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昭和60年度原子力関係経費の見積りについて



昭和59年9月7日
原子力委員会

昭和60年度原子力関係経費の見積りについて

T 昭和60年度施策の概要

 我が国における原子力発電は、全発電電力量の約20%を占め、既に電力供給の重要な担い手となっており、また放射線利用も工業、農業、医療等の分野で幅広く進められるなど、原子力は国民生活や産業活動に不可欠なものとなっている。

 一方、第一次石油危機以降10年を経た今日、我が国をとりまくエネルギー情勢は若干の落ち着きを見せているものの、エネルギー供給の石油依存度が主要先進国の中でも依然として高く、しかも、輸入石油の多くを中東地域に依存している我が国のエネルギー供給構造はいまだ脆弱なものであり、石油代替エネルギーの開発は、我が国の重要な課題である。なかでも原子力は、経済性に優れた大量かつ安定的な電力供給源として最も有望なものであり、今後とも、その研究開発利用を積極的に推進していく必要がある。

 原子力研究開発利用の推進に当たっては、安全の確保が大前提であり、その上に立って広い国民の理解と協力を得るように努める必要がある。そのためには、何よりもまず、原子力発電所等の安全運転の実績を積み上げて行く必要があり、国としては原子力安全規制行政の充実を図り、安全研究の着実な推進をはじめとする安全確保対策の強力な展開を図るとともに、万一の事態に備えた防災体制の整備充実に努めることが重要である。

 また、中・長期的観点から、原子力発電を拡大していくに当たっては、ウラン資源の確保、ウラン濃縮技術の確立等核燃料の安定供給、使用済燃料の再処理、放射性廃棄物の処理処分等原子力発電の規模の拡大に見合った自主的な核燃料サイクルの確立が必要である。

 核燃料サイクルについては、最近我が国においても商業用の核燃料サイクル施設建設の計画が具体化するなど、これまでの研究開発の段階から事業化の段階へと移行しつつあり、国としても、円滑な事業化が図られるよう諸施策を講じていくことが必要である。

 さらに、核燃料の有効利用等を図るため高速増殖炉等の新型動力炉の開発を進めるとともに核融合の研究等を精力的に推進していく必要がある。また、放射線利用についても、がん診断・治療研究の推進等、その一層の普及、拡大及び利用技術の高度化を図る必要がある。

 これらの研究開発は今後ますます大型化していくため、プロジェクトの進捗に応じ適切な評価検討を行いつつ、官民の適切な協力のもとに所要の資金及び人員を確保し、計画的かつ効率的に実施することに留意せねばならない。

 また、原子力施設の立地の円滑化を図るためには、原子力研究開発利用の必要性と安全性について、国民の一層の理解を得る方策を充実強化するとともに、電源三法等を活用して、地域の振興を図るための施策を、より効率的、効果的に講じつつ、地域の実情に応じたきめ細かな立地促進策を展開する必要がある。

 一方、国際的には、我が国は原子力の利用は厳に平和目的に限るとの立場を堅持し、世界の核不拡散体制の確立に積極的に貢献していくとともに、より効果的な保障措置体制の整備等を図る必要がある。

 また、大型化していく研究開発の効率的な推進を図るための国際協力及び開発途上国に対する原子力先進国としての協力を積極的に展開していくことが重要である。

 以上の原子力をめぐる内外情勢を踏まえ、昭和60年度は、以下の施策を講じ、原子力研究開発利用の総合的かつ計画的な推進を図るものとする。

 なお、原子力研究開発については、その成果が得られるまでのリードタイムが長いこと等から、長期的かつ着実に資金及び人員の拡充を図っていく必要がある。昭和60年度原子力関係経費については、昭和57年6月策定した原子力開発利用長期計画を踏まえつつ見積りを行ったが、昨今の厳しい行財政事情からスケジュール及び資金の支出計画等について可能な限りの調整を行った。このため、今後、原子力研究開発利用の円滑な推進を図っていくには、後年度の資金需要等の増大が避けられないところである。政府においては、このような事情を十分考慮し、昭和60年度の予算編成に当たっては、所要資金及び所要人員の確保に特段の配慮がなされるよう期待したい。

