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東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置について(答申)


52原委第497号
昭和52年8月23日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和50年4月1日付け50原第2302号(昭和52年7月19日付け52安(原規)第212号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に適合しているものと認める。

 なお、各号の基準の適合に関する意見は、別紙のとおりである。


(別紙)

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準の適合に関する意見

(平和利用)

1 この原子炉は、商業発電のために用いるものであって、平和の目的以外に利用されるおそれがないものと認める。

(計画的遂行)

2 この原子炉の設置は、「原子力開発利用長期計画」に定める方針にのっとっており、将来のエネルギー供給の安定を図るうえで十分な意義を有するものであると考えられるので、この原子炉の設置がわが国の原子力開発および利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないものと認める。

(経理的基礎)

3 この原子炉の設置に要する資金は、自己資金、社債、日本開発銀行を含む国内金融機関からの借入れ等により調達する計画になっており、申請者の総合的経理能力および原子炉設置のための資金計画からみて、原子炉を設置するために必要な経理的基礎があるものと認める。

(技術的能力)

4 別添の原子炉安全専門審査会の審査結果のとおり、この原子炉を設置し、かつ、その運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があるものと認める。

(災害防止)

5 原子炉安全専門審査会の審査の結果のとおり、この原子炉の位置、構造および設備は、核原料物質、核燃料物質によって汚染された物または原子炉による災害の防止上支障がないものと認める。

(別添参照)

(別添)

昭和52年8月12日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置に係る安全性について

 当審査会は、昭和50年5月20日付け50原委第147号(昭和52年7月19日付け52原委第446号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。

 T 審査結果

 東京電力株式会社柏崎・刈羽原子力発電所の原子炉の設置に関し、同社が提出した「柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書」(昭和50年3月20日付け申請、昭和52年7月12日付け一部補正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

 U 申請の概要

 本原子炉施設の設置に関する立地条件、安全の基本設計等について、東京電力株式会社が提出した原子炉設置許可申請書及び同添付書類の概要は、次のとおりである。

1 立地条件

1.1 敷地及び社会環境

(1) 原子炉施設を設置する敷地は、新潟県の日本海岸のほぼ中央に位置し、柏崎市及び刈羽郡刈羽村にまたがっており、その面積は約420万uである。

 敷地付近は、一般に荒浜砂丘と呼ばれ、新潟県西部に広く分布する東頚城丘陵が日本海に没する地点に位置している。敷地は、日本海に面した砂丘状の丘陵地で、海側の中央部は、裸地となっており、周縁部は、松を主体とする林で覆われている。

 敷地の形状は、海岸線方向約3.2km、奥行約1.4kmの半楕円形をなしている。敷地前面の海岸線は、北東−南西の直線状を呈し、また、背面境界の稜線も海岸線と平行した頂高60m前後のなだらかな丘陵地となっている。

(2) 原子炉建家関係の敷地は、敷地南側の丘陵が標高5mに造成される。原子炉炉心の中心から敷地境界までの距離は、南南西方向約800m、北北東方向約2,400m、東南東方向約1,100mであり、最短距離は、ほぼ南南西方向で約790mである。

 また、敷地前面の海域には、南北2本の防波堤が設置される。

(3) 敷地周辺の人口は、建設地点を中心とする半径30km以内で約459,000人、10km以内で約73,000人、5km以内で約15,000人である。

 また、敷地近傍の集落としては、炉心から南西方向約1.5kmに柏崎市の荒浜(人口約1,500人)、南東方向約1.9kmに刈羽村の下高町(人口約330人)、東南東方向約1.9kmに割町新田(人口約270人)があり、半径3km以内には計8集落、5km以内には計46の集落がある。

(4) 敷地付近の公共施設としては、半径5km以内に小学校11、中学校5、保育所5があり、これらの生徒、保育児数は、約2,400人となっている。

(5) 敷地周辺の柏崎・刈羽両市村の産業関係就業者数は約45,500人で、その内訳は、農業就業者が約22%、建設業、製造業就業者が約38%、卸・小売業、サービス業等就業者が約40%である。

 主たる農産物は米であり、次いで大根、馬鈴薯等となっている。また、養鶏、養豚、乳牛飼育等の畜産も行われている。

 海産物としては、カレイ類、ヒラメ、ブリ類、タイ類、カニ類、イカ類、海藻類等が柏崎港等に水揚げされている。

 主な工業は、機械、金属、食料品製造等である。

 なお、発電所から約7kmの地点に小規模な石油加工工場があり、また、発電所に最も近い石油工業地帯としては、南西約35km〜40kmの地点に帝国石油、三菱化成、信越化学等からなる上越・大潟・頚城地区石油工業地帯がある。

(6) 敷地に近い鉄道路線には、国鉄越後線(柏崎〜新潟)及び国鉄信越線(高崎〜長野〜直江津〜長岡)がある。

 主要な道路としては、敷地内に海岸線に沿って走る県道新潟寺泊柏崎線及びこれと越後線刈羽駅とを結ぶ刈羽停車場小丸山線がある。さらに、敷地の東側には国道116号線が国鉄越後線に沿って走っており、柏崎市内で国道8号線に結ばれている。

 なお、発電所設置に伴い敷地内の刈羽停車場小丸山線は廃止され、新潟寺泊柏崎線は、敷地境界に沿って敷地の内側に付け替えられることになっている。

(7) 敷地最寄りの港湾としては、発電所から南西約8kmに柏崎港があり、現在5,000トン級船舶の接岸が可能な岸壁の整備拡充が進められている。

 なお、発電所の建設資材及び重量物の陸揚施設として、敷地内の一角にけい船岸壁(3,000トン級)が設けられることになっている。

(8) 航空関係としては、敷地周辺に飛行場はなく、新潟空港までは約75kmである。また、敷地の東約5km及び西約20km離れた位置の上空に新潟〜名古屋間及び新潟〜小松間を結ぶ国内線の航空路があり、敷地上空は、前者の保護空域となっている。

1.2 地盤

1.2.1 地質

 原子力発電所敷地は、日本海と柏崎平野にはさまれた標高80〜100mの丘陵(西山丘陵)南端部の砂丘地に位置している。敷地周辺地域では北東から南西に連続する西山丘陵、中央丘陵が目立ち、中央丘陵の東方には長岡平野が、また、その西方には柏崎平野が広がっている。

 敷地周辺地域には、新第三紀層(下位から寺泊層、椎谷層、西山層、灰爪層、魚沼層群の塚山層)及び第四紀層(下位から魚沼層群の小国層、青海川層、安田層、番神砂層、雪成砂層、沖積層)の分布が認められ、新第三紀層は丘陵地域に、第四紀層は平野地域に分布する傾向がある。新第三紀層各層の関係は整合であるが、第四紀層の各層間はいずれも不整合関係にある。

 敷地内は砂丘砂である新期砂層に覆われているため、部分的に安田層、番神砂層が地表で認められるにすぎない。敷地内で実施されたボーリング調査によれば、地下の新第三紀層は敷地北部の大湊地区に椎谷層、敷地ほぼ全域に西山層、敷地南部の荒浜地区には灰爪層の分布が確認されている。それらの新第三紀層は第四紀の安田層に不整合に、さらに安田層は番神砂層に不整合に覆われていることが確認されている。西山層上限の侵食面、安田層上限の侵食面とも小起伏及び独立丘の存在を示し、安田層及び番神砂層はそれぞれ西山層上限面、安田層上限面を埋積している。本原子力発電所の原子炉複合建家の基礎岩盤は、西山層中部層及び上部層とされている。

 敷地内及びその近傍に分布する主要な新第三紀層・第四紀層の岩相の概要及び形成された時代は、以下のとおりである。

(1) 椎谷層:泥岩を主とするが、上部層、下部層に2分している。下部層は砂岩泥岩の互層、上部層は塊状泥岩から成る。中新世後期の地層である。

(2) 西山層:一般に塊状泥岩が卓越しているが、上部層、中部層、下部層に3分している。下部層は塊状泥岩、中部層は塊状泥岩中に粗粒凝灰岩の薄層や縞状泥岩が含まれ、上部層では塊状泥岩から部分的に凝灰岩の薄層を含む砂質泥岩に変化している。鮮新世前期の地層である。

(3) 灰爪層:凝灰質泥岩、酸性凝灰岩から成る。鮮新世後期の地層である。

(4) 魚沼層群:塚山層、小国層とも一般に軟質な礫岩・砂岩・泥岩から成る。鮮新世〜洪積世にかけての地層である。

(5) 安田層:標準的には下部層は礫質及び砂質の軟質泥岩であり、上部層になるにつれて泥質堆積物に変化する。しかし、敷地内では堆積環境の変化がかなり認められ、時間的に同時に堆積してはいるが、場所によって堆積物の岩相が変わっていることが多い。洪積世後期の地層である。

(6) 番神砂層:中粒〜粗粒砂から成り、少量のシルト及び粘土を含む。洪積世後期の半固結層である。

(7) 新期砂層:沖積層のうち、海岸沿いに堆積している細粒〜中粒砂から成る堆積物であって、砂丘砂と考えられている。下部に褐鉄鉱、有機物の薄層が認められる。

 敷地周辺の地質構造は、北東−南西方向に軸を有する褶曲構造が顕著であり、背斜構造部が丘陵、向斜構造部が沖積平野となって地形と地質構造が調和している。この褶曲構造は背斜部が特に著しく発達し、いわゆる箱型褶曲の形態を示している。

 石油探鉱資料により、西山丘陵地域、中央丘陵西縁部、長岡平野の信濃川左岸部等に地下潜在断層を推定している。これら断層の一部は、地形上北東−南西方向のリニアメントが見られる場所と一致する。各断層とも地表部で断層面の露頭は見られないが、地層の急傾斜や褶曲によって断層の潜在性が推定し得る地域もあるとしている。

 新第三紀層の構造を支配している褶曲活動は、信濃川左岸部の段丘の屈曲から第四紀以降も続いていることが推察される。さらに敷地周辺の水準測量結果から近年の活動について考察し、近年の活動はあるが緩やかなものであるとしている。

 敷地内においては大湊地区に北東−南西方向の背斜軸が、荒浜地区に同方向の向斜軸が存在するとしている。この向斜軸部は、西山丘陵に推定されている真殿坂断層の延長部にあたっている。

 原子炉複合建家は、この向斜軸の北側に位置し、基礎岩盤の西山層は一般に約40°南に傾斜している。荒浜地区の試掘坑内調査により西山層中に小さな断層がいくつか認められたが、そのほとんどは断層面が密着していて、強度上問題とはならないとしている。また、断層面の開離する断層もいくつか存在することから、試掘坑内小断層を詳細に調査し連続性及び活動時期を把握している。

 安田層及び番神砂層の年代は諸研究資料、微化石分析等を参考とし、南関東に発達する下末吉層と安田層が同一年代、同じく南関東に発達する小原台段丘ないしは三崎段丘の堆積物と番神砂層がほぼ同一年代となるとしている。

 番神砂層を切る断層や番神砂層中の小断層が敷地内にいくつか認められるが、敷地内で最も顕著な中央部の断層は詳細調査によって地すべり性のものとしている。また、番神砂層中の小断層は、露頭の調査から水平方向の引張応力によって生じた小断層であるとしている。同様な現象の露頭が敷地近傍に認められるが、いずれの露頭も敷地内のものと同様な成因によるものとしている。

1.2.2 岩盤、岩石物性

 西山層泥岩の物性調査のため、ボーリングコアにより得た試料を用いての室内諸試験、試掘坑内より得た供試体を用いての室内諸試験、試掘坑内での原位置諸試験を実施している。泥岩の極限支持力は、三軸圧縮試験の結果を用いて算定すると、−40〜−140mでは約100kg/cm2、載荷試験では約62〜85kg/cm2とされ、原子炉複合建家の接地圧(常時約7kg/cm2、地震時約14kg/cm2)と比較して十分な余裕を有しているとしている。また、西山層泥岩のクリープ試験を実施し物性値を把握している。

 地震力が加わった場合の基礎岩盤の安定性については、原位置での岩盤試験を実施し、十分安定性が確保できるとしている。

 西山層泥岩は、岩質差による強度特性の変化は概して小さく、一般に深くなるにつれて強度特性が大きくなる傾向がある。この変化を確認したボーリングコアによる圧縮試験値のばらつきも、特に著しいものではなく一般に認められる程度のものとしている。また、岩盤物性のばらつき分布幅が建家基礎と比較してどの程度であるかを試掘坑内において調査し、不等沈下等への影響を考察している。その結果、原子炉施設設置後の沈下は設計上十分対応できるものであるとしている。

1.3 地震

 原子炉設置位置を中心に半径200kmの範囲の地震活動性について、「日本被害地震総覧」等により調査を行い、敷地付近の被害地震は、信濃川流域、粟島近辺から高田沖までの日本海々底及び高田・直江津付近から長野盆地にかけての地帯等に発生しているとしている。各地域の主な地震として、信濃川流域には越後三条の地震(1828年、M=6.9)、日本海々底には越後高田の地震(1614年、M=7.7)及び新潟地震(1964年、M=7.5)、高田・直江津付近には越後南西部の地震(1502年、M=6.9)、長野盆地付近には善光寺地震(1847年、M=7.4)がある。

 これらの地震により、新潟県では、信濃川下流域の新潟平野及び高田・直江津付近において顕著な地震被害を受けている。柏崎付近でもいくつかの被害記録がみられるが、いずれも信濃川流域または高田・直江津付近の地震の余波と考えられるものであって被害の中心地であったことはないとしている。

 上記の各地震についての各種の計算式等による計算結果及び記録に残されている地震被害状況から推定した最高の震度階(烈震、震度階Y)等から過去の地震によって敷地基盤に生じた最大加速度は、200Galを超えなかったと推定している。

 また、敷地周辺の地質構造の考察により、長岡平野の信濃川左岸部の地下に活断層を推定し、その活動によってマグニチュード6.9の地震が発生することを想定している。この場合、敷地基盤の最大加速度は各種の計算式によって、最大約220Galになるとしている。

 以上のことから、設計用地震加速度を300Galとしている。

1.4 気象

 敷地は、新潟平野の南端に位置し、西側は、日本海に面し、東側及び南側には丘陵地帯があり、さらに、内陸には越後山脈がひかえている。

 この地方の気候区分は、裏日本気候区域の雪国に属し、降水量は、年間2,500mm前後で、冬に多く夏に少ない。気温の年平均値は、約13℃である。また、この地方は、海洋に面しているため気温の日変化は、比較的少ない、風向は、南東から南及び西から北にかけてが多く、南西寄り及び北東寄りの風向は少ない。

 新潟地方気象台の観測記録によれば、気象極値は、最低気温−13.0℃、日最大降水量165.0mm、最大瞬間風速44.5m/sである。一方、高田測候所では、最低気温−13.2℃、日最大降水量160.3mm、最大瞬間風速34.8m/sである。

 なお、柏崎農業気象観測所における積雪深さの最大値は、194cmである。

 敷地周辺の風については、排気筒高さ付近の風を代表する敷地内丘陵観測点(以下B点という)の地上高20m、標高100m及び敷地付近の風を代表する敷地内の平地観測点(以下A点という)の地上高10m、標高20mにおける1年間の観測結果によると、風向は、B点において年間を通じ南東から南寄りの風と、西から北寄りの風が多い。特に、南々東の風が卓越しており、その出現頻度は、約15%である。また、A点においては、年間を通じ、南東、東南東の風が卓越し、それらの出現頻度はそれぞれ約15%、約14%である。

 風速については、B点の平均風速は約5.1m/s、A点の平均風速は約3.6m/sである。

 なお、静穏状態(風速0.4m/s以下の時)の年間出現頻度は、B点で約1.6%、A点で約3.5%であり、その継続時間は、1時間がそれぞれ約85%、約83%と多くなっている。

 大気の安定状態については、日射量(A点にて観測)、雲量(柏崎市内にて観測)及び風速(A点にて観測)の観測結果を用いて英国気象局方式を基に分類した結果、年間を通じてD型の出現頻度が約51%と多く、次いでB、C型となっている。拡散の少ないF型(G型も含む)の出現頻度は、年間でテ10%であり、かつ、陸側へ風が吹く割合は11%程度であるため、F型で、かつ、陸側に風が吹く気象条件の発生割合は、年間1.1%程度である。なお、F型の継続時間は、1時間が最も多く、その出現頻度は、約38%であり、最高継続時間は、8時間で、その出現頻度は、約1.8%である。

 大気温度の鉛直分布については、B点の標高170m(地上高88m)、標高140m(地上高58m)及び敷地内丘陵観測点(E点)の標高27m(地上高20m)におけるそれぞれの大気温度及び温度差の観測の結果、標高140mに対し標高170mがてい増側(逆転)にある頻度は、約39%であり、標高27mに対して標高140mがてい増側にある頻度は、約35%である。

1.5 水理

(1) 敷地近傍の河川としては、敷地背面の平野部を北東から南西に流れる別山川と敷地南西約5kmで別山川を合流して日本海にそそぐ鯖石川がある。さらにこれより南西約3kmに柏崎市街地を通って日本海にそそぐ鵜川がある。また、東方約20kmに信濃川がある。

 敷地内の表流水としては、北部の大湊寄りに湧水が数か所存在しているが、これら全体の湧水量は5〜15l/s程度であり、その大半は獄ノ尻地区である。

(2) 日本海の海流は、日本列島沿いに北上する暖流系、いわゆる対馬暖流と大陸側を南下する寒流からなっており、暖流は寒流の盛衰に左右され、冷水域の存在と規模の大小によって沿岸流に複雑な影響を与えている。敷地前面の流況は、敷地中央沖合1km地点の水深約2mの観測記録によると、流向の出現頻度は、海岸線に平行な方向が84%と卓越しており、また、流速は、20cm/s以下の出現頻度が71%を占めている。敷地前面沖合1km地点の水深約2.5mの観測記録によれば、海水温度は、8月が最も高く、月平均で26.6℃、最高が28.9℃、3月が最も低く月平均9.2℃最低は6.2℃となっている。

 敷地前面の波浪については、観測記録によれば、有義波高1m以下が71%、2m以下が89%、3m以下が95.5%の出現率であり、高波浪の出現は、冬期に卓越している。また、観測された最大有義波高は5.82m、最大波高は8.87mである。一方、波向の出現率は西北西が44%と最も多く、次いで北西が24%、西が22%と海岸線にほぼ直角な北西ないし西が卓越している。

 潮位については、柏崎港における観測記録によれば、最高潮位は、基準面+1.20m、最低潮位は、基準面−0.23m、平均潮位は、基準面+0.21mである。

 また、土木学会編集の「新潟地震震害調査報告書」によると、新潟地震時の柏崎港における潮位は、基準面+1.8mである。

(3) 本原子炉施設の淡水使用量は、約1,000m3/dで、信濃川から取水した淡水及び海水淡水化装置により精製された淡水が使用される。なお、生活用水及び工事中の用水は、柏崎市上水道から供給を受ける。

 復水器冷却用海水及び補機冷却用海水の取水量は、約78m3/sで、敷地前面に築造する防波堤内側から取水され、復水器及び補機冷却水系統等を通過した冷却水は、放水管及び放水路蓋渠を経て防波堤外の放水口より放出される。

2 原子炉施設

2.1 概要

 本原子炉施設は、熱出力約3,300MW(電気出力約1,100MW)の低濃縮ウラン、軽水減速、軽水冷却型(沸騰水型)原子炉施設であり、建設中の福島第一原子力発電所6号炉、福島第二原子力発電所1号炉とほぼ同じ設計である。

 発電所の全体配置は、敷地南側丘陵地帯の一部を標高約5mに整地造成して、海岸線にほぼ平行にタービン建家が設置され、タービン建家の東側に原子炉複合建家、南側に主変圧器が設置される。中央制御室は、原子炉複合建家内に設けられる。原子炉複合建家の北側には、サービス建家が配置され、発電所本館入口が設けられる。原子炉複合建家、タービン建家等の主要な構築物の基礎は、直接またはコンクリートを介して岩盤上に設置される。

 排気筒は、原子炉複合建家の北東側に地上高150mの鋼製または鉄筋コンクリート造りのものが設置される。

 発電所前面海域の南側及び北側に防波堤が構築され、その他敷地内には、開閉所、固体廃棄物貯蔵庫、海水淡水化装置建家、海水機器建家、水処理建家等が設けられる。

 原子炉施設は、原子炉、原子炉冷却系、工学的安全施設、タービン系及び各種補助系からなる。

 原子炉冷却系は、原子炉圧力容器、再循環系、主蒸気系、復水・給水系等から構成される。給水系により原子炉圧力容器に供給される給水は、再循環系の水と合流して炉心を通過し、燃料で発生する熱により加熱されて蒸気になる。炉心で発生した蒸気は、気水分離器及び蒸気乾燥器を経て主蒸気管4本によりタービンに送気される。

 高圧タービン及び低圧タービンを駆動した蒸気は、主復水器で冷却され復水になり、6段ある給水加熱器で加熱され、給水ポンプで昇圧されて再び原子炉圧力容器に戻る。タービンは、発電機を駆動し、約1,100MWの電力を発生する。

 2ループからなる再循環系は、原子炉圧力容器から冷却材の一部を取り出し、再循環ポンプで昇圧してジェットポンプの駆動流体として再び原子炉に戻し、原子炉冷却材を強制的に循環させる役割を果たす。

 原子炉の出力制御は、制御棒位置の調整及び再循環流量の調整によって行われるが、原子炉を停止させる系統としては、制御棒及びほう酸水注入系がある。

2.2 耐震設計

 原子炉施設は原則として剛構造に設計され、原子炉複合建家等の重要な建物の基礎は原則として岩盤で直接支持される。

 原子炉施設は、安全上の重要度からA、B、Cの3クラスに分類され、それぞれの重要度に応じた耐震設計が行われる。その際に、下位のクラスの施設の破損が上位のクラスの施設の波及的事故を引き起こさないように配慮することとしている。

 耐震設計法としては、建築基準法に基づく震度法による静的解析が全施設に対し用いられ、Aクラスの施設についてはさらに動的解析が併用され、動的解析と静的解析から求まる地震力のいずれか大きい方が設計に用いられる。また、Bクラスの機器・配管系で共振のおそれのあるものは動的検討が行われる。

 静的解析に用いる静的震度は以下のようにされている。


ここでCHとは、建築基準法に示される基準震度0.2に高さ方向の割り増しを行った震度に建設省告示による地盤の種別及び構築物の構造種別によるてい減率を乗じた水平震度を意味する。ただし、鉛直方向の震度では高さ方向については一定としている。

 動的解析には、地震加速度300Galの設計用地震動が用いられる。この場合、鉛直方向については、静的解析の場合と同一の鉛直地震力が用いられる。

 静的・動的いずれの解析においても、水平地震力と鉛直地震力は同時に不利な方向に作用するものとしている。

 なお、Aクラスの施設のうち安全対策上特に緊要なものに対しては、基盤における最大加速度が450Galの地震動に対しても、その機能が保持できることを確認することとしている。

