第3回原子力政策円卓会議 議事録

第3回原子力政策円卓会議

1.開催日時

1998年11月24日(火) 13:30〜17:00

2.開催場所

(財)福井県若狭湾エネルギー研究センター(福井県敦賀市)

3.議題

「今後の原子力立地のあり方について」

4.出席者(敬称略)

 モデレーター

 オブザーバー

 招へい者

5.議事録

【事務局】
 大変お待たせしました。定刻になりましたので,ただいまより平成10年度第3回原子力政策円卓会議を始めさせていただきたいと思います。本日はご多忙の中,傍聴の方々をはじめ多数ご参加いただきまして大変ありがとうございます。
 開会に先立ちまして事務局よりお願いがあります。本日の円卓会議では招へい者の方々やモデレーターの先生方による円卓での原子力問題に関するさまざまなご議論が期待されていますので,傍聴の皆様方におかれましては大変恐縮ですが,大きな声でお話しになったり,ヤジを飛ばすといったような議事進行の妨げになるような行為はぜひご遠慮いただきたく,よろしくご協力のほどをお願い申し上げます。
 それではそっそくですが,ここでいったんモデレーター会議の座長をお願いしています前東京工業大学学長で現在学位授与機構長の職についておられます木村孟先生にバトンをお渡ししたいと思います。それでは木村先生よろしくお願いします。

【木村(学位授与機構長)】
 私,ただいまご紹介いただきました木村です。よろしくお願いします。
 ただいまから第3回原子力政策円卓会議を開催させていただきますが,その前に,この政策円卓会議の位置づけと第3回の狙いについて簡単に座長の私のほうからご紹介申し上げさせていただきます。
 皆様方ご承知の通り,わが国の原子力政策の方向をめぐりまして平成8年に原子力政策円卓会議が原子力委員会によって組織され,11回にわたって会合が行なわれまして,原子力の今後のあり方に関する国民各層の意見が広く集められました。会議のモデレーターをお務めになりました皆様方は,会合の終わりにあたりまして,原子力委員会に提言を行なっておられますが,その中でもっとも重要な項目の1つが新しい円卓会議の設置の要望でした。
 今回の円卓会議はこの要望に応えて設置されたもので,ここでは国民各層の原子力に関する議論を徹底して行なうとともに,広く会議を公開し原子力問題の状況をより明確に国民の皆様に把握していただくとともに,原子力委員会の下部組織ではなく,独自の立場から原子力委員会に原子力政策の方向について積極的な提言を行なうことを目指しています。このような円卓会議の目的が達成されますためには,皆様方国民の広い範囲から多様な意見がこの円卓会議に提出され,それについて十分な議論が行なわれることがぜひとも必要であり,その点,皆様方のご協力をお願いしたいと存ずる次第です。
 今回の円卓会議の狙いですが,私が申し上げるまでもなく,原子力問題はきわめて多面的な問題で,一回の円卓会議でその全領域にわたって議論を行なおうとすると,どうしても話が発散してしまう可能性があります。そこでモデレーターの間では,むしろ一回一回議論の対象を絞ったほうがよいのではないかという話になりまして,お手元にお示ししてありますように議論の3つの視点をその範囲として設けてみました。
 ご覧いただきます通り,議論の第1番目は,エネルギーの中の原子力のあり方に関する議論であり,わが国としての原子力の選択に関する基本的なテーマです。ここでの議論は,主として社会経済要因と安全要因に関するものとなるかと思われます。
 議論の第2番目は,具体的な原子力開発・利用にあたっての運営と国民的コンセンサスを得るための手続き,すなわち情報開示の問題です。
 議論の3番目が,立地のあり方に関する議論で,原子力施設の立地に関する経済的利益と安心感を含む住民感情等,地域住民の選択のプロセスに関するものです。この区分けの仕方についてはいろいろ議論のあるところだろうと思いますが,私どもモデレーターではこの線に沿って議論を進めていきたいと考えています。
 前回の第2回の円卓会議では,議論1に焦点を絞って検討を行ないました。合意が得られたとは言えませんけれども,この議論1に関するさまざまな問題について共通の論点について相互の意見が交換され,相違点がある程度明確になったのではないかと考えています。今回はご当地福井にまいりましたので,議論3に示しますように,今後の原子力立地のあり方について議論を行ないたいと考えています。
 この議論では、ただいま申し上げましたように,原子力発電所立地の問題は技術的に見た発電所運営の安全性,立地に伴う周辺地域への経済・社会的な影響,それから,周辺住民に安心を与えることができる情報の開示システムなど実にさまざまな要因が含まれています。
 今回の会議は,これらさまざまな要因があるということを前提にしまして,国,立地点の自治体,発電所,立地点周辺の住民,消費地住民など,異なる立場にあるものが今後の原子力のあり方について率直な意見を交換して,原子力立地のあり方,進め方について何らかの提言ができるか否かを探ることを目的としています。よろしくお願いを申し上げます。
 それではモデレーター並びに本日お越しいただきました,招へい者の皆様を,簡単にご紹介申し上げます。まず一番向こうですが,原子力発電技術機構特別顧問の石川迪夫さん,その次が元中央大学教授の中島篤之助さん,私の隣が慶応義塾大学教授の茅陽一さん,そして私,木村です。オブザーバーとして原子力委員会委員から木元教子さんにお見えいただいております。
 次に,今日ご議論をいただく招へい者の方をアイウエオ順でご紹介申し上げます。関西消費者連合会会長の角田禮子様,地元敦賀市長の河瀬一治様,福井県知事の栗田幸雄様,学習院大学法学部教授の田中靖政様,(社)関西経済連合会の地球環境・エネルギー委員会副委員長,住友金属工業株式会社代表取締役副社長の長谷登様,京都消費者団体連絡協議会代表幹事の原強様。以上,本日の招へい者の方は角田様から原様まで6名です。
 議論に入ります前に,私どもでは毎回傍聴者の方からご意見を募っております。また,全体の円卓会議の運営その他についてのご意見も一般から公募しています。まず前回の10月26日の第2回の円卓会議を傍聴していただいた方からのご意見を簡単にご紹介申し上げます。一月弱の間に計29通いただいています。本日も会場を拝見すると男性の方が多いようですが,性別では男性の方が圧倒的に多くなっています。年齢別では男性は40歳代及び60歳代,女性は20歳代及び40歳代が多くなっています。職業別では男性は会社員の方が圧倒的です。女性は主婦の方が多くなっています。
 原子力政策そのものに対するご意見に加えまして,来場してお聞きいただいたという関係から,会議運営に対する意見も多く出ています。原子力政策に対するご意見につきましてはエネルギー選択に関するものが圧倒的に多くなっています。その内訳としては「原子力を推進すべきである」との意見と「原子力以外の自然エネルギーなどを重視すべきである」との意見がほぼ半々でした。自然エネルギーを支持する意見に対しては「さらに自然エネルギーを採用した場合の具体的な将来ビジョンを示してほしい」という別の意見もいくつか見受けられています。
 円卓会議の運営に関するご意見ですが,モデレーター及び招へい者に対する意見がいくつか出ています。モデレーターに対しましては「招へい者のご発言を尊重して自分の意見を自重すべきである。中立な立場に立つべきである」という意見が多く寄せられました。招へい者に対しては「発言の趣旨を明確にすべきである。発言内容に根拠を持たせてほしい」との意見が多く出されています。その他「円卓会議の成果をぜひ政策決定プロセスに入れてほしい」という意見,「円卓会議の成果をより多くの人々や情報発信の手段を講じてほしい」などの意見が見受けられました。
 以上が傍聴された方からのご意見ですが,次に公募のご意見は,同じく前回から11月20日までで一か月弱ですが封書で5通,電子メール2通,合計7通で,あまり数は多くありません。ご意見の内容としては「省エネルギー推進派の意見,原子力の安全性確保をより重視すべき」との意見,「モデレーターの発言内容が原子力推進に偏っているのではないか」というご指摘をするご意見がありました。いずれにしても全部で7通ですので,数としてはさほど多くいただいておりません。以上が傍聴者からいただいたご意見,公募ご意見のご紹介でした。
 もう既にご承知いただいているかもしれませんが,毎回モデレーターの中から本日の座長(メインの司会進行役)を1名,副座長(サブの司会進行役)を1名,合計2名を選びまして会議の運営をすることになっています。
 それから,傍聴者の方からご批判をいただきましたけれども,これは過去の経験から「今回やってみよう」ということで,モデレーターのうち座長と副座長は自分の意見をなるべく述べない。そのかわり他のモデレーターの方は自由に発言できるというシステムにしていますので,ご理解をいただきたいと思います。
 それでは,本日は座長を茅陽一先生,副座長を私,木村が務めます。では茅先生,よろしくお願いします。

【茅(慶応義塾大学教授)】
 本日,議長(司会進行役)を務めさせていただきますが,始める前に本日のスケジュールと若干の原則について申し上げたいと思います。まずスケジュールですが,いま1時50分ですけれども,5時までということですから,3時間10分というかなり長い時間になります。正直に言いましてここに座っていらっしゃる方々,あまり若いとは言えませんので,だいぶお疲れになるかと思いますが,途中で休みを用意していますので,何とか耐えていただくようにお願いしたいと思います。15時10分,いまから1時間20分ほど後に休憩をとらせていただきまして20分休憩します。そして残り1時間半ということにしたいと思います。
 内容ですけれども,最初に招へい者の方々から10分以内でそれぞれご意見をいただきたいと思います。この内容につきましては,先ほど,木村座長から話がありましたように,原子力立地のあり方ということを中心にお願いしたいと思いますが,やはりこういった原子力問題というのは大変広がりが大きいので,もちろんその範囲の少し外側に話が言及されることになっても,これはやむを得ないかと思います。いずれにしましても,考え方としては立地のあり方を中心にご意見を述べていただく。これを招へい者の方々,本日6名おいでになりますが,6名にまずお願いしたいと思います。
 そして,その上でフリーディスカッションを始めたいと思いますが,その場合には皆さんの発言の内容を見まして,適当な話題をこちらで設定させていただいて,それを中心にフリーな議論をしていただくということにしたいと思っています。その際からはモデレーターの議長,副議長でないお二人の方,石川,中島のご両人にも議論には参加していただくことになります。先ほど木村座長から紹介がありましたように「モデレーターがあまりしゃべるな」というご意見は1回目,2回目もあったのですけれども,私は実は一昨年の円卓会議のモデレーターを務めまして,そのやり方が必ずしも望ましいとは言えないと考えています。
 と言いますのは,やはりモデレーターの方はずっと毎回出ておられる。したがって全体の雰囲気をよく知っておられるということで,その方々の発言があることによって,会議の内容の焦点を絞ることができるというのが1つの利点です。2番目のポイントは,私も含めてですがモデレーターとは言っても個人として原子力の問題に大変関心を持ち意見を持っていることは他の方々と同じです。したがいまして,円卓会議をやっている間中,まったく自分の意見を言わないということは非常に辛いことでして,その意味で議長,副議長をやっているとき以外は,個人としての意見を述べることができるというのを最初に取り決めたわけです。
 そういうことで,先ほど紹介がありましたような傍聴者の方々のいろいろなご意見にもかかわらず,今回もモデレーターの方からはある程度積極的な発言が出るかと思いますので,この点はどうかご了解をいただきたいと思います。議長と副議長はできるだけ厳正に忠実に話は持っていきたいと考えています。
 それから,発言に際しまして皆さんここにいらっしゃる方々は先生方もいらっしゃいますし知事さんも市長さんもおいでになりますが,これをいちいち肩書をつけて言うのは大変議論をしにくいということもありますので,すべて「さん」をつけてお願いしたいと思います。「呼びにくい」とおっしゃる方もあるかと思いますが,できるだけそういう形でやっていただくことをお願いします。
 ディスカッションになりましたときは,発言される方は必ず手を挙げて,私が指名してからお願いしたいと思います。実は1回目,2回目の円卓会議がこういうテーブルセッティング(舞台上に横一列状)ではありませんで,ぐるっと囲んだいわゆる円卓だったので大変それがやりやすかったのですが,ここは会場の都合上そうできませんで,ここにあるような半月形になりました。したがいまして,私のところから一生懸命に身は乗り出すのですけれども,正直言って簡単にどなたが発言を求めているのかわからない場合があるわけです。その意味できちんと手を挙げていただかないと私のほうでわかりませんので,そして私がそれに対して「何々さん」と言って,初めて発言していただくというルールをぜひ守っていただきたいと思います。
 それでは6人の招へい者の方々にお一人ずつ意見をいただきたいのですが,これは普通の例にならいましてアイウエオ順でお願いしたいと思います。このテーブルですと一番向こう側からということになりますが,まず,それでは角田さんからお願いします。

【角田(関西消費者連合会会長)】
 一番最初ということで,よろしくお願いしたいと思います。消費地としまして発言の機会を頂戴しました。本当に感謝申し上げます。
 まず,発言をさせていただく前に,この場所に栗田福井県知事,敦賀河瀬市長さん,「さん」とお呼びしなければいけないということですが,あえて日頃私たち大阪ですが,大変いろいろとお世話になっていることを,まずここで御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。
 私は関西,大阪からまいりましたが,ご承知の通り,私どもの地域では堺の地域とか南港に火力発電を設けていますが,到底それだけではまかないきれていません。ですから,福井県より約52%という大量の電力を頂戴しているわけです。
 関西の夏は特に暑いです。「どこでも夏は暑い」と言われるかもしれませんが,特に関西地域の夏の暑さはすごい。そのせいだということではありませんけれども,私たちはクーラーをがんがんと高めて冷やして,扇風機をかけて,テレビで高校野球を観戦して,その間に「冷たい飲み物はないだろうか」ということで冷蔵庫のドアを開け閉めする。よくご存じだと思いますが,これが非常に電力消費量のピークにどんなに影響を与えるか,その問題点を十分に理解しないで消費地の者は消費をしている。真剣にとらえている人が何人いるのか。消費地のものがもっと私たちを含めて電力について真剣にこの問題について考えなければならない。
 ちょうど第1次オイルショックから25年経ちました。けれども,あの頃,私たちが「これは大変なのだ」と騒いだときがありましたけれども,日本人と言いますか,私たちと言いますか,非常に忘れやすく,暮らしの見直しは十分だとは言えません。
 エネルギー政策もどう変わったのでしょう。8割以上を海外に依存しながら資源を持たないわが国ですが,世界の情勢もいつどのように変わるかもわからないのに,とても不安定な時代なのにもかかわらず,私たちはいまだその生活を見直すことができていないのが現状ではないかと思っています。
 いますでに全電力の約35%を原子力で賄っているわけですが,いま火力,水力,バランスよく取り入れたベストミックスがぜひ望ましいということは,だれもが唱えるところです。限りある資源をわが国のように湯水のように使っていてよいものかどうか,地球上で一握りの人類がエネルギーをバンバン使っている。この状態は決してほめられたことではない。問題を後世に残すのだというように強く感じているわけです。
 さて,私たちが今非常に不安に感じていますことは,原発の老朽化への十分な対応はできているのだろうか,本当に大丈夫なのだろうか。それから,使用済み燃料のいろいろな段階での安全対策は本当に大丈夫なのだろうか。これらをぜひ十分国民に理解できるよう,わかりやすく,あらゆる機会に説明をしていただきたい。だれでもがわかりやすい形で情報を繰り返し繰り返し,それこそ何度も何度も提供することを,ぜひ守っていただきたいと思っています。
 そして,もっと早くから私は取り組むべきだったと思いますのは,省電力型の機器開発,そして停電の影響を受けにくい機器の開発,それから,真夏などのピーク時での警報装置,「ピー」と鳴って,知らせるようなシステムというものをメーカーや行政で進めていっていただきたい。
 もう1つ安全の面で私が日頃から考えて案じていますのは,来年から高浜の発電所でプルトニウムの入った新しい燃料が使われると聞いています。この安全には十分注意していただきたい。過去のこととは言いながら,まだ私たちの意識にはっきりとありますのは試験データの改ざん。これは進んでいた原子力推進に大きな歯止めを,汚名を,後退をさせてしまったという。そして人々に非常に不信感を抱かせてしまったということをしっかりと記憶にとどめていただきたいと思っています。
 さて,関西が1つという,私たちは実はナホトカ号のオイルフェンスが福井で生じたときに,いち早く駆けつけました。そして福井県のほうからも阪神大震災のときにバックアップしてくれました。非常に消費地と生産地というだけではない垣根を越えた人間と人間との関西のつながりが,実はエネルギーによって生じたのだなと感じています。
 大阪を調べてみましたところが,福井県出身者の方がたくさんいらっしゃっている。そこで私たちは福井県出身者の人々と,この消費地の私たちがどうあるべきかという話し合いもさせていただきました。これからは生産地と消費地というのは,しっかりと話し合いを進めながらあるべき方向に考えていかなければならない。特に消費地の者はそう強く感じています。
 さて,エネルギー教育という面で,私はぜひ小さいときからエネルギー教育を進めていただきたい。これが今後の鍵になると強く感じています。それは一人一人の意識改革ということはよく言われるわけですが,なかなか難しい。気の長いことのように思えるかもしれませんが,やはりそれがキーポイントだと思います。小さい時からエネルギーの大切さ,資源の枯渇,電気について学ぶこと,それが非常に大事だと思います。
 私たちは小さい時に親からモノの大切さ,資源の大切さを十分教えられました。例えば,水は琵琶湖から来るのだということは小さい時から教えられていました。けれども今の子どもたちは,電気は福井から来ているという,福井でお世話になっているということを知っている子どもたちがどのくらいいるでしょうか。私は学校教育の中でもこういうことは考えていかなければならないと思っています。
 しかしながら,学校現場での原子力についての教育というのは,本当にその現場を拝見しますとまったくタブー視して,触ってはいけない部分のような扱いをされています。私はむしろ,がっちりとした講師陣をつくって,その講師陣を学校へ派遣させてエネルギー教育というものを習っていただくような前向きな取り組みもしなければならないのではないかと思っています。
 私は「家庭で電気をまめに消しましょう」ということを子どもたちにお話ししています。ちょうど子ども消費者教室という夏休みの子どもの勉強会ですが,その場所で子どもたちを集めまして「家庭でまめに電気を消しなさい。そうしたら1か月にどれだけの費用が浮くか一度調べてごらんなさい」ということを提案しています。そうしたら,ある子どもたちは「なんぼなんぼあがった。お母さんがびっくりしていた。僕はまめに電気を消して回って,冷蔵庫の開け閉めも何回ぐらいにとどめたんだ」という具体的なお話をしてくれました。
 そこで私が提案しましたのは,それではお小遣いのベースアップにそれを応用するのもよいではありませんか。節約できたものを「お母さん,節約できたのは僕たちが一生懸命に電気をまめに節約したんだから,何とかこれをおこづかいに回して下さいよ」という交渉をしたらどうかということを提案しています。これは今年になって初めて,具体的に子どもたちに節約を呼びかけた事例ですが,それがはたして来年の夏にはどのような効果を上げてくるか。
 私はいま残念ながらお母様方に,男性の方もひっくるめて親に教育をするより,子どもをしっかりと教育すること,21世紀に向けて成功する鍵はそこにあるのではないかと思っています。何回大人の方にそういう教育をしましても,なかなか凝り固まった頭は考え直してくれません。私はむしろ正しい情報は21世紀を担う主人公である子どもたちに向かって発言していきたいと思っています。

