前頁 | 目次 | 次頁

中国の秦山原子力発電所に対する原子炉圧力容器の移転に係る書簡について


原子力局調査国際協力課

 中国は浙江省海塩県秦山、(上海の南西)に出力30万kWの加圧水型原子炉(PWR)1基を、1988年完成を目途に建設を準備中である。このプラントの部品の設計、製作等は、基本的には「自力更生」の原則に則り中国自身の手により進められているが、一部の機器については外国から輸入することとされており、我が国のメーカーに対しては原子炉圧力容器の引き合いがあった。

 これを受けて、政府部内において、原子炉圧力容器を秦山原子力発電所に輸出する場合の平和利用の確保の問題に関して検討を行うとともに、中国側とは、日中原子力協力協定の締結交渉と並行して協議を進めてきた。

 本年2月から3月にかけて、東京で開催された、中国側との協議において、この平和利用の確保の問題について、(ⅰ)平和的目的への限定利用の約束及び(ⅱ)日本側関係者の同発電所への訪問を内容とする書簡を取り交すことで意見の一致をみた。その後、3月16日に閣議に報告を行い、同日付けで北京において、日中両国の関係当局を代表して、宇川外務省大臣官房審議官と賈蔚文国家科学技術委員会委員との間で別紙のとおりの書簡を交換した。

 なお、中国側との協議の過程において、秦山原子力発電所から発生する使用済燃料も平和的目的に限って利用されること、また、同発電所を訪問する日本側関係者には日本国政府関係者が含まれることにつき日中双方の了解が得られている。

(日本側書簡)

 書簡をもって啓上いたします。本官は、本日付けの貴官の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 本官は、中華人民共和国と日本国との間の原子力分野の協力を平和的目的に限って推進することを目的として、日本側の提案に基づいて、両国の関係当局の代表者間で日本側から中国の秦山原子力発電所へ移転される原子炉圧力容器に関する事項について、最近行われた討議に言及いたします。この討議において両国の関係当局の代表者は、次の了解に到達いたしました。

1 日本国から移転される原子炉圧力容器は秦山原子力発電所においてのみかつ平和的目的に限って利用され、また、いかなる方法によっても軍事的目的に利用されない。

2 秦山原子力発電所の建設及び運用に関し、技術面での協力を強化し、また、本件に関する両国間の協力の成果を高めるために、日本側の要求に応じ、日本側関係者は、秦山原子力発電所により友好訪問するよう同発電所に招聘される。

 本官は、中華人民共和国の関係当局に代わって前記の了解を確認する光栄を有します。

 貴官が前記の了解を確認されれば幸いであります。

 本官は、更に、貴官の書簡に述べられた討議に言及するとともに同書簡に述べられた了解を日本国の関係当局に代わって確認する光栄を有します。

 1984年3月
日中原子力協議日本側代表団団長
日本国外務省大臣官房審議官
宇川 秀幸
中華人民共和国原子力代表団団長
中華人民共和国国家科学技術委員会委員
  賈蔚文殿

前頁 | 目次 | 次頁