1998.12.1
文責 原子力政策円卓会議事務局
第3回 原子力政策円卓会議 議事速報
1.開催日時:1998年11月24日(火) 13:30〜17:00
2.開催場所:(財)福井県若狭湾エネルギー研究センター(福井県敦賀市長谷64-52-1)
3.議題:「今後の原子力立地のあり方について」
4.出席者:
モデレーター
石川 迪夫 原子力発電技術機構特別顧問
茅 陽一 慶應義塾大学教授(司会)
木村 孟 学位授与機構長(副司会)
中島 篤之助 元中央大学教授
オブザーバー
木元 教子 原子力委員会委員
招へい者
角田 禮子 関西消費者連合会 会長
河瀬 一治 敦賀市長
栗田 幸雄 福井県知事
田中 靖政 学習院大学法学部 教授
長谷 登 (社)関西経済連合会 地球環境・エネルギー委員会副委員長
住友金属工業株式会社 代表取締役副社長
原 強 京都消費者団体連絡協議会 代表幹事
5.議事の概要
- 木村モデレータ座長より前回傍聴者意見および公募意見を紹介。
- 今回の円卓会議司会:茅、副司会:木村。
- 招へい者6人が10〜15分程度のプレゼンテーションを行った後に、自由討論。
6.発言要旨
○司会より、スケジュールの確認、今回の円卓会議のテーマを紹介。
○ 招へい者からのプレゼンテーション
角田
- 消費地の者として、まず、栗田知事、河瀬市長にお礼を言いたい。
- 大阪では堺や大阪南港等に火力発電所はあるが、これでは電力の需要を賄いきれず、52%を福井県からの電力に依存。
- 消費地の者がエネルギー消費、電力消費についてもっと自覚することが必要。石油ショックから25年経過したが、消費者はエネルギー多消費型のライフスタイルを改める気持ちを忘れかけているのではないか。
- 情報開示は国民に対して分かり易く、繰り返し行われることが必要。
- エネルギー教育が重要である。昔は物の大切さ、資源の大切さを教えられてきたが、今、学校で原子力教育はタブー視されている。大人よりも将来を担う子供に対して教育を行った方がよい。
河瀬
- 原子力発電の立地は国民全体で受け入れるべき国策である。敦賀市はその立地に協力しているにもかかわらず、原子力関連のトラブルが起き、地元ばかりが苦しんでいるというという不平等がある。
- 電源三法の交付金は、原子力発電所の設置時の期待からはずれている。法の主旨にのっとり、制度を改善して頂きたい。
- 将来の原子力発電の新規立地を考えると、敦賀市を見た他の都市が「このような状況では問題である」と思ってしまうことは良くないのではないか。
- 電源三法では発電所の運転期間のみが交付の対象期間とされているが、解体、撤去の期間も交付期間に含まれるべき。また、原子力発電所にかかる固定資産税も年々減少していくという問題がある。したがって電気料金の割引が最も効果があると考える。
・ 行政改革の中で、原子力委員会、原子力安全委員会が内閣府に移行するが、国民が安心してまかせられる組織とし、安全対策の充実・強化が図られるべき。また、防災対策も国として責任を持って進めていくべき。
栗田
- 円卓会議については、その常設化と、今後の原子力政策に具体的に提案を行っていくものにして頂きたい。
- 核燃料サイクルの将来を明確にした原子力開発利用長期計画の見直しを行ってほしい。
- 原子力発電に関しては、過去のデータの改ざんは国民の不信感を増幅させた。国民に安心感を与え、不信感を取り除くことが必要。
- 原子力災害では広域にわたり被害が及ぶため、国の責任を明確にした特別措置法が作られるべき。
- 立地地域とこれに隣接する周辺地域の地域振興の格差が大きい。恒久的な地域振興策や核燃料税の引き上げを考えて頂きたい。
・ 危険施設が集積しているということで電力生産地のイメージが悪くなっているのは遺憾。生産地と消費地の共生という観点で、消費地は生産地の痛みをより理解することが必要。
・原子力政策は国家的な課題であり、より強力な広報や教育を行ってほしい。
田中
- 原子力の立地問題は、経済性、安全性、コミュニケーション、政治等々、多岐にわたる問題であることに留意してほしい。
