第2回原子力政策円卓会議 議事録

第2回原子力政策円卓会議

1.開催日時

1998年10月26日(月) 13:30~17:00

2.開催場所

サンシャインシティ・プリンスホテル(東京・池袋)

3.本日の議題

「今、なぜ原子力問題か?」

4.出席者(敬称略)

 モデレーター

 招へい者

5.議事録

【事務局】
 大変お待たせいたしました.定刻の時間になりましたので,ただいまより平成10年度第2回原子力政策円卓会議を始めさせていただきたいと思います.本日はご多忙の中,傍聴の方々をはじめ,多数ご参加いただきまして大変ありがとうございます.
 開会に先立ちまして,事務局よりお願いがございます.本日の円卓会議では招へい者の方々やモデレーターの先生方による,円卓での原子力問題に関するさまざまなご議論が期待されておりますので,傍聴の皆様方におかれましては,大変恐れ入りますが,大きな声でお話しになったり,ヤジを飛ばすといった議事進行の妨げになるような行為はぜひご遠慮いただきたく,よろしくご協力のほどお願い申し上げます.
 それでは,ここでいったん,モデレーター会議の座長をお願いしております前東京工業大学学長で現在学位授与機構長の職に就いておられます木村孟先生に,バトンをお渡ししたいと思います.それでは木村先生よろしくお願いいたします.

【木村(学位授与機構長)】
 ただいまご紹介賜りました木村でございます.この新しい原子力政策円卓会議,去る9月9日に第1回を開催いたしました.テーマは「いまなぜ原子力問題か?」というものでありました.
 そのときにも,今回の原子力政策円卓会議の位置づけと狙いについてお話し申し上げましたが,本日傍聴されている方も前回と違う方がほとんどであろうと思われますし,また招へいさせていただいた方もだいぶメンバーが変わっておりますので,今回の新しい原子力政策円卓会議の位置づけについて,再度この場を借りてご説明申し上げたいと思います.
 わが国の原子力政策の方向をめぐりましては,平成8年に,原子力委員会によって,原子力政策円卓会議が組織されました.11回にわたって会合が行なわれ,原子力の今後のあり方に関する国民各層の意見を,広く集める努力が行われました.
 会議のモデレーターは会合の終わりに当たりまして,原子力委員会にいくつかの提言を行ないましたが,その中でもっとも重要な項目の1つが,新しい円卓会議の設置の要望でありました.それを受けまして,今回の円卓会議が設置されたわけであります.
 ここでは,国民各層の間で原子力に関する議論を徹底して行なうとともに,これを広く公開し,原子力問題の状況をより明確に国民の皆様に把握していただくとともに,原子力委員会の下部組織ではなく,独自の立場から,原子力委員会に原子力政策の方向について積極的な提言を行なうということを目指しております.
 このような今回の新しい円卓会議の目的が達成されるためには,国民の皆様方の広い範囲から,多様な意見をここへ出していただき,それについて十分な議論が行なわれることが必要であると考えておりますので,ぜひ国民各層,また皆様方のご協力をお願いしたいと思います.
 次は前回お約束申し上げた件です。前回の第1回目の傍聴者の方々からさまざまなご意見をいただいております.また8月から10月にかけて,一般の国民の皆様方から意見の公募をさせていただきました.今回の会議を始めるに当たりまして,どういうご意見をいただいたかということを,簡単にご紹介をさせていただきたいと思います.
 まず,前回参加された方からのご意見であります.合計27通いただいております.性別で申し上げますと,男性の方が圧倒的に多く,男性は40歳代,女性は50歳代の方が多いという統計になっております.職業別では,男性,女性ともに会社員の方からの意見を多くいただきました.
 原子力政策そのものに対するご意見もありましたが,やはり来場してこの議論をお聞きいただいたという関係で,会議運営に対する意見もかなり出ております.原子力政策そのものに対する意見については,原子力が是か非かというもの,あるいは代替エネルギーがどうかという,エネルギー選択に関するものが多くありました.
 その内訳としましては資源枯渇,エネルギー安定供給の観点から,原子力開発の推進を進めるべきであるとの意見が比較的多く,原子力から撤退すべきとの意見はあまり見当たりませんでした.その他としては,情報開示の必要性や,国民感情に関する意見も多く出されております.
 円卓会議の運営に対する意見については,やはり議論がどうも噛み合っていないというご指摘,論点が明確でないというご指摘も多く出ておりますが,その一方で会議そのものが有益であった,有意義であったという賛成意見もいただいております.
 その他のご意見としては,招へい者の人選に対するご意見が多く出ていまして,若者,新エネルギーの専門家,技術に精通した専門家,原子力の現場に近い人,そういう方をぜひ招へい者として入れるべきであるというご意見も出ております.以上がこの会場にいらした方のご意見です.
 一方,会場に来られなかった方からのご意見は,封書で25通,電子メール6通で合計31通です.性別では,ここでもやはり男性が圧倒的に多くて,男性が50歳から60歳代,女性は50歳代ということになっております.職業別では男性は会社員,女性は主婦の方が多くなっております.地域的には東京,神奈川,千葉,大阪など大規模消費地からの意見が大勢を占めております.福島県や新潟県柏崎市など電源立地地域からのご意見も多少ございました.
 ほとんどが原子力政策そのものに対するご意見でした.ご意見の種類としては,会場に来られた方と同じように,エネルギー選択,原子力の安全性,情報開示,電源立地の4項目に対する意見が圧倒的でした.
 公募意見では,エネルギー選択については原子力から撤退すべき,新エネルギーを推進すべきとの意見を多くいただいております.また安全性については,特に放射線廃棄物の取り扱いに対する疑問が多く出されております.情報開示については,情報開示をもっと進めるべきであるという意見が多く出されております.電源立地については,消費地などの住民にも原子力問題を考えてほしいという意見もありましたし,さらに押し進めて,首都圏や都市に原発を建設すべきであるというご意見もいくつかいただいております.以上が公募でいただいたご意見です.
 それでは,時間の関係でさっそく議論に入りたいと思いますが,その前に,モデレーターの方々,本日お招きしてご意見をお述べいただく方について,ご紹介申し上げます.
 まずモデレーターのほうは石川迪夫様,原子力発電技術機構の特別顧問でいらっしゃいます.社会評論家の小沢遼子様,慶應義塾大学教授の茅陽一様,元中央大学教授の中島篤之助様,それに私の5人です.
 今日ご意見をいただく方は,弁護士で気候ネットワーク代表の浅岡美恵様,前回からの引き続きでございます.杏林大学社会科学部教授の今井隆吉様,財団法人電力中央研究所の鈴木達治郎様,原子力資料情報室共同代表の西尾漠様,明治大学理工学部教授の藤井石根様,財団法人日本エネルギー経済研究所常務理事の藤目和哉様,以上でございます.
 私どものルールといたしまして,モデレーター5人のうち,毎回2人が議論の進行役を務めることになっております.本日は中島篤之助様と石川迪夫様にお願いいたしますが,チーフを中島様,サブを石川様ということにしておりますので,よろしくお願いいたします.それでは中島先生にバトンタッチをいたします.よろしくお願いいたします.

【中島(元中央大学教授)】
 それではご指名なので,今回の円卓会議を始めさせていただきたいと思います.
 原子力の問題というのは,問題が非常に多面的ですから,前回も6人の方においでいただいて,それぞれご意見をまずいただいたわけですが,正直申し上げてなかなか噛み合うというところまではいきませんでした.しかし,議論の後半では,情報開示をもっと進めるべきではないかということについて共通して,非常に具体的な討論を,多少噛み合わせることができたと思っております.
 今回は,実は前回の原子力政策円卓会議のモデレーターの方々が取りまとめられた,大きく分けて3項目ほどに分かれる議論がありますが,その中で今日のいろいろな方々から出された意見にもありますように,エネルギー選択の中における原子力の役割というような問題についてやはり関心が高いわけですし,それはどうしても議論する必要があるということで,今回は「日本の今後のエネルギー利用における原子力の位置づけ,あるいはあり方」等について,議論をいただければと思っているわけであります.
 そういうことで,さっそく今日招へいいたしました方々から,お話を伺いたいと思います.発言の順序はまったくアイウエオ順で,浅岡さんからということになります.浅岡さんには前回もご出席いただきまして,情報開示のあり方等について非常に貴重なご意見をいただきましたけれども,今回は,気候ネットワークの立場から見て原子力の位置づけ,あり方等についてのご意見をいただければ,幸いだと思います.
 最初の発表は大体一応5分と申し上げますが,前回の実績から言って,5分ではなかなか収まらないのですが,なるべくその辺を目標にということでご発言をいただいて,後で議論を噛み合わせる,お互いにディベートができるようにしたいと考えておりますので,よろしくご協力をいただきたいと思います.それでは浅岡先生お願いします.

【浅岡(弁護士・気候ネットワーク代表)】
 まず原子力のあり方ということですけれども,また議論の枠組みというスキームをいただきましたが,こうした日本の将来の原子力政策の選択をだれがするのかということを考えますと,やはりこれは国民であるはずです.この議論2のところに情報開示という言葉(2)安全要因ということと結びつけられた枠組みが作られておりますけれども,社会経済的な要因,安全の要因,原子力を取り巻く,あるいは日本のエネルギー政策全体についての情報の国民への開示,また専門家のサポートも含めた国民の前でのオープンな国民参加による議論というものの積み重ねのうえでなければ,本業の選択はあり得ないことになるのだろうと思います.
 前回も申し上げましたけれども,これが大変不十分な中で,いま私たちは,ある意味である段階の選択をしているわけです.前にも申し上げましたように,こうした現状での,現在の日本の国民の選択としては,昨年の6月に総理府が行なった世論調査の中にも表れておりますように,原子力を進めるという選択はないのであって,再生可能なエネルギーをもっと拡充していくべきである,あるいは省エネルギーについての抜本的な経済的措置も含めた政策が必要である,また石油等から天然ガスへの転換をもっと積極的に図るべきであるというところに,国民の世論があると思います.私たちもそう考えてきたものであります.
 特に,今回の原子力と私たちの関わりという点で言いますと,原子力について二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギーであるということが,推測側から大変強調されているようです.確かに温暖化対策は,この11月にCOP4が行なわれますように,非常に大きな問題で,私たちはそれに取り組んでいるわけですが,原子力がクリーンなエネルギーであるという表現には違和感を覚えます。これで何を言おうとしているのかがよくわかりません.安全なエネルギーであるとはおっしゃらなくて,クリーンであると.エネルギーの問題で,クリーンだという言葉は,国際的にもそうではないかと思いますが,再生可能なエネルギー,自然エネルギーに使ってきた言葉であります.
 原子力については,とりわけ廃棄物についての問題が解決していないわけですし,その問題が非常に大きな要因となって,日本を除く欧米諸国では原子力から撤退する,又は原子力への依存度を低くする方向が取られているということではないかと思います.
 温暖化問題を解決するために,もう1つ問題を作ってしまうという選択はないのだ,これはEUのエネルギー政策,温暖化対策への選択の中でも言われていることですし,私たちもそう思います.
 昨年ボンで何度か準備会合が開かれましたときに,私も何度か行きました.向こうではこの温暖化問題,気候変動の問題を,クリマカタストロフィと呼んでいます.クリマは気候,クライメートですが,気候の破滅であると.その破滅という意味は,チェルノブイリの事故がもたらすものと同じであり逃げ場のない問題と伝えられています.ですから,温暖化対策のために原子力を選択することにはおよそならない,こういう問題意識であります.
 温暖化問題をどう解決していくかということにつきまして,特にEUでは,この6月にも再生可能なエネルギーへの依存を,現在6%ぐらいというのを2010年までに12%まで上げていく方向を出しています.ここに出されているのは風力とか,太陽光とか,バイオマスが大変大きな位置を占めていますが,これからは小水力も提起されております.コージェネも盛んです。
 私たちはエネルギー問題で,特に将来世代とわれわれ現在世代へとの公平とか,将来世代への責任という点で,気候変動も防ぎ,また原子力の廃棄物のもたらす問題も防いでいく,そうした選択を早くしていかなければ,相当時間のかかる現実のエネルギー供給の転換を図っていけないのではないかと思っています.その点で,最近ドイツでの新しい政権のもとでの原子力についての選択が注目を浴びていますけれども,ドイツの例を少し紹介して,日本も早くこの決断をしていくべきではないかと申し上げておきたいと思います.

--OHP(浅岡(1))--

 特に風力発電についてですが,昨年ぐらいまでのデータでは,アメリカが発電容量では1番でしたけれども,1998年,今年のデータではドイツが1番になっています.非常に急速に供給量を伸ばしています.ドイツの風力発電の容量の増大の経過はOHP浅岡(1)のとおりです.日本においてはようやく昨年そうした会社を作ろうかという議論になりましたけれども,数年前から現実に進められていたことを,こうしたデータからも見ることができるかと思います.
 風力につきましては,現時点でもコスト競争力があるという点では,どなたもお認めになっているものです.日本の立ち遅れは,やはり原子力に固執をしすぎたことがもたらしたと思います.再生可能なエネルギーへの選択,あるいは燃料電池等の開発等も含めまして,日本は,私は将来世代の環境や安全を確保するという点のみならず,日本の経済にとっても,ビジネスチャンスを逸してしまうのではないか.そうした意味でも危惧の念を持っております.5分ということでしたので,冒頭はこの程度で終わらせていただきます.

【中島】
 どうもありがとうございました.議論はあとにしまして,それでは今井さん,よろしくお願いいたします.

【今井(杏林大学社会科学部教授)】
 私は今日お話しするのが初めてなので,少し話が大げさになるかもしれなくて,これはモデレーターのご意向に必ずしもしっかり沿うかどうかはちょっとわかりかねます.
 20世紀というのは非常に不思議な世紀であって,いろいろなことがたくさん起きた.例えば,非常に大きなことは,人口というのは20世紀の始まりには13億人ぐらいだったのです.1945年になると,それが25億~30億近くになり,1995年には58億になり,いま,国連統計の読み方によりますけれども,2050年には大体100億になる.50年ごとに倍,倍という増え方をしております.
 それがあります.さらに20世紀というのは科学技術が非常に進んだ時期であって,特にあえて言えば,エネルギーの分野で原子力,エレクトロニクス,バイオ,その他,前の世紀までは考えられなかったようなものが,非常に多量に生産されるようになっています.
 その2つのものが結びつきますと,要するに生活水準が上がってくるということがあって,生活水準が上がると,これは当然環境とぶつかり合いを起こします.環境はご承知のように,地球という星の限られた周辺地帯ですから,人口が少なかったときはどうということはなかったのだけれども,人口が多くなって,人工衛星から地球を見たら「あれはやっぱりただの青い星だ」ということになると,環境と人間の行動との間のコンフリクトというのが改めて問題になってきております.
 これについては,いまさら私が申し上げるまでもなくて,いろいろな問題の他に酸性雨とか,焼き畑農業の話とか,地球温暖化ガスとか,いろいろな問題が出ております.
 今日これだけの経済成長を支えていこうとすると,どうしても自然資源と,あえて分けて言えば,エネルギーというものは,相当量の需要が出てきます.それも特にどちらかと言うと,開発途上国,つまり先進国の人口はそんなには増えないので,開発途上国で言うと,アジアはいまでも世界の半分以上,2050年を取っても世界の半分以上となっていて,開発途上国のエネルギー需要というのは非常に増えております.
 それはいったいどのレベルで切って,ものを考えるか.「日本だけうまくいけば,あとはいいよ」というような1つの考え方というのも,これはかなりあることはある.それから「アジアはうちの近所だから,特に東アジアについては一生懸命やらなければいけない」という考え方があります.
 もちろん世界全体についてどうするか.世界全体と言うと,当然ながら南アジア.つまりインド,パキスタン,バングラディシュ,サブサハラ,アフリカというやっかいなところがたくさん入ってきて,これは計算もつかないというようになってくる.
 そうなりますと,そのエネルギーを供給するのはいったい原子力なのか,石炭なのか,石油なのか,天然ガスなのか,太陽熱なのか,風力なのか,水力なのか,何なのかというのはなかなか一概に言えないので,それぞれの条件で,いわゆるオプティマイゼーションをしてみなければいけません.
 私は一昨年,さるところから頼まれて,世界の三大圏,つまり西洋,アメリカ,あるいは西半球,それと日本というので,エネルギーの見通しの検討というのをやったのです.大体2010年ぐらいまでは石油,ガスがもつだろう.そこから先はどうなるのと言うと「そこから先がわかるぐらいなら,3か月ものの先物でうんと儲かっていますよ.そんなものはわからない」と言うのです.それは過去の歴史を見ても,石油の埋蔵量というのは,いつでも「あと45年しかない」と言われて,45年経ってみると「あと45年しかない」というように,エネルギーには非常にわからないことがたくさんあります.
 もう1つ重要なことは,先ほど核のことを申し上げましたけれども,核については東アジアは核依存に頼るのが一番妥当な手段なのです.ただ,東アジアのインフラストラクチャーを考えるときに,核依存に頼って安全であうかどうかというのは,非常に考えなくてはいけない問題である.核に頼らないとすると,何かと言うと,東アジアの場合には一番多いのは石炭です.これは酸性雨が日本にもかなり降ってきているということで,どちらを向いても「これなら大丈夫」というのがないのがいまの状態だと思います.
 そんなことを考えますと,2010年から先の,つまり21世紀から後半にかけてのエネルギー需要を,どうバランスするかというのは非常にわからない.さらに問い詰めて聞きますと,2050年頃まで生きているつもりの人は「それは心配だ」と言うのだけれども,「そんなときにはもういないよ」と言う人は「皆さんしっかりやって下さい」ということで,何となくおしまいにしているところがあります.
 最初なので勝手なことを申しました.