1. 安全確保対策の総合的強化

(1) 原子力安全規制行政の充実

 原子力安全委員会においては、安全確保総合調査及び公開ヒアリング等を実施し、行政庁の行った安全審査の再審査(ダブルチェック)等に万全を期すとともに、国際的に行われる安全基準策定作業等に協力しつつ、我が国の審査基準の充実を図る。

 行政庁における安全規制については、引き続き原子力施設の審査、検査、運転管理監督に万全を期すとともに核燃料サイクルの事業化、高速増殖炉「もんじゅ」の建設等原子力開発利用の進展に対応して、技術基準の整備、検査体制の整備等により、安全規制行政の充実強化及び効率化を図る。

 また、実用原子力発電施設及び核燃料施設の安全解析用コードの整備を引き続き行うとともに、新たに新型転換炉実証炉の安全解析用コードの整備に着手する。

(2) 安全研究の推進

 安全規制の裏づけとなる各種データの蓄積及び原子力施設等の各種の安全審査基準・指針のより定量化、精密化を図ることを目的として以下の安全研究を推進する。

 @ 工学的安全研究

 原子力施設については、日本原子力研究所において国立試験研究機関の協力を得て、引き続き加圧水型軽水炉の小破断冷却材喪失事故時の総合実験(ROSA−W計画)、実用燃料照射後試験施設(大型ホット・ラボ)による燃料の安全研究等を実施するほか、原子炉安全性研究炉(NSRR)を用いて新燃料反応度事故に関する試験研究を継続するとともに、照射済燃料の反応度事故に関する試験研究に必要な実験設備の整備に着手する。

 更に、国際協力による安全研究については、ROSA−W計画を引き続き推進するとともに、燃料挙動に関する試験研究としてのハルデン計画及びバッテル計画に参加する。また、炉心損傷及びソースタームに関する試験研究としてのLOFT(冷却材喪失事故実験)計画、SFD(燃料損傷)計画等に引き続き参加するほか、新たに軽水炉におけるエアゾル状の核分裂生成物の閉じ込め試験を目的とする米国のLACE計画に参加する。

 核燃料施設については、動力炉・核燃料開発事業団においてクリプトン除去等放出低減化技術開発研究を進めるとともに、日本原子力研究所において臨界安全試験施設の詳細設計、各種安全解析コードの開発を行う。

 輸送容器については、国立試験研究機関等において、その健全性評価に係る安全研究を推進する。

 A 環境安全研究

 放射線医学総合研究所を中心に、環境放射能の挙動に関する研究、低レベル放射線による晩発障害、遺伝障害及び内部被曝に関する研究、トリチウムの生物影響に関する研究等を実施する。特に、プルトニウムの内部被曝に関する研究を強化するため、昭和59年度に完成する内部被曝実験棟において昭和61年度からのプルトニウムを使用した本格的研究の開始に向けて放射性同位元素(RI)を用いた所要の研究を実施する。また、人体に対する放射線のリスクの評価解析を行う。

 さらに、海洋科学技術センターにおいて海洋における迅速放射能モニタリングシステムの研究開発に着手する。

(3) 防災対策の強化

 原子力施設の万一の緊急時に備えて緊急時連絡網、緊急時環境放射能監視体制、緊急医療体制及び防災活動資機材の整備を進めるほか、新たに緊急時迅速放射能影響予測システムネットワークの整備、緊急技術助言組織の助言の迅速・適確化等のための調査研究の推進等防災対策の充実強化を図る。

(4) 放射線障害防止対策の充実

 原子力施設等における従事者の放射線被曝による障害の防止対策及び放射性同位元素等に関する安全規制体制の充実を図る。

(5) 環境安全の確保

 放射線監視交付金の拡充等原子力施設周辺の地域及び海域における放射能調査体制の充実を図るとともに、一般環境の放射能水準調査、原子力軍艦の寄港及び外国の核実験に関する放射能調査等を引き続き行い、環境放射能の監視に万全の措置を講ずる。

