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総合エネルギー調査会原子力部会報告書 昭和59年7月2日
総合エネルギー調査会原子力部会
序
1. 検討の背景
@ 今や、我が国における原子力発電規模は1,880万kWにも達し世界第4位の地位を占めるに至っている。さらに、1983年度においては全国平均で71.5%という高稼動率を達成しており、我が国のエネルギー需給構造の中で原子力が確固たる地歩を固めてきていることは疑問の余地のない事実である。 昨年11月にとりまとめられた総合エネルギー調査会需給部会の報告の中でも、原子力は石油代替エネルギーの中核として位置付けられており、今後将来にわたって我が国のエネルギー供給面においてますます重要な役割を果たしていくことが強く期待されている。 A 一方、我が国の原子力発電は、核燃料サイクル分野の相当部分を海外に依存していることも、また事実であり、今後の原子力への期待に十分こたえ、原子力発電を真に安定的なエネルギー源として国民生活の中に定着させていくためには、自主的核燃料サイクルを早期に確立することが必要不可欠である。かかる認識の下に、後来より、原子力委員会の「原子力開発利用長期計画」により重要施策の大綱とその推進方策が示され、また、総合エネルギー調査会原子力部会等の提言において、自主的核燃料サイクルの確立に係る基本方針、諸施策等が打ち出され、それらを踏まえて関係者関で鋭意努力がなされてきたところであり、原子力委員会においても、専門部会等で具体化のための検討がなされているところである。 B こうした状況の中にあって、昨年11月には「長期エネルギー需給見通し」が改定され、原子力発電規模の将来見通しも従来のそれに比べ下方修正されたわけであるが、これに伴い核燃料サイクル分野における関連諸量の将来見通しに変化を生じることとなった。 また、従来からの関係者の努力により、核燃料サイクル分野における事業化のための条件整備もかなりの進展をみるに至っている。 C かかる昨今の情勢変化を踏まえて、本年2月3日には総合エネルギー調査会原子力部会において、現実的な視点の下に、自主的核燃料サイクルの確立に向けての計画の見直し等を行うことが決定された。この決定を受けて当基本政策小委員会において行った検討の結果をとりまとめたものが本報告書である。 2. 核燃料サイクル関連諸量
@ 核燃料サイクル分野における今後の事業計画を策定するに際しては、関連する需要量等をできるだけ正確に見通しておくことが必要である。基本的な核燃料サイクル関連諸量としては、ウラン精鉱需要量、濃縮役務需要量、使用済燃料発生量及び低レベル放射性廃棄物発生量があるが、これらはいずれも基本的には将来の原子力発電規模との関係が定まってくるものである。 A 昨年11月の原子力発電規模の見直し後の数字をもとに見直した上記諸量を本報告書の末尾に参考として掲載する。TからWまでに述べてある種々の提言は、これらの諸量を参考としているものである。 (注)なお、これらの諸量は原子力発電所における燃料燃焼度、連続運転の期間、あるいは今後の関連技術開発の動向等、種々の前提条件の設定の仕方によって変動し得るものである。 3. とりまとめに当たっての総論的提言
本報告書では、TからWまでにおいて、核燃料サイクルの各分野ごとに今後の方向、施策等に関する提言を行っているが、これらの各分野の政策課題に取り組むに当たっては、安全の確保に万全を期することが何にもまして重要である。 さらに、核燃料サイクルの事業化の推進という観点から、各分野にわたる共通の着眼点として念頭に置くべき諸点を略述すれば、以下のとおりである。 (1) セキュリティとコストのバランスの確保
核燃料サイクル分野の相当部分を海外に依存している我が国にとって、自主的核燃料サイクルの確立は、ナショナルセキュリティの確保の観点から重要な意味をもつ。自主的核燃料サイクルの確立のためには、今後とも、核燃料サイクルの各分野において技術開発、体制整備等を強力に推進していくことが必要であり、またこの際、経済性の確保も十分念頭に置くことが肝要である。 本来、エネルギー政策は需要に応じてエネルギーの量的かつ価格的な安定供給の確保を図ることが基本的な目的であり、核燃料サイクルの事業化に当たっても、かかる観点から、事業化達成段階におけるコスト低減のための方策について事業化初期段階から関係者間で十分検討がなされることが必要である。 (2) 国際協力の視点に立った政策展開
核燃料サイクルの確立に向けての政策を立案・実施し、事業を推進するに当たっては、他の原子力分野におけるのと同様、国際協調を維持し国際協力を積極的に進める、という基本的態度に立脚することが重要である。 まず、原子力先進国との関係においては、我が国の原子力開発に係る主体性を確保しつつ平和利用の担保の下に積極的な技術交流を実施し均衡のとれた相互依存関係を形作っていくことが望ましい。 次に、原子力後発国との関係においては、今後原子力先進国としての我が国への期待がますます高まるものと考えられるが、我が国としても平和利用の担保には十分意を用いつつ、相手国のニーズを適確に踏まえたきめ細かい対応によりこのような期待にこたえていく必要がある。 今後、濃縮、再転換、成型加工、再処理等の役務の海外への供給が現実の課題となってくることが予想されるが、核不拡散上の配慮を含め、健全な国際市場の形成を目指した検討が行われるべきものと考えられる。 (3) 研究開発への適切な対応
@ 原子力分野、とりわけ核燃料サイクル分野は極めて技術集約的な分野であり、その事業化及び事業の円滑な遂行に当たっては、研究開発体制を含め関連技術を国際的に高いレベルのものとし、さらにこれを活用する体制を整備することが、決定的な重要性をもつ。核燃料サイクルの各分野における研究開発は、これまで主として動力炉・核燃料開発事業団が実施してきている。今後の事業化達成段階における技術の主たる担い手は、事業主体、メーカー等の関連民間企業であり、同事業団の保有する技術を今後民間に円滑に移転していくことが自主的核燃料サイクルを確立していく上で極めて重要な課題である。この技術移転に係る具体的方策については、本報告書の中で結論を出すに至っていないが、今後関係者間で早急に明確化することが望ましい。 A 次に民間事業主体に対する研究助成のあり方であるが、これについては個々の技術に対する評価によってその対応の仕方にも差があるものと考えられる。すなわち、基礎的な段階から始まって順次原型プラント、実証プラントといった手順を踏んでいくことが絶対不可欠なものもあれば、ある程度基礎的な研究成果が得られている限り、それをベースに商業化に直結させていくことが可能なものもあるであろう。前者の場合には、相当程度の段階まで政府関係機関(主として日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団)において研究開発を実施し、その成果を民間に移転することが適切であろうし、後者の場合には民間事業主体に対し比較的早い段階から研究助成を行っていくやり方が費用対効果という面でより望ましいとも考えられる。 また、国際的にみてその技術が急速な開発の途上にあることから、我が国においても商業化のための研究開発を短期間で進めないと主自的核燃料サイクルの確立への努力が阻害されると判断されるような場合、国が民間事業主体に対し積極的な助成を行っていくことが必要になることも予想される。 (4) 関連業種、事業を含めた民間活力の積極的導入