2.3 原子炉及び炉心

2.3.1 燃料

 炉心燃料は、63本の燃料棒と1本のウォータ・ロッドを8行8列の正方形に配列した燃料集合体を1単位として、764体の燃料集合体で構成される。

 初装荷用燃料集合体は、平均濃縮度約2.2wt%、取替燃料集合体は、平均濃縮度約2.7wt%のものが用いられる。

 炉心の過剰反応度の抑制と軸方向出力分布を平坦化するために、燃料集合体の一部に中性子吸収物質であるガドリニア(Gd2O3)を含む燃料棒数本が使用される。

 燃料材は、上記の各濃縮度の二酸化ウラン及びガドリニアを含む二酸化ウランを理論密度の約95%に焼結したペレットが用いられる。

 ペレットの入った被覆管は、その両端を端栓で溶接により密閉し、被覆管とペレットの間隙には、1気圧のヘリウムが充填される。

 燃料集合体を構成する燃料棒のうち8本は、燃料棒を支持する上下の燃料支持板を結びつける役割を果たし、ウォータ・ロッドは、軸方向に7個のスペーサを保持する。

 ウォータ・ロッドには、燃料ペレットは装荷されず、その上部及び下部の側面に穴が設けられ、内部を冷却材が通過する。

 燃料棒及びウォータ・ロッドは、すべて独立して軸方向に自由膨張ができる構造とされる。

 燃料集合体の周囲は、チャンネルボックスで囲まれる。チャンネルボックスは、燃料集合体の冷却材流路を定めるほか、制御棒のガイド及び制御棒駆動時に燃料との機械的干渉を防ぐ役割を果たす。

2.3.2 圧力容器内部構造物

 圧力容器内部構造物は、炉心燃料を支持する炉心支持構造物と内部構造物で構成される。炉心支持構造物は、炉心シュラウド、上部炉心支持格子板及び下部炉心支持板、制御棒案内管からなり、内部構造物は気水分離器、蒸気乾燥器、ジェットポンプ、給水スパージャ、炉心スプレイ管等からなる。

 炉心シュラウドは、ステンレス鋼の円筒で、炉心内を上向きに流れる流路と、その外側の環状部を下向きに流れる再循環流路とを分離するものである。

 上部炉心支持格子板は、炉心シュラウド上部に固定し、燃料集合体の横方向の支持と案内の役目をする。また、炉心核計装管及び起動用中性子源の上端を支持する。

 下部炉心支持板は、シュラウド下部に固定し、制御棒案内管、燃料支持金具及び燃料、炉内核計装案内管及び起動用中性子源の横方向の支持をする。

 制御棒案内管は、制御棒駆動機構ハウジングの上部から上方に伸び下部炉心支持板にはめ込み制御棒の案内をする。

 気水分離器は、炉心で発生した気水混合流に回転運動を与え、遠心効果によって水と蒸気を分離させる。

 蒸気乾燥器は、多層波形板からなり、蒸気の湿分をドレンとして分離する。

 ジェットポンプは、原子炉圧力容器内のシュラウドと原子炉圧力容器の間の環状部に20個配置され、再循環系と連結され、冷却材を炉心に循環させる。また、ジェットポンプの混合室の高さは、静水頭で炉心部の約2/3を冠水できるように設計される。

 給水スパージャは、原子炉圧力容器内壁に沿って左右に分岐した多孔ヘッダ6本からなり、それぞれ6本の給水ノズルに接続され、原子炉に入った給水は、半径方向内側に放出される。

 炉心スプレイ管は、高圧炉心スプレイ及び低圧炉心スプレイからなり、それぞれ原子炉圧力容器のノズル部から入り、各々独立に原子炉圧力容器内壁に沿って左右に分岐し、上部シュラウド内に取り付けられたスパージャに接続される。スパージャのノズルの方向は、適正なスプレイ分布をもつように組合わされる。

2.3.3 反応度制御系

 反応度制御系は、制御棒及び制御棒駆動系とほう酸水注入系で構成される。

 制御棒は、ボロン・カーバイド粉末を充填した中性子吸収棒をステンレス・シースで十字形に配列したものである。制御棒は185本あり、それぞれ4体の燃料集合体の中央に炉心全体にわたって一様に配置される。

 それぞれの制御棒の下端鋳造物には、落下速度リミッタが取り付けられ、制御棒の自由落下速度は、0.95m/s以下に制限される。また、起動、停止時に操作される制御棒の最大反応度価値は、制御棒価値ミニマイザにより0.015Δk以下に制限される。

 制御棒駆動系は、制御棒駆動機構と制御棒駆動水圧系で構成される。制御棒駆動機構は、水圧駆動ピストン形式であり、制御棒駆動機構は、カップリング部分が制御棒側のソケットにはめ込まれることにより、制御棒と結合される。

 また、制御棒の挿入位置は、中央制御室に表示されるようになっている。制御棒駆動機構の下部には、ハウジング支持機構が設けられる。

 制御棒駆動水圧系は、制御棒の挿入、引抜、スクラム動作に必要な水圧及び流量を供給するため制御棒駆動水ポンプ、水圧制御ユニット等で構成される。水圧制御ユニットは、制御棒駆動機構1個につき1組が設けられる。

 制御棒の駆動は、24ノッチに分割され、通常の引抜速度は、76±15mm/sに設定される。スクラム動作は、アキュムレータの圧力及び原子炉の圧力によって行われるが、スクラム時間は、全ストロークの90%挿入で3.5秒以下に設計される。

 ほう酸水注入系は、ほう酸水貯蔵タンク、ポンプ、テストタンク等で構成され、五ほう酸ナトリウム溶液は、その析出を防止するため15℃以上の温度で貯蔵される。

 ほう酸水注入系は、制御棒の挿入不能により原子炉の低温停止ができない場合に、五ほう酸ナトリウムを炉心底部から注入し、毎分0.001Δk以上の負の反応度を与え、原子炉を徐々に低温停止し、低温状態で実効増倍率を0.95未満に維持できる能力をもつように設計される。

2.4 核熱設計及び動特性

2.4.1 核熱設計

 核的制限値として、最大過剰増倍率は全サイクルを通じて約0.14ΔK以下に保たれ、制御棒は、炉心の最大過剰増倍率を十分制御できるように設計される。

 全制御棒の反応度制御容量は、低温時で約0.18ΔKである。さらに最大反応度価値を持つ制御棒1本が完全に引抜かれた場合でも、残りの制御棒により、実効増倍率は、常に0.99未満となるように設計される。

 本原子炉の燃料の設計基準は、通常運転時及び運転時の異常な過渡変化時にも、燃料の許容設計限界に至らないこととしている。

 このため、熱的制限値として、通常運転時の最大線出力密度を44.0kW/m及び最小限界出力比(実際の出力に対する限界出力の比の最小値、以下MCPRという。)を2種類のスクラム反応度曲線の適用期間に応じて第1サイクルより第3サイクル末期までの期間及び第4サイクル以降の各サイクルについて、サイクル初期から、サイクル末期より炉心平均燃焼度でみて1,000MWd/t相当分さかのぼった時点に至るまでの期間(早期炉心と定義する)は、1.19以上、その以外の期間(平衡炉心末期と定義する)は1.26以上としている。

 定格出力運転時における燃料被覆管表面最高温度及び燃料中心最高温度は、約380℃及び約1,830℃である。

2.4.2 動特性

 本原子炉は、ドップラ効果、冷却材のボイド効果等により負の出力反応度係数をもち、制御棒の操作等に起因する反応度の外乱に対して、自己制御性を有する。

 反応度帰還による原子炉の安定性は、炉心寿命を通じて十分に維持できるように再循環流量による出力制御範囲が制限される。

 また、キセノンに起因する中性子束の空間振動については、キセノンの空間振動を十分抑制できるように、定格出力時の出力反応度係数が定められる。

2.5 原子炉冷却系

2.5.1 原子炉圧力容器

 原子炉圧力容器は、円筒形の胴部に半球形の底部を付した鋼製容器に、半球形の鋼製上部蓋をボルト締めする構造であり、胴円筒部には、主蒸気出口、給水入口、再循環水出入口等のノズルが、下鏡には、制御棒駆動機構及び炉内核計装装置のための貫通孔等が設けられる。

 原子炉圧力容器の母材は、原子力発電用マンガン・モリブデン・ニッケル鋼板2種相当品及び原子力発電用鍛鋼品2種相当品の低合金鋼が用いられ、上蓋を除く内面は、腐食防止のためステンレス鋼及び高ニッケル合金鋼で内張りされる。

 原子炉圧力容器の設計圧力及び設計温度は、87.9kg/cm2g及び302℃である。

 なお、中性子照射による材料の機械的性質の変化を監視するため、原子炉圧力容器内に照射試験片が挿入される。

2.5.2 冷却材再循環系

 冷却材再循環系は、2つのループで構成され、それぞれ再循環ポンプ、流量制御弁、仕切弁等が設けられる。炉心を循環する冷却材のうち約1/3は、ステンレス鋼製の再循環回路配管へ取り出され、再循環ポンプで昇圧された後、流量制御弁、仕切弁等を通り、1ループあたり5本のステンレス鋼製配管を経て原子炉圧力容器に戻り、ジェットポンプの駆動流体となる。

 なお、再循環ポンプは、ポンプ動力が喪失した場合でも、ポンプ・モータの慣性定数が約5秒になるように設計される。また、流量制御弁の駆動速度は、通常、最大で全ストロークに対し約10%/sに設計され、油圧制御装置の故障時にも、最大で全ストロークに対し約18%/sに抑えられるように設計される。

2.5.3 主蒸気系

 主蒸気系は、原子炉圧力容器から高圧タービン入口まで、4本の炭素鋼配管により原子炉で発生した蒸気をタービンに導く系統であるが、その設計圧力及び温度は、87.9kg/cm2g及び302℃である。各主蒸気管には、主蒸気流量制限器、主蒸気隔離弁、主蒸気第3弁、逃がし安全弁、主蒸気隔離弁漏洩抑制系、タービン・バイパス系が設けられる。

 主蒸気流量制限器は、ベンチュリ型のノズルで主蒸気流量を定格流量の200%に制限するように設計される。

 主蒸気隔離弁は、4本の主蒸気管それぞれに直列に2個、計8個設けられる。

 逃がし安全弁は、原子炉格納容器内の主蒸気管に取り付けられ、吹出し蒸気は、排気管によりサプレッション・プール水面下に導かれる。型式は、バネ式(アクチュエータ付)で18個からなる。

 主蒸気隔離弁漏洩抑制系は、各主蒸気隔離弁が閉鎖したときの漏洩蒸気をサプレッション・プール及び原子炉建家内に導く配管及び弁等で構成される。

2.6 工学的安全施設

2.6.1 原子炉格納施設

 原子炉格納施設は、原子炉からの放射性物質の放散を抑制するためのもので、二重の防壁で形成される。第一の防壁は、原子炉格納容器で、原子炉、再循環ループ等を格納し、第二の防壁は、原子炉建家で、原子炉格納容器を完全に収納する。

@ 原子炉格納容器

 原子炉格納容器は、原子炉圧力容器、再循環ループ等を取り囲む円錐台形のドライウェル、円筒形のサプレッション・チェンバ及び鋼製ライナ付き鉄筋コンクリート基礎版で構成され、冷却材喪失事故時、ドライウェル内に放出された水と蒸気の混合物をサプレッション・チェンバ内のプール水中に導き、蒸気を凝縮し、ドライウェル内圧の上昇を抑制し、一方、放出された放射性物質を原子炉格納容器内に保留する機能を有する。

 原子炉格納容器に用いられる材料は、原子力発電用炭素鋼圧延鋼板4種相当品または圧力容器用鋼板4種相当品で、設計圧力は、ドライウェル、サプレッション・チェンバとも、内圧2.85kg/cm2g、外圧0.14kg/cm2g、設計温度はドライウェルが171℃、サプレッション・チェンバが104℃である。なお、原子炉格納容器は、常温、空気、設計圧力において、漏洩率が原子炉格納容器内空間部容積に対して0.5%/d以下になるように設計される。

 原子炉格納容器は、漏洩率が設計値以下に保たれていることを確認するための漏洩試験が定期的に行えるように設計され、また、格納容器の電気配線貫通部、エア・ロック、ベローズを使用した主要な配管貫通部等についても、個々に漏洩試験が行えるように設計される。

 格納容器を貫通する配管については、原子炉冷却材圧力バウンダリに接続されているか、または、原子炉格納容器内の空間に開口している配管については、原則として、原子炉格納容器内外で2個の隔離弁が設けられ、その他の貫通管には、原則として少なくとも1個の隔離弁が設けられる。

 原子炉格納容器の機能を補助するため、可燃性ガス濃度制御系及び不活性ガス系からなる格納容器内ガス濃度制御系と、格納容器スプレイ冷却系が設置される。これらの系は、非常用電源に接続される。

 可燃性ガス濃度制御系は、独立な2系統で構成され、1系統の処理量は、約255Nm3/hである。本系統は、冷却材喪失事故後30分以内に中央制御室より手動で起動され、水素と酸素を再結合させるように設計される。

 また、通常運転中原子炉格納容器内の空気を窒素ガスで置換する設備として、不活性ガス系が設けられる。

 格納容器スプレイ冷却系は、独立した2系統で構成され、この系統の流量のうち約95%をドライウェル内に、残りの約5%をサプレッション・チェンバ内にスプレイし、スプレイ水は、非常用機器冷却系熱交換器によって冷却され、再びスプレイ水として使用される。

A 原子炉建家

 原子炉建家は、原子炉格納容器を完全に取り囲み、水柱6.4mmの負圧で原子炉建家容積に対して、漏洩率100%/d以下の気密性を保つように設計される。また、気密性を確かめるための試験を行うことができるように設計される。

 原子炉建家内ガス処理系は、非常用再循環ガス処理系及び非常用ガス処理系で構成される。非常用再循環ガス処理系は、独立した2系統からなり、1系統で原子炉建家内空気の100%を1日に6回循環させる処理能力を有するように設計される。このうち、5回分の風量は、処理後原子炉建家に再循環され、残り1回分が処理後非常用ガス処理系に送られる。この系のよう素用チャコール・フイルタのよう素除去効率は、97%以上に設計される。また、この系は非常用電源にも接続される。

 非常用ガス処理系は、2系統からなり、1系統で原子炉建家を水柱6.4mmの負圧に保ち、原子炉建家内空気の100%を1日で処理する能力を有するように設計される。

 この系のよう素用チャコール・フイルタのよう素除去効率は、99%以上、高性能粒子フイルタは、0.3μの粒子に対し99.9%以上を除去するように設計される。また、この系は非常用電源にも接続される。

2.6.2 非常用炉心冷却系

 非常用炉心冷却系は、冷却材喪失事故を想定した場合に燃料被覆管の重大な損傷を防止し、水−ジルコニウム反応を無視し得る程度に局限し、崩壊熱を長期にわたって除去するために設けられる。

 非常用炉心冷却系は、低圧炉心スプレイ系、低圧注水系、高圧炉心スプレイ系及び自動減圧系からなり、原子炉水位低の信号またはドライウェル圧力高の信号(ただし自動減圧系は両方の信号)により自動起動する。低圧炉心スプレイ系、低圧注水系は、独立2系統の母線及びディーゼル発電機に(低圧注水系ポンプ2台が1台のディーゼル発電機に、残りの低圧注水系ポンプ1台と低圧炉心スプレイ系ポンプ1台がもう1台のディーゼル発電機に)接続される。

 高圧炉心スプレイ系は、専用のディーゼル発電機に、また、自動減圧系は、蓄電池にそれぞれ接続され、外部電源喪失時にも電源が確保されるように設計される。

 また、これらの非常用炉心冷却系は、その起動信号、電源及び機器冷却系をも含めて区分T、区分U及び区分Vに分離しており、各区分ごとに独立の電源及び冷却系が確保される。

@ 低圧炉心スプレイ系

 低圧炉心スプレイ系は、電動機駆動ポンプ1台、スパージャ、配管、弁類及び計測制御装置からなり、大破断事故時には、低圧注水系及び高圧炉心スプレイ系と連携して、中小破断事故時には、自動減圧系と連携して炉心を冷却する機能を有する。

 この系は、サプレッション・プール水を炉心上部に取り付けられたスパージャ・ヘッダのノズルから燃料集合体上にスプレイすることによって炉心を冷却する。スプレイされた水は、炉心を静水頭にして約2/3の高さまで再冠水する。

A 低圧注水系

 低圧注水系は、電動機駆動ポンプ3台、配管・弁類及び計測制御装置からなり、大破断事故時には、低圧炉心スプレイ系及び高圧炉心スプレイ系と連携して、中小破断事故時には、自動減圧系と連携して炉心を冷却する機能を有し、また、原子炉停止時には崩壊熱の除去を目的とする残留熱除去系のうちの1つのモードとして使用される。

 この系統は、3台のポンプごとに別々のループを構成し、サプレッション・プール水を直接圧力容器シュラウド内に注入し、炉心水位を静水頭にして約2/3の高さまで再冠水する。

B 高圧炉心スプレイ系

 高圧炉心スプレイ系は、電動機駆動ポンプ1台、配管・弁類及び計測制御装置からなり、大破断事故時には、低圧炉心スプレイ系及び低圧注水系と連携して、中小破断事故時には、単独で炉心を冷却する。

 この系統は、復水貯蔵タンク水またはサプレッション・プール水を炉心上部に取り付けられたスパージャ・ヘッダのノズルから、燃料集合体上にスプレイすることによって炉心を冷却する。

C 自動減圧系

 自動減圧系は、主蒸気系で述べた逃がし安全弁18個のうち7個がその機能をもち、中小破断事故時に、原子炉蒸気をサプレッション・プールへ逃がし、原子炉圧力を速やかに低下させて、低圧注水系または低圧炉心スプレイ系による注水を可能とする。

 非常用炉心冷却系の各系統は、運転中でもそれぞれの運転可能性を確認するため定期的に試験ができるように設計される。

2.7 原子炉補助系

2.7.1 燃料取扱及び貯蔵設備

 この設備は、新燃料貯蔵庫、使用済燃料プール、燃料取替機、使用済燃料輸送容器除染装置等で構成される。

 新燃料貯蔵庫は、鉄筋コンクリート造りで、全炉心燃料の約30%を収納できるように設計される。燃料は、ラックに垂直に入れ、乾燥状態で保存される。また、新燃料貯蔵庫内には、排水口が設けられる。

 使用済燃料プールは、原子炉建家内に設けられ、約270%炉心分の燃料並びに使用済制御棒を貯蔵し、さらに、放射化された機器等の取扱及び貯蔵ができるスペースをもつように設計される。壁の厚さは、遮蔽を考慮して十分とられ、内面は、ステンレス鋼でライニングされる。なお、使用済燃料プールの水深は、約11.5mである。

 また、使用済燃料プールには、燃料プール・ライニングの破損による漏洩を監視するため、漏洩検出計及び水位警報装置が設けられる。

 使用済燃料輸送容器置場は、使用済燃料プールの横に別個に設けられる。

2.7.2 燃料プール冷却浄化系

 燃料プール冷却浄化系は、ポンプ、熱交換器、濾過脱塩器及び補助機器等で構成され、炉心より取り出された燃料1回分取替量と、前回までの燃料交換で取り出された燃料より発生する崩壊熱を除去し、燃料プール水温が52℃を超えないように設計される。また、水温が52℃を超える可能性がある場合は、残留熱除去系を併用して熱除去するように設計される。

2.7.3 原子炉冷却材浄化系

 原子炉冷却材浄化系は、冷却材の水質を維持するもので、ポンプ、再生熱交換器、非再生熱交換器、濾過脱塩器及び補助機器等で構成され、原子炉冷却材の電導度を1μ/cm以下、Cl-を0.1ppm以下、pHを5.6〜8.6に保つように設計される。

2.7.4 残留熱除去系

 残留熱除去系は、通常の原子炉停止時及び原子炉隔離時の残留熱の除去と冷却材喪失事故時の炉心冷却等を目的として設けられる。この系は、2基の熱交換器、3台のポンプより構成され、弁の切替操作により蒸気凝縮モード、原子炉停止時冷却モード、低圧注水モード、格納容器スプレイ冷却モードとして使用される。

 原子炉停止時冷却モードは、原子炉冷却材温度を52℃以下に下げ、かつ、維持することができるように設計される。

 蒸気凝縮モードは、原子炉隔離時に炉心の残留熱のために発生する原子炉蒸気を冷却凝縮するためのものであり、凝縮水は、原子炉隔離時冷却系の水源となる。

2.7.5 原子炉隔離時冷却系

 原子炉隔離時冷却系は、原子炉停止後復水・給水系が停止した場合に原子炉水位を維持するために設けられる。この系は、ポンプ、蒸気駆動タービン、配管、弁類からなり、復水貯蔵タンク水及び残留熱除去系熱交換器の凝縮水のほかサプレッション・プール水も利用される。

 また、原子炉水位低の信号により自動起動するほか、中央制御室から手動操作による運転も可能であるように設計される。

2.8 タービン設備

 タービン設備は、蒸気タービン、復水器及び循環水系、復水・給水系で構成される。

 タービンの定格回転数は1,500rpmで、定格出力は、約1,100MWである。

 タービンの制御は、電気油圧式制御装置により行われ、定格負荷遮断時にもタービンの回転数は、非常用調速機の作動には至らないように設計される。

 非常用調速機は、回転数が定格回転数の1.11倍以下で作動し、さらに、バックアップとして、定格回転数の1.12倍で作動するバックアップ過速度トリップ装置が設けられる。タービン過速度のほか復水器真空度低下、スラスト軸受摩耗、軸振動等によっても自動的に非常停止するように設計される。タービン・バイパス系は、原子炉定格蒸気流量の約25%を処理できるように設計される。

 タービングランドのシールは、復水貯蔵タンクの水を蒸発させた蒸気及び所内ボイラの蒸気を使用するように設計される。

 復水器は蒸気タービン排気、タービン・バイパス蒸気及びその他の蒸気を復水し、原子炉への戻り水とするものであり、また、復水器の空気抽出用として蒸気式空気抽出器及び真空ポンプが設けられる。さらに、起動用空気抽出器が併設される。循環水ポンプは3台あり、3系列の循環水配管に接続される。

 復水・給水系は、復水ポンプ、復水浄化系、給水加熱器、原子炉給水ポンプ等で構成される。復水ポンプは、低圧・高圧それぞれ50%容量のものが3台設置され、1台は予備とされる。

 復水浄化系は、復水脱塩装置と復水濾過装置で構成され、復水脱塩装置は、3.8l/minの海水漏洩量を処理できるように設計される。

 給水加熱器は、3系列6段で構成され、1段の給水温度上昇は最高46℃になるよう設計される。

 原子炉給水ポンプは、常用として、50%容量の蒸気タービン駆動ポンプ2台が設置され、また、予備として25%容量の電動機駆動ポンプ2台が設置される。

2.9 計測及び制御

2.9.1 原子炉制御系

 @ 原子炉出力制御系

 原子炉の出力制御は、制御棒の位置の調整による反応度制御と再循環流量の調整による再循環流量制御により行われる。制御棒の位置は、中央制御室から手動で遠隔調整され、制御棒は、同時に2本以上動かせないようなインターロックが設けられる。