 また、原子力利用に係る環境保全に万全を期すため、原子力発電所等の立地に際し、温排水等に係る環境審査を引き続き実施する。

(6) 放射性物質輸送の安全確保

 放射性物質の輸送の増大、多様化に対処し、輸送の安全確保を図るため、放射性物質の輸送の安全評価及び緊急時対策のための調査検討を進める。一方、国際原子力機関(IAEA)における放射性物質安全輸送規則の改訂に伴う国際的な指針作りに参加するとともに、国内輸送規則、各種安全基準の整備を図る。

2. 原子力発電の推進

(1) 原子力発電の定着化

 軽水炉については、信頼性、稼動率の向上、保守点検作業の効率化、作業員の被曝低減化等の観点から、自主技術を基本としつつ国際協力を図って改良標準化を推進するための調査を行うとともに、原子力発電検査技術の開発及び原子力発電施設の補修作業等を行うロボットの開発を行い、また、民間における原子力発電支援システムの開発の助成を行う。

 また、軽水炉の安全性・信頼性を実証するため、大型再冠水効果実証試験、配管信頼性実証試験、耐震信頼性実証試験、ポンプ信頼性実証試験、原子力発電施設安全性実証解析等を行う。

 さらに、作業員の被曝低減化のための実証試験及び技術開発を実施するとともに、原子炉内蔵型再循環ポンプ、高性能燃料、大型炉心等について確証試験を実施し、その実用化の促進を図る。さらに、軽水炉の長寿命化及び稼動率向上のための技術開発、使用済燃料貯蔵対策の調査等に着手する。

 このほか、原子力発電所の廃止の時期に備えて、日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)をモデルとして、原子炉解体の技術開発を推進するとともに、発電用原子炉の廃止措置に使用される設備について確証試験を実施する。また、原子力発電所の新立地技術として高耐震構造立地技術の確証試験を実施する。

(2) 原子力発電所等の立地の促進

 原子力発電の円滑な推進のためには、原子力発電をはじめとする原子力の研究開発利用について、広く国民の理解と協力を得ることが極めて重要である。

 このため、前述の安全確保対策の強化を図るほか以下の施策を進める。

 @ 広報活動等の強化

 国民の原子力に対する正しい認識に資するため、テレビ、出版物等の活用、講演会、各種セミナーの開催、オピニオンリーダーに対する資料送付、原子力広報映画の作成、原子力モニター制度の活用などにより、広報活動を積極的に推進する。

 特に、原子力発電所、核燃料サイクル施設等の立地を円滑に進めるために、地方自治体に対する交付金等により、その立地予定地域等における広報活動を積極的に展開する。さらに原子力発電所、核燃料サイクル施設の立地予定地域のオピニオンリーダーを対象とした原子力講座等の開催を行うとともに、フォーラムの開催等地元住民の理解と協力を得るための施策を一層充実する。また、電源立地調整官等の機能的活動により原子力発電所の立地に係る地元調整を推進するとともに、原子力発電所の設置県については、原子力連絡調整官による地元と国との連絡調整を進める。さらに、核燃料サイクル施設の立地に係る地元と国との密接な連絡調整を図る。

 A 立地地域の振興方策の充実

 電源三法等を活用し、原子力発電施設等の周辺の地域の振興を図るため、公共用施設の整備、地域の産業振興及び住民、企業等に対する給付金の交付等の施策を引き続き講じることとし、昭和60年度においては、電源立地促進対策交付金についてウラン濃縮原型プラントを対象に加えるほか、交付金による整備の対象となる公共用施設の拡充等を図り、交付金を一層効率的、効果的なものとする。

3. 核燃料サイクルの確立

(1) ウラン資源の確保

 動力炉・核燃料開発事業団による海外ウラン調査深鉱活動を重点的に実施するとともに、民間企業による海外ウラン探鉱開発活動に対する助成を行い、ウラン資源の確保に努める。

 また、ウラン資源開発に関連した研究開発として、動力炉・核燃料開発事業団において製錬転換パイロットプラントの運転等を進める。転換の事業化に関する調査を行う。海水ウランの回収システムについては、現時点においては、技術面、経済面での評価を行うことを目的として、金属鉱業事業団において進めてきたモデルプラントの建設による技術確証を62年度まで進めることとする。