次章以降の記述に係る核燃料サイクル分野の各事業は、いずれも我が国のエネルギー政策上極めて重要ないわゆる国策的事業の性格を有しており、国の積極的な支援が必要なことは言うまでもないが、経済性の確保、国全体としての技術集約化の効率性等を考慮した場合、極力関連業種、事業を含めた民間活力を生かしていくことも極めて重要な視点の一つである。この場合、国際的事業であっても、個別企業にとって事業参画に対する強力なインセンティブを見出しにくい、という面もあり得ることから、民間活力を導入しやすくするための条件整備を行うことも重要な課題であり、この点について今後関係者間で積極的な検討を行っていく必要がある。 T ウラン鉱石 1. 世界のウラン需給
@ 世界的な原子力開発計画の遅延によるウラン需要の低迷を背景として、現在、世界のウラン需給は緩和基調にあり、天然ウラン価格(長期購入契約価格)はここ数年下降を続けている。 また、1983年12月に経済協力開発機構原子力機関(OECD・NEA)及び国際原子力機関(IAEA)が自由世界のウラン資源量等について報告を行っているが、今後の世界のウラン需給動向を推測する上での参考としてこれを示せば、ウラン精鉱(U3O8)1ポンド当たり30ドル以下のコストで開発可能な確認埋蔵量により2005年頃までの需要を賄うことが可能であり、さらに、同じコストで開発可能な推定埋蔵量を加えると2010年代前半までの需要を充たすことが可能と見込まれる。 A このように未開発のものを含めたウラン資源量で考えれば、将来のウラン供給にはかなり余裕があるものと考えられるが、他方、生産量の面からみると、現在、稼動中の鉱山から産出量に開発中及び開発計画中の鉱山からの産出予定量を加えたものでは、1990年代後半までの需要しか賄えない状況となっている。したがって、それ以降のウランの供給は新規鉱山の開発に大きく依存せざるを得ないことになると考えられるが、現在のウラン市況の低迷を反映して、世界的に探鉱開発意欲が減退していること、ウラン鉱山の開発は初期探鉱から開発に至るまでのリードタイムが長いこと、米国や一部の欧州諸国においては1980年代後半頃から急速にウランの新規調達を行うものと予想されること等の要因を考えると、1980年代末以降には世界のウラン需給が逼迫してくることも予想される。 2. 我が国のウラン資源調達の現状
(1) ウランの需給見通し
@ 現在、我が国の電力会社は海外との長期購入契約等により累積ベースで約191千ショートトン、ウラン精鉱ベース(stU3O8)のウラン資源を手当てしている。 A 一方、ウランの所要量は累積ベースで1995年に約177千stU3O8、2000年に約250千stU3O8に達する見通しである。このように我が国のウランの所要量は累積ベースで1990年代後半に供給量を上回り、2000年までに約60千stU3O8のウランを新たに調達する必要がある。なお、2000年の年間ウラン所要量は約16千stU3O8と見込まれる。 (2) ウランの調達状況
@ 我が国のウランの調達方法は大別して長期購入契約等、融資買鉱及び開発輸入(探鉱開発又は開発段階から経営参加)の3つがあるが、それらを累積ベースで比較すると、それぞれ、長期購入契約等が78%、融資買鉱が3%、開発輸入が19%となっている。 A 一方、欧州諸国では開発輸入をウラン調達の中心に据えている国が多く、例えばフランスでは100%、また、我が国と同様にウラン資源が賦存しない西独でも50%となっており、これらの国々と比較して我が国は開発輸入によるものの割合が少なくなっている。 B また、調達先別にみると、カナダ、英国、オーストラリア、南アフリカの4か国で全体の77%を占めるに至っており、供給国の偏在がみられる。 3. 開発輸入の推進
(1) 開発輸入の必要性
原子力の開発利用を推進していくためには、ウラン資源の長期安定供給の確保が必要不可欠である。 このため、ウラン資源を有しない我が国としては、海外のウラン資源国との長期購入契約を中心としてウランの安定供給の確保に努めているところであるが、将来的には、供給源の多様化を図りつつ、我が国自らの手によるウランの開発輸入を従来にも増して積極的に推進し、その比率を高めていくことが必要である。開発輸入によることの利点を列記すれば、以下のとおりである。 @) 長期購入契約、融資買鉱と並びウラン資源の長期安定確保手段として位置付けられること
A) 経営面への参加により、権益比率に応じた発言権を確保でき、開発計画や生産物の引取り等につき、長期購入契約等の場合に比べてより弾力的に対応することが可能であること
B) 上記A)の間接的効果として、長期購入契約等の交渉を行う際のバーゲニングパワーの形成に資するものであること
C) 我が国が探鉱開発への投資を行うことはウラン資源の大消費国としての国際的な責務を果たすものであること
D) 探鉱開発への参加を通じ資源国との友好的な協力関係を維持することが可能であること
(2) 開発輸入目標
@ 開発輸入の推進に当たっては、「新規調達分の1/2以上を開発輸入によることを目安とするのが妥当であろう」という目標が1981年6月の総合エネルギー調査会原子力部会において設定されている。 開発輸入目標(目標達成時期、目標量)の設定を検討するに際しては、ウランの需給見通し、現在探鉱開発が進められているプロジェクトの進捗状況、今後探鉱開発や経営参加の努力により期待し得る成果等の諸点を広く勘案することが必要であるが、これらを巡る最近の情勢の変化を考慮した場合、次のような開発輸入目標の設定が妥当なものと考えられる。 A 目標達成時期としては、
@) 探鉱開始から生産に至るまでのリードタイムが10年以上であること
A) 1990年代後半に累積ベースでの需給バランスが崩れ需要量が供給量を上回ること
を考慮し、「1990年代後半」とすることが妥当である。 B 次に目標量であるが、1990年代後半において、新規調達分の1/2以上を開発輸入によるという目標を達成するためには、その時点で毎年約6千stU3O8のウランを開発輸入により確保することが必要である。 一方、現在我が国が進めている自主探鉱プロジェクトが順調に開発に至った場合には、1990年代後半において毎年3千〜3.5千stU3O8の供給が見込まれ、これにより前記の目標達成のために必要な供給量約6千stU3O8の1/2強は確保されることとなる。 したがって、今後一層探鉱開発等の努力を行うことにより前記の目標は達成され得ると考えられるが、
@) 現在着手する探鉱プロジェクトであれば、開発までのリードタイムが新規所要時期(1990年代後半)までの期間と時間的に適合すること
A) 現在世界的にウラン探鉱活動が低下しており我が国が有利な条件で探鉱開発等に関する権益を取得できる状況にあること
等を考慮すれば、現在は、我が国にとって探鉱開発等の新規プロジェクトに着手する好機であると考えられる。 このような新規探鉱プロジェクトの追加の可能性を考慮すれば、開発輸入の目標量としては引き続き「新規調達分の1/2以上」とすることが妥当である。 (3) 開発輸入の取り組み方
