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放射線障害防止対策の整備のための放射線障害防止法の一部改正について


(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律)

昭和55年4月
科学技術庁

1 改正の趣旨

 放射性同位元素と放射線発生装置の取扱いに関する安全規則は、昭和32年に制定された放射線障害防止法(「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」)によって行われている。

 放射性同位元素等の利用、普及は近年目ざましいものがあり、放射性同位元素等の利用実態、取扱事業所数、流通量等は障害防止法が施行された当時に比べ大きな変化が見られる。

 このような利用実態の変化及び近年新しく改訂された国際的な放射線防護基準を踏まえて、規制の合理化及び充実強化を図るため、法施行以来約20年ぶりに改正を行うこととしたものである。

※ 放射性同位元素とは、放射線を発生する元素で、障害防止法では、核原料物質・核燃料物質及び放射性医薬品以外のものをいう。

※※ 放射線発生装置とは、サイクロトロン等の放射線を発生する装置をいう。

2 改正の概要
(1) 施設等の安全検査の充実

① 施設使用開始前の施設検査及び定期検査の実施

 放射線障害防止のためには、施設が安全に保たれていることが重要であるので、特に大量の放射性同位元素を使用する事業者及び放射線発生装置を使用する事業者等の施設について、その使用前の施設検査及び定期検査を実施するものとする。

② 設計承認・機構確認制度による規制の合理化

 近年普及の目ざましい放射性同位元素装備機器の中には、機器自体によって放射線のしゃへい等が十分に行われうる構造になっているものが少くないため、これらについて、設計承認及び機構確認の制度を設けるとともに、機構確認された機器については、従来の許可に替えて届出によって使用できるものとする。

※※※ 放射性同位元素装備機器とは、放射性同位元素が内蔵されている計測、分析機器で次のようなものをいう。

ガスクロマトグラフ装置 PCB等有害物質の分析
硫黄分析計 石油類に含まれる硫黄の分析
厚さ計 製紙、製鉄工程での製品の厚さの測定

(2) 放射線取扱主任者制度の改善
① 主任者資格の取得に講習の義務づけ

 放射線取扱主任者の資格取得に、従来の国家試験に加えて、一定の講習の受講を義務づけ、放射線障害防止に対する知識、経験の豊富な者が主任者となるようにする。

② 新しい種類の主任者資格の創設

 放射性同位元素装備機器の利用の拡大にあわせて、放射性同位元素装備機器別の主任者資格を新たに設け、事業所の利用実態に合った資格をとりうるようにする。

(3) 安全な輸送のための規制の整備
 放射性同位元素等の安全な輸送を確保するために、国際原子力機関(IAEA)の定めた「IAEA放射性物質安全輸送規則」(1973年10月)に合わせて、一定の量以上の放射性同位元素等の陸上輸送について、主務大巨の確認を受けなければならないものとする。(航空、船舶輸送については、既に船舶安全法等により確認制度が導入されている。)

(4) 検査等の体制の合理化

 上述の施設検査及び定期検査、放射性同位元素装備機器の機構確認、放射線取扱主任者の試験及び講習並びに輸送の確認の業務を適正に遂行し、年々増加する事業所等の安全を確保するため、検査等の体制の合理化を図ることとし、これらの業務を国に代って行う民間機関を指定し、国の厳重な監督の下に、これら業務を実施させることとする。

(解説)

 4月25日、参議院本会議で可決成立した放射線障害防止法の改正の内容は、以下のとおりである。

(1) 放射性同位元素の利用状況と問題点
(2) 障害防止法の主要改正点
(3) 障害防止法の規制の現状



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