(2) 濃縮ウランの確保

 遠心分離法によるウラン濃縮の国産化を図るため、動力炉・核燃料開発事業団においてパイロットプラントの運転試験を引き続き行うとともに、原型プラントの建設を継続して行う。

 また、高性能遠心分離機の信頼性試験を進めるとともに、低コスト化及び複合材料機の開発を含む高性能化に必要な研究開発、遠心分離機量産化技術の開発等を引き続き進める。

 さらに、ウラン濃縮の事業化に関する調査を行うほか、民間における遠心分離機の製造技術確立及び耐振動衝撃システム開発に対し助成を行う。

 また、民間企業による化学法ウラン濃縮技術のシステム開発に対して引き続き助成を行うとともにレーザー法ウラン濃縮についても、技術開発を行う。

(3) 使用済燃料の再処理並びにプルトニウム及び回収ウランの利用

 再処理技術の実証と確立を図るため、動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理施設及びプルトニウム転換施設の操業を行うとともに、高レベル放射性廃液貯槽の建設等所要の施設整備を行う。

 さらに、同事業団において再処理の改良技術、工程管理技術等の研究開発を進める。

 55年度より進めてきた民間再処理工場の設計・建設に必要な技術確証については、60年度に終了させることを目途として引き続き行う。また、環境安全、保障措置及び高燃焼度燃料の再処理に関する試験研究並びに使用済燃料管理に関する技術開発を引き続き行う。また、再処理施設の安全性を実証するために、耐食安全性実証試験及び排気フィルタ安全性実証試験に加え、新たに臨界安全性実証試験に着手する。さらに、動力炉・核燃料開発事業団において、高速増殖炉の使用済燃料を再処理する技術を確立するため、所要の研究を進める。

 プルトニウム利用については、軽水炉及び新型動力炉におけるプルトニウム利用方策に関する調査を行うとともに、高速増殖炉及び新型転換炉用燃料に利用するためのプルトニウム燃料加工技術の開発及び照射試験等を行う。また、プルトニウム取り扱い施設の安全性を実証するために、グローブボックスの耐震安全性実証試験に着手する。

 さらに、回収ウランを再濃縮して利用する技術の確立を図るため、動力炉・核燃料開発事業団においてUF6転換試験を進めるとともに、カスケード試験装置(BT−3)による濃縮試験を引き続き実施する。

 また、プルトニウム及びウランの効率的、計画的な利用を促進するため、核燃料サイクル評価システムの確立を図る。

(4) 放射性廃棄物の処理処分

 低レベル放射性廃棄物の海洋処分については、昨年のロンドン条約締約国会議で定められた科学技術的検討に積極的に参加すること等により、内外関係者の理解を得て試験的海洋処分を早期に実施できるよう努める。また、陸地処分についても、環境安全評価のための総合安全評価モデルの開発に着手し、またパッケージの基準化のための調査、陸地処分試験の準備の一環としての環境モニタリング手法の確立のための調査研究及び陸地処分に係る安全性実証試験を引き続き実施するとともに極低レベル固体廃棄物の合理的処分については、これまでに得られた検討成果を踏まえつつ、安全性実証試験に着手する。また、敷地外施設貯蔵については、安全性実証試験を継続する。さらに、貯蔵技術の開発のうち新型容器、新型固化体等の開発を進める。

 さらに、民間を行う発生量の低減化、減容化等のための処理技術開発に対する助成を引き続き行うとともに極低レベル廃棄物のリサイクル利用の調査、アルファ廃棄物処理処分対策の調査研究等に着手する。

 再処理施設から発生する高レベル放射性廃液については、動力炉・核燃料開発事業団において、ガラス固化処理の技術開発、固化パイロットプラントの設計、地層処分等に関する調査研究等を進めるとともに、貯蔵工学センターの立地環境調査に着手する。また、日本原子力研究所においては、処理処分に関する安全性評価試験を引き続き実施するとともに、日豪協力によるシンロック固化処理の研究に着手する。さらに、放射性廃棄物処理処分対策に必要な調査を進める。

 また、海外再処理に伴う返還固化体に関し、その技術仕様についての調査・検討を行うとともに、我が国への受入れが円滑に行えるように受入れ・貯蔵システムに関する調査、検査機器の開発、仕様承認に関する調査を行うほか、動力炉・核燃料開発事業団等において固化体物性等の試験を行う。

