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圧力容器上蓋を撤去しないで総点検・改修を行うことの検討について


昭和53年5月8日
「むつ」総点検・改修技術検討委員会

昭和53年5月8日
科学技術庁長官 熊谷太三郎 殿
運輸大臣 福永 健司 殿
「むつ」総点検・改修技術検討委員会
委員長 安藤 良夫

 標記について、当委員会において検討した結果を次のとおり取りまとめたので、報告する。

「むつ」総点検・改修技術検討委員会委員
(順不同)

安藤 良夫 東京大学
平田 賢 東京大学
植田 靖夫 運輸省船舶技術研究所
浅野 順一 日本海事協会
黒沢 昭 神戸商船大学
都甲 泰正 東京大学
鳥飼 欣一 日本原子力研究所
高島 洋一 東京工業大学
板倉 哲郎 日本原子力発電株式会社
中田 正也 運輸省船舶技術研究所
宮坂 駿一 日本原子力研究所
桧木 幹夫 関西電力株式会社
吉田多摩夫 東京水産大学
児玉 勝臣 科学技術庁
赤岩 昭滋 運輸省

 当委員会は、「むつ」の総点検・改修にあたって、圧力容器上蓋を撤去しないで、圧力容器蓋部遮蔽改修工事を行うことについて、日本原子力船開発事業団から別添資料に基づき説明を聴取し、検討を行った。

 その結果、圧力容器上蓋を撤去しないで圧力容器蓋部遮蔽改修工事を行うことは可能であると判断する。

 なお、この工事は格納容器内で行うことになるので、工事にあたって予定されている作業者に対する作業の習熟、現場における作業管理等には特に留意することが必要である。


(別添)

圧力容器蓋部遮蔽改修工事について

昭和53年5月8日
日本原子力船開発事業団

1 序言

 圧力容器蓋部遮蔽改修工事について、格納容器内の作業性を考慮に入れて、圧力容器上蓋を一時撤去して船外に搬出し、建屋内において、圧力容器蓋部に遮蔽体を設置することを計画していたが、諸般の事情により、圧力容器上蓋を撤去しない状態で本作業を実施することについて検討を行った。

2 圧力容器蓋部遮蔽体

2-1 設置の目的

 本遮蔽体は圧力容器と1次遮蔽体の間の円環状空隙部から漏洩する速中性子を遮蔽するために設置する。

2-2 構造及び材料

 遮蔽改修にあたっては、圧力容器上蓋の鉛遮蔽体上部に水素化ジルコニウムの遮蔽体を設置し、また、制御棒駆動装置支持胴の外周に蛇紋コンクリートの遮蔽体を設置することとする。

 その構造を改修前のそれと比較して図-1に示す。

 水素化ジルコニウム遮蔽体(総重量約3トン)は成形された水素化ジルコニウムをステンレス鋼のケースに入れて作られたブロック(総数約200個、ブロック1個あたり最大重量約20㎏)からなり、それを組み合せて上下二層に配列し、ブロックの間隙が上下で相互にかくれるよう配慮されている。この遮蔽体の構造は図-2に示すとおりである。

 ブロックの表面は隣接するブロック間の間隙を最少にするために精度よく仕上げる。遮蔽ブロック全体は、図-1に示すように鉛遮蔽体の上に円筒状に組み立てられ、周囲と上部を支持金具により固定し、船体の動揺、振動に耐えられる構造になっている。

 蛇紋コンクリート遮蔽体は、鉄製ケースに蛇紋コンクリートを充填したブロックからなり、制御棒駆動装置支持胴の外周に固定されている。

2-3 遮蔽効果

 圧力容器と1次遮蔽体の間の空隙部から漏洩する速中性子は、圧力容器フランジ部遮蔽体により一部減速・吸収されるが、残りの中性子は拡散して鉛遮蔽体及びフランジ部遮蔽体の上面に達する。この中性子は今回設置する圧力容器蓋部遮蔽体によって遮蔽される。

 水素化ジルコニウム遮蔽体は、中性子線量率を減少するのに必要な厚さとしている。遮蔽性能を確保するためにはブロック間の間隙を極力少なくするように配慮する。

 蛇紋コンクリート遮蔽体は、制御棒駆動装置支持胴と上部一次遮蔽コンクリートの間の空間部から漏洩する中性子を遮蔽している。

3 圧力容器蓋部改修工事

3-1 施工内容

 圧力容器蓋部の遮蔽改修をするため、次のような工事を予定している。

図-1 遮蔽改修前後の圧力容器蓋部構造比較

(1) 圧力容器蓋部遮蔽体支持構造の補強

 圧力容器蓋部に水素化ジルコニウム遮蔽体を設置するため支持構造を補強する。蛇紋コンクリート遮蔽体を制御棒駆動装置支持胴に取り付けるための支持構造を新設する。

(2) 圧力容器ベント管の改造

 水素化ジルコニウム遮蔽体を設置するのにベント管止め弁が支障になるため、同弁をベント管の上部に移設する。

(3) 圧力容器蓋部遮蔽体の設置

 水素化ジルコニウム遮蔽体を鉛遮蔽体の上部に精度良く配置固定する。

 蛇紋コンクリート遮蔽体は、制御棒駆動装置支持胴に取り付けられる。

図-2 圧力容器蓋部遮蔽体(水素化ジルコニウム)のブロック構造図

3-2 施工上の措置

 圧力容器上蓋を撤去しないで遮蔽体を設置するには、次の措置が必要である。

(1) 事故の防止等

 格納容器内において作業するため、作業姿勢、作業空間等が制限されるので作業効率が悪い。

 また、工具、ブロック等の落下事故の防止ならびに工事にあたって取り出し、取り付けを行う機器の損傷を防止するため十分な措置を講じるとともに作業者に対する作業の習熟を図り、作業管理を徹底する。

(2) 圧力容器の維持管理

 圧力容器蓋締付用スタッドボルトを高温締付から低温締付に変更する。

4 結言

 以上の検討結果から圧力容器上蓋を撤去しないで、圧力容器蓋部遮蔽改修工事を実施することは可能である。



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