 再循環流量の制御は、再循環ポンプの吐出側にある油圧駆動流量制御弁の開度調整により行われる。

 なお、早期炉心用スクラム曲線が適用できなくなるサイクルに至る前に、タービン主蒸気止め弁の閉鎖またはタービン蒸気加減弁の急速閉鎖の信号により、冷却材再循環ポンプ2台を同時にトリップさせる機能が設けられる。

 A 原子炉圧力制御系

 原子炉の圧力は、出力運転中常に一定に保持するように自動制御するため、タービン制御系に圧力制御装置を設け、タービン蒸気加減弁及びタービン・バイパス弁を開閉するように設計される。

 B 原子炉水位制御系

 原子炉圧力容器内水位は、給水流量、主蒸気流量及び炉水位の三要素給水制御方式によって、給水流量を自動的に調整し、あらかじめ定められた水位を保つように制御される。

2.9.2 安全保護系
 @ 原子炉緊急停止系

 原子炉緊急停止系は、2チャンネルで構成され、各チャンネルには、ひとつの測定変数に対して少なくとも2つ以上の独立したトリップ接点があり、いずれかの接点の動作でそのチャンネルがトリップし、両チャンネルの同時のトリップの場合に原子炉はスクラムするように設計される。なお、チャンネル・トリップまたは原子炉スクラムに関連する回路構成は、フェイル・セイフもしくはフェイル・アズ・イズに設計される。

 A 後備緊急停止系

 スクラム・パイロット弁のひとつが、故障により動作しないという事態が生じた場合でも、制御棒が確実に挿入されるように後備緊急停止弁が設けられる。

 B その他の主要な安全保護系

 その他の安全保護系の機能として、主蒸気隔離弁の閉鎖、原子炉隔離時冷却系の起動、原子炉建家内ガス処理系の起動、非常用炉心冷却系の起動、制御棒引抜インターロック等がある。なお、安全保護系の一部は、停止、燃料取替及び起動時には必要に応じバイパスされる。

2.9.3 原子炉核計装系
 @ 中性子源領域モニタ

 中性子源領域での中性子束のモニタリングのため4チャンネルの検出器が設けられる。原子炉の出力運転中は、検出器は、炉心底部から下方の中性子束が5×106nv以下の位置に置かれる。

 A 中間領域モニタ

 中間領域の中性子束モニタリングのため8チャンネルの検出器が設けられ、出力運転中は、炉心の底部から下方の中性子束が5×106nv以下の位置に引抜かれる。

 B 出力領域モニタ

 出力領域モニタは、局部出力領域モニタ及び平均出力領域モニタで構成され、さらに、これらの較正と炉心軸方向の中性子束分布の測定のための移動式炉心内計装系が設けられる。局部出力領域の検出器は、炉心内の43箇所に配置され、各々、4個の独立した検出器を軸方向に配置し、172チャンネルで構成される。

 平均出力領域モニタは、あらかじめグループ分けした局部出力領域モニタの各増幅器からの出力信号を平均化する機器で構成され、6チャンネルが設けられる。

 移動式炉心内計装系は、43本の較正用導管を5つのグループに分割し、検出器の位置とともに指示記録する。

 C 制御棒引抜監視装置

 この系統は、2系統あり、各系統は、最大8個の局部出力領域モニタの検出器の出力を平均し、自動的に平均出力領域モニタの出力と比較較正され、あらかじめ設定した値を超えると、制御棒引抜阻止信号を出すように設計される。

 D 中性子源

 中性子源は、7個設け、中性子源領域モニタに対して、最適の感度を与えるように配置される。中性子源の強度は、炉心サイクル初期の低温状態で全制御棒が挿入されている時に、計数率3cps及び信号対雑音比3/1以上が得られるように設計される。計数率が3cps以下の場合は、制御棒の引抜きが阻止される。

2.9.4 原子炉プラント・プロセス計装

 原子炉プラント・プロセス計装は、原子炉圧力容器計装、冷却材再循環系計装、原子炉給水系及び蒸気系計装、制御棒駆動系計装、漏洩検出系計装及びその他の計装で構成され、原子炉施設の重要な部分には、すべてプロセス計装が設けられる。

2.9.5 中央制御室

 発電所の主要な系統の運転監視・制御装置は、集中的に監視及び制御が行えるように中央制御室に設置される。また、これと独立に中央制御室内での操作が困難な場合に、原子炉をスクラム後の高温状態から低温状態に導くことのできる中央制御室外原子炉停止装置が設置される。

 中央制御室は、事故時、運転員が室内に留まって、必要な操作、措置がとれるように外部放射線を遮蔽するとともに、放射性物質による汚染を防止するため外気の取り入れを遮断したうえ、室内の空気をチャコール・フイルタ等を通して再循環するように設計される。

2.10 電気施設

 本発電所で発生した電力は、500kV送電線2回線で、約110km離れた新榛名変電所に送電される。所内電力は、発電機から所内変圧器(19kV/6.9kV)を通して高圧常用4母線に受電される。また、発電所の起動または停止中には、500kV送電線から起動用開閉所及び起動用変圧器(66kV/6.9kV)を通して高圧共通用4母線に受電される。

 なお、154kV工事用送電線を予備電源として使用することもできる。

 所内補機は、工学的安全施設に関係する補機と一般補機とに分け、それぞれ非常用、常用母線に接続される。所内補機で2台以上設置されるものは、2母線に分割接続される。

 ディーゼル発電機は、高圧炉心スプレイ系専用1台及び非常用2台で構成され、高圧非常用3母線にそれぞれ接続される。

 各ディーゼル発電設備は、配電盤、制御盤ともそれぞれ独立した室に設置される。

 このほか直流電源としては6組の蓄電池が設置され、また、安定した交流の計測制御電源を必要とする機器に対しては、原子炉緊急停止系電源及びバイタル交流電源が設置される。

2.11 発電所補助系

@ 給水処理設備

 給水処理設備は前処理装置、海水淡水化装置、純水装置、タンク類で構成され、濾過水系、純水補給水系等に補給水を供給する。

A 補給水系

 補給水系は、濾過水系、飲料水系、純水補給水系、復水補給水系で構成され、濾過水、純水補給水、飲料水は、発電所内に設置するポンプで各系統に供給される。

 復水補給水は、純水タンクより復水貯蔵タンクに供給された水を使用するほか、液体廃棄物処理系で処理された水も回収して使用される。

B 常用補機冷却系

 常用補機冷却系は、原子炉補機冷却系、タービン補機冷却系及び廃棄物処理補機冷却系で構成され、常用補機で発生する熱を冷却除去するために設けられる。

C 非常用機器冷却系

 非常用機器冷却系は、非常用ディーゼル発電設備冷却系、残留熱除去機器冷却系及び高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電設備冷却系からなり、原子炉水位低の信号またはドライウエル圧力高の信号により自動起動される。また、非常用ディーゼル発電設備冷却系及び高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電設備冷却系は、外部電源喪失によっても自動起動される。

 非常用機器冷却系は、3区分に分離され、それぞれ非常用炉心冷却系の区分に対応して冷却機能を有するように設計される。また、外部電源喪失時にも各区分ごとに非常用電源が確保されるように設計される。

D 換気空調系

 換気空調系は、原子炉複合建家換気空調系、タービン建家換気空調系、中央制御室換気空調系、サービス建家換気空調系及びディーゼル室換気空調系からなり、それぞれ独立した系統とされる。この各系統には、必要に応じてフイルタ、加熱器、冷却器等が設けられる。また、ドライウエル内には、ドライウエル内ガス冷却装置が設けられる。

 原子炉複合建家、タービン建家の空気の流れは、清浄区域から汚染の可能性のある区域に導き、ここからの排気は、フイルタを通した後、排気フアンによって排気筒から放出される。

 中央制御室換気空調系は、他の換気系とは独立になっており、中央制御室へ一部外気を取り入れながら中央制御室の空気を再循環して空気調節を行う方式とし、事故時には、外気と隔離し、チャコール・フィルタ系を通して再循環できるように設計される。

E 所内ボイラ

 所内ボイラは、液体廃棄物処理系の廃液濃縮器、海水淡水化装置、排ガス予熱器等の加熱用等に使用するほかタービン・グランドシール及び起動用空気抽出器の蒸気にも使用するため設置される。

F 圧縮空気系

 圧縮空気系は、計装用空気系と所内空気系からなり、発電所の運転に必要な圧縮空気を供給するため、圧縮機等が設置される。

G 試料採取系

 発電所機器の運転状態を監視し、運転に必要な情報を得る目的で設けられるもので、プラント各部において水質、放射能等の監視が行われるように設計される。

H 消火系

 消火系は、火災報知設備、水消火設備、炭酸ガス消火設備、泡消火設備及び可搬式消火設備で構成される。

2.12 放射性廃棄物廃棄施設

 放射性廃棄物廃棄施設は、気体廃棄物処理系、液体廃棄物処理系、及び固体廃棄物処理系に大別される。

2.12.1 気体廃棄物処理系

 気体廃棄物処理系は、排ガス予熱器、再結合器、排ガス復水器、減衰管、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置、排気筒等から構成される。

 復水器空気抽出器で抽出された復水器中の排ガスは、再結合器で水素ガスと酸素ガスが触媒反応により再結合され、排ガス復水器で水に凝縮される。

 湿分が除去された排ガス中の放射性物質は、減衰管で約30分間減衰され、その後、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置で保持された後、排気筒から放出される。

 活性炭式希ガス・ホールドアップ装置は、活性炭の可逆的吸着現象を利用して、排ガス中の希ガスを保持するもので、設計流量40Nm3/hにおいて、キセノンを27日以上、クリプトンを40時間以上保持するように設計される。

 なお、排気筒は、標高約10mの地上に高さ約150mのものが設置される。

2.12.2 液体廃棄物処理系

 液体廃棄物処理系は、発電所で発生する放射性廃液及び潜在的に放射能汚染の可能性のある廃液を、その性状により分離収集し、処理、回収するように設計され、低電導度廃液系、高電導度廃液系、洗濯廃液系等で構成される。

 これらの処理系は、それぞれの発生廃液量に対し、十分対処できるように設計される。

 @ 低電導度廃液系

 この系は、クラッド除去装置、分離水タンク、濾過装置、脱塩装置、サンプルタンク等で構成され、各建家の機器ドレンサンプに集められた低電導度廃液は、収集タンクに収集され、この系により処理される。処理済液は、復水貯蔵タンクに回収される。

 A 高電導度廃液系

 この系は、濃縮装置、蒸留水タンク、脱塩装置、サンプルタンク、貯留水タンク等で構成され、各建家の床ドレンサンプに集められた床ドレン及び化学廃液等の高電導度廃液は、収集タンクに収集され、この系で処理される。処理済液は、再使用するかまたは放射性物質濃度が十分低いことを確認して放出される。

 B 洗濯廃液系

 この系は、濾過装置で構成され、洗濯廃液は、収集タンクに収集し、試料採取分析を行い、放射性物質濃度が十分低いことを確認して放出される。

2.12.3 固体廃棄物処理系

 固体廃棄物処理系は、濃縮廃液系、廃スラッジ系、雑固体系で構成される。

 @ 濃縮廃液系

 この系は、濃縮廃液タンク、固化装置、コンベア等で構成され、廃液は濃縮廃液タンクに集められ、約1ケ月間貯蔵した後、この系で固化材と混合してドラム詰にされる。

 A 廃スラッジ系

 この系は、原子炉冷却材浄化系逆洗受けタンク、原子炉冷却材浄化系沈降分離槽、燃料プール冷却浄化系逆洗受けタンク、復水浄化系逆洗受けタンク、使用済樹脂沈降分離槽、使用済樹脂タンク、脱水機等で構成される。なお、固化装置、コンベア等は濃縮廃液系と共用される。

 燃料プール冷却浄化系及び復水濾過装置から発生する使用済樹脂は、使用済樹脂沈降分離槽に収集され、約5年間貯蔵されるが、固化材と混合しドラム詰することもできるように設計される。

 復水脱塩装置及び廃棄物処理系各脱塩装置から発生する使用済樹脂は、使用済樹脂タンクで約5年間貯蔵されるが、固化材と混合してドラム詰することもできるように設計される。

 原子炉冷却材浄化系から発生する使用済樹脂は、原子炉冷却材浄化系沈降分離槽で約10年間貯蔵される。

 B 雑固体系

 圧縮可能な雑固体廃棄物は、減容装置によって圧縮減容し、ドラム詰にされる。使用済制御棒等は、使用済燃料プール内に貯蔵保管される。

 C 濃縮廃液固化体、雑固体等を詰めたドラム缶は、発電所敷地内の固体廃棄物貯蔵庫に収容される。同貯蔵庫は、発生するドラム缶約2年分の貯蔵容量をもつが、必要に応じて増設される。

2.13 放射線防護及び管理施設

2.13.1 放射線防護施設

 放射線防護施設は、遮蔽設備及び換気設備等から構成される。また、放射線防護に必要な防護具類が備えられる。

 @ 遮蔽設備

 原子炉一次遮蔽は、原子炉圧力容器を取り囲むコンクリート壁、原子炉格納容器の外側を取り囲むコンクリート壁からなり、後者の厚さは約2mである。

 原子炉二次遮蔽は、原子炉建家側面のコンクリート壁で、厚さは、底部約2m、頭部約0.4mである。

 補助遮蔽は、主として機器まわりのコンクリート壁からなるが、場所によってはコンクリートブロックまたは鉄板が用いられる。

 使用済燃料プールの遮蔽は、使用済燃料プールのコンクリート壁及び遮蔽水からなり、コンクリート壁の厚さは、約2m、水深は、約11.5mである。

 その他管理区域内は、基準放射線量率を定め、遮蔽設計及び管理が行われる。

 また、原子炉施設からの直接及び散乱放射線に対しては、人の居住の可能性のある敷地境界外において線量が年間5mR以下となることを目標として遮蔽等が行われる。

 A 換気設備

 換気設備は、原子炉建家換気空調系、原子炉付属建家換気空調系、タービン建家換気空調系及び中央制御室換気空調系等で構成される。

2.13.2 放射線管理施設

 @ 出入管理関係設備

 出入管理及び汚染管理のため、出入管理設備、汚染管理設備が設けられる。

 A 試料分析関係設備

 各系統の試料及び放射性廃棄物の放出管理用試料の化学分析並びに放射能測定を行うため、分析室及び放射能測定室が設けられる。

 B 放射線監視設備

 放射線監視設備は、プロセス放射線モニタリング設備、エリア放射線モニタリング設備、環境モニタリング設備等からなる。

 プロセス放射線モニタにより、各系統の液体及び気体中に含まれる放射性物質からの放射線は連続的に測定され、中央制御室内で記録、指示、警報がなされるとともに、サンプリングによる測定も行われる。また、建家内の外部放射線量率の監視を行うため、エリア放射線モニタが適切な箇所に設置されるほか、放射線サーベイ機器が備えられる。

 発電所敷地境界付近の放射線量率の連続監視を行うため、モニタリング・ポスト9基及び外部放射線量測定のため、熱ルミネセンス線量計が適切な箇所に配置される。

 このほか、環境試料測定設備、放射能観測車、気象観測設備等が設けられる。

2.14 放射線管理及び監視

2.14.1 発電所の放射線管理

 発電所の放射線管理は、現行法令に基づき、管理区域と周辺監視区域を設定して行われる。

 管理区域は、建物その他の施設の配置及び管理上の便宜をも考慮して、原子炉建家、原子炉付属建家、タービン建家、サービス建家の一部並びに固体廃棄物貯蔵庫等がそれぞれ管理区域に設定される。

 管理区域内の放射線管理は、遮蔽設備、換気設備等の防護施設の設置及び外部放射線、空気中の放射性物質濃度、表面汚染等の監視をすることにより行われる。

 管理区域の人の出入口は、原則として1箇所とし、出入口には、出入管理室が設けられる。

 また、管理区域への物品の持ち込み、持ち出しも出入管理室で管理される。

 管理区域内は、外部放射線に起因する放射線管理区域と、外部放射線のほかに、空気中もしくは水中の放射性物質の濃度または床等の表面の放射性物質の密度に起因する汚染管理区域とに区分され、それぞれに応じた適切な放射線管理が行われる。

 個人被曝管理は、現行法令に定める許容被曝線量を超えないように管理されるとともに、健康診断を実施し、常に個人の健康状態が把握される。

 周辺監視区域は、管理上の便宜も考慮して、敷地境界付近に設定される。

 周辺監視区域は、人の居住を禁止し、境界にさくまたは標識を設ける等の方法によって区域に業務上立ち入る者以外の者の立ち入りが制限される。

2.14.2 周辺地域の放射線監視

 外部放射線量等の監視は、モニタリング・ポスト等を設置して行われる。周辺の環境試料については、海水、海底土、土壌、陸上植物、牛乳、海洋生物等を定期的に採取し、この放射性物質の測定監視が行われる。

2.14.3 放射性廃棄物放出管理及び廃棄管理

 排気筒からの気体廃棄物については、周辺監視区域外における被曝線量及び放射性物質濃度が現行法令に定める周辺監視区域外における許容被曝線量及び空気中許容濃度を超えないように放出管理を行うことはもちろん「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」(以下「線量目標値に関する指針」という。)に基づき、線量目標値の達成を可能とする範囲内で放射性希ガス及び放射性よう素の放出管理目標値を設定し、これを超えないように努めることとしている。

 放射性液体廃棄物は、放射性物質濃度のごく低いものを除き原則として環境に放出せず、できる限り再使用される。液体廃棄物処理系から廃液を環境に放出する際には、あらゆる場合、一旦サンプル・タンクに貯蔵した後、廃液中の放射性物質濃度を測定し、排出口における放射性物質濃度が現行法令に定める周辺監視区域外における水中許容濃度を超えないように管理することはもちろん「線量目標値に関する指針」に基づき、線量目標値の達成を可能とする範囲内で放射性液体廃棄物の放出管理目標値を設定し、これを超えないように努めることとしている。

 固体廃棄物は、その性状及び放射性物質濃度に応じてドラム詰めするかまたはタンク等に貯蔵され、固体廃棄物を詰めたドラム缶は、発電所敷地内の固体廃棄物貯蔵庫(約4,000u)に保管される。

 V 審査方針


1 審査の基本方針

 本審査会は、東京電力株式会社が新潟県柏崎市及び刈羽郡刈羽村にまたがる敷地に設置する商業用原子力発電所の原子炉施設が、通常運転時はもとより、万一の事故を想定した場合にも、一般公衆及び従事者の安全が確保されるように、所要の安全設計等が講じられることを確認するため、次の事項を審査の基本方針として審査することとした。

(1) 原子炉施設が設置される場所の地盤、地震、気象、水理等の自然事象及び交通等の人為事象によって原子炉施設の安全性が損われないような安全設計が講じられること。

(2) 平常運転時に放出される放射性物質による一般公衆の被曝線量が許容被曝線量以下に抑えられることはもちろんのこと、さらに、それをできるだけ少なくするような安全設計が講じられること。

(3) 平常運転時において、従事者が許容被曝線量を超える線量を受けないような放射線の防護及び管理が講じられること。

(4) 原子炉の運転に際し、異常の発生を早期に発見し、その拡大を未然に防止するような安全設計が講じられること。

(5) 原子炉の運転に際し、機器の故障、誤操作等が発生しても、燃料の健全性、冷却材圧力バウンダリの健全性等が損われないような安全設計が講じられること。

(6) 原子炉冷却材を包含している冷却材圧力バウンダリの健全性が損われ、冷却材が喪失するような事故、炉心の反応度を制御している制御系の健全性が損われ、反応度が異常に上昇するような事故等の発生を仮定しても、事故の拡大を防止し、放射性物質の放出を抑制できるような安全設計が講じられること。

(7) 重大事故及び仮想事故を仮定しても、その安全防護施設との関連において、一般公衆の安全が確保されるような立地条件を有していること。

2 審査方法

(1) 審査は、申請者が提出した「柏崎・刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書及び同添付書類」に基づき、行うこととした。

 また、必要に応じて申請内容の補足資料及び参考文献の提出を求め審査を行うこととした。

 本申請内容の基本的設計方針は、今後の詳細設計、施行、検査及び運転の段階においても、堅持されることが法令上前提となっているものである。

(2) 立地条件の評価に際し、敷地の地質、地盤等の自然環境及び社会環境については、書類による審査のほか、書類上の内容と照合するため、必要な事項について現地調査を実施することとした。

(3) 非常用炉心冷却系の性能評価については、申請者が行った性能評価を審査するほか、日本原子力研究所安全解析部の協力により別途にチェック計算を行い確認することとした。

(4) 審査にあたっては、原子力委員会が審査を行うに際し、これによるべきであると指示した指針を用いて行うこととした。

 これらの指針のリストは、次のとおりである。

 @ 「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(昭和39年5月)
 A 「軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針について」(昭和50年5月)
 B 「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針について」(昭和50年5月)
 C 「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」(昭和51年9月)
 D 「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(昭和52年6月)
 E 「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針」(昭和52年6月)

(5) また、当審査会が原子炉施設の安全審査にあたり、解析条件、判断基準等を内規として運用するために作成した報告書を活用することとした。

 これらの報告書のリストは、次のとおりである。

 @ 「沸騰水型原子炉に用いる8行8列型の燃料集合体について」(昭和49年12月)
 A 「被曝計算に用いる放射線エネルギー等について」(昭和50年11月)
 B 「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について」(昭和51年2月)
 C 「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法の適用について」(昭和52年2月)
 D 「発電用軽水型原子炉の反応度事故に対する評価手法について」(昭和52年5月)
 E 「取替炉心検討会報告書」(昭和52年5月)
 F 「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被ばく線量評価について」(昭和52年6月)

(6) そのほか、先行炉の審査経験及び諸外国の審査基準をも参考として行うこととした。

 なお、審査を行うに際しては、昭和50年2月21日に新潟県知事から、また、昭和50年4月14日に柏崎市長から、本原子力発電所建設予定地の地盤の審査に関する要望書が提出されているので、その趣旨を尊重することとした。

 また、昭和51年7月5日から同年8月4日までの間に本原子炉の設置に関して地元の意見が文書によって提出されているので、そのうち、原子炉に係る安全性に関する意見については、その趣旨を尊重することとした。

 W 審査内容

 本原子炉施設の設置に関する立地条件、安全設計の基本方針、平常運転時における被曝管理、原子炉施設の運転時の異常な過渡変化時及び事故時の安全解析結果等について検討した結果は、次のとおりである。

1 立地条件

1.1 敷地

 柏崎・刈羽原子力発電所の敷地は、新潟県柏崎市及び刈羽郡刈羽村にまたがる位置にあり、その面積は、約420万m2とされている。敷地の形状は、海岸線方向約3.2km、奥行約1.4kmの半楕円形をなしており、海岸線から背面境界の稜線に向ってなだらかな丘陵地となっている。

 本原子炉の炉心位置から敷地境界までの距離については、航空写真測量によって作成した地形図に基づいた距離が記載されており、それによれば、南南西方向約800m、北北東方向約2,400m、東南東方向約1,100mであり、最短距離は、ほぼ南南西方向で約790mとされている。

 なお、平常運転時及び想定事故時における被曝線量評価にあたっては、炉心位置からの距離ではなく、放射性物質の放出源である排気筒等からの距離が用いられている。

 本敷地の広さについては、後述するように法令で規制される周辺監視区域の設定に十分な条件を有しており、また、「原子炉立地審査指針」に示される非居住区域及び低人口地帯をも包含する結果になっているので妥当であると判断する。