4. 動力炉の開発

(1) 新型動力炉の開発

 長期的観点に立った核燃料の有効利用を目指す次代の新型動力炉である高速増殖炉及び新型転換炉の開発を進める。

 高速実験炉については、運転経験を蓄積するとともに、高速増殖炉用燃料、材料の照射試験を行う。

 高速増殖原型炉については、設計研究、炉物理、機器、燃料・材料、安全性、蒸気発生器等の研究開発を進めるとともに、昭和65年度臨界を目途に建設を進める。

 新型転換炉原型炉については、定格運転を継続し、運転経験を蓄積するほか、使用期間中検査装置の開発等の運転に関連する研究開発を進める。

 同実証炉については、昭和69年度運開を目途に建設・運転の実施主体である電源開発株式会社において、基本設計、立地環境調査、用地取得等を進め、動力炉・核燃料開発事業団においては、関連する研究開発及び燃料製造技術開発施設の建設を進める。

 また、新型動力炉原型炉については、機器等の寿命信頼性等に関する実証試験に着手する。

(2) 多目的高温ガス炉の研究開発

 製鉄、水素製造等非電力部門への核熱エネルギーの利用を主目的とする多目的高温ガス炉の開発については、日本原子力研究所において、実験炉の詳細設計を進めるとともに、プラント機器の安全性を実証するための大型構造機器実証試験ループ(HENDEL)本体部及び燃料体スタック実証試験部を用いた試験研究並に炉内構造物実証試験部の建設を引き続き行う。

 また、高温構造試験、伝熱流動試験等の実施及び被覆粒子燃料、黒鉛材料等の研究開発及び実証試験を進める。

 さらに、改造を終えた高温ガス炉臨界実験装置(VHTRC)を用いて、実験炉の炉物理研究を行う。

5. 核融合の研究

 人類究極のエネルギー源である核融合動力炉の実現を目指し、その前提となる臨界プラズマ条件を達成するための研究を日本原子力研究所及び国立試験研究機関において、大学との連携を図りつつ推進する。

 日本原子力研究所においては昭和60年4月から臨界プラズマ試験装置(JT−60)の運転を開始するとともに、昭和61年度の加熱実験開始を目途として引き続き加熱装置等の製作・据付を進める。また、JFT−2M等を用いた非円形断面トーラスプラズマの研究、プラズマ加熱の研究開発、核融合炉心工学、炉工学技術の研究開発等を進めるとともに、用地確保等引き続きサイトの整備を行う。また、トリチウムプロセス研究棟の整備等を行うとともに、トリチウムの取扱技術等の研究開発を進める。

 電子技術総合研究所においては、圧縮加熱型核融合装置(TPE−2)等を用いて高ベータプラズマの研究を進める。金属材料技術研究所においては、材料の基礎的研究を行う。

 なお、超電導磁石技術については、日本原子力研究所、電子技術総合研究所、金属材料技術研究所等において研究開発を進める。特に、日本原子力研究所において経済協力開発機構国際エネルギー機関(OECD−IEA)の大型超電導磁石国際協力計画(LCT計画)に基づき、LCTコイルの共同実験を行うとともに、20メガジュール・パルスポロイダルコイルの開発を行う。

 また、日米協力では、ダブレットV共同実験及び材料共同研究を引き続き進めるとともに、国際原子力機関(IAEA)等多数国間の核融合研究についての国際協力を推進し、我が国の核融合の研究開発の効率的実施に資することとする。

6. 原子力船の研究開発

 原子力船「むつ」については、日本原子力船研究開発事業団との統合後の日本原子力研究所において今後の舶用炉の研究開発に必要不可欠な知見・データを得るためすみやかに実験航海を行うこととし、そのため必要な新定係港の建設を推進する。また、将来の舶用炉の開発のための研究を行う。

 さらに、船舶技術研究所においても、原子力船についての基礎的研究等を行う。

7. 放射線利用の推進

 放射線の医学利用については、放射線医学総合研究所において、がん治療成績の著しい向上が期待される重粒子線等の医学利用に関する調査研究を実施し、医用重粒子加速器施設の基本設計及び所要の用地の取得を開始するとともに、短寿命ラジオアイソトープによる画像診断技術の開発を推進する。また、国立衛生試験所、国立病院等においても放射性医薬品に関する研究、がん治療研究等を推進する。

