〈資料3〉
平成10年10月12日

原子力政策円卓会議の位置付けと今回の狙い

〈原子力政策円卓会議について〉
 わが国の原子力政策の方向をめぐって、一昨平成8年に、原子力委員会は原子力政策円卓会議を組織し、11回にわたって会合を行って、原子力の今後のありかたに関する国民各層の意見を広く集めた。会議のモデレーターは会合の終わりにあたって原子力委員会に提言を行ったが、その中でもっとも重要な項目の一つが新しい円卓会議の設置の要望である。  今回の円卓会議は、この要望に応えて設置されたもので、ここでは、国民各層の間の原子力に関する議論を徹底して行うとともに広く公開し、原子力問題の状況をより明確に国民に把握してもらうと共に、原子力委員会の下部組織ではなく、独自の立場から、原子力委員会に原子力政策の方向について積極的な提言を行うことをめざしている。このような円卓会議の目的が達成されるためには、国民の広い範囲から多様な意見が円卓会議に提出され、それについて十分な議論が行われることがぜひとも必要であり、国民各層の協力をぜひお願いしたい。

〈今回の円卓会議の狙い〉
 原子力問題は、きわめて多面的な問題であって、1回の円卓会議でその全領域にわたって議論を行おうとすると話が拡散してしまう可能性が大きい。むしろ、扱う範囲を例えば次ページに示す図の議論1、議論2および議論3のように区切った方が、議論をかみ合わせる意味で有効と考えられる。  そのような視点に基づいて、今回の円卓会議では議論1に焦点を絞ることとした。すなわち、今回は、日本の今後のエネルギー利用における原子力の位置付け、あり方について議論を行おうとするものである。  従来の議論をふりかえると、原子力支持者は、2)の安全要因以上に1)の社会経済要因に力点を置き、その立場から原子力の必要性を強調していることが多い。また一方で、原子力批判者は2)の安全要因の現状に不安を抱き、その不安を考えるなら原子力でなく他のエネルギー源で1)の要因に対応できる、と主張している。今回の円卓会議は、これらの意見を相互にぶつけあい、意見の相違点と相違の基盤を明確にした上で、原子力の今後のあり方について何らかの提言が出来るか否かを探ろうとするものである。エネルギーの今後の供給体制は、我が国の将来方向に大きな影響を与える重要な因子の一つであり、会議参加者が積極的かつ建設的な形で議論を進めることを期待する。

〈議論の枠組みについて〉
 一昨年度行われた原子力政策円卓会議での経験をふまえて、我が国における原子力政策のあり方に関する議論について、大枠でこのように3つに整理し、これからの議論において共通土俵として利用したい。  議論の第一番目は、我が国としての原子力の選択に関する基本的なテーマである。ここでの議論は主として、社会経済要因と安全要因に関するものとなる。これらを通じて一義的には国としての方向性を考えることになる。  議論の第二番目は、具体的な原子力開発・利用にあたっての運営と国民的コンセンサスを得るための手続き(情報開示等)に関するテーマである。情報開示の内容については、安全性に関するものが主であり、これに運営システムについての内容が含まれる。  議論の第三番目は、原子力施設の立地に関する経済的利益と安心感を含む住民感情等、地域住民の選択プロセスに関するものである。
 これらの切り分けについてはまだ議論の余地を残すものであり、確定的なものではない。むしろ議論の論点を整理するための枠組みとして、今後、より良いものにしていきたいと考えている。議論の理解と論点の整理において役立てたい。