「検討対象」「委員の選考方法」「運営方法」「政策判断の客観的方法論」「タイムテーブル設定の方法論」「長計自体に対する評価方法」について再検討が必要である。
  • 長計については、硬直的にならないように、複数の選択肢をもたせるなど柔軟性をもたせる必要がある。長計はこれまで適宜修正はされてきているものの、社会経済情勢の変化、技術開発の進展に追いついていないという見方もある。
  • 長計の役割は原子力政策のビジョンを示すことである。核燃料サイクルの将来を明確にした原子力開発利用長期計画の見直しを行ってほしい。
  • 長計の中で多様な技術開発について議論されているが、それが外から見えていない点が問題である。また、技術開発には試行錯誤が重要であり、段階的なチェック・アンド・レビューが行われることが必要である。
(2)-1-4 行政システム
  • 官僚機構や特殊法人などの組織の運営方法等のシステムに関する議論が必要であり、一般市民の視点も必要である。したがって、これらの運営システムを抜本的に見直すため、懇談会など第三者的な組織を設置し、政策評価を行うべきである。
  • 国の行政の縦割りを超えるため、横割り型の組織を考えるべきである。また、原子力行政については、個別省庁とは独立した組織が実施していくべきである。
  • 民主政治の枠の中で選挙で変わる人と長期的に検討する専門性を持った人の組合せはローマ時代からあった。官僚が政を乗っ取っているのは問題だが、官僚が政策決定プロセスを公開し、国民の意見を聞きながら進めるという方法が最良のシステムではないか。今後は、成熟社会への過渡期にある社会情勢、規制緩和への流れなどを踏まえて、行政システムのあり方について検討する必要がある。
  • 戦略とルールの中で市場を運営して行くべき。現状は、国家レベルで「官」が「公」を乗っ取っていることが問題。「官」は過去を絶えず正当化し、表面的な秩序を重視する傾向がある。日本的な「ムラ社会」には良い面もあるものの弊害もある。「公」の側面を重視すべきではないか。
  • 全原発に地元自治体の職員を24時間派遣し、事故の監視と自治体との連絡、通報を行わせ、将来は幹部に登用させるべきである。
  • 原発の推進側と、安全性をチェックする規制側とは分離独立するべきである。
(2)-1-5 政治システム
  • 原子力政策は原子力委員会ではなく、国権の最高機関である国会に原子力特別委員会を作り、集中的な論議を行うべきである。
  • 国会が国民を代表しており、原子力政策の意思決定を全て国民に直接委ねるという意見には反対である。原子力政策の決定プロセスを透明化し、説明責任を果たして民主主義を一歩一歩進めて行くべきではないか。また、現在の国会の状況を見る限り、国会に新たな組織を設けても機能しないのではないか。
  • 今日の原子力は基本的に政治の問題であり、この点を事業者は軽視してはならない。また、原子力にはもっと政治学、行政学の専門家が関与するべきである。
(2)-1-6 官民の役割
  • 原子力の運営体制について民間にまかせるべき部分と公共にまかせるべき部分がある。具体的には、原子力発電と使用済燃料貯蔵は民間にまかせるべきである。一方、環境・安全性の確保、長期的なエネルギー開発、平和利用への限定・核不拡散の推進などについては公共にまかせるべきである。
(2)-1-7 原子力政策円卓会議
  • 基本方針に「徹底した議論を行うこと」が挙げられているが、年度内で全5回の開催では決定的に時間が足りない。常設化の検討も含めて、来年度以降も継続して開催していくべきである。
  • 原子力委員会には、円卓会議における検討内容をぜひ政策に反映させてほしい。
  • 今回のような議論はそれ自体、数年前まではできなかったことを考えれば意義がある。
  • 円卓会議への出席者として、「専門家」とともに「素人」を含めるべきかどうかという議論がある。「素人」を含めるならば、「素人」に理解できる議事運営をする必要があり、女性参加者も増やすべきである。また、「専門家」の中には原子力推進派に偏らないように留意する必要がある。
  • 政府、原子力委員会、総合エネルギー調査会、国民等の関係を具体的に絵を描いて議論したほうがよい。絵を描くために、総合的に評価するための懇談会を設置するべきである。
(2)-1-8 専門家・利害関係者の役割
  • 運用については、専門家が採用可能な選択肢を複数用意して、議論を透明にして、ステークホルダー(利害関係者)の間で政治的な決着をつけることが現実的だ。これが代議制民主主義の基本である。