- COP3以降、化石燃料消費の制約の問題がある。一方、中国、インド、インドネシア等といった諸国が日本並の産業力を有するようになった時、日本がこれまでのように石油が使えるのかという問題もある。そのような将来にわたっての石油の入手可能性についても地元の納得を考慮するべき。
- 情報は意思決定・判断を行うために必要であり、正確な情報の開示が必要。10年前に比べると、この点に関する日本の文化、企業文化が改善されてきたのではないか。
- 今日の原子力は基本的に政治の問題であり、この点を事業者は軽視してはならない。また、原子力にはもっと政治学、行政学の専門家が関与すべき。例えば住民投票を例に取ると、我が国の現行の議会制民主主義の枠の中では、住民投票は補完的なものに過ぎないことを認識すべきだろう。
- 安全性を検査する機関に不祥事が起こり、不信が広がっている。科学者・技術者が反省するだけでなく、透明性を増すように機構を変えていかなければならない。
長谷
- 国際競争が激化している中、低コストで良質なエネルギーの確保は産業界にとって不可欠。
- 大阪のみならず、関西地域全体で見ても電力は福井県に大きく依存。
- COP3を受け、関西産業界では、エネルギー使用の効率化やリサイクルに努めている。それでも、将来にわたってエネルギー消費量は増加する見通しであり、新たな電源は不可欠。
- 関西の産業界としては福井県との交流を進めていきたい。
- 供給サイドでは新エネルギー等をうまく組み合わせることが重要。一定地域に過度に依存すべきではない。
原
- 電源三法ができてから25年が経過したが、原発立地が進んでいない。ここでその有効性について検証する必要がある。現状では本制度について、開示されていない情報が多く、消費者が電源開発促進税をいくら課税されているのか分からない。このような状況では、生産地の本当の痛みを、消費地が理解することは不可能。
- 原子力発電所の立地の民主化が必要。そのために住民投票制度がもっと活用されるべき。
- 原子力発電所からの災害を想定して、広域、かつ住民を含めた防災訓練を実施すべき。そのことによって、住民の生活の中に原子力発電をきちんと位置づけることにも繋がるのではないか。
<<司会進行役コメント>>
- 前半の招へい者のプレゼンテーションのポイントは、地域振興と消費地の理解、意志決定・情報公開のシステムについてであった。地域振興については、現行の電源三法制度が十分かどうかという観点から、増税や電気料金の引き下げといった提案があった。また、この様な仕組みを消費地でも理解できるようにすべきとの意見もあった。
- また、意思決定・情報公開システムについては、科学的・専門的な情報を分かり易く説明できるような専門家集団や、ウソのつけないシステムの構築について意見があった。
○自由討議
以降の自由討議での発言については以下の枠組みで整理した。この枠組みは、一昨年度行われた原子力政策円卓会議での経緯も踏まえて、我が国における原子力政策のあり方に関する議論について、その共通の土俵とするために設定したものである。
議論1:エネルギーの中の原子力のあり方に関する議論
我が国としての原子力の選択に関する基本的なテーマである。ここでの議論は主として、社会経済要因と安全要因に関するものとなる。これらを通じて一義的には国としての方向性を考えることになる。
議論2:運営システム/情報開示に関する議論
具体的な原子力開発・利用にあたっての運営と国民的コンセンサスを得るための手続き(情報開示等)に関するテーマである。情報開示の内容については、安全性に関するものが主であり、これに運営システムについての内容が含まれる。
議論3:立地のあり方に関する議論
原子力施設の立地に関する経済的利益と安心感を含む住民感情等、地域住民の選択のプロセスに関するものである。
議論2:運営システム/情報開示に関する議論[情報開示・安心]
- 安心と安全を結びつける手だてを考えてほしい。ウソをつかない情報公開のシステムとは具体的にどのようなものか。
- 嘘をつかないシステムづくりが必要。マスコミに叩かれることや、納期が遅れることを怖がらず、経済性や利益追求よりも安全性を優先すべき。
- マスコミに叩かれたくない、あるいは納期を守ろうと考えるのは、この社会では普通のことではないか。そうしないための具体的対策はあるのか?