@ 開発輸入を推進するため、今後とも動力炉・核燃料開発事業団による調査探鉱活動を一層推進し、また、民間企業によるプロジェクトの円滑な進展を図るとともに、新しいプロジェクトの発掘に努めることが必要である。その際、ウラン資源を量的に確保できることはもちろんのこと、経済性の観点からも妥当なコストで探鉱開発し得ることが重要であり、そのため極力有望なプロジェクトに広く接触することが必要である。 A 開発輸入、なかんずく探鉱段階からプロジェクトに参加する場合には、多額の投資が長期間必要であるとともに大きなリスクを伴うため、現在、金属鉱業事業団による海外探鉱の成功払融資制度、開発に係る債務保証制度等の国の助成措置が講じられているが、更にこれらを拡充強化していくことが必要である。また、動力炉・核燃料開発事業団の活動の成果を有効に活用していくことが必要である。 B 動力炉・核燃料開発事業団は、民間企業によるウラン探鉱活動を補完し、初期段階におけるリスクを吸収することを目的として、これまでオーストラリア、カナダ等の国々において単独又は外国企業と共同で調査探鉱活動を行い、近年、その成果が得られつつある。今後はそれらプロジェクトの円滑な進展が期待されるとともに、民間企業のニーズに合うプロジェクトについて積極的に対応していくことが望まれる。 さらに、これらのプロジェクトが円滑に民間企業に継承されることが重要であり、そのため、動力炉・核燃料開発事業団と民間企業とが密接な連携を保っていくことが必要である。 なお、新しいプロジェクトの発掘や、動力炉・核燃料開発事業団のプロジェクトの継承の場として、ウラン資源の長期安定確保を目的として関係者により設立されたウラン資源確保対策委員会(URDC)が積極的な役割を果たすべきものと考える。 C なお、個別のプロジェクトに即して考えた場合、開発した資源の販路を我が国のみに限定せず、海外市場への供給も併せ行いつつ、ウラン需給の変化に弾力的に対応する方が、そのプロジェクトの経済的かつ安定的な推進の観点から望ましいことも有り得ることに留意する必要がある。 D 以上、1990年代後半を目途とした中期的なウラン資源確保策として、積極的に開発輸入を推進する必要があることを述べたが、より長期的な観点からは他の低品位ウラン資源、たとえば海水中に豊富に存在するウランの利用等についても検討する必要があり、そのようなウラン回収技術の確立に努めることが肝要である。 U 商業ウラン濃縮 1. ウラン濃縮事業化の必要性
@ 我が国の原子力発電は、現在、そのほとんどが微濃縮ウランを燃料とする軽水炉によって行われているが、今後とも高速増殖炉が本格的に実用化されるまでの間は、軽水炉が原子力発電の主流を占めるものと考えられる。このため、ウラン濃縮役務の長期安定供給の確保が、今後とも我が国の原子力開発利用を推進する上で不可欠の要件となる。 A しかしながら、現在、我が国はウラン濃縮役務の供給を全面的に海外に依存しているため、供給国側の原子力政策によって我が国の原子力開発利用が制約を被るという問題があるほか、将来ウラン濃縮役務の需給が逼迫した際にはその安定供給の確保自体困難となることも予想される。このため、今後、海外からの供給に加えて国内でのウラン濃縮事業を確立することにより、ウラン濃縮役務の一層の安定供給の確保を図るとともに、供給国に対するバーゲニングパワーの形成に資することが、我が国の自主的な原子力開発利用を推進していく上でも是非とも必要である。 B ウラン濃縮の事業化に当たっては、生産物である濃縮ウランを長期にわたり安定的に供給することは当然として、役務価格についても国際的な水準と比較して妥当な値に設定することを目指しつつ、事業の経済性を確保することが重要である。 C また、当面は国内の電力会社への供給を通じて事業を確立していくこととなるが、将来的には濃縮役務の需要を拡大し事業を更に発展させるとの観点から、あるいは原子力機器輸出との関連で濃縮役務の供給が必要になると思われることにもかんがみ、濃縮役務を海外に供給することについて検討する必要があろう。 2. 我が国のウラン濃縮技術の現状
@ 動力炉・核燃料開発事業団は、これまで独自の技術により遠心分離法によるウラン濃縮技術開発を行い、現在ウラン濃縮パイロットプラント(生産規模50トンSWU*/年以上)が順調に運転を続けている。さらに濃縮プラントの信頼性、経済性の向上を確証することを目的として、同事業団により、ウラン濃縮原型プラント(生産規模200トンSWU/年)の建設のための準備が行われているところである。 A このような技術開発と運転経験の蓄積の結果、我が国の遠心分離法技術は、国際的な水準に達しているものと考えられているが、現在、更に遠心分離機の一層の高性能化を目指した技術開発が進められているところである。 このように、我が国においてウラン濃縮を事業化するための技術的な基盤は確立されていると判断される。 *SWU:Separative Work Units(濃縮役務単位)の略である。出力100万kwの原子力発電所が1年間に必要とする濃縮役務量は約120トンSWUである。 3. ウラン濃縮事業化のための体制整備等
@ ウラン濃縮の事業化のため、現在、電気事業者を中心に準備作業が進められているが、速やかに事業会社を発足させ事業化を推進するための体制を確立することが必要である。 A また、遠心分離機の製造は、動力炉・核燃料開発事業団による開発の一環として、従来重電メーカー三社が実施してきたが、今後原型プラント及び商業プラントに遠心分離機を供給するに当たっては、
@) 市場が限定されているため三社が個別に製造を行うのでは必要な量産効果が得られないこと
A) 各社の技術を結集することにより、製品の高度化を図ることが可能であること
等の観点から三社が協力して集中的な量産体制をとることが必要であり、速やかに遠心分離機製造事業会社を発足させることが必要である。 B 動力炉・核燃料開発事業団は、これまでの遠心分離機の開発、パイロットプラントの建設・運転経験等により、豊富な技術的知見を有しており、さらに遠心分離機の高性能化及びプラントシステムの合理化等のための開発を実施しているが、民間の事業会社は今後これらの知見を適切に活用しつつ事業化を推進していくことが是非とも必要である。 このため、民間の濃縮事業会社は、原型プラントの建設・運転に参加すること等により、動力炉・核燃料開発事業団からの円滑な技術の移転を図ることが重要であり、また、その具体的方策について関係者間で早急に検討を行うことが必要である。 4. 商業濃縮プラントの建設運転計画