【中島】
 ありがとうございました.ちょっとつかみどころのない,膨大な,しかし,かなり問題の本質をついたご発言だったと思います.それでは,次に鈴木さんにお願いいたします.

【鈴木(財団法人電力中央研究所)】
 私のほうはお手元に資料5-1というレジメがありますので,それを見ていただきたいと思います.実は資料5-1の中にお二方,他に資料5-2と5-3も一緒に綴じられていますので,私のほうは最初のほうの2ページ,及び「エネルギーレビュー」の論文が入っていますので,それをごらんになっていただきたいと思います.
 今日私が申し上げたいことは2点あります.最初に「この円卓会議及び今後の新原子力長計に望むこと」ということで,この円卓会議の位置づけ及び今後の政策論議に向けて,どういうことを基本的に考えたらよいかということを最初にお話しし,その後いわゆるエネルギー供給における原子力の役割についてお話ししたいと思います.
 まず第1ですが,先ほど今井大使のほうから非常にグローバルで長期的なお話をいただいた.まさに私も同感で,非常に不確実な時代に来ているということを,まず第1に言いたい.したがって,これまで原子力長期計画というのは,「計画」という名が示す通り,ある前提に基づいて,その前提を満たしていくうえでどういう計画が望ましいかという,わりと固定的な路線だったわけです.
 これからはやはり不確実性を考慮して,計画から戦略という言葉を使っていますが,戦略ということは,要するに前提が崩れた場合どうするかということも考えて,計画を立てて,政策を立てていく必要がある.資源は必ず枯渇するとか,あるいは原子力は絶対事故を起こさないとか,この技術は絶対必要であるとか,あるいはコストはここは必ず安くなるとか,高いとか,そのような固定的な前提を置かないで,技術革新もあるわけですから,いろいろな前提が崩れた場合に,どういう計画を立てたらよいかというのが,まず第1のポイントであります.
 第2はこれに関連するのですが,いわゆる単一路線,もし前提が正しければ正しい答えはこれであるというのがいままでの計画だと思うのですが,それを単一路線と言いますと,これからはその計画の目標を達成するうえでどういう選択肢があって,その選択肢の得失を議論する,いわゆる選択肢を提示するような原子力長計,あるいはこの円卓会議の結論に盛っていただきたい.これがまず2番目のポイントであります.
 そのときに,選択肢というのは,必ずしも排他的なものではなくて,組み合わせが当然あるわけですから,これを選んだらこちらはだめということではなくて,選択肢それぞれの特質を活かして,組み合わせて提言をしていただきたい.
 3番目は今日の議論に関係するわけですが,原子力長計というのはやはり原子力を中心に議論しているわけですが,やはり原子力はそもそもはエネルギー環境政策の一部であって,そういう位置づけをやはり忘れないでいただきたい.原子力の有無だけを議論するのではなくて,やはりエネルギー全体,環境問題全体の中で議論していただきたい.あと論文の中には書いてありますが,通産省のエネルギー政策の論議とここの論議との戦いというのがあってもよいのではないかという気がいたします.
 4番目に,これは「エネルギーレビュー」の特集で,私を含めて5人の方々に論文をお願いしたのですが,その4人の方々は意見がものすごく違うわけですけれども,共通しているのが4番目の意見でして,従来の政策決定過程では今後は難しいと.いわゆる民主化という言葉を使っていますが,そもそもこの円卓会議の目的が,合意形成という言葉が使われていますけれども,この合意形成という言葉自体非常に曖昧である.
 私の感じでいきますと,要するに国民の合意形成というのは,価値観が多様化する時代ではなかなか難しいと言ういうことで,何を合意するかと言うと,やはりプロセスについての合意がまず大事ではないか.そこで,ここに書いてありますように,参加意識とか,公平性とか,透明性.特にいま情報開示は大事だと思います.それから,意思決定をする方の説明責任が非常に大事だと思います.
 最後に1回ここで決めたから,それが未来永劫正しいということではありませんで,当然時代の変化に応じて政策評価,見直しをしていくというフレキシビリティも持っていただきたい.これが今後の新円卓会議と長計に望むことということであります.
 本題のほうで,エネルギー供給における原子力の役割ですが,今日ここで私が言いたいことを1本に絞りたいと思います.それは多様性の持つ価値ということです.これは不確実性という,先ほどの大使のお話もありましたように,エネルギー問題というのは,環境問題も含めまして,非常に不確実な要因が多い.その不確実な要因の中でどうやって意思決定をするかというのが,非常に大事なわけです.
 その場合に戦略として,1つの形として表れるのが多様性,いわゆるいろいろなエネルギー源,いろいろな選択肢を持っている.それを持っているのが強い.
 図表を1つ付けてみましたので見ていただきたいのですが,これはイギリスの研究者でAndrew Sterlingという方が,多様性というものの価値を,定量的に評価するということをやられたわけです.いろいろな議論があるのですけれども,ここでは単純に多様性というのは,それぞれのエネルギー源がどれぐらいシェアを持っていて,そのエネルギーシェアをある1つの数式によって定量化したものである.多様性が高ければ高いほどインデックスが高いということです.
 表の1,図の上のほうはOECD諸国の電源構成の中で対応してみたもので,日本が一番高いということで,これは不確実性に対処するうえで,非常に日本はよいミックスを持っていると,彼は定義しているわけです.
 面白いのはその下のほうなのですが,これは1972年から1989年までの多様性インデックスを,日本とフランスとOECD平均で比較したものなのです.日本とフランスは脱石油ということで原子力にすごくシフトしたわけですが,日本は結果的に見て,天然ガス及び石炭,石油,まだミックスをかなり持っていまして,むしろ多様性は非常に上がってきている.最近は1.5という数字で,将来の不確実性に対して非常によいミックスを持っている.OECDは脱石油と言って非常に変わってはいるのですが,全体的に見ると,多様性という観点から見るとほぼ一定である.
 ところが,フランスは原子力に非常に比重を移しまして,多様性という観点からは,かえって日本とまったく逆の立場になってしまった.すなわち,同じ原子力を推進するにしても,このように多様性を重視するかしないかでは戦略が変わってくるというのが,この図であります.
 さて,今後エネルギー戦略を検討するうえで,ぜひともいろいろなエネルギー源の持つ価値を考えていただいて,多様性を維持していただきたい.これが私のポイントであります.
 そこにちょっと書いてありますが,原子力・化石燃料・再生可能の組み合わせで,野球で言いますと,先発・中継ぎ・抑えの組み合わせです.いま日本シリーズでやっていますけれども,昔は先発完投型が1人いればよかったと.ところが,最近はやはりいろいろなピッチャーを持って,ワンポイントから抑えのリリーフまで持っているチームのほうが強い.これがやはりこれからのエネルギーミックスのよい例ではないかと思います.
 最後にエネルギー効率改善の,これはまたあとで詳しくお話ししますが,供給側だけではなくて,やはり需要側のエネルギー効率改善ということも,ここでぜひ検討していただきたい.これで私の話は終わりたいと思います.

【中島】
 どうもありがとうございました.大変適切な比喩が出まして,今日日本シリーズがありますが,佐々木主浩に相当するエネルギーというのは何でしょうか.あとで考えておいて下さい.それでは次に原子力資料情報室の西尾漠さんにお願いいたします.

【西尾(原子力資料情報室)】
 いま鈴木さんのほうからご紹介いただいたように,資料5-1の後ろに,5-2という形で,今日の発言の要旨,裏側に別紙というのがついています.原子力にエネルギーは頼れないという立場に立っているわけですけれども,なぜ原子力に頼れないのかということについては,その裏側の別紙のほうに核拡散の問題から情報隠し体質までズラズラと書き並べてあります.
 いかにもこれでもかこれでもかと書いたように見えるかもしれませんけれども,そんなに一生懸命書いたわけではなくて,たまたま書いていたら,これぐらいになりましたという感じですので,まだ抜けていることがあるかもしれません.いずれにしても,原子力にはかなりいろいろな問題がある.そのことをとりあえず指摘をしてあります.
 では原子力に頼らないとすれば,どうするのかということに当然なるわけですけれども,過渡的には,やはり化石エネルギーをどうやってじょうずに使っていくかということになるのではないか.熱効率を上げるとか,公害物質をなるべく出さないようにするとか,そういったことをしながら,さらに需要側,供給側それぞれをより分散化し,量的にどちらも下げていくような中で,エネルギーの消費を小さくすることと,再生可能なエネルギーの利用を拡大していくということになるのではないかと考えています.
 それが現実的にどうなのかということもあるわけですけれども,むしろ原子力を進めようとしている人たちの考え方というのは,結局原子力に頼ってエネルギーの量を拡大していくということでしかない.原子力をやればエネルギーの量が減りますという話は,一度も聞いたことがないわけで,結局問題はいま原子力がよいか悪いかと言っているけれども,実を言えば,原子力がよいか悪いかではなくて,エネルギーの量を拡大し続けるのがよいかどうか.原子力というのは,エネルギーの量を拡大し続けることとイコールではないかと思っています.
 それをこれから議論していくということになるわけですけれども,その議論に入る前に,もっときちんと決めておかなくてはいけないことが,いろいろあるのではないかと思っています.その意味からすると,いまの鈴木さんのお話と順序がちょうどに逆になるのかもしれません.
 では,この円卓会議でどのように議論していくのか.今日は円卓会議としては2回目ですけれども,私は初めてなので,このまま何もなしにいきなり議論が始まってしまうというのについては非常に不安があります.
 1つは時間的な問題で,先ほども徹底した議論という言葉が出てきたわけですけれども,徹底した議論を行なうというときに,いま年度内には5回ぐらいの開催ということで,それで本当に足りるのかどうかと言うと,おそらく今日もまだ議論の最初の出発ぐらいにしかならないでしょうから,とても足りないのではないか.とすれば,きちんとした時間の保証というものが必要だろうと思います.
 それと,議論の前提なのですけれども,円卓会議の進め方についての原子力委員会決定というものをいただきました.そこには国民の原子力に対する理解と協力への取り組みをいっそう強化することが必要だという形で,結局原子力利用の推進というものを前提にされている.
 この文章だけではなくて,原子力委員会が出されるものは,必ず皆そんなことが書いてあるわけで「どうしてこんなことをわざわざ書くのですか」と事務局の関係者の方にお聞きしたら「いや原子力基本法に,原子力推進ということが書いてあって,原子力委員会としてはそれが仕事なわけだから,これを書かないわけにはいかないのだ」というお話でした.だとすると,そのように法律で書いてあること自体も問題にしないといけないことになってしまうと思います.
 原子力のように,いままさにここでディベートをすると言われていることは,原子力に対して賛成の意見,反対の意見,さまざまな意見があるということだと思うのですけれども,そういったさまざまな意見があり,世論調査等の話も出ましたけれども,完全にどちらかだけは,まったくの少数派という話でもないとすれば,その中で一方的に推進が法律で決まるということがどうなのか.それは少なくともいまの時代からすれば,合わないのではないか.
 それから,電力の自由化とか,規制緩和とか,いろいろなことが言われている中で,国策ということが電力自身が考えることの前にあるということがよいのかどうか.さらにそのことの一番典型的な表れだと思うのですが,そこに電気事業連合会の荒木会長の発言をちょっと引用させていただきました.「国のエネルギー政策で原子力をやっているのだから,廃棄物も国が全責任を持ってほしい」というようなことを言われている.これは電気新聞という業界紙に載っていたものですから,たぶんそんなにねじ曲げられている発言ではないだろうと思います.
 そうすると,結局国策ということが前にあるから,後始末も国でやればよいという電力会社の無責任さに,どうも原子力基本法というのはつながっているのではないかと考えます.そうすると,その意味で個人的には原子力基本法自体を見直すべきだと思いますけれども,まさか議論をするのにそれを見直してからでないと議論ができません,というわけにはいきませんので,法律の改正ということも含めて,あり得る,そういう考え方で議論を進めたいと思っています.
 そういう状況なわけですから,いまここで議論している,その議論している最中に,何か新しい政策決定が決まっていくということではちょっとまずいので,これは原子力委員会に対しては,少なくともここで議論していることを無視して,その議論になっているようなことについて,新たな政策決定は行なわないことを求めたいと思います.
 さらにそれに関連してなのですけれども,原子力委員会に積極的な提案を行なうと言われているのですけれども,それを具体的にどういう形で行なうのか.それがどのように政策に反映できるのかということについて言うと,原子力委員会の側にどういう受け皿があるのかということも含めて,非常に曖昧な気がします.
 そういうことを,やはりあらかじめきちんと決めておく必要があるのではないかということが1つです.さらに,実を言えば,原子力委員会が何でも決められるのか.先ほどの鈴木さんの話の中に,原子力はエネルギー環境政策全体の中で議論するべきということがありました.そうすると,おそらく原子力委員会の手にもあまる.では政府なり,あるいは官僚たちが全体で判断すればよいのかと言うと,そうでもないでしょうし,そこでの国会での役割というのはどうなのか,国民全体の議論をどのように作っていくのか,そういったことも含めて,きちんとしたことがあらかじめ議論されるべきであると思います.
 そういうときに,いまの原子力に限らないと思うのですけれども,その政策決定というものが,ほとんど密室の中で,ようやく最近になって少しは開かれてきた部分もあるのですけれども,まだ肝心のところはいつの間にかわからないところで用意されて,それが持って来られて,官僚主導で決まっていく.そういうことがまず議論されるべきであって,エネルギーの中の原子力の位置づけということより,むしろだれがそのエネルギー政策を決めるのか,あるいはそれは国策ということでよいのかどうか.責任の体制の問題もあると思いますし,電源三法等も含めて,そういうことについてきちんとした議論をしたい.
 それから,議論の条件としてはやはり何と言っても,情報公開ということが必要だと思っています.前回の会議の議事録というのを,たぶん今日までには事務局の方からいただけるのかと思っていたら,それも届かない.断片的な報道を聞いている話で言えば,情報公開は十分されているという話が出たと聞いて,ちょっとびっくりしているわけです.
 情報公開というのは,何か結果だけが出てくれば,情報公開ではないわけで,これも事務局の方から送っていただいた,これは前回の円卓会議のときの資料だと思うのですが,こういうものを見ても,例えば,各電源ごとの発電コストであるとか,あるいは各電源ごとのCO2の排出量であるとか,さまざまなデータは載っているのだけれども,もう一回こちらで計算をし直そうとしたら,それができるようなデータというのがまったくない.
 もちろん,こういうものの中に全部書けと言っているのではないのですけれども,そういうものを少なくとも要求されれば,出してくるというのが当然だと思うのです.これも言ってよいかどうか,資源エネルギー庁の方に出してほしいと言ったら「これは原発が一番安いということがわかってもらえれば,それでいいんですから,プロセスはいいのだ」とかなりはっきりと言われまして,非常にびっくりしています.
 そういうことで情報公開と言われても,とても信じられないというのが正直な実感で,これではとても議論にならないという気がしています.まとまらなくて,申しわけありません.

【中島】
 どうもありがとうございました.時間が少し遅れていますので,次は藤井先生,よろしくお願いいたします.