【茅】
 ありがとうございました。それでは次に河瀬さんお願いします。

【河瀬(敦賀市長)】
 最初に,今回の新円卓会議を私どもの敦賀で開催をしていただきました。思い出しますと,この円卓会議と言いますのも,私も忘れもしません,平成7年の12月の夜,私も後援会の青年部といろいろ打合せをしていましたら「えらいことが起きた」という報告がありまして「いったい何や」というときに,まだそのときは詳しい状況ではなかったのですけれども「もんじゅ」がナトリウムの漏洩事故を起こしたということが入りまして,私も市長に就任してからまだ半年少し過ぎた頃で,まだ市長職がどのようなものかということがわかったようなわからないようなときの状況でして,早朝には飛んで現場に行ったのを,いまも鮮明に覚えいます。
 そういう事故がきっかけで,私ども,またいろいろな関係の皆さん方が「やはりもっと国民の声を聞くべきだ」ということを反映していただいて,この円卓会議が始まりました。また,その前の円卓会議の中でも「いま一度もっともっと議論をすべきだ」ということで,今回の新円卓会議ということで開催をされているわけです。やはり議論がされていくということは,1つの進歩ではないだろうかと思っています。また,先ほど言いましたように「もんじゅ」の立地をしていますこの敦賀で開催されるのも,また非常に意味があると思っているところです。
 お手元に配らせていただいていますけれども,3つに分けまして立地の自治体の長として,また,ご承知のように全国に原子力発電所が立地している自治体は27ありまして,それと準会員を併せて37の自治体で全国原子力発電所所在市町村協議会というのを持っています。略しまして全原協と言っていますけれども,敦賀市長はその会長という立場もありまして,そういう立地でそれぞれの皆さん方の意見も含めまして,特に地域の経済的な観点から3つに分けましてお話をさせていただきたいと思います。
 ご承知のように私ども首長というのは,やはり地域振興ということが私どもの任務の1つであるわけでして,特にこの原子力発電所の立地をして地域振興を図っていこうというのも自治体にとりましては1つの政策手法であると思っています。そういう観点で私ども敦賀市も原子力発電所を過去に誘致をしてきて,現在,4つの発電所が立地をしています。それもいろいろな形が全部違うという特殊性も持っているわけです。
 そういう中で,過去と言いますのは私どもの聞いた話になってしまいますが,大変すばらしい夢の発電所というものを誘致をして,これから未来につながる原子力を十分に活用して,私どもともども発展しようということで誘致をさせていただいたわけです。思い出しますと私も大学生の頃にちょうど万博がありまして,敦賀の原子の火が大阪の万国博覧会の会場で灯るのだという一面のニュース記事なども思い出しますし,大変地域の住民の皆さん方にとりましても1つの誇りとしてとらえていたわけです。
 ところがその後,いろいろな諸問題,事故,トラブル等々があった中で不安というものがかなりよぎり出しました。細かいことは省略しますけれども,そのような原発の安全性に対する疑問というものも出てきましたし,今回特に情報等々を隠されたという,非常に目に見えないものを扱っている中での目に見えない状況というのは,市民,住民にとっての大変な不安につながるわけでして,そういう点が出てきました。
 しかし,これはあくまでも国策というのが主でして,もちろん地域振興等々での立地誘致もあったわけですが,基本的には国策としてこれからの将来に向かっては原子力が必要である等々,また,昨今では京都会議等々で出ましたように,環境問題にこれからどんどん取り組んでいく中での原子力の位置づけ等々が出たわけですが,そういう中で,やはりこれは沖縄の基地問題と非常に私は類似していると思っています。
 やはり国民全体で負担すべき国策を地元が受け入れて,そして,いろいろなトラブル等々がありますと地元だけが苦しみ悩むと言いますか,事故等々がありますと他から,いつも私は言っていますけれども「敦賀というのは大変なところだな。危ないものをたくさん持って,こんなところによく住んでいるな」とははっきりは言いませんけれども,それに近いようなことを言われたり,トラブルが続くと「嫁さんに行ったらいけない」とか「もらったらいけない」とかいうような話も出ているのも事実ですし,私もこれからの町づくりというのはたくさんの人に安心して遊びに来ていただけたり,また住んでいただくということを基本的にやっている中で,非常に苦しむことが多いわけです。
 そういう中で,やはり原子力を国策という位置づけがありますから国がもっともっと責任をもって私たちの地域をカバーすることは当然だと思っています。そのカバーのメインが地域振興になるわけですし,当然,その前提としては,先ほど触れました安全確保等々は言うまでもないわけです。
 先ほど角田先生も教育上のことで言っていただいたわけですけれども,ともしますと,やはり知識的なことがありまして「放射能云々」という情報が流れますと,すべてそれで私どもの地域が「ひどいところだ」というイメージを与えているのも現状ですし,やはり子どもからの教育等々もその解決の1つだというように私も理解をしている1人です。
 それと具体的に言いますと,やはり私どもは原子力発電所を立地しているという関係で,電源立地振興の電源三法ですけれども,そういう交付金をいただいていることも事実です。しかし,この三法と言いますのはご承知のように昭和49年に全原協等々の運動によりまして創設されました。当時は立地の地域の恒久的発展につながるというように思っていたのですけれども,実際に言いますと,私はその期待というのは大きくはずれているというように認識しています。これは先ほど言いました全原協のいろいろな立地の市町村の情報を収集しますと,やはりそういう状況になるわけでして,そういう点のこれからの改正ということを強く訴えたいと思っています。細かいことにつきましては,また後ほどお話をしたいと思います。
 また,この適用期間なども固定資産を含めましてもやはり運転終了までになっています。固定資産は15年ですが,そのようなものをやはり原子力の発電施設の解体撤去時までをやってほしい等々も訴えています。と言いますのも,やはり発電所がある限り不安というものはつきものです。これはこれからの廃炉問題,廃炉研究等々に関連もしてきますし,そういう点での延長を図られなくては,とても我々の地域というのは恒久的な発展がないのではないかというような思いもしています。
 また,先ほど言いました固定資産につきましては,だんだん目減りがする一方でして,立地の時は,できた当時はよかったのですけれども,だんだん目減りをしていきながら,あとは苦労だけが残っていくという現状も現に立地の自治体でも出ているわけです。
 では,その中で三法についての運用法を,またこれからどう見直すかということも先ほど言った通りですけれども,私は一番地域振興にとって「ありがたいな」と思うのと,また「これはいいな」と思うのは,やはり電気料金の割引というのは大きな効果があるように私は思います。と言いますのは,確かに立地をしますと建設云々等々でのいろいろなメリットもあることもまた事実ですけれども,やはり地域住民の皆さん方に一番喜んでもらえるこういうこと。
 それと,また後ほど触れたいと思いますけれども,やはり生産地と消費地のいろいろな格差の問題もその中に少し関連してくると思っています。その地域振興策等々,いま大雑把に触れてしまったですけれども,またいろいろな意見交換の中で細かくお話をさせていただきます。
 次のお手元に配ってあります「立地に対する地域住民の感情」ということですけれども,やはり当初は夢であったものが,いろいろなトラブルの重ねによって不安を持つということは,ごく自然な行為ではないかと私は思います。特に「もんじゅ」もそうでしたけれども,今回,キャスクデータの改ざんということで,これも何とも言いようのない怒りを覚えるわけですが,そういうものがどんどん不安,不信というものを増長させているのではないかと感じていまして,こういうことに関しましては,いつも言っていますけれども情報の徹底公開,また原子力についてもっともっとよい面も確かにあります,また悪い面があるのも事実です。そういうことをもっともっと明らかにするように心掛ける,基本的には情報公開というものを求めていきたいとも思っています。
 特に原子力の安全性等々になりますと大変技術的には難しいことが多いと私は思います。なかなか専門家でなければ機械云々のトラブルと言いましても,一般の皆さんというのはおそらくそこまで理解をするのは難しいと思います。そういう中でやはりいつも国のほうにも言っていますけれども,そういう専門的なことを任せられる,例えば法律で言いますとやはり弁護士さんがいらっしゃって,わからないことは弁護士が代わってやっていただくことがありますし,やはり原子力,特に放射能関連を管理する等々については専門家に委ねて,その専門家がまた私ども市民,また住民にとってわかりやすく説明するような,それと,我々に代わってしっかりと監視をするという機関が必要ではないかと思います。そういうことができていくことによって,やはり立地に対する住民の感情というのも変わっていくのではないかと思っている次第です。
 特に国民に代わる代理人と言いますと具体的に難しいのですが,例えばNRCの米国の原子力規制委員会等々もありますが,あそこなども完全に規制部門と,また立地促進部門としっかりと分けながらとっています。そのような形で安全規制体制を強化した組織ができていくことによって地域住民というのは非常に安心感を持てるのではないかと私は思っていますし,今日はご提言という形,これも全原協におきましても,いま国に提言を行なっている最中です。
 また,いま行政改革も行なわれるというようにいろいろ議論がされているわけですが,そういう中でも特に安全規制部門の強化に取り組んでいきたい。先ほどのNRCというのは1つの例ですので,そういう点での,今回いろいろなお話を聞いていますと,特に原子力委員会と原子力安全委員会は内閣府に置くという話も実は聞いていまして,そういう点からもぜひ規制部門の強化を図りながら地域住民に安心,そして安全ということを思っていただかなくては,私ども首長としては非常にそういう不安ばかり与える申し訳なさというのもありますし,そういう点をぜひお願いしたいなと思います。
 それと,特に防災面ということでもちょっと触れたいと思いますけれども,防災訓練は私どもも今,ごく一般的な防災訓練というのをやらさせていただいています。ところが原子力災害というのは非常に特殊だと私は思います。と言いますのは,何か災害が起こる「さあ,皆さんで助けよう」ということでの訓練を今行なったり,または他からボランティアが来ていただいたりということができますが,原子力災害がもし起きますと,もう逃げるだけです。とにかくその場所からいかに早く退去するかというのが大きな訓練だと思います。だれも恐らく事故が起こったからと,そこにボランティアで来てくれる人は私は絶対にいないと思います。まず逃げようという災害ですので,私は一般の災害とはまったく特殊である。
 そういうことで,私どももいま訓練は通報体制等々の訓練はやっていますけれども,では本当の防災訓練をやれるかと言いますと,被害想定をするにしても,ではいったいどういう被害を想定するのだと。ではチェルノブイリという事故があったのではないかと。あの事故を想定しましたら,とても私ども自治体ではできません。何百キロという範囲で放射能が流れたという例を参考にしますと,これはやはり国として責任をもって取り組んでもらうべきだというように実は思っていまして,そういう中での原子力災害対策特別措置法というのを,いま国に要請をしている段階です。これもぜひ取り組んでほしい1つの課題です。
 最後になりますけれども,先ほど角田先生におっしゃっていただきましたけれども,消費地との問題で,角田先生をはじめ,前に横山知事にもちょっとお会いしたときにお話ししましたけれども,大変ありがたい言葉をいただきまして「本当に電気の供給ということではいろいろお世話になっています」ということを聞いていまして,大変感謝していますが,ただ一般の例えば大阪の市民までいきますと,とてもそういうことを思っていらっしゃる方はいないであろうと私も思っていまして,そういう点でも教育等々とかいうことも一つお願いできたらなと思っている次第です。
 また,ちょっと経済的な立地と消費と言いますと,例えば原子力を作っています製品等々はほとんど大都市の近郊にあります工場などで,また大都市の市民の皆さんによって作られているのです。それがこちらに来て組み立てられて稼働しているということで,非常にこれは大都市の経済面にも貢献しているのではないかと思います。
 私どもで何かありますと「どうの,やめなさい」と運動してくるのは,また都会の人が多いんですね。「何でかな」という気はしますけれども,何かそういうことがあって,基本的にはこれは安全に運転さえしていただければ,こういうことも起きないのですが,先ほど言いました事故やらトラブルというのがありまして,そういう中で非常に生産地が肩身の狭い思いしていることも事実でして,このようなことです。
 また先ほど言いました,ある人が「電気はどこからきているか知っているか」といろいろ議論していたら,ある主婦が「いや,コンセントから来ている」と言った(笑)。それは大体わかったのですが,どこで生産されているということが,まずまったくに近いほど認識がないというのも少し問題ではないかなと実は思っていまして,また消費地の皆さん方にそういうこともわかっていただくのも,私ども立地にとってのイメージアップに色々繋がる点もありますので,一つお願いしたいなと思っている次第です。
 極論で言いますと,私ども立地と言いますのは,これから国においてはエネルギー政策の色々なお話を聞きますと,原子力発電所というものは必要なものである。特に環境問題に対してもそういう点では非常にすばらしいものであるから立地をしたいというようなお考えであるやに伺ってはいますけれども,やはり何と言いましても私ども立地の地域が参考になると思います。1つの鏡ですから,これから新しく立地されようというところは必ず私どもの地域を見に来ると思います。そういう皆さん方が「何じゃ」と言われたのでは,私は立地は進まないと思いますし,私どもは「原子力発電所はよかったな」と言われるような地域になりたいと思っています。元に戻りますけれども,安全その他は言うまでもなくのことです。以上です。

【茅】
 ありがとうございました。多少予定の時間より長くなっていますが,河瀬さんの場合,立場が立場ですのでお話をされたのは非常によろしいのだと思いましたので。栗田さんもおそらく同じようになるのではないかと思いますが,それをよろしくお願いします。