1.2 地盤

1.2.1 敷地周辺の地質

 敷地周辺の地質に関する資料は、文献調査、空中写真判読、地表踏査等の調査結果に基づいて、敷地中央部を中心とする半径約30kmの陸上部分の地質図・同断面図、地質構造図、水系図、接峯面図が作成されている。ここで作成された地質図によると、敷地周辺の新第三紀層は、一般に泥岩及び砂岩を主体とし、褶曲構造を呈しており、丘陵地域に広く分布することが記載されている。また、第四紀層は主に平野部に分布し、魚沼層郡の一部には、新第三紀層と同様に褶曲構造が記載されている。

 この地質図に記載されている地層の分布及び大局的な地質構造については、既存の文献の記載及び現地調査からみて、妥当なものと判断する。

1.2.2 敷地周辺の地質構造

 敷地周辺の地質構造は、背斜軸部が拡がり、翼部では地層が急傾斜を示す、いわゆる箱型褶曲で特徴付けられ、この褶曲構造にほぼ平行して中央丘陵西縁部、中央丘陵頂部付近及び長岡平野の信濃川左岸部にリニアメントが認められている。これらのリニアメントのうち、中央丘陵頂部付近及び中央丘陵西縁部の一部のものは地層の侵食の差に起因するものとされているが、他のリニアメントは地層の屈曲に起因するものとされている。中央丘陵西縁部のリニアメントのうちの一部については、地下における断層が存在する可能性があるとされている。また、長岡平野の信濃川左岸部のリニアメント沿いの全域にわたって、その地下に断層(以下気比ノ宮断層という。)が存在するとしている。地形上リニアメントは認められてはいないが、西山丘陵地域では石油探鉱資料等により、椎谷付近を通る断層(以下椎谷断層という。)及び真殿坂断層が推定されている。また、柏崎平野下の断層として、高町背斜西部のものが推定されている。これらいずれの断層についても地表において断層面を確認することはできないことから、石油探鉱資料、地形・地質上の特徴に基づいて各推定断層の活動性を考察している。石油探鉱資料から第四紀層の変位が認められた断層として椎谷断層と気比ノ宮断層があげられている。地形・地質上からみて第四紀の活動があったと考えられた断層として気比ノ宮断層が、また、その可能性があるものとして、中央丘陵西縁部の地下深部に想定される断層があげられている。

 陸域の断層のほか敷地前面海域についても地質構造が考察され、断層の存在性に関して調査された。地質情報としては、海上保安庁水路部資料、石油探鉱資料を用いている。その結果、敷地前面30km以内の海域においては、褶曲構造は推定されるが、大規模な断層は存在していないとされている。

 上述の敷地周辺に推定されている各断層の活動性については、特に第四紀後期の活動性に注目し検討した結果、次のような結論を得た。

 椎谷断層は、石油探鉱資料中に魚沼層群下部層を30mほど変化させたと推定している資料が存在するが、空中写真判読によってリニアメントは全く認められないことから、第四紀後期の活動性は無視できる。

 真殿坂断層は、魚沼層群に到達していないという石油探鉱資料もあるが、第四紀の活動性を示唆した文献(滝谷の露頭、後述)もある。同断層は地表部で西山層の急傾斜は認められるが、空中写真によってリニアメントは認められないことから、第四紀後期の活動性は無視できる。

 中央丘陵西縁部の断層は、石油探鉱資料からは地下に小規模な断層が推定される程度であるが、地形上特徴的な地域であることから、リニアメント沿いの主要地区で現地調査を行なった。その結果、新第三紀層並びに北部における第四紀魚沼層群の褶曲状況等から同地域の一部において撓曲構造が確認できた。また、同地域のリニアメントについては、坂田以北柿ノ木までの北部地区で地層傾斜の急変帯に起因するものが存在するが、坂田−吉井間の中部地区では、傾斜急変帯が存在せず、リニアメント自体も不明瞭となる。この中部地区のリニアメントは、岩質の差による差別侵食に起因するものと判断する。吉井以南平井までの南部地区では、過去の海岸線に起因する地形がリニアメントとして見られるものである。以上の調査結果から判断して坂田−柿ノ木間の活動が同地域で比較的大きく、地表部には大規模な断層は存在しないものの、地下深部における断層化の可能性は否定できない。この場合同地域で地下に想定された断層の活動がたとえ地震を伴うものであるとしても、その活動度(規模・頻度)は気比ノ宮断層のそれよりはるかに小さいものと判断する。なお、リニアメントとは別に、南部地区では地質構造上断層が推定されているが、現地調査の結果からみて、第四紀後期の活動性は無視できる。

 気比ノ宮断層は、申請書においても記載されているように、長岡平野の信濃川左岸部に発達する段丘が平野側に著しく傾斜しているという地形上の特徴を有している。段丘の屈曲は、同地域の第四紀後期の活動性を示すものであり、現地で屈曲状況を調査した結果からみると、第四紀後期の活動度は大きい。同断層は、石油探鉱資料に基づき長岡市雲出町付近から中之島村真野代新田付近までの約17.5kmとされており、この見積りは妥当である。ただし、地体構造的に見た場合には、信濃川に沿ってさらに、北北東方向に同一の断層系に属する別の断層が雁行配列する可能性は否定できない。

 石油探鉱の物理探査データ解析によって推定されている柏崎平野下の断層については、新第三紀層中の断層と判断する。この断層の最終活動年代等詳細は不明であるが、長さも短いこと、物理探査資料においても地表にまで達する断層とは考えられていないことから大地震を発生させることはないと判断できる。

 敷地前面海域の地質構造の考察については、同海域を含む新潟県沖合が、我が国でも資料の多い地域であることから、前述の資料によって地質構造を推定することは妥当である。前述の各資料は探査手法の性格、探査の目的等から、単純に相互の比較はできないが、敷地前面30km程度の範囲の海域に褶曲構造は推定できるものの、大規模な断層の存在を示唆する有意な結果は認め難いと判断する。

1.2.3 広域地殻変動

 敷地周辺地域は羽越活褶曲帯に属しており、広域の地殻変動があるとされている。この地殻変動がどのようなものであるかを考察するためこれまで20年間の輪島、柏崎の験潮記録及びこれまで約80年間にわたる柏崎周辺の水準測量結果の解析が行われた。その結果、柏崎付近は広域的には安定した地域であるが、柏崎平野から長岡平野に至る水準ルートでみると平野部で沈降し丘陵部で隆起するという地質構造と調和した緩やかな変動を示す傾向があるとしている。

 敷地周辺を活褶曲地帯とすることは、地形上の特徴から考えられるが、近年の活動性について水準測量結果に基づいて考察することは妥当である。同測量結果の解析資料では、平野部と丘陵部との相対的な変位には沖積層の圧密沈下も含まれており、丘陵部の隆起速度も1mm/年を超えない。たとえ近年も褶曲運動が継続しているとしても、それによる地盤傾動速度は最大に見積もっても年10-6以下のオーダーである。

1.2.4 敷地内の地質構造

 敷地内の地質調査は、地表踏査、地表弾性波探査、ボーリング調査、試掘坑内調査等により実施された。地表弾性波探査では西山層と安田層の区別がつきにくいこと、また、敷地地表部は新期砂層に覆われており露頭条件が悪いことから、ボーリングを主体として敷地内について詳細に地質構造を把握している。その結果、大湊側に背斜構造、荒波側に向斜構造が存在するとされている。荒浜側の向斜構造は、その位置が真殿坂断層の南方延長部に相当することから特に炉心北東方において、向斜構造の確認の調査がなされている。建家基礎部の試掘坑内では、小さな断層がいくつか見られるが、地層が岩石化する前に生じたものが多いとされている。また、一部にクラック間隔の比較的密な部分が存在するが断層破砕帯ではなく、いずれの断層も基礎岩盤としての強度上問題となるようなものではないとされている。試掘坑内の小断層のほかに、地表露頭で見られる断層や小断層として、敷地中央部で安田層と番神砂層を境する断層、二、三の番神砂層露頭に存在する小断層があげられている。敷地中央部の断層はその性状や規模について追跡ボーリング、トレンチ掘削による詳細調査が実施され、同断層は地すべり性であるとされている。また、番神砂層中の小断層は、露頭調査により小断層の走向・傾斜が不規則であり、かつ、主な小断層の傾斜方向が番神砂層堆積時の谷の斜面方向に一致することから、地形の影響による引張応力に起因して発生したものとされている。

 敷地内の地質及び地質構造については、現地調査を繰り返し、申請書に記載のあった各事象の事実関係を確認した。試掘坑内の現地調査の結果、坑内で認められる小断層の多くは西山層が固結するまでの間に形成されたものであり再活動のおそれはないと判断できるが、その一部には断属面が開離し、小規模ながらも破砕部を伴うものも存在することを確認した。また、小断層は−8m、−18m及び−40mの各レベルにおいて認められるが、これら小断層の相互の関係が不明確であり、かつ、第四紀層との関係も判明していないことから小断層の鉛直及び水平方向への連続性について追跡調査の必要性を認めた。追跡調査は、まず坑内の小断層相互の関係を調べ、さらにその結果に基づき、相対的な規模が大きく、かつ、活動時期も最も新しいと判断できるほぼ等しい走向の2本の小断層を対象として行われ、両断層の形態及び第四紀層との関係を確認するものであった。現地調査の結果、両断層の傾斜はいずれも垂直に近いものであること、両断層とも著しく破砕された部分を伴うものではないこと、1本の小断層は、安田層に変位を与えていず、他の1本は、安田層を数10cm変位させてはいるが、その上位の番神砂層には変位を与えていないこと等を確認した。

 試掘坑内の西山層中3層準に認められる縞状泥岩は、鍵層としての性格を有しているので、これらを用いて荒浜地区の地質構造を考察し、同地区を向斜構造としていることは妥当である。この向斜構造は緩やかなものであり、真殿坂付近で推定されているような向斜軸部の断層化もみられないことから、真殿坂断層は敷地内にまで延びているものではないと判断する。

 敷地内の地表部に認められる断層及び小断層については、ボーリングコアの調査や現地露頭の調査を実施した。その結果、敷地中央部の断層は地表では溝状に落ち込んだ形態ではあるが、西山層にまで達していず、地すべり性の断層であると判断する。また、番神砂層中の小断層も地表部のみに発達する性格のものであると判断する。なお、敷地近傍の番神砂層中にも小断層の発達する露頭が認められ、また、滝谷においては西山層と第四紀層が断層によって接している露頭が認められる。番神砂層中の小断層は敷地内のものと同様な形態であり、地表部のみに発達する性格のものであると判断する。滝谷の露頭では、番神砂層及び安田層が西山層中に落ち込んだ状況が地表で認められる。これは地すべり性の運動に伴って生じた表層の断層であると判断する。

 敷地内の現地形及び表層地質に関する考察から、敷地内で原子炉施設に被害を与えるような大規模な地すべりや山津波が発生するおそれはないと判断する。また、試掘坑内の小断層も、少なくとも番神砂層堆積後の変位は生じていないこと、各小断層とも地震発生と結びつくような性格の断層ではないこと、後述するように基礎岩盤は、地震力に対する安全性が十分であること等から、試掘坑内の小断層が将来地震力により変位を生ずるおそれはないと判断する。

1.2.5 安田層、番神砂層の形成年代

 安田層、番神砂層の形成年代については、既存研究報告に基づき、安田層は下末吉層の年代と同等であり、番神砂層は、ボーリング調査により安田層と番神砂層が不整合関係であるということが明らかになったことを踏まえ、下末吉層堆積の次の海進に関する堆積物としている。その後、敷地内の安田層より得た花粉及び珪藻化石等の分析及び番神砂層の粒度分析等に基づき両層の形成年代の考察が行われた。分析結果と第四紀海水準変動とを対比することにより、既存研究報告に基づく場合と同様に、安田層は、下末吉海進期の堆積物、番神砂層は、下末吉海進の次の海進に関係する堆積物という結果が得られたとしている。下末吉海進の絶対年代については、近年では12〜14万年前、次の海進は6〜8万年前と考えられていることから、安田層、番神砂層の形成年代はそれぞれ12〜14万年前、6〜8万年前としている。

 化石分析と第四紀海水準変動の対比においては多くの文献を参考としており、下末吉海進の年代についても適切な考察がなされていると判断する。安田層の形成年代を12〜14万年前と考えることは妥当であるが、番神砂層については、安田層の場合ほど絶対年代を絞ることは難かしい地層である。第四紀の海水準変動、番神砂層の露頭状況、ボーリングコアの状況から、番神砂層は3万年前よりは古いものと判断でき、既存研究報告をも参考とし、およそ3〜8万年前の範囲内にその形成年代があると解釈することが妥当である。

1.2.6 岩盤、岩石物性

 岩盤、岩石物性の試験として、−40m試掘坑における載荷試験(変形及び支持力試験)、ボーリングコアによる、一軸圧縮試験、三軸圧縮試験、単位体積重量試験、含水比試験が実施されていたが、さらに詳細な物性を調査するために、岩盤せん断試験、支持力試験、変形試験、クリープ試験が−40m試掘坑内において、また、一軸圧縮試験、三軸圧縮試験、引張試験、クリープ試験、圧密試験が−40mの試掘坑より採取した供試体により実施された。これら各種試験により、土質的な性状も考慮しながら、西山層泥岩の岩盤、岩石としての物性を考察している。一軸及び三軸圧縮試験に基づき、基盤の塊状泥岩、縞状泥岩、凝灰岩はさみ層の強度差及び塊状泥岩、縞状泥岩の強度上の異方性について検討し、凝灰岩はさみ層の強度は塊状、縞状両泥岩より低いが、塊状泥岩、縞状泥岩に異方性、強度差がほとんどないことを示している。また、ボーリングコアによる圧縮試験の妥当性について、これまでに公表されている各種泥岩の圧縮試験結果と比較して考察するとともに、試掘坑内でシュミットロックハンマーによって岩質の場所的変化を検討している。

(1) 不等沈下に関する考察

 建家基礎部の西山層は、塊状泥岩を主体としており、部分的に縞状泥岩、凝灰岩はさみ層が認められる。凝灰岩はさみ層の岩石としての強度は泥岩に比し低いが、側圧が高まるとその差はわずかになる上、基礎岩盤中に占める割合も極めて少ないことから、岩盤としてみた場合凝灰岩はさみ層は強度上支障となるようなものではないと判断する。ボーリングコアによる物性試験においては、一般にボーリング技術の影響を受け測定値のばらつきが大きくなっているようであるが、特に著しいばらつきは認められず、同泥岩の圧縮試験値のばらつきは一般的なものと判断する。これらの結果から、当該基礎岩盤は、不等沈下を生ずるおそれがないものと判断する。なお、−40m試掘坑において実施されたシュミットロックハンマーによる基礎岩盤の物性(反発係数)のばらつき調査結果から、基礎岩盤の物性の場所的なばらつき分布は、建家基礎の大きさに比較して十分局所的であると考えられる。

(2) 支持力に関する考察

 岩盤としての支持力試験は、直径30cm、60cm、100cm、の3種類の載荷板を用い、岩質差及び載荷面積差を考慮して実施された。いずれの結果も初期降伏点は25〜30kg/cm2、後期降伏点は35〜55kg/cm2、破壊荷重は62〜85kg/cm2の範囲にあり、岩質差及び載荷面積差による影響は認められないとしている。また、三軸圧縮試験によって、これまでに粘土に適用されてきた村山の方法による上限降伏値を求めると、圧縮強度の約50%となることが示されている。さらに、一軸クリープ破壊試験による結果に基づき、発電所の耐用年数よりやや長い40年後に破壊をもたらす持続長期荷重は、圧縮強度の約60%であることが示されている。クリープによる強度低下を考慮した場合の安全性については、破壊荷重62kg/cm2を用いて、その60%に根入れ効果3kg/cm2を加え、長期支持力は約40kg/cm2となり、常時の接地圧7kg/cm2に対し5.7の安全率を有するとしている。なお、地震時の最大接地圧14kg/cm2に対しては短期荷重であるためにクリープによる強度低下を考えず、65kg/cm2の破壊荷重に対して4.6の安全率を有するとしている。

 岩盤の支持力については、Terzaghi式を用いて考察する方法が従来より用いられてきており、同方法によって西山層泥岩は十分な支持力を有することが判明している。しかし、同泥岩にクリープによる強度低下を考慮した場合の基礎岩盤の安定性を検討する必要があると考えた。クリープによる強度低下を考慮した場合も5.7の安全率を有することが判明しているが、さらに最も厳しい村山の上限降伏値を用いても、根入れ効果を加えて支持力は34kg/cm2となり、安全率は4.8となることがわかる。これらの結果からみて、当該基礎岩盤は、原子炉複合建家を支持する上に十分な支持力を有していると判断する。

(3) すべりに対する安全性の考察

 すべりに対する安全性については、岩盤せん断試験結果から破壊包絡路をクーロン式で表わし、せん断摩擦安全率を計算している。すなわち、地震時に基礎底面に作用する水平力は、建築基準法に定められた水平震度の3倍を原子炉複合建家に与えて生ずる3,300t/mであるのに対し、せん断抵抗力は根入れ抵抗力を含めて10,400t/mで、3.2の安全率があるとしている。

 すべりに対する安全性の考察に用いられた試験の方法、結果とも妥当なものであり、当該基礎岩盤は、水平地震力に対して十分な安全性を有していると判断する。

(4) 圧密、クリープ変形に関する考察

 原子炉複合建家設置後の地盤変形については、圧密試験結果に基づき圧密降伏応力を求めて考察している。同考察ではCasagrandeの方法を適用し、圧密降伏応力が約44〜49kg/cm2となるとしている。この値は建家基礎に加わる常時接地圧7kg/cm2を十分上回っているので、圧密現象は特に考慮する必要はなく、一般的なクリープ現象として取扱いうるとしている。また、クリープ沈下のほとんどは発電所建設工程の時間スケールと比較して短時間で収束することから、クリープ沈下を弾性変形量の割増しとして評価する方針をとっている。

 なお、建設に伴う掘削岩石荷重に比べ原子炉建家荷重の方が小さく、建家設置に伴い極端な基礎岩盤の変形は考えられないとしている。

 これら圧密及びクリープ沈下の考察に用いられた試験の方法、結果とも現状では妥当なものであり、当該地盤の粘弾性的挙動は、原子炉設置上支障となるものではないと判断する。

(5) 初期地圧に関する考察

 基盤が現状でいかなる応力状態にあるかを、−40m試掘坑内よりボーリングを行い、鉛直、水平2方向(互いに直交)の計3方向の地圧測定を実施することにより検討した。同測定により3方向共に11〜12kg/cm2の範内囲の地圧が加わっていることが判明し、少なくとも測定場所の深さでは等方圧縮状態にあるものと考えられ、構造運動の影響があるとは認められない。

1.3 地震

 敷地周辺の地震活動性は、炉心を中心とする半径200kmの範囲内に過去発生した記録のある被害地震を「日本被害地震総覧」等により、また、個々の被害地震については、それぞれの地震に関する文献を調査している。これらの調査によると、マグニチュード7以上の地震は敷地から50km以上離れた地点に発生しており、越後高田の地震(1614年、M=7.7)が最も敷地に近いものである。また、50km以内にはマグニチュード6.9の地震が、三条付近(1828年)、六日町付近(1904年)及び直江津付近(1502年)に発生している。長岡平野ではマグニチュード5.3程度の地震が発生している。これまでの柏崎付近の震害については、新潟地震(1964年、M=7.5)により刈羽村において土地の沈下、地下水や砂の噴出があった事が記されている他に、高田の地震(1751年、M=6.6)等により被害のあったという記録があるが、いずれも柏崎付近が被害の中心となったものはないとしている。

 これら歴史地震に基づく地震活動性の調査は、多くの文献、既存の報告書等を参考としており、敷地周辺の地震活動性に関する調査内容は妥当なものである。

 敷地基盤に加わる最大加速度の算出には、過去の被害地震に加え、敷地周辺の地質構造の調査結果に基づき、気比ノ宮断層に関連して想定される地震が考慮されている。その結果、金井式−シード図の組合せを用い、気比ノ宮断層にマグニチュード6.9の地震を考えた場合が基盤に加わる最大加速度となり、同加速度は約220Galになるとしている。

 耐震設計上いずれの断層を考慮すべきかは、各断層の第四紀後期の活動性に着目して判断できる。前述の各断層の第四紀後期の活動性に関する評価に基づき、気比ノ宮断層を耐震設計上考慮すべき断層であると判断する。気比ノ宮断層にマグニチュード6.9の地震が想定されているが、この地震の規模は、断層の長さと地震の規模についての経験式からみて適切なものと判断する。

 基盤最大加速度の算出において用いられている金井式−シード図の組合せは従来より用いられており、この最大加速度は妥当なものと判断する。

 当該発電所の基盤最大加速度は上記のように約220Galと想定され、これに基づいて設計用地震加速度を300Galとしていることは、敷地周辺の自然条件の適切な考察に基づいて厳しい評価を加えたものとみなすことができる。

1.4 気象

 原子力発電所敷地の気象については、原子炉施設を設計するにあたって考慮する気象条件及び原子炉施設の安全解析に用いる気象条件がそれぞれ調査されている。

 原子炉施設を設計するにあたって考慮する気象条件については、最寄の気象官署である新潟地方気象台及び高田測候所の長期間の記録(主として新潟地方気象台の記録については1886〜1970年、高田測候所の記録については1923〜1970年)が調査されており、それらの記録によると最低気温は、−13.2℃、日最大降水量は、165.0mm、最大瞬間風速は、44.5m/sとなっている。

 また、積雪量については、局地性が高いことを考慮して敷地により近い場所にある柏崎農業気象観測所の記録(1924〜1969年)が調査されており、それによれば、最大積雪量は、194cmとなっている。

 敷地は、日本海の沿岸部に位置するので、裏日本気候区域の雪国の気候区分と類似した気候条件にあると考えられる。したがって、原子炉施設の設計にあたって新潟地方気象台及び高田測候所の気象記録を適用することは、妥当であると判断する。

 原子炉施設の安全解析に使用する気象資料は、風向、風速、日射量、雲量等について、昭和46年3月から1年間にわたり敷地において観測された記録が用いられている。これらの気象観測に使用された気象測器は、風向風速計、日射計等については、気象庁検定を受けた測器が用いられ、また、雲量については、日本気象協会に所属する専門家によって観測されている。

 風向風速の観測は、放出放射性物質の濃度評価のために放出高さを代表する高さにおいて、大気安定度分類のために地上高約10mにおいて、それぞれ実施されている。これらの観測によって得られた気象資料は、大気拡散の解析に適用されるように統計処理されており、欠測率も年間10%以下の結果が得られている。

 また、敷地において観測した1年間の気象資料が長期間の気象条件を代表することをみるため、最寄の気象官署における当該観測年の資料と過去10年の資料とを用いての検定が行われており、この結果によると当該観測年は異常な年ではなかったことが示されている。また、敷地において昭和50年10月から実施した1年間の気象資料は安全解析に使用した敷地における1年間の気象資料とほぼよい一致を示している。