【藤井(明治大学理工学部教授)】
 私の言いたいことは,資料の5-3のところに大体の要旨をまとめてございます.
 エネルギーのこととはちょっと離れた話をさせていただきますと,皆さんも耳にタコができる程に毎日聞かされている,日本にはいま大きな経済問題があります.銀行を建て直すために60兆円とかという数字が出てきますし,それもこれで済むかまだはっきりしない.その一方で,例えば旧国鉄の債務の借金が28兆円とかと言われています.なぜいま頃,こういうものがどんどん出てくるのかということですが,これはやるべきときにきちっと処理をしておかなかったためで,旧国鉄の債務などは問題の先送りが今大きな負担の原因ではないかと,経済は専門ではありませんので,間違っているかもわかりませんけれども,私はそう感じています.
 それから,銀行の問題,これは言うなれば,バブルの後遺症だと私は思うのです.ではなぜそういったことになってしまったのか.よく考えてみますと,全然生産活動もしないで土地という商品をもとに皆で売り買いし,しかも土地は絶対に値が下がらないよという前提のもとにどんどん値をつり上げていって,皆お金を使ってしまった.そのつけがいま出てきているのではないかと思うのです.
 よく考えてみますと,生産もしていないのにどんどん儲かるという道理はないし,土地は値が絶対下がらないと,だれが言いだしたのかわかりませんが,よく考えてみますと,買う人がいなくなれば,下がるのは当たり前なのです.そのように,ものごとというのはよく考えれば,必ず将来のことが,おぼろげながらもどうなるか位は想像できる,そういったことだと思うのです.
 エネルギーの問題についてもやはり同じことが言えるかと思います.例えば,いま確かに化石燃料を沢山使って,それで炭酸ガスも沢山出している.その一方で,必ずしも,化石燃料を燃やすためにたくさん炭酸ガスが出て,それが地球温暖化に直接つながっているかどうかはわからないよという議論もありますけれども,はっきりしなくても,その原因の1つとして考えることはできると思うのです.
 それから,エネルギー資源.こういった化石燃料,核エネルギーも含めて,これは有限な資源ですから,これをどんどん使っていけば,当然いつかはなくなる.それはすぐになくなるかどうかはわからないけれども,いつかなくなるということは目に見えているわけです.
 そのような観点から考えますと,いまのこのような状態でずっと続けていった場合に,21世紀のいつ頃まで維持できるかどうか知らないけれども,必ずやいまの経済の混乱と同じような状況がエネルギー問題でこないともかぎらない.そのときには「われわれは生きていないから,関係ないよ」と言ってよいのかどうか.人道的な立場から言えば,その辺が非常に問題だろうと思います.
 いろいろなこうした問題,温暖化の問題も含めまして,これはグローバルな観点で見なければいけないだろう.一国の問題ではないと,われわれは認識すべきだと思うのです.すなわち,場所,広さの問題,それから時間的なスパン.そういったものを重々考慮の中に入れて,われわれは今後のエネルギー問題を考えていかざるを得ない.
 要するに,われわれだけがこの時代に生きていればよいということでしたら,それほど難しい問題ではないと思いますけれども,やはり後世の人たちのことも考えると,当然その辺のところもよく考えていかなければいけない.
 すなわち,後世に負の遺産なるものを置かないようにできるだけしよう.彼らも生きる権利があるということで,彼らに生きる場を与えてあげるということも,われわれは当然考える.これは何も為政者とか,ごく限られた人たちだけの問題ではなくて,これは国民一人一人がやはりこの辺のところは認識していかなければいけないし,そのことをしっかりと,何らかの場において,教育の面も含めて,国民の一人一人に認識をしてもらうような,そういった教育的な配慮も必要だろうと思います.
 そのようなことから考えますと,いままでは経済の成長には必ずエネルギーのより多い消費が必要だ,エネルギーをたくさん使わなければ経済成長はないという前提,それから人口が増えるから,エネルギー消費はどんどん増えざるを得ないといった単純な考え方ではなくて,いかにしてエネルギー,資源をあまり使わないで生きることができる社会システムとか,われわれの生活の仕方とかをつくり上げるか,そういったところに力点をおいて考えていく必要があるだろうと思います.
 そのようなことから考えますと,先ほど鈴木先生のお話からエネルギーの多様性というのがありましたけれども,やはりエネルギーはできるだけ多様性に持っていくことが安全であると私は考えます.しかも,私は後世につけを残さないようなという条件をつけたうえで考えるべきだと思います.
 そう考えますと,自ずから私のレジメに書いたような結論が出てくるわけでして,その辺のところを,今日は私の主張として強く申し上げたいと思います.
 私はいままで太陽エネルギーの研究等もやってきました.太陽エネルギーの利用についても実践をしてきた者の1人でして,今回私の家にも太陽光発電もつけましたし,それでどの程度の発電ができるかをいまチェックしているわけですけれども,かなりよい方向にいっていると私は感じています.
 私は前から主張してきましたけれども,ちょっと具体的な話になって申しわけありませんが,1つの例として交通体系にしましても,やはりモータリゼーションの時代はエネルギー資源,環境面でもはや過ぎ去ろうとしているわけですので,これからはやはり大量輸送機関で,都市については特に路面電車をもう一度復活させることをいろいろなところで主張している者の1人です.いなことにそういった気運がボツボツ出てきている.これは非常にありがたいことだと思います.
 これは地下鉄とか較べてみても,建設費が20分の1で済みますし,維持費も30分の1で済みます.しかも,高齢化社会においては,路面電車というのは非常に使いやすいものです.ということを考えますと,例えばこれは1つの例ですけれども,このように社会のシステムそのもの,社会の構造そのものを,もっと省エネルギーの社会にいますぐにでもそちらのほうにもって行くようにお金を使う.いまお金をたくさんばらまいて,ばらまいてという言い方は失礼かもわかりませんけれども,何十兆円と入れて,いまの経済を活性化させるべく政府はいま一生懸命やっているようですけれども,そのようなお金の注ぎ込み方は,私は生きたお金の使い方ではないと考えています.エネルギーの問題も含めて,また,環境保全の問題も含めて,将来の糧になるようにお金を有効に使うということが重要だと思います.
 それで,私のレジメの最後のところに,1つの例として示しておきましたが,例えば私はあるエネルギーの委員会でバイオマスの利用を提案しました.その際,バイオマスなどというエネルギーはほとんど使いものにならないというようなことを伺ったことがあるわけですが,本当にそうかどうかちょっと調べてみましたところ,スウェーデンではそこにも書いてありますように,自然エネルギーの18%をバイオマスエネルギーでまかなっている.それから島根大学のある先生の試算によりますと,日本の場合は,毎年植物の成長で得られるバイオマスのエネルギーを使えば,エネルギーの16%ぐらいはまかなえるのではないかという試算もあります.そういったものを利用すれば,森林ももう少し活性化しますし,また水保全,すなわち21世紀は水不足の時代だと言われていますけれども,ダムの働きをするということで,水の確保ということにもつながっていきます.それから,有機質がもっと増えるということで,河川も栄養が豊かになって,水産業も非常に豊かになるというようなことで,いろいろな面,すなわちエネルギーも取れるし,水産業の活性化する,農業も活性化するし,それから水保全にもなるし,空気もきれいになる.
 そういったことを考えると,元はエネルギー問題ですけれども,やはりやり方によっては環境,資源,食料といったものについても,非常に幅の広い分野で,そういったものが生きてくる.要はエネルギーという問題に関連して,もっと環境,食料といった広い観点から,われわれは今後,考えていくべきではないか,またそうせざるを得ないだろうと考えます.以上です.

【中島】
 どうもありがとうございました.それでは最後になりましたが,エネルギー経済研究所の藤目先生にお願いいたします.

【藤目(財団法人エネルギー経済研究所)】
 今回のテーマの中心がエネルギー利用における原子力の位置づけということなのですけれども,私も30年くらいエネルギーをやっていますが,この1990年代に入ってから,大きな情勢変化が起きているのではないかということで,その中で原子力の位置づけも変わってきているのではないかと思います.
 その大きな情勢変化は,1つはわれわれの専門家の中ではかなり常識になっていますけれども,在来の化石エネルギー資源,石油,天然ガス等の資源というのが,いままで考えられていた以上にたくさん存在するのではないかということです.これは技術の進歩とかいろいろなことがあって,四十何年しかないとかいう話ですけれども,実際に究極的に使われるのは 100年とか 200年単位ぐらいであるのではないかということがかなり知られてきた.依然として「少ししかない」と言う論者もいるわけですけれども,その化石エネルギーがかなり存在する.
 それから,特に1980年代の後半になってから価格が下がりまして,化石エネルギーの使用量が非常に増えてきたということで,したがって炭酸ガス等の排出も増えてきたということです.
 2番目に地球温暖化問題がエネルギー政策の1つとして浮上してきた.これはエネルギー政策と言うよりは,環境あるいはすべての政策の中での大きな問題だと思いますけれども,温暖化問題が登場してきたということで,これでいろいろな考え方をもう1回レビューしてみたほうがよいのではないかということではないか.
 原子力については,いままで石油危機以後,石油代替エネルギーという位置づけが非常に強かったわけですけれども,例えば温暖化問題というのは非常に深刻だと考えれば,原子力なしで考えると大変に難しいのです.いろいろ考え方として割り切ることはできるのですけれども,原子力なしには温暖化問題というのは決して解決しないということです.これは専門家から見ればごく自然なことですけれども,これに対する反論は「もちろん再生可能エネルギーがあるはずだ」ということがあるわけです.その温暖化問題と原子力全面撤廃というのは両立し得ないというのははっきりしているということです.
 ただし原子力が多ければよいということではないわけで,先ほどもありました化石エネルギーもけっこうありますし,再生可能エネルギーもあるわけですから,適度な依存というのが重要であるということで,大体原子力というのは非常に複雑な技術で,一般庶民には非常にわかりにくいもので,これは永遠に変わらないと思います.21世紀になってもそうだと思いますけれども,そういう社会とのストレスという原子力の持つ固有の技術の問題があるということで,あまり過度に依存するというのはどうか.
 先ほど鈴木さんからありましたように,フランスのように80%依存するとか,あるいは日本でも長計をやっている総合エネルギー調査会でも,2010年に46%,大体50%ぐらいは原子力に依存するという方向が出ているわけですけれども,これも私から言えば少し過度な依存ではないか.大体現在の35%あるいは3分の1ぐらいが適当なところの依存度ではないかと考えています.
 それから,再生可能エネルギーが非常に期待はされているのですけれども,これはかりに大量の国のお金を,あるいは原子力に向けていたお金とか,あらゆるエネルギー政策に向けていたお金を全部再生可能エネルギーの開発に投入しても,全体の3%ぐらいにいくのがせいぜいだということと,電力料金はおそらく2倍,3倍になってしまうだろうというのは,これは経済計算を,別に再生可能エネルギーに不利なことは考えないで,政府の補助も入るということを位置づけてやっても,非常に非現実的な価格になってしまうということで,これは多様化の中の1つではありますけれども,かなり長期の観点で見た多様化であるということで,原子力とはやや基本的に異なるエネルギーであるということに注意しないと,空振りの論理と言いますか,空論になりかねないということです.以上です.

【中島】
 どうもありがとうございました.この資料は.

【鈴木】
 私のものです.あとでまた.

【中島】
 鈴木さんの資料ですか,わかりました.どうもありがとうございました.これで最初のプレゼンテーションを終わったことになります.皆さん,まだそれぞれの方のご発言に,質問なり,あるいは異論なりいろいろおありだと思います.ここにある予定では,3時頃までという予定ですが,もう少し延ばして40分ぐらいフリー討議をいたしまして,そのあと,あまり長時間ですとくたびれますから,休憩に入りたいと思っておりますので,さっそくその討論をしていただきます.

【茅(慶応義塾大学教授)】
 その話の前と言いますか,いまの6人の方々のお話を伺った中で,西尾さんの話で,原子力の位置づけではなくて,この会議そのものの位置づけの問題についてのご異議なりあるいはご質問があったのですが,これはやはりわれわれの知っている範囲でそれについてお答えするのが義務であろうと思いますので,私が言うのは適当かどうかわかりませんが,モデレーターの1人なので,私の了解を話させていただきます.
 まず,この会議は5回というのは非常に単純なことで,予算の問題です.これはお金がけっこうかかるものですから,国が出しているお金なものですから,その予算の範囲でないとできないので,お金があればもっとやりたいのですが,今年度はこれ以上できないということです.ただし,来年度以降やることについては,まったくフリーハンドで,われわれとしては要求しています.私はおそらくやってもらえるだろうと思っていまして,これで終わるわけではありません.
 5回というのは,実はもっとやりたいという意識が私にはありまして,実は事務局側に前回も聞いたのですが「どうも無理そうだ」ということで,このあとのモデレーター会議でも相談すると思いますが,そういったことで,まったく物理的な事情で,それについてはできない可能性があります.しかし,いま言ったようなことで,5回で打ち切りという話ではありませんので,その点はご了解いただきたいというのが第1点です.
 2番目ですが,この会合の提案がどの程度反映されるかが曖昧であるという問題と,原子力委員会の何らかの決定とリンクさせなければおかしいというご質問,ご意見ですが,これについては私はこのように考えています.
 今回の円卓会議が始まるときに,前回の反省がありまして,私はたまたま前回のモデレーターもやっていたのですけれども,それは何かというと,原子力委員会の下部機構であったのです.したがいまして,原子力委員会のメンバーが全員ここに顔を揃えて,だから原子力委員会対招へい者の対決という姿勢であったわけです.
 私はそういう円卓会議というのは意味が違うと考えていまして,そうではなくて国民の広い意見を聴するのであれば,独立の組織になって,そこで議論をするのが筋であるということで,そういう会議であれば私は参加できる,そうでなければできないということを原子力委員会側に申して,結局,最終的にはそうなったわけです.
 そういったことで,たしかに国からお金が出ていますので,これだけはどうしようもないのですが,それだけはいただきますけれども,あとは運営から何からいっさいすべてこのモデレーターが中心に行なうということで,いっさい国側,原子力委員会側にはご相談しておりません.そういった意味で,これが原子力委員会側と切れているというのが,今回の最大の特徴かと思います.
 したがいまして,正直言いますと,原子力委員会でいま議論をしていることが,こことどうリンクするかという議論は行なっておりません.ですから,逆に言うと,原子力委員会側で何が行なわれているかということを知ることは大事ですけれども,しかし,それに合わせてこちら側が言うとか,それに向こう側の決定がこちら側の議論とリンクして,例えば増すとかということについては,いっさいこの会議は関知していないというのが現状です.当然,要請として「こういうところの提案を十分尊重しろ」ということは言えますけれども,基本的には原子力委員会とこの会議とは切れている,独立であるというのが私の了解です.
 最後に提案ですが,切れているからこそ思い切った提案ができるのだろうと思います.これは前回来られた吉岡さんが,書いたものの中でいみじくも言われたのですが,この会議で反対の方が賛成に回り,賛成の方が反対になることはまずあり得ないと.ですから,こういうところで意味のある議論をするためには,やはり両方が何らかの意味で問題があると考えているところについて議論したほうがよい.
 例えば,先ほど西尾さんが言われたような意思決定のプロセスのような問題です.「そういうことについては言うべきである」というご意見がありましたが,私もまことにもっともだと思っているわけです.これについては今回はできませんで,次回以降で取り上げてぜひやりたいと思いますけれども,そういう意見について,もし原子力委員会の下部機構であれば「原子力委員会はやめろ」とは言えないわけです.しかし,この形になっていれば「原子力委員会という組織自身がおかしい」ということも言えるわけです.そういった意味で,私は思ったことが言える,提案ができる組織として,今回の円卓会議があるという了解でございます.

【西尾】
 わかりました.

【中島】
 どうも茅さん,ありがとうございました.私は今回が初めてですけれども,いま茅さんが言われたものと同じ了解で,この会議のモデレーターを務めております.モデレーターは座長と副座長はあまりしゃべってはいけないということでありまして,茅先生は前回はモデレーターでまったく発言できなかったのだそうです.大変ストレスがたまっておられたらしいですが,今日はご自由にご発言いただけるはずであります.
 それではどなたからでもけっこうです,手を挙げて,はい,今井先生どうぞ.

【今井】
 初めに5分と言われたので,私は正直に5分話したら…….

【小沢(社会評論家)】
 いつもそのような問題が起きます.

【今井】
 少し話しそびれたことがあります.1つは原子力というのは,原子力発電だと思っている人と,核兵器だと思っている人と両方あって,その両方どちらも原子力なのだというのが,なかなかわかっていただいていない.意識としてわかるのだけれども,取り扱いの中では,ことに日本では「核というのはどこか怖いおじさんが持っている恐ろしい兵器」というようなニュアンスで,日常生活の中に比較的,浸透しても困るのでしょうけれども,身近に感じられていない.これは非常に日本の特色だと思います.
 核を,あるいは原子力を扱うというときには,何といってもきちんと使う,それから安全に使う,これは核兵器の場合でも原子力の場合でも当然同じことです.
 それから,へまな事故をやらないというのが一番大事なことであって,日本の場合の原子力の評判の悪いもののかなり多くの部分というのは,実にへまなことをやって「どうしてそんなとんでもないことをやるんだろう」と思うようなことが起きていて,それで「これはへまなことで間違えました」と言ってしまえばよいのに,平謝りに謝ったりなさるものですから「何か悪いことがたくさんあるのではないか」というような感じがあります.
 核エネルギーあるいは原子力エネルギーというのは,ウラン1グラムが石炭3トンだというくらい巨大なエネルギーであるものですから,それを管理するということは,原子力時代の始まりから非常に強く意識されていたものだと思います.1つは1946年のバルークフランというので,原子力,核兵器,資源,資材,人材,工場,設備,その他全部,この世界政府のもとに置こうとしたこともあって,これはソ連の核兵器を開発している最中だったし,時期が時期だったので話にならなかったのですけれども,いまになって冷戦が終わってみると,そういう時期がまたやってきているような気がいたします.
 ですから,原子力発電というものを考えるときに,核のほうでもひと山越してだいぶ落ちついてきた.「これでよい」という意味ではもちろんないですけれども,それを考えにおいておかないといけないと思います.
 それから,原子力発電そのものについては,非常に「いる.いらない」という議論がたくさんあって,これは先ほどもちょっと申し上げましたように10年,20年先のことはなかなかわからないということが1つと,ただ,もし原子力がいるとしたら,それは東アジアだろうということは広く言われています.これは人口の増加が世界の人口の半分はアジアにあるので,これが世銀の一番低い形のように,年に1%のGNPの伸びをやると,たしか25年ぐらいで東アジアのエネルギーは倍以上になって,東アジアには石炭はありますけれども,あまりよい石炭ではないものですから,これはアラブ湾岸に依存することが非常に多くなるということが言われております.
 いろいろなことを言っていくと,どの道をたどっても,エネルギーの技術的な解決というのはないということになるのが大体普通であって,それで皆で天井を見上げて,そして「どうして,この昼の日中に,これだけ電気がついているんだろう」と,ライフスタイルの変更というのが必要なのではないかというのが1つです.
 それから,いまから20年前に米ソが核軍拡を一生懸命やって,核でもって相手を叩きつぶそうと思っていた頃というのは「核兵器はもういらないのだ」という,いまの時代のことは考えもつかなかったのだと思います.同じようにいまわれわれが考えて,例えば高温超伝導のようにして電気を無限にためておく方法というのはあり得ないのだと思っているけれども,あるいは何か違う方法でできるのかもしれない.ですから,そういう意味で,あまり現在の知識で先まで全部決めてしまわないほうがよいだろうと思います.以上です.

【中島】
 どうもありがとうございました.いままで第1回の皆さんからのプレゼンテーションに出された内容はかなり多岐にわたっておりまして,なかなかちょっと議論を集約するのが難しい.
 ただ,原子力委員会のあり方とか,政策決定のあり方をもっと何とかすべきだという,西尾さんあるいは浅岡先生もそういうご意見がありましたけれども,そういうことは異存ないものとして,いま私が最初に申しましたエネルギー選択の中での原子力の位置づけということについて,共通的なのはどうやら,1つだけの単一路線で進むというのではなくて,多様性を考えていろいろなエネルギー選択をすべきではないかという点では,大体皆さん反対の方はいらっしゃらないように思います.
 ただし,その中で少しずれがあるとすれば,原子力か再生エネルギーかというのはよく議論になりますけれども,そういう論争をしても仕方がないですが,しかし,一応ここで私は座長として確かめておきたいのは「再生エネルギーでやるべきだ」という方に対して「しかし,量的にはしばらくは到底無理ではないか」というご意見があるわけです.その辺をもう少し詰めていただけると,今日,1つの問題点がはっきりするのではないかと思いますので,藤井先生,何かご発言がありますか,どうぞ.