@ 商業濃縮プラントの規模及び運転開始時期を決定するに当たっては以下に掲げる最近の情勢の変化等に十分考慮する必要がある。 @) 我が国の濃縮役務需要量は、1990年に約6,000トンSWU/年、2000年に約9,500トンSWU/年と見込まれる。 一方、供給量は米国エネルギー省及びフランスユーロディフ社との長期契約により、1990年に約5,000トンSWU/年、2000年に約6,500トンSWU/年と見込まれ、単年ベースでは1990年頃から不足が生じ、2000年頃には約3000トンSWU/年の供給不足となる見込みである。また、累積ベースでは、1995年頃以降に不足が生じる見込みである。 (注)供給量のうち、米国エネルギー省については、現契約のUS契約(本年1月に提案された新しい濃縮契約)への移行が図られるものと仮定して試算した。 A) 動力炉・核燃料開発事業団の原型プラントは1987年に一部運転を開始し、翌1988年に全面運転(生産能力200トンSWU/年)を行う予定であるが、原型プラントの建設、運転の結果を商業プラントに反映しうるような計画とする必要がある。 B) 原型プラント及び商業プラントヘの遠心分離機の供給は、現在設立が検討されている遠心分離機製造事業会社から集中的に行われることとなると考えられるが、経済性向上のためには、原型プラントから商業プラントヘの移行期において、遠心分離機の生産を継続的に行うことが不可欠である。 A 以上の諸点を総合的に勘案して、商業濃縮プラントは、
@) 1991年頃を目標として操業を開始し、以後プラント規模を順次拡大していく
A) 規模としては、1997年頃1,500トンSWU/年、2004年頃3,000トンSWU/年を目標とし、更に海外への供給も含めて需要の増加が見込まれる場合には、規模を更に拡大することを考慮する
ことが妥当であると考えられる。 5. 技術開発の推進
海外の供給者に伍して我が国における濃縮事業を定着させていくためには、濃縮コストの低減を図り、濃縮役務価格を国際的な水準のものとすることが是非とも必要である。このため、今後とも経済性の向上を主眼として濃縮技術開発を積極的に推進していくことが必要である。 また、濃縮事業会社は新しい技術を吸収し、その実用化に努めていく必要があろう。 我が国で開発中の濃縮技術については以下の方向で今後とも開発を促進することが必要である。 (1) 遠心分離法
これまで動力炉・核燃料開発事業団を中心として開発されてきた我が国の遠心分離法技術は、前述のとおり国際的な水準に達していると考えられ、我が国の濃縮事業は、当分の間、遠心分離法を中心として行われていくものと予想されるが、低廉な濃縮役務価格の実現のためには、今後とも遠心分離機の一層の高性能化、その製造コストの低減化のための技術開発を強力に推進するとともに、周辺機器の合理化を図ることが必要である。特に、遠心分離機の大幅な性能向上を目指して、現在、動力炉・核燃料開発事業団で開発が進められている新素材を用いた遠心分離機については、その実用化が、濃縮役務価格の低減のためには極めて重要である。 このため、今後とも動力炉・核燃料開発事業団が実用化のための技術開発を強力に推進するとともに、濃縮事業会社においても遠心分離機製造事業会社の協力の下に積極的な役割を担っていくことが必要である。 (2) 化学交換法
化学交換法によるウラン濃縮技術については、現在、我が国の民間企業が国の助成を得てその確立に努めているところであるが、海外においてもフランスで研究開発が行われている。 この方法によるウラン濃縮は、
@) 小規模プラント(数百トンSWU/年程度)でも採算性を有する可能性があり、需給の変動に合わせて建設できること
A) 高濃縮ウランの生産が極めて困難であることから核拡散防止上優れていること
等の特徴を有している。 現在、小規模な試験研究段階をほぼ終了し、技術面、経済面での実証を目的としたモデルプラントの建設を行っているところである。 今後、これらの成果から事業化への見通しが得られれば、これを遠心分離法を補完する技術として定着させることを検討する必要があろう。 (3) レーザー法
レーザー法によるウラン濃縮技術は、現在、米国、フランスを中心として精力的に開発されつつあり、今後の技術開発の成果いかんでは、ウラン濃縮役務価格を飛躍的に低減させる可能性を有している。 我が国においても、日本原子力研究所及び理化学研究所においてレーザー法の基礎研究が進められているが、我が国における次世代の濃縮技術として期待されることから、今後とも積極的に研究開発を推進していくことが重要である。 また、今後レーザー法の開発及び実用化のための官民の役割分担を明確にしていく必要があるが、その際、民間の濃縮事業会社等が、適切な時期にその開発に積極的な役割を果たしていくことが考慮されるべきものと考える。 6. 転換事業化の推進
@ 現在、我が国は天然ウランの転換(ウラン精鉱から天然六フッ化ウランヘの転換)をウラン濃縮と同様すべて海外に依存しているが、今後、核燃料サイクルにおける自主性の一層の向上及び濃縮工場の原料である天然六フッ化ウランの安定供給の確保を図るためには、国内でのウラン濃縮事業化の進展に伴い、将来転換についても事業化を図ることが必要であり、その具体化のための検討が行われるべきものと考える。 A その際、転換工場は六フッ化ウランを取り扱う点で濃縮工場と共通するところがあることにかんがみ、経済性の向上を図る観点から、これらを共同で運用することについても検討することが必要である。 7. ウラン濃縮事業化のための国の支援
@ 濃縮事業は長期にわたる大規模な投資が必要であり、かつ、当面市場が国内に限定され規模が小さいことから、事業化初期の段階は採算性の確保が困難であると考えられる。 また、遠心分離機製造事業についても、製品たる遠心分離機の需要が限定されていることから事業の経済性の確保における困難が予想される。 A このため、本事業が国策的事業として推進されるべき性格のものであることを考慮すれば、国の相当の支援が必要であり、資金調達面においては、現在、既に日本開発銀行による長期低利融資の対象として措置しているところであるが、今後、民間資金のより積極的な活用を図るとともに、国の支援措置の強化拡充についても早急に検討を進めるべきである。 8. 核燃料の備蓄
@ ウラン資源の自主探鉱開発、ウラン濃縮の事業化のほか、原子力発電のエネルギー供給安定性をより一層増すための方策として、核燃料の備蓄が考えられる。核燃料の備蓄は、予期し得ない核燃料の供給途絶時において、最も有効に機能するものであるが、備蓄形態、備蓄場所、備蓄実施主体等検討項目が多々ある。また、今後の国内における関連事業(濃縮等)の進展状況によってもその適否が左右される面がある。 A 当委員会においては主として時間的制約から、これらの諸点につき十分な討議を行うことができなかったが、今後、ウラン資源の開発やウラン濃縮事業の安定的展開を確保するためのバッファー機能の創出を図り、併せナショナルセキュリティの確保に資するという観点から、核燃料備蓄に対する考え方を検討、整理しておくことが是非とも必要である。 V 商業再処理 1.再処理事業の位置付け