【栗田(福井県知事)】
 では簡単にお話しします。私は電力の生産地と消費地との共生という視点からお話をさせていただきたいと思います。
 その前に,前回の第10回の原子力政策円卓会議に引き続きまして,この円卓会議を敦賀市で開いていただいて,本日はまた招へいを受けまして大変ありがたく思っています。また本県が強く開催を要望してきました新円卓会議が,今日,この原子力発電所立地地域であります敦賀市で開かれるということは大変意義深いことです。モデレーターをはじめ関係の皆様方に心から敬意を表します。
 そこで,この円卓会議についての意見を最初に述べさせていただきます。この円卓会議におきましては,わが国の原子力の研究開発・利用に関しまして国民各界各層の幅広い意見を聞くということで,今後の原子力政策の基本的な方向について具体的な提案をしていただきたい。そして国民の合意形成を図っていただくように強くお願いしたいと思っています。この円卓会議での議論や提言が今後の原子力長期計画の見直しに的確に反映されることも必要だと思っています。
 もう1点は,この円卓会議がまとめられる提案というものがどう具体化されるのか。また,現在の核燃料サイクル事業がどのような進捗状況に置かれているのかといったようなことを,適宜適切にチェック・アンド・レビューする必要があるわけですので,そういった意味におきましても,この円卓会議というものを常設化することもぜひ検討していただきたいと思います。
 先ほど申しました原子力長期計画のことですが,原子力政策,特に核燃料サイクル政策を現実的な見通しのあるものとして国民合意形成を図るためには高速増殖炉懇談会の報告等もありますので,そういったものも踏まえて,原子力長期計画をぜひ改定していただきたいと思っています。
 以上が前段でして,本論の電力の生産地と消費地との共生の問題ですが,まず生産地におきます安全性の確保と安心感の醸成が必要です。平成7年12月の「もんじゅ」の事故の際にも,非常に専門的な立場で研究がされているにもかかわらず二次系につきましては設計・施工が業者まかせといったような面がありまして,専門家たちが安全性の確保というものに気を使っているつもりでも,われわれ一般の国民から見ますと,とてもとても信頼できないような事柄が起こっているわけです。今回の使用済み燃料輸送容器のデータの改ざんにしましても,これまた不信感を増幅したということです。
 そこで,安全性を確保するというために国や事業者におきまして万全の体制を持ってもらう必要があるわけですが,それをいかに国民の安心感と結びつけるかということが必要です。私は原子力発電所は学者の研究の対象とするだけではなくて現実に発電をしているわけですので,そういった研究の対象であるだけではなくて,原子力発電所の社会性ということが非常に大事な問題であると思っています。
 平成10年度の原子力白書に安全性の確保と国民の意識としての安心との間に乖離があるということで,原子力の安全一般に向けられた国民の不安感があるということが指摘されていますし,また,動燃の閉鎖的な体質への批判,あるいは情報公開の徹底を求めることに象徴されるように,原子力政策への不信感がある。さらには原子力政策の未解決の諸問題や将来性に対する国民の疑問や不安があるといったことを指摘しているわけですが,これから安全性を確保することはもちろんですが,いかに国民に安心感を与え,また国民の不信感を取り除くかということが大事で,今回のこのデータの改ざんにつきましても,徹底した調査と再発防止に力を入れてもらわなければならないと思っています。
 安心感の醸成という意味におきましては,原子力防災対策の充実の問題がありまして,特に地元の自治体におきましては,原子力防災につきまして災害対策基本法とは別に,国の責任を明確にした特別措置法を制定してほしいということを,もう十数年来要望してきているわけですが,一向にそういった明確な方向が示されていません。先ほど河瀬市長もお話ししました通り,原子力災害というのは他の災害と違った特殊な災害ですので,災害対策基本法の他にこういった特別措置法がどうしてできないのか,私たちはむしろ不思議に思っているぐらいです。
 最近,原子力安全委員会の専門部会におきまして関係省庁の課長で構成する幹事会が設けられたということですので,ぜひとも積極的に取り組んでいただきまして,原子力防災の特別措置法を制定していただきたいと思っています。
 2番目に恒久的な地域振興の問題ですが,福井県の場合はいわゆる嶺南地域に15基もの原子力発電所が立地をしているということで,地域としての振興策が必要だと言えるわけです。そういった意味で,立地市町村と周辺市町村の格差が大きいということも非常に問題ですし,また,既設の地域についての振興策も重要だと考えられるわけです。
 地域としての振興策としては,最近,福井におきましては,例えば近畿自動車道敦賀線のように,大変福井全体として電源立地地域の振興について配慮していただけるようなことになってきていますが,ぜひそういった国全体としての地域への振興策のあり方というものをお進めいただきたいと思っています。核燃料税の拡充の問題につきましては,地域全体としての需要も大きいということもありますので,ぜひその税率のアップをお願いしたいと考えています。
 電力の生産地と消費地との共生の問題ですが,先ほど角田さんから教育の問題をご指摘いただきました。まさにその通りであると考えています。原子力政策は国民全体のエネルギー源をどう確保するかという,いわば国家的命題であるにもかかわらず,立地地域の固有の政治・行政上の問題になっていまして,大消費地を含めました全国レベルの関心事にはなっていないわけです。よく言われていますように「福井はなぜあんなに危険なものをたくさん誘致したのか」と。あるいは「福井の農水産物は放射能で汚染されているのではないか」といったような危険視,あるいは迷惑がられているということから,原子力立地地域のイメージが非常に落ちていまして,いわば肩身の狭い思いをさせられていることは,誠に残念です。
 地球温暖化防止京都会議,いわゆるCOP3 でも,これからのエネルギーのあり方というものが議論されているわけで,そういったことを十分教育をしてもらう必要があろうと考えています。そして最初に申しましたように,専門家や技術者の放射線や放射能についての説明がややもしますと独りよがりになってわかりにくいということがあり,これが国民の不安感を増しているということですから,より徹底した教育あるいは広報というものに力を入れてもらう必要があろうと考えています。
 それから,具体的に生産地と消費地がどのように共生していくかという問題ですが,生産地の痛みというものを,消費地の皆さんに理解してもらう必要があろうと思っています。原子力発電所は安全性は確保されると我々も思っています。しかし,いつどういう事故が起こるかわからないという不安感は拭い去れないわけでして,そういった痛みを消費地の皆さん方に十分理解してもらう必要があるわけです。
 そこで,例えば原子力発電所が立地されている地域で,先ほど敦賀市長も言われましたけれども,大都会で設備を生産して,こちらで組み立てるのではなくて,生産地でそういった生産地の振興になるような企業で設備も生産をするといったような,例えばこれは1例ですけれども,そういったようなこと。あるいは電気料金の割引制度なり,先ほどちょっと触れました核燃料税の税率アップということは,その分だけ消費地の皆さんの電気料金に上乗せされて負担をしてもらって,それを生産地のわれわれが核燃料税の引き上げという形で利益を受けるということになるわけですので,そういった点もぜひ考えていただきたいと思います。
 この会場であります福井県若狭湾エネルギー研究センターは国に大変お世話になりまして,立派な施設ができたわけですが,こういう立派な施設でこれからの科学振興,あるいは活力ある地域社会の形成を目指すということも1つ意義のあることでして,こういったことを消費地の方々にも理解してもらって,こういうものをさらに運用していくということに,われわれは力を入れていきたいと考えています。以上です。

【茅】
 ありがとうございました。それでは次に田中さんにお願いします。

【田中(学習院大学法学部教授)】
 今回の円卓会議に招へい者としてお招きいただいて感謝しています。本日の議論というのは,先ほど木村座長からお話がありましたように,現在,立地のあり方に関する議論というのが中心課題ということになります。しかし,この立地というのはより具体的に言うと増設するときも立地の問題が起こってきますし,新設の場合にはますます立地の問題が重要なことになります。今後,廃炉,つまり原子炉が一応,寿命が尽きてしまった場合に,その跡地をどうするかというときに,それでやめてしまうのか,あるいは補充で新しい原子力発電所をそこにさらに新しくつくるのかが問題となります。これらがすべて,今後の日本にとっては21世紀にかけて立地の問題になるわけです。ですから,この立地というのは必ずしも今の問題ではなくて,いまから21世紀の半ばぐらいまではずっと続く問題であると考えてよろしかろうというのが,私のまず第1のポイントです。
 それから,立地の問題について私はずい分いろいろなところに出かけていまして,労働組合,農協,魚協,それからもちろん市町村,あるいはある場合には県,そういうところの方々のご意見も伺いましたし,実際に世論調査という形で,その地域の住民の方々の世論も調査をしたことがあります。
 しかし,そういうことを勘案すれば勘案するほど,考えれば考えるほど,なかなか一筋縄にいかない。なぜ一筋縄にいかないかと言うと,先ほど木村座長もご指摘になったように,この原子力の立地という問題は,実にいろいろな要素が絡まりあって構成されているからです。経済問題がありますし,安全性という機械システムの問題があります。工学的な問題です。それから,先ほど来お話が出ている情報コミュニケーションの問題がありますし,さらに,まだお話があまり正式に出ていませんが,政治の問題があります。
 これについて全部,私はこの10分間で申し上げるつもりはまったくないのですけれども,例えば経済問題としての原子力を考えるだけでも,まず経済的にどのくらい有利なものであるのか。地域にとって,あるいは国にとって有利なものであるのかという検討も必要なのですけれども,最近ではさらに昨年のCOP3 以降,化石燃料を使ってはいけない,あるいはそれを減らさなければいけないという制限のもので,とにかく日本はこれから21世紀にかけてやっていかなければいけない。
 日本はかなり胸を張って世界に,1990年のレベルの6%の化石燃料から出てくる炭酸ガスを減らすということを約束してしまったわけです。そうしますと過去10年ぐらいの記録をとりますと1年に大体1%ぐらいずつ炭酸ガスは増えているのです。そうすると紀元2010年までに,炭酸ガスの量というのは15%ぐらいは自然に増える。その部分を今度はさらに6%減らしてしまうということを,日本はCOP3 で胸を張って誓ってしまったわけです。紀元2010年を考えると,自然増分と6%を減らすという炭酸ガス・化石燃料を燃やしてはいけないという状態で「では何でそれができるの?」という問題があるわけです。私は「原子力のために」とか何とか言うことを,今ここで申し上げようとは全然思いません。これは原子力に賛成の方でも,推進の方でも,反対の方でも,皆日本人として考えなければいけない問題がそこにあるのだということを特に申し上げたいわけです。
 もう1つ経済問題として大事なのは,21世紀には化石燃料,特に重要な石油が日本に手に入るかどうかということが非常に疑わしくなります。お隣の中国がどんどん人口が増え,かつ産業化していきます。実際数年前にもう中国は石油の輸出国から輸入国に転じているわけです。そして,その中国へ私はたびたび行っているのですけれども,行く度に生活程度も産業のレベルも上がっています。そういう国が実は,中国に12億人の民はよく知られていますが,インドは9億人,インドネシアは2億人,そして日本が1億 1000万人の人口があります。日本の人口が一番小さいわけですが,産業力は日本が一番強い。そのレベルに中国,インド,インドネシアが追いついてきたときに,はたして石油が全部日本の思うように,いままで湯水のように使っていた日本に優先的に回されるかどうか。これがクエスチョンマークだということです。なぜクエスチョンマークかというのには色々理由がありますが,後でもしご質問があったら私は正直に申し上げます。日本が平和主義,憲法第9条があるから優先順位の高いところに行けないという理由があります。
 もう1つ,今度は安全性絡みの話ですけれども,先ほど来,安全性を裏切られたと我々が感ずるような事件がいくつも起こっています。これらは「事故」というより「事件」なのです。それほど放射能が漏れたかと言うと,そうではない。しかし,明らかにあってはいけないことが起こっている。これはほとんどすべてがメーカーの責任なのです。メーカーで作ったものをそのまま,無批判ではなかったかもしれませんけれども,すんなり受け入れた事業者が悪いと言えば悪いのですけれども,しかし,あくまでもメーカーの責任であるケースが随分あるわけです。こういう無責任な状態に放置された場合に,もし私が原子力立地点の住民だったら,事実上不安でしょうがないと思います。これはやはり今までのように「なあなあ主義」ではなくて,はっきり決着をつけるべきだと私は思っています。
 それと関係があるのは実は情報公開の問題なのです。しかしながら,情報公開ということがどうやって何かを決めるかということとは同じではないということを,私はあえて強く申し上げます。我々が何かを決断するときに,意思決定をするときに必要なのが,情報なのです。その情報が狂っていたり,間違っていたり,捏造されていたり,隠されていたりすることがあってはいけない。まず正確な情報を正しく伝えること。どのような経緯があるにせよ,ことにウソを言ったり,歪曲したり,隠蔽したりするというのは許しがたい。
 ところが,これは原子力だけではないのです。ご記憶のように厚生省の場合にはHIV(エイズ)の入っている血液製材をわかっていながら打ってしまったということがあります。より最近では防衛施設庁です。監査していると言う以上「あれで監査なのですかね」というのが実感です。私などはマスコミの情報しか知りませんけれども,怒りを感じます。われわれの税がそのように無駄に使われていたということだけで私は怒ります。それから,大蔵省もまったく同じです。いろいろな贈収賄があったということは,それだけウソがそこに入っていて,それがわれわれ国民の目から隠蔽されていたということです。
 ですからこれは別な言い方をすれば,10年前にはおそらくそのようなことは何でもなかったのでしょう。田中角栄さんのロッキード事件を思い出していただきたいのです。おそらく田中角栄さんのロッキード事件の起こる10年前は,そのようなことは当たり前だったのかもしれないのです。しかし田中角栄さんが刑事被告になったときには,それが通用しなくなった。同じようにHIVにしろ,電機メーカーにしろ,あるいは大蔵省にしろ,10年前はそれが当たり前だったことが1998年には通用しなくなった。
 つまり,徐々にではありますけれども日本の文化,あるいは日本の企業文化そのものが,私に言わせれば正しい方向に変ってきている。情報の視点から言えば,情報開示をして何でも国民の目の前に明らかにするほうに変わってきている。これはやはり私は大事にしなければいけないと思います。特に私が一番心配することは,いまの情報開示の問題について言えば,事業者だけでなく,元来は事実というものに自分の職業的な生命をかけなければいけないはずの研究施設です。つまり,検査機関です。そこの所でいい加減な考え方がまかり通ってしまっている。これは絶対に正さなければ,私はやはり信用を回復できないと思います。これはそういう検査機関で働いている科学者及び技術者が反省するだけではなくて,そういうウソがつけないような仕組みに機構そのものを変えていくということが必要だし,たしかにそういう機構を変えたということを,まさに情報公開で公開すべきだろうと思います。
 これはもとをただせば,「もんじゅ」の事件からスタートしたことですけれども,「もんじゅ」の事件はその後どうなったのか。少しでも機構が改革されたのか,ウソがつけないようになったのか,それについては我々には語られていないのです。非常に残念なことです。そういうことも含めて,情報を開示すべき時代になりつつあるということを私は強く主張もするし,皆さんもそれに同感していただきたいと思います。
 最後に政治の問題について2分だけ話します。政治の問題というのは,原子力というものが政治現象だということを意外と皆さん意識しておられない。ここにおられる知事及び市長のお二人はご存じなのですが,そして実感をお持ちなんですけれども,私はたまたま政治学者ですから外野からその感覚を共有するのですが,あまり感じられない方が多い。ことに事業者は,現場の方は別にして本社の方はほとんど皮膚に感じていない。
 県知事さんと言えども市長さんといえども,選挙によって勝たなければならないのです。ですから,事故を起こすということがどんなに政治的に選挙に影響を及ぼすのか。これは議会の議員も同様です。このことをやはり責任感として,そういう感じ方をしていただかなければ,これからは原子力というものは成り立たない。やはり地域における意見の反映としては,住民投票というものもあります。しかし,現在のところほとんど法律関係,あるいは政治学関係の専門家の定説としては,住民投票というのは補完的であるということになっています。日本は憲法が決めているように議会政治,議会制民主主義でやろうということですから,それに則ってその枠の中で原子力を維持したり,あるいは推進したりするためには,この枠の中で知事さん,あるいは市長さんたちと一緒に歩く必要があると思います。ですから,反対する方は反対する方で意見を述べられるのは民主主義ですから当然ですが,しかし,それを逆に何と申しましょうか,事業者があまりにもそのことを知らな過ぎるということも,また1つ大きな問題だろうと思います。
 最後に付け加えたいと思いますけれども,2点あります。1つはやはり原子力問題について,政治学とか行政学の専門家が関与していないのは残念なことだと思います。巻の住民投票が行なわれた直後,住民投票がすべてを決定するかのような報道がマスコミに満ちあふれました。けれどもこれは間違いなのです。法的な拘束力があるかないかということに関しては,巻の場合にはたまたま拘束力があり得たのです。争点が町有地を売るか売らないかですから。
 しかし,それ以外のことについては住民投票は有力な世論調査であります。そして,その世論調査の結果を市町村長さんも県知事さんも次の選挙のことを考えたら無視し得ないということはありますけれども,法的な拘束力はないというのが,いまのところは定説です。しかし,あたかも全てが住民投票で決まるというのは誤解です。ですから,そういうことはきちんと政治学や行政学の専門家の意見を聞くべきです。
 最後に,先ほど来お話が出てきていますが,電力の消費地と生産地の間の格差。私は東京都に生まれ育って今も住んでいますけれども,実は東京都知事の言動についてきわめて恥ずかしいと思っています。それに比べれば電力生産地に感謝した大阪府の知事さんは偉い。 1,100万人の人口を抱えている東京都で,知事は一言も言いません。最近のマスコミによれば「自分はもう一期続けたい」ということは言っているようですけれども,福島に,あるいは柏崎に感謝をするという気はまったくないようです。これはやはりいけない。これはやはり皆さんの気持ち次第です。そういう知事に関しては賛成派も反対派も含めて,住民としての気持ちを明らかにすべきです。同じ日本人としての気持ちをね。やはり住民として,その辺は知事に迫ってよいことではないでしょうか。
非常に単純なことだけしか申しませんでしたけれども,私の話を終わらせていただきます。