【藤井】
 私もエネルギー多様性をやるべきだという意見の1人ですけれども,その前提条件として,これはやはり持続性,要するにそのエネルギーが持続するかしないのか,21世紀のずっとかどうかわかりませんけれども,枯渇することがないのかあるのか.やはり私は「枯渇することのない」という,そちらのほうをやはり考えるべきだと.それから,将来に何らかの技術的,金銭的,人的いろいろな面でのつけができるだけない,これはやはりこの場においてきちっと考えておく必要があるだろう.そういった上でのエネルギーの多様性を,私は模索すべきではないかと思います.
 いま,今井さんのご意見で,エネルギーの技術的な解決策はなかなか難しいというようなお話がありましたけれども,たしかにそれは難しいことは難しいけれども,そういった前提条件で考えていけば,ないことはないと私は思います.
 例えば,先ほど私がちょっと申し上げましたように,バイオマスでも16%,それが正しいかどうか実際にやってみなければわからないということもありますけれども,しかし,それを実際にテストして,その可能性についてチェックする必要があるだろうと思うし,それから,風力についても最近はかなりのパーセンテージでエネルギーをまかなうことができるという.
現に先ほどOHPで浅岡さんがお示しになりましたドイツでは,実際にそうやっている.では,ドイツと日本で風力,風況はどの程度違うのか.その辺も含めますと,やはりドイツでできて日本でできないはずはないということで,それも考慮に入れていくべきだし.それから日本は周りが海ですので,波力のエネルギーも入れるべきだと思う.それから,太陽だってヨーロッパに比べると日本は日射があるほうだし.水力についても同様でしょう.もちろん大規模な水力発電ではなくて,小水力といったものをもっと進めるべきだし,そういったものを足し合せていけば,かなりのエネルギーは,それでまかなうことができるわけです.
 それから,われわれのいまのこの状態で生活を21世紀に進めようというのは,これはしょせん同じ大きさの地球の上に住んで,そして多くの人間が,これから更に増えていくかもわかりませんけれども,そういった状態で,各自がこういったたくさんのエネルギーを使って,そのままいまの生活を21世紀も続けようとといったことを考えること自体が,大体前提条件が間違っているのではないか.そういったことを考えると,やはりそういった状況下で,われわれの生活をこれからどう変えていくのかと,そこをやはり真剣に考えていかないと,いくらエネルギー問題だけを取り上げて議論しても,それほど意味がないのではないかと私は考えます.

【中島】
 どうもありがとうございました.藤目先生,いまのご意見について,藤目先生は先ほど3%と…….だいぶ違うものですから.

【藤目】
 タイムスパンをどこに取るからで,2100年におくのか2010年におくのか,その辺がどうも再生可能エネルギーを議論するときにはっきりしないですけれども.先ほどOHPで出ましたものだと,たしかにいま世界で 1,000万kWぐらいの風力がありますけれども,風力というのは,実際にはそれの稼働率は15%か20%ぐらいです.ですから,もし他の原子力等と比較する場合には 1,000万kWというのは実は大体 100万kWぐらいしかないと考えたほうがよい.
それから,藤井先生がおっしゃるように,たしかにエネルギー多消費型の社会を続けていくのはもう限界にきているというのはたしかだと思いますけれども,それではヨーロッパやアメリカは再生可能エネルギーをどのくらいでやっているかというと,ドイツの例が出ましたけれども,ドイツはたしか 200万kWぐらいありますけれども,それでもエネルギーの中の1%にも満たないということです.
 ですから,たしかに期待はすべきだとは思いますけれども,現実問題として2050年ぐらいまで考えても,なかなか主要なエネルギーにはなり得ないのではないか.私も再生可能エネルギーは大いに賛成ですし,どんどんお金をつぎ込んでやったほうがよいとは思いますけれども,現実問題としては難しいのではないかなと思います.

【中島】
 はい,わかりました.浅岡さんどうぞ.

【浅岡】
 皆様のお話を伺いまして,本日,藤目さんのお話も含めまして,原子力の1次エネルギーに占める比率あるいは電力供給に占める比率が,現状よりももっと大きくなることをどなたもご支持ではないようにお聞きしました.
 電力供給の中で現在33%ぐらいですが,いまの計画では2010年までには45%というところまで増やす計画で温暖化対策も立てていますけれども,それは非現実的であるということに加えて,エネルギーバランスからいってもよくないのではないか,多様性という意味からもご支持ではないというように伺いました.
 そうなりますと,あと,いま33%ほど電力供給の中で占めているものを維持していくのか,あるいは経年的に廃炉になっていく部分がありますが,その部分を補っていこうとするのかが,具体的な選択となってくることになります.
 先ほどの中島先生のお話では「再生可能エネルギーというのは,当面間に合わないのではないか,こういうことについてどうお考えなのか」というご質問であったと思いますが,たしかに2010年までに,原子力を再生可能エネルギーで置き換えるというようなことを言っている方は多分いらっしゃらないと思うのです.
 しかし,いま問題なのは,日本が原子力発電所を増設していく政策をとっていることです.そのことが,再生可能エネルギーの道をずい分狭めてきて,この10年の取り組みを見ますと,欧米と日本と比べましたときに,極端な差がついてしまったことです.そのもとはと言えば,先ほど西尾さんがおっしゃいましたように,エネルギー消費量は拡大するのだ,させるのだということが前提にあり,原子力発電所を増設するのだという掛け声が必要であったということなのではないか.
 そこを今回,この議論の中で,もう一度出発点を元に戻して議論ができるならば,今後の再生可能エネルギーの拡大への政策決定には,有意義であろうと思います.
 現実の可能性を議論することについて,現在のエネルギー消費量,あるいはエネルギー効率をすべて前提にしたうえで何%なのかという議論をすることではないと思います.エネルギー効率を高めていくということは,もちろん技術としては十分本来の技術者の皆さんのお仕事としてなさると思いますし,現在のエネルギーの供給ロスは大変大きいわけですから,これ自身を小さくするということの技術も加わっていくでしょうし,そこにバイオマスが加わっていく,再生可能エネルギーが加わっていく.
 再生可能エネルギーと言えば,太陽光であるとか,風力であるとかだけを言うのではなくて,日本ではまだなじみが少ないですが,バイオマスというのは先ほど言われたようにスウェーデンで18%も現に使われているということを含めて考えますと,われわれの想像力をもっと高めていく必要があるだろう.
 そういうことを含めて,どう転換するのか,どういうシナリオを書くのかということです.何としても,温暖化対策と原子力問題の廃棄物問題の解決は,将来世代のために私たちの世代でしなければいけない課題であるということを認識して,「どうするのか」ということを考えることを提起しているものだというようにご理解いただければよいと思います.

【茅】
 ちょっと質問してよろしいですか.いまの浅岡さんのお話と西尾さんのお話に共通する1つの点で伺いたいのですが.
 エネルギーの量の拡大を考えるのは,やはり問題があるというご発言があったのですが,その意味を伺いたいのです.意味というのは現実の問題として,いままでエネルギー需要というのは拡大してきたわけです.今後を考えた場合,それをどの程度に考えておられるのかというのがわからないと,やはりおっしゃっていることの本当の意味がわかりませんので.
 ちなみに現在,政府で作っている案というのは,ご承知のように今後の経済成長を2%と考えて,省エネルギー率が2%をちょっと超えるぐらいという前提を,できるかどうかはともかくとして,考えているわけです.したがって,エネルギー需要は今後10年の間は少なくともほとんど伸びないという想定になっているのですが,それをさらに上回る,例えば「エネルギーはむしろこれから伸びないんだ,いやもっと減らすのだ」という前提でお話になっているのか,それともまた違ったお考え方なのか,その辺をちょっと伺っておきたいのですが.

【西尾】
 よろしいでしょうか.いま長期エネルギー需給見通しで,あまり伸びないようにはなっていると言うけれども,それでもやはりずっと伸び続けていくわけです.そうではないですか.

【茅】
 あれは年率 0.1%ぐらいですから,ですからほとんど伸びないと同じなのです.

【西尾】
 年率 0.1%というのは伸びないということではないわけです.伸びていくわけです.

【茅】
 しかし 0.1%というのは10年間で1%ですから…….

【西尾】
 でもいずれにしても伸びていく.しかも2010年の終わったそのあとについてはないわけで,2010年からあともおそらくは伸びていくとすると,やはりずっと決局伸び続けていくような形にしかなっていないのではないか.その意味で言えば,長期エネルギー需給見通しと言うけれども,2010年というのはあまり長期ではないわけです.
 つい目先ですから,本当にどのように考え方を変えていくのかというようなことが反映されないところなので,たしかに2010年で考えれば,私などが考えてもそんなには量的には違わないかもしれないと思います.ただ,むしろその先,本当に少しずつにしろ何にしろ,伸ばし続けていくというのをいつまで続けるのかというのが基本的な考え方であって,特に地球温暖化,あるいは温暖化だけではなくて他の地球環境問題というものすべて含めたうえで,やはりエネルギーの消費というのをどこかで下げていくということがないかぎりは,解決不能だと思うのです.

【茅】
 いまの西尾さんのおっしゃる意味は私も大変よくわかって,需給見通しの数字はたまたまここにもってきただけですけれども,長期的に見てどこか下がらなければ,あるいは少なくとも伸びないようにならなければ,人間社会はもたないというのは,私もまったく同感です.
 ただ問題は原子力との関係において,原子力は現在あるわけです,そして,これから建てようとしているといった段階で,エネルギー需要を今後,例えば十数年でけっこうだと思いますが,それをどうお考えになって,発案が出ているのかということを伺いたいわけです.それは今後,程度も伸びないとおっしゃっているのか,あるいはドラスティックに減らすということを前提でおっしゃっているのか.

【西尾】
 ですから,いま言ったように,10年ぐらいでドラスティックに減るかどうかと言えば,それほどは減らないだろうと思うけれども,少なくとも減るほうに変えていくことは,いますぐにでもやる必要があるだろうと思っています.
 そのときに,いま減らしていくということ自体については異論はないというように言われたわけですけれども,本当に,あるいは省エネルギーということは一般的に皆よいことだと言っている,政府も言っているし電力会社も言っているわけですけれども,どこまで本気でエネルギーを減らすことを考えているのか.
 一方で「減らす」と言いながら,例えばエネルギー経済研究所などの研究レポートを見ると,2100年までひたすら伸び続けているようなグラフなわけです.2100年,そんな先まで何もわからないという話もありましたけれども,わからないところまで,とにかく伸び続ける.「そのような考え方をいつまでとっていくのですか」ということだと思います.

【茅】
 座長,こういう対話でやってよろしいですか,そこがよくわからないので.

【石川(原子力発電技術機構特別顧問)】
 浅岡さんにいまの質問を.一人だけの意見で先にすっといってしまうといけませんので.

【浅岡】
 長期エネルギー需給見通しでは,2010年までに43%増えるという前提です.それで原子力発電所20基増設計画も出てきている.このことを特に申し上げているので,1次エネルギー全体は,それこそ交通政策もあれば,廃棄物対策もあれば,鉄鋼などの生産をどうするのかとか,そういう対策の総体であります.それは先生のおっしゃるようにこれから2010年までは抑制を目標にされているのですが,1990年からこれまで12%増えています.けれども,一番の問題は原子力は電力供給以外はないわけですし,そこでは 1.43倍になるというのが基本設計の中に入っているということを申し上げています.

【中島】
 はい,どうぞ.

【鈴木】
 いま議論が伯仲しているところですが,ちょっと整理させていただきたいのは,原子力とエネルギーを考えたときに,1次エネルギーで言うのか,電力で言うのかで非常に違うと思います.私が最後,説明し残した資料が1枚ありますけれども,多様性の議論で,先ほど「日本は非常に多様性が進んでいる」と申し上げたのは,電力の発電の中の多様化が進んでいるのであって,1次エネルギーの多様性を見ますと,日本はそれほどよく進んでいない.石油依存度が非常に高いということで,先進国の中でもよいほうではないのです.世界平均から見ても低い.
 ただ原子力を増やすと,この日本の1次エネルギーの多様性が本当に増えるのかと言いますと,石油を何とかしなければいけないのですが,石油の使用量のうち,いま電力の使用量は約10%ちょっとしかないです.電力の中に占める石油の量も非常に少ないということは,原子力を増やしても,1次エネルギーの中の多様性はそんなに増えない.やはり石油を減らすためには,特に運輸部門,自動車とかそういうところの省エネルギーを図っていく必要があるので,原子力を議論するのであれば,いまやはり電力ということで絞って議論をされたほうがよいのではないか.再生可能エネルギーのシェアも電力に絞って議論するのと,例えばバイオマスなども非電力の用途が非常に高いものですから,電力以外になりますとシェアがぐんと増えるわけです.したがって,その議論をまず決めていただきたい.
 それから時間軸も,2010年だとあまり意味がないという議論と,いや現実に考えると2010年までどう考えるのかと.2010年ではちょっと短すぎるので,大体2030年ぐらいまでは議論してよいのではないか.2050年以降になってしまいますと,これまたちょっとあまり意味がない議論なので,2050年ぐらいまではせいぜいビジョンとして見ていただいたうえで,2030年までどうするかという議論に絞らないと話がなかなか噛み合わない.
 最後にもう1つ,日本の話なのかグローバルなのかも議論しないと,ちょっと再生可能エネルギーのシェアも,やはりグローバルで見ると,途上国の中で占めるシェアが非常に大きいので,これも議論がなかなか噛み合わない.その辺をちょっと今後,話すときに絞っていただきたいと思います.

【中島】
 おっしゃる通りだと思います.これはなかなか難しい問題で,例えば2010年というのが出てくるのは,この間のC0P3でもって目標年次になっているわけです.大体具体的に問題になるのは2008年から2010年の間に,1990年度比較で6%日本は減らすということになった.
 それの具体的な対応というのは,ご承知のように,アメリカなどは議会にもかけなければ,要するに大統領が替わってからやろうぐらいのことで,何もやっていない国もたくさんあるわけです.しかも,いわゆる発展途上国は除外されているから,グローバルと言っても「では,それはどうしても入れる」ということにするのかどうかという問題もあります.それから,座長があまりしゃべってはいけませんけれども,例えば1990年度からいままでに,世界で一番炭酸ガスを減らすのに貢献した国は旧ソ連なのです.18%から7%ぐらいに劇的に減らした.そうすると「国が崩壊すれば炭酸ガスは減るよ」というのではやはり具合が悪いというのがまたエネルギー問題だろうと思いますので,鈴木さんのおっしゃるのはもっともですが,ちょっと年次を決めて,そこまで詰めるという議論は,私は難しいのではないかと思います.どうぞ,先生.

【茅】
 よろしいですか.ちょっと先ほども途中までだったものですから.いまの鈴木さんの発言にも絡むのですが,例えば気候変動の問題です.CO2 の問題というようなことになりますと,どうしても2010年がターゲットができている唯一なところなものですから,それで考えざるを得ないわけです.
私は浅岡さんに伺いたいのは,2010年というターゲットを,これはやはり気候変動の問題が一番重要ですから,そのときにこれを達成するという前提条件を,当然浅岡さんはご自分のシナリオの中で考えていらっしゃると思いますけれども,そのシナリオをどのように作ろうと考えておられるのかを伺いたいのです.
というのは,先ほど申し上げましたように,かりに現在の需要の流れというもので考えますと6%ではなくて0%減です.つまり,安定化を達成するだけでも,相当の省エネルギーがいるというのは計算上出てくるわけです.もちろん先ほど座長が言われたように,もう現在のマイナス成長が日本も今後ずっと続くというのは,全然話が違うのですけれども,一応,それは皆さんに望まないだろうという前提条件で考えますと,簡単な計算をするとすぐ出ますが,先ほど浅岡さんは,再生可能エネルギーについて「2010年まではそれほど大したコンティビションはないだろう」とおっしゃった.
 実際,現実に検討してみても,どうやってみても再生可能エネルギーが2010年までに2%入る可能性は,私はほとんどないのではないかという,やや悲観的なのです.政府案でも3%ですから.一応,そのことを前提条件にしてやりますと,もし現状の政府の供給,需要計画のままでいきますと,大体2010年まで 2.1%/年ぐらいの省エネルギーをしないと安定化ができない.これは単なる数字の上の話です.
 ところが,もしこれで原子力をモラトリアムにすると,現実にはこれは大体 2.7%から 2.8%の省エネルギーが必要になります.これも計算ですぐ出てきますが,これはどのレベルかというと,オイルショックのあと13年間で日本が達成した数字と同じなのです.オイルショックのあとの,平均ですが 2.7%から 2.8%の省エネルギーというのは先進国で達成した最高値なのです.中国だけは別な事情で最近でも3%台の省エネルギー率を達成していますが,非常に高いわけです.
 一方において,1990年の省エネルギーというのは逆の方向になっていて,増エネルギーになっている.これは皆さんよくご存じの通りです.したがって,どう言おうと2010年までのターゲットを達成しようとすると,大変な省エネルギーの努力がいる.まして原子力を例えばモラトリアムにした場合には,かつてないほどの省エネルギーをやらなければいけない.
 それをどういう方法で,どういう政策でもよいし,どういうやり方でもよいですが,やろうと考えておられるか,私はそれを伺いたい.それが十分心の中におありならば,私はそれを伺いたいというのが私の質問です.

【浅岡】
 よろいしいですか.

【中島】
 お願いします.