  • 原子力委員会では、エネルギー問題だけではなく、放射線利用などの広い分野について議論している。各省にまたがる領域を統合して判断し、ものを言うには、少なくとも5人の見識を持った人が必要。原子力委員会については、内閣府に移った後に十分な機能が果たせるよう運営の改革を行い、国民に見えるようにしていくことが重要。
  • 専門家がいないと議論はできない。しかし、事業者、行政、学識者等の利害関係者が原子力政策の議論に参加すると、推進が議論の前提となる。利害関係者以外で、原子力についてよく勉強している人が議論に参加すればいい。
  • 専門家はみな推進派となっている印象がある。また、原子力推進派の掲げる理念には反論が難しい状況がある。「素人」は議論をする余地がない。
  • 今日の原子力は基本的に政治の問題であり、この点を事業者は軽視してはならない。また、原子力にはもっと政治学、行政学の専門家が関与すべき。例えば住民投票を例に取ると、我が国の現行の議会制民主主義の枠の中では、住民投票は補完的なものに過ぎないことを認識すべきだろう。
(2)-1-9 国民・市民意見の反映システム
  • 政策決定システムに市民の意思がより反映されなくてはならない。そのための体制として、全国民的な議論の場を設けるなどの方法が考えられる。
  • 原子力政策について全国民的な議論の場を設けてもまとまらないし、仮にまとまれば大政翼賛会になる。また、市民も方針を誤る可能性があることも念頭に置く必要がある。
  • 原子力政策に関する情報提供に関して、なかなか市民には理解が難しいと考えられがちだが、やり方次第では理解できるのではないか。その工夫が必要である。
(2)-1-10 原子力災害対策システム(追加)
  • 行政改革の中で、原子力委員会、原子力安全委員会が内閣府に移行するが、国民が安心してまかせられる組織とし、安全対策の充実・強化が図られるべきである。原子力災害では広域にわたり被害が及ぶため、国の責任を明確にした特別措置法が作られるべきである。
  • 事故が起きた場合、通報遅れの問題を解決するため、自治体自身が異常を発見できるようなシステム作り(自治体によるモニタリングシステムおよび原因究明システム)が必要ではないか?
(2)-1-11 その他
  • 石油危機、経済成長等の社会状況が変化しても、原発の設備容量は年2基のペースで直線的に増えてきた。原子力政策は変わらない点、政策決定システムがわかりにくい点が問題ではないか。
  • 現状の運営システムを抜本的に見直すべきという考え方がある。その反対に、新たなシステムを構築すれば状況が改善されるという考えには疑問とする意見もある。
  • 電力会社は、需要が伸びないと会社として成立しないという問題を抱えているのではないか。電力会社のシステムのあり方を考えるべきではないか。
(2)-2 情報開示のあり方 (2)-2-1 発信側の役割
  • 現状の情報公開はまだ不十分である。情報に客観性をもたせるとともに、アクセスの自由度を高め、前提条件等も含めて分かりやすく、繰り返して情報を開示する事が必要である。
  • 間違いを恐れず、必要な時に迅速な情報提供を行うことが重要である。間違えたら、後で訂正すれば良いと考えることも必要である。公開できない場合にはその理由を正直に言えば良い。
  • フランスでは、原発の広報部長が独立した権限を持ち、全ての情報が広報部長に集まるようになっている。日本のように現場と本社、現場と役所を頻繁にやりとりしていると、遅れるのは当然で、日本でも工夫の必要がある。
  • 情報公開こそ最も重要なものであるといっても、原子力に関しては、事故などのリスク情報のみがマスコミに取り上げられ、ポジティブな情報は取り上げられない。情報の受け手が備えるべき節度の重要性も訴えたい。
  • 原子力について全国民的な議論の必要性の提案があったが、全国的に議論をしてもまとまらないし、まとまれば大政翼賛会になる。原子力政策の決定を国民に委ねる様な意見もあるが、国民は新聞等マスメディアに影響を受けやすく、新聞が必ずしも正しいとは限らない。
(2)-2-2 マスコミの役割
  • 正確な情報の提供は当然だが、世論を形成するマスコミは情報をきちんと伝達することも重要である。出し手、伝達者、受け手の3者とも改める必要がある。マスメディアの誤情報・誤報道に対し反論や反証していく姿勢が必要である。
(2)-2-3 受け手側の役割
  • 市民側から、どの程度のリスクならば十分安全と考えるのかを逆に提示することが必要である。
(2)-2-4 発信情報の内容
  • 議論をしていても互いの根拠とするデータが異なる点が問題となることが多いことからデータは検証可能なものでなければならない。しかし現状の公開データだけでの検証は無理である。