 以上のことから、安全解析に使用した敷地における1年間の気象資料は、長期間の平均的な気象条件を代表するものと判断する。

 平常運転時の大気拡散の解析に使用する気象資料としては、放射性物質の連続放出及び間けつ放出を考慮して統計処理された風向別大気安定度別風速逆数の総和及び平均がそれぞれ用いられている。

 想定事故時の大気拡散の解析に使用する気象資料は、想定事故が任意の時刻に起こること及び実効的な放出継続時間が短いことを考慮して、1年間の気象観測資料をもとに出現確率的観点から想定事故期間中の相対濃度(χ/Q)及び相対線量(D/Q)が解析されている。χ/Q及びD/Qの解析は、実効放出継続時間の長短、放射性物質の放出高さ等に応じて行われており、また、周辺監視区域境界を着目地点として、陸側の各方位ごとに異積出現頻度が97%にあたるχ/Q及びD/Qの値を算出し、それらの中の最大の値が求められている。

 この結果、冷却材喪失事故時の場合のχ/Qは、8.4×10-7s/m3、D/Qは、1.3×10-7R/Ci、主蒸気管破断事故時の場合のχ/Qは2.8×10-5s/m3、D/Qは、1.2×10-6R/Ciと解析されている。

 前述の計算にあたっては、敷地周辺の地形の影響を考慮するため、縮尺1/1,500の敷地の地形模型を使用して、風洞実験が実施されている。

 この実験結果によると地表空気中濃度は、平坦な地形の場合より高い値が示されており、この濃度差を補正するため、拡散式に適用する放出源の有効高さは、実際の放出源高さ(排気筒高さ+吹上高さ)より低い値が採用されている。

 以上のとおり、本原子炉施設の安全解析に使用された気象観測方法、統計処理方法、大気拡散の解析方法等は、「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針」の趣旨に適合しているので、妥当であると判断する。

1.5 水理

 原子力発電所敷地は、日本海と柏崎平野に囲まれた西山丘陵南部の日本海に面するなだらかな砂丘に位置している。

 敷地付近の河川の状況について調査された結果によると、敷地から最短距離にある比較的大きな河川は、敷地南西方約5kmにある錆石川であるが、敷地周辺の地形からみて、この河川により敷地が洪水の被害を受けることはないと判断する。

 海域の潮位については、「新潟地震震害調査報告書」によれば、柏崎港の最高潮位は、新潟地震発生時で東京湾平均潮位に対してプラス1.8mとされている。また、波浪については、日本海を通過する低気圧の影響を受けて冬期に高波浪が出現するが、申請者が実施した波浪観測によると、観測期間中の最大有義波高は、5.82m、最大波高は、8.87mとされている。

 敷地前面海域に設けることとしている防波堤は、運輸省港湾技術研究所が日本海の気象条件をもとに波浪推算した結果を考慮して、波高を6.8mとして設計することとしている。

 原子炉施設が設置される場所は、標高約5mで、かつ、防波堤が設置されるので、海象によって原子炉施設の安全性が損われることはないと判断する。

 発電所の所要淡水量は、通常運転時約1,000m3/dと見込まれており、その取水は、信濃川からの取水及び海水淡水化装置により精製された淡水を利用することとしている。

 これらの淡水は、タンクに貯留され、純水装置で電導度1μ/cm以下に精製された後、原子炉施設に供給されるので、原子炉施設の安全上支障はないと判断する。

 原子炉施設の運転に必要な冷却水は、水深8〜11mの防波堤先端開口部から防波堤内側の静穏海域に設ける取水口に導いた海水を用いることとしているので、冷却に必要な海水量は、十分確保されるものと判断する。

1.6 社会環境

 原子力発電所敷地付近の社会環境については、原子炉を中心とする半径100km以内の人口分布、原子炉を中心とする半径5km以内の集落及び公共施設、柏崎市、刈羽村等における産業活動、交通の状況及び開発計画等が行政機関の作成した統計資料等により調査されている。

1.6.1 人口分布

 人口分布については、昭和50年10月に実施された国勢調査による人口分布が調査されている。

 これによれば、原子炉を中心とする半径100km以内の人口は、約300万人(人口密度約160人/km2)、半径30km以内では、約46万人(人口密度約290人/km2)、半径10km以内では、約7万3千人(人口密度約410人/km2)、半径5km以内では、約1万5千人(人口密度約340人/km2)となっている。これらの人口分布及び2020年における推定人口をもとに計算された災害評価時の全身被曝線量の積算値を検討した結果、この線量の増加は将来においてもわずかである。

1.6.2 敷地周辺の産業活動

 原子力発電所敷地は、柏崎市及び刈羽村にまたがっているので、両市村を中心とする産業活動が調査されている。両市村における産業活動をその従事者について調べると、農業就業者が約22%、製造業、建設業が約38%、残り約40%がサービス業、卸・小売業その他を営んでいる。

 工業は、機械、金属、食料品製造業等であり、大規模な石油関連工業等はないので、原子炉施設の安全が敷地周辺の産業活動によって影響を受けることはないと判断する。

 なお、「新潟県長期総合整備計画」(昭和51年)によれば、本原子炉施設の安全に支障を及ぼすような産業活動が将来においても、敷地周辺で行われることはないと考えられる。

1.6.3 敷地周辺の交通

 原子力発電所敷地付近の陸上交通は、鉄道路線として国鉄越後線があり、その最短距離は原子炉から約1.5kmである。また、最寄の道路としては新潟寺泊柏崎線があるが、この道路については、敷地内の海岸線に沿って走る部分は、敷地境界に沿って周辺監視区域外側に付け替えられることとなっている。海上交通については、敷地から南西約8kmに柏崎港があり、5,000トン級の船舶の接岸が計画されているが、これらの大型船が通常敷地に接近して運航されることはないとされている。

 以上のことから交通による原子炉施設への影響については支障がないと判断する。

 航空関係については、敷地周辺に飛行場はなく、最寄の空港は、新潟空港で敷地から約75km離れている。敷地の東約5km及び西約20km離れた位置の上空にはそれぞれ新潟−名古屋間及び新潟−小松間を結ぶ国内線の航空路があり、敷地上空は、前者の保護空域とされている。保護空域は、計器誤差、風による影響等により航空機が指定のコースからずれることを考慮して、航空機を保護するため設けられる空域であるので、原子炉施設上空を航空機が飛行することは極めてまれであると考えられる。さらに、保護空域となっている本敷地上空を飛行する民間機の航空便数、機種等についての調査結果を考慮すると航空機の墜落による原子炉施設への影響については確率的にみて考慮する必要はないと判断する。

2 原子炉施設の安全評価

2.1 原子炉施設全般に対する設計上の考慮

 本原子炉施設の安全上重要な構築物、系統及び機器(以下重要な構築物等という。)は、安全上適切と認められる規格及び基準に準拠することが必要である。

 本原子炉施設は、国内法規に基づく規格及び基準に基づいて、設計、材料選定、製作、建設及び検査が行われるほか、必要に応じ権威ある国内の民間規格、基準及び諸外国の規格、基準をも参考とすることとしているので、妥当であると判断する。

 重要な構築物等は、人為事象、火災等により、それらの安全機能が喪失しないよう、設計上の考慮が要求される。

 重要な構築物等を含む区域は、それを取り囲む物的障壁をもつ防護された区域とし、これら区域への接近管理、入退域管理の徹底を図るとともに、映像監視等による探知設備、外部との通信設備等が設けられるので、第三者による不法な接近等を未然に防止できるものと判断する。

 重要な構築物等を含む区域は、火災の発生防止、早期火災検知及び早期消火の対策を講ずることとされ、また、重要な構築物等は、可能な限り不燃性、難燃性材料を用いた設計がなされる。

 中央制御室、安全保護系、原子炉停止系、残留熱除去系、工学的安全施設等の安全上重要な系統及びこれらのケーブル、配管は、相互に物理的分離をはかり、適切な離隔距離をとるか、または必要に応じて障壁が設けられる。

 また、ケーブルトレイ等が障壁を貫通する場合は、障壁効果を減少させないような構造とする等の対策が講じられるので、火災により重要な構築物等が安全機能を損うことはないと判断する。

2.2 耐震設計

 本原子炉施設のうち原子炉複合建家等の重要な建物、構築物は原則として剛構造に設計され、岩盤で直接支持されることとなっている。

2.2.1 重要度による分類

 原子炉施設は、安全上の重要度に基づき、A、B、Cの3クラスに分類され、各分類に応じた耐震設計方法により適切な設計が実施される。

 Aクラスに分類される施設は、その機能喪失が原子炉事故を引き起こすおそれのある施設及び周辺公衆の災害を防止するために緊要なものとし、原子炉複合建家、原子炉格納容器、原子炉圧力容器、非常用炉心冷却系等を同分類に含めている。

 Bクラスに分類される施設は、高放射性物質に関連するAクラス以外のものとし、タービン建家、原子炉補助設備等を同分類に含めている。

 Cクラスの施設は、Aクラス及びBクラス以外の施設としている。

 設計にあたっては、上位の分類に属するものが下位の分類に属するものの破損によって波及的事故が起きないことを確かめることとしている。

 上述の施設の各分類は、原子力発電所の安全性を保持する上に適切なものであり、波及的事故に対する設計上の考慮方針と合わせ、原子炉施設の安全設計上妥当なものと判断する。

2.2.2 耐震設計法

 各施設は、重要度に応じ、適切な設計法によって耐震設計されるが、基本的には、建築基準法に定められた震度に基づく静的解析により得られる地震力または基盤に設計用地震動を与え、各施設の固有の動特性を考慮する動的解析によって求められる地震力に対して安全であるように設計される。

 静的解析によって算定する水平地震力は、建築基準法に基づき、基礎底面における基準震度を0.2とし、高さ方向に所定の割増しを行い、地盤の種別及び構造物の構造種別によるてい減率を乗じた水平震度(以下「水平震度」という。)から求まるものである。また、鉛直地震力は、基準震度0.2に、上記てい減率を乗じた水平震度の1/2が、鉛直方向にかかるもの(以下「鉛直震度」という。)として求まるものであり、高さ方向には一定としている。

 静的解析に用いる静的震度は、建物、構築物と機器・配管系により、またA、B、Cのクラスごとに異なる値を用いている。Aクラスの建物、構築物は「水平震度」、「鉛直震度」の3倍を静的震度として用い、機器・配管系では、建物、構築物に対する静的震度の1.2倍を用いている。Bクラス及びCクラスに対する静的震度については、建物、構築物と機器・配管系の関係はAクラスの場合と同一であるが、水平震度については、BクラスをAクラスの1/2、CクラスをAクラスの1/3としている。なお、B、Cクラスについては「鉛直震度」は考慮していない。

 動的解析に用いる設計用地震動は、地震加速度を300Galとし、エルセントロ、タフト、ゴールデンゲートで記録された地震波が用いられる。

 動的解析は、Aクラスの施設に対し実施され、Bクラスの機器・配管系のうち支持構造物の振動と共振するおそれのあるものに対しても、検討が行われる。

 Aクラスの施設は静的解析または動的解析により得られる水平地震力のうちいずれか大きい方の水平地震力と静的解析により求まる鉛直地震力とが同時に不利な組合せで作用するものとし、これに耐えるよう設計されることとしている。ただし、Aクラス中排気筒については、動的解析から得られる地震力に耐え得るように設計される。

 B、Cクラスの施設は、静的解析により得られる水平地震力に耐えられるように設計される。

 なお、Aクラスの施設のうち、特に一般公衆の安全を確保するために、安全対策上緊要な施設である原子炉格納容器、原子炉停止系のうち緊急停止機能を有する部分及びほう酸水注入系対しては、設計用地震加速度の1.5倍の加速度(450Gal)が基盤に生じた場合でも、それらの機能が保持できることが確認される。

 また、地震に対する考慮として、ある程度以上の地震が起こった場合に原子炉を自動的に停止させるため、地震感知器が設置される。

 以上の耐震設計によって、原子炉施設の耐震安全性は十分確保し得るものであり、この耐震設計法は、原子炉施設の安全設計上妥当なものと判断する。

2.3 炉心設計

2.3.1 核設計
炉心の核設計においては、
 (イ) 運転に伴う反応度の変化を安定に制御できるとともに、最大の反応度価値を有する制御棒が完全に引抜かれた状態であっても、常に原子炉を臨界未満にできること
 (ロ) 運転時の異常な過渡変化時においても、プラントの各系統とあいまって、燃料の許容設計限界に至らないだけの十分な負の反応度効果を有すること
 (ハ) すべての運転範囲で急速な固有の負の反応度フィードバック特性を有する設計であること

 を満足する必要がある。

 本原子炉の過剰増倍率は、燃焼に伴う核分裂性物質の変化、減速材の温度上昇及びボイド変化、燃料棒の温度上昇、キセノン、サマリウム等の中性子吸収物質の蓄積及び中性子の漏洩による反応度変化を補償するように設計されており、反応度の抑制は、制御棒と燃料中に含入する可燃性中性子吸収物質であるガドリニアで行われる。

 低温状態では、炉心の過剰増倍率が最大となるのに対して、制御棒による反応度制御能力は最小となるので、このような状態において、最大反応度価値を有する制御棒が完全に引抜かれた場合でも、原子炉を臨界未満に維持できることが示されれば、すべての運転モードを包含して臨界未満の条件が満足されることになる。

 第1サイクルに対するワンロッド・スタック時の実効増倍率の解析結果から、サイクル期間中を通じて実効増倍率の計算値は0.99未満であり、上述の条件が満足されることを確認した。第2サイクル以降については、ガドリニア入り燃料棒の本数、またはガドリニアの濃度及び取替燃料集合体の本数や装荷位置を調整することによって、原子炉の停止余裕が確保できるものと判断する。

 スクラム反応度曲線については、燃焼によるスクラム反応度曲線の劣化を考慮して、2種類のスクラム反応度曲線(早期炉心用スクラム曲線及び平衡炉心末期用スクラム曲線)が使用されるが、これらは各サイクルにおけるスクラム反応度曲線の変化を包含するように決められており、さらに、これらの適用期間については、「取替炉心検討会報告書」でも、その妥当性が確認されている。

 また、急速な固有の負の反応度フィードバック特性としては、ドップラ効果があり、ドップラ反応度係数は、各サイクルを通じて十分負の値になるように設計される。

 これらの炉心特性は、W.5の解析結果に示すように、燃料の許容設計限界に至らないだけの十分な負の反応度効果を有している。さらに、W.6の事故解析においても、制御棒落下事故時の急激な出力上昇を軽減し、核的逸走を抑制することが示されている。

 以上のことから、本原子炉の核設計は、妥当なものと判断する。

2.3.2 熱水力設計

 炉心の熱水力設計は、通常運転時はもちろん、運転時の異常な過渡変化時においても、燃料が損傷しないよう、以下に示す許容設計限界を満足することが必要である。

 (イ) 最小限界出力比(以下MCPRという。)は1.07を下まわらないこと。

 (ロ) 被覆管の円周方向の平均塑性歪は、1%以下であること。

 MCPRの限界値1.07の計算については、既に「炉心熱設計検討会報告書」において、炉心熱設計手法の妥当性が確認されているが、さらに、過度現象解析、熱水力設計の検討を行って、MCPR算出の根拠の妥当性を確認し、通常運転時におけるMCPRの制限値が確保できること及び運転制限値を遵守することによって、W.5に示すように、運転時の異常な過渡変化時においても、限界値1.07を下まわらないことを確認した。

 また、燃料被覆管の円周方向平均塑性歪1%については、燃料材料の性質及び寸法、設計燃焼度等を考慮して検討を行い、これに対応する線出力密度を燃焼初期の燃料に対して83kW/mとすることは妥当であると判断した。この値は、燃焼により多少低下するが、通常運転時の線出力密度を44.0kW/m以下に制限することによって、通常運転時はもちろん、運転時の異常な過渡変化時にも、この限界には達しないことを確認した。

 以上のことから、本原子炉の熱水力設計は、妥当なものと判断する。

2.3.3 動特性

 原子炉を安定に運転するためには、運転中の外乱に対して、燃料の許容設計限界を超える状態となる出力振動が生じないように、自己制御性をもたせるとともに、十分な減衰特性を持たせる設計であるか、またはたとえ出力振動が生じても、それを検出して抑制できる設計であることが要求される。

 このため、本原子炉では、ボイド反応度係数の負の値があまり大とならないように設計され、反応度外乱に対しては、ドップラ効果等に基づく出力反応度係数による自己制御性を有するようになっている。また、強制循環方式によって水力学的な乱れを迎え、系統の圧力を高くして負荷変動や外乱に対する安定性、または沸騰ノイズ特性の向上が図られる。

 このような原子炉の安定性に対する設計の妥当性については、動特性解析の結果に基づいて、運転中の圧力設定値の変更、制御棒の操作または再循環流量の変化等運転中に予想される外乱に対して安定に応答し、許容設計限界内で十分満足な制御が可能であることを確認した。すなわち、これらの安定性を評価するパラメータとして系の減幅比に着目し、あらゆる運転状態において減幅比が1未満となること、さらに、通常の出力運転範囲においては、減幅比が0.25以下(チャンネル水力学的安定性については0.5以下)となることを確認した。

 チャンネル水力学的安定性及び炉心安定性については、安定性が最も悪くなると予想されるサイクル末期について解析が行われており、その結果は十分な減衰特性を有している。

 また、プラント安定性については、外乱を与えて解析が行われており、プラントの各系統とあいまって十分な減衰特性を有していること、キセノンの空間振動の安定性についても、空間振動を抑制できるような十分な負の出力反応度係数を有していることを確認した。

 以上のことから、本原子炉は、十分な安定性を有しているものと判断する。

2.3.4 機械設計

 燃料の機械設計においては、使用材料、使用温度、圧力条件、照射効果等を考慮し、原子炉内における使用期間中を通じ、通常運転時はもちろん、運転時の異常な過渡変化時にも、プラントの各系統とあいまって、許容設計限界を超えないことが要求される。

 本原子炉で使用される8行8列型の燃料集合体の構造設計については、「沸騰水型原子炉に用いる8行8列型の燃料集合体について」に示すとおり、その妥当性が確認されているがW.5に示すように運転時の異常な過渡変化時にも、許容設計限界を超えることはない。また、通常の輸送及び取扱中においても、燃料棒の変形等による過度の寸法変化を生じることのない設計になっている。

 炉内構造物は、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時及び事故時の荷重に対し、圧力容器内の温度、圧力等を考慮して必要な強度及び機能を保持するように設計される。

 以上のことから、本原子炉の炉心に関する機械設計は、妥当であると判断する。

2.4 計測制御設備

2.4.1 中央制御室

 中央制御室は、事故時にも、従事者が制御室に接近し、または留まり、事故対策操作が可能であるように不燃設計、遮蔽設計及び換気設計等の適切な防護がなされた設計が要求される。

 中央制御室には原子炉の運転監視に必要な各種指示計並びに原子炉を安全に停止するために必要な安全保護系及び工学的安全施設関係の操作盤が集中的に設けられ、監視及び制御が行えるように設計される。

 中央制御室の換気系は、他の換気系とは独立して設けられており、事故が発生した際には、外気との連絡口を遮断し、チャコール・フィルタを備えた閉口路循環方式がとられるため、従事者の内部被曝が防護される。また、中央制御室は、事故時にも外部被曝線量を抑えるよう遮蔽設計がなされる。

 したがって、事故時にも従事者が中央制御室内に留まることができ、さらに、外部から中央制御室に接近できるように設計されるので、事故対策に必要な各種の操作ができると判断する。

 中央制御室は、火災が発生する可能性を極力少なくするよう火災の発生防止、早期火災検知及び早期消火ができるように設計される。

 具体的な対策として、中央制御室内のケーブル、制御盤等は、不燃性、難燃性材料を用い、独立性を考慮した配慮がなされるほか、消火設備が設けられるので、万一、火災が発生した場合でも、必須の安全機能が損われることはないと判断する。

 なお、中央制御室において火災等により操作が困難な場合にも、スクラム後の高温状態から低温状態に安全に導びくことが可能なように中央制御室から十分離れた場所に中央制御室外原子炉停止装置が設けられる。

 以上のことから、中央制御室は、所定の機能を果たす能力を有していると判断する。

2.4.2 原子炉停止系

 原子炉停止系は、2つの独立した系統を設ける必要があり、本原子炉では炉心の反応度制御及び出力分布の調整を行う制御棒及び制御棒駆動系と、制御棒の挿入不能によって原子炉の低温停止ができない場合に、原子炉に中性子吸収材を注入して、負の反応度を与え、原子炉を低温停止させるほう酸水注入系のそれぞれ原理の異なる2つの独立した系統が設けられる。

 これらの系統は、いずれも原子炉の高温状態または出力運転状態から燃料の許容設計限界を超えることなく、炉心を臨界未満にでき、かつ、低温状態で臨界未満を維持できるような機能及び性能を有するように設計される。

 制御棒の反応度価値は、炉心の反応度を制御できるように設計される。すなわち、本原子炉は、低温状態において反応度が最も高くなり、その状態における原子炉の過剰増倍率は、約0.14Δkであるが、これに対して、制御棒による反応度制御能力は、約0.18Δkであるので、低温状態において原子炉を十分臨界未満に維持できる。

 また、スクラム時の制御棒挿入時間(全炉心平均)は、全ストロークの90%挿入までを約3.5秒としているが、この値は先行炉の実績によって十分満足することが確認されている。

 運転時の異常な過渡変化時に対しては、W.5に示すように、炉心特性とあいまって燃料の許容設計限界を超えることなく、原子炉を臨界未満にし、かつ、維持し得るようなスクラム特性を有しているので妥当であると判断する。

 W.6に示す反応度事故(制御棒落下事故)に対しては、運転員の制御棒の引抜き操作を規制する運転補助機能として制御棒価値ミニマイザを設けこれによって制御棒の最大反応度価値が0.015Δk以下となるように制限される。

 さらに、落下時の制御棒速度を0.95m/s以下に抑えるために、制御棒に落下速度リミッタを設けることとしているので、これらにより制御棒落下事故時の燃料保有エンタルピは低く抑えられ、原子炉冷却材圧力バウンダリを破損することなく、かつ、炉心は、冷却機能等を失うような破壊を生じるおそれがないことを確認した。なお、制御棒の落下速度については、実規模の試験により上記の値を満足することが示されている。

 ほう酸水注入系は、原子炉を定格出力運転状態から0.05Δk以上の余裕をもって低温停止し、この状態に維持することができるよう五ほう酸ナトリウム溶液の濃度が定められており、中性子吸収材を炉心底部から注入して、毎分0.001Δk以上の負の反応度を与え、原子炉を徐々に低温停止する能力を有している。五ほう酸ナトリウム溶液は、析出防止のため、15℃以上の温度で貯蔵するとともに、この系は、運転中でも定期的に作動試験ができることになっているので、ほう酸水注入系は、常に停止能力が確保されるものと判断する。

 以上のことから、原子炉停止系は、いかなる場合にも原子炉を安全に停止させる能力を有していると判断する。

2.4.3 安全保護系

 安全保護系は、異常状態を検知し、それを抑制するために、原子炉緊急停止系及びその他の主要な安全保護動作を自動的に開始させるとともに、事故状態が発生した場合には、直ちにこれを検知し、原子炉吸急停止系及び工学的安全施設の作動を自動的に開始させるような機能を有する設計が要求される。