【浅岡】
 私は政府ではありませんし,政府は長期エネルギー需給見通しの算定根拠を開示していませんので,それだけの情報を持つものではありませんから,そのもとでの私どもの市民サイドでの考えというようにお取りいただければよいかと思います.
 再生可能エネルギーを,今後2010年までにどれだけ投入が実際に実施できるのか,現段階でやれることにはどうしても限界があると思いますが,私はそれをいつまでも言っていてはいけないということを1つ申し上げたいと思います.
 この1990年の第9回,長期エネルギー需給見通しでは,新エネルギー(再生可能エネルギーはそのほんの一部)について5.3%の目標数値を出したのです.ところがうまく進まないからといって1994年にそれを半分ぐらいに下げてしまった.目標を2~3%に下げてしまった.いま正確なデータがありません,次のときに持ってきますけれども.

【茅】
 5%から 3.2%ですね.

【浅岡】
 ええ,下げたのです.目標達成できなかったからと言って目標を下げる.こういうやり方をやってきたのが日本であって,いま再生可能エネルギーを進めている国は,1980年代の終わりから「やはりやらなければいけない」ということで,現実の政策をつけてきたわけです.
 どういう政策を,いつの段階でどうつけていくのかということを,これまでの経過から,われわれはいま学ぶべきです.もっと抜本的に再生可能エネルギーを導入できるような政策を取るべきである.そうすれば2%も危ないと言われるようなことを乗り越えていけるでしょうし,そうしなければできないだろうということです.
 それには補助金をつけるということだけではなくて,現実の運用の中で見ていきますと,ずい分いろいろ問題が出ています.せっかくバイオマスでガスを作っても連結できないとか,売電価格の問題です.普及させるために,一般市民の初期投資負担が重すぎるのでないか.
 問題が大きいと言われれば言われるほど政策議論をして,いますぐに抜本的な対策を進めていっていただきたい.これが1つです.
 それから,2010年までに6%削減の目標達成は大変困難だと,茅先生はいろいろなところでおっしゃっていらっしゃいます.私はこの点は大変率直でいらっしゃると思いますし,貴重なご意見だと思います.
 この声がなぜ昨年の12月の段階で,日本の温暖化対策の当面の方針が作られるときに生かされ,なぜもっと政府の中できちんと議論をされなかったのだろうか.そのことをどうしてもっと真面目に議論をなさらなかったのだろうかということを申し上げたいと思います.
 政府の側から,この目標の中身はこうである,このためにこれだけこういう努力がこういう方面で必要である,あるいはこういう政策的な仕組みが必要であるということを,目標を達成するための目標として出されて,国民に協力を呼びかける.そして経済システムを転換する.将来の持続可能な経済に続くであろうビジネスというものを,そこに見いだすという議論が国民の中で,産業界も含めてなされることが必要です.そういうことを伴わずに,単に「できる,できない」という議論による数字合わせだと,私は非常に不十分なことだと思います.
 その意味から言いますと,これも昨年の世論調査の中ですけれども,もういまの程度以上の生活水準を望まないという方,もっと前の,10年前あるいは20年前でもよいという方も含めて,世論調査の中では80%以上の人がそう答えているわけでして,にもかかわらず,エネルギー消費量も拡大する,電力消費も拡大するというシナリオをお書きになることがそもそもの一番の問題です.
 それは,国民に協力や問題意識を起こさせない,それからビジネスにも,技術や産業を起こすべき方向性を示していかない,そのことがマイナス,逆の結果をもたらしていくという点です.ですから,総量としてこれ以上増やさないとして,そして技術をどの方向に深めるべきなのかというインセンティブを働かせることが必要です.
 その点で,私が非常に不思議だと思うところは,例えば電気メーカーの松下は,2000年までに製品の電力消費量を半分にするという広報をしているわけです.実際にやれるという話はたくさんあるわけです.そういうことをつないでいけば,十分に技術の可能性もある.そして,エネルギー消費量の少ない技術を用いた商品を購入し,消費しやすい制度が作られていくならば,市民サイドで昨年の秋頃でしたか,WWFJとCASAという団体のシュミレーションでは,2010年までに20%ぐらいまでも削減が可能ということを出しているわけです.本当にそうなのかという議論もできていないわけです.
すみません,長くなりました.そういうことを申し上げたいと思います.

【中島】
 これは議論を続けていますと,皆さんコーヒーを飲む時間もなくなりますから,いったんここで切りたいと思います.

【事務局】
 それでは,この辺で休憩に入らせていただきたいと思います.まず最初,円卓の先生方がご退場になる間に,事務局よりお知らせがありますので,傍聴の皆様方におかれましては,そのまま着席下さい.休憩時間はいまから約20分程度とさせていただきたいと思います.

【中島】
 それではしばらく休憩とします.

--休憩--

【事務局】
 それでは,円卓の先生方もご着席になられましたので,本日の原子力政策円卓会議,後半の議論に向けて再開させていただきたいと思います.中島先生よろしくお願いいたします.

【中島】
 定刻の時間,終わりの時間等をちょっとおっしゃって下さい.

【事務局】
 できましたならば,予定通り5時ぐらいには何とか終わらせて…….それは議長の先生にお任せしたいと思います.よろしくお願いいたします.

【中島】
 わかりました.議論が拡散もしましたけれども,かなり集中もしてまいりましたので,後半の自由討議に移りたいと思います.やはり,ちょっと私もくたびれましたので,しばらく石川君に代わってもらいます.

【石川】
 というお話ですので代わらせていただきます.前回から見ておりますと,やっと議論が集約してまいりましたので,1人の方がなるべく短かめに発言をしていただいて,1人の方が1つ,2つ,3つとお話しにならないように,コントロールをさせていただきたいと思っています.
 それでは,先ほどの続きに移りたいと思いますが,茅先生どうぞ.

【茅】
 ありがとうございます.モデレーターがあまり話してはいけないとは時々思うのですが,今日は一応座長ではないので,多少は話すことは勘弁していただきたいと思うのです.
 先ほどから私が浅岡さんに申し上げていたことは,何を言いたいのかというと,例えばCOP3においての合意,それから原子力を少なくとも脱却するという,2つのロジックを浅岡さんは言っておられるのですが,もちろんそれはそれで1つの主張なのですが,それならば,エネルギーの需給というときに,どういう絵を描いておられるのかということを伺っていたわけです.
 やはり,そういった主張をされるならば,主張されるだけのきちんとした絵を持っている義務があると思うのです.
 私が具体的にご質問をしたのは,大体先ほども申し上げましたように,よく言われるのが,2%ぐらいの経済成長でいくとすると,もしかりに原子力をモラトリアムにすると 2.7%ぐらいの省エネルギーがいるので,これは実質的にエネルギー需要が毎年 0.7%ずつ減る計算になるのです.ですから,おっしゃったように,伸ばすという絵ではなくて,少なくともトータルのエネルギーの最終需要は減るのです.ですから,こういうことが具体的にどういう方策でできるのかを考えないと,絵ができないわけです.
 これに対して,答えは2つあると思うのですが,1つは当然経済成長2%という看板をはずすことです.これをしないで,例えばむしろ今後は経済成長はほとんどしなくていいのだというのも,1つの絵だと思います.それは1つの考え方です.それが第1です.
 2番目は, 2.7%の省エネをしゃにむにやるということになると,かなり強力な政策手段になります.1つは規制的手段で,例えば大型の車に対しては非常に高額の税をかけて,実質的に乗れなくする.例えば現在乗用車のエネルギー需要の伸びというのは非常に大きいものですから,これを抑えなければ答えは出ないのですが,そのためにはとにかく何かをしなければいけない.とすればいま言ったようなことか,あるいはシンガポールのように,奇数番の車は奇数日にしか乗れないというような,思い切った規制をするというのが1つです.
 それからよく言われるように,経済的手段と言われる中で炭素税がありますが,炭素税も少ない値ではなくて,大変大きな値を導入して,それによって需要を大きく抑制するというのがあり得ると思います.
 こういった非常に強力な,何らかの政策手段を導入して,しゃにむに 2.7%を達成するのがもう1つだと思うのです.
 そういった絵のどれを,頭の中に描いてらっしゃるのかというのが,私の伺いたかった点で,それの答えは実は先ほどまだいただいていないわけです.

【浅岡】
 はい.いいですか.

【石川】
 お願いします.

【浅岡】
 私の説明が不十分だったかと思いますが,まず経済成長2%というのは,いまの現状から見ると,大変困難な現状にあります.いまの不況をどう克服するかという点は,茅先生がおっしゃるように,温暖化対策をどう進めるのかというのと同じぐらい,私は難しい問題を突きつけられているのではないかと思いますが,政府の側は,経済成長の確保やこの不況については,何としても克服しなければいけない.できると大変強くおっしゃるわけです.そのための政策措置を講じる,60兆円だって投じるとおっしゃるわけです.私は,こうした政策,政治的意思が必要だということをまず申し上げたい.
 経済成長については,先ほど申しましたように,現実に2%成長というのは現実的ではなく,また世論の意向としても「そうでなくてもいい」と言っていると受け取っていただきたいと,80%程度の人が「現在程度」又は「それ以下でいい」と言っているわけですから,基本的に抑制を考えていけばいいと思っています.需要を拡大させないということです.
 そして,政策的手段というのは,もう1つ前に,私はもっと技術的な対応の部分が大変大きくあると思います.温暖化の議論が起こってきた2,3年を見ても,技術には大きな変化があるわけです.例えば,自動車のハイブリッド車だって,95年頃には現実性がなくて,96年頃から,1~2年の間に商品化していったというものですし,必要は発明の母ということが技術にはあります.現在の技術によっても,20%近い削減が可能であるというシュミレーションもあります.こういうことが1つです.
 さらに,政策的手段がもちろん必要なわけです.そうした技術が,優先的に消費者の手に渡り利用されるための政策的措置というのが非常に重要なわけで,その部分については,茅先生がいまいくつかのことをおっしゃいましたけれども,もっと多様な方法について議論をしていくべきなのであって,その中に炭素税も含まれます.炭素税が新たな課税ではなくて,現在の税の徴収方法のシフトで,トータルとして税が大きく変わるのではなくて,取る場所が変わるのだと,使う場所が変わるのだ,これがいま税のグリーン化として国際的な議論をされているものですし,そのように少しずつ流れているのがいまの国際世論だと思いますし,日本でもその議論を始めるべきだと思います.
 それも,税などはもちろん国民の理解がなければ導入できないわけですから,政府の側から,現実をデータや情報公開して議論を起こす.やはり削減していくのだという政府の意思がなければ,そうした情報も出されてこないし,また国民にも伝わらないし,産業界もその気にならない.私はそこが一番の問題だとやはり思います.

【石川】
 よろしいですか.ありがとうございました.どうぞ,西尾さん.

【西尾】
 いまのお話なのですが,経済成長2%というのがよいか悪いかというのはとりあえず別にして,むしろエネルギーの需給というのを考える時に,まず経済成長からスタートしないと,エネルギーの需給が決まってこないようないまの数字の出し方というのは,本当にそれが正しいのかどうか,あるいは現実的なのかどうかということもまずあるだろうと,1つは思います.
 それについて言えば,経済とエネルギーのあり方について,もう少しいろいろな議論が必要なのではないだろうかと思います.いまここで,それ以上のことは言えないのですが.それが1つです.
 その省エネルギーについて,いま以上にやろうとすれば,強制的なことをやらないといけないということを言われたのですが,まずその前提に,そもそも何のために省エネルギーをしなくてはいけないのか,省エネはどうして必要なのかということを,一般の人にきちんと説明することすらしていないのではないかというのが,正直な実感です.
 それから,先ほど日本は石油ショックの後で,省エネルギーというのを非常に進めてきたと言われましたが,ところが実際には石油ショックの後ずっと下がってきたが,この需給部会の中間報告にも,そのエネルギーの消費原単位の推移というグラフがありますけれども,それが結局途中で止まってしまって,むしろ最近は少し上がったりもしているということになってきている.
 ほとんどそれは,石油の値段に連動しているのではないかと思うのです.そうすると,石油の値段が下がってくると,コスト的に引き合わないから省エネというのは進まないということであるとすれば,それは技術的な限界があるとかということではなくて,むしろ石油の値段が下がってきても省エネが進むような方策を作るべきだし,逆に言うと,それは石油が今度上がったときに,うまくそれをカバーするようなことと連動させて,きちんとした政策というのは作れるのだと思います.
 そういうことを何もしないでおいて,省エネだ,強制的にやらなくていけないのだというのは,脅しにしかならないと思います.

【石川】
 ちょっと,このところでお話をさせていただきたいと思います.
 藤目さん,いま炭素税ということが出ましたし,また経済成長からエネルギー要求が出ているのだけれども,また政府の経済成長予測が妥当なのか,このあたりはどう考えていけばよろしいでしょうか.

【藤目】
 環境税についてはいろいろな意見があって,確かにいまの税体系を変えて,環境志向型税体系にするという考え方はあり得ると思うのですが,ただ,環境税をかけたからといって省エネが進むとか,それを補助金として再生可能に入れるとかの効果あると思うのですが,それを本格的に効果があろうとすると,おそらく 100%とか 200%とかそういうことになってしまうので,考え方としては,環境税というのはそう反対する人はいないと思いますが,なかなか実行するのには難しい.税体系自由ということ自体は非常に難しいということなのです.
 ただ,国際的な流れですから,いずれは何らかの形で入ってくるのではないかと思うのです.それはむしろ,象徴的なというか,アナウンス効果と言っていますけれども,環境税をかけることによって,環境に非常に注目しましょうという効果は大いにあるのではないかと思います.
 それから,需要の見方をGNPから始めているというのですが,総エネ調査会の見通し自体は,必ずしもGNPから出発していないのです.むしろエネルギー需要をほとんど横這いにしないと,COP3の結論が保てないということですから,むしろGNPの2%というのは後から出てきたので,必ずしもGNPから出発しているとは思わないのですけれども.
 やはりエネルギーというのは,非常に所得に関連して増えてくる.これはわれわれの電力消費にしても,非常に快適さを求めるとか,やはり所得水準が高いためにそういうことですから,どうしてもGNPが関係があるわけですけれども,いまの政府の見通し自体は,必ずしもGNPから出発しているわけではありません.やはり,GNPはGNPで2%というのが目標で,それはしないとやはり一番深刻なのは失業問題だと思います.あと年金問題だとか,いろいろなものが出てきますから,ある程度成長しないと失業問題とか年金問題で非常に深刻になるわけで,ゼロ成長でいいというのは,私はやや無責任すぎると思います.

【石川】
 どうもありがとうございます.
 それから,もう1つ伺いたいのですが,先ほど浅岡さんの話の中に「80%の人が,現在の生活を下げてもいいという世論調査の結果がある」と言われましたが,これはどちらのどういったものでしょうか.ちょっと教えていただければと思います.

--OHP(浅岡(2))--

【浅岡】
 はい.少し字が小さくて見にくいかと思いますが,これも昨年の6月,総理府が行った世論調査の結果です.現在の生活で「まだ便利さが不足している」と答えた人が 3.1%,「わからない」と言った人が 8.2%,この方々を除いて「現在程度の生活を維持する」というのが16.6%で,「60年以前の生活でも我慢できる」という人が35%,「50年の頃」でもよいとする人が22%,「もっと前」でもという人が13.5%ということですから,「現在程度でいいのだ」という方を入れると8割ではなく,約9割ということになります.
 世論調査ですから,少々いい格好をして答えたというところを割り引いても,もう足りていると思っている方が大変多いのだと.政府の側はその意識をどのように,こういう省エネなどの方向に鼓舞していくかということではないか.
 それから,少し話は変わりますけれども,女性の消費傾向というのも少し変わっていると思います.シンプルライフに,価値観は動いていると,世間を見ていても実感しています.

【石川】
 どうもありがとうございました.

【木村】
 ちょっと,石川さんいいですか.

【石川】
 木村さんどうぞ.

【木村】
 いまの浅岡さんの総理府の統計について,1つコメントしたいと思います.
 「前の生活に戻ってもいい」と答えているということは,前の生活を知っている,つまり,お年と言っては失礼ですけれども,そういう方ですね.
 これを,若い層で調べると答が違ってくる可能性があります.私は科学技術離れをいかにして少なくするかということで有馬先生などと議論をしておりますが,若い層について見ると,ここのところ5年,10年ぐらい,科学技術に対する関心の度合いがものすごく減っているのです.驚くほど減っています.統計を取り始めてからから20年ぐらいになるのですが,いまだかつてないぐらい,ものすごく減っています.
 この問題について電気通信大学の小林信一助教授が非常に興味ある指摘をしております.1929年に出た本で,日本でも最近河出出版で復刻版が出て,あっという間に売れてしまった本で,オルテガ・イ・ガセットが書いた「大衆の反逆」というのがあります.その中に「1930年代に,科学技術離れが起こっている」ということが書かれているのです.
 その当時,非常に科学技術,その当時は自然科学ですが,ものすごく進歩して,かなり高いレベルに達した.そのような状況下に生まれた若者は,その前の時代を知らず科学技術が進歩してきたプロセスがわからないために,利便性だけを享受して,科学技術のありがたさが理解できない,ということをオルテガは指摘しています.
 私はいまの浅岡さんの統計にとやかく申し上げるわけではありませんが,問題はやはり若い人だと思うのです.若い人は,おそらく生まれたときに,電気があり,車があり,そういう社会に生まれているわけです.そういう人が,先ほど藤井さんがおっしゃったような省エネ社会を作っていかなければいけないわけですから,これは容易なことではないと思います.それをどうするかということが,むしろ世界的な問題であり,ことに日本では大きな問題だと考えます.
 ですから,いまの浅岡さんの統計についていうと,僕らは過去を知っていますから昔に戻れるわけですが,若い人は過去を知らないわけですから,戻れない.その辺の問題が,私は非常に日本の社会の中で,大きな問題としてあるのではないかと思います.

【西尾】
 よろしいですか.

【石川】
 はい,ちょっと待って下さい.藤井さん.