 さらに、日本原子力研究所において、放射線化学関係の研究、ラジオアイソトープの生産等を実施するとともに国立試験研究機関においても、電子技術総合研究所における放射線標準に関する研究の実施、農業生物資源研究所等におけるラジオアイソトープを利用した動植物の代謝機構の研究の実施等放射線利用に関する研究を推進する。

 また、鹿児島県奄美諸島及び沖縄県における放射線照射によるウリミバエ防除事業に対して必要な助成を行う。

8. 原子力研究開発利用の基盤強化

(1) 基礎研究等の充実

 我が国独自の原子力技術の研究開発を進めるため、その基盤となる基礎研究等を、日本原子力研究所、理化学研究所及び国立試験研究機関において大学との連携を図りつつ推進する。

 日本原子力研究所においては、汎用研究炉の老朽化に対処するためにJRR−3の改造を引き続き進めるとともに、材料試験炉等による各種燃料・材料の照射試験を引き続き実施する。また、タンデム型重イオン加速器の運転を行い、材料の照射損傷、核データ等の研究及び核融合等の開発に資する。また、高転換型加圧水炉の概念の予備的検討を行う。

 また、理化学研究所においては、重イオン科学用加速器の前段加速器である線型加速器を用いて、重イオンに関する各種研究を継続するとともに、重イオン科学用加速器の後段加速器であるリング・サイクロトロンの建設を進める。

 このほか、国立試験研究機関においても、核融合炉材料等の基礎研究を実施する。

 また、放射線医学総合研究所については近年の研究の実情に照らし、研究員当積算庁費の単価区分を実験系Uから実験系Tへ引き上げ、研究の充実を図る。

(2) 科学技術者の人材の確保

 原子力関係科学技術者の資質向上のため、その養成訓練については、大学に期待するほか海外に留学生として派遣する。また、日本原子力研究所のラジオアイソトープ・原子炉研修所及び放射線医学総合研究所において、養成訓練を引き続き実施する。

 さらに、長期的観点から、原子力研究開発の推進に必要な研究者等の人材確保に努める。

9. 国際協力の推進

 原子力の平和利用と核不拡散を両立させつつ、我が国の自主的な核燃料サイクルの確立を図るという基本方針に立脚し、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の改善に協力していくとともに、第3回NPT再検討会議、国際原子力機関(IAEA)を中心として行われている原子力資材の供給保証(CAS)等の国際的検討の場に積極的に参加する。また、日米原子力協議等の二国間協議の場では、我が国の原子力の平和利用の円滑な推進に支障のないよう適切に対処していく。

 国際的な研究開発協力については、原子炉の安全研究、核融合に関する日米協力のほか、新型動力炉、多目的高温ガス炉の研究開発等の各分野に関し、米国、西ドイツ、フランス等との二国間協力等を進める。また、我が国原子力施設の規制の充実に資するため米国、フランス、西ドイツ等との規制情報交換を進める。基礎研究の分野においても、米国、フランス等と重イオン物理等の研究協力を進める。

 さらに、国際原子力機関(IAEA)を中心として進められている原子力発電所の安全基準作成事業に参加するなど、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD−NEA)等の国際機関の活動に積極的に参加する。

 開発途上国との協力については、近年とみに高まりつつある中国、韓国、アセアン諸国等からの協力要請に応え、原子力先進国としての国際的責務を果たしていくため、IAEA技術援助協力計画に積極的に参加し、「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定」(RCA)に基づくRI・放射線利用分野の協力を引き続き進めていくとともに、原子力関係要人の我が国への招へい及び原子力技術アドバイザーの開発途上国への派遣並びに開発途上国原子力研究者の我が国研究機関への招へい及び我が国研究者の開発途上国への派遣等人材交流を中心とした協力も積極的に推進する。