 これらの設計方法に対しては、W.5に示すように、いかなる運転時の異常な過渡変化時においても、燃料の許容設計限界を超えないことが確認されており妥当であると判断する。

 安全保護系の多重性については、安全保護機能を失う結果をもたらさないように、十分の信頼性のある少なくとも2チャンネルの保護系が設けられる。さらに、原子炉緊急停止系及び工学的安全施設を起動するための検出器は二重の「1 out of 2方式」をもたせるように設計されるのでこの系を構成する機器またはチャンネルの単一故障または使用状態からの単一の取り外しを行っても安全保護機能が損われることはない。

 安全保護系は、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時、保修時、試験時及び事故時において、その保護機能を喪失しないように、その系を構成するチャンネル相互を分離し、それぞれのチャンネル間の独立性を持たせることが要求される。独立性の要求に対しては、その系を構成するチャンネルは、相互干渉が起こらないように、格納容器を貫通する計装用配管については、物理的に分離した貫通部を有する2系統を設けること及び検出器からのケーブル、電線ケーブルは、独立に中央制御室の各盤に導かれ、さらに、各トリップ系の論理回路は、盤内で独立して設けられる等可能な限り構造的、電気的に独立性を持たせるように設計される。

 安全保護系全体としては、駆動源の喪失、系の遮断等不利な状態になっても、最終的に安全な状態に落着くような設計が要求される。本系統によって作動される弁等は、フェイル・セイフとするか、または、故障と同時に現状維持(フェイル・アズ・イズ)になり、速やかに、この現状維持を補って他の系統による保護動作が行えるように設計される。

 また、主蒸気隔離弁以外の工学的安全施設を作動させる安全保護系の場合、駆動源である電源の喪失は、系の現状維持をもたらす設計となっている。しかし、工学的安全施設は、検出器、伝達系及び工学的安全施設自体が多重性及び独立性を持つことで、最終的にプラントを安全に導くように設計されるので、妥当であると判断する。

 安全保護系は、その機能を失わないことが明らかでない限り、計測制御系から分離されることが要求される。安全保護系と計測制御系の電源、検出器、ケーブルルート及び格納容器貫通計装用配管は、原則として分離するように設計される。

 安全保護系のうち、原子炉水位及び原子炉圧力を検出する計装配管ヘッダの一部は、計測制御系と共用され、また、原子炉核計装の検出部は、指示、記録計用検出部と共用されるが、計測制御系の短絡、地絡または断線によって安全保護系に影響を与えないように設計される。

 安全保護系は、各チャンネルが独立に試験できるとともに、原子炉運転中における定期的試験により、その健全性を確認できるような設計が要求される。原子炉停止系及び工学的安全施設を作動させる検出器及びチャンネルは、それぞれ最低4組に分けられ、これが二重の「1 out of 2方式」のトリップ論理を構成しており、原則として運転中でも試験ができるように設計される。また、論理回路を含む全系統の試験については、定期検査時に行うことができる。

 以上のことから、安全保護系は、十分な信頼性を有していると判断する。

2.5 原子炉冷却材圧力バウンダリ

 原子炉冷却材圧力バウンダリとなる系及び機器は、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時及び事故時においても、その健全性を確保できること及び原子炉冷却材圧力バウンダリの漏洩検出、破壊の防止及び定期的な試験を行って健全性の維持を図ることが要求される。原子炉冷却材圧力バウンダリとなる系及び機器は、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時、保修時、試験時及び事故時に発生する応力に対して、脆性的挙動及び急速な伝播型破断の防止の観点から、応力解析、疲労解析等を行うとともに、使用材料の管理、使用圧力・温度の制限及び供用期間中の監視等を考慮した設計がなされる。

 また、原子炉圧力容器の母体、溶着部及び熱影響部については、試験片を原子炉圧力容器内に挿入して、原子炉圧力容器とほぼ同様な条件で加速照射し、定期的に取り出し試験を行うこととしている。

 原子炉冷却材圧力バウンダリとなる系及び機器は、原子炉の運転開始後、圧力バウンダリの健全性を確認するため、定期的に供用期間中検査が行えるよう、機器、配管等の設計にあたっては、検査筒所へ検査機器等が接近できるように機器、配管等の配置が考慮される。

 以上のような設計上の考慮のほか、通常運転時においては、出力運転中原子炉圧力を一定に維持できるように原子炉圧力制御系が設けられる。さらに、原子炉圧力容器については、原子炉起動・停止時の加熱・冷却率を55℃/h以下に抑え、また、再循環ポンプに適切なインタロックを設けて、誤起動による熱衝撃を抑える等の措置が講じられる。

 発電機負荷遮断、タービン・トリップ、主蒸気隔離弁閉鎖等の運転時の異常な過渡変化時においては、タービン蒸気加減弁急閉、タービン主蒸気止め弁閉、主蒸気隔離弁閉等の信号により、原子炉をスクラムさせる安全保護回路が設けられるほか、逃がし安全弁を設けて原子炉冷却材圧力バウンダリの過度の圧力上昇を防止するように設計される。

 これらにより原子炉冷却材圧力バウンダリの過渡変化時の最大圧力はW.5に示すように、原子炉冷却材圧力バウンダリの設計圧力(87.9kg/cm2g)の1.1倍の圧力(96.7kg/cm2g)を超えないことを確認した。

 事故時において、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性を評価するものとして、制度棒落下事故が考えられるが、これについては中性子束高によって原子炉をスクラムさせる安全保護回路が設けられ、また、制御棒落下速度リミッタ、制御棒期値ミニマイザ等の対策が講じられる。

 これらによりW.6に示すように事故時の燃料ペレットの最大エンタルピが抑えられ、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性が確保されることを確認した。

 また、通常運転時の原子炉冷却材圧力バウンダリからの冷却材の漏洩に対しては、その漏洩の早期検出と漏洩量を確実に監視するため、ドライウェル内ガス冷却装置の凝縮水量、ドライウェル内サンプ水量等の測定により約3.8l/minの漏洩を1時間以内に検出できるように設計される。

 原子炉冷却水の漏洩が生じた場合、その漏洩量が3/8インチ径の配管破断に相当する量以下の場合は、制御棒駆動水圧系ポンプで補給でき、また、1インチ径の配管破断に相当する漏洩量以下の場合は、原子炉隔離時冷却系ポンプを起動させ、燃料の許容設計限界を超えることなく原子炉の冷却ができるように設計される。

 また、原子炉停止時に燃料の許容設計限界と原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えないことを満足するため、炉心の残留熱を除去し、原子炉停止後20時間以内に、冷却材温度を52℃以下にすることができるように残留熱除去系が設けられる。

 以上のことから、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性は、十分に確保されると判断する。

2.6 工学的安全施設

2.6.1 工学的安全施設全般

 原子炉施設の故障や破損等に起因して大量の放射性物質の放散の可能性がある場合に、これらを抑制もしくは防止するため、原子炉格納容器及び補助系で構成する一次格納施設と原子炉建家及び原子炉建家内ガス処理系で構成する二次格納施設及び非常用炉心冷却系からなる工学的安全施設が設けられる。

 これらの施設に対しては、機器の単一故障及び外部電源喪失を仮定しても、所定の安全機能を果たし得るように設計されること、また、定期的にその性能の試験、検査ができるとともに、その健全性を確認するため各系統が独立に試験、検査ができるように設計されることが要求される。

2.6.2 非常用炉心冷却系

 非常用炉心冷却系は、冷却材喪失事故を想定した場合に燃料被覆管の重大な損傷を防止し、水−ジルコニウム反応を無視し得る程度に抑え、崩壊熱を長期にわたって除去するために設けられるものであり、高圧炉心スプレイ系、低圧炉心スプレイ系、低圧注水系(3ループ)及び自動減圧系から構成される。

 これらの非常用炉心冷却系は、外部電源のほか、低圧炉心スプレイ系、低圧注水系は、独立2系統の母線及びディーゼル発電機に接続され、高圧炉心スプレイ系は、専用のディーゼル発電機に、また、自動減圧系は、蓄電池にそれぞれ接続される。さらに、これらの非常用炉心冷却系は、その起動信号、電源及び機器冷却系をも含めて区分T、区分U及び区分Vに分離しており、各区分ごとに独立の電源及び冷却系を確保するよう設計されるので、非常用所内電源のみの運転下で単一故障を仮定しても、系統の安全機能が達成できるものと判断する。

 また、高圧炉心スプレイ系、低圧炉心スプレイ系及び低圧注水系には、テストラインが設けられるのでこれらを用いた作動試験により非常用炉心冷却系の健全性が保たれていることを確認することができる。

 非常用炉心冷却系の性能評価については、W.6.3に示すように、中小破断時はもちろんのこと、最大口径配管(再循環回路配管)の瞬時破断を仮定しても、最高燃料被覆管温度の計算値が1,200℃を下まわること及び水−ジルコニウム反応割合も十分低いことを確認した。

 さらに、炉心が非常用炉心冷却系によって再冠水された後の残留熱は、残留熱除去系及び残留熱除去機器冷却系によって海水に伝達できるように伝熱経路が確保される。

 以上のことから、非常用炉心冷却系の機能及び性能は確保され、「軽水型動力炉の非常用炉心冷却系の安全評価指針」(以下「ECCS安全評価指針」という。)を満足しているので、妥当であると判断する。

2.6.3 原子炉格納容器

 原子炉格納容器は、冷却材喪失事故時に想定される最大エネルギ放出によって生じる圧力と温度に耐え、かつ、所定の漏洩率を超えることがないように設計されることが必要である。

 原子炉格納容器の設計圧力及び温度は、2.85kg/cm2g及び171℃となっているが、最も苛酷と考えられる再循環回路の最大口径の配管破断による冷却材喪失事故を仮定した場合でも、W.6.3に示すように、圧力は最高で約2.6kg/cm2gであり、温度はそのときの飽和温度を超えることはないので、事故後に想定される最大エネルギ放出によって生じる圧力及び温度に耐え得るものと判断する。

 原子炉格納容器出入口及び配管貫通部を含めた漏洩率は、0.5%/d(常温、空気、設計圧力において)以下となるように設計される。

 災害評価においては、0.5%/dの値を事故期間中一定として計算しているが、この仮定は、事故後の圧力及び温度の変化を考慮して漏洩率を評価した場合よりも厳しい結果を与えることを確認した。

 また、原子炉格納容器は、定期的な試験により、設計漏洩率を下まわることが確認される。さらに、全体漏洩率以外にも、主要な電線及びベロー付配管貫通部は2重シールにし、試験用タップが設けられるので個々に試験ができる。

 原子炉格納容器を貫通する配管系(計装配管を除く)には、原則として原子炉格納容器の内外にそれぞれ1個の自動隔離弁が設けられるとともに、必要な隔離機能の維持を確認するため、定期的な弁漏洩試験ができる試験用タップが設けられる。

 原子炉格納容器の耐圧部の材料は、その脆性遷移温度が原子炉格納容器バウンダリの最低使用温度より少なくとも17℃低いものであることを確認したうえで使用される。

 以上のことから、原子炉格納容器は、事故時に放射性物質の外部への放出を抑制する機能を有するものと判断する。

 また、冷却材喪失事故時にドライウェル内に放出された蒸気と水の混合物は、ベント管を通してサプレッション・チェンバ内のプール水中に導かれ、蒸気をこのプール内で冷却し、凝縮することによって、ドライウェル内圧の上昇が抑制される。さらに、原子炉格納容器の内圧を抑制する系として、原子炉格納容器スプレイ冷却系があるが、この系は独立した2系統からなり、それぞれ外部電源のほか、非常用電源にも接続される。したがって、機器の単一故障及び外部電源喪失を仮定しても、原子炉格納容器内の圧力及び温度を長期間にわたって抑制でき、W.6.3に示すように、原子炉格納容器内の圧力は、事故後約33日で大気圧まで低下できることを確認した。なお、原子炉格納容器スプレイポンプは、通常運転中にも定期的に作動試験が行えるようテストラインが設けられる。

 以上のことから、サプレッション・チェンバ及び原子炉格納容器スプレイ冷却系は、原子炉格納容器内の圧力及び温度を低下させるに十分な機能を有するものと判断する。

2.6.4 原子炉建家内ガス処理系

 格納施設雰囲気浄化系のひとつとして、非常用再循環ガス処理系と非常用ガス処理系からなる原子炉建家内ガス処理系が設けられる。

 本系統は、冷却材喪失事故時等において、環境に放出される放射性物質の濃度を減少させる機能を有する設計であることが要求される。このため、事故時にはドライウェル圧力高、原子炉水位低及び原子炉建家放射性高のいずれかの信号で、常用換気系が閉鎖するとともに、本系統が自動的に作動するように安全保護回路が設けられる。

 これらの系統は、いずれも非常用電源に接続されるので、外部電源喪失時でも運転制御が可能である。

 非常用再循環ガス処理系は、100%容量をもつ2系統からなり、事故時に原子炉建家内空気をこの系を通して再循環し、原子炉格納容器から漏洩してきた放射性物質をフィルタにより除去できる。よう素用チャコール・フィルタの除去効率については、湿度80%以下において、97%以上になるようにチャコール・ベッドの厚さを約5cmにしており、湿度を80%以下に保つため、湿分除去装置及びヒータが設けられる。高性能粒子フィルタは、0.3μの粒子に対して、99.9%以上を除去できるように設計される。

 非常用ガス処理系は、非常用再循環ガス処理系で処理したガスの一部を再度処理した後、排気筒から放出する系統である。

 本系統は、2系統からなり、1系統で原子炉建家を水柱6.4mmの負圧に保ち、原子炉建家内空気の100%を1日で処理する能力を有している。

 この系のよう素用チャコール・フィルタのベッド厚さは約20cmあり、よう素除去効率は、99%以上になっている。また、高性能粒子フィルタは、0.3μの粒子に対して、99.9%以上を除去できるように設計される。

 上述の非常用再循環ガス処理系及び非常用ガス処理系のよう素用チャコール・フィルタのよう素除去効率は、それぞれ97%以上及び99%以上であることが実験により確認されている。

 さらに、チャコール・フィルタのよう素除去効率の経年変化等についても、実験により問題のないことが示されており、定期検査時には、フィルタの性能が確認されることになっている。

 以上のことから、原子炉建家内ガス処理系は、事故時に環境に放出される放射性物質を低減させる機能を有するものと判断する。

2.6.5 可燃性ガス濃度制御系

 可燃性ガス濃度制御系は、原子炉格納容器の健全性を維持するため、冷却材喪失事故後の原子炉格納容器内に存在する水素または酸素の濃度を燃焼限界以下に抑制できることが要求される。

 本系統は、冷却材喪失事故が発生した場合でも原子炉格納容器内雰囲気中の水素ガス濃度を4vol%以下、または酸素ガス濃度を5vol%以下に維持できるように設計されるが、水素または酸素ガスの燃焼限界に関する各種の実験結果から、水素または酸素ガス濃度のいずれか一方が前述の制限値以下に維持されるなら、燃焼反応は生じないことが確認されている。

 本系統の可燃性ガス濃度制御系の容量を定めるにあたっては、原子炉格納容器内の可燃性ガスの発生源として、冷却材喪失事故後における非常用冷却水の放射線分解をも考慮し、十分な安全余裕をもった前提条件が用いられている。すなわち、水の放射線吸収に対する水素ガス及び酸素ガスの発生割合としては、G(H2)=0.5(分子/100eV)及びG(O2)=0.25(分子/100eV)が用いられているが、この値は、水の放射線分解に関する各種実験結果からみて、十分な安全余裕をもったものである。

 なお、可燃性ガス濃度制御系は、1系統で100%処理容量をもつ独立した2系統が設けられ、外部電源のほか、非常用電源にも接続されるので冷却材喪失事故時に機器の単一故障を仮定しても、機能が失われることはない。

 また、容量の妥当性はW.6に示す冷却材喪失事故解析において確認した。

 以上のことから、可燃性ガス濃度制御系は、冷却材喪失事故時に原子炉格納容器内に発生する水素及び酸素ガスの急激な反応を防止する機能を有するものと判断する。

2.7 非常用電源設備

 非常用電源設備は、機器の単一故障及び外部電源喪失を仮定した場合でも、燃料及び原子炉冷却材圧力バウンダリの設計条件を超えることなく原子炉を停止し、冷却できるよう、所要の系統機器を作動させ得る容量と機能を有することが必要である。

 さらに、冷却材喪失事故時にも炉心の冷却とともに、原子炉格納容器等安全上重要な系統及び機器の機能を確保できる容量と機能を有することが要求される。

 非常用電源設備としては、非常用ディーゼル発電機3台と蓄電池6組が設けられるが、これら非常用ディーゼル発電機及び蓄電池は、非常用炉心冷却系の区分T、区分U及び区分Vに応じて独立分離した部屋に収納させるほか、独立分離した非常用母線に接続される。

 非常用ディーゼル発電機は、発電所の通常運転中も定期的にその起動試験が行われ、その信頼性が確保されるとともに、蓄電池も、通常運転中に定期的にその健全性及び浮動充電状態にあること等が確認される。

 また、所内ケーブル、電源盤等の絶縁材料は、可能な限り不燃性または難燃性の材料が使用される。

 さらに、本原子力発電所の全動力電源が短期間喪失する可能性についても検討し、高度の信頼性が期待できる蓄電池を除く他の全電源喪失を仮定した場合にも、原子炉を安全に停止できることを確認した。

 この場合、原子炉は自動的にスクラムし、また、蓄電池を電源とする非常用照明、運転監視補助装置、原子炉核計装及びプロセス計装等により、必要な運転監視を行うことができる。

 原子炉の冷却については、逃がし安全弁と原子炉蒸気で駆動する原子炉隔離時冷却系により、約30分程度冷却を行うことができ、この間に交流電源の回復が期待できるので、ほかに特別な電源を必要としない。

 以上のことから、非常用電源設備は、外部電源喪失と機器の単一故障を仮定しても、安全上重要、かつ、必須の設備が所定の機能を果たすのに、十分な電力を供給できる能力を有するものと判断する。

2.8 核燃料貯蔵施設

 核燃料貯蔵施設は、適切な貯蔵容量を有するとともに核燃料の臨界防止、残留熱除去、冷却水の漏洩検知等ができるような機能が要求される。

 新燃料貯蔵庫の貯蔵ラックは、所定の位置以外には燃料集合体を挿入できない構造とされ、新燃料は乾燥状態で貯蔵される。

 また、新燃料貯蔵庫内に水が充満するのを防止するために排水口が設けられる。

 新燃料貯蔵庫は、全炉心燃料の約30%を収納でき、通常状態では実効増倍率を0.90以下に、また、容量一杯の新燃料を貯蔵した状態で貯蔵庫内が水で満たされるという厳しい異常状態を仮定しても、実効増倍率は0.95以下に保たれるように設計される。さらに、新燃料貯蔵庫には、水の消火栓を設けない設計となっていること、また、実効増倍率が最も高くなるような密度の水分で満されると仮定した場合でも、臨界未満になることを計算により確認していることから、予想されるいかなる状態においても臨界に達することはないものと判断する。

 使用済燃料プールの貯蔵容量は、全炉心燃料の約270%に設計され、通常運転中は全炉心の燃料を貯蔵できる容量が常に確保される。

 また、漏洩防止及び検出に対する設計上の考慮もなされる。

 使用済燃料貯蔵ラックは、貯蔵燃料の臨界を防止するために、適切な燃料間距離をとるとともに、中性子吸収材としてのボロンを含んだ燃料ラックを用いることになっており、計算上、通常状態で容量一杯の新燃料を貯蔵した場合を仮定しても、実効増倍率は0.90以下に、また、燃料間距離がラック内で最小となるような状態を仮定しても、0.95以下に保たれることを確認した。

 したがって、使用済燃料プールは予想されるいかなる状態においても臨界に達することはないものと判断する。

 使用済燃料から発生する崩壊熱は、燃料プール冷却浄化系によって除去され、通常状態での装荷量が最大の場合(170%炉心分)でも、燃料プール水温が52℃を超えないように設計される。さらに、これを超える可能性がある場合には、残留熱除去系が併用され、270%炉心分を貯蔵した場合でも、十分な冷却能力が確保される。また、最終的な熱の逃がし場までの伝熱経路は、機器の単一故障を仮定しても、確保されるようになっているので、使用済燃料プールの冷却能力は十分であると判断する。

 また、使用済燃料輸送容器は、インターロックにより使用済燃料プール上を通過しないようになっており、燃料取替機は、ワイヤの二重化や各種のインターロックにより取扱い中の燃料集合体の落下を防止する対策がとられる。

 なお、万一、燃料集合体が落下することを仮定しても、使用済燃料プールは、その機能を失うような損傷が生じないように設計される。

 以上のことから、本施設の信頼性及び貯蔵能力は妥当なものと判断する。

2.9 放射性廃棄物廃棄施設

 放射性廃棄物廃棄施設は、廃棄物の性状に応じて、貯留等による放射性物質の減衰または濾過、蒸発濃縮、イオン交換等による放射性物質の除去等により、放出放射性物質の量を実用可能な限り低減することが要求される。

 さらに、固体廃棄物を貯蔵する貯蔵庫等は、容量が十分であるとともに、敷地周辺の空間線量率を実用可能な限り低減することが必要である。

 放射性廃棄物廃棄施設は、発電所の運転中及び停止中で生じる放射性廃棄物を収集処理するための設備で、気体廃棄物処理設備、液体廃棄物処理設備及び固体廃棄物処理設備で構成される。

 気体廃棄物処理設備及び液体廃棄物処理設備の性能については、W.4に示すとおり、これらの設備から放出される放射性物質による被曝線量が現行法令に定める一般公衆の許容被曝線量を十分下まわるとともに、「発電用軽水型原子炉施設の線量目標値に関する指針」(以下「線量目標値に関する指針」という。)を満足し得るものであることを確認した。

2.9.1 気体廃棄物処理設備

 気体廃棄物処理設備は、タービン復水器の排ガスを処理するためのもので、排ガス再結合器、排ガス減衰管、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置等からなる。

 復水器空気抽出器排ガス中に含まれる水素、酸素ガスは、復水器空気抽出器作動蒸気で希釈され、非爆発性となっているが、排ガス再結合器は、触媒反応によって、水素ガスと酸素ガスを再結合させ、作動蒸気が復水された後も、水素ガス濃度を爆発限界内に抑えるものである。

 これらの機器は、それぞれ予備器が設けられるので、万一、不具合が生じた場合にも所定の性能は維持されるものと判断する。

 活性炭式希ガス・ホールドアップ装置等の性能については、活性炭量、流量、温度及び湿分等を検討した結果、排ガス中のキセノンを27日間、クリプトンを約40時間保持するのに十分な能力を有するものと判断する。

 また、タービンが停止した場合、復水器に残留するガスを活性炭式希ガス・ホールドアップ装置で処理できるように起動用空気抽出器が設けられるが、これは排ガス中の放射性物質をより少なくすることから妥当であると判断する。