【茅】
 はい,ありがとうございました。それでは長谷さん,お願いします。

【長谷((社)関西経済連合会地球環境・エネルギー委員会副委員長,住友金属工業株式会社代表取締役副社長)】
 関経連で地球環境・エネルギー委員会の副委員長をしています住友金属工業の長谷です。本日は円卓会議で発言させていただく機会を頂戴し,ありがとうございます。
 私は関西という電力の大消費地域で産業活動に携わる立場から発言をさせていただきます。良質で低コスト,十分な量のエネルギーを確保することは産業活動を行なう際に必要不可欠な条件です。現在は未曾有の不況であると同時に,経済のグローバル化が進展する中で国際競争は一段とその激しさを増しています。私が所属しています鉄鋼業界をはじめ,日本の産業界にとって大変厳しい時代を迎えています。このような中,資源が乏しい日本において今後も産業活動が発展していくためには,電力をはじめ低コストで良質なエネルギーを確保する重要性が従来以上に高まっていると感じています。
先ほど角田先生のほうから大阪府の電力の問題のご紹介がありましたけれども,大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県,和歌山県のトータル,関西全体の電力について申し上げますと,関西の経済力の地盤が最近,低下していると言われてはいますけれども,全国の約15%の電力をこの関西地域で消費しています。そのうち約36%が産業で,492億KWhです。関西の2府4県におけます発電量は約 500億KWhで,先ほどの大阪府のお話にありましたと同じように,大体いま関西における電力の自給率は4割程度で,足りない分はほとんどがこの福井県から頂戴しているわけです。
 このように私ども関西地域の生活,そして産業は福井県の絶大なるご協力を得て成り立っているように考えています。今日,栗田福井県知事,河瀬敦賀市長とご同席させていただいたこの場をお借りしまして,関西で産業活動を行なう者として,また関西で生活をする者として福井県の皆様に厚く御礼を申し上げたいと思います。
今まで申し上げましたように,電気は産業活動にとって必要不可欠なものですが,関西では自給できない状況にあります。また,日本全体を見ましても全エネルギーの80%以上を外国に頼っているわけです。そのため,消費者の立場として電力をはじめとするエネルギーの効率的な利用に努めなければならないことは言うまでもありません。
 ここで関西の産業界のエネルギーに対する取り組みを少し紹介させていただきます。関経連の地球環境・エネルギー委員会では会員各社に昨年12月の地球温暖化防止京都会議を受けての施策の動向等,地球環境・エネルギー問題に関する情報提供を行なうとともに,省エネルギーやリサイクル等への積極的な取り組みをお願いしています。産業界全体としての取り組みを拡大,強化することに努めています。
 昨年度は,各社に環境やエネルギー問題に対する自主行動計画の作成をお願いし,関経連・環境自主行動計画として取りまとめました。同時に各社の取り組み状況を調査した結果,約90%の企業が「省エネルギーに取り組んでいる」との回答を得ています。本年度は運輸部門や管理・間接部門における省エネルギー,廃棄物の削減,リサイクルを重点取り組み分野としてオフィスの照明やOA機器をこまめにスイッチを切る等の活動を進めています。また,年度末までに関経連・環境自主行動計画の改訂版を取りまとめる予定にしています。消費者や市民の皆様と連携,協力した活動を展開するため,消費者や市民の皆様を対象とする環境やエネルギー問題に関するシンポジウム等も行なっています。
 私どもは電気の大消費地の産業界として電力の効率利用への取り組みを一層進めてまいりますが,一方で高齢化社会への進展や生活における利便性,アメニティを求める動き等により電気の消費量は今後とも増加していくのではないかと考えています。関西における電気の需要は必要な発電設備を考える際の指標となる最大電力から見た場合,この10年間で約4割増加し,今後10年間でさらに20%程度増えるという見通しであると伺っています。
このような中で現在の生活を維持するためには,また,それを支える産業活動をより発展させていくためには消費サイドからの取り組みを行なうことはもちろんですが,それでもなお増加する電気の需要に対しては,新たな発電所を建設していただかなければなりません。その際にはぜひとも低コストと良質という条件を併せて達成していただくことが必要です。同時に日本としては,CO2 をはじめとする温室効果ガスによる地球温暖化をどのように防止していくかということに対しても先進的な役割を担っていくことが求められています。このような数多くの問題を解決していくためには,消費サイドから省エネルギー活動をいっそう進めること。また,長期的な視点から革新的なエネルギー技術によるブレークスルーを目指して技術開発,研究開発を促進するということが必要であることは言うまでもありません。
一方,エネルギーの供給サイドから現時点における選択肢を考えた場合,原子力発電をはじめとしてLNG,石炭,太陽光など自然エネルギー,あるいは既存の発電方法をうまく組み合わせていくことが有効であると思われます。その中でも発電効率やコストの観点,安定供給の面からエネルギー資源を中東地域等特定の地域に過度に依存しないという観点,また,地球温暖化防止の観点等からも原子力発電の問題は十分に考慮しなければならないと考えています。
 また,同時に発電所の立地につきましても消費者が自らの問題として,先ほどの教育問題も含めて,今後,取り組んでいくことが必要だと考えています。私ども関西の経済界としても,福井県との交流の促進等,いろいろな面から取り組みを進めていきたいと考えていますことを最後に申し上げまして,私の発言とさせていただきます。ありがとうございました。

【茅】
 ありがとうございました。最後になりましたが原さん,お願いします。

【原(京都消費者団体連絡協議会代表幹事)】
 皆様こんにちは,原です。私は京都からまいりました。京都は古くは鯖街道で若狭とつながっていたわけですが,現在はエネルギー街道とでも申しましょうか,そのような関係で生産県と消費県の位置にあるわけですが、大阪と違いまして隣接をしています。したがいまして生産地に近い問題も京都の場合は抱えながら原発の問題を考えなければならない立場にあります。
 併せて京都は,昨年COP3 が開催されました。COP3 の1つの結論,京都議定書というものはきわめて不十分であるという見方も一方ではあります。しかし,1つの結論として出したものですから,これをわが国も含めて尊重していかなければならない,1つのエポックメーキングな約束ごとがつくられたのだと考えています。その京都に居まして私どもなりにこの京都議定書の早期発効ということと併せて,わが国の地球温暖化対策の推進に向けて全力をあげていきたいと考えています。
 つい昨日も「京(みやこ)のアジェンダ21」という文書にもとづく市民,事業者,行政をあげてのいわゆるパートナーシップ型の組織が立ち上がりました。このアジェンダ21の推進のためにも私どもも力を入れていきたいと思っています。この議論の中でも京都議定書で掲げました6%の削減の難しさということは嫌というほど感じています。京都は10%を上回る削減という目標を掲げていますが,実際の数値目標で積み上げていく可能な部分というのは2.数%の範囲です。残りの部分は国を挙げて,まさに総力を挙げて地球温暖化,地球環境保全の取り組みを始めることによって可能になるということでつくられた目標になっています。
こういった京都からの発言という意味でおききをいただきたいと思いますが,今日はテーマが限られていますので3つぐらいの点に絞ってお話をします。
 1点目は電源三法にもとづく交付金制度などいわゆる電源開発促進制度が,これで四半世紀に及ぼうとしているわけですが,この制度がはたして本当に有効な制度であったかどうかということを,生産地も消費地も,一度きちんと総括,評価を行なう必要があると考えています。国策としていずれかの地に原発が必要であったということもあったのかもしれませんが,若狭の皆さんの場合には原発立地を選択されました。そのときには原発を選んだというよりも地域振興のために1つの選択肢として選ばれたということであったと思います。25年経ったいま,当初の地域振興の目標がどこまで実現したきたのかということについても冷静な客観的な評価というものも必要になるでしょう。これからの地域振興ということを考えたときにも,原発とともに進むという道,原発から抜け出す道,選択肢はあり得ると思います。その際にもこの電源開発促進制度というものをどう考えるかということが問われるものと私は思います。
 一般論として地域振興の中身をあれこれ申し上げる必要はないかと思いますが,例えば新しい産業がどのように起きてきたのかとか,特産品の開発がどのようにできたのかとか,雇用の場がどの程度作れたのかとか,若い年代の人口がどのように増えたのかとか,観光客はどう来たのかとか,いろいろな要素はあるでしょう。今日はくどくど申し上げませんが,今後の地域振興のためにもこの制度が果たして有効なものなのかどうなのか。この制度があるがために,結局,原発とともに生きなければならないということになるのかもしれないということも一方ではあるかもしれません。
 しかし,私は25年経って原発立地が新規にそう多くは進んでいない現実も見ていますし,福井県の皆さんの場合にも,現行制度では十分なサポートになっていないということを強くアピールされていることも感じます。つまり,一時的な地域経済の膨張にはつながっても,本格的かつ持続的な地域経済の振興に繋がらないというような気もするわけです。これは私の見方でありますから,知事や市長のお話も十分に聞かせていただいて,私なりに理解もしたいと思いますが,何よりもこの制度の現実をオープンにすることが必要であると思います。これまでにどの程度の交付金あるいは協力金が出されてきたのか。そして,それがどのようにどこに使われたのかということも明らかにしてもらう必要があると思います。その点について若狭の場合,福井の場合,妥当と言えるのかどうか。生産地と消費地が同じデータをもとに議論をしあうということが必要なのではないでしょうか。
 最近伺ったところでは,電源立地開発資料集といった資料集もおまとめになっているようですが,消費地の私どもの手にする資料ではありません。マスコミを通じて,たくさんの交付金が現地にはいっているようであるという一般的な情報は,私どもはよく耳にしたり手にするわけですが,実際のところどうなのかということを,きちんとデータにもとづいて議論をしあいたいものと考えています。
 もう一方で,こうした電源開発促進税の実情について,消費地の消費者は正しく知らされていません。例えば電源開発促進税という税金をとりましても,一人一人の消費者が電気料金を払うときに「私はいくらの電源開発促進税を負担したのか」ということはわからない仕組みになっています。伺うところでは 1,000KWh当たりで 445円,KWh当たり44銭5厘という税金を私どもは負担をしているわけです。
これは1974年当時,8銭5厘から始まったというものですが,次第に膨れ上がってきています。その金額は,関西電力の場合で申しましても1997年度で言いますと 613億円にも上るそうです。こうした 613億円もの負担を一人一人の消費者が負担をしているという現実をきちんと理解をしたならば,電気の生産ということに思いをはせるに違いないでしょう。しかし,これはいまの料金制度と言うよりも表示の仕組みの中ではきちんと示されていないように思います。
あるいは核燃料税という話も福井県では話題になるわけですが,私どもの知るところではありません。こういう消費者がきちんと知らされていないということ自身を直さないと,生産地と消費地が同じ痛みを分かち合うということはできないのではないかと思います。
電力会社が行なっています協力金に至っては,私どもは関西電力と毎年定期懇談会を持っていますが,一切公表をしてくれない内容になっています。これではたして「生産地の本当の痛みをわかってくれ」と言われても,私どもには「わからない」としか言いようがないのではないかと思います。くどいようですが実態をオープンにして,そして同じデータの上で,同じ土俵の上で,生産地と消費地が議論し合えるようにしなければいけないのではないかと思います。
 2つ目の論点は,原発立地に関する意志決定のシステムの民主化という問題です。先ほども住民投票の問題が話題になりましたが,私なりにいろいろな市民運動にも関係していまして,原発以外にも産廃処理場の問題とか,あるいは基地の問題とか,空港の問題とか,最近は各地で住民投票の提案がされています。これが本当の意味で意志決定の制度たり得るかどうか,これは今後の研究課題だと考えるわけです。しかし,首長と議会と住民の意志。しかも住民の中で意見が分かれているような場合に,何をもとに意志決定をするのか。その際の1つの方法として住民投票という制度も,これは現行制度では法的な拘束力をなかなか持ち得ないものだと思いますが,やはり十分に検討に値する制度だと考えるものです。住民全体がその問題に関心を持ち,そして自分なりに判断を持ち,そして意志表示をする。そういう中で1つの答えというものが見つかっていくのではないかと思います。したがいまして,私はそれぞれの地域の問題は最終的にはその地域の皆様のお決めになることだと考えますが,こういう原発や産廃処理場等の問題について住民投票という制度を今後,日本の社会は十分に活用すべきであるということを,この際申し上げたいと思うわけです。
 3つ目の論点は,防災訓練の問題です。先ほどもお話になっていますが,私はこの防災訓練という問題はやはり大事だと考えます。阪神・淡路大震災という大きな地震というものを経験しまして,私どもも毎年防災訓練をやるようになっています。今年は,伺うところでは福井のほうで2府7県と言うのでしょうか,広域にわたる防災訓練があったそうです。
 こういう防災訓練を通じて,常平生からいざというときに備えを持つということは,やはり大事なことだと思います。誤解されるかもしれないとは思いますけれども「危険だと知ってこそ安全が保たれる」ということも書いてみました。私どもが相手にしています原子力発電というものは,やはり技術的に見た場合にまだまだ未完成のものであるし,万が一の事故というものを考えなければならないものです。その際に,どういう事故を想定するのかということによっても,防災訓練の中身は変わってきますが,チェリノブイリ級の大きな原発事故ということも,やはり現に私どもは歴史的に体験をしたわけです。こういうものを無視するわけにはいかないでしょう。
 あるいは原発と地震の関連ということも,私どもなりにああいう大きな地震を経験しますと「若狭の原発と地震の関係は本当に大丈夫なのだろうか。原発の設備は大地震に備えられるだけの耐震性を本当に保証されているのだろうか」といったことを,いろいろ考えてしまいます。ですから,どういう防災訓練を想定するかという際の入口の原発事故の想定というものも大きな問題でしょう。いずれにしましても,私は住民も含めた防災訓練というものをきちんと行なっていくことが必要であろうと思います。その場合に,私ども京都府民としても,いわゆる10km圏という範囲の防災訓練ではなしに,広域にわたる防災訓練ということもやはり視野において,検討をしていただく必要があるのではないかと考えるわけです。こうした防災訓練を通じて,お互いに生産地と言いますか,原発というものを自分の暮らしの中に位置づけて,考える機会になるのではないかと思います。
阪神・淡路大震災でも日が経てば次第に意識は風化していくと言われています。美浜の問題にしても,「もんじゅ」の問題にしても日が経てば忘れられてしまうかもしれません。しかし「毎年防災訓練をやるのだ」ということがあれば「ああ,そうだった」というようになるのではないでしょうか。そういう点で国の施策としても,原発事故に備える防災訓練のあり方や,あるいは補償制度の問題まで含めて十分に検討をしていただく必要があるのではないだろうかと思います。
原発隣接県の京都府民としても,現在は通報・連絡の仕組みを京都府と関西電力の間で持っているようですが,いざというときに備えた安全協定もきちんとしてほしいという気持ちを私どもは持っています。時間も超えているようですので,この程度で終わらせていただきます。ありがとうございました。

【茅】
 ありがとうございました。これで6人の招へい者の方のご意見の開陳が終わったわけですが,実は時間がもう3時15分になってしまいまして,休憩時間の前に予定していた自由討論というのはちょっとやるわけにはいきません。今の6人の招へい者のご意見は今日の話題に対して大変適切なご意見だったと思いますが,全体の意志決定,あるいは情報公開のシステムの問題,それから地域振興と消費地の理解という問題は切っても切れない問題だと思いますが,こういった問題,あるいは最後に原さんも言われましたが防災訓練。これは実はこの中では河瀬さん,栗田さんという地方自治体の首長の方々からもご意見が出たわけですが,こういった問題が出てきたように思います。
 それでは,この中のいくつかをやりまして,休憩をはさんだその後で,皆さんのほうから今度は自由に議論をしていただきたい。できる限りディベートになるような形でやっていただたきいと思います。詳細につきましては休憩のあとで私のほうからごく簡単に説明しますので,休みを取っていただきたいと思います。

【事務局】
 それではこの辺で20分間の休憩に入らせていただきたいと思います。大変おそれいりますけれども,円卓の先生方がご退席になる間に事務局からお知らせがありますので,おそれいりますけれども傍聴の皆様方におかれましては,そのまましばらくご着席下さい。追加資料のご案内等がありますのでよろしくお願いします。
 先ほど敦賀市長からお話がありました資料に関しましては,コピーの準備の時間がかかり会議開催前にお手元に配付できないでいましたが,現在,受付に準備をさせていただきましたので,トイレ等この会場の外にお出になった際に受付でお受け取りいただきますようお願い申し上げます。
 それでは休憩に入らせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

−−休憩−−

【事務局】
 それでは円卓の先生方もご着席になられましたので,本日の原子力政策円卓会議後半の議論に向けて再開させていただきたいと思います。では茅先生よろしくお願いいたします。