【藤井】
 いまの議論になっていることに関連して,少し申し上げたいのです.経済成長をしなければ,われわれの生活は味気ないというか,われわれの一般の人が必ずもし賛成しがたいような社会になるかというと,必ずしもそのようには言えないのではないか.
 要は,われわれの生活そのものが豊かとは,物をたくさん使って,できるだけ体を動かさない,そういうわれわれの生活そのものが,豊かな生活とは必ずしも言えない.ですから,できるだけ省資源,省エネルギーというものを達成しながら,生活そのものが豊かな心で生活できるような,そういう社会をできるだけ早く作り上げていくことが必要だと思うのです.
 それでは,具体的にはどうするのかということですが,例えば大量生産,大量消費,大量廃棄,最近そういったもので廃棄物が非常に多すぎて,それで物を燃やせばダイオキシンが出る,環境ホルモンが出るといった状態は,確かに経済成長は名目上はしているかもしれない.経済は活性化しているかもしれないが,しかし,われわれの生活そのものはそれで豊かなのかどうか,その辺をきちんと考えないと…….

【石川】
 議論が豊かだとか豊かでないとか,ちょっと抽象的になっているので,やめていただきたいと思います.

【藤井】
 そういったことを考えると,経済成長はしなくても,われわれの生活そのものは,ある程度豊かな生活は達成できるだろうと考えます.ですから,経済成長とエネルギーというのをくっつけて云々することは,もはや時代遅れの感があると私は考えるわけです.そういった意味でいま申し上げたのです.
 それから,茅先生のお話にも出てきていましたけれども,再生可能エネルギー云々という何%かという議論がありましたが,しからば,どの程度の再生可能エネルギーならば,日本では達成できるのかということを,やはり単にいまの制度,政策のうえで,このぐらい伸びた,このぐらいだろうと言うのではなく,国の目標としてこれを進めるということで,それで一生懸命にやった場合に,要するに再生可能エネルギーの利用できるポテンシャルとしてはどのぐらいあるのか,本気でやればどのぐらい可能性があるのか,これをやはり真剣に委員会とか研究会とかで,茅先生はそちらのほうのご専門ですので中心になられてやられたら,そういった研究会を開いたらいかがでしょうかという提案も含めて,この方向でやっていただきたいと思います.

【石川】
 ありがとうございます.今井さん,どうもお待たせしました.茅さん,その次にお願いします.

【今井】
 学生を教えていると,非常にしばしばびっくりするのは,さっきも申し上げたけれども,昼間,教室にこれだけ電気がついてるとか,たいして暑くないのに冷房が全部入っていて,窓を開けて冷房をつけているというのは,彼らにとっては日常茶飯事なのであって,何かから変わってきてそうなってきているのだという意識は,非常に少ないのだと思います.
 ですから,学校へ来るのに単車だか車だかに乗ってくるというのは当たり前なのであって,学校は当然駐車場を置くべきであるというニュアンスで,それは別に権利義務の意識ではなく,それが通常の生活レベルになっているのです.
 それは,実を言うと,日本は非常にエネルギーの消費が伸びているからであって,エネルギーの消費の伸びは石油に関してはかなり抑えられているけれども,このあいだのCOP3の議論というのは,原子力発電が非常に大きな役割を産業部門と生活部門で占めているために,あれで済んでいるのであって,あれを原子力をやめておいてやろうとしたら,油がだいぶ増えていたことになっていたはずだというのはよく言われる.
 それから,今後の伸ばし方についてもどうやっていったらいいか,それはつまり,革命的なことをやってエネルギーをたくさん使おうという話でもなければ何でもなくて,いままで生きてきたように,普通にちゃんとやっといこうと思うと,エネルギーはかかるのだ,そのエネルギーは非常に大変な量なのだということがわかっていないということなのだと思います.
 これをいま若い人,学生をつかまえて「原子力にするか.天然ガスにするか.石油にするか」と聞いても,これはいったいどれにどのぐらい資源量があって,どれにどのぐらいの投資がかかって,どれにどのぐらいのリスクがあってということもわからないのだから,これはチョイスにならないわけです.ですから,いま言われたら「生活環境をがらっと変えるのはいやだから,いままでの通りにしっかりやって下さい.お願いします」というような話になる.
 その辺のところ,細かい投資の話,技術の話などに入っていくところと,それからいままでの生活態度というか,生活水準は続けられるという意識というのは,かなり実際問題としては切り離されているのだと思います.
 むしろ,その切り離されるところをきちんと説明して,それでもやはりそうなのかというところへ話を持っていかないと,原子力がいいのか,石炭がいいのか,何がいいのかというのは,簡単な結論は出てこないのだと思います.

【石川】
 ありがとうございました.茅先生先,先ほど手を挙げておられませんでしたか.よろしいですか.

【茅】
 では,簡単に.
 先ほどの藤井さんのご質問の点ですが,それぞれの再生可能エネルギーのポテンシャルについては調査がありまして,私はそれを前提条件に申し上げているつもりなのですが,ただそれをどのぐらいに妥当と評価するかは当然人によって違うわけです.
 例えば先ほどバイオマスのことをおっしゃいましたが,単純に言ってバイオマスの太陽エネルギーからの変換効率というのは,日本で見た場合,明らかに1%以下なのです.一番豊作の年の籾の生産率が 0.6%の効率ですから,かりに全部を作るとしては1%が最大です.クロレラが 3.5%ですので,現実のその辺にある草本で言えば,本当に1%やったら大変いい結果だろうと思います.
 ところが,日本に降っているエネルギーは,大体われわれが使っているエネルギーの 100倍ですから,日本全土をくまなく使って1%でやれば,バイオマスでわれわれ全部のエネルギーはまかなえるということなるわけです.
 ですから,どの程度のサイズかというのは,このことだけでもおわかりになると思いますが,そのうちどれだけ使えるとお考えなのかは,当然人によって変わるという意味で,そういう非常に単純な物理的な計算というのは,一方にあります.
 他方において,そのエネルギーの持っている特性を考えて,ポテンシャルを考えるというのは,これはまただいぶ話は違うわけです.バイオマスの場合には正直言って一度変換しますので,その特性的な問題はそれほど大きくないのですが,太陽光発電のような場合には,蓄電するというのが非常に困難なために,時間変動性で大幅にポテンシャルが制約される.現実の問題として,われわれの検討では,これは論文が出ていますけれども,われわれの持っているエネルギーの1%を太陽光発電でカバーできたら,これは成功だ,むしろ大成功に近いほうではないかと私は考えています.
 いずれにしても,こういったものは,新たな研究会をやることももちろんですが,少なくとも相当いままでそれぞれについて調査があることは事実で,それを詰めただけでも十分研究会の成果と同じぐらいになってしまうのではないかと思っています.

【石川】
 ありがとうございました.西尾さんがさっきから手を挙げておられました.

【西尾】
 先ほど若者の話をされていたのですけれども,若いというと私もこの中ではかなり若いほうだと思っているのですが,最近若い人と話をしていると,ある意味でいうと,省エネルギーということ自体を,非常に新鮮に受け止めているところはあると思うのです.
 そういう話を,そもそもあまり聞いていないということもあるのだと思うのですが,われわれの世代だと,ある意味で先ほど強制的なというのがありましたが,何か国なりに押しつけられて省エネルギーなどをするのは,まず反発が先に立つようなところがあるのですが,そうではなくて,すごくおもしろがって新鮮に受け止められることもあるわけで,そういうことを,どうやって上手に活かしていくかということのほうが大事だと思っています.
 一方で省エネという,確かに言葉としてはあるのだけれども,省エネ,省エネと言いながら,もう一方では電力の需要開拓のようなことで電力会社はやっているわけですし,テレビを見ていれば,電気製品のコマーシャルはボンボン流れているわけですから,そのような中で,本気で省エネということをどうやって考えさせるのかということを,むしろもっときちんとやるべきだと思います.

【石川】
 省エネについて「ライフスタイルを変えられるのだ」というのと「いや,なかなか変えにくいよ」という議論が2つ出ていると思いますが,そちらにほうにちょっと関連してどうぞ.鈴木さん,それから,浅岡さんの順にさせていただきたいと思います.

【鈴木】
 ライフスタイルの話とは少し違うのです.
 もう一度議論を原子力との関連に戻したいのですが,温暖化対策ということで,いま話が,特に2010年の日本の温暖化ガスをどう減らすかという議論を,お話ししたいのです.
 先ほど茅先生がおっしゃったように,いまCO2 が増えているのは,輸送部門と家庭の電力需要だと思うのです.それで,原子力が貢献できるのはおそらく後半の部分であって,輸送部門は,とりあえず輸送部門の省エネ化を図っていかないとなかなか減らない.
 したがって,原子力の20基というのが,本当に家庭の電化の進み方の中で出ているCO2 の削減にどれだけ貢献するのかという議論をしないと,私は全体で原子力の20基がすべてのCO2 削減に貢献できるような見方をしているのは,ちょっとミスリーディングだと思います.
 明らかに輸送部門の貢献が非常に大きいということも,皆さんはもっとよく広報する必要があるのではないか.私の意見は原子力のシェアというのは,やはり先ほど言いましたように,藤目さんのご意見と賛成で35%からそんなに増さない方がよいのではないか.政策目標として,原子力の設備容量で何基とか何ギガワットとか何kWというのではなくて,発電量におけるシェアでこれぐらいがいいのではないかという議論を,もっとしたほうがいい.CO2 削減もその中で議論していく必要がある.
 そうすると,例えば電力需要が本当に伸びれば,確かに原子力を建てる必要があるわけですが,もし省エネがうまく進めば,特に電力部門,民生の家庭の省エネが進めば,原子力はそんなに増やさなくてもいいのかもしれない.したがって,シェアでもっと議論をしていただきたいというのが私の意見です.

【石川】
 ありがとうございました.浅岡さんは.

【浅岡】
 2つの点なのですが,1つは若者の話がありました.科学技術離れというのは,今後の日本の社会経済を考えても,これは深刻な問題ですので,教育現場での取り組みを期待したいと思います.
 最近,9月26日の日経新聞でしたが,若者も含めて,インターネットで2030年ころの世界観を調査したところ,非常に暗い未来観が全世代を通じて大きかったというのも問題なのですが,特に若者が,環境問題について,20歳代の人が一番暗い将来予測をしている.自分たちの将来の環境として60%の人が「格段に深刻になる」,20%の人が「数段に,少しだけは深刻になる」ということですから,非常に危機感は持っている.
 これは科学技術への思いはともかく,やはり,自分たちの現実の将来として考えるときの生理的な感覚は十分備わっているのではないか.そこは,うまくつないでいってもらって,これを克服するような教育現場というものが必要だと思うのです.
 この絶望感とか悲観をしているというトーンも強いとともに,若者の声としてこの記事の中に書かれていたのが,29歳男性「未来を作るのは現在の人々の心である」,27歳の女性「私たちの努力と創造性にかかっている」,24歳の女性「私たちの意志が確固たるものであれば……」と,このように言っている意見もあるということで,何とかしなければいけないという思いは十分にあるのだろう.
 そこを励ますような政策をどうして取るかということが,ライフスタイルを変えられるのか変えられないのかという議論にもつながるわけです.ただ「変えましょう」というかけ声で変わるかといえば,だれが考えても難しい.やはりそれをこうした各層,各年代の国民の意識等も見ながら,先生方には十分予測もつく状況であるから,制度的にしっかり支えをしていく中で,ライフスタイルが変わるようになると思います.制度や,仕組みの中でライフスタイルが変わっていくという要素のほうがはるかに大きいわけですから,それを取り入れていただきたい.どんな仕組みが必要なのかという議論をすることが必要なのだというのが1点です.
 それから,先ほどの茅先生のお話の中の,太陽光でせいぜい1%できればいいのではないかとの話との関連ですが,ピーク時カットの効果です.又,昼間の電力消費量が非常に大きい.国会で地球温暖化対策推進法の参考人で呼ばれました時にも「自動販売機の設置が,原子力発電所の 1.5基分ぐらいはある.」という話が出てきまして,ではそれにどのような対策をしていくのかという質問がありました.自動販売機などは昼間ピークを越えて,供給量が足りないというようなときには,腐るようなものもないわけですから,優先的に切ってもいいような連結にしておればいいわけです.
 そんなことも含めて,全体の電源構成をどうするのかという議論を,暮らし方を変えるところとのつなぎの中でもやっていくことが,ライフスタイルも変わるということになるのではないかと思います.

【石川】
 ありがとうございました.小沢さん.

【小沢】
 いまいろいろお話は出たのですが,今日議論なさっている皆さんは,原子力の新しい発電所は作らなくてもいいけれども,現在ある発電所は,これは現状維持ということでしょうか.皆さんのご意見をお聞きしたい.
 なくしてしまうのではなくて,例えば風力だとかバイオマスだとかがありましたけれども,多様化というのは,原子力もあって,バイオマスもあって,太陽熱も,風力もあるということなのですか.

【浅岡】
 まず私から申し上げますと,前回も申し上げましたが,私個人といいますか,気候フォーラムというところで議論しましたときには,いますぐゼロにするという政策ではなくて,現状あるものに増設する必要があるときは,別のエネルギー源を考える.現在の施設は一定期間で寿命を終えて,自然に減少していくであろう.いますぐ,あるいは何年までに全部廃止すべきとの結論は私たちの間では出ていません.

【小沢】
 すみません.いちいち聞いてしまって悪いのですが,ご意見をどんどん教えて下さい.

【西尾】
 私の場合は,それについて言えば,原子力は多様化の中には入らない.原子力を入れることによってその多様化自体が壊されてしまうと考えています.それはきちんと話をしていなくて申しわけないのですが,今日の資料の裏側に書き並べたことを読んでいただければと思うのですが.

【小沢】
 では原子力は,とりあえずなくして.

【西尾】
 はい,それを明日なくせというのか,それともそうではないのかということは,とりあえず置いておいて,なるべく早くなくすべきだとは思っています.
 明日はちょっと無理だとは思いますけれども,1年後と言われたら,エネルギーの問題だけを考えれば,なくすことは可能だと思っています.ただし,経済の問題であるとか地域の問題であるとかということまで含めて考えたときに,1年後というように言えるかどうかというのは,検討しないといけないと思っています.

【小沢】
 では,ある間に事故が起こったら仕方がないということですか.

【西尾】
 その意味で言えば,なくなるまでは大きな事故は起こしてほしくないとは思います.

【石川】
 今井さん,いまのご質問に対してですか.

【今井】
 はい.これはいったいどういう立場の人に話をするかで,全然答えが違うと思うのです.
 一般に,少なくとも私が話している範囲の人たちというのは,現時点でのエネルギー供給はあって,それが何からくるかと聞いてみると「そんなにいろいろなものがあるのか」という話なのです.「これから増えるのか.増え方がどうなるのか.それはいったい生活水準の向上に結びつくのか.そうすると原子力が20台もできるのですか」という話のニュアンスであって,いまあるものを壊す,あるいはもっとそれを追いつめていくと,いまあるものの寿命がきたら建て替えないということは考えていないと思います.それが1つです.
 それは,なぜかというと,私が説明してしまうわけにもいかないのですが,なぜかというと,日本という国はエネルギー資源の少ない国であって,石油の70%はアラブ湾から輸入しているとか,99%の石油は全部世界から来ているとか,ウランだって輸入ではないかとか,そういう種類の話はかなり皆の頭にあるのであって,それらを排除して,それでは自分たちでやっていこうとしたら,かなり大きな生活レベルの転換というか,切り下げということが起きなければいけないと考えていると思います.
 それから,もう1つは,これも彼らの無意識を私が無意識に受け取っているだけかもしれないのですが「日本はきっとどうにかなる」と思っているのです.「日本はわりとちゃんとした国だから,どうにかなる」と.
 大変なのは東アジアであって,特に西南アジアはあまりにも大変だから考えないことにして,東アジアで考えてみると,東アジアでは石油は足りない.天然ガスは足りない,酸性雨がひどいから石炭は燃やせない.今後増やしていくのは,中国が非常に大きな原子力計画を持っている.「先生あれは大丈夫ですか」という話になるわけです.「いや,わからないよ.あのインフラストラクチャーで,あのサブカルチャーで.例えばあれは第三者賠償法が入ってないから,いろいろなサブストラクチャーで入っていないものがたくさんあって,それで大きなベッセルだとか蒸気発生器だとか,陸揚げをしてきちんと運んでいくことができるかどうかというのが非常に問題になっている」と言うと,「では,きっと日本はいいとしても,中国は怖いですね」「だけれども,あれは核保有国だから,プルトニウムを作っても何をしてもいいんだよ」と言うと「それは大変だ」という話になる.
 そういうニュアンスで,いまある日本の原子力をやめて,何か他のものをしてエネルギーをするというよりも,日本はこれで何とかしていままで来たのだから食べていけて,他のアジアの国はやめてほしいと,アフリカまではとても手が出ないけれども,という感じなのです.

【石川】
 ありがとうございました.
 小沢さん,これで代表的な意見が3つ,いまの原子力に対して,いまのそのままでまあまあ仕方がないのだと,それから1年ぐらいで止めてほしいのだ,いやそんなことは日本人はほとんど考えていないのではないかという3つの意見が出たので,その後どのようなことがお聞きになりたいのですか.

【小沢】
 私は,原子力をすぐやめろという意見ではないのがむしろ不思議だったのです.
 それから,老朽化していったらやめると言っても,老朽化したものが,いつどうなるかわからない物がずっとあるというのは大変で,始終メンテナンスをきちんとやっていただくとしたら,老朽ははたしていつ来るのかという問題もありますでしょう.

【今井】
 あれは決まりがあって,きちんと調べてあと何年と…….

【小沢】
 そのまま続けておくとしたら,危ないところは取り替えてしまうしかないわけですね.自然に老朽化して,ある日パタンと…….人間と違いますでしょう.
 だから,この議論というのは私はちょっとわからないところがあります.賛成とか反対とか激しい議論ではなくて,皆さんどうもあることは認めて「どこかちょっと何か変わってくれれば,まあいいか」になりそうな感じがするので,私はちょっと疑問なのです.