@ 原子力発電の大きな利点の一つは、いったん発電を行った後も、そのために使われた燃料から再び発電のために利用できる物質を回収し、エネルギー資源を有効に利用できるということである。特に、我が国のようにエネルギー資源に乏しい国にあっては、上述の利点を活用していくことが、国全体のエネルギーの安定供給を確保する上で極めて重要であり、かかる観点から原子力発電所で生じる使用済燃料の再処理により回収されるプルトニウム及びウランの再利用の道を開いておくことが必要不可欠である。 また、軽水炉時代に再処理事業を確立しておくことは、将来の本格的な高速増殖炉時代への円滑な移行に資するものである。 A さらに、ウラン資源の有効利用という面のみならず、使用済燃料に含まれる放射性廃棄物を適切に管理、処分するという観点からも、使用済燃料の再処理は重要な意義を有しており、特に我が国のように狭隘な国土の中で今後とも原子力発電を推進していくためには、有効利用できるものは極力利用し、それ以外のいわゆる廃棄物として扱わざるを得ないものだけをよりコンパクトな形で管理、処分していくことが適切な選択である。 B 現在、使用済燃料の再処理については、その大部分を海外への委託によって対応しているが、原子力先進国としての我が国における原子力の平和利用をより主体的かつ安定的に推進していくためには、原則として再処理は国内で行うことが適切である。かかる観点から再処理事業を自主的核燃料サイクルの要として位置付けるという政策的判断の下に、早期国内事業化を達成すべく、官民挙げて再処理事業の推進に努めていくことが強く望まれる。 2. 再処理事業化の基本方針
@ 我が国の原子力発電所で生じる使用済燃料については、将来的には、今後、建設が予定されている民間による商業再処理工場を主体として国内で再処理を行っていくことを基本とする。 A 再処理事業は、我が国の原子力政策、ひいてはエネルギー政策の中で極めて重要な位置を占めるものであることにかんがみ、日本原燃サービス(株)(商業再処理工場の建設・運転の主体として1980年3月に電気事業者等の出資により設立)を始めとする関係者は、円滑な事業推進のため最善の努力を払っていくべきである。この場合、安全の確保に万全を期することは当然であり、また、我が国全体としての使用済燃料管理のあり方、将来におけるプルトニウム利用等との整合性を確保することも必要である。その際、経済性についても十分な配慮がなされるべきであり、関係者は挙げてコスト低減のための努力を行っていくことが望まれる。 B また、事業会社たる日本原燃サービス(株)が円滑な事業化達成に向けて努力することは当然であるが、再処理事業の政策的重要性及び技術的特質等を十分考慮し、関連企業(電力、プラントメーカー、化学企業等)、政府関係機関及び国が挙げて再処理事業の確立に向けて積極的に取り組んでいくことが必要不可欠である。 3. 商業再処理工場の建設運転計画
@ 商業再処理工場の設備規模、年間稼動日数等同工場の建設・運転に係る詳細計画については、それらが事業運営の根幹に係る事項であり、事業会社たる日本原燃サービス(株)が決定すべきものであるが、その決定に当っては、上記2、Aの主旨を踏まえる必要がある。 商業再処理工場内の使用済燃料貯蔵施設の規模も、再処理施設本体の設備能力との関連において事業会社が決定すべき事項であるが、適正なランニング・ストック分に加えて、ある程度余裕を持たせた規模とすることが適当である。この貯蔵施設ができることにより我が国全体の使用済燃料管理を十分適切かつ弾力的に行うことが可能となる。 しかし他方、使用済燃料の適正管理という面において、より弾力的な可能性を追及することも重要な課題であり、かかる観点から使用済燃料の高密度貯蔵、乾式貯蔵等に関し所要の検討を行っていくことが必要である。 A 以上のような考え方に基づき2005年頃までの再処理計画に係る基本的なフレームワークを示せば、以下のとおりであるが、2005年頃以降の再処理需要に対応した再処理計画についても、今後、必要に応じ検討していくことが肝要である。 ○商業再処理工場(再処理施設本体)の運転開始時期はおおむね1995年頃を目途とする。
なお、商業再処理工場のうち、使用済燃料の貯蔵施設の運転開始時期は、おおむね1991年頃を目途とする。
○商業再処理工場における再処理量は、運転開始後10年間(おおむね1995年頃〜2005年頃)に約6,000トンU*を目安とする。
*トンU:燃料中のウランの重量を表わしており、100万kWの原子力発電所を1年間稼働させるために必要な燃料は、約25トンUである。 4. 商業再処理工場建設に係る体制整備等
@ 1995年頃の運転開始を目標とする商業再処理工場については、今後の我が国における再処理事業の円滑な推進を図っていく上で、何よりもまず安全の確保の下に適正な稼働が達成されることが必要であり、かかる観点から事業会社たる日本原燃サービス(株)にあっては、国内外の優秀な技術に係る十分な検討の成果を同工場の設計・建設・運転に反映するよう努力すべきである。その際、同社においては、広く国内の再処理事業に係る関係者の協力を得て国内技術を有効に利用できるよう所要の体制整備を図る等積極的な活動を展開することが肝要である。 A 一方、再処理事業の政策的重要性及び技術的高度性等を考慮すると事業主体のみならず関連企業(電力、プラントメーカー、化学企業等)及び政府関係機関(動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所等)においても、積極的に日本原燃サービス(株)の活動に対し、協力、支援していくことが必要不可欠である。また、国自らも政策的観点に立った所要の支援を行うことが必要であるとともに、日本原燃サービス(株)を始めとする国内関係者の総力を挙げての取組みをより一層堅固なものとするよう積極的な役割を果たしていくことが望まれる。 B 特に、動力炉・核燃料開発事業団は、東海再処理工場における再処理経験の積み上げ、大型研究施設による再処理データの収集、材料・施工、保守技術等の基礎的研究開発並びにこれらの経験に基づく再処理データベースの整備等を推進しているが、これによって得られた知見は商業再処理工場の設計・建設・運転に適切に活用されていくことが極めて重要である。 また、かかる観点から民間関係者(日本原燃サービス(株)及び関連企業)と同事業団とのより一層の交流を図っていくことが強く望まれる。とりわけ東海再処理工場を含む同事業団保有施設における所要の再処理データ収集及び技術実証等技術開発面、並びに再処理技術者(研究開発要員、運転・保安要員等)の養成・訓練といった人的資源開発面における同事業団の活用をより積極的に図っていくことが肝要である。 C 商業再処理工場については、最良の技術によって設計・建設が行われることが必要不可欠であり、上述した我が国で初めての商業再処理工場(‘第二’再処理工場)はもちろんのこと、これに続く‘第三’以降の商業再処理工場についても、‘第二’での経験を
もとに、より熟成化、高度化された技術によってその設計・建設が可能となるよう、関係者が努力していくことが肝要である。 D さらに、将来的には、海外への再処理役務の供給についても、その可能性、必要な条件整備等に関し検討を行っていく必要があると考えられる。 5. 継続的な再処理技術開発の必要性