【茅】
 先ほど6人の招へい者の方にご意見をお願いしたわけですが,大変多面的であったと思います。しかし,皆さんの議論を伺ってみますと,かなりフォーカスのポイントが絞られていたような気がいたします。
 私のほうで特に取り上げてみたいのは1つは地域振興という問題です。これは消費地の理解という問題と切っても切れない問題だと思うのですが,これまでこの電源立地地域がこういった原発を受け入れた背景にはやはり地域振興という,非常に大きなインセンティブがあったというお話がお二人の首長の方からもありました。
 そうした場合に,この地域振興というための方策が果たして適当であったかどうかということについては何人かの方々からご意見が出ています。現在の電源開発促進制度は電源三法が中心だと思いますけれども,こういったものが果たして十分であるのかどうか。その額についても,内容についても,いろいろな形でのご意見がありました。これに対して,いろいろな形で税金を増やすという問題であるとか,あるいは電気料金の低減。そういった形での対応策をもっと強化すべきだというご意見も出ていたと思います。
 そういった一方で,もう1つのご意見としては消費地側がそういったシステムをもう少しきちんと把握すべきであろうと。それによって消費地側は十分生産地の痛みを理解できるのだというご意見がありまして,現在のシステムではそういう内容がなかなかわからないし,含みになっていると。そういった意味で何らかの形でこういった電源開発促進制度にかかった費用が十分一般にわかるような形をつくるべきだというご意見もあったわけです。こういった地域の振興と消費地の理解の問題というのは,私は本日のトピックの中ではやはり一番大事な問題だという気がしています。
 もう1つの側面として出てきたのは意志決定,あるいは情報公開のシステムの問題のところです。安全の確保と安心とをどう結びつけるかという,そういったものが非常に重要な問題なのだという話がお二人の首長の方からも出てきましたけれども,そのためにはどうしても情報公開がきちんと行なわれ,それによって住民に信頼感を与えることが必要なわけです。
 しかし,そのために現在のシステムが十分であるのかと言えば,そうではない。1つのアイデアとして,そういったものの科学的な内容を十分一般にわかりやすく解説できるような専門家集団の存在が必要だというご意見もありました。またそういった形での機関をつくるべきだと。特にそういった機関での検査,その他についてはウソがつけないような仕組みを講ずるべきだというご意見もあったわけです。
 こういう点はいずれにしましても,今後のシステムの構築には非常に重要かと思います。それに劣らない重要なシステムの問題はもちろん意志決定の問題で,現在は国,電力会社,地方自治体。これは首長の方と議会とがあるわけですが,それと住民との間で意見が異なる場合にどういう決定システムが一番望ましいのか。一番受け入れられやすいのか。これもまた大変な問題だと思います。
 しかし,いずれにしても,こういった2つの問題というのは原子力の今後を考える上でどうしても十分議論しなければいけない問題だと考えています。この後1時間20分ほどなので,十分に皆さんのご意見を伺うというだけの時間ではないかもしれません。しかし,この間に参加者,招へい者の方々に非番と言っては何ですが,議長,副議長でないモデレーターの方を含めて活発な議論が展開されることを私としては期待したいと思います。
 そのために問題としては最初にまず地域振興並びに消費地の理解という側面から,現在の電源開発促進制度のあり方をどう考えるべきか。どんなことをすべきなのだということについて,もう少し具体的な議論を詰めたらと思っています。なお,先ほどのようにお一人15分も話されてしまいますと,あっという間に時間がなくなりますので,今度は3分,どんなに長くても5分にしていただいて,それを超えた場合はどなたでも遠慮なく切りますので,そこだけはご覚悟のほどをお願いしたいと思います。どなたからでもけっこうですが,ご意見のある方は手を挙げていただきたいと思います。

【角田】
 実は市長さんにいろいろの問題点を提起されていただいたと思いますので,具体的にもう一度市長さんからご説明がいただけたらと思いますので,よろしくお願いしたいのですが。

【河瀬】
 そういうわけでいまお隣でお話を聞いたのですが,電源三法について,いったいどのような格好で,またどのように使われて……。やはりなぜ地域振興になっていないのだということでした。皆さん方は専門家ですからよく知っての通り,電源三法というのは電源開発促進税法,または電源開発促進対策特別会計法,電源発電用施設周辺地域の整備法ということで,3つが昭和49年に私どもの先輩が運動してできたわけなのです。
 ただ,そういう中で特に発電所をつくっていくのに,これは税として私どもも非常にありがたい1つの税法なのですけれども,促進税法があります。実は予算的にはいつも国のほうはたくさんつけていただくのですけれども,言い方が悪く,この席で言いにくいのですが,1つの発電所をつくるという中の地域にとっての……。もちろん地域振興策に非常にありがたいものですが,要するに「発電所をつくりますよ。着工しますよ」と言わないと,お金がなかなか入ってこないのですね。言い方は悪いですが,1つの餌的なものがあるのですね。非常に困ったものです。
 ところが,これなども予算は実は上げていただいていますが,実質的には予算は3割ほどしか使われていないのです。全原協の資料を今日皆さんにお配りするとよかったのですが,ちょっとお手元にはないと思いますけれども,そういう点でそういう使えなかったお金は外郭団体などにいっていまして,消化されている部分もあると。そういう点で,先ほどからちょっと出ていますけれども,地域振興をしようと思いますと,われわれは何と言いましても行政を預かり,また推進しようと思いますと,予算というのは必要です。正直な話何をするにしても必要ですし,そういう中でぜひ活かしたいにも関わらず,そういう足かせもありますし,また他の予算などではこの施設とか,こういうものでないと使えないという,ものすごい規制もあります。非常に使いにくいのもありますし,先ほど言いましたように,予算を上げていただいても,実際には少ない交付。そういうものの見直しをしてほしいなと,実は思っているのです。
 と言いますのは,先ほど触れましたけれども,政府として,これから環境問題等々で原子力発電所が将来的には何基必要だということも出ているようでして,それを促進しようと思いますと,私どもの地域が見本ですから,その見本を見て「そんなものなら必要ないんじゃないか」という意見が出ると思います。そういう中でこういうお金をもっと弾力的に運用をしていただく。要するに私どもの地域が振興して「ああ,敦賀市さん,原子力発電所のある地域,また福井県はいいですな」と言われるような制度にしていただきたい。それが強いて言えば,国のいろいろな政策の推進上には役に立つと思いますし,また私どもの地域もそういうことでもっともっとよくなります。
 例えば1例をあげますと,これもよく言っていますけれども,では私どもの地域振興はどうなったかと言うと,この若狭地域,嶺南地域は,ご承知のように15基の発電所がありますけれども,電車はありません。ディーゼル車が単線で1本走っているだけなのです。電気はどんどん生産をして,京都,大阪に送電しているにも関わらず,電車はディーゼルです。ディーゼルはご承知のように油を焚いて走っているのです。この不合理。本当にこれで地域振興が進んだのかという疑問。
 また道路にしても,国道27号線が1本ドーンと走っていますが,夏場の渋滞はひどいです。普段2時間で来られるところが5時間も6時間もかかる。阪神淡路大震災以降はこちらが通れない時期がありましたから,27号線を非常によく利用していただいたのです。そのときには10倍近く交通量が増えたのですけれども,向こうが復興した後も非常に便利な地域だということで利用していただいていますけれども,そういう状況ですから,渋滞。交通事故が嶺南地域だけドーンと増えているのです。そういう問題点。
 本当に地域振興という面を考えますと,やはり先ほど知事にもおっしゃっていただいた核燃税の税率アップなども私どもの地域……。それはそういう鉄道の電化ですが,私もそういう需要に当てていって地域振興したいという思いで知事さんのほうからお話をしていただいたわけでして,やはりそういう制度を見直ししてでも,私どもの地域に対する活性化策,また地域振興策をできるような形をぜひ取っていただきたいというのが私どもの思いです。
 それと先ほどちょっと触れましたけれども,その適用も原子力発電所が完璧になくなるまで……。これから廃炉問題も各地域で出てくると思いますけれども,それもひとつ合わせてお願いしたい。

【茅】
 ありがとうございました。いまのご意見に対して他の方のご意見はいかがですか。ありましたら,どうぞ。

【田中】
 やはり私も河瀬市長とまったく同じ意見です。いろいろなところへ伺って,首長さんをはじめとして議会の方々,住民の方々にお話を伺いましても,とにかくいまの三法交付金の使い方の限定のしかたはきわめて実行が難しいと。ですから,そのくらいだったら,むしろ原子力発電所を断ってしまって,地方交付税をもらったほうがまだよいと。つまり,何でも使えると言うと,ちょっと語弊があるのですが,比較的自由な使い方がきる,そのほうがましだという意見をおっしゃる地方自治体の方々もおられますし,これはやはり国としてもうちょっと抜本的に使い方を考えるということが必要だろうというのが1つ。
 もう1つの問題は,いま河瀬市長が言われた最後の点なのですけれども,予定されているすべての原子力発電所ができてしまった後は,尻つぼみになってしまうのです。これをどうするかということをやはり国としてきちんとした姿勢をとらないと,これから増設ないしは新設をするところでも「国は初めはいいことを言うけれども,最後のほうは全然世話してくれないじゃないか。それなら初めからそんなものはいらない。他のもっと自由で,住民も安心して,自分も選挙により容易に通るような,そういうことを考えたほうがいい」と言う自治体の首長さんもいらっしゃいますし,その辺やはり国として重く受け止める必要があるだろうというのが私の感想です。

【茅】
 ありがとうございました。他の方はいかがですか。

【栗田】
 いまの地域振興で交付金,要するに国の考え方は立地を促進するという意味で,立地に関連してこの交付金を交付するという施策をとっているのですけれども,今いろいろお話がありますように,この原子力発電所が立地されていることによる財政需要というものをどう賄うかということですから,やはりこれは原子力発電所が立地する限り交付金を出してもらうということでわれわれも強く要望しています。国のほうでも長期発展交付金制度を設けてもらいまして,ある意味では一部そういう改善もされているわけですが,こういったことを徹底してもらう必要があるだろうと考えています。

【茅】
 それでは中島さん。

【中島(元中央大学教授)】
 現在の税金は消費者が負担しているにも関わらず,特に消費地の方々にとっては,実は負担しているということがほとんど知られていない。私はあちらこちらでそういう話をするのです。「一種の税金取られていますよ」と言っても,知っている方は数えるほどしかいません。
 実は立地があまり進んでいなくて,あるときから,いわゆる立地勘定分と多様化勘定分に分かれてしまっていますね。これは通産と科学技術庁の両方で共管しておられるのですけれども,その多様化勘定分というのを設けなければならないぐらい,実は余っているという変な状態があると思うのです。全体で年間に三千数百億円のお金が入ってくるわけですね。
 これはあたかも電力会社は自分で払ったようなつもりにしているのですが,それは通産省は電気料金に加算することを認めていますから。消費者は自分で払っていると思っていないし,電力会社は取られていると思っているのです。やはり高い電力コストの一部の原因だと思っている。それは多様化勘定という形で,科学技術庁や通産省は大変都合のよいお金と言うか,それでは何か有効に利用しようというので,あちらこちらに……。例えば,安全性の研究のところなどにお金をばらまいていると言うと,悪いですけれども,出しているわけです。
 ところが,それをやりますと,これはまたもらうほう……。私はあまりもらったことはありませんが,原子力研究所などにもそういうのがくるわけです。1年ポッキリできますから,非常に使いにくいお金なのです。ですから,電特会は25年経ったわけですから,先ほど原さんからのご意見もあったように,全面的な見直しがやはりいるのではないか。これはちょうどいまの国鉄の債務がなぜ自動車税を利用して処理できないかと。日本の税制というのは,私は専門ではありませんから田中先生辺りから解説していただくとよいのですけれども,大蔵省は特定税源と言うのですか。そういうものをつくるのを非常に嫌がるようですね。福祉目的税とか,そのようなものは非常に困るという意見が強いようです。
 電源特会もちょっとそのようなことがあって,何か省庁のほうも決して満足しているわけではないと思うのですが,立地も進まないし,あまりうまくいっていないという点があるので,今日こういう機会にそういうことを見直しをするということは非常に必要ではないかと思います。いずれにせよ,いまのままでよいということは私はないと思います。地元の要望にも十分答えられないし,原子力委員会としては当然検討なさる必要が起きているのではないかということを申し上げておきます。

【茅】
 わかりました。確認なのですが,私の記憶が正しければ,電源特会に回る分というのはKWh約50銭。したがって,年間約4,000億円ということですね。

【中島】
 そうですね。

【茅】
 いまの皆さんのご意見というのは,河瀬さんのご意見によれば,現実には3割ぐらいしか立地点には渡っていない。7割が他の形で使われているというので,十分活かされていないというのが1点。もう1つは支給のしかたがかなり堅くて,問題があって,もっと柔軟な使い方ができるようにすべきだというご意見かと思いますが。それ以外に。

【長谷】
 一時的な交付金のばらまきではなくて,やはり電力以外も含めた全産業的な規模での振興策を考えると,この地域の方だけ思い切って電力代を下げる。いくらというのではなくて,平均の何割と。例えば3割ダウンとか,5割ダウンとか。そうすると,それは50年先も,100年先も続くわけですから,そういうものをベースにして……。いまでも多少はいろいろお安くなっているはずですから,そういうものを表にもっともっとPRされて,電力を多少でも使いがちな産業をできるだけ誘致していく。交付金の問題だけでなくて,そのようなことによって長続きのする産業振興策を考えるということも必要なのではないでしょうか。

【茅】
 その点は先ほど河瀬さんがおっしゃったことですね。

【河瀬】
 非常にありがたいお言葉で,私どももそれが一番よいのではなかろうかと思っています。先ほど言いました電気料金の割引。実は私の地域では現に受けています。1家庭で月に大体1,000円弱でして,月に1,000円ですと,うちにも子供がいますけれども,なかなか喜ばない額でして(笑),一般家庭の生活においては非常に低いのですね。
 そういう点で電気料金が恒久的に安ければ,それによって企業誘致も……。いまは企業はたくさんの電力を消費しますので,そういう点で企業の関係からおっしゃっていただいたので実は大変心強く思っていまして,ぜひそれを実現していただきますと,すごく変わっていくと思います。

【長谷】
 今後経済界のほうも関西協議会ということで従来の関経連の地域だけではなくて,福井県あるいは三重県,徳島県の方々にも入っていただいて,どのようにして産業を振興していこうかということを討議していくことになっていますので,その場でもできるだけそういう問題を通じてPRもされ,関西地域の電力消費地の産業はできるだけ福井に来られるように,私のほうからも伝えておきます。

【河瀬】
 レジメでちょっと触れたのです。購入する電力の自由化と言いますか,そんなものを含めて,やはり私どもでは獲れたての魚はうまいし,安いのですね。都会に行きますと,やはり運賃がかかりますから,高くなるのです。それと一緒で取れたての電気をつくっているところですから,地元が安くても何の不思議もないと思いますので(笑),ぜひその点も合わせて,自由化も含めて本当にこれが現実になるように,ひとつお願い申し上げます。

【長谷】
 わかりました。

【茅】
 先ほど申し上げましたように,一応手を挙げて私が指名してからにして下さい。栗田さん。

【栗田】
 電気料金の割引制度の問題ですが,今お話がありましたように企業誘致という意味で非常に効果があるので,大幅な電気料金の割引を考えたし,その場合に最初に申しましたように,原子力発電所の問題は立地している地域,福井県で言いますと,嶺南に立地しているわけですけれども,これは福井県全体の県政の大きな課題なのですね。ですから,ぜひ割引制度を全県に適用してもらう。そのことによって,企業誘致も進めることができるだろうと思っていまして,そういう全県適用をぜひ実現してほしいという要望を持っています。

【茅】
 ありがとうございました。それでは木元さん。

【木元(原子力委員会委員)】
 いろいろなご意見が出ました。これは非常に基本的なことだと思うのですが,これから原子力委員会も含めてさまざまな場で交付金の問題が出るだろうと思います。基本的に考えなければいけないのは……。河瀬さんともときどきお話をすることがありますけれども,サイトの方たちに立地を「いいですよ。うちに立ててください。だけれども,私たちの市や町,村というのはこういうふうなビジョンを持っています。こういう町にしたいのです。こういう生き方をしたいのです」という主張がまずあって,それに交付金が非常に柔軟な対応をしていくという形でないと,いつまで経っても「もっともらわなければならない」というような形になるだろうと思うのです。
 ちょっと比喩が農業になりますけれども,例えば農業,米づくりで補助金が出ます。なぜ農業にこれだけ温かく重要な基幹産業として,お金が出たかと言うと,当初、米づくりはいまとても自立できる状況にないと。ですから,そのうち自立できる状況になるまで国民が皆で「皆さん応援しましょう」。「応援するから,その代わりご自分たちのビジョンをはっきりさせて,自立できる力をつけて下さいよ」ということがまずあっただろうと思うのです。
 その意味で,今回とてもよい時期だと思います。三法交付金についていろいろな目的のことが書いてあります。ちょっと読んだだけでも,これは何にでも解釈できそうです。「発電用施設の周辺地域において住みよい町づくりの基盤を整備するため,公共施設や産業振興施設の整備に要する費用に当てることを目的とした交付金です」と。聞いていらしてもよくわからなかったと思うのです(笑)。
 そうすると,これはどういうことですかと。最初の頃は箱ものばかりもってきましたね。そういうのは当初なかったから「いいな」と思うけれども,いまや無用の長物になってしまっている。そういうことがあるので,やはりここで知事さんも市長さんもいらっしゃるわけですから「違う。こういうものは必要じゃないんだ。自分たちはこういうふうにしたい」と。例えば,中間貯蔵の問題なども出るかもしれませんけれども,そのときには「宿を貸してやるんだ。だから,宿賃をもらいたい」と。特上のお客だったら,スイートルーム料金をもらうとか,そのくらいの柔軟を持った発想をして,要求をお出しにになってもよいのではないかと思うのです。
 要求なさることが,正直申し上げて「じゃあ,どういうふうにしたらいいですか」というようにお伺いしなければならないものも出てきたりするので,何かそういう発想でまず青図があって,それからいろいろな形が見えてくるとよいと思う。最初の頃などは思いつきと言うか,場当たりと言うか,今思うといらないようなものが多かったですね。その反省の時期が来ているのだろうなという気がするのですけれども,その辺いかがでしょうか。