 なお、タービンの軸封には、タービン軸封蒸気発生器の蒸気を使用し、かつ、タービン軸封蒸気発生器への給水には、復水貯蔵タンク水が使用されるのでタービン軸封系排ガス中の放射性物質は極めて少ないものと判断する。

2.9.2 液体廃棄物処理設備

 液体廃棄物処理設備は、発生する放射性廃液を分離収集し、処理するためのもので、低電導度廃液系、高電導度廃液系、洗濯廃液系、除染廃液系、シャワードレン系及び油ドレン系で構成される。

 これらの系には、処理する放射性廃液の性状に応じてタンク、クラッド除去装置、濾過装置、脱塩装置、蒸発濃縮装置、油除去装置及び貯蔵タンク等が設けられるが、これらの設備の性能については、処理容量等からみて、発生廃液量を十分処理する能力を有するものと判断する。

 また、これらの機器は、独立した区画内に設けるかまたは周辺に堰を設けて、万一、機器から液体廃棄物が漏出した場合にも管理区域外に漏出することがないように設計されるので、妥当であると判断する。

 なお、処理済液は放射能レベルのごく低いものを除き、原則として環境には放出せず、できる限り原子炉補給水として再使用することとしているが、この方針は妥当であると判断する。

2.9.3 固体廃棄物処理設備

 固体廃棄物処理設備は、液体廃棄物処理設備で発生した濃縮廃液、使用済樹脂、雑固体廃棄物等を処理するためのもので、濃縮廃液系、廃スラッジ系、雑固体系で構成される。

 これらの系には、固体廃棄物の性状及び放射性物質濃度に応じてドラム詰するかまたはタンク貯蔵できるように貯蔵タンク、セメント固化装置、圧縮減容装置等が設けられる。

 濃縮廃液、雑固体廃棄物等はドラム詰され、固体廃棄物貯蔵庫に貯蔵保管される。固体廃棄物貯蔵庫の貯蔵保管能力は、約2年分であるが、必要に応じて増設される。使用済樹脂は、タンク内で約5〜10年間貯蔵保管し、放射能の減衰が図られる。その後必要に応じてドラム缶内に固化される。使用済制御棒等は、その放射能を減衰させるため、使用済燃料プール内に貯蔵保管される。

 固体廃棄物の処理及び貯蔵保管にあたっては、従事者の放射線被曝を少なくするため、十分な遮蔽を設けるとともに、遠隔操作が可能なように配慮される。

 また、固体廃棄物の貯蔵による敷地周辺の直接線量、スカイシャイン線量による空間線量は、人の居住の可能性のある敷地境界において年間5mR以下となることを目標に遮蔽等が講じられる。

 なお、固体廃棄物を最終的に処分する場合には、関係官庁の承認を受けることになっている。

 以上のことから、固体廃棄物処理設備の設計は、妥当であると判断する。

2.10 放射線監視施設

 放射線監視施設は、原子炉施設内外の放射線を監視するため、原子炉格納容器、放射性物質の放出経路及び敷地周辺の場所を適切にモニタリングできることが必要である。

 放射線監視施設は、原子炉施設内の各系統及び各エリアにおける放射線レベルの異常を早期に検出し警報を発するとともに、発電所外に放出する放射性物質を常時監視する機能を持つもので、プロセス放射線モニタリング設備、エリア放射線モニタリング設備、環境モニタリング設備等で構成される。

 プロセス放射線モニタリング設備は、気体、液体等の流体中に含まれる放射性物質の放射線を連続的に測定し、放射線レベルが基準値を超えたときには、警報を発するように設計されるほか、サンプリング等によって放射性物質濃度を測定できるように設計される。これらのモニタの配置については、主蒸気管、非常用ガス処理系、排気筒等放射線レベルを監視する必要がある場所が選定される。

 エリア放射線モニタリング設備は、建家内エリアの外部放射線量率を監視するもので、中央制御室、燃料取替エリア、タービン発電機運転エリア等への人の立入頻度等を考慮して配置される。

 環境モニタリング設備は、発電所敷地周辺の放射線及び放射性物質を監視するためのものであり、モニタリング・ポスト、モニタリング・ポイント等の固定モニタリング設備、環境試料分析関係施設、機動性のある放射能観測車、気象観測設備等が設けられる。

 以上のことから、放射線監視施設は妥当なものと判断する。

3 従事者の放射線防護及び被曝管理

 原子炉施設の業務に従事する従事者の放射線防護及び被曝管理は、「核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下「原子炉等規制法」という。)及び「労働安全衛生法」を遵守し、さらに、従事者の被曝線量を低減するように努めることとしている。

 放射線の防護は、基本的には、外部放射線に対しては防護遮蔽により、また、空気汚染による内部被曝に対しては換気等により行われる。

 このほか、従事者の被曝低減をはかるため、従事者の被曝に寄与するクラッドの発生を抑止または除去すること等放射線源の低減が図られる。

 また、監視点検または操作を必要とする機器が高線量区域にあるかまたはそれ自体高放射能であるものについては、遠隔化、自動化が図られ、また、作業環境の改善に資するため、ベローシールの採用等弁からの放射性物質の漏洩防止対策が講じられる。

 被曝管理は、外部線量及び空気中もしくは水中の放射性物質の濃度等が「原子炉等規制法」で定める線量及び濃度を超えるおそれのある場所を管理区域として設定し、人の出入管理を行うとともに、これらの区域内においては、外部放射線量、空気中もしくは水中の放射性物質の濃度等を監視し、その結果により管理区域内等の諸管理が行われる。

 従事者の被曝線量については、フイルム・バッヂ、ホール・ボディ・カウンタ等により測定評価するとともに、その結果を作業環境の整備に反映し、また、定期的に健康診断を実施し、従事者の身体の状態を把握することとしている。

 以上のことから、従事者の放射線防護及び被曝管理は妥当であると判断する。

4 原子炉施設周辺の一般公衆の被曝線量評価

4.1 被曝線量評価の概要

 申請者が行った一般公衆の被曝線量評価は、原子炉施設の平常運転時に環境に放出される放射性物質の量を推定し、これらの放射性物質による一般公衆の被曝線量が現行法令に定める許容被曝線量を下まわること、さらに、「線量目標値に関する指針」に十分適合することを示すために行われている。

 放射性物質の環境への放出量については、先行炉における燃料損傷の程度等の実績を参考に放射性物質が原子炉から排気口または排水口に至るまでの過程について解析し、放出経路ごとに計算されている。

 大気中に放出された放射性物質による被曝線量は、敷地における1年間の気象資料を用いて算出された空気中濃度をもとに計算され、また、海洋に放出された放射性物質による被曝線量は、冷却水放水口濃度を用いて計算されている。

 放射性物質の環境への放出量及び一般公衆の被曝線量の計算は、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針」(以下「評価指針」という。)にしたがって行われている。

4.2 大気中に放出される放射性物質の年間放出量

 気体廃棄物中の主な放射性物質は、1次冷却材中に含まれる核分裂生成物のうち、放射性希ガス(以下希ガスという。)及び放射性よう素(以下よう素という。)であるので、これらの放射性物質に着目して計算されている。

 このほかにも、冷却材中の空気及び原子炉圧力容器外周部の空気が中性子照射を受けて生成するアルゴン−41等の放射化生成物が放出されるが、これらの放射化生成物は生成量が少ないこと、または半減期が短いこと等により、環境への放出量は少ないことが示されている。

 希ガス及びよう素の年間放出量は、炉心燃料からの全希ガス漏洩率を想定し、この漏洩率に相当する希ガス及びよう素が炉心燃料から運転中連続して出てくるものとして計算されている。

 炉心燃料からの全希ガス漏洩率は、年間平均値として、0.4Ci/s(30分減衰換算値)が用いられている。

 これまでの先行炉の運転実績によれば、全希ガス漏洩率の年間平均値は、たかだか0.3Ci/s程度であることを考慮すると、ここで用いられた値は、被曝線量評価に用いる値としては妥当であると判断する。

 冷却材中のよう素の濃度は、冷却材保有量、冷却材浄化系の性能等に関する設計条件と「評価指針」に示されたパラメータを用いて計算されている。

(1) 主復水器空気抽出器系から放出される希ガス及びよう素は、主復水器から空気抽出器系に移行する希ガス及びよう素の割合を「評価指針」と同じく、それぞれ100%及び1%とし、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置の希ガスの保持時間については、キセノンについて27日間、クリプトンについて40時間という設計値を用いて計算されている。

 なお、よう素については希ガスと同様に活性炭式希ガス・ホールドアップ装置に導びかれるが、希ガス・ホールドアップ装置の活性炭層は、極めて厚いため、よう素がほとんど除去されるので、放出量の計算にあたっては無視されている。

(2) 主復水器真空ポンプの運転による排ガス中の希ガス及びよう素の放出量は、「評価指針」に示されたパラメータと前述した燃料からの全希ガス漏洩率(0.4Ci/s以下同様)を用いて計算されている。

 放出回数は、年間5回とされており、また、放出希ガスの核種組成は、「評価指針」と同じく、減衰時間を12時間として計算されている。

 年間5回の放出回数は、先行炉の実績を考慮したものである。

 なお、原子炉が停止した場合、主空気抽出器に代わって起動用空気抽出器が運転される。起動用空気抽出器の排ガスは、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置に導びかれるので、主復水器に残留する希ガス及びよう素は少なくなる。したがって、主復水器の真空が破壊されたあと、真空ポンプを運転する場合には、放出される希ガス及びよう素の量は少なくなるものと期待される。しかし、ここでは、この効果がないものとして計算されている。

(3) タービン建家、原子炉建家、廃棄物処理エリア等の換気により放出される希ガス及びよう素は、冷却材の漏洩率、漏洩冷却材中に含まれる希ガス及びよう素が空気中に移行する割合等を考慮して計算されるが、ここでは、燃料からの全希ガス漏洩率と「評価指針」のパラメータを用いて計算されている。

(4) 定期検査時に放出されるよう素

 定期検査時には、冷却材中に含まれているよう素のうちよう素−131が機器の保守点検等に伴って放出されるものとし、その量は、燃料からの全希ガス漏洩率と「評価指針」のパラメータを用いて計算されている。

 以上の前提条件に基づいて、計算された希ガスの年間放出量は約5.0×104Ci(γ線実効エネルギ0.25MeV)、よう素の年間放出量は、よう素−131、約2.1Ci、よう素−133、約3.4Ciである。

4.3 海洋中に放出される放射性物質の年間放出量

 液体廃棄物は、各建家の機器からのドレン、床ドレン、復水脱塩系樹脂の再生廃液、保護衣類等を除染する際に生ずる洗濯廃液等とされており、これらのなかに含まれる主な放射性物質は、冷却材中に漏洩した核分裂生成物と冷却材中に含まれる不純物が中性子照射を受けて生成した放射化生成物である。

 発生した液体廃棄物は、その性状に応じて分離回収された後、液体廃棄物処理設備で濾過、脱塩、蒸発濃縮等の処理を行うこととされ、処理によって生成した処理水は、放射性物質の濃度及び水質により再使用、再処理または所外放出を行うこととされている。

 環境に放出される液体廃棄物の量は、処理モード、処理設備の性能、処理水の再使用の割合等を考慮して計算されているが、その計算にあたっては、先行炉の運転実績が参考にされている。

 この結果、液体廃棄物の年間放出量は、約8,500m3で、そのなかに含まれる放射性物質の量は、トリチウムを除き、約0.58Ciである。

 液体廃棄物中の放射性物質による被曝線量の計算を行うにあたっては、処理水の再使用の条件等を考慮して、放射性物質の年間放出量は、トリチウムを除き、1Ci、トリチウムは、先行炉の実績を参考として100Ciという値が用いられている。

 冷却水放水口の濃度は、上記の年間放出量と「評価指針」に示された核種組成をもとに年間の冷却水量を用いて放射性核種ごとに算出している。

4.4 被曝線量の計算

4.4.1 気体廃棄物中の希ガスによる全身被曝線量

 気体廃棄物中の希ガスによる全身被曝線針の計算は、排気筒から拡散移動する放射性雲からのγ線による外部全身被曝線量を対象に行われている。

 計算にあたっては、W.4.2で述べた希ガスの年間放出量及びγ線の実効エネルギを基礎にW.1.4で述べた大気拡散の解析結果を用い、かつ、連続放出、間けつ放出の放出モードを考慮して「評価指針」に示された方法により、希ガスのγ線による全身被曝線量が計算されている。

 この結果、希ガスからのγ線による全身被曝線量は、敷地境界外の最大となる場所において年間約0.3mremである。

4.4.2 液体廃棄物中の放射性物質による全身被曝線量

 液体廃棄物中の放射性物質による全身被曝線量の計算は、放射性物質が海産物を介して人体に摂取される場合の内部全身被曝線量を対象にして行われている。

 人体の放射性物質の摂取率は、海水中の放射性物質濃度、海産生物の濃縮係数、海産物摂取量等を考慮して、「評価指針」に示された方法により計算されている。

 この場合、海水中の放射性物質濃度は、W.4.3で示した放水口濃度が用いられている。

 この結果、液体廃棄物中の放射性物質による全身被曝線量は、年間約0.2mremである。

4.4.3 よう素に起因する甲状腺被曝線量

 甲状腺被曝線量の計算は、気体廃棄物中のよう素及び液体廃棄物中のよう素に着目し、これらが呼吸、葉菜、牛乳及び海産物を介して成人、幼児及び乳児にそれぞれ摂取される場合の内部甲状腺被曝線量を対象にして行われている。

 人体のよう素摂取率は、空気中または海水中のよう素濃度、呼吸率、空気中のよう素が葉菜に移行する割合、海産生物の濃縮係数、食物摂取量等を考慮して「評価指針」に示された方法により計算されている。

 この場合、よう素の地表空気中濃度は、W.4.2で示したよう素の年間放出量をもとに、W.1.4で示した大気拡散の解析結果を用いて求め、また、海水中のよう素濃度は、W.4.3で示した放水口濃度が用いられている。

 甲状腺被曝線量の計算は、人体に摂取されたよう素の甲状腺に移行する割合が、摂取食物中に含まれる安定よう素の量によって変化することを考慮し、各被曝経路における安定よう素摂取量に応じて行われている。

 この結果、よう素に起因する甲状腺被曝線量は、敷地境界外の最大となる場所において年間約1.4mremである。この線量は幼児がよう素を呼吸、葉菜及び牛乳を介して摂取し、かつ、海藻類を除く海産物を介して摂取するとした場合の値である。

4.5 評価

 前述の計算に用いられた方法は、「評価指針」に示されたものと同一のものであり、また、「評価指針」に定められていない条件も、原子炉施設の設計、運転実績よりみてきびしいものが使用されている傾向にあると考えられる。

 計算された被曝線量の値は、全身被曝線量については年間約0.5mrem、甲状腺被曝線量については年間約1.4mremであり、「線量目標値に関する指針」に定める全身被曝線量(年間5mrem)及び甲状腺被曝線量(年間15mrem)の線量目標値を下まわっている。実際の運転時における諸種の変動要因、計算上省略されている諸要因を考慮しても、本原子炉施設は、「線量目標値に関する指針」を満足しているものと判断する。

 以上の評価において取り上げられていない被曝線量として、ひとつは、原子炉施設からの直接線量及びスカイシャイン線量がある。これらの線量は、原子炉建家のコンクリート壁等によって十分遮蔽され、人の居住の可能性のある敷地境界において年間5mR以下となることを目標に抑えられ、かつ、また、この線量は、線源が固定されているため、距離が離れるにしたがって、急激に減衰するという性質を考慮すると、一般公衆の被曝線量に寄与する地点は、敷地境界近傍に限られる。

 他の被曝線量は、β線による皮膚被曝線量、海水浴中に受ける被曝線量、大気中に放出された粒子状放射性物質に起因する被曝線量等があるが、これらの被曝線量については、「発電用軽水型原子炉施設の安全審査における一般公衆の被ばく線量評価について」に示すように、一般に小さい寄与しか与えない。

 したがって、これらによる線量等を考慮しても周辺監視区域外における被曝線量は、現行法令に定める許容被曝線量(年間500mrem)をはるかに下まわるものと判断する。

5 運転時の異常な過渡変化の解析

 運転時の異常な過渡変化とは、原子炉の運転状態において原子炉施設寿命期間中に予想される機器の単一故障または誤動作あるいは運転員の単一誤操作によって、原子炉施設が通常運転状態から外れる場合をいう。

 これらの原因になるものとしては、

 (イ) 弁1個の誤開放または誤閉止
 (ロ) 単一の機器の誤始動または誤停止
 (ハ) 単一の制御機器の誤動作または誤操作
 (ニ) 単一の電気系故障
 (ホ) 単一の運転員誤操作

が考えられるが、これらの原因により原子炉圧力、原子炉冷却材温度、原子炉冷却材流量、原子炉水位、原子炉出力及び炉心反応度に変動を生じる。

 このような運転時の異常な過渡変化時においても、原子炉の炉心及びそれに関連する原子炉冷却系、計測制御系及び安全保護系は、燃料の許容設計限界を超えることなく、また、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性を確保できるよう、それぞれの機能を果たし得るような設計になっていることが要求される。

 これらプラント各系統の設計の妥当性を確認するため、燃料の許容設計限界に対しては、

 (イ) MCPRが限界値(1.07)を下まわらないこと
 (ロ) 燃料被覆管の円周方向平均塑性歪が1%に至らないこと
 (ハ) 急激な反応度増加をもたらすような過渡現象に対しては、燃料ペレットの最大保有エンタルピが許容設計限界値(内圧が問題となる場合は110cal/g・UO2、その他の場合は170cal/g・UO2)を超えないこと

また、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性に対しては、

 過渡最大圧力が設計圧力の1.1倍の圧力(96.7kg/cm2g)を超えないこと

を具体的な判断基準として運転時の異常な過渡変化解析の評価を行った。

 以下に示す申請者の解析においては、運転時の異常な過渡変化が生じる可能性のある系を再循環系、給水系、主蒸気系、制御系及びその他の系に分類し、それぞれ過渡変化の結果が厳しくなる事象及び条件を選定しており、また、スクラム反応度曲線の適用期間に応じて炉心状態を早期炉心と平衡炉心末期にわけて解析を行っている。

 これらのなかには、単一故障の定義からはずれるが、機器の設計の妥当性を評価するために解析している異常な過渡変化も含まれている。

 このような事象の分類は、従来から行われているものであり、条件の選定にあたっても、それぞれの系を代表し、包含するものが選ばれていることから妥当であると判断する。

5.1 早期炉心における過渡変化

5.1.1 再循環系の過渡変化

 再循環系の異常な過渡変化の原因は、再循環ループの流量、または温度の急激な変化によるものであり、再循環ポンプの故障、再循環流量制御系の誤動作、再循環ループの誤起動が考えられる。

(1) 再循環ポンプ1台軸固着

 ポンプ軸が瞬時に固着するという仮定は、現実性がないとも考えられるが、ポンプ軸固着が起こると炉心流量は急減し、ボイドが急増する。したがって、出力は減少するが、燃料の伝熱時定数のため初期のごく短時間の間、表面熱流束と流量の不整合が生じMCPRは減少する。

 過渡現象を通じてMCPRの変化量(以下ΔMCPRという。)の最大値は0.07である。

 また、タービントリップにより圧力は上昇するが、タービン・バイパス弁及び逃がし安全弁の作動により原子炉圧力は78.3kg/cm2gまでの上昇にとどまる。

(2) 再循環ポンプトリップ

 現象的には、再循環ポンプ軸固着と同様であり、再循環ポンプがトリップすると炉心流量は急減し、ボイドは急増する。再循環ポンプ・モータ系の慣性定数の設計値は5秒であるが、本解析では、製作誤差を考慮し、結果が厳しくなるよう4.5秒としている。また、所内母線の単一故障があっても2台の再循環ポンプ駆動モータの電源が同時に失われることはないが、解析上2台の再循環ポンプが同時にトリップするものと仮定している。

 再循環ポンプ2台トリップの過渡変化は、ポンプ・モータの慣性のため、再循環ポンプ1台の軸固着の過渡変化よりも緩やかであり限界値を超えることはない。また、再循環ポンプ1台トリップの場合は、さらに緩やかな過渡変化となる。

(3) 再循環流量制御器誤動作

 再循環流量制御系の誤動作により再循環流量が減少する場合の最も厳しい過渡変化として、両ループの流量制御器に零信号が発生した場合を仮定している。流量減少率は、速度制限器によって11%/sに抑えられる。

 過渡解析結果は、再循環流量の減少率が大きいほど厳しいが、再循環流量の減少率は、速度制限器によって制限されるため、再循環ポンプ2台トリップと同程度のものとなる。

 次に、再循環流量が増加する場合の最も厳しい過渡変化として、両ループの流量制御器に増加要求信号が発生した場合を仮定している。流量増加率は、速度制限器によって11%/sに抑えられる。また、流量増加量を厳しく評価するため原子炉は、自動流量制御範囲の下限(68%出力50%流量)で運転中と仮定している。

 この過渡変化においては、炉心流量の増加に伴い出力も増加するが、燃料の伝熱時定数のため、表面熱流束の増加は、炉心流量の増加に比較して緩やかなものとなる。また、中性子束の増大により、炉心流量と表面熱流束が平衡に達する前に原子炉はスクラムされ、原子炉出力の増加は抑えられる。

 原子炉圧力は約0.3kg/cm2上昇するにすぎず、また、部分負荷であるため、MCPRの初期値は大きく、過渡時に限界値を下まわることはない。

(4) 再循環ループ誤起動

 停止中の再循環ループを予熱なしに誤起動すると炉心入口サブクーリングが増加し、出力が急上昇する。

 再循環ループ中の冷却材温度は、圧力容器の脆性遷移温度を、考慮して38℃以下にならないように管理されるが、解析上は38℃の冷水で満たされていると仮定している。

 また、原子炉出力は定格出力の50%で運転を行っている状態を仮定している。

 再循環ポンプを起動することにより炉心流量が急激に増加する。このため、ボイドが減少し、中性子束は、定格の96%に達する。

 表面熱流束は、徐々に上昇するが、定格値を超えることはなく、過渡時のMCPRは1.40以上を維持する。また、原子炉の圧力上昇は約0.9kg/cm2程度である。

5.1.2 給水系の過渡変化

 給水系で生じる異常な過渡変化の原因としては、次の2つが考えられる。ひとつは、原子炉水の温度の低下をきたすもので、これには、給水流量の増加によるサブクーリングの増加と、給水加熱の喪失による原子炉給水温度の低下がある。もうひとつは、原子炉圧力容器内の冷却材の減少をきたすもので、これは給水流量の喪失によって起こる。

(1) 給水制御器故障

 給水制御器の誤動作等により、給水流量が急激に増加する。初期運転状態は、定格出力の68%の場合と105%の場合を仮定する。解析結果を厳しく見積もるため再循環系は手動運転モードとする。68%出力の場合、給水流量と主蒸気流量の不整合が最も大きくなり原子炉に大きな給水流量が入る。

 給水流量増加による炉心への影響は、サブクーリングの増加によってボイドが減少し、原子炉出力が増加することであるが、原子炉出力の増加率は小さく、いずれの場合でも過渡時に限界値を超えることはない。また、高水位タービン・トリップに至るものの、タービン・バイパス弁が動作するので発電機負荷遮断(タービン・パイパス弁不動作)よりも緩やかな過渡変化となる。