@ 再処理技術については前述したとおり、今後国内において技術熟成及び高度化を図っていくことが必要であり、再処理技術に係る信頼性、経済性の更なる向上を目指して、国内の技術力を結集し技術開発を継続的に実施していくことが必要である。 A 現在、国においては再処理施設の大型化に対応するために必要となる再処理主要機器に関する技術の実証、さらに環境への放射能放出低減化、保障措置の信頼性向上等に関する技術面における支援を行っているところであるが、これについては所期の目的が達成されるよう、その円滑な遂行に努めるべきである。 また、動力炉・核燃料開発事業団においては、既に述べているとおり、再処理技術の国内定着化に向けての所要の技術開発を鋭意進めているところであり、他方、民間においても電力業界が中心となって種々の関連技術開発が進められているところであるが、今後とも上記@の視点に立った積極的な技術開発への取組みが強く期待される。 B さらに、より長期的展望に立った場合、稼動率の向上、高燃焼度燃料・MOX燃料*の処理、廃棄物発生量の低減等に関し一層の技術開発が必要となるが、これら技術開発については、動力炉・核燃料開発事業団が中心となって日本原燃サービス(株)等との緊密な協力の下に積極的に推進し、我が国全体として効率的、集約的に技術開発を進めていくことが望まれる。 *MOX燃料:「混合酸化物燃料」のこと。酸化ウランと酸化プルトニウムの混合物を主体とした核燃料。プルトニウムは、この形態に加工されることにより、原子炉用燃料として利用することが可能となる。 6. 商業再処理工場建設推進のための国の支援
@ 商業再処理工場の建設が円滑に推進され、同工場が適正な稼働を確保していくことは、我が国の原子力政策、ひいてはエネルギー政策の遂行上必要不可欠であり、かかる観点から国としても積極的に事業者の活動を支援していくべきである。 A 技術開発面においては、
@) 再処理技術が本来的に汎用性に乏しいものであって、新たな技術開発に相当程度多額の資金を要すること
A) 再処理工場自体が多数建設されるといった性質のものではなく、メーカー等における自主的な技術開発インセンティブが必ずしも高くないこと等から国の適切な支援が必要である。現在、国自らが主体となって進めている技術開発については、その円滑な遂行に努めるとともに今後民間が主体となって進めていく技術開発についても必要に応じ資金補助等の形で国が支援を行っていくこととする。 B 資金調達面においては、
@) 商業再処理工場の建設には多額の資金を要すること
A) 建設期間が10年程度と長期にわたるため資金の懐妊期間が長いこと
等にかんがみ、国としても強力な支援のための施策を講ずる必要がある。現在、既に日本開発銀行による長期低利融資の対象として措置しているところであるが、今後、民間資金のより積極的な活用を図るとともに、国の支援措置の強化拡充についても早急に検討を進めるべきである。 C 以上の他、商業再処理工場の立地等に係る各種手続きの効率的な履行が確保されるよう努めることも重要である。 また、適用する保障措置技術についても再処理工場の運転管理技術との関連において合理的なものとなるよう、所要の開発を行っていく必要がある。 7. プルトニウム利用についての考え方
@ 再処理によって得られるプルトニウムについては、高速増殖炉ヘリサイクルすることが長期的な原子力開発の基本路線であるが、高速増殖炉の実用化時期は2010年以降になるものと予想されており、
それまでの間のプルトニウム利用方策として、熱中性子炉での利用が有効な手段と考えられる。 A 熱中性子炉でのプルトニウム利用については、我が国では新型転換炉について1994年の運転開始を目標に実証炉計画が進められており、また、軽水炉へのプルトニウムリサイクルについて少数体規模での照射計画が進められようとしているところである。 B 今後のプルトニウムの本格利用に当たっては、軽水炉でのウラン燃料の利用方法との比較において経済性の点で不利にならないよう条件を整備していくことが必要である。このため、長期的な観点から高速増殖炉開発を積極的に進めるとともに、高速増殖炉の本格的導入までの間のプルトニウムの利用方策として有力な軽水炉へのプルトニウムリサイクルについて、今後実用規模での実証計画を積極的に進めることはもとより、MOX燃料加工体制のあり方等も含めた総合的な検討を行い、プルトニウムの有効利用とその適正な需給関係の維持を図っていくことが重要である。 8. 再処理関連事業についての考え方
@ MOX燃料加工については、既に動力炉・核燃料開発事業団において相当程度の経験を積んできており、現在、新型転換炉の実証炉に必要なMOX燃料の加工施設の建設計画が進められているところであるが、今や将来のプルトニウム本格利用時代へ向けてのMOX燃料加工事業の体制整備に着手すべき時期に来ていると考えられる。このため、国においてMOX燃料加工事業化のための基本方針を早急に策定し、所要の準備を進めていくこととする。 A 一方、再処理によって得られた回収ウランの利用方策についても、現在のところ明確な方針が示されていないが、これについてもMOX燃料加工事業化と同様、早急に基本方針の策定に努めるべきである。 W 放射性廃棄物の処理処分 原子力開発利用を円滑に進めるに当たって放射性廃棄物を適切に処理し、処分することは不可欠の課題である。 一般の産業活動に伴い発生する産業廃棄物と放射性廃棄物は、基本的には異なった処理処分を行う必要があるが、放射性廃棄物はそれに含まれる放射性核種の種類に応じて時間とともに放射能レベルが減衰していくという特徴を有している。 したがって、放射性廃棄物の処理処分に際しては、その放射能レベル、減衰時間の差等に応じて適切な方策を採ることが肝要である。 W−1 低レベル放射性廃棄物対策 1. 基本方針
@ 現在、原子力発電所等において発生している低レベル放射性廃棄物のうち気体状のもの及び液体状のものの一部については、安全を確かめた上で環境に放出しており、その他のものについては敷地内の放射線障害防止効果を持った貯蔵庫等において十分安全に保管、管理されているが、今後の発電規模の増加に伴い相当程度の累積量が予想される。 これらの貯蔵については、今後とも安全に保管、管理されることになっているが、核燃料サイクルのバックエンド対策の確立及び原子力開発利用上のパブリック・アクセプタンスの確保等の観点からも極力早期に具体的な処分方策を確立することが必要である。 A 処分を行うに当たっては、従来の基本方針に従い、陸地処分と海洋処分の両者を併せて行うこととするが、このうち陸地処分については、これを推進する政策の一環として、当面原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物を発電所敷地外における施設に集中的に貯蔵する「敷地外施設貯蔵」を推進することとする。 なお、海洋処分についても、その早期実施に向けて国内外におけるパブリック・アクセプタンスの確保のため従来どおり最大限の努力を払っていくこととする。 B また、低レベル放射性廃棄物の発生量低減化についても、従来電気事業者を中心として種々の努力が払われてきているところであるが、今後とも処分に適した形での減容処理技術の開発の推進等、官民両レベルで積極的に取り組んでいくこととする。 2. 廃棄物発生量の低減化