【茅】
 原さん,いまのポイントですか。では先に栗田さん。

【栗田】
 地域振興策で地域のビジョンをどう描いていくかという問題ですけれども,福井県の嶺南地域の場合を考えてみますと,鉄道あるいは道路の整備,あるいはこのエネルギー研究センターのような,あるいは観光といったような,この嶺南地域全体を振興していくためのアトムポリスプランといったものがあって,エネルギー研究センターはまさにその一部ということです。
 これは国に大変協力していただいたのですけれども,そういった1つの核ができたということですし,これからの課題として,やはり観光であるとか,あるいは交通部門の整備というものも全体のプランの中でわれわれは要求していく,それに国が応えてくれるという形ですので,できるだろうと私は思っています。

【茅】
 河瀬さん。

【河瀬】
 いま木元先生におっしゃっていただいたわけです。私どもは当然計画を立てて……。これを話しますと,それだけで2時間ほどしゃべらなければいけないのでおいておきますけれども,第5次の総合企画という青写真をしっかり組んで,それに合わせて町づくりをするのですけれども,そういう中で先ほど言いましたように「ここにはあかん。こっちはいい」となりますと,非常に……。先ほど箱ものと出ましたけれども,これも管理運営が大変です。
 ところが,地域住民は計画以外にも「あれもやってほしい。これをやってほしい」と,いろいろな思いがあります。もしそういう中にも自由にそういう交付金が使えていければ,非常にありがたいと思います。

【木元】
 つまり自由度の問題ですね。

【河瀬】
 青写真というのは港を中心に……。来年開港100年で,ぜひ皆さん方またお越しいただきたいのですが,それはしっかり組んでやっています。ただ,使いにくい。

【木元】
 使いにくいという形を直さなければいけない。

【茅】
 原さん。

【原】
 私は4点です。1点目はビジョンを示せというのには大賛成です。消費地としても,拍手ができるような地域振興策,ビジョンをぜひ示していただきたいなと思います。
 2つ目は今日はたぶん議論が不十分に終わると思いますので,次回あたりにこの電源三法をどう考えるかということに絞った議論の場ぐらいを希望したいなと思います。
 3つ目は中島さんの話でびっくりしたのですが,電源多様化勘定が余っているなどという話は初めて聞きました。そんなことになっているのかと。ですから,ちょっとでもこうやって議論をやれば,わかってくる部分がありますね。もし,そうだとすると,私が言い残した部分であったのですが,電源立地のための税金として使うという部分と,今日はほとんど議論の対象にならない自然エネルギーなどの開発に本来使ってもよいはずの税金ではないのでしょうか。そういう部分がほとんど議論されていない。これはきわめて不公平,不公正だと考えますね。
 ですから,電源三法の見直しの過程ではもちろん電源多様化勘定となっているわけですね。ですから,さまざな自然エネルギー,再生エネルギーの利用を増やすためにこういう税金を投入するということをやってほしいと思うのです。やはり1,000億円,2,000億円の資金を使って「皆で太陽光発電をやりましょう」と言えば,それはそれなりのインパクトがあると思うのです。そういう使い方も含めて考えてほしいと思います。
 4番目,料金割引の件も消費地としてにわかに賛成できるかどうかというのも,議論がいると思います。私は正直言いまして,こういう制度があることを知りませんでした。今回こういうパネラーになって,資料を送っていただいて「原子力発電−−その必要性と安全性−−」というパンフレットが出回っていますけれども,こういうものの中で,91ページ,92ページのところですか,ここで料金割引が地域にされているという話が書いてありまして「ああ,そういうことがされているのか」と思いました。
 私たちが関西電力とお話をするときには電気事業法の関係で原価主義というものを絶対崩せないということを頑として言われていまして,料金割引という制度がどのように法的な面をクリアーしているのか,そのことをもし教えてもらえるなら教えてほしいと思うのですが,こういうことが本当に必要なことだと思うには,やはりいくつかの前提を納得できるようにしないと,やはり不公平だ,不公正だという意見が消費地では出る余地が十分にあると思います。その点を申し上げておきます。

【茅】
 いまのお話の中で,電源特会のお金の回り方ですが,これはむしろ実際に事実の問題ですので,あとできちんと役所関係のものを事務局に調べてもらってお渡ししたほうがよいと思います。
 ただ,私が知っている範囲ではもちろんこれは原子力だけ回るのではなくて,いま言ったような自然エネルギーの開発にも回っているはずだと思います。では石川さん,どうぞ。

【石川(原子力発電技術機構特別顧問)】
 ありがとうございました。私も財政……。先ほどの電源三法のほうの見直しというのは大賛成なのですけれども,多様化勘定が余っているかどうかは疑問です。私の記憶が間違いなかったら,これは原子力で一番問題になっている安全性研究にたくさん使われて来たと思います。この点についてはいま茅さんがおっしゃったように事実をきちんと見直してもらったほうがよいだろうと思います。
 ついでにいまのビジョンに関係するのですけれども,私もやはり生産地の近所,東海村の近所のひたちなか市に住んでいるのですが,やはり電気の料金もいくぶんか返ってきますので喜んでいます。ところが,東海村と大洗町には原子力発電所があるのですけれども,ひたちなか市はこの二つの町村に挟まれていまして,発電所はないのです。そうすると税収に差がありますから,市役所の人などは何か文句を言っています。「不公平だ」とか何とか言うのです。私はそれがどのような金の配分になっているかは知りませんけれども,地方の隣近所同士で「公平だ」「不公平だ」とか,それが防災の訓練のときに「東海村は何々があるけれども,ひたちなか市は何々がない」とか,そのようなことになっていますので,ある程度見直しをするのならば,もう少し広域でやったらどうでしょうか。例えば,先ほどの敦賀市の場合ですと,電車がない。これは本当におかしな話だと私も思いますけれども,では電車にするためにどのような広がりでお金を集めていくのだという,明確なビジョンに基づいていかないといけません。もしこの原子力発電所が終わってしまったら,その税金がスポンとなくなってしまうというような,急に大変なことがくるわけですから,やはり先ほど木元さんが先ほど言われたように,農業と同じで,お金を有効に使っていくためのシステム,ビジョンといったものをぜひ考えて……。いま考えておられるというお話で非常によいなと思ったのですけれども,そういった方法でやっていっていただきたいと思います。
 いま原さんがおっしゃいました京都市のほうも,京都はたぶん敦賀と違うから,隣接地域の問題があるとおっしゃいましたけれども,そのようなところも同じ問題意識があるのかもしれませんね。以上が意見です。

【茅】
 いまのご議論の中でまだ十分出ていない問題として,これは中島さんからも,原さんからも出たのですが,消費地の消費者がいったいそういった電源立地に対してどれだけの負担をしているのかということが,いまの制度の中では見えない。これをもっと見えるようにすべきだというご意見があったわけです。この辺は他の方々はどうお考えでしょうか。確かに私もそういう側面は現在のやり方にあると思うのですが,それを見えるようにするというのは具体的にどういうことを言うのかという点についても,ご意見があれば,お願いしたいと思います。原さん,この点何か具体的にありましたら。

【原】
 例えば,電源開発促進税が電気料金の徴収票と言いますか「お知らせ」の中にきちんと書いてあれば,それだけでもずい分違います。電気税というのが前にありましたね。電気税のときには表示がありました。いま消費税も書いてあります。電源開発促進税は事業者が払うものだから,書かないということらしいですね。ですから,表示がありません。
 ですから,私たちが電気料金を収めたときにこのように税金は使われますと書いてあればですね。例えば,確定申告に行きますと「あなたの税金はこういうふうに使われます」という,簡単なものを配られるではないですか。「電気料金はこういうふうに使われています」という中に「電源立地にこのように使われています」というのが,わかりやすく書いてあれば,自分の電気料金はこのように使われているのかというのがわかりますね。そのくらいのことは電力会社はやってほしいなと思いますね。

【茅】
 逆に言うと,そういうことがなぜできなかったのかはちょっとよくわからないのですが,何かいまのポイントについてご意見ありますでしょうか。栗田さん。

【栗田】
 先ほど申し上げました生産地と消費地の共生という意味では,今原さんがおっしゃるような,そういうことも消費地の方の理解を得るということで電力会社で十分検討してもらうべき問題だと思いますね。

【茅】
 長谷さん。

【長谷】
 私はもっとテレビとか,そういうものを活用して「いま関西の電力の半分が福井県にお世話になっています」とか「そのためにいくらのものを皆さんに負担をしていただいています」と,テレビで出されたら,日常の生活の中で子供さんも皆わかるのではないでしょうか。

【茅】
 いずれにいたしましても,実際にいくら余っているかということについては,私のようにエネルギー関係を自分の専門としてやっている人間はまだ関心があるからわかるのですが,まず私の女房に聞いてもほとんど知らないだろうと思うのです。そういった意味ではいまのような,何らかの形での情報の強化と言うのか……。公開と言うよりも,強化だろうと思いますが,そういった側面の努力が非常に大事だろうと思います。
 この点についてはおそらく反対される方はあまりおられないと思いますので,この点については議論はその辺にしたいと思うのですが,それ以外にいまの地域振興の問題について,まだご意見はありますでしょうか。電源三法も確かに詳細についてということになりますと,これはかなり知識が必要でして,それをここで細かく議論することは正直言ってなかなか難しいものですから,できないと思います。もう少し地域振興という側面から見た場合に,現在のやり方について,こんな点を考えてほしいというご意見が他にありましたら。では栗田さん。

【栗田】
 電源交付金だけではなくて,地域振興というのはそれぞれの県なり,地域で計画をつくって,それを国としてどうサポートしていくかという問題だと思うのですね。そこで原子力行政を進めている科学技術庁や通産省だけではなくて,国全体として,政府全体として,原子力行政を進めるのにどういったサポートをしていくかということを考えてもらうべきなのです。
 先ほどちょっと触れました近畿自動車道敦賀線は建設省の所管ですから「建設省は原子力行政と関係ありませんよ」ということで,従来協力してもらえなかったのですが,最近は科学技術庁や通産省が建設省に働きかけるといったようなことで協力してもらっています。
 やはり内閣にそういった原子力行政を進める部署をつくって,そこで地域振興も一体として進めるといったような,国を挙げての原子力行政の進め方というものがぜひ必要なのではないかと思います。

【茅】
 はい,ありがとうございました。田中さん。

【田中】
 2点ありまして,1つはやはり地域振興の中身というのが問題……。地域特性がありますから,なかなか難しいと思うのですけれども,もうちょっと具体的に何かということをやはり地元のほうから言っていただくということが,国民の合意とか,あるいは国民の理解を深める上では,特に電力消費地の住民に対しての理解を深めるためには非常に大事だろうというのが1点です。
 第2点は先ほど木元さんがちょっと指摘されたのと,いまの私の前半と連動するのですけれども,要するに「私の町ではこうしてほしいのだ」と。それはよくわかるのですが,ただ,福井県のように非常にたくさんの原子力発電所がある県もあります。当該設置市町村が1つであって,周囲にも市町村がいくつもある。三法交付金の分け方ですが,1対全部足して1という地域が重複しているところはよいのですが,1ないし2の原発がポツンとある場所も日本の中にはたくさんあるわけですね。そうすると,1もらえる市町村は計画を立てられるけれども,全部足して1になる市町村は計画の立てようがないのですね。
 そうすると,結局無駄な建物と言うか,箱ものしかできない。こういう問題をどうするのか。そうだとすれば,1対全部足して1を広域として,計画全体としては両方被うような形で計画を立てる。地域づくりという意味での広域計画について,話し合いをしていくということも将来考えられるのではないか。その辺をどのようにお考えか。

【木元】
 いまおっしゃったことと丸っきり同じなのです。先ほど知事さんも河瀬さんも,自由度のことをおっしゃった。その自由度,柔軟性,その応用をどうするかということにしぼられるだろうという気がいましているのです。
 ですから,最初におっしゃったビジョンはどんどん出してほしいのです。その範囲が自分のところではできないけれども,これとこれを合わせたときにできるという場合に,そこで知事なら知事,市長なら市長が全部を統合して「じゃあ一緒になって,こうしようじゃないか」という,その自由度を持たせるように,持っていただくようにしたいということにしかならないのですね。あるいは制度をダイナミックに変えてしまうか。
 それといま田中先生がおっしゃって,私とちょっとニュアンスが違うのは「こうしてほしい」というのではなくて「こうしたい」と。自分たちから「ほしい」と言うと,いつももらっているという感じ。そうではない。「こうしたいんだ」という,その積極的な意欲のほうが私は重要だと思っているのです。それに対してはいくらでも国民は目を向けるだろうと思うのです。「してほしい」だと,なかなか目を向けにくいかもしれない。

【茅】
 河瀬さん。

【河瀬】
 いまお話に出ました電源の立地地域の話は先ほど言った通りなのですけれども,例えば新規にできる場合はご承知のように原子力立地部会がありまして,私もその委員になっていますが,その中でいろいろな地域振興策を審議する場所があるのですね。そういうものをいま私どもがいま現に持っている……。確かに私どもは15基という集中の地域でありますし,また場所によっては同じ自治体をまたがってやるところも現実にあります。
 しかし,思いは一緒なのです。私たちの立場は自分たちの地域をよくしたいと。地域住民に喜んでもらいたい。安心して安全に暮らしてほしいというのが基本ですので,そういうものに向かっての町づくりをしたいという,そういう意見を聞く場です。いまはないのです。先ほど言いましたように,出きてしまえば「はいそれまでよ」ですね。
 そうではなくて,既存がよくならない限り,私は立地などは進まないと思います。いくら頑張りましても,先ほど言いましたように私どもは鏡のようなものですので,私どもの地域を見て判断されますから,そういう点でぜひそういう議論の場も国で設けていただけないかなと。電源立地部会の新規に立地するところはところでもちろん必要ですが,既存の地域などもそれで非常に悩んだところもあるのです。先ほど出ましたように,最初はよかったのですけれども,交付金がもう……。固定資産がどんどん下がった一方で,また財政的にも苦しい地域もありますし,そういう既存をまず大事にしていただくという方法も何か考えていただけるのでしょうか。木元先生。

【木元】
 いまのお話がとても重要だと思うのは,例えば,フランスなどでも若干そういうのに近いのがあるような気がしたのですけれども,既存の地域の中でMOX燃料を入れている所もある。そうすると,地域の住民の方々の代表,国,地方の自治体の方々が話し合う組織がある。地元の方々のメンバーは市長さんもいらっしゃれば,主婦もいれば,ジャーナリストもいれば,そういう人が皆入って「今後この町をどうしようか」という会合が月に1回とか,あるいは3か月に1回開かれる組織があるんですね。それは自発的につくっているのか,国が指導したのかよくわかりませんけれども,私はおそらく自発的に声が上がってできたのだろうと思います。
 そういう意味合いでしょうか,河瀬さん。そこでいろいろ審議をして「じゃあ既存のところでこういう問題があるから,これはこういう方法を提言したらいいんじゃないか」と。その話し合いの場から,上に要請しておくとか,そういう構想でよろしいのでしょうか。

【河瀬】
 要するに今日の会議も一応地域振興だということがメインだと思いますので,そういう中身がまた国のほうに上がっていくと思いますけれども,これはやはりある事故があって「もんじゅうんぬん」の中の1つのことですので,たまたまああいう事件があって設けられたものです。本質的にはあってもなくても,地域振興等々は私たちの課題でありますし,やはりそういう電源立地部会のような形のものを……。

【木元】
 国の部会として。

【河瀬】
 設けていただくのも,1つの方策かなと。
 私は思うのですけれども,人間もそうですけれども,自治体も努力する自治体は報われてもよいと思うのです。3,300からの自治体がありますけれども,これは絶対競争になります。全部が同じように一ぺんにはよくならないのではないかと。しかし,私たちはやはり競争し合いながら,自分たちの自治体をよくしたい。努力したいのです。努力します。努力するところは報われるようなことも国としては考えるべきではないかなと思うのですけれども。そういうものを含めて,私はたまたま原子力発電所が立地しているという1つの自治体ですが……。

