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核融合用超電導コイル開発の最近の成果 日本原子力研究所
1 はじめに
核融合炉には多くの磁界発生用コイルが必要である。核融合炉において、銅コイルを用いるとその電力量は、従来の電力系統では供給できないほど莫大なものとなり、たとえ供給できたとしても炉からの正味の電力は得られない。そこで液体ヘリウム温度で電気抵抗が零となる超電導コイルを利用するとこれらの問題は一挙に解決する。小型の超電導コイルは物理の基礎実験用に利用されているが、核融合炉用のものはコイル自体が非常に大きいためにその内容等は全く異ったものとなり、独自の開発が必要である。 その技術的課題は、高磁界で動作する大電流超電導導体の開発、強大な電磁力に対する対策、パルス磁界に原因する電気磁気的及び機械的問題の解決、ヘリウム液化冷凍機の大型化及びその周辺機器の開発およびこれらのシステム化された総合技術の開発等が挙げられる。 日本原子力研究所核融合研究センターにおいては、これらの作業が積極的に進められている。特に最近の成果としては、本年5月にNb3Sn導体の大口径コイルで11Tの磁界の発生に成功したことが挙げられる。 2 トロイダル・コイル開発と11T発生の成功の意義
トカマク型実験炉のトロイダル・コイルは第1図右上に示すように内寸法が7m×10m程度となり、最大磁界12Tを必要とする。このコイルが全部で14個トーラス状に配置される。このため原研では、一方ではコイルの大型化、一方では高磁界化という二つの路線を進めている。前者は国際協力で進めているLCT計画であり、実験炉の約1/2の寸法のコイルをトーラス状に組みあげて実験することを目的としている。後者は最終的に12Tを発生することを目的としたクラスター・テスト計画である。 第1図 原研におけるトカマク型超電導トロイダル・コイルの開発計画 ![]() このクラスター・テスト計画ではまず7Tで動作する2個のクラスター・テスト・コイルをNb−Ti超電導材で作り、トーラスの一部の型として配置し、テスト装置を完成(昭和55年8月)させた。次にNb−Ti材では動作できない領域の磁界を実現させるために、それまでは脆いために取扱いが困難とされていたNb3Sn材を用いて、テストモジュール・コイルを製作し、当初の10T発生という目標を達成(昭和57年10月)した。 このコイルの実現にはNb3Snの熱処理法等に多くの工夫がなされた。このコイルを当初の目標を越えて更に高い磁界、つまり11Tで動作試験を行う為にクラスター・テスト・コイルに補助コイルが取りつけられた。第2図はクラスター・テスト装置の概念を示すものである。 第2図 クラスター・テスト装置の概念図 ![]() 超電導コイルの動作にはまずコイルを室温から液体ヘリウム温度まで冷す必要がある。1つの冷凍機で5個のコイルを並列に冷し込む事は単純には行えないが、コイルの温度をコンピューターで計測し、このデータに基づき制御を加えることにより、5個のコイルを均質に約150時間で冷すことができた。その後5個のコイルに通電することにより11Tを発生するこができた。11Tにおいて、導体中に埋められたヒータにより最内層部を温度上昇させ常電導にしてみた。その結果、一度常電導になった部分も特殊加工した導体面の冷凍が優れていること及びNb3Sn材の臨界温度が高い(18K)こと等が十分に作用して、導体の長手方向に沿って約6秒で自ずと超電導が復帰することが認められた。つまり、これにより熱擾乱があっても超電導状態が保てることが実証された。高磁界発生そのもの及び超電導復帰等は磁界が高くなるにつれて、増々技術的に困難になってくる。このような大口径(平均直径1m)で11Tを発生し、かつ超電導復帰の現象を実証したのは世界で初めてである。 3 ポロイダル・コイル開発
実験炉に要求されるポロイダル・コイルの数は約20個であり、その形状は円形で直径3m位から20m位にわたっている。ポロイダル・コイルには変流器コイルと平衡コイルとの2種類があり、前者が10T/sec、後者が4T/secのパルス磁界で運転されるところが、直流で運転されるトロイダル・コイルと大きく異っている。このような高速パルス動作を行わせると、コイルのインダクタンスに比例した高電圧が発生し、コイルの絶縁に問題が生じる。このため、コイルのインダクタンスを小さくするために大電流導体を用いて巻線数を小さくする必要がある。しかし、大電流導体とするために、単に導体の口径を大きくするとパルス磁界による損失が大きくなる。 従って、パルス磁界損失を低下させる工夫がポロイダル・コイル導体開発の大きな鍵となっている。原研では3種類の導体を試作し、予備実験を完了している。今後、これらを使用したコイルを製作し、試験が行われることが待たれる。 4 おわりに
原研では、核融合会議超電導磁石分科会の報告(昭和52年7月)に従って、計画的に開発を進めてきている。当時、核融合に関する超電導コイル技術が全く手を着けられていなかった状態からスタートし、計画は着々と実現し、その開発レベルは現在では、世界のトップレベルにある。本文で記述することのできなかった、ヘリウム液化・冷凍機を中心とする極低温技術の進展、計測技術をも含む多くの周辺技術も進展した。しかし、核融合炉の超電導コイルの実現を見ると、これまで歩んできた道よりもこれから歩まねばならぬ道の方がはるかに長く、かつ厳しいものであると考えられる。 将来のトカマク装置を考える時、トロイダル及びポロイダル両コイルが超電導によって実現することが要求されており、両コイルの開発は、バランスよく推進することが肝要である。この観点からは、今後ポロイダル・コイルの開発をも積極的に進めていく必要があろう。 |
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