10. 保障措置及び核物質防護対策の強化

(1) 保障措置

 原子力の平和利用を確保し、核兵器の不拡散に関する条約を履行するため、国内保障措置体制の拡充強化を図る必要がある。このため、核物質に関する情報処理、試料の分析、査察等の業務を充実強化するとともに、国際原子力機関(IAEA)等との協力を図りつつ、保障措置の有効性向上のための技術の研究開発を推進する。

(2) 核物質防護

 原子力開発利用の進展に伴なう核物質防護の重要性の増大に対処するため、国内の核物質防護体制の充実強化のための施策を推進する。

U 見積りの概要

 昭和60年度において、以上の施策を進めるために必要な原子力関係経費は、総額約3,438億円(一般会計約1,835億円、電源開発促進対策特別会計約1,603億円)、国庫債務負担行為限度額約1,467億円(一般会計約494億円、電源開発促進対策特別会計約973億円)と見積られる。

 原子力関係機関別の見積りについては、「V概算要求総表」に示すとおりであるが、主要な原子力研究開発機関別の見積りの概要を示せば以下のとおりである。

1. 日本原子力研究所

 日本原子力研究所は昭和59年度末までに日本原子力船研究開発事業団を統合することとなるが、統合後の日本原子力研究所の総事業費は約1,086億円であり、これに必要な政府支出金は約998億円(国庫債務負担行為限度額約379億円)である。また必要な人員増は総計64名である。

 うち原子力施設の工学的安全研究及び放射性廃棄物の処理処分の研究等環境安全研究に必要な経費は約82億円(国庫債務負担行為限度額約17億円)であり、4名の増員を行う。

 また、核融合の研究開発に必要な経費は約386億円(国庫債務負担行為限度額約144億円)であり、50名の増員を行う。さらに、多目的高温ガス炉の研究開発に必要な経費は約54億円(国庫債務負担行為限度額約34億円)であり、5名の増員を行う。

 統合により日本原子力船研究開発事業団から引き継ぐことになる原子力船の研究開発に必要な政府支出金は約99億円である。

2. 動力炉・核燃料開発事業団

 動力炉・核燃料開発事業団の総事業費は約1,991億円であり、これに必要な政府支出金は約1,392億円(一般会計的662億円、電源開発促進対策特別会計約730億円)、国庫債務負担行為限度額約1,077億円(一般会計約104億円、電源開発促進対策特別会計約973億円)である。また、必要な人員増は、総計104名(一般会計37名、電源開発促進対策特別会計67名)である。

 このうち、高速増殖炉及び新型転換炉の開発に必要な経費は総額約1,128億円であり、これに必要な政府支出金は約897億円(民間拠出金約150億円、国庫債務負担行為限度額約1,033億円)である。また、必要な人員増は53名である。

 また、ウラン濃縮技術開発、探鉱開発等核燃料開発に必要な経費は、総額約342億円であり、これに必要な政府支出金は約279億円(民間拠出金約58億円、国庫債務負担行為限度額約6億円)である。また、21名の増員を行う。

 さらに、再処理施設の運転等に必要な経費は総額約521億円であり、これに必要な政府支出金は約206億円(政府保証借入金約216億円、国庫債務負担行為限度額約38億円)である。また、必要な人員増は、30名である。

3. 放射線医学総合研究所

 内部被曝実験棟の運営及び重粒子線等の医学利用、低レベル放射線の影響、トリチウムの生物影響等の特別研究の拡充強化等に必要な経費は約58億円であり、必要な人員増は4名である。

4. 国立試験所究機関

 原子力施設の安全研究、核融合、動力利用及び施設等の維持運営等、原子力研究に必要な経費は約18億円である。

5. 理化学研究所

 重イオン科学、サイクロトロン等の研究、重イオン科学用加速器の建設等及び赤外レーザによるウラン同位体分離濃縮等の原子力研究に必要な経費は約27億円である。

6. 海洋科学技術センター

 海洋迅速モニタリングシステムの開発に必要な経費は約0.4億円である。

V 概算要求総表

1. 昭和60年度原子力関係予算概算要求総表

2. 科学技術庁一般会計概算要求総表

3. 各省庁(科学技術庁を除く)一般会計概算要求総表

4. 電源開発促進対策特別会計原子力関係予算概算要求総表

5. 原子力関係予算概算要求重要事項別総表

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