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開発途上国と原子力先進国の原子力協力協定の内容とそれに基づく協力の実態に関する調査研究


 原子力委員会は、(社)日本原子力産業会議の協力のもとに、開発途上国が原子力先進国と締結している原子力協力協定の内容及び具体的な協力の実態を把握して、我が国の原子力分野における途上国協力の今後の政策決定に資することを目的に、韓国、中国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、インドについて、米国、カナダ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、オーストラリアとの原子力協力の実態の調査を行った。

 開発途上国における原子力開発状況は、既に原子力発電所を運転中の国、建設中の国、長期的なエネルギー需給の観点から導入の検討を行っている国などそれぞれの国の置かれている社会的、経済的、技術的開発段階によってまちまちであるが、それぞれの国の開発の進展の実情を反映して、先進国との原子力協力協定が締結され原子力協力が実施されている。

 韓国は、米国、カナダ、フランスおよびオーストラリアと原子力協力協定を締結している。現在稼働中の原子力発電所3基のうち古里1号、古里2号がウェスチングハウスのPWR、月城がCANDUであり、建設中の6基のうち4基がウェスチングハウスのPWR、2基がフラマトムのPWRである。韓国は順次国産化率を高めるためエンジニアリング会社である韓国電力技術(KOPEC)がベクテル(米)加原子力公社(AECL)、フラマトム(仏)と提携、機器メーカーの韓国重工業がウェスチングハウス(米)、フラマトム(仏)と提携して技術移転に努めている。核燃料サイクルはエネルギー研究所(KAERI)が担当し、仏核燃料公社(COGEMA)と協力関係にある。ウラン探査は韓国電力(KEPCO)が海外で米、仏等と共同で行っている。安全性情報交換ではKAERIが米国原子力規制委員会(NRC)、仏安全防護研究所(IPSN)と取極めを結んでおり、電力の情報交換ではKEPCOがオンタリオ・ハイドロ(加)と技術協力取極めを結んでいる。

 中国は、1959年ソ連との協定が破棄されて以後、独力で原子力開発を進めて来た。1970年原子力発電所の設計が開始されたが、1978年4つの近代化と開放政策に移行すると、原子力分野でも外国との協力が検討されることになった。1980年イタリアの原子力委員会(CNEN当時)と議定書が調印され、1981年は米国のNRC、1982年にはフランスの原子力庁(CEA)と取極めが調印された。1983年には中・仏原子力協力覚書が調印され、米国、西ドイツも協力協定について話し合いが進んでいる。中国は最初の原子力発電所である秦山原子力発電所を自主技術で建設するため機器の製作を進めているが、一部の機器は輸入することにしている。広東省に建設する計画である次の原子力発電所は仏フラマトムに発注することが内定し、資金調達の話合いが進行中である。

 フィリピンは、米国、カナダ、フランスおよびオーストラリアと原子力協力協定を締結している。フィリピンにおける原子力開発利用は、アイソトープの製造とその農業、医薬分野への利用を主体に進められてきたが、1974年に原子力発電所の建設がマルコス大統領によって決定された。以後、フィリピン国内および米国内で多くの議論がなされながら建設は進行し、今年末の運開へと向っている。安全性の再検討のための工事の中止などを経ているため建設費も当初予定額を大幅に上廻っている。

 インドネシアは、米国、カナダ、フランスおよび西ドイツと原子力協力協定を締結している。インドネシアは米国から導入した研究炉によるアイソトープの製造、その農業分野への利用を中心に開発をすすめて来たが、1977年イタリアの協力によって開始された原子力発電のフィージビリティー・スタディを機に、原子力発電を考慮した計画が検討されるところとなった。現在まだ原子力発電所の建設計画はないが、その準備段階としての多目的研究炉、燃料加工試験施設等研究・訓練のための施設の建設が進められている。

 マレーシアは、二国間の原子力協力協定は結んでいないが、米国、国際原子力機関(IAEA)との三者による研究炉移転協定を締結しており、この協定によって研究炉TRIGA−Uを米国から導入している。マレーシアの原子力研究開発組織は1972年に発足し、主要設備である研究炉は1982年に臨界に達したが、機材の不足もあってまだ充分機能を発揮するに至っていない。マレーシア電力公社には原子力発電を検討する小グループがあるが、原子力発電所建設の計画はない。

 タイは、米国とのみ原子力協力協定を結んでいる。米国から購入した研究炉はアイソトープの製造とその農業、医薬分野への応用に利用されており、そのほかの研究は機器の老朽化、予算の制約があって、はかばかしくない。タイ電力公社は、1974年原子力発電所建設のため入札を行うところまで話を進めたが、タイ湾での天然ガスの発見等のため計画を中止した。タイの電力需要の伸び率は大きく、電力公社は原子力発電を含めた国の長期計画が策定されないことを憂慮している。

 インドは、米国、カナダ、フランス、西ドイツおよびイギリスと原子力分野の協力協定を締結しているが、西ドイツを除き特定プロジェクトに限定した協定であり、米国、カナダとの協定はインドの核爆発実験により停止状態にある。インドは独自の天然ウラン重水炉路線を進めており、初期にカナダの技術協力を仰いだが、現在は独力で重水製造、燃料加工も含め発電所の建設運転が可能になっている。しかし、初期に米国から導入した軽水炉2基用の濃縮ウラン、交換部品の調達には苦心をしている。


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