  • 情報公開については、「技術の部分ではきちんとしている」「情報量は多いが信頼性が低い」「前提条件等データの中身がわかりにくい」「部分的に公開されていない情報があり特に経済性に係わるものが少ない」等の意見がある。
  • 国際条約もあり、必ずしも全ての情報公開が可能なわけではなく、その場合には理由を正直に言えば良い。意識改革、カルチャーがどのように変わっているかを外に向けて堂々と発言することも必要である。しかし、それに紛れて意味が不明なまま非公開とされている情報があることも事実である。
(2)-2-5 原子力PA
  • 国民の大部分は、原子力に対し「良く分からないが不安」というイメージを持っており、そのような人々への説明が重要である。安全でないものを、どう安全に使っていくかの説明が必要である。
(2)-2-6 その他
  • 日本は原発のリスクを隠すという体質があると思われるが、リスクを公開しながら、引き受けるという考え方について議論を行う必要があるのではないか。
  • 現在、国の法律として「情報公開法」が無いのは大きな問題だ。法律が無ければ情報の請求を行うことができないし、そのような環境で原子力関係者が「(情報を)公開しています、これからも公開を進めます。」と言っても説得力がない。現在、法律化が進められている「情報公開法」は例外規定ばかりで話にならない。
(2)-3 社会が安心する為の要因
  • 嘘をつかないシステムづくりが必要である。マスコミに叩かれることや、納期が遅れることを怖がらず、経済性や利益追求よりも安全性を優先すべきである。 マスコミに叩かれたくない、あるいは納期を守ろうと考えるのはこの社会では普通のことではあるが、違約金など、嘘をついた結果、社会的に拒否されるようなシステム作りが必要である。企業や政府による理解も必要である。
  • 安全性については、「安全」と説明する人間のパーソナリティ、その人への信頼感が重要である。スポークスマンには一番有能な人を充てるべきで、年季の入った人、安心できる人を現場に張り付けてほしい。
  • 国民の大部分は、原子力に対し「良く分からないが不安」というイメージを持っている。どのように安全性が保たれているのか等、人々が知りたい情報を分かり易く提示してほしい。また、その仕組みを信頼性の高いものにしてほしい。
  • 原子力発電所からの災害を想定して、広域、かつ住民を含めた防災訓練を実施すべき。そのことによって、住民の生活の中に原子力発電をきちんと位置づけることにも繋がるのではないか。
(2)-4 立地・振興に関連した制度の運用 (2)-4-1 電源三法交付金
  • 電源三法交付金を地域振興に活かすべきという考え方と、あくまでも全国的な国土開発の一環として行うべきとの考え方がある。
  • 交付金等の使途については、例えば、鉄道の電化や国道の整備などに使いたいが、現状は使途制限が厳しい。
  • 立地地域と周辺地域で交付金がもらえる、もらえないの問題がある。また、発電所の運転期間のみが交付の対象期間とされているが、解体、撤去の期間も交付期間に含まれるべきである。
  • 電気料金の割引は有効であるが、現状一家庭当たり千円程度であり、少額である。また、全県への適用実現も要望する。
  • 三法交付金制度を一旦やめて地域全体の産業基盤や生活基盤を上げる交付金とするというようなことを考えるのが原子力委員会の役目である。金をばらまく政策をやめて、原子力委員会は廃棄物、廃炉対策、使用済燃料に重点を置いていくべきである。
(2)-4-2 電源開発促進税
  • 現状では、消費者が電源開発促進税をいくら課税されているのか分からない。このことは生産地の本当の痛みを消費地が理解する上で問題である。電源開発促進税を(電気料金の)領収書に明記したり、TVなどを活用して広報すればよい。
(2)-4-3 その他
  • 地域振興においては、まず地方自治体のビジョンがあって、それに対して交付金が必要という考えが重要である。積極的に地元から「こうしたい」というビジョンを出す事が重要である。
  • 原子力の立地問題は、経済性、安全性、コミュニケーション、政治等々、多岐にわたる問題であることに留意してほしい。
  • 原子力発電所の立地に当たっての許認可に知事と市町村長の同意を義務付けるべき。また、立地については、申請者と自治体のみの問題であり、国は関与すべきでない。
  • 原子力発電の公開ヒアリングは、形式化している。立地に当たって1年位とことん議論すべき。
(2)-5 その他
  • 原子力発電所の立地の民主化のため、一人一人の市民の意思表示ができる制度として、法的な拘束力を持つ住民投票を検討、活用すべきである。制度を保証し、その効力をどう評価するのかは、政治が決める。


