省庁再編後における原子力委員会の在り方

平成10年12月15日
原子力委員会

今次の行政改革において、原子力委員会は、国政上重要な具体的事項に関する企画立案及び総合調整の機能を担う内閣府に置かれ、従前の機能を継続していくこととされており、当委員会としては、この点を踏まえ、省庁再編後の原子力委員会のあり方について、以下のように見解をとりまとめた。

1.原子力委員会に期待される役割
近時、原子力行政は、我が国におけるエネルギー利用の分野にとどまらず、先端科学技術、地球環境、核不拡散、医療、食品安全等、多岐にわたる分野への広がりを持ち、官民の適切な役割分担により、地球規模の視点から総合的に推進していくべき高度な行政分野となってきている。このような傾向は、21世紀には更に強まるものと考えられるため、当委員会は、各省の活動全般を一段高い立場から俯瞰し、民間活動の自主性を尊重しつつ、国全体としての総合戦略を描くとともに、国内外の情勢の変化に一層的確に対応できるよう、柔軟な政策運営を確保することが求められる。

2.原子力委員会に求められる機能
(1)政策の企画・立案機能の強化
当委員会は、各種の専門部会、懇談会等を活用して、幅広い有識者の参加を得て、原子力開発利用に関する政策の企画・立案を行っている。今後の原子力行政の高度化と裾野の広がりに対応し、国民や社会の期待に的確に応えられるよう、原子力開発利用の新たな展開を図っていく必要がある。このため、21世紀を見通して原子力開発利用の全体像と長期展望が明らかになるよう、組織や機関の壁を越えて国民の意識やニーズを的確に把握し、また、国内外の動向を視野に入れた総合的な分析・評価を行い、これらを踏まえた政策の企画・立案機能を強化していく必要がある。

(2)総合調整機能の強化
政策の企画・立案機能と総合調整機能のそれぞれがより効果を発揮するためには、本来両者が相互に深く連携し合い、一体的でなければならない。このため、重要課題が山積する今後の原子力開発利用の推進に当たっては、政府全体として整合性のとれた効果的な取組みが可能となるよう、政策の企画・立案機能とともに、総合調整機能を強化していく必要がある。

(3)評価機能の強化
原子力の研究開発活動等には、一般に長期にわたる比較的規模の大きな投資が必要とされるため、国民の期待に応えられる十分な成果を上げることが厳しく求められる。当委員会は、これまでも、専門部会等において個別分野毎に評価を実施するとともに、長期計画等の調査審議の中でこれらの議論を集約した政策の企画・立案に努力してきたが、今後、原子力の研究開発活動等を直接担う実施機関とは独立した第三者的な立場から、国の投資の対象となる活動について、幅広い分野の衆知を集め、中立的・客観的な評価を行う機能を強化していく必要がある。

(4)国民各界各層からの公聴機能の強化
当委員会は、政策の決定過程の透明性を向上させる観点から、国民各界各層からの幅広い意見を原子力政策に反映すべく、原子力政策円卓会議を開催するとともに、委員会、専門部会等を公開し、報告書の取りまとめに当たって国民の意見を募集するなどにより、開かれた原子力行政を目指しているところである。今後、原子力に対する国民の理解と信頼が得られるよう、原子力行政のより一層の民主的な運営を確保するとともに、政策の企画・立案機能の強化を図るため、国民各界各層からの公聴機能を強化していく必要がある。

3.事務局の構成及び規模
今次の行政改革により、原子力委員会が内閣府に置かれ、各省から独立した機能を担うことに伴い、原子力委員会の機能が十全に果たされるようにするためには、事務局に関し以下のような事項について十分な配慮が必要である。

○原子力委員会の機能を強化するため、専任の高いレベルの統括者を置く。
○事務局員を人員面で充実する。
○関係省からの行政職員とともに、産学からの人材を幅広く登用する。
○繁忙時に追加の人員を登用することができるよう、柔軟な体制を構築する。
○調査・情報収集機能の充実のため、委託調査費等の予算を十分確保し、政府内外の調査研究機関との連携・協力を確保する。

4.その他
大学における研究の自由と自主性及び他の研究分野とのバランスを確保する趣旨で昭和30年に提案された、いわゆる矢内原原則については、今次の行政改革を機会に改めて検討することが適当であり、従って、当時(衆)科学技術振興対策特別委員会及び(参)内閣委員会において決議された「原子力委員会設置法に対する国会の附帯決議」の取り扱いについて、今後真剣な検討が行われることを期待する。