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東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号及び6号原子炉施設の変更)について(答申)


52原委第753号
昭和52年12月13日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

昭和52年9月13日付け52安(原規)第260号(昭和52年12月1日付け52安(原規)第347号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については、適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のおとりであり、適合しているものと認める。


(別添)
昭和52年12月3日
   原子力委員会
委員長 熊谷 太三郎 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号及び6号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和52年9月13日付け52原委第544号(昭和52年12月1日付け52原委第745号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


Ⅰ 審査結果

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号及び6号原子炉施設の変が)に関し、同社が提出した「福島第一原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和52年8月30日付け申請及び昭和52年11月18日付け一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容

1 原子炉格納施設の変更(1号、2号及び3号原子炉)

 原子炉格納施設に可燃性ガス濃度制御系を設置する。

2 固体廃棄物の廃棄設備の変更(3号原子炉)

 地下使用済樹脂貯蔵タンク及び地下廃スラッジ貯蔵タンクを設置する。

3 熱的制限値の変更(6号原子炉)

 炉心熱特性評価方法として従来の最小限界熱流束比に代え最小限界出力比による熱的制限値を採用する。

4 再循環流量制御方式の変更(6号原子炉)

 冷却材再循環流量制御方式を流量制御弁方式から、再循環ポンプ速度制御方式に変更する。


Ⅲ 審査内容

1 原子炉格納施設の変更

 本変更は、原子炉格納容器内の可燃性ガスの発生源として、冷却材喪失事故後における非常用冷却水の放射線分解をも考慮して、これら可燃性ガス濃度を余裕をもって制御するため、可燃性ガス濃度制御系を設置するものである。

 本系統は、冷却材喪失事故が発生した後に原子炉格納容器内雰囲気中の水素ガス濃度を4vol%以下あるいは酸素ガス濃度を5vol%以下に維持するように設計される。

 水素又は、酸素ガスの燃焼限界に関する各種の実験結果によれば、水素又は酸素ガス濃度のいずれか一方が前述の制限値以下に維持されるならば、燃焼反応は生じないことが確認されている。

 可燃性ガス濃度制御系の容量を定めるに当たっては、十分な安全余裕をもった前提条件が用いられている。すなわち、放射線吸収に対する水素ガス及び酸素ガスの発生割合としては、水の放射線分解に関する各種の実験結果からみて十分な安全余裕をもった値であるG(H2)=0.5(分子/100eV)及びG(O2)=0.25(分子/100eV)が用いられている。

 これらの条件に基づき、冷却材喪失事故後における原子炉格納容器内可燃性ガス濃度の時間変化を検討した結果、本系統は、原子炉格納容器内の可燃性ガス濃度を制限値以下に十分抑制できると判断する。

2 固体廃棄物の廃棄設備の変更

 本変更は、3号原子炉建家に隣接して地下使用済樹脂貯蔵タンク及び地下廃スラッジ貯蔵タンクをそれぞれ1基設置するものである。

 これらの貯蔵タンクは、それぞれ約140m3及び約300m3の容量を有し、ステンレス鋼で製作される。これらの貯蔵タンクは、発生推定量の約5年分を貯蔵することができる能力を有しており、特に問題がないものと判断する。

3 熱的制限値の変更

 新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴い、熱水力特性及び過渡現象解析結果の検討を行って熱的制限値の妥当性を確認した。

(1) 熱水力特性

 本変更は、新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴うものであるが、この手法の詳細は、原子炉安全専門審査会が採択した「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について」(炉心熱設計検討報告書)に記載のとおりである。

 本原子炉の熱水力特性を同検討報告書に基づいて評価した結果、問題はないと判断する。

(2) 過渡現象解析

 通常運転時の熱的制限値を定めるため、過渡現象解析に基づき最小限界出力比(以下MCPRという)の変化(以下ΔMCPRという)について評価し、また解析条件等の変更に伴う原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性についても評価した。

 その結果、本原子炉において最大のΔMCPRを生ずる過渡変化は、早期炉心については給水加熱喪失、また平衡炉心末期については発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不作動)であるが、通常運転時のMCPR制限値をそれぞれ1.19及び1.26とすることにより、過渡変化時のMCPRは限界値1.07を下回らない。原子炉圧力が最大となるのは発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不作動)であり、早期炉心での最大圧力は約79.8㎏/㎝2gまた、平衡炉心末期での最大圧力は約80.1㎏/㎝2gである。これらの値は、設計圧力の1.1倍の圧力(96.7㎏/㎝2g)を下回っている。

4 再循環流量制御方式の変更

 本変更は冷却材再循環流量制御方式を流量制御弁方式から再循環ポンプ速度制御方式に変更するものである。

 本変更に伴い、負荷追従特性は低下するが、再循環ポンプ速度制御方式はすでに先行炉において十分な運転実績を有しており、また、チャンネル水力学的安定性、炉心安定性及びプラント安定性について解析した結果から十分な安定性を有していることを確認した。

 以上のことから本変更は問題ないと判断する。


Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和52年9月19日第163回審査会において審査を開始し、同年12月3日第165回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。


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