(3)立地のあり方に関する議論

論  点

項  目

主  な  意  見

(3)-1 地域の経済的利益
  • 立地地域とこれに隣接する周辺地域の地域振興の格差が大きい。恒久的な地域振興策や核燃料税の引き上げを考えてほしい。
  • 地域振興策については、積極的に地元から「こうしたい」というビジョンを出す事が重要である。
  • 敦賀では港の整備、高速道路、鉄道の電化等の問題があり、それらの地域振興策について国全体として議論してほしい。
(3)-2 立地に対する住民感情
  • 原子力発電の立地は国民全体で受け入れるべき国策である。敦賀市はその立地に協力しているにもかかわらず、原子力関連のトラブルが起き、地元ばかりが苦しんでいるというという不平等がある。
(3)-3 電源立地地域vs.消費地の問題
  • 消費地の者として、栗田知事、河瀬市長にお礼を言いたい。関西の産業界としては福井県との交流を進めていきたい。
  • 生産地と消費地の両者間の対話をもっと行い、消費地は生産地の痛みをより理解し、消費地の者がエネルギー消費、電力消費についてもっと自覚することが必要である。
  • 生産地の中でも住民の間に温度差がある。両者の対話がもっと必要である。
  • 電力生産地、電力消費地の問題に対しては、1:2程度の電力料金格差を設けるべきである。
(3)-4 その他
  • 原子力の立地問題は、経済性、安全性、コミュニケーション、政治等々、多岐にわたる問題であることに留意してほしい。
  • 地元で住民参加型で進めていく方が重要ではないか。
  • 将来の原子力発電の新規立地を考えると、敦賀市を見た他の都市が「このような状況では問題である」と思ってしまうことは良くないのではないか。既存の立地地域が良くならない限り、立地は進まない。