【浅岡】
 あることを前提としてというか,これから政策をどうするのかというときは,現実を考えなければならない.それはどなたも共通だと思います.
 ただ,現在電力供給の33%を原子力に頼っている現実は,そうしたエネルギー政策を取ってきた結果であって,これしか選択がなかったかということでいて,20年前,30年前に戻って,いまその時点だとして選択するとすれば,別の選択がありうると思います.
 原子力に頼るということを取ったがために,日本は大変エネルギー多消費国になり,それが経済成長を促したという面もあるかもしれませんが,もしそういう選択を取らないでいたなら,世界全体の流れもそうであれば,別の選択がなされ,それこそ再生可能エネルギーへの利用の仕方なども,もっと違うものになっただろう.暮らし方もまた違ったものになるだろう.そういうことです.

【小沢】
 しかし,一生懸命働くということは,生活を少しでも利便にしようと思って,ある意味ではいまの日本のある姿というのは,皆が求めてせっせと働いて達成した1つの結果だろうと思うのです.これを30年前に戻すというと,例えば屋根を瓦にするとか,茅葺きにするとか,茅葺きまではいかないにしろ,はたして畳にするのか,新建材は皆電気を使っていますから,これはすごく大変ですね.

【浅岡】
 いや,生活を戻すと言っているのではありません.いま何か将来に向けて判断するわけです.選択をするわけです.いまは98年という段階で,これから2010年,2020年,2030年というときに,どうあるべきかという議論をしています.
 これがもし,1960年代や1970年代に,もっと原子力の問題を,将来の廃棄物問題がもっと深刻であるとかをふまえて議論することがあったとしたら,今日,例えば1998年という時点は,別の供給構成になっているだろう.そういうことを言っているわけです.

【小沢】
 危険だから原子力はやめようという大前提はあるわけですね.

【浅岡】
 そうです.やはり原子力から脱却をしていくシナリオは持っているわけですが,すぐに廃止というところまで私どものところではコンセンサスを得ているのではなく,少なくとも増設はしないし,新規建設はしないで,代替エネルギー源の拡充や省エネを,もっと中心に据えて考えていこうではないかということです.

【石川】
 ちょっと確認したいのですが,浅岡さんがいまおっしゃったご意見,それは原子力が危険だからという前提に立っておられるからですね.

【浅岡】
 安全性もそうですし,廃棄物問題についても解決できない.コストにおいても,アメリカでコストが合わないと言っているものが,どうして日本でコストが合うのかわからないわけです.

【石川】
 コストはちょっと安全とは.西尾さんも前からのご主張はそうですが,この紙に書いてあるように,安全性が大体主体ですね.

【西尾】
 そうですね.広い意味での社会的な安全性を含めて,安全性と言ってもいいかもしれません.

【石川】
 どうぞ,今井さん.

【今井】
 私は原子炉というのは造ったこともあるし,動かしたこともあるし,掃除したこともあるんですが,昔に比べるといまの原子炉というのはとても安全になったのです.
 昔は,いまから考えれば,そんなことを言っては申しわけないけれども,ひどいことがけっこうあって.

【小沢】
 昔というのはいつごろですか.

【今井】
 35年とか,そのくらい前です.

【小沢】
 危なかった…….

【今井】
 危なかったと言っても,危なくはないのだけれども,まあひどい話で,あんなことを言ったら怒られるに決まっているようなことがけっこうあって,でもなんとはなしに済んでしまった.
 いまやそういうことは日本には起きなくなって,非常にいろいろなものの品質管理などがよくなった.それから安全装置なども,従来の1アウト2ではなくて3アウト4だとかいろいろ多重性を持つようになった.原子炉設計そのものが安全性になってきていて,そう言っては悪いけれども,いまの日本の原子炉というのは,ヘマはやりますけれども,事故は起こさない.ヘマは人のヘマであって,原子炉の事故ではないのです.
 一番恐いのは,これから東アジアなどに出てくる原子炉は,そういう積み上げ持っていない,それから人々の経験の蓄積も持っていない.そういう物が,いまの勘定で一番多いのを言うと,中国で2050年に3億kWができるのだそうです.あんなものが3億kWもあそこでドンといったら,風は西から吹いてくるのだから,とてもかなわない.というように,むしろ,そういうところへきちんと出ていくことを,日本はしないければいけないのではないかと思います.

【石川】
 藤井さんどうぞ.

【藤井】
 原子炉をいまやめるか,やめないか,どうするのか,という扱いについては,私のレジメには一番最初に書いた通りです.いま今井さんが日本の原子炉はかなり安全だとおっしゃられたけれども,人間のやることというのは大体 100%安全というのはあり得ない.したがって,これはできれば,本当は明日からでも止めてもらいたいというのが私の意思なのです.
 しかし,いま30数%の電力を原子力でまかなっているという現状では,すぐ止めることはたぶん不可能だろうということで,最大限妥協をするならば,ここに書いたように,やはりこの日本のエネルギー政策を,もっと安全で将来に負荷のかからないような,そういった目標をきちんと立てて,そしてできるだけ,可及的に速やかにそちらの方向にもっていっていただきたいというのが,私の切なる願いです.
 例えば,少し原子力について言わせていただくと,これから廃炉の問題が出てくる.放射性廃棄物の処理の問題,そういうものがたくさん出てくるわけです.これは言うなれば,先送りになって,これに対して将来はたくさんお金をかけていかなければいけない.これはあくまでも借金です.将来の人がそれを負担していかなければいけない.これはわれわれは将来,次世代以降の人に結局は付けを回しているという,国債のようなもので,そこが2つめの問題だと私は思います.これは放っておくわけにはいかない.
 それからもう1つ,茅先生は先ほど太陽光発電で1%云々とお話になられたかと思いますが,これは私の試算ですから必ずしもその通りになるかどうかはよくわかりませんが,日本の1日の平均の日射量は1㎡あたり3.84kWhです.それが気象庁から出ているデータを参考したものです.それで変換効率……

【石川】
 それは間違いです.

【藤井】
 間違いですか.

【石川】
 明確に間違いです.3分の1ぐらいです.最低限1kWです.

【茅】
 いまのはkWhではないのですか.

【藤井】
 ええ,kWhです.

【茅】
 kWではありません.

【石川】
 わかりました.

【藤井】
 だから石川さんのがちょっと勘違いされたようですが.1年間照った太陽光のエネルギーを365で割るのです.そうすると1日1kWの日射が3.84時間降り注ぐ,すなわち,3.84kWhのエネルギーが1㎡あたり注がれているというデータが出てきます.
 それで計算をすると,大体太陽光発電の変換効率を10%として,そしてデータは少し古いのですけれども,日本の1995年の電力需要量はいくらあったかというと,たぶん 8,681億kWhだったと思いますが,間違っているかもわかりませんが,それを太陽光発電でもしもそれをまかなうとすれば,その変換効率10%でどのぐらいの面積を太陽光発電モジュールで敷き詰めればいいかというと,大体64 k㎡です.(注:正確には6,400 k㎡でした)たぶん,広さにすると栃木県ぐらいです.これはあくまでも計算ですが.
 最近私の家も,3kWの太陽光発電をつけて,それで発電をしています.それで東京電力に売っていますけれども,最近は非常に天候がよくなくて,先ほどの計算に比べると,大体半分ぐらいしか売っていませんけれども,もちろん自分のところは使って余っている.ということで,実際には栃木県の広さよりは広くなると思いますけれども,しかし,1%という数字ではないのではないかという気もするのですが.

【茅】
 ちょっと簡単に.誤解を防ぐ意味で,私の計算は,そのようなポテンシャルではありません.私が言っているのは,時間変動性が系統連携をした場合,当然の他に負荷が大きくかかります.それを前提にした計算ですので,いま言ったような面積だけの計算ではないのです.その意味でちょっと根拠が違います.

【石川】
 それから,いま技術的に10%の変換効率というのは,これはなかなか難しい.これは別の議論になりますからこれ以上議論に入らないことにします.
 藤井先生がちょっとお間違いなのは,廃炉の問題です.これはもう実際世界で行っていて,何も先への付けではないのです.日本でももう1台やっています.大体費用的には建設費の10%ぐらいだろうと見込まれていまして,ですから,それほど子孫に先送りするようなものではないです.
 廃棄物は,これもちょっと申し上げておきますと,一般の生ゴミのようなものと違って,原子力から出ているのは非常に少ない.例えば発電で出てくる高レベルの廃棄物というのは,同一発電量で比較すると大体重量にして,たとえば炭酸ガスの 100万分の1ぐらいですから,ですから簡単に言うと,炭酸ガスの 100万倍お金をかけて処理することができるのだと,そういったものだということをお間違えないように.何でも廃炉とか,廃棄物処理は大変だ,子孫に残すのだというようなのはちょっと当たらないと思います.

【藤井】
 いやいや,だけどそれだと物質は残るわけでしょう.

【西尾】
 ごめんなさい.あまりそういうレベルの議論はしたくないのですけれども,炭酸ガスと高レベル廃棄物を重さで比べるというのは,どういうところからくるのですか.

【石川】
 重さで比べても,体積で比べてもけっこうですが.

【西尾】
 いや,体積で比べるにしても.

【石川】
 廃棄物の量というのは,何しろ処分をしなくては……,今日はあまりこういう議論を私がしてはいけないな.

【西尾】
 その廃棄物の質を問題にしないで,ただ単に,重さとか体積で比べるというのは,ちょっと非常識すぎるのではないかというのが1つです.そうではないのですか.

【石川】
 ええ,そうではなくて,どのようにして処理して,処分をきちんとできるかどうかという話ですから.

【西尾】
 それは,体積だけで決まってくるのですか.

【石川】
 体積で比べるだけではありませんが,廃棄物の処分については,お金を重量当たり 100万倍かけることができるのだということを申し上げたわけです.

【西尾】
 ですから,その重量なり体積で比べると,では高レベル廃棄物と低レベル廃棄物も同じという.

【石川】
 いやいや,いま申し上げたのは,高レベルです.低レベルですと,もっといまの体積が,量的には大体 100倍ぐらい多く出ます.いまの換算方法で言えば, 100万分の1の100倍,1万倍ぐらいのお金をかけても処分費用として同じだと,そういうことを私は申し上げただけで,それだからどうこうせいという話ではありません.
 いま藤井さんの言われたのがあまりにも抽象的であって,子孫に残すとかそういうことを言われたので,ちょっと量的なものを私は申し上げたのです.

【西尾】
 その議論はちょっと…….

【石川】
 将来安全問題を討論するときに,何でしたら十二分な議論を闘せることとしては,今日は私は座長役ですので,事実に基づかないことで議論をしても仕方がないものですから,私は茅さんのほうのエネルギーの量についてもそれを申し上げたわけでして,もしよければそれは将来するにして,話を元に戻したいと思いますけれども.

【西尾】
 その元の話もそうなのですけれども,何か廃炉というのは後に残らないみたいなことというのは,非常におかしな話だと思います.日本で1つやっているというのはJPDRの話をされているのですか.

【石川】
 そうです.

【西尾】
 それだけの経験で言われるのは.

【石川】
 いや,世界でその他にもたくさんやっていますから.

【西尾】
 たくさんはやっていないでしょう.あまりそのレベルで議論をしても仕方がないけれども,もう一度言いますが.

【石川】
 あなたがおっしゃってられるから,事実を申し上げているわけでして.

【西尾】
 だから,事実で申し上げると,世界でたくさんなんてやっていないですよ.たくさんというのでしたら,いくつやっていますか.

【石川】
 合計合わせて15,16台はもうやっています.

【西尾】
 15,16台はどのように処分していますか.どのぐらいの大きさのものを,どのように処分していますか.それから,世界にいま原発が何基あるのですか.15,16台というのは,そのうちのどれぐらいのパーセンテージですか.

【石川】
 いま,動力用原子炉としては, 400基世界で動いています.約 420です.その中で動力用原子炉でもって廃炉処分になったのは,私の知っているだけで6台から7台あります.ドイツもやっていますし,イギリスもやっていますし,アメリカでもやっています.
 それから研究用原子炉ですね.そういったものについても10台ぐらいやっていっていますから,原子力発電所,もしくは原子炉の施設で廃炉した例は多くあります.特に研究用原子炉のほうがむしろ動力用原子炉よりも,比率から言うとお金がかかっている.これは研究ですから,非常にいろいろなことをしますから,放射能による汚染範囲の広いものがあります.
 そうして出て来る放射性廃棄物というのを,廃炉では低レベル廃棄物,それから高レベル廃棄物は燃料から出て来る廃棄物ですね.燃料はご承知のように再処理から出て来るわけですけれども…….

【西尾】
 ちょっと待って下さい.あなたは失礼じゃないですか.

【石川】
 いえいえ,失礼なことは何もないですよ.

【西尾】
 いいですか.もういま議論がどんどん広がっている部分はとりあえずなしにして,石川さんは間違いがあったから,間違いだけを指摘するのだとおっしゃったのだけれども,いま言われているのは廃炉の処分なり何なり,たくさん後に残りますよと.仮にいま現状だけで考えても四百何十基のうち,何基かは処分している.後はまだまったく処分にならないわけでしょう.それは残っていることにならないのですか.

【石川】
 私が申し上げているのは,子孫につけを残すとおっしゃっておられるので,子孫につけを残すようなものではない説明と.その実績が,例えば費用としても建設費の大体10分の1ぐらいでできていますよ,ということを申し上げたわけです.
 それから廃棄物についても,低レベルの廃棄物については,いま六ヶ所村などで処分をしているわけですから,それが…….

【西尾】
 ごめんなさい.話を広げられると,こちらもそれにまた言わなくてはいけなくなるので,話を広げないで下さい.

【石川】
 私が申し上げたのは,言いますと,そのように廃炉も廃棄物もすべて子孫に残すという視点自体が間違っています,ということを申し上げたのです.

【西尾】
 なぜ残らないのですか.

【石川】
 いや,使った後で物が残る,それを子孫に残すというのなら,何事でもそうでしょう.

【西尾】
 ちょっと,ばかばかしいからやめます.

【中島】
 ちょっと議長を代わりましょう.

【小沢】
 今井さんにちょっとよろしいですか.何か落ち着いてらっしゃる方に質問をしないと.雰囲気が(笑).先ほどから,鈴木さんは原子力というのは非常に不確実なものだとおっしゃって,不確実を前提にしていろいろ考えていく,多様性が重要だということを先ほどおっしゃっていましたね.
 そうすると,日本は大丈夫だろうとおっしゃるお立場,昔も造られて,そういうお立場から考えて,その多様なエネルギーを,エネルギーミックスですか,いろいろなものをやっていくことは,これから必要だとお考えになりますか.それとも,原子力というのを基本にして,あと何かやるということぐらいでしょうか.

【今井】
 いや,当分の間,石油と天然ガスが,かなりまで全体のエネルギーの供給ができるだろうと思います.

【小沢】
 あと45年は大丈夫だとか,1000年大丈夫だとか.

【今井】
 2010年ぐらいまでは,カスピ海などというのもありますし,かなりあるだろう.そういう恩恵を受けられないのが,どうもアジアのほうで,あれはパイプラインを引いてくるのが大変なものですから.一番やりやすいのが原子力であろう.それぞれ石油にもガスにも原子力にも,まして石炭にも,環境に対する影響が,酸性雨であったり,チェルノブイリであったり,いろいろな可能性があるので,それの様子をよく見ながら慎重に,しかし,あまり慎重にしていると間に合わなくなるので,何とか全体のミックスを,それぞれの場における,地域におけるメリット,デメリットを考えながら進めていくより仕方がないのではないか.
 そのうちに,きっと新らしい技術がどこから出てきて,技術の将来というのは,30年先まで予測した人というのは,本当はないのだそうですから,20~30年のうちにはこんなすごい技術があったというので,それは非常に安全でいいものになるかもしれない.多少,そのぐらいはオプティミスティックに考えないと,とてもだめなのです.

【小沢】
 それは,鈴木さんも同じようなご意見なのですか.

【鈴木】
 ええ,基本的に同じです.いま日本の話から,もし地域とかグローバルに話をすると,やはり化石燃料の役割というのは,日本もそうですけれども,やはりかなり重要であることは間違いない.

【小沢】
 まもなくなくなるだろうという意味ですか.

【鈴木】
 いえ,そうではなくて,化石燃料が相変わらずかなりのシェアをこれからも占めるということは間違いない.けれども,その原子力というのが電力の中で占める位置というのは,国々のエネルギーミックスにとってかなり重要になってくることは間違いはないと私は思っています.

【小沢】
 電力ではですね.

【鈴木】
 はい.電力ではです.それで,グローバルな1次エネルギーで見た場合には,原子力のシェアはまだ7%ぐらいで,これを2倍にするにはかなりの努力がいるわけです.最近出たIIASAとWECの予測でも,2050年で原子力が一番増えた場合でも14%です.再生可能エネルギーは,いまでも途上国などでも特に木炭とかいろいろ使っていますから,18%シェアがあって,一番少ない例でも,IIASAの例で見ると,2050年で22%です.
 ですから,原子力よりは,そういう意味では再生可能エネルギーのほうがシェアは高いわけです.全世界で見た場合には,そういうバランスになる.しかも1次エネルギーの場合です.
 電力で見た場合にはまた違ってくると思いますが,ですから原子力の議論をする場合には,原子力が電力以外に使われるのであれば,またこれは別ですが,いまの段階では電力ということにかぎって見ると,話がまた少し違ってくるのです.

【小沢】
 何かいろいろなものが混じって,議論がちょっとあちこちに行ったみたいです.

【中島】
 よろしいですか.

【小沢】
 けっこうです.

