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昭和60年度の原子力発電所の
設備利用率について

昭和61年4月1日
資源エネルギー庁
原子力発電安全管理課
原子力発電運転管理室



 昭和60年度の我が国原子力発電所の設備利用率は76.0%(営業運転中の全発電所(32基、総発電容量24,521MW)平均)となった。

〔参考説明〕
 我が国の原子力発電所は、昭和41年に商業用原子力発電所が始めて運転を開始して以来、昭和50年度前後に初期トラブルや応力腐食割れ(SCC)等のため、設備利用率は40~50%程度と低迷した。その後、設備の改善等を実施し、昭和55年度以降は順調に推移し、昭和58年度には70%台に乗るとともに、昭和60年度には76.0%と過去最高の実績となった。

 また、最近の設備利用率は、先進国の中でも良好な成績を示している。〔図1、2.表1、2参照〕


図1 設備利用率の推移


図2 主要国の原子力発電所の設備利用率の推移(暦年)

表1 設備利用率の推移


表2 世界の原子力発電所の設備利用率

 昭和60年度の原子力発電の設備容量は2,452.1万kWに達するとともに、発電電力量は約1,570億kWhに達し、電力供給の約26%を占めるに至っている。〔図3、4参照〕


図3 発電設備の推移(電気事業用)(昭和60年度は推定実績)

 設備利用率が近年向上してきた要因としては以下の点があげられる。

(1)定期検査期間の短縮
 従来、定期検査期間を長期化させていた最大の要因である初期トラブルや応力腐食割れ等の対策のための保修作業量が減少したこと、定期検査の作業工程、作業体制等の改善により、検査の効率的実施が図られてきたこと、近年、運転開始した新しいプラントは過去の実績を反映して設備改善を施しているため、定期検査が効率的に行なえるとともに補修作業量も少なくなってきたこと、等により定期検査期間が短縮されてきた。〔表3、4、図5参照〕

表3 定期検査期間の推移(GCR、美浜1号を除く平均)


表4 定期検査が3ケ月以内で終了した最近の例



図4 年間発電電力量の推移(電気事業用)(昭和60年度は推定実績)

(2)運転期間の長期化
 設備・機器の改良、品質管理の徹底等による信頼性の一層の向上、燃料設計の変更(濃縮度の上昇)等により運転期間を長期化することが可能となってきた。〔表5、6、図5参照〕

表5 運転月数の推移(全プラント平均)


表6 長期連続運転の例(365日以上)



図5 運転状況の推移

(3)運転中のトラブルの減少
 予防保全を重視した定期検査の実施等によるきめ細かい点検・補修等の徹底した品質管理、さらには内外の事故・故障等に関する情報の活用等による事故・故障の未然防止対策の徹底が図られてきたこと、軽水炉改良標準化計画に代表される各種の技術改良が加えられ、設備そのものの信頼性の向上が図られてきたこと、等の理由により信頼性の向上が図られ、運転中のトラブルの発生が減少してきた。〔表7参照〕

表7 運転中のトラブルによる運転停止頻度(試運転中を除く)


 なお、昭和60年度は、東京電力(株)福島第二原子力発電所第3号機、柏崎刈羽原子力発電所第1号機、関西電力(株)高浜発電所第4号機、九州電力(株)川内原子力発電所第2号機の以上4基(396万kW)が年度途中に営業運転を開始した。これらの新規プラントは60年度内に定期検査がなく、ほぼ全出力で運転したため、設備利用率向上に寄与した。

 今や原子力発電は電力の安定供給に大きな役割を果たすに至っているが、今後原子力発電が電力供給の主力を担い、電力供給及び電力コストの一層の安定化に寄与するためには、安全性の確保を第一として稼動率の向上をなお一層図っていく必要がある。

 このため、今後とも官民一体となって
① 軽水炉に係る技術開発・改良の一層の推進(技術の高度化)
② 事故・トラブル等の運転経験情報の積極的活用を図るための情報センター等官民での情報活用体制の整備・充実(情報の高度化)
③ 運転員及び保修員の資質の維持向上を図るための運転及び保修訓練センターの活用等による教育・訓練の一層の充実(マンパワーの高度化)
④ 定期検査作業の合理化等による定期検査の一層の効率的実施
⑤ 電気事業者の自主保安管理体制の徹底及び国の運転管理監督体制の一層の充実強化
⑥ 諸外国との技術・情報交換(国際協力)等を図り原子力発電の一層の信頼性向上に努める
こととしている。


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