@ 処理処分の形態によらず原子力発電所等廃棄物発生源における廃棄物の発生量の低減化を図ることも放射性廃棄物対策のうち重要な課題の一つである。これまでも、電気事業者等において、かかる面での種々の努力が払われてきているところであるが、今後とも定検作業における汚染拡大防止等運用面の改善及び材料選択や設備設計等の設備面の改善とにより、今後ともより一層の低減化に努めることが必要である。 A 処理の面においては、減容・安定固化処理技術として、現在までにセメント固化、アスファルト固化、プラスチック固化等が適用されてきているが、より経済性の高い処理方法やパッケージ方法等の技術開発要素はいまだ残されており、処理後の処分方法との関連性に十分留意しつつ今後とも積極的に技術開発に取り組んでいくことが必要である。技術開発は民間主体で行うことが現実的であると考えられるが、国も長期的展望の下、必要に応じこれを支援していくことが必要である。 3. 敷地外施設貯蔵の考え方
@ 低レベル放射性廃棄物の処分を推進する政策の一環として、当面原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物を原子力発電所敷地以外における施設に集中的に貯蔵する敷地外施設貯蔵を推進することとする。 この敷地外施設貯蔵は、一時的な貯蔵ではなく、今後所要の安全評価がなされ安全性が確認された段階では、いわゆる処分として扱われるべき性質のものである。 A 敷地外施設貯蔵は、放射性廃棄物を安定化処理し、所要の容器に封入した固化体自身及び施設等のバリヤによって、その周辺環境に対する安全性を確保するとともに、施設の運営に際して安全確保のための適切な管理を行うものとする。 B 低レベル放射性廃棄物については、それに含まれる放射性核種の半減期も短く、敷地外施設貯蔵を行うに際し既存の技術により安全を確保することは十分可能であるが、将来的に処分として扱うためには、土壌等の天然バリアによる保持力について科学的な評価を行うことが必要であり、その評価手法の早期確立に向けて官民挙げて努力することが望まれる。 4. 敷地外施設貯蔵の事業化
@ 敷地外施設貯蔵の事業については、当面対象廃棄物の発生者たる電気事業者が中心となって推進されるべきものであるが、当該事業が全国の各発電所で発生する低レベル放射性廃棄物を集中的に扱う事業であることに留意して、実際の施設の建設・運営に際しては電気事業者が中心となった事業主体がこれを担うことが望ましい。 A 貯蔵開始時期については、敷地外施設貯蔵が低レベル放射性廃棄物の処分を推進する政策の一環として行われるものであり、その具体化を早急に図ることが政策上望ましいが、今後の条件整備等に要する期間を考慮して1991年頃を目標とすることとする。 B 貯蔵の規模については、貯蔵能力を段階的に増加させていく方法をとることが現実的であり、今後の原子力発電所からの廃棄物の発生量及び将来の原子炉廃止措置に伴い発生する廃棄物対策への弾力的な対応のあり方等を総合的に勘案して、毎年約5万本(200リットル・ドラム缶換算−約1万m3の容量相当)を逐次貯蔵していくこととし、当面20年間で約100万本(約20万m3の容量相当)の貯蔵規模を目標とし、最終的には約300万本(約60万m3の容量相当)の貯蔵規模を考慮しておくことが妥当である。 5. 敷地外貯蔵施設建設のための国の支援
@ 敷地外貯蔵施設の建設が円滑に推進され、同施設が適正に運営されていくことは、我が国の原子力政策の遂行上必要不可欠であり、かかる観点から国としても積極的に事業者の活動を支援していくべきである。 A 技術開発面においては、敷地外施設貯蔵が既存の関連技術により実施可能であり、事業開始までに新たな技術開発要素が必要となることは少ないと考えられるが、処理・輸送・貯蔵にわたるシステムの確立等施設運営に係る機能性、効率性という面においては今後検討すべき課題が残されており、国としても事業者の事業運営に資するべく所要の調査検討を行っていくことが望ましい。 B 資金調達面においては、
@) 敷地外貯蔵施設の建設には多額の資金を要すること
A) 建設期間が長期にわたるため資金の懐妊期間が長いこと
等にかんがみ、国としても強力な支援のための施策を講ずる必要がある。現在、既に日本開発銀行による長期低利融資の対象として措置しているところであるが、今後、民間資金のより積極的な活用を図るとともに、国の支援措置の強化拡充についても早急に検討を進めるべきである。 C なお、敷地外施設貯蔵の実施に際し、電力需要家の世代間負担の公平化という観点から電気事業における経理上の手当ての必要性についても早期に検討を行っておくことが望まれる。 6. 極低レベル放射性廃棄物の処理・処分
@ 原子力発電所等から発生する固体廃棄物であっていわゆる低レベル放射性廃棄物のうち、極めて放射性レベルの低いものについては、敷地外施設貯蔵とは別に合理的な処分または再利用が可能となるよう措置していくことが、我が国全体としての低レベル放射性廃棄物対策を合理的に推進していく上で必要不可欠である。 A かかる区分設定としては、@)放射性廃棄物として取り扱うが、他の低レベル放射性廃棄物に比し軽微な管理の下に処分し得るもの、A)@)よりも更に放射能レベルが低く通常の産業廃棄物と同程度に取り扱うことが可能なもの等に区分する方法が考えられるが、国において早期にその区分設定が行い得るよう所要の検討を行っていくことが肝要である。その際、極低レベル放射性廃棄物の合理的な処分方策を実効あらしむるものとするためには、将来、短期間に大量の発生量が見込まれる廃炉廃棄物の大部分が、放射能汚染されていないもの及び極めて放射能レベルの低いものであることに十分留意するとともに、事業者が実用的な手段によって当該廃棄物を分別できることが前提となる。 B また、極低レベル放射性廃棄物の合理的な処理処分については、国際的にも種々の研究が行なわれているところであり、これらの成果を積極的に活用していくことも必要である。 W−2 高レベル放射性廃棄物対策 1. 基本方針
@ 再処理施設から発生する高レベル放射性廃液は低レベル放射性廃棄物と比べて量的には少ないものの、放射能レベルが高いこと、放射性物質の崩壊による発熱があること、半減期の長い放射性核種を含んでいること等の特徴を有している。 したがって、環境への影響と公衆の放射線被ばくを防止する見地から高レベル放射性廃棄物については、十分安全に管理しつつ、最終的には人間の生活環境から隔離することが必要である。 A このため、高レベル放射性廃液は、安定な状態に固化処理し、一時貯蔵した後、再処理工場敷地外において、国の責任の下に処分を行うこととする。 2. 官民の役割分担
@ 高レベル放射性廃棄物の処理処分に係る技術開発については、研究開発要素の極めて多い分野であり、また、最終的には国の責任の下に処分することにもかんがみ、国が中心的役割を果していくことが必要である。 A 再処理工場における高レベル放射性廃棄物の実際の処理は再処理事業者が行うこととするが、所要の技術開発は国が中心となって実施することとする。 なお、動力炉・核燃料開発事業団等が開発した処理技術については、これを民間に円滑に移転し活用していくことが肝要であり、かかる面における官民の協力体制をより強固なものとするよう努めていくことが望まれる。 B 高レベル放射性廃棄物の処分は、長期にわたる隔離が必要であること等から、国が責任を負うこととするが、今後の具体的な官民の役割分担については、その明確化を図り将来の処分に備えていくことが必要である。 なお、処分の実施に係る所要の費用負担については、発生者負担の原則によるものとする。 C なお、低レベル放射性廃棄物の場合と同様、高レベル放射性廃棄物の処分に関しても、電力需要家の世代間負担の公平化という観点から、電気事業における経理上の手当ての必要性について検討を行っておくことが望まれる。 3. 技術開発等の今後の方向