【木元】
 そうすると,立地の,例えば福井なら福井にそういうのをつくるのではなくて,中央につくって……。

【河瀬】
 そうです。

【木元】
 それでいろいろな立場の方が出て審議して,方策を決めると。

【茅】
 いまの河瀬さんのご意見というのは既存立地地域の状況のあり方というものを常設的と言ったらよいのでしょうか,そういう形で検討するような組織を何らかの形で国の中につくっておくべきだというご意見ですね。

【河瀬】
 はいそうです。

【茅】
 これについて,他の方で何かご意見おありですか。

【原】
 よその者が口にすることではないと思うのですが,地元で住民参加型でビジョンをつくるというシステムですね。いま国のレベルでという話でしたが,地域段階で皆でわが町をこのようにしようという,そういうビジョン委員会と言いますか,そういうものがやはり必要だと思うのです。
 最初ご紹介した京都の場合は,環境問題を中心にしたアジェンダ21というものでしたけれども,市民も事業者も行政も一同に集まって,ずい分会議を重ねて1つの努力目標を共有化していくということをやりますね。ですから,福井県なり,敦賀市をこんな町に,こんな県にという,そういう住民参加型のビジョン委員会はやはりどうしてもこういう時期に必要なのではないでしょうか。

【茅】
 河瀬さん。

【河瀬】
 そういうことは当然やっていますし,そういう中で敦賀は港を中心として「世界と触れ合う港町,魅力溢れる交流都市敦賀」というのを掲げて,いまそれに向かっているのですが,その中に港の整備があります。先ほど知事がおっしゃっていただいた高速道路,または電化の問題,直流化の問題とか,いろいろあるのです。それが建設省ですとか,運輸省ですとか,やはり全部国に関係しています。電源立地部会というのは,ご承知のように外務省と文部省は入っていませんが,あとの省は皆入って,そこで地域振興策を検討してもらうのです。これはあくまでも新規立地の地域だけの話ですので,それを私ども既存の中にもつくってほしいということで,もちろん計画はしっかりと練っています。

【茅】
 いまのご意見は先ほどの栗田さんのご意見と共通していて,国の行政の縦割りの中でいかに横割り型でこういった立地地点の今後を考えていくような組織をつくっておくかということだと思います。
 他にこの地域振興について何か。栗田さん。

【栗田】
 ちょっと補足的に申し上げますけれども,福井県の実情としまして,この嶺南地域に原子力発電所が立地している市町村とその周辺の市町村とでこの交付金がもらえる,もらえないということもありまして,なかなか感情的な問題もありまして,そういう弊害も実際のところあるわけです。
 われわれが言っています嶺南地域,若狭地域全体としての振興策をわれわれもつくっていますけれども,それを具体化するのに交付金がよいのか,何がよいのかは別として,先ほど申し上げました近畿自動車道敦賀線なり,電化なり,あるいは観光なり,そういった嶺南地域に共通の問題について,国に積極的な対応をしてもらうということを特に希望しておきます。

【茅】
 ありがとうございました。そうしますと,時間もだいぶ経ちましたし,皆さんのご意見も私の感じではやや一段落したような気もしますので,地域振興という問題は一応ここまでにさせていただいて,もう1つの問題を……。つまりどういうシステムを,安全の確保と安心の間を結び手だてとして考えるべきかという問題について,ご意見をいただきたいと思います。
 先ほどいろいろな角度からこういった情報公開のあり方についてご意見をいただきました。ウソをつかない情報公開が必要だということについては,どなたもまったく異論のないところだと思うのですが,具体的にどういう方法を考えていったらよいかという点についてはいまのところいくつかご意見がありましたが,十分ではなかったと思います。
 例えば,専門家で言うなれば,一種のインタープリターという形での方々がある1つの機関としてあって,それが常に原子力の状況についてきちんとした説明をすべきだというご意見もありました。原子力の検査機関,その他で本来ウソがつき得ない,そういったストラクチャーを何とかつくるべきだというご意見もあったかと思います。
 ただ,そういう形になることが私は望ましいと思うのですが,具体的にどうやったらそうなるのか。どんなシステムが本当によい点があり,また既存のものでは代替できないのかということを議論しませんと,また屋上屋を重ねることになりかねないわけです。
 そいういった意味で今後望ましい情報公開のためのシステムというものについて,皆様方から率直なご意見をまず伺いたいと思います。どなたでもけっこうですが。

【田中】
 2つありまして,1つはウソをつかないシステムというのは具体的にどういうことかと言う点です。いままでなぜウソをついてきたかと言うと,2つの小さな理由なのですね。
 1つは原子力施設で事故が起こると,マスコミにたたかれるから,できるだけマスコミにたたかれないようにして隠蔽しよう,あるいは情報を曲げて出そうという防衛心理が働きます。ですから,そういう考え方をもう一切しないことが必要になります。たたかれることをしたなら,たたかれても仕方ないと,腹を決めてしまう。それで済んでしまう。
 もう1つは,今度は納期とか,あるいは下請けとの契約とかの問題があります。つまり,経済的な要因です。納期が遅れると違約金を取られるから「それじゃあ検査などは1つだけして,あと全部したことにしてしまえ」と。つまりこれは経済的利潤,利益第一主義です。つまりそういう片寄った方針を止める。つまり正直は正直であるという認識を持つ。特に人間の生命とか,財産に関係のあるものについては,利潤よりも正直のほうが優先する。例えば,これは原子力だけではありませんけれども,薬事法などで規定されている薬の実験でもそうです。現にいまも,そういう事件が起こっていますね。
 ですから,経済性よりも安全性のほうを優先するという原理を取り入れる。私が先ほど申し上げたのはそういうことなのです。以上です。

【茅】
 ありがとうございました。ただ,これは私が議長として思うのですけれども,お考えはまったくもっともなのですけれども,マスコミにたたかれるから隠そうという考えにしても,納期に間に合わなくてお金を払うのが嫌だから何とか間に合わせようというのも,当然現在の社会では普通に出てくる考えだと思うのです。
 それをそうすべきではないという言葉だけではなかなか実現ができないと思うのですが,何かそれに対して具体的な対応の方策はあるのでしょうか。

【田中】
 つまりそういうことから生じた現実の被害またはコストを考えることですね。医薬品の回収でもよいです。損害賠償でもよいです。そういうことをした企業が改組しなければ,存続を社会的に拒否されるというような,そういうことです。
 つまり,そういうこと(有形無形のコスト)に対する先見を持つということです。ですから,それが経済の問題と,社会心理の問題,あるいは社会道徳の問題だという意識を持つことが重要です。いま盛んにモラルハザードということが言われていますけれども,経済の外にあるモラルという社会の道徳に対して,むしろ社会心理の問題としていえば,ギャップがあるのですね。ですから,それを埋めないことには,原子力であろうと,あるいは医薬業界だろうと,成り立たないということを,企業が,あるいは政府が,理解するということからスタートしないと,この問題は泥沼にはまるということなのです。

【茅】
 他の方はいかがでしょうか。石川さん。

【石川】
 いま田中さんのおっしゃった通りで,米ソの崩壊前までは「何しろソビエトに負けちゃいけないんだ。いや,アメリカに負けちゃいけないんだ」というので,強力なある1つの目的を設定しながらやっていきましたね。そういう時代ではタイムスケジュールに間に合わせなくてはいけないというのでいま言ったような隠しもあったかもしれません。ところがソ連の崩壊によって,その必要がなくなった。この結果、ずい分社会的に変わってきているのではないかと思うのです。
 ですから,この間の高速炉懇談会のときにも,もんじゅのターゲットがなくなったというのは,まさにそういうところを敏感に反映しているのだろうと思いますね。私はこれは非常にけっこうな方向にいっているのだろうと思います。
 隠したり,約束を破ってはいけないというのは……。例えば,私は今日来るのに勝田からずっと電車に乗って来たのですけれども,タイムスケジュールが狂っていれば,ここに来られません。現在社会というのは,そういった約束ごとで成り立っていますから,これを破るのはやはり猛烈な悪だ。そして有害だというようなところから,世の中の意識が変わってきているのですね。広い意味の品質管理です。これが世界的な動きのほうになってきています。だからと言って、これまでの日本的なものが一朝一夕に変わるとは思いませんけれども,グングン意識改革は進んでいると思っているのです。またそうしないと,将来の希望はないわけです。
 もう1つ,ウソをつかないということとともに,情報というのは出し手がきちんと出すということとともに,受け手がやはりある程度それを理解できることが必要です。先ほど教育問題がありましたけれども,私はこれが非常に大事だと思うのですが,その間をつなぐ情報の伝達者がやはりきちんとしなければいけないですね。どちらかと言うと,原子力とマスコミというのは相性が悪いものですから,必ずしも全面的に事実が出るわけではありません。場合によってはある一部分の事実のみがマスコミによって報道されているという面もあるわけですね。
 ですから,この3つを共にきちんと直していくことが必要だろうと思いますね。それが安全性を安心感に持っていくために皆で努力をしていかなくてはいけない問題だと思います。

【茅】
 他にいかがでしょうか。

【木元】
 いまおっしゃったことはすべていろいろなところで論じられていることかもしれません。ここでいま石川先生からご提示があったのであえて申し上げさせていただきますけれども,ウソをつかない,正直に言わなくてはいけない。例えば,あかつき丸のことがありました。高レベル放射性廃棄物を運んでくるときにあかつき丸という船の名前は公表しない。航路はどこを通るかも言わない。科学技術庁のほうになぜ公開しないのかということがあった。その場合の説明がものすごく下手ですね。なぜ公開できなかったのかということを正直に言えばよいのです。「これはフランスとの契約によって,航海上に治安の乱れとか,何か不測の事態が生じることがあるから,両国家間の契約によって,これを公開できないことになっている」と,正直に事実を言ってしまえばよいものを,何か下手に船名はわからないなどとコトコト言うものですから,不信感が生まれる。
 ですから,情報公開するにもテクニックがいるし,情報公開できない機密条項というのはやはり地球を不安に陥れるということもあるわけですから,それはきちんと踏まえた上でやる。けれども,そのことをちゃんと説明をしなければいけない。そのアカウンタビリティがいままで抜けていることが1つありました。
 それからいままでの旧動燃のことから始まった,先ほどのキャスクの改ざんの事件なども1つのカルチャーの問題で,先ほど田中先生がおっしゃったように,われわれの社会の中ではこういうことをあえて言ってしまうと,誤解を受けるから言わないほうがよいだろう。それから,もっと狭くて企業の中で自分がそういうリスクを負いたくないということがあったり,いろいろなことが1つのカルチャーとして存在していて,それはこれも護送船団方式に皆で守ってきた土壌があるので,それはもういま違うのだという認識を持っていただかないと,どうしようもないことだろうと思っています。
 ですから,1つは意識改革と言うか,カルチャーがどうなっているかということを,それぞれその立場の人たちが考えてみる。いまのサイクル機構でも研修をやっていらっしゃるそうですけれども,そういうことを今度外に向かって堂々とご自分たちも発表なさる時期がきているのではないかと思うことが1つです。
 もう1つは,石川先生がおっしゃった中で,出している情報を私たちはメディアを介在して手にするわけですから,われわれの受け取る側のメディアリテラシーが大切であるというのはずい分前から言われていますけれども,自分たちが「その情報は本当に正しいのだろうか」と。それとこう言っているけれども,どうだろうかという……。自分が受け止めて,それをリテラシーする,読み書きをする,分析をする,そして選択するという能力を持たない限り,こんなに情報過多の社会では自分自身を失ってしまうと,私は思います。
 ですから,そういう意味で高度情報社会の中で自分自身が持つメディアリテラシーもある。そのときに初めて,マスメディアがいまこういう報道をした。自分で調べてみたらどうも違うということが,国側から,あるいは電気事業者から,あるいは消費者から出たときにそのマスメディアに向かって「いまあなたは敦賀のことでこういう情報をお出しになったけれども,それはどういうことですか」と,また問い返すシステムであるとか,問い返すことの必要性というのがいまでてきているのではないか。
 これはヨーロッパでもアメリカでも,広報という範疇の中にだいぶ入ってきています。その中で「ああ,メディアが言っていたのはこういうことだったんだ。じゃあこれはどうですか。ニュースソースはどこなのですか。一部分だけ取り上げているけれども,他の問題はどうなのですか」と。そのようなやりとりをする状況がやはり展開されないと,正確・公正な情報というのは私たちは手に入れることができないのではないかと思っています。情報公開というのはそういうことが含まれるということだと思います。

【茅】
 他の方いかがですか。栗田さん。

【栗田】
 特に原子力発電所の問題でいろいろ隠すということがあるわけですけれども,おそらくその背景には田中さんが言われましたようにマスコミにたたかれるとか,あるいは経済性がどうかということ,あるいはそれを公開することによって,原子力開発が遅れてしまうのではないかといったような意識があるのだと思うのです。
 そういった事故隠しがもんじゅの事故以来,どれだけ原子力行政を阻害したかという立場に立って考えますと,隠したほうが,正直に言った場合と比べて,はるかに損失が大きいということを原子力発電所に関わる人に意識をしてもらう,やはりその意識の改革しかないのではないかと思います。いかに高いツケになって返ってくるか。その場は隠し仰せても,結局はいかに高いつけとして回ってくるか,ということを意識改革で改善していく,これがやはり基本であって,そのためにどんな機関を設けても,結局はこれは意識の問題ですから,それを改革しない限りは進まない問題ではないかと思います。

【茅】
 ありがとうございました。

【木元】
 もう1ついいですか。安全と安心という話があるのですけれども,私も技術的なことはあまりよくわからないですね。原子力発電所の仕組みなども一生懸命勉強していますけれども,細かいことはよくわからない。では、なぜ安全を確認して安心だと思うのか。
 それは「こうこうだから,安全です」と説明する方の説明のしかた,あるいはその方のお人柄と言うか,パーソナリティによって「あっ,この人が言うから,安全なんだろうな」というところが人間にはあるだろうと思うのです。ですから,いかに国なり,事業者なりがどういう形でどんな人がどのように安全を話したかという,そのことはやはり問われなければいけないと思います。そのときに「この人が言うから,安全なんだな。ああ,それじゃあ安心した」という形が出てくるのではないかと思うのです。これから人それぞれが問われるということで覚悟しなければいけないのではないかという気がしています。

【茅】
 いまの点,私が先ほどからの議論を伺っていますと,やはり意識の改革が基本であるということと,説明をする人間に対する信頼感が重要だという,いまのご意見。そういった形で具体的にこんなことをやるべきだと。例えば先ほどちょっと話に出ましたように,何らかの新しい仕組みをつくるとか,そういったシステムを変えるというご意見はいまのところ出てきていないのですが,その辺について何かご意見おありですか。中島さん。

【中島】
 例えば,原子力発電所が事故を起こしますと,地方のそこにある自治体が必ずおっしゃることは通報が遅れたということなのです。私はいまこれだけ情報システムが発達している時代でそんなことを言っているのはおかしいと前から言っているのです。
 これは,例えば,福井県庁の中に15基の原子力発電所を全部モニターできるシステムを情報化することは簡単にできるはずなのです。ところが,それがなくて「いや,ファックスがきたのが半日遅れました」とか「1日遅れました」と,そういう話ばかり依然変わらずにずっとやっているのです。ですから,原子力発電所が発信しなくても,県庁はどうもおかしいということをすぐわかるシステムを……。これは技術的には不可能ではないと思います。
 ところが,何かそれをやらないでいるのはなぜだろうと,私はむしろ不思議に思っているのですけれども,そういうことは可能ではないでしょうか。

【茅】
 具体的にもうちょっと言っていただいたほうがわかると思います。

【中島】
 逆に言えば,モニターできるようにケーブルをつないでおけばよいわけですから。県庁のほうで,あるいは敦賀市のほうですぐわかるようになっていれば……。ただし,そうすると,専門家がいないと,何が起きたか判断できないという,見つけるのが一番難しいけれども,日本全国の中では福井県が一番専門家を持っているところですから,私は不可能ではないと思うのです。そうすれば,通報遅れなどどいうことを言わせないで済むということではないかと思うのです。

【茅】
 現在火力発電所の大気汚染物質の排出に関しては地方自治体でモニタリングシステムを持っていて,直接監視をやっていますね。そういった意味で原子力について同じようなシステムにしたらというご提案なのですが,これについてはいかがでしょうか。栗田さん,河瀬さん,そういう議論がいままでに出たことはありますでしょうか。

【栗田】
 具体的な意見としては聞いていませんけれども,可能ならそういうことは当然……。敦賀にも監視センターがありますし,そういうことで十分研究してみたいと思います。

