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日本原子力研究所の原子力船の開発のために必要な研究に関する基本計画



昭和60年3月29日
内閣総理大臣
運輸大臣

 日本原子力研究所の原子力船の開発のために必要な研究は、本基本計画に沿って進めるものとする。


Ⅰ. 基本方針


 原子力船の研究開発は、原子力基本法の精神が十分生かされるよう努めつつ、我が国における原子力船に関する技術、知見、経験等の蓄積、涵養を図るため、段階的、着実に進めるものとし、当面、原子力船「むつ」により海上における実験データ、知見を得るとともに、その成果を十分活用しつつ舶用炉の改良研究を進める。


Ⅱ. 研究開発業務の大綱


1. 原子力船「むつ」による研究開発

 原子力船「むつ」による研究開発は、以下の手順で進めるものとし、その推進に当たっては、地元関係者の理解を得るよう努めるとともに、安全性に十分配慮しつつ、技術的に万全の体制で臨むものとする。

(1) 関根浜新定係港の建設

 関根浜(青森県むつ市大字関根字北関根)に原子力船「むつ」の新定係港を早急に建設する。

 新定係港の港湾施設・陸上施設の規模は、安全性の確保を前提として、「むつ」のみの利用及び(3)に述べる実験航海に必要な最小限のものとし、また、既存の施設・設備等の活用を図ることで経費の節減を図る。

(2) 点検・試験等

 関根浜の港湾施設が供用可能となった時点で原子力船「むつ」を関根浜に回航し、必要な点検・試験・整備を行った後、機能試験、出力上昇試験及び海上試運転を実施する。

 なお、大湊港停泊期間中における「むつ」の取扱いについては、「原子力船「むつ」の新定係港建設及び大湊港への入港等に関する協定」による。

(3) 実験航海

 出力上昇試験及び海上試運転により性能を確認した後、海洋環境下における振動・動揺・負荷変動等が原子炉に与える影響等に関する知見を得るため、概ね1年を目途とする実験航海を行う。

(4) 解役

 原子力船「むつ」は、実験航海終了後直ちに関根浜新定係港において解役する。

 解役の方法、解役後の定係港施設の取扱い等については、別途具体的な措置を検討するものとする。

2. 舶用炉の改良研究

 舶用炉の経済性、信頼性等の向上を目指して行う舶用炉の改良研究については、当面、舶用炉の設計評価研究を行い、その成果を踏まえて、以後の研究開発計画の具体化を図るものとする。

 なお、原子力船「むつ」により得られる知見は、内外の新たな知見と合わせて蓄積・整備しつつ、今後の舶用炉の改良研究に十分活用していくものとする。


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