(4)その他

論  点

項  目

主  な  意  見

(4)-1 環境・エネルギー教育
  • 学校教育でより原子力を取り上げて、将来を担う子供に対して教育を行い知識を広めるべきだ。
  • 「原子力」という言葉が非日常的な分野で語られることがおかしい。より日常的な中で原子力が語られるような状況にまで持っていきたい。
  • 日本の若者は省エネルギーに無関心な層が多く、電気の利便性の享受はするが、それを得るためのプロセスには関心が低い。ただ経験がない分、省エネを神聖な面白いものと捉えることができるかもしれない。
  • 日経の調査では、特に20代の若者が将来について暗い予測をしている。しかし、努力する意志はあるはずであり、それを活かすために必要な制度、仕組みについて議論をすべきではないか。
(4)-2 現世代の責任、次世代への負担
  • 原子力発電は放射性廃棄物の問題もあり、エネルギー政策は次世代への責任も考えて決定されるべきである。
  • 廃炉については、既に世界で十数台の実績がある。日本でも既に経験もあり、その費用も建設費の1割程度で、必ずしも次世代への負担にはならない。また、原子力発電所から排出される廃棄物の量も非常に少ないため、それなりにお金をかけて、しっかり処理することが可能だ。
  • 廃炉済となっているのは、数百あるうちの十数台であり、残りのものについて今後の処理が問題。
(4)-3 国際的視点
  • 日本の常識と海外の常識とは大きなギャップがある。
  • 日本だけでなくアジア全体へのエネルギーの安定供給も考慮すると、今後原子力エネルギーへの依存が進むと考えられている。安全保障も踏まえて、協力できることは積極的に協力していくべきである。
  • 政府のエネルギー需給見通しが"原子力増設ありき"なのが問題。今日の議論では、増設賛成の人は少なかったのではないか。欧米では、原発は減少傾向にあるが、この現実をどう見るのか。
  • 中国等のアジア諸国が日本並の産業力を有するようになった時、日本がこれまでのように石油が使えるのかという問題もある。将来にわたっての石油の入手可能性について検討すべきであり、低コストで良質なエネルギーの確保は産業界にとって不可欠である。
(4)-4 歴史的視点
  • 原子力の半世紀の歴史を検証し、問題点を抽出した後に、議論すべきではないか。また原子力の運営体制について各時点で最善の判断がなされたか考察を行うことも重要である。
    評価方法については、タイムフレームなどの枠組みを定める必要がある。
  • 20世紀は人口の増加、エレクトロニクス等の科学技術の発展が急激に進んだ時代だった。その結果、エネルギー消費も大幅に伸び、「環境」と「人間の営み」のぶつかり合い(Conflict)が激化してきた時代でもある。
  • 超伝導技術の実用化や米ソのデタントにより核兵器が不要になった等の例からも分かるように、現在の知識、状況から先の事を決めてしまうのが良くない。
  • 日本では、問題が生じても「なし崩し的に元に戻る」という現象が起こる。過去を風化させないための方法を考えるべき。
  • 第三次石油ショックが起きれば、日本が如何にエネルギーを確保するかを本気で考える機会となる。
(4)-5 文化・社会的視点
  • 日本の常識と海外の常識とは大きなギャップがある。
  • 日本はムラ社会であるが、その弊害を認識して、見直そうとすることが重要である。
  • 日本では「タテマエ」と「本音」、即ちダブルスタンダードが固定化している。このことが電力コスト、原子力の立地問題に対して顕著である。
  • 日本には「見えるもの」が過剰に重視される一方、「見えないもの」が軽視される、いわば物神信仰がある。このことが特に原子力の事故という危機へのリアリティを欠いている背景となっている。
  • 日本の社会の中で、支配的な操作意識、愚民意識に代表される「トップダウン社会観」と、近年の市民派に代表される「ボトムアップ社会観」という2つの社会観がある。これら2つの社会観をすり合わせる努力が希薄である。
(4)-6 女性の役割
  • 原子力に関する有識者の調査が行われた際、女性の比率は3%だけであった。本当に国民の総意を得るつもりなのであれば、女性がもっと参加する必要がある。
  • 肩書きや専門性から人を選ぶと結果として女性が少なくなる。選ぶ基準を非専門家で、バックグランドを問わずに選べば女性は増える。
  • 生活者としての専門家という部分もある。
  • 日本でも世界でも、初期段階では原子力の光の部分が取り上げられていたが、最近は影の部分が取り上げられている。なぜそうなったのかの問い直しが必要である。
(4)-7 その他
  • 個々の問題を議論していけば、非常に細かくなる。総合的な議論をすべきである。
  • 議論をかみ合わせるためには、テーマを決めて議論すべきである。