〈資料5-2〉
11・24・98

第3回原子力政策円卓会議・発言要旨
学習院大学法学部
田 中 靖 政

1.「推進」「反対」の違いはあるにしても、その違いを超えて、原子力問題を考える際には以下の問題を別個に評価検討することが必要と考えられる。

2.「原子力の有用性」についての評価検討のポイント:
(1)基本的認識の枠組み:「社会・経済システム」に係わる原子力の位置づけ。
(2)エネルギー資源小国の日本がエネルギー自立を計る際の選択肢の重要な一つとしての「原子力」の役割。
(3)70年代の「石油危機」で象徴される「油断」への対応策としての「原子力」の役割(=エネルギー・セキュリティー)。(主婦)
(4)「地球温暖化防止」の一環としてのCO2排出規制の公約を果たす上で「省エネルギー」と平行して考えなければならない「原子力」の役割。(主婦)
(5)「自然エネルギー」との相互補完関係にある「原子力」。(主婦)

3.「原子力の安全性」についての評価検討のポイント:
(1)基本的認識の枠組み:「機械・人間システム」に係わる原子力の位置づけ。
(2)原子力事故に関する国際的評価基準(7段階の国際評価尺度)が作られた背景と日本の原子力関連施設で過去に発生した事故や異常に関する「評価実績」の周知徹底の必要。
(3)「リスク」に係わる国民の理解の必要。今日の生態系が太古からの放射線の影響のもとで進化してきた歴史的事実、核医学がガン治療などの難病治療に貢献していることの事実などに関する教育の重要性。
>(4)原子力関係者による「安全性向上」の努力を「行動によって示すこと」の重要性。特に機器製造者の責任の重さを自他ともに明らかにする努力の重要性。

4.「原子力に関する情報の透明性」についての評価検討のポイント:
(1)基本的認識の枠組み:「情報公開システム」に係わる原子力関係者の認識とモラルの位置づけ。
(2)原子力に限らず、公的な組織(研究所や企業)あるいはこれらに所属する個人による意図的な「隠蔽」「歪曲」「虚偽」は組織の「社会的責任」および「モラル」の上から許容されない。
(3)逆に、マスコミ等による「誤報」、「事実の歪曲」や「一方的報道」も報道機関に課せられた報道の中立性、客観性の責任上、「情報被害者」からの公的な抗議あるいは法的な手段による被害の救済の対象となりえる。