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環境放射能安全研究年次計画(抄録)



(昭和56年度−昭和60年度)

昭和55年6月6日
原子力安全委貝会
環境放射能安全研究専門部会
(昭和55年6月16日、原子力安全委員会で決定されたもので、その一部を紹介する。)

 環境放射能安全研究専門部会は、昨年7月、「環境放射能安全研究年次計画(昭和54年度−昭和55年度)」を策定したところであるが、今後とも長期的視点に立って環境放射能安全研究を計画的かつ総合的に推進する必要があると考え、「環境放射能安全研究年次計画(昭和56年度−昭和60年度)」を策定すべく検討を進め、ここにその結果をとりまとめたので報告する。

 原子力開発利用は、施設の工学的安全性を高め、その信頼性を確保することはもちろんであるが、あわせて、施設に由来する放射能及び放射線を安全に管理することによって、はじめてその発展が期待されるものである。このような観点から、従来より、原子力利用に際しての安全の確保には特段の配慮がなされてきたところである。原子力発電をはじめとする原子力開発利用は、今後さらに進展し、かつ、多面化するものと予想されるので、国民の健康の確保、環境の保全等安全の確保に関する技術及び知見のより一層の充実が要請されるところである。このため、環境における放射能の挙動と放射線レベルの解明及びそれらによる被ばくの線量評価法の開発、並びに低レベル放射線の人体に及ぼす身体的・遺伝的影響の機序の解明及びそのリスクの評価、さらに緊急時における周辺住民の安全確保に関する研究を一層強力に推進する必要がある。

 当専門部会においては、このような観点から、今後5年間に実施すべき研究内容を次の6つに分類して検討した。

 まず、環境における放射能の挙動と放射線レベルの解明及びそれらによる被ばくの線量評価法の開発については、「放射性物質及び放射線の分布と挙動並びに被ばく線量評価」及び「環境放射線(能)のモニタリング技術」の2つに分けて検討した。

 次いで、低レベル放射線の人体に及ぼす身体的・遺伝的影響の機序の解明及びそのリスクの評価については、「低線量放射線の生物影響」、「内部被ばくの生物影響」及び「放射線の人体に対する影響」の3つに分けて検討した。前二者はそれぞれ、外部被ばく及び内部被ばくについての実験動物等を用いた研究を内容とするものであり、後者は、疫学的研究及び前二者の成果をヒトに外挿するための研究を内容とするものである。

 最後に、緊急時における周辺住民の安全確保に関する研究を、「放射性物質異常放出時の安全確保」として検討した。

 それらの分類ごとに、できる限り具体的かつ重点的に研究内容を述べるよう努めるとともに、環境放射能安全研究には1つのテーマを長期間かけて段階的に解明していくという研究が多いことに鑑み、研究の最終目標を明らかにするだけでなく、当面5年間の段階目標を明らかにするよう努めた。

 今後、本年次計画に沿って、関係機関の有機的な連携の下に、環境放射能安全研究のより一層の推進が図られることを期待する。なお、関連する国際的な活動にも積極的に協力することが望まれる。また、本分野の関係研究者が極めて少ない現状に鑑み、人材の養成及び確保には特に意を払う必要がある。

今後実施すべき研究課題

1.放射性物質及び放射線の分布に挙動並びに被ばく線量評価

(1) 環境における放射性物質の分布と挙動
@ 大気中における挙動に関する研究(放医研、原研、動燃)
A 陸上生態系における挙動に関する研究(放医研、原研、土木試等)
B 海洋生態系における挙動に関する研究(放医研、原研、大学等)

(2) 環境における放射性の特性と挙動
@ β線及び中性子線外部線量の評価に関する研究(原研、放医研)
A 地表近傍における宇宙線中性子の特性に関する研究(電総研、理研、大学)
B 空間線量の短期的・地域的変動に関する研究(放医研)
C 生活環境の変化に伴う環境放射線の変動に関する研究(建築研、放医研、理研)

(3) 被ばく線量評価
@ 放射性物質の人体への取り込みに関する研究(放医研、大学)
A 主要臓器中の元素濃度に関する研究(放医研、大学)
B 生物学的パラメータに関する研究(放医研、大学)
C 国民線量に関する調査研究(放医研、原研)

2. 環境放射線(能)のモニタリング技術>

@ 環境放射線の測定法に関する研究(放医研、原研、大学等)
A 環境放射能の測定法に関する研究(放医研、原研、分析セ等)

3. 低線量放射線の生物影響

(1) 晩発障害のリスク推定
@ 放射線発がんに関する研究(放医研、大放研、大学)
A 非腫瘍性晩発障害に関する研究(大学)
B 子宮内被ばくに関する研究(放医研)

(2) 遺伝的障害のリスク推定
@ 霊長類の染色体異常に関する実験的研究(放医研、予研、大学)
A 遺伝子突然変異に関する実験的研究(放医研)
B 低線量域における基礎的研究(遺伝研、大学、放医研)

4. 内部被ばくの生物影響

(1) 超ウラン元素
@ 体内における挙動・代謝に関する研究(放医研)
A 内部被ばく線量の評価に関する研究(放医研)
B 内部被ばくによる生物学的影響に関する研究(放医研)
C 体内汚染の除去に関する研究(放医研)

(2) トリチウム
@ 体内における動態に関する研究(放医研、大学)
A 生物影響に関する研究(放医研、遺伝研等)
B 生物効果比を求めるための基礎的研究(放医研、遺伝研、大学)
C トリチウム研究施設の充実

5. 放射線の人体に対する影響

(1) 疫学的研究によるリスクのモニタリング
@ 原爆被ばく者の疫学的調査(放影研)
A 診療放射線技師の疫学的調査(日放技師会、大学)
B 疫学的研究に必要な技術開発(放医研、大学)

(2) 放射線のヒトヘの影響のリスクの評価

6. 放射性物質異常放出時の安全確保

(1) 緊急時のモニタリング
@ 放射性ヨウ素の迅速分析法及びγ線サーベイ法に関する研究(原研)
A 航空機及び自動車によるサーベイシステムに関する研究(大学、原研、理研)
B 放出源モニタ及び環境モニタの緊急時における信頼性向上に関する研究(原研)

(2) 緊急時環境放射能予測システム
@ 風速場予測モデルの開発(気象研、気象協会)
A 各種環境条件下における拡散モデルの開発(気象研、原研、気象協会)
B 被ばく線量予測モデルの開発(原研)
C データバンクを含む総合システムの検討(放医研、原研)
D 家屋等の放射線(能)防護効果に関する研究(建築研、原研)

注)( )内は主な研究実施機関

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