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昭和55年度原子力関係予算の編成について


昭和54年7月20日
原子力委員会

1.先般開催された東京サミットにおいては、将来にわたり石油需給がひっ迫するとの認識から、石油消費の削減と石油代替エネルギー源の開発が極めて重要であるとの合意がなされ、各国でそれぞれの立場からその実現のための対策が実施に移されつつある。我が国としてもさまざまな代替エネルギーの構想が考えられるが、特に化石エネルギー資源に乏しいという特殊の事情から、エネルギーの安定供給に資するエネルギー源としては、現実的にはその大部分を原子力の利用に依存せざるを得ない事実を痛感するところである。

2.当委員会としては、今後の原子力開発の推進に当たっては、米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、安全確保及び防災対策に万全の努力を払うとともに、世界各国との情報の交流に努めつつも海外依存の体質から脱却し、軽水炉の定着化を含め自主性を持つ技術開発を一層積極的に進めていく決意である。

3.そのためには、昨年9月当委員会が策定した原子力研究開発利用長期計画に沿って原子力の研究開発を強力に推進する必要があるが、過去二十数年にわたる我が国の原子力研究は漸くその成果をもたらし、ウラン濃縮、再処理、放射性廃棄物処理処分等核燃料サイクルの確立、高速増殖炉をはじめとする新型動力炉の開発、核融合研究等がそれぞれ大型化、実証化等の段階を迎えて、今後必要な資金及び人材が急激に増大することが見込まれる。

4.このため、昭和55年度の原子力関係予算の編成に当たっては、原子力が将来の我が国の経済と国民生活にとって不可欠なエネルギー供給の中心的役割を担うものであり、かつ、そのための技術開発は長期間を要するものであるとの観点から、現下の財政事情による一般的制約にとらわれず特例的措置を講ずるとともに、既存の財源による充足が困難な場合には国民の理解を得て、例えば、原子力開発のための新税等新たな財政措置を講ずることにより、所要の資金の確保がなされるべきものと考える。


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