@ 高レベル放射性廃棄物の処理に関しては、現在、動力炉・核燃料開発事業団等が技術開発を進めている硼硅酸ガラスによる固化技術の実用化達成に全力を挙げることが望まれる。同事業団において計画されているパイロットプラントについては、その研究開発の成果が民果に円滑に移転されていくことが望まれる。 また、処理に関する技術基準等については、今後の技術開発の成果及び諸外国の動向も参考にしつつ、国において合理的な基準等の策定を行うことが必要である。 A 処分技術に関しては、将来円滑に処分実施に移行できるよう動力炉・核燃料開発事業団等の地層処分の研究開発をより一層推進することが望まれる。 一方、処分に係る安全評価手法の確立のための研究開発も同時並行的に推進していくことが必要である。 なお、処分の実現のためには技術開発と並行して立地確保のための具体的諸方策並びに実施体制についての検討も強力に推進する必要がある。 W−3 TRU廃棄物対策 @ 今後、商業再処理工場の運転、プルトニウムの本格利用等に伴い、いわゆるTRU廃棄物(原子番号93以上の超ウラン元素−たとえばプルトニウム、アメリシウム等−を含む放射性廃棄物)の発生量の増加が見込まれる。 A TRU廃棄物は、放射能レベルはそれ程高くないが、半減期の長い放射性核種を含んでおり、通常の低レベル放射性廃棄物とは異なった処理処分を行うことが必要である。 このため、半減期が長いという特性に留意して、高レベル放射性廃棄物に関する研究開発の成果をも参考としつつ、その処理処分に係る基本方針の確立に資するべく所要の研究開発等を進める必要がある。 W−4 返還廃棄物対策 我が国の電気事業者は、現在原子力発電所で生ずる使用済燃料の相当部分を英・仏に再処理委託しているが、その再処理により生ずる放射性廃棄物については、将来我が国に返還されることが予想されている。 この返還廃棄物を安全に受け入れ、国内で適切に処分していくことも今後の放射性廃棄物対策のうちの重要な課題の一つである。 1. 廃棄物の仕様承認への対策
@ 英・仏からの返還廃棄物の技術的特性、容器形状等に係る仕様の正式提示は、当初の契約規程に基づく予定より遅れているが、仕様承認のための諸準備については、仕様提示のスケジュールを踏まえ積極的に進めておくことが必要である。 A この所要の諸準備については、官民両レベルで進められるべきものである。すなわち、電気事業者等民間においては、返還廃棄物の円滑な受入れ及び貯蔵が達成されるよう主として技術的側面から十分な検討を行うことが必要であり、他方、国においては政府として承認する際の判断要件及び実際の受入れ時の技術基準等の主として制度的側面から検討を行うことが必要である。 B また、仕様承認に当たっては、我が国国内における放射性廃棄物の処理処分に係る政策(安全評価の考え方等を含む)と十分整合性のとれた考え方に立脚することが肝要である。 2. 受入れ体制
@ 返還廃棄物が再処理により生ずる廃棄物であること、効率的な受入れを行う必要があること等からみて、返還廃棄物の受入れ及び一時貯蔵は再処理事業者が行うことが適当である。 A また、輸送面においては安全の確保はもとより効率性を確保することも円滑な受入れのためには重要な要因であり、具体的な輸送体制等についても、官民協力の下に早期に確立することが肝要である。 3. 国内廃棄物対策との関連
@ 返還廃棄物の受入れ後の取扱いについては、国内廃棄物対策のスキームの中で措置することが基本である。 A 高レベル放射性廃棄物については、国内再処理工場から発生するものと同様、一時貯蔵した後処分することとする。 B 高レベル以外の廃棄物については、その特性を十分把握分析した上で、TRU廃棄物対策の一環として措置するもの及び敷地外施設貯蔵の対象とするもの等、適切な分類の下に措置していくものとする。 X 核燃料サイクル施設の立地の推進 @ 核燃料サイクル事業の意義、位置付け及び各サイクル施設の建設計画等については、これまで述べてきたとおりであるが、事業の円滑な推進のためには、各施設の立地が極めて重要な課題である。 A 商業ベースの核燃料サイクル施設の立地が我が国では初めてのケースであることを考慮すれば、立地を円滑に推進するためには、国民的な理解の下に地元関係者の合意形成を得ることが必要不可欠である。 このためには、それら施設の安全の確保に万全を期することはもとよりであるが、総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル事業立地小委員会の中間とりまとめ(1983年6月)においても指摘されているように、
@) 国民全体及び立地地域住民を対象とした官民一体となって行う積極的な広報活動の実施
A) 電源三法の活用等による地域振興施策の確立
B) 立地に際しての各種手続き等を円滑に履行していくための地方公共団体も含めた関係行政機関の間の連携と協力体制の整備
等を図るとともに関係法令の整備を進めていくことが肝要である。 B また、最近、立地に関し、後にも触れるとおり、電気事業者による青森県に対する立地の申入れ等の動きもあり,国としても、現実の立地の進捗状況に即して、前述のような立地の円滑化のための所要の措置を講ずるとともに、立地手続きについての検討を進めることが必要である。 おわりに
@ 核燃料サイクル分野は、極めて裾野が広く、事業化を進める上で解決すべき課題も多岐にわたっている。本報告書においては、主として現時点において事業化のための条件整備がかなり進展している分野、換言すれば正に事業化段階を迎えようとしている分野の諸課題のうち多くのものについて、具体的提言を行っているが、残された課題についても、今後、関係者間で積極的な検討が進められる必要がある。 A 当基本政策小委員会の検討期間中に中東情勢の緊迫化を見ることとなったが、この出来事は、昨今の石油需給の緩和の下にあっても石油代替エネルギー開発への継続的な努力を怠ってはならないということを再認識させるものであり、とりわけ原子力の分野では、可及的早期に自主的核燃料サイクルの確立を図ることにより、原子力によるエネルギー供給の安定性を高めるべきことを我々に示すものであった。 B 当基本政策小委員会における検討内容と、より密接に関連する動きとして、去る4月20日には、電気事業連合会から青森県に対し、核燃料サイクル施設の立地協力要請が行われた。ここ数年の懸案であった核燃料サイクル施設の立地問題に関し、具体的進展の端緒となる動きがあったことは極めて意義深い。今後、立地に関する円滑な進展とともに、本報告書中の提言が官民双方の努力を通じて着実に実現されることを強く希望する。 (参考)原子力発電設備容量の見直しに伴う核燃料サイクル関連諸量の変化 ![]() 総合エネルギー調査会原子力部会名簿
昭和59年7月2日現在
総合エネルギー調査会原子力部会
基本政策小委員会名簿
昭和59年7月2日現在
起草小委員会名簿
昭和59年6月18日現在
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