【茅】
 河瀬さん。

【河瀬】
 知事と同じですけれども,いろいろ監視システムは県のシステムを通じて市役所の中にもあるのですが,事故が起こったうんぬんの通報遅れということは過去確かに遅いではないかということもありましたし,先生におっしゃっていただいたようなことが,またシステム的にどうかなということを研究はしたいと思いますけれども。

【茅】
 中島さん,追加があれば。

【中島】
 ちょっと違う側面から言いますと,例えばかなり大きな事故が起きたときは原子力安全委員会の決定でも,要するに当の原子力発電所以外に事態の収拾を図るための別の制御システムを置くようなことが計画に出ているわけです。ですから,それは可能なのですね。安全委員会ではそういうことを考えている。ただ,現在それと地方自治体とのことがつながっていないと思うのです。それで先ほど言ったことを申し上げたわけです。

【茅】
 石川さん。

【石川】
 いま中島さんがおっしゃったようなことができれば,それはすばらしいのですけれども,原子力発電所の中には非常にたくさんの計測器類がぶら下がっています。例えば,格納容器の中の水溜まりのところの水位が普段より急激に増え出したとします。この水位を計る計器を福井県なり,敦賀市なりに置いておくことは楽だと思うのですけれども,その原因がいったい何か、例えばどこのバルブが悪くなったかとか,そういうのは映像に出ません。見つけるのが大変な訳です。できる限り早くこれは出さなくてはいけません。これが遅滞していれば,そのモラルが問われているわけなのですけれども,このときにぜひ許してあげていただきたいのは,見に行ったときに,何かトラブルの混乱期に時折間違いが出るわけですね。
 この間こちらでも油が流れ出ましたが,その後で東京湾でも油が流れ出ました。その折,流出量を1桁間違えて発表して後で訂正したら大変でした。だが大臣が発言して,この問題は消えてしまいましたけれども,混乱期の情報というのは間々間違いがあるのですね。それを「けしからん,けしからん」でやってしまうと担当者が萎縮して,石橋を叩いてから発表するものですから,それでまま遅れるということもなきにしもあらずなのですね。
 ですから,こういう混乱期のときには見つけたり,わかったりしたことは多少訂正してもよいというような文化をつくっていかないと,遅滞なく情報を公開することはできない。このようなこともいまからわれわれはつくっていかなくてはならないわけですね。ただ「公開しろ」だけではなくて。昔の日本的な考え方というのもまだ社会に残っているわけですから。
 それでいま思い出すのが,先ほど木元さんがおっしゃった発表が非常に下手だというのは,お役人というのはちょっとでも間違ったことを言うと,いけないのですね。「これで完全に間違いない,間違いない,間違いない」となってしまってから発表しますから,マスコミなどではもう「言い古された」ことですから,全然面白くない。
 ですから,情報をきちんとオンタイムに,必要なときに発表できるような「お役所だって間違ったっていいや」というぐらいの文化をつくっていかないと。外国はそうですね。アメリカなどはしょっちゅう間違っても,それを訂正している。訂正すること自身は悪くないのだけれども,いま日本でそれをやりますと,何しろ「けしからん,だめだ」とお話になる。こういうところを,われわれはまた改めていかないといけないと思うのですね。

【茅】
 ありがとうございました。田中さん。

【田中】
 今日ここへ来るときにタクシーに乗りましたら「いや,『もんじゅ』が起こったときにはわれわれは大変儲けた。とにかく『カメラさん』と言うか,テレビのビデオで撮ったのを京都に持って行く,大阪に持って行く。そういうのが何十台もあったから,大いに儲けました」という話なのです。
 これはテレビの場合には特にお昼のニュースに合わせるとか,新聞の場合には夕刊の締め切りというのがあるでしょうし,時間に迫られます。ですから,私はよく電力事業者の広報関係の方々に言うのですけれども,マスコミに対するサービスも考えなさいよと。夕刊に載せたい,朝刊に載せたいという締め切りがあるのだから,それに合わせて「いまのところはこういうことが起こっているのだけれども,フォローアップはわかり次第また……。大体何時頃また集まって下さい。そのときに果たして全部がわかっているかどうかわからないけれども,この次は何時にします」という形で,わかっていることだけを記者の人たち,あるいはカメラの前で言うことが重要なんです。つまり,時間を遅らせないということ。何か隠しているのではないかという誤解を解く1つの一番よい例だろうと思います。
 先ほど茅さんが組織上の何か救済策はあるかとおっしゃったので,あえて私はフランスの例を申します。フランスの原子力発電所は1つ1つが独立しています。フランス電力公社の本社はパリにあるのですけれども,各地方の原子力発電所が1つの独立したユニットなのです。
 ですから,そこの広報担当部長は広報に関するすべての権限を持っているわけです。したがって,彼ないしは彼女……。彼女のほうが多いのですけれども,何か故障が起こると,技術者に向かって「こういう情報をいつまでに提供して欲しい」ということを要求できるのです。
 ですから,すべての情報が広報部長のところに集まる仕組みになっている。今度は広報部長がマスコミに対して「いまのところわかっているのはこれだけ」と発表する。その都度の判断は,技術者などと相談して決める。もし安全か,安全でないかがわからないならば,専門家の意見を聞いた上でそのことを率直に言う。
 そのように合理的に割り切って考えるか,あるいは日本のように現場と本社,あるいは現場と役所を行ったり来たりしている間にすぐ2,3時間経ってしまって,あたかもこれは何か重大なことが起こっていて隠しているかのような印象を与えるか。
 ですから,そういう意味では組織上,いま言ったような,かなり抜本的な改良が必要なのかもしれない。あるいはフランス風にやるのがよいのか,あるいは日本風のやり方があるのか,その辺はわかりませんけれども,やはり工夫の必要はあると思いますね。

【茅】
 河瀬さん。

【河瀬】
 いま田中先生からもんじゅのときの話も出ましたが,あれはまた確かにタクシー会社だけよかったですけれども,観光では魚は売れない。ひどい目に遭ったのです。ですから,その1例だけはご紹介します。
 石川先生から,総体制等々で非常にあたふたすることもわかりますが,やはりこれも訓練によって解消できると思います。やはり原子力に携わっている人にあたふたされたのでは,私どもはたまったものではありませんし(笑),第一報で「原因を調査します」だけでよいと思います。しっかり原因を調査して「こういうことでした」という報告だけは速やかに行なえる体制をつくっていただきませんと,あたふたされても,本当に私どもはたまりませんので,そのことを強く要請しておきます。

【茅】
 では長谷さん。

【長谷】
 なぜウソをつくかというお話が先ほどからずっと続いているのですけれども,民間の会社でも官庁でも皆そうだと思うのですけれども,その上の人が小さなことでも怒ってばかりいたら,皆悪いことを言わなくなってしまうのですね。どこの組織でもそうだと思うのですけれども。われわれの会社でもそうなのですが,上に立つ人は都合の悪いことでも黙って辛抱して聞いてあげるという雰囲気がないと,どんどん隠していったら,最後に会社が潰れるようなことになってしまうのですね。
 ですから,原子力でも何でもそうですけれども,小さな事故を全部マスコミ,あるいは関係者の人がどんどん怒っていると,言わなくなってしまい,そのうち大きな事故になってしまいます。ですから,事故も小さなトラブルも冷静に聞いて理解するという姿勢も必要なのではないですか。ですから,やはり情報を受ける側の立場もいろいろ考えていかないといけないと,私は思うのです。

【茅】
 中島さん。

【中島】
 福井県ですから,これだけは言っておかなければいけないと思うのですけれども,1981年でしたか。福井県が1か月に一ぺん海草の放射能を調べて,日本原電の放射能漏れを発見しているのです。これは地方自治体としては非常に画期的な功績でした。一応1か月に一ぺんにせよ,そういう環境調査をきちっとやるというシステムができていたので,そういうことが可能になったと思うのです。
 ところが,私がその当時調べてみますと,全国的にはそういう体制はできていないのです。各地方自治体が自分のところの住民の安全を守るために……。福井は非常に集中して,原発があったから,そういうことをおやりになったのだと思うのですけれども,まだ全体としてはそうなっていないところが多いと思います。
 例えば,はっきり申し上げて,新潟などは世界最大の原子力発電所があるにも関わらず,その環境監視体制は,福井に比べれば,非常に見劣りします。一番大事なのはやはり何人かでもよいから,専門家をちゃんと県庁の職員としてそういう仕事に当てることが重要です。
 その教訓のもう1つは肝心な事故を起こした原子力発電所がわからなかったわけです。どうしてそんなことが起こったか,原因が判明するまでには相当長い時間かかってやっとわかったということはありますので,事故が起こったときは情報を発信する側のほうもいつでも何でもわかっているわけではないということも常識にしておく必要があると思います。

【茅】
 いまの環境のモニタリングシステムという話ですが,福井県は現在もそれを存続してやっていらっしゃるのでしょうか。もしおわかりでしたら。

【栗田】
 はい。

【茅】
 やっていらっしゃいますか。他にこの辺についてご意見……。田中さん。

【田中】
 いままでで,そういういろいろな事件を起こした側のことばかりのお話が出ていますからね。私も実はマスコミには親しい友人がたくさんいまして,面白い話も聞いています。ここでそういうことをご存じない方もいらっしゃるから,カメラさんがあそこにいるから,ちょっと具合悪いのですけれども,あえて申し上げておきます。
 昔ある原子力発電所でちょっと放射能汚染があった水漏れを起こしたことがあるのですね。そのことが外に漏れたものですから,マスコミさんが各地からバーッと集まった。ところが,もともとそれほど大した事故でもないものですから,その原子力発電所の内部はきわめて平静だったのです。右往左往しているのはカメラさんばかりだったのです。カメラを抱えているクルーばかりが右往左往している。
 ところが,正午の番組に何かニュースを流さなければいけないですね。そこでお互いに右往左往している取材クルーが撮り合って「何やらただならぬ気配が原子力発電所の構内にはあります」ということになったのですが実は……。それを視聴者のほうは「あっ,何か起こったのか」と思うのですけれども,実はお互いにカメラさんがカメラさんを撮り合って(笑),何やらただならぬ……ということになった。ただならないのはテレビ屋さんだけだったという話もあるわけです。
 もう1つのトリックは,例えば放射能をどうやって探知するか。いろいろな探知機がありますけれども,「音が出る」というトリックですね。ジジジジジー。音があるかないかというのは,要するに放射能があるかないかということなのですけれども,あると,何でも致命的なように思いがちなのです。けれども,実際ガイガーカウンターであれ,シンチレーションカウンターであれ,目盛りが動いたり,音がしただけではわれわれの生命,あるいは健康に影響があるものでもないのです。
 もしそういうカウンターで東京の大きなビルの大理石,特にイタリーなどから来た大理石を計測れば,カウンターがガーガーガー鳴ることがあります。場所によってはウランが含まれている地面でも鳴ることがあります。ですから,あれが1つのトリックでして,何かジージー鳴ったり,目盛りが動いたりすると,何か遺伝に関係があったり,病気に関係があるかと思いがちですが,そうではない。
 ですから,もう少し科学者の方々が専門の立場から,放射能や放射線の存在していること自体が必ずしもわれわれに害がないということを目で見えるように教えていただき,われわれの知識を広げていただく必要があるのではないかと思いますね。以上です。

【茅】
 木元先生。

【木元】
 田中先生のおっしゃったことはやはり放射線の学習だと思います。それを小学校からやるシステムがないし,日常的に健康診断や歯医者さんに行ってレントゲン撮影で放射線を浴びているのだけれども,それが放射線であることをわかっていないなどというのもありますから,それは教育の問題だと思います。
 もう1つだけ,先ほどから広報の話が出ているのですけれども,私はいままで広報はなかったと思います。電力側も,国側も,ちゃんとした広報は……。広報というのはやはりちゃんとしたスポークスマンを置くことだと思います。
 ですから,いろいろなアクシデントがあったり,トラブルがあったときに,堂々とした広報官,スポークスマンが出て「放射能漏れはありません。これがこうなったことです,ご迷惑をかけません」と,堂々と解説する人がいなくて,オタオタしていたということがあるので,やはり広報というのは国や事業者を代表して自分たちの見解を述べるという,そういう意味では広報が企業の中のトップなのだという状況をつくっていただかないと,こういう情報化時代にはやっていけない。
 こんなことを言ってしまうと,誤解があると困るのですけれども「広報でもやらせておくか」という人事はなかったですか。ですから,そういうことではなくて,広報に一番有能な人をつけてほしいと思うことが1つ。
 また言わせていただくと,例えば,エネルギープラザだと,プラザレディがいらっしゃいますね。こういうPR館に若いお嬢さんがきれいな制服を着ていらっしゃるのはとてもよいのですけれども,先ほど田中先生が広報官は皆女の人だとおっしゃった。私もヨーロッパなどに行ってお会いしましたが,皆おばさんです。おばさんが割烹着みたいなのを着て,普通のワンピースを着て,お掃除のおばさんかなと思ったら,すごい広報官で「これはこうですよ,質問ありますか。さて,私はこれから地元の人,サイトの人たちとブルーベリーを摘みに行くんですよ」などどということをおっしゃっていながら,理学博士でバーンと講義をするのですね。
 そのような1回リタイアしても何でもよいですから,年季の入った人,安心できる人を現場につけてほしいし,広報はきちんとしたスポークスマンになれる人をやはり出してほしいなと。これは要望です。

【茅】
 ありがとうございました。木元さんはマスコミの方ですから,大変説得力がある(笑)。時間がほとんど終わりに近いのですが,どうしても一言おっしゃりたいという方があれば,どうぞ。

【原】
 住民投票のことが議論になっていませんけれども,私は先ほども申し上げたのですが,住民投票の制度をやはりこの際もう一度よく研究し合ったほうがよいと思うのです。
 田中さんなどにコメントをいただければと思うのですけれども,なかなか法的根拠を持った住民投票というのはできない仕組みですね。ですから,自主投票になってしまう場合が多いし,何らかの条例に基づく投票が行なわれたとしても,法的な効力を議会に持ち得ないというような実態が伴っていますので,日本の中で制度化するというのは難しいのかなとも思うのです。
 しかし,やはり社会が成熟していますので,一人一人の市民の意志表示をできる仕組みはつくってほしい。地方自治法から始まるのでしょうか。住民が意志表示をしたいと思ったときには,住民投票ができるという,まずその制度は保証してほしい。神戸のように制度がほしいと言ったけれども,議会がポンと蹴ってしまったというようなことになると,どうしようもないのではないでしょうか。
 その点でまず制度は保証する。その上でその効力をどう見るか,どう評価し合うかはその状況に応じて,これはまさに政治的に決めるということだと思いますが,入り口での制度をまずつくるという点では前に進めてほしいなというように私は思います。

【茅】
 ありがとうございました。実はいま原さんのおっしゃった問題は議論をしたくて,最初にも申し上げたのですが,何しろ時間が限られていますのでそこまで残念ながら手が伸びなかったというのが実情です。ここはご了解いただければと思います。他の方よろしいですか。
 それではだいぶ長い間議論していただきましたが,ちょっと簡単に本日出ていました後半の議論のことで,特に私自身として,気のついたことだけを申し上げますと,こんなことかと思います。
 最初の地域振興の問題についてはやはり現在の制度の見直しをすべきだと。特に柔軟な運用をもっと考えるべきであるというご意見が非常に大きかったかと思います。そういった交付金を消費者がどれだけ負担しているかということが理解できるような方策を今後やはり講ずべきであるというご意見が強かったかと思います。
 後半の情報公開の問題については,何よりも大事なのはシステムよりも何よりも,意識改革であると。そして安全性というものを優先する考え方にならなければ,問題の解決はないというご意見で,これは皆さんのかなり多くの方のご意見だったように思います。
 また私が大変印象的だったのは間違いを修正することができるようなシステムということで,これは言う側にもそういう勇気が必要だけれども,その情報を受け取る側にもやはりそういった考え方が必要なのではないかということで,この点は今後ともやはり考えていくべき問題ではないかと思います。
 その他,モニタリングのシステムを原子力発電所だけではなくて,外にもつくるべきだというご意見もありましたし,そういうものについての検討も何らかの方法で必要かと思います。その他いろいろな問題が皆さんから出たと思います。できるだけ速やかに情報を出してほしいというご意見も当然のことで,皆さん一致できるご意見かと思いますが,その他広報のあり方,その他いろいろありましたけれども,少なくとも今回情報公開という問題に関しましてはかなり皆様方から前向きなご意見が出たということで,私は議長としては大変高く評価させていただきたいと思います。
 時間が5時を過ぎましたのでこれで閉会させていただきますが,この円卓会議の最後に提言というのを出すことになっているのですが,今日いただきましたご意見はそこに反映させるように努力をしていきたいと思います。本日はどうも大変ありがとうございました。

【事務局】
 それではこの辺で本日の原子力政策円卓会議を終わらせていただきたいと思います。先生方,長時間のご議論大変どうもりがとうございました。傍聴の皆様方におかれましては,本日は長時間最後までご静聴下さいまして本当にありがとうございました。事務局より深く御礼を申し上げます。

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