【中島】
 時間はまだ20分ほどありますから.

【木村】
 ちょっと,さっきの若者の話でいいですか.

【中島】
 はい.

【木村】
 さっき日経のことをおっしゃいまして,私も元大学の教師としては若者に非常に期待しているのですが,現実は相当ひどいものなのです.ことに,若者ですが,アメリカの学生,イギリスの学生に比べると,日本の学生のエネルギーの浪費の仕方というのはすざましいのです.それは,さっき今井さんがおっしゃいましたけれども,大学にいらしてごらんなると,まず自分が最後に研究室を帰るという場合に,教室に電気がついていても消す学生は,はっきり申し上げてゼロです.ですから,統計は統計でよろしいのですが,現実の姿は相当ひどいということです.
 私は,若者に非常に期待はしていますが現実はひどい.これは多分われわれ大人の姿が彼らに映っているのだと思いますけれども,いずれにしても相当しっかり国としてやっていかないと,そう簡単には省エネの社会というのはできないと思います.自分自身もそうなのですけれども,若い人の姿を見ていて,さっきおっしゃったように,彼らは確かに環境については将来を悲観しているかもしれないけれども,現実の行動はかなりひどいものがある.
 これは教師もそうなのです.私は管理職をやっていますから,よくわかるのですが,学長が毎日電気を消して歩かなければいけない.そういう国です.これはもう英国などでは考えられないことです.ですから,その辺は,われわれ日本人として大いに考えていかなければいけないということを申し上げたい.

【今井】
 どうなのでしょうか.日本で見ていて非常に気になるのは,環境とエネルギーと戦争というのは,大学院の講座の項目にないのです.したがって,それを専攻したい人は,それをやっている先生を見つけて,どこかの大学院に潜り込んでやっているというので,表立ってそういう項目をうたって,それを教えて大学院の学位を取らせるようになっていないのではないかと思うのですが.

【木村】
 そういうところがあるかもしれませんね.

【小沢】
 最後は,何か若者に対する愚痴で終わっては困るので.

【木村】
 私は非常に期待しております.

【小沢】
 期待してるのですか.いいのですか.

【中島】
 はい,どうぞ.

【茅】
 一応大学でも最近は増えていまして,私もエネルギー関係の講義はやっています(笑).もし,学生がそういうのが来たら,学位は取らせたいと思いますが.
 それはともかくとして,私が伺いたいのは,省エネルギーをやる,それから再生可能エネルギーを開発する,これはだれが考えてみても必ずやるべきことだし,それについて反対する人はまずいないと思うのです.ところが,さっきから何度も話に出ていますように,なかなか進まないわけです.
 私自身その場合に,1つのポイントいうのは,やはり何か国民運動のようなもので,例えば省エネルギーにしても,省エネルギーと単に言ってしまうとどうも中々わかりませんから,例えば何かをやる運動,電気を消す運動というのがいいのかどうかわかりませんけれども,何か象徴的なものをとらえて,国民運動的なものをやるというのが1つの方法ではないかとよく思うのですが.
 浅岡さんも西尾さんもNGOの方ですから,逆にそういうことをやろうという動きはNGOの中にはないのでしょうか.

【浅岡】
 いま私たちの仕事というか役割の一番大きな部分は,そうした問題提起です.運動舞台を広げる,活動舞台を広げるということです.家庭の中での環境家計簿というあまりイメージのよくない言葉の運動から,ビジネスセクターでの削減ないし新エネの導入まで,いろいろなプログラムを運動的にやっているところです.
 でも,私は何度も申しますが,その時に欠けるのは,本当に国が国民に十分働きかけていない,それが伝わらないということです.本当に削減するのだという目標が共有されていない.必要なエネルギーは原子力で賄いますという部分がいつも背後にあるということが,この原子力問題の問題の1つだと思います.
 若者の現実は大変難しいという点は,想像がつかないではありません.よく似た年代の子供を持ちますので,確かにそういう現実があります.これを意識だけで変えられるわけではなくて,国の政策として,制度として,そういう削減のシステムを作る政策を入れる.それが削減するということが,もっと明確に政治的意思になることがなくては,運動もやはり「運動しましょうね」と言っておしまいになってしまう.私たちのすることも中途半端にしか影響を持っていけないということなのです.
 ですから,本当に茅先生がおっしゃるように,大変な努力がいるのですがやっていかなければなりませんということを,政府側が,それに見合うだけの政策をつけていくつもりで,その議論をしようというようにしていくべきだと思います.そこがまだ,二の足を踏んでいると思うのです.

【中島】
 なかなか簡単には…….はいどうぞ.

【小沢】
 例えば,風力発電とか太陽熱とか,そういうようなものにもっと研究費を削くべきだとか,そういうことだったら,国がもっとやっていいと思うのですけれども.省エネを国をやると,アメリカなどの大統領のように「今年の冬は大変だから,セーターを2枚着ましょう.セーターをもう1枚着て,国民の皆さん耐えましょう」ということならいいけれども,省エネで「~をやめろ」みたいなことになったら,私はやはりいいことではないと思うのですよ.
 それより例えばこういうことを言って,これは問題になると嫌なのだけれども「自動販売機はもうやめましょう.あなたのご町内から少なくとも自動販売機は減らそうではありませんか」という運動がもし起きたら,あれだけで相当違うのではないかと思うのです.それは,国のやることではないような.

【浅岡】
 だからその時,かけ声だけではなくて,それを促すインセンティブを制度化して与えるべきだということです.

【小沢】
 例えばどのようにですか.

【浅岡】
 料金の問題もあるでしょう.

【小沢】
 つまり,そういうものは高くしてしまうとかですか.

【浅岡】
 それは,最終的には環境税というところで議論されている問題もあるでしょう.それから,例えば通産省も省エネでトップランナー方式というのをしましたけれども,カテゴリーを細かく分けてしまって,そのカテゴリーの中でトップランナーのという仕組みです.そうすると,全体として本当にどういうものを目指しているのかという点が,とても曖昧になるわけです.あのあたりも,中途半端な政策の反映なのではないかなと思います.
 ですから,かけ声だけでは無理だということは皆さん共通なので,学生の人達だって自ずとそういう仕組みを,学校の中に作られるということが必要なのだろうと思うのです.このことは,政策決定のあり方ということにも関わりますけれども,学生も含めた形でそうした制度作りの議論をなさるということが必要ではないか.国の中でもそうだろうと思います.

【小沢】
 つまり「授業料の値段に跳ね返りますよ」というようなことを言うと,電気を消すかもしれないですね.

【浅岡】
 どういう形があるのかは,発想はもっと豊かになるのではないですか.

【中島】
 ちょっといま手がお二人挙がっていて,私は座長ですけれども.
 確かにエネルギー経済研究所の理事長だった生田さんが,前にライトアップを消そうということを言われたことがあるのです.これはむしろ,原発を推進する側の方からです.もう大変な不評で,こてんぱんに叩かれて,こぼしておられました.
 けれども,私などはあんなものはいらないと思うのです.けれども,私もライトアップを消すのは賛成だけれども,今晩日本シリーズがありますが,あれはナイターを止められたらやはり私は抗議します.昼間やれという議論もあるのです.それは制度かもしれない.野球は昼間やるべきであると.
 そういうことをいろいろ言われてくると,旧ソ連とは言いませんが,社会にいろいろな規制が入ってくるというのは,私は,やはりいいことではないのです.ですから,やはりそういうことはやらないで,しかしエネルギーをどうするかという話にならないと.そこはきちんとしておかないと私はいけないと思う.

【浅岡】
 そこがコスト,費用がどれだけかかるのかということが非常に大きな要因としてあるだろう.

【中島】
 コストだけですか.

【浅岡】
 いや,だからそれは規制的な方法でいくのか,税の形にするのか,補助金,その他いろいろなことがあるでしょう.

【中島】
 今日この円卓会議で,私は,まだそれはあれですが…….
 いろいろ考えている方はいらして,実は省エネルギーで一番大きな部分というのは,日本では1次エネルギーを電力に転換するプロセスなのです.これが一番非効率なのです.なぜかというと,現在の原子力発電が33%の熱効率しかないからなのです.ですから,そういう意味で,私はいまの原発をやたらに作るのは,技術の発展から見てよくないと思っているのです.もういい加減でこのぐらいにしておけと.
 私がそういうことを申し上げるのは,熱機関ですから熱力学で制限されているわけですから,その前に天然ガスを使って,いわゆるリパワリングという技術があるのですが,そういうことをやれば原発を増やさないで完全にまかなえますよと,増設しないでできますよと具体的に言ってらっしゃる方もいるのです.まだここにはお招きしていまいせんけれども,そういうことは,私は原子力委員会に申し上げてみたいと思っていることの1つなのです.
 ですから,何か原発が足を引っ張っているから,再生エネルギーだとかをやらないのは,原子力があるからだというような議論だけでは,成果があまりないと思います.この間もある所で燃料電池がもう少し発展すれば,非常に有望だというような話があって,自動車にそういうものを使うとか,そういう話はたくさんあるのです.
 たぶん,変わっていくときに,いきなり核エネルギーで全部まかなう時代ではなくて,たぶんかなり化石燃料にしばらくは依存せざるを得ないと私は思う.化石燃料というのは天然ガスが一番有望です.それがだんだん水素に変わるとかが見通せれば,私はいいと思います.そういうことが鈴木さんが言われた多様性の中に入ると思いますので,もう少し視野を広げて,原子力委員会がいろいろなことを,原子力委員会がというのがまずいのですね,エネルギー環境原子力委員会がという体制ができて,そういうことをやるようにすれば,私はすれ違いの議論にはならないと思います.
 今日はモデレーターですから,どうもあまり話しすぎるのはいけませんから,これぐらいでやめますけれども.藤井さんとか,ちょっとご発言を.

【藤井】
 先ほどちょっと栃木県の広さというのを,たぶん64万 k㎡だと思います.

【中島】
 いや,そんなに広くないですよ.四国が…….

【藤井】
 37万だから,64㎡でやはりいいのですか.

【中島】
 いや,それは小さい.

【藤井】
 では,ちょっと数字は忘れましたけれども.

【小沢】
 わかるところだけ言って下さい.

【藤井】
 そうですね.計算しますと栃木県ぐらいだと.

【中島】
 栃木県ぐらいでわかります.

【浅岡】
 1つだけすみません.私が原子力だと言ったのは,原子力増設という議論といつもセットになることですという,そういう意味なのです.原子力増設ということとセットになっているのですということで,言葉が足らなくてすみません.

【中島】
 今日のところでは,増設については鈴木さんも,藤目さんも…….

【浅岡】
 ただ,ここはそうですけれども,政府の方針としてはそうではないわけです.

【中島】
 いや,だから,ここは直接原子力委員会の立場の代表はしていませんから.

【浅岡】
 ですから,政府の方針がそういう方針であるから,ことが徹底しないということを私は申し上げたのです.

【中島】
 わかりました.それはわれわれのほうからも,ここではあまり増設は賛成という意見は少なかったということを原子力委員会に申し上げればいいのです.
 あとお二人.

【茅】
 ちょっと,いまのは私は異議ありです.私は原子力を増設するか云々に関しては1つも意見を言っておりませんが,私は増設に賛成のほうですので.

【小沢】
 1人いました.

【中島】
 鈴木さんと,もう時間がそろそろまいりましたので,簡単に.

【鈴木】
 私も原子力の増設は,シェアの維持ですから,需要が伸びれば増設は必要だという立場です.
 それから,今日の話を聞いていて,少しこれからの議論でしていただきたいのは,政府と民間の役割を分けて議論していただきたい.政策議論する場合にあくまでも政府の役割があって,ライフスタイルの役割,ライフスタイルの議論は,ちょっと政策の議論とは違うのではないか.確かに重要な話なので,その議論をするときにはまた別の場が必要なのではないか.
 それから,その場合に私がちょっと言っておきたいのは,政府の役割という意味では,やはり税金をどう使うかという議論がぜひ必要なのと,それから今日はあまり議論できませんでしたが,特に技術開発,研究開発のやはり多様性というか,これもやはり議論していただきたい.
 それから,原子力について言えば,今日の議論でもまだちょっと私はよくわからないのは,反対してらっしゃる人たちは絶対もう反対なのか,こういう条件が揃えば原子力はいいということなのか.例えば非常に安全で,国民投票をして受け入れられればいいのだとか,何かまったく反対というのをただ単にイデオロジカルに言うのではなくて,何か条件をつけていただければ議論が進むと思うので,その辺をちょっと反対派の人たちには聞いていただきたいと思います.

【中島】
 藤井先生はさっきおっしゃったから,西尾さんから.

【西尾】
 いまの議論をしてしまうと,またそれはそれで大変だなと思っていますが,あえて言えば,これだけの問題がありますととりあえず書いたものが,全部ひっくり返ればいいのかなとは思いますが,そうはなりそうもないという気がします.
 もう時間がなくなっているところで,新しい話を出すのはまずいなと思っているのですが,エネルギーのことについて言えば,エネルギー供給産業が,結局エネルギー消費を伸ばさないと産業自体がちゃんと成り立たないような形になっている.つまり,電力会社で言えば,やはり電気を売らないと電力会社が成り立たない.これを変えないかぎりはどうもだめなのではないか.
 一方で省エネと言いながら,電気新聞などという業界紙を見ていると,やはり需要が増えたということはプラスで書いてあって,需要が伸びないのはマイナスで書いてあるわけです.それから,北海道電力ですけれども「需要が伸びないので営業強化月間というのを今年の9月から始めました」というようなことが書いてある.結局エネルギーを増やさないと会社が成り立たないとすれば,それはどんどん増えていってしまうわけですから,そこのところがそうではなく,電力会社が電気をある意味で言えば売らなくてもちゃんと成り立つような仕組みというのを考えないといけないと思っていますが,ちょっと今日はもう時間が無理かもしれません.

【中島】
 わかりました.それは,現在の電力会社のシステムというのは,巨大な集中型の供給源を作って,全国に配電網を作って供給するというシステムですが,それを各家庭に全部電源を置くという時代が見通せるかどうかというのは,技術の発展にかかる問題ですから,私はいますぐそれが可能だとは思っていませんけれども,将来そういうことは可能かもしれません.

【西尾】
 かならずしもそういう話でもないのですが,やめておきます.

【中島】
 はい.

【浅岡】
 1点,先生の先ほどのお話の件ですけれども,どのような条件が揃えばいいのかということは,その時点,その時点で,判断をしていくことになる.いまはどう考えるか,将来はそのときの情況下でどう考えるかということです,少なくとも私には,日本よりももっと情報公開も進み,議論もなされ,そしていまおっしゃったように電力供給も分散型で,いろいろなグリーン・エレクトリシティというような考え方も料金体系の中に入れていかれているような,そうした欧米等の国々で,原子力を拡大するという方向ではなく,減るという方向にある.今この現実を超える議論があるのであれば,それはしていっていただいたらいいと思います.

【中島】
 ヨーロッパはうまくやっているというご意見ですか.

【浅岡】
 うまくやっているではなくて,減らすという流れにる.どの国も増えてはいないわけです.

【中島】
 そのご意見は,持っておられる情報が違うのかもしれません.例えば,デンマークが一番省エネをやるということを言うことをおっしゃる.それは,一番大きいのは省エネなのです.風力ではないのです.ところが,日本でデンマークを見てきた方は,風力の話ばかりさる.
 これは言うまでもないのですが,風力というのは風が吹かない時は電気は出ませんから,そうすると,それは何でカバーするかというと,ベースロードとしては,石炭を天然ガスに転換されている.そして,省エネをやって,それでトータルなエネルギー効率を上げているから,26%削減できるという,COP3などでは模範国です.
 しかし,それはそういうことで,では日本はどうかというと,逆なのです. 4,000万kWの原発をやっていることを,非常にティミッドに,COP3でも日本の政府はだれも主張しないのです.

【浅岡】
 そんなことはありません.主張されましたけれども,一笑されたのです.現実としては,主張しました.政府は言いました.でも皆さんに呆れられたのが現実です.

【中島】
 いや,呆れられたということはない.現実としては,やはり…….

【浅岡】
 いや,準備会合でおっしゃったのです.

【中島】
 原発がなければ,もっと炭酸ガスは増えていたということだけは事実ですから.

【浅岡】
 もう1つ,省エネを進めるべきであるし,省エネの可能性があるということ,まずそれが大事だということを,私は重ねて今日も申し上げたつもりであります.

【鈴木】
 すみません.一番最初に,円卓会議と現実の政策化はリンクしていないと先生はおっしゃいました.これは,大事なポイントだと思うのですが,では円卓会議が何年も続いた時に,その間に行われる意思決定に対しては,円卓会議はそのつど何か提言をされるというのか,あるいは全く関係がないのであれば,その間にどんどん政策決定がされてしまった場合,どうされるのですか.

【茅】
 私はそういったつもりはまったくありません.そうではなくて,この会議でどういう提言をするかということは,当然現在世の中でどういうことが問題になり,どういうことが議論されているかを前提にして提言するわけです.ですから,まるで壁を貼ったようにやって,密室でこちらで議論をしてただいるということでは,まったくありません.

【小沢】
 支配はされないけれども,口は挟むということです.

【鈴木】
 口は挟むということですね.わかりました.

【中島】
 よろしいでしょうか.そろそろ時間がまいりました.
 ちょうどの時間ですし,議論も今日まだ不十分な点はもちろんありますけれども,前回よりはかなり立ち入ってディベートができたのではないかと思います.少しモデレーターがしゃべりすぎた点はお詫びをいたします.それでは事務局長.

【事務局】
 それでは,この辺で本日の原子力政策円卓会議を終わらせていただきたいと思います.
 はじめに円卓の先生方がご退場になりますので,できれば拍手でお送りいただければと思います.先生方,長時間のご議論,大変ありがとうございました.

--終了--

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