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原子力開発利用長期計画について


国務大臣
原子力委員会委員長
中川 一郎


 このたび、原子力委員会は新たな「原子力開発利用長期計画」を決定した。長期計画は今後10年間における原子力開発利用に関する重点施策の大綱とその推進方策を明らかにするものであり、その基本的考え方は以下のとおりである。

 まず、原子力利用の最も重要な柱である原子力発電については、石油代替エネルギーの中核としてその拡大が強く要請されているが、反面、立地面の制約から計画どおりには進んでいないというのが現状である。新長期計画においては、このような状況を踏まえ、原子力発電の開発目標を昭和65年度末4,600万キロワットとしたが、この目標もその達成は必ずしも容易ではなく、関係者の一層積極的な取組を求めている。

 第二に、原子力発電の供給安定性を一層高めていくためには、自主的な核燃料サイクルの確立を図るとともに、国産エネルギー資源と言い得るプルトニウムを有効に利用できる炉型を開発していくことが重要である。我が国は、プルトニウムは高速増殖炉で利用することを基本としているが、高速増殖炉の実用化時期が2010年頃と予測されることから、プルトニウムの早期利用を図るため、新型転換炉及び軽水炉によるプルトニウム利用の開発を進めることとしている。

 第三に今後の原子力研究開発プロジェクトの進め方について最も重要な点は、既に実用化を目前にしているもの、例えばウラン濃縮、再処理、新型転換炉などをいかにして実用化するかという問題である。新長期計画においては、これらのプロジェクトを円滑に実用化に至らしめるため、国の支援の下に民間が主体となって実用化を目指すという基本的枠組を示している。

 最後に、原子力開発利用をめぐる国際問題については、我が国が原子力先進国の一員であるとの認識の下に、世界の核不拡散体制強化に、より積極的に貢献していくとともに、開発途上国との協力を含め国際協力を一層積極的に進めることとしている。

 原子力委員会としては、この長期計画に沿って、今後とも我が国の原子力開発利用を強力に推進していく所存である。

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