- 違約金など、嘘をついた結果、社会的に拒否されるようなシステム作りが必要。経済とモラルとの間のギャップを埋める必要がある。また、企業や政府による理解も必要。
- 正確な情報の提供は当然だが、情報をきちんと伝達することも重要。出し手、伝達者、受け手の3者とも改める必要がある。
- 情報公開にはテクニックが必要。公開できない場合には、その理由を正直に言えば良い。意識改革、カルチャーがどのように変わっているかを外に向けて堂々と発言することも必要。また、マスメディアの誤情報・誤報道に対し反論や反証していく姿勢が必要。
- 「隠す」ことが、結果的に原子力行政を阻害してきたという意識を現場の人間に理解してもらうことが必要。組織改革よりもむしろ意識改革が必要。
- 原子力の安全性については、「安全」と説明する人間のパーソナリティが重要。どのような人が、どのような風に説明するかが問われる。
- 意識改革、説明する人への信頼感が重要。
- 事故が起きた場合、通報遅れの問題を解決するため、自治体自身が異常を発見できるようなシステム作り(自治体によるモニタリングシステム)が必要ではないか? ただし、専門家の不在が問題点となろう。
- 火力発電所からの汚染物質については、自治体にもモニタリングシステムが存在。
- モニタリングだけでなく、原因を解明することが重要。
- 間違いを恐れず、必要な時に迅速な情報提供を行うことが重要。間違えたら、後で訂正すれば良いと考えることも必要。
- 原稿やVTRの締め切り時間があることなど、マスコミ側の事情も考慮すべき。わかっていることをタイムリーにマスコミに対して話すことが大切。
- フランスでは、原発の広報部長が独立した権限を持ち、全ての情報が広報部長に集まるようになっている。日本のように現場と本社、現場と役所を頻繁にやりとりしていると、遅れるのは当然で、日本でも工夫の必要がある。
- 第一報は「原因を調査します」だけでよい。あたふたするな。
- 受け手側も、小さな事故の場合は冷静に受け止めるようにしなければいけない。
- 放射能漏れのモニタリングシステムなど、他県に比べ福井県はよく取り組んでいる。県庁の職員として専門家を育てておくべき。
- 電力でも国でも、自分たちを代表して広報を行うべきという意識が必要。スポークスマンには一番有能な人を充てるべき。年季の入った人、安心できる人を現場に張り付けてほしい。
- 一人一人の市民の意志表示ができる制度として、法的な拘束力を持つ住民投票を検討すべき。制度を保証し、その効力をどう評価するのかは、政治が決める。
議論3:立地のあり方に関する議論[地域の経済的利益]
電源三法の問題点としては、原発が着工しないと交付金等が入ってこないこと、その使途に制限があることなどであり、弾力的に使用できるようにすべき。立地交付金は、地方公共団体に交付されているのは3割程度であり、残りは外郭団体等で使われている部分もある。交付金等の使途については、例えば、鉄道の電化や国道の整備などに使いたい。核燃料税の税率アップ、原発立地地域の電気料金引き下げを要望。交付金等については原発の運転中だけでなく廃炉期間中も交付して欲しい。
- 電源三法は使途の限定が厳しい。また、予定されていた原子力発電所が完成した後は、尻すぼみで無くなってしまうのは問題。
- 現在の電源三法の制度については、消費者に税金をとられているという意識がない。交付金に使いにくい面があることなどから、電源三法は全体を見直す必要がある。
- 現行の電気料金の引き下げは、一家庭につき千円程度であり、少額。
- 立地問題については、関経連でも福井県の方も含め議論することになっている。電力業界に働きかけたい。
- 実現して欲しい。
- 電気料金の引き下げについては、全県適用の実現を要望したい。
- 地域振興において、まず地方自治体のビジョンがあって、それに対して交付金が必要という考えが重要。
- 地域ビジョンとしては、鉄道や道路整備、また観光に重点を置くプランがあり、若狭湾エネルギー研究センターについても中核をなすもの。
- 市レベルのビジョンとして、総合計画を作成。
- 電源三法に絞って円卓会議で十分に議論して欲しい。多様化勘定が余っているなら、新エネルギーの開発を行ってはどうか。
- 役所の資料で確認した方がいいが、新エネルギー開発にも使っているはず。
- 消費者が立地にどの程度負担しているかを見えるようにするのには具体的にはどうするのか。
- 電源開発促進税を(電気料金の)領収書に明記するのが有効。
- TVなどを活用して広報すればよい。
- 科学技術庁や通産省だけでなく、国として立地地域にどのようなサポートをしていくかが重要。内閣に原子力行政を進める部署をつくって全体として進めていくべき。
- もう少し具体的に地元から策を示すことが国民の理解を得るためには重要。
- ビジョンをどんどん出してほしい。「こうしてほしい」ではなく、「こうしたい」と言うことが重要。
- 原発が新規に出来る場合は国の電源立地部会で地域振興策が議論されるが、既存の立地地域が良くならない限り、立地は進まない。
- 地元で住民参加型で進めていく方が重要ではないか。
- 敦賀では港の整備、高速道路、鉄道の電化等の問題があり、それらの地域振興策について国全体として議論してほしい。
- 国の行政の縦割りを超えるため、横割り型の組織を考えるべき。
- 立地地域と周辺地域で交付金がもらえる、もらえないの問題がある。嶺南地域に共通の問題として考えてもらいたい。
<<司会進行役総括>>
- 「地域振興」については、現在の制度見直しが必要で、柔軟な運用が可能な制度が必要。また、消費者が負担していることを理解できるよう説明していくべき。
- 「情報公開」については、意識改革の必要性、安全性を優先する考え方についての指摘がなされた。広報では出し手側だけでなく受け手の対応も含めて、間違いを修正できるシステムが必要。
- その他としては、原発の稼働状況等のモニタリング装置の外部への設置、速やかな情報公開、広報のありかたなどについて議論がなされた。
●本資料は原子力政策円卓会議事務局の責任で作成したものであり、速報版のため内容に不十分な点が含まれ得ますことを、あらかじめお断りします。
●詳細な議事録につきましては、発言者の校正・確認を経た後、速やかに公開致します。