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資料

原子力安全委員会ソ連原子力発電所
事故調査特別委員会第1次報告書(概要)

61. 9.
原子力安全委員会



1.目的
 8月下旬、ソ連はチェルノブイル原子力発電所事故の原因、被害の状況等についてIAEAにおける事故後評価専門家会合の場で公表し、事故に関する多くの情報が得られた。

 これにより、事故の内容はかなり明らかになったものの、詳細に関しては未だ不明確な部分もあり、今後我が国としても、定量的な評価、解析を行う必要があることから、現段階で最終的な結論をまとめることは困難である。しかしながら、これまでに得られた情報、資料等をもとに本事故の事実関係について整理し、今後の検討に資するとともに、事故の経緯等についての現時点までの検討により、事故原因に関する若干の評価解析を行い、その結果をここに報告するものである。

2.構成
 本報告書は3編構成とし、主としてソ連の発表をもとに、今後の検討にとって重要となる情報を抽出し、解説を加え、事故の概要を整理した第1編、今後の反映事項の有無等の検討のベースとなる事故の原因について評価を行い、事故の本質についての見解を示した第2編、及び本事故に関し我が国のとった対応、国際機関の役割等について取りまとめた第3編より成る。

Ⅰ.ソ連発表による事故の概要
  1)ソ連チェルノブイル原子力発電所の概要
  2)事故の概要
  3)環境への放射能の影響と放射線被曝状況
  4)事故に対するソ連の対応策等

Ⅱ.事故原因に対する考察
  1)ソ連の指摘する6項目の規則違反について
  2)ソ連による5項目の改善施策について

Ⅲ.我が国及び国際機関の対応
  1)我が国の対応等
  2)国際機関の対応と役割

3.主な内容
1)事故の概要について
 これまでに得られた情報を総合的に調査分析し、事故の経緯、環境への放射能の影響等事故の概要全般について整理し、とりまとめるとともに、①本原子炉の核的な特徴を示す、反応度操作余裕の概念 ②問題があると考えられる原子炉停止系の設計 ③事故の引き金となった実験の目的及び必要性等に関し詳述している。

2)事故原因の考察
 ソ連の報告書では6つの規則違反を事故の原因として挙げているが、事故の経緯等ともとに検討行った結果、
①6項目の違反には、運転規則違反に属するものばかりでなく、実験計画違反や運転ミス及び判断ミスに属するものが混在しており、事故の発端や拡大に与えた影響の度合いも同等ではなく、特に重要な因子は3つに絞られること、

②規則違反の中には、実験計画の不備によるものもあること、

③全項目の背景となる動機は、実験を何とか遂行しようとする意図ないし意志であること
等が明らかとなった。

 しかしながら、そもそもこれらの違反については、この炉の特徴である、冷却材ボイド係数が大きな正であることに対し、原子炉停止系が緩慢であり、さらに、インターロック等の設計考慮がなされていなかったことが背景にあることがわかった。 すなわち、今回事故を起こした原子炉は、我が国の原子炉とは構造や特性等が大きく異なり、ソ連の事故後の改善策にも示されるように、原子炉停止系の機能等が十分でなかった。このような設計上の問題等が背景としてあり、それに安全性が確認されていない実験及び常識を逸する規則違反等人的要因が引き金として働き、今回の大事故が発生し、甚大な被害をもたらしたものと言える。

 本調査特別委員会としては、我が国の原子力安全確保への反映事項の有無等の検討を命題として調査を実施してきているが、今回のソ連の発表等により、本事故の原因が我が国では考えられ難い事故であったことがほぼ明らかになったと判断した。

 今後、追加的に入ってくる情報も踏まえつつ更に詳細かつ定量的解析に重点を置いた評価を行うとともに、学ぶべき点があれば教訓としていく必要があると考える。

チェルノブイル原子力発電所の事故原因と対策


(実験の目的)
電源喪失時に、タービンの回転慣性エネルギーによる電力と安全系に供給するシステムの実験




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