(2) 給水加熱喪失

 給水加熱は、主蒸気から抽気された蒸気で行われるが抽気弁の故障により給水加熱源は喪失し、主復水器から原子炉に戻される給水の温度は低下することとなる。設計上は6段ある給水加熱器のうち、どの1段が加熱機能を喪失しても、給水温度の変化を55℃以内にするようになっているが、解析上は給水温度が55℃低下するものとしている。

 給水加熱喪失の結果、炉心入口サブクーリングが増加し原子炉出力は上昇する。中性子束は入口サブクーリングの増加により定格の122%まで増加し、中性子束高(熱流束相当)により原子炉はスクラムされる。過渡現象を通じてΔMCPRの最大値は0.12となる。

 この過渡変化は、早期炉心用スクラム曲線の適用期間において熱的に最も厳しい過渡変化であり、これにより、この期間のMCPRの運転制限値が定められる。

(3) 全給水流量喪失

 給水制御器の故障、または給水ポンプのトリップにより部分的な給水流量の減少、または全給水流量の喪失が起こり原子炉水位が低下する。この解析では、給水ポンプの慣性を考慮して5秒で給水流量が完全に喪失するものと仮定している。

 給水流量が喪失すると、流入量と原子炉圧力容器からの流出蒸気量との不整合により、原子炉水位は急速に低下する。このため、原子炉は水位低(レベル3)によりスクラムされる。さらに、原子炉水位低(レベル2)により再循環ポンプ・トリップが起こる。このとき原子炉は、既にスクラムされており、出力は十分減少しているので再循環ポンプ2台トリップ時よりも緩やかな過渡現象となる。

 なお、原子炉水位低下に対しては、原子炉水位低(レベル2)で原子炉隔離時冷却系が起動し、原子炉水位の低下を防止するように設計される。

5.1.3 主蒸気系の過渡変化

 主蒸気系に生じる異常な過渡変化は、主蒸気系配管に設けられている弁が急速に閉鎖、または開放することによるものであり、これらは、原子炉圧力の上昇、または原子炉冷却材の減少を引き起こす。

(1) 発電機負荷遮断

 系統故障等により、発電機負荷遮断が生じると、タービン発電機の出力負荷アンバランス検出回路からの信号でタービン蒸気加減弁が急速閉鎖し原子炉はスクラムされる。

 発電機負荷遮断の中で最も厳しい過渡変化は、105%出力でタービン・バイパス弁不動作を仮定した場合である。解析上、タービン蒸気加減弁の閉鎖時間は、設計値よりも厳しく0.075秒としている。

 中性子束は定格の196%に達し、表面熱流束は109%に達する。逃がし安全弁の動作により圧力は約79.8kg/cm2gに抑えられる。また、ΔMCPRの最大値は0.10となる。

 この過渡変化は、主蒸気系の過渡変化の中で最も厳しいものである。

 タービン・バイパス弁が動作する場合には、さらに、緩やかな過渡変化となる。

(2) タービン・トリップ

 タービン発電機の異常、または原子炉系の誤動作等によりタービン・トリップが発生すると、タービン主蒸気止め弁が、約0.1秒で閉鎖するので、原子炉圧力が上昇し、ボイドがつぶれて、原子炉出力が上昇することとなる。原子炉出力が定格の30%以上では、タービン・トリップ時に原子炉をスクラムするとともに、原子炉圧力が逃がし安全弁の設定圧力に至ると、逃がし安全弁が動作することにより圧力上昇が抑制される。タービン・トリップ時の応答は、運転出力レベル及びタービン・バイパス弁の動作状態に応じて、初期出力が定格の30%以上でタービン・バイパス弁が動作する場合と不動作の場合並びに初期出力が定格の30%以下で、タービン・バイパス弁が動作する場合と不動作の場合が考えられる。このうちで最も厳しい過渡変化は、105%出力で、タービン・バイパス弁不動作を仮定した場合である。

 これは、復水器真空度の急速な喪失またはタービン・トリップ時のタービン・バイパス弁の信号伝達の失敗、または駆動機構の故障を仮定した場合に発生する。

 タービン・バイパス弁の不動作を仮定しているため、原子炉圧力は高くなり、79.8kg/cm2gに達する。しかしながら、タービン主蒸気止め弁位置スクラムにより、中性子束の値は、定格の187%に抑えられるので、燃料表面熱流束の最大値は、定格の108%に抑えられ、ΔMCPRの最大値は0.07となる。

(3) 主蒸気隔離弁閉鎖

 原子炉水位低等原子炉系の異常、または運転員の誤操作等により主蒸気隔離弁が閉鎖すると原子炉圧力が上昇するが、原子炉はスクラムされるとともに、逃がし安全弁が動作して圧力の上昇は抑えられる。

 主蒸気隔離弁の弁閉鎖速度は、設計上要求される設定範囲の最小値である3秒を用いても、タービン蒸気加減弁急閉に比べてかなり遅いので、過渡現象は発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)に比べ緩やかである。

(4) 圧力制御装置の故障

 圧力制御装置の故障としては、何らかの原因で、圧力制御装置に主蒸気流量を零とするような零出力信号、または主蒸気流量を最大とするような最大出力信号の誤信号が発生する場合、並びにタービン蒸気加減弁、またはタービン・バイパス弁1個が故障し、制御系の信号に関係なく開閉する場合が考えられる。このなかで最も厳しい過渡変化は、圧力制御系から最大出力信号が発生した場合である。この場合、主蒸気隔離弁は閉鎖するとともに、原子炉はスクラムされるので原子炉圧力は77.4kg/cm2gに抑えられ、また、中性子束は、初期値を超えることはない。

(5) 逃がし安全弁の開放

 何らかの原因によって逃がし安全弁1個が故障し、開放すると、原子炉圧力が低下し、タービン入口圧力が低下するので、圧力制御装置により原子炉入口圧力を一定にするよう、タービン蒸気加減弁が絞られる。

 開放した逃がし安全弁から流出する蒸気の量は、原子炉定格蒸気流量の約5%程度であるが、ここでは過渡変化が大きくなるように10%と仮定している。初期の原子炉圧力の低下に伴い、ボイドが発生し、原子炉出力は、若干減少するが、圧力制御装置により原子炉圧力が落ちつくと、ほぼその初期出力に落ちつく。燃料表面熱流束は、初期値を超えることはなく、また、MCPRは初期値を下まわることはない。

5.1.4 制御棒系の過渡変化

 原子炉への反応度印加の原因としては、制御棒引抜きの誤操作が考えられる。原子炉の運転状態によって、過渡変化の様相は異なるので、起動時及び出力運転時の各々について検討を行った。

(1) 起動時における制御棒引抜

 制御棒引抜前の原子炉は、臨界状態にあり、出力は定格値の10-3で、燃料被覆管表面及び減速材の温度は、286℃としている。この状態から制御棒引抜速度の上限値である9.1cm/sで制御棒を引抜いた場合を想定し、引抜かれる制御棒は、制御棒価値ミニマイザで許容される最大の価値(0.015Δk)を持つものと仮定している。

 また、原子炉は中間領域モニタの中性子束高信号でスクラムされるものとしているが、この中間領域モニタは出力領域モニタと同等の信頼性を有する設計になっている。

 最高燃料棒中心温度は485℃、最高被覆管表面温度は287℃にとどまり、それぞれの溶融温度より十分低く、ペレットの熱膨張もペレット−被覆管の機械的相互作用を起こすほど大きくはならない。

 また、UO2の最高エンタルピは約29cal/g・UO2にとどまり燃料被覆管の損傷には至らない。

(2) 出力運転中の制御棒引抜

 出力運転時に最大制御棒価値をもった制御棒を連続的に引抜くと、引抜制御棒の近傍の出力は上昇するが、ある設定値になった時点で制御棒引抜監視装置により制御棒の引抜を阻止し、出力の異常な上昇が未然に防止される。

 解析の初期条件として、引抜かれる制御棒が完全挿入状態にあるとき、原子炉は熱的に設計限界の状態(MCPRは1.19、線出力密度は44.0kW/m)にあり、かつ、この状態になっている燃料が引抜制御棒の近傍にくるように、原子炉の状態と制御棒パターンを設定している。

 制御棒が連続的に引抜かれた場合、中性子束は通常、熱流束よりも早く上昇するが、この解析では結果が厳しくなるよう中性子束と熱流束は、時間遅れなしに変化しているものとしている。また、この解析はサイクル初期で行っているが、サイクル末期では制御棒がほとんど引抜かれているため問題とならない。制御棒を引抜いて行くと、引抜制御棒近傍の出力が上昇し、制御棒引抜監視装置がこれを検出して、定格時の105%のところで制御棒引抜阻止信号が出される。

 このため、MCPRは、1.07にとどまり限界値を下まわることはない。この時の燃料棒線出力密度は、約56kW/mであり、燃料被覆管に1%塑性歪を与えるまでには十分余裕がある。

5.1.5 その他の過渡変化
(1) 高圧炉心スプレイ系の誤起動

 運転員の誤操作により、原子炉の運転中に高圧炉心スプレイ系が起動すると上部プレナムへ冷水が注入され、炉心上部プレナム中の蒸気が凝縮し、原子炉圧力が低下する。このため、圧力制御系によってタービン蒸気加減弁が絞られ、これに伴って原子炉圧力は新たな定常状態に落ち着く。

 解析上、高圧炉心スプレイ系の誤起動によって、定格給水流量の約10%の流量の冷水(10℃)が、炉心上部に注入されるものと仮定している。

 この過渡変化は、冷水注入過渡現象の一種であるが、外乱が炉心上部に入るため炉心部への影響はほとんどない。原子炉圧力は、若干低下するが炉心流量、熱流束は、ほとんど変化せず、したがって、燃料の熱的余裕には問題がない。

(2) 外部電源喪失

 発電所の運転に必要な電力は、主発電機から運転中供給されるが、起動、停止時及び事故時は、外部送電線から電力が供給される。系統の単一故障によりすべての外部電源が同時に失われることはないが、ここでは、これらの外部電源がいずれも喪失した場合を想定している。この場合、原子炉緊急停止系用M・Gセット電源が喪失するので、原子炉は、フェイル・セイフ機構によってスクラムされる。スクラム後の原子炉の崩壊熱の除去は、非常用電源としての非常用ディーゼル発電機及び蓄電池を電源とする残留熱除去系、隔離時冷却系によって行われる。

 MCPRの低下は、再循環ポンプ2台トリップ時と同等であり、限界値を下まわることはない。

 また、圧力上昇については、タービン・トリップ時点で原子炉出力が減少しており、105%定格出力時の発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)より緩やかである。

5.2 平衡炉心末期における過渡変化

 スクラム反応度曲線の劣化により、早期炉心用スクラム曲線が全期間にわたって適用できなくなる第4サイクルに至る前に、発電機負荷遮断時及びタービン・トリップ時に原子炉の出力上昇を軽減し、燃料の熱的余裕を確保するため、再循環ポンプ2台をトリップさせる機能が追加される。

 これらスクラム曲線の変更及び再循環ポンプ2台トリップの追加により、MCPRの運転制限値及び最大過渡圧力に影響が及ぶものとしては、主蒸気系の過渡変化と主蒸気系の過渡変化を伴う給水制御器故障による過渡変化が考えられる。

 これらの過渡変化については、平衡炉心末期用スクラム曲線を適用した場合についても解析している。

5.2.1 給水系の過渡変化

 給水制御器の誤動作等により、給水流量が急激に増加すると、水位上昇によるキャリ・オーバの増加に対してタービンを保護するため、水位高でタービンがトリップし、原子炉はスクラムされる。

 給水流量増加による炉心への影響は、サブクーリングの増加によってボイドが減少し、原子炉出力が増加することであるが、原子炉出力の増加率は小さく、この過渡変化においてMCPR及び原子炉圧力は限界値を超えることはない。また、高水位タービン・トリップに至るもののタービン・バイパス弁が動作するので、発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)よりも緩やかな過渡変化となる。

5.2.2 主蒸気系の過渡変化

 早期炉心において最も厳しい主蒸気系の過渡変化は、発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)であるが、平衡炉心末期においても、発電機負荷遮断、タービン・トリップ、主蒸気隔離弁閉鎖に対する解析結果から、発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)が最も厳しい過渡変化となることを確認した。

 系統故障等により、発電機負荷遮断が生じ、タービン蒸気加減弁が急速に閉鎖すると原子炉はスクラムされ、また、再循環ポンプが2台トリップする。

 再循環ポンプモータ系の慣性定数の設計値は5秒であるが、本解析では、厳しい結果となるよう5.5秒と仮定している。タービン・バイパス弁の不動作を仮定しているため、タービン・バイパス弁動作時に比べ過渡現象は厳しく、中性子束は定格の230%に達し、表面熱流束は114%に達する。原子炉圧力は、約80.1kg/cm2gまで上昇するが、逃がし安全弁の動作により抑えられる。また、ΔMCPRの最大値は0.19となる。

5.3 評価

 以上の検討結果から、解析では種々の保守的な仮定をおいているにもかかわらず、本原子炉は、沸騰水型原子炉が持つ自己制御性と種々の安全保護機能の動作とがあいまって、運転中に起こる異常な過渡変化を安定に制御し、燃料及び原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性を保持することが確認された。

 すなわち、MCPRは、通常運転時において早期炉心用スクラム曲線が適用される期間にあっては、1.19以上、平衡炉心末期用スクラム曲線が適用される期間にあっては、1.26以上に維持されるため、最も厳しい過渡現象である給水加熱喪失時及び発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)時でも、MCPRは限界値1.07を下まわることはない。また、燃料の線出力密度が最も厳しくなる出力運転中の制御棒引抜時においても、線出力密度は約56kW/m程度であり、燃料被覆管の1%塑性歪に対応する線出力密度を下まわっている。さらに、急激な反応度増加を伴う過渡現象として取り上げた起動時の制御棒引抜きの場合の燃料ペレット最大エンタルピは、29cal/g・UO2であり、許容設計限界値を下まわっている。

 したがって、いかなる運転時の異常な過渡変化時においても、燃料の許容設計限界を超えることはないものと判断する。

 また、早期炉心において原子炉圧力が最大となる発電機負荷遮断(タービン・バイパス弁不動作)時の、最大圧力は、79.8kg/cm2gであり、平衡炉心末期のスクラム特性の劣化を考慮しても、最大圧力は、80.1kg/cm2gに抑えられている。これらの数値は、設計圧力の1.1倍の圧力(96.7kg/cm2g)を下まわっており、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性が保たれるものと判断する。

6 事故解析

 ここで想定する事故とは、運転時の異常な過渡変化を超える異常状態であって、現実に起こる可能性は極めて少ないが、事故の拡大を防止し、放射性物質の放出を抑制する等の原子炉施設の安全性を評価する観点から各種の安全防護機能の妥当性を検討するためのものである。

 事故の想定にあたっては、原子炉施設に内在する放射性物質の量や周辺環境に漏洩する経路等を考慮して発生事象を系統的に分類し、代表的な事象を選定する必要がある。

 以下に示す申請者の解析においては、

 (イ) 反応度事故については、制御棒落下事故
 (ロ) 冷却材圧力バウンダリにある機器の破損、配管の破断等によって引き起こされる事故については、冷却材喪失事故
 (ハ) 冷却材圧力バウンダリ外にある機器の破損、配管の破断等によって引き起こされる事故については、主蒸気管破断事故
 (ニ) 機器取扱事故については、燃料取扱事故
 (ホ) 放射性廃棄物廃棄施設における事故については、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置破損事故

が取り上げられている。

 これら事故事象の分類、代表事故の選定は事故の発生原因、事故経過及び結果からみて妥当なものと判断する。

 なお、これらの事故は、以下の各項目でも述べるように、その発生の可能性が極めて小さくなるように十分な防止対策がとられることを確認した。

6.1 制御棒落下事故

 炉心の核分裂を制御している制御棒が何らかの原因で落下すると、原子炉には正の反応度が印加され、その結果、原子炉の出力が上昇し、燃料被覆管に影響を及ぼす可能性がある。

 このような事故に対しては、制御棒落下速度リミッタ、制御棒価値ミニマイザ等反応度抑制のための設計がなされており、これらの妥当性を評価するため事故の想定としては、制御棒が何らかの原因で駆動軸と分離して炉心内に残り、運転員がこれに気付かず制御棒駆動軸を降下させた後、制御棒が急速に落下する場合を考える。

 事故解析にあたっては、次の前提条件が用いられている。

(イ) 原子炉は、サイクル初期、末期とも低温状態で臨界(定格出力の10-8、燃料ペレット温度20℃)にある場合と高温待機状態で臨界(定格出力の10-6、燃料ペレット温度286℃)にある場合を仮定する。

(ロ)制御棒の落下速度は、制御棒落下速度リミッタによって制限される0.95m/sとし、落下制御棒価値は、制御棒価値ミニマイザで制限される0.015Δkとする。

(ハ) 中性子束高スクラムは、定格出力の120%で作動するとし、その作動遅れは、0.09秒とする。

(ニ) 事故に伴う炉出力の急上昇は、自己制御性のうち、ドップラ効果のみで抑えられるとし、減速材の温度効果とボイド効果は、期待しない。

 解析の結果によると、中性子束の上昇によって燃料ペレットのエンタルピは増大するが、断熱計算によるピーク出力部エンタルピの最大値は120cal/g・UO2、また、非断熱計算による燃料ペレットエンタルピの最大値は184cal/g・UO2となり、圧力波発生の制限値としている230cal/gUO2より低いため冷却材圧力バウンダリの健全性を損うことはない。

 したがって、制御棒価値ミニマイザで制限される最大制御棒価値0.015Δk及び制御棒落下速度リミッタによって制限される制御棒落下速度0.95m/sは、妥当なものと判断する。

 この事故の発生を防止するため、以下のような対策がとられるので、事故発生の可能性は極めて少ないものと考える。

(イ) 制御棒が駆動軸から分離した場合でも、制御棒が炉心内にとどまり得ないように設計される。すなわち、制御棒ブレードとチャンネル・ボックスの間には十分な間隙を設け、かつ、ブレードにはローラをとりつけるので、ブレードとチャンネル・ボックスは、直接接触することはなく、その上下動は、きわめてなめらかである。

(ロ) 制御棒と駆動軸とは、必要時以外に分離することがないように、その接続部の設計が考慮される。

(ハ) 原子炉が臨界もしくは臨界近傍にあるときは、原子炉核計装の応答によって制御棒の移動が確認できるようにされる。

(二) 制御棒を全引抜きした場合は、全引抜き位置から、さらに、制御棒を引抜くよう操作し、少し超過した位置(オーバトラベル・ポジション)まで引抜けないことを確かめることにより、制御棒と駆動軸が分離していないことを確認することになっている。

 なお、原子炉運転中、何らかの原因によって、制御棒駆動機構のフランジまたはハウジングが完全に破断すると仮定した場合には、そこにある制御棒は炉心外に逸出する可能性があり、何らかの対策をほどこさなければ反応度が印加されて原子炉出力が急上昇することとなる。

 このため、制御棒駆動機構ハウジングの下側には支持機構が設けられており、これによって、たとえ駆動機構ハウジングが完全に破断したとしても、制御棒の移動距離を非常に小さく(80mm以下)抑えることができるので、原子炉に大きな反応度を加えることにはならない。

 駆動機構ハウジングの破断を防止するため、以下のような対策がとられるので、事故発生の可能性は極めて少ないものと考える。

(イ) 設計にあたっては、原子炉の寿命中の各種の応力を十分に考慮した厳しい条件が適用される。

(ロ) 材料の選定、加工、製作過程において、十分な品質管理が行われる。

(ハ) 浸透試験、超音波試験等により溶接部の健全性が確認される。

(ニ) 駆動機構を含め原子炉圧力容器の健全性は試験検査によって確認されるほか、運転中に圧力が異常に上昇した場合の対策として多重性を有する過圧保護設備が設けられる。

(ホ) 脆性破壊を防止するよう運転管理がなされる。

 以上のような配慮が払われるので、制御棒駆動機構ハウジングやフランジが破断する可能性は極めて少ない。仮に、ハウジングやフランジが一部破断し、原子炉圧力容器からドライウェル内に蒸気が漏出したとしても、ドライウェル・サンプの水位上昇、ドライウェル温度及び圧力の上昇等によって漏洩を検出することができ、手動で原子炉をスクラムさせることができる。

 また、漏洩が大きく、ドライウェル内への蒸気漏出が多くなると、ドライウェル圧力高の信号で原子炉はスクラムされ、適切な処置がとられる。

6.2 冷却材喪失事故

 冷却材喪失事故の解析は、非常用炉心冷却系、原子炉格納容器及び可燃性ガス濃度制御系等の設計の妥当性を検討するためのものである。

(1) 非常用炉心冷却系の性能解析

 何らかの原因により、原子炉圧力容器に接続されている各種配管中の1本が原子炉運転中に破断すると仮定した場合には、原子炉圧力容器から冷却材が流出する。この場合、冷却水が十分補給できないと、炉心の冷却が行えなくなり、放置すれば崩壊熱による燃料の過度の温度上昇が起こり、核分裂生成物が燃料から放出される可能性がある。このような事故に対処するため、原子炉には、非常用炉心冷却系が設けられているが、その機能及び性能を評価するため、冷却材喪失事故を以下のように想定する。

 事故の想定としては、原子炉圧力容器に接続されている小口径の配管破断から最大口径の再循環配管1本の破断に至るまで、種々の破断面積の配管の瞬時両端破断を考える。

 事故解析にあたっては、「ECCS安全評価指針」に従い、次の前提条件が用いられている。

(イ) 原子炉は事故発生直前まで定格の約105%の出力(3,440MWt)で運転していたものとする。

(ロ) 事故発生と同時に外部電源が喪失し再循環ポンプは、トリップする。

(ハ) 非常用炉心冷却系を構成する機器の最悪の単一故障を仮定する。

 また、解析モデルについても「ECCS安全評価指針」を満足するものを使用している。

 配管からの冷却材流出量の程度によって、原子炉水位及び原子炉圧力の低下の割合も変化するため、配管の破断面積によって非常用炉心冷却系の作動状態が異なる。このため、中小破断から最大口径の配管破断まで、各種の破断面積について解析が行われている。冷却材喪失事故想定時に燃料の健全性を評価するものとして、燃料被覆管温度に着目し、また、炉内での水−ジルコニウム反応の割合及び長期間の炉心冷却能力についても検討を行った。

 その結果、原子炉圧力容器に接続されている最大口径の配管である再循環回路配管1本の瞬時両端破断を想定した場合が燃料被覆管の温度上昇及び水−ジルコニウム反応の割合が最大となるので、以下この場合について、申請者が行った解析の具体的条件、経過及び結果を示す。

(イ) 再循環配管が完全に破断すると、再循環ループの原子炉出口側では、その破断口で臨界流が生じ、入口側では破断口に至るループのうちで合計断面積の一番小さい10個のジェット・ポンプのノズル及び原子炉冷却材浄化系配管において臨界流が生じる。

(ロ) 事故と同時に外部電源が喪失し、再循環ポンプがトリップするものとするが、再循環ポンプ・モータには慣性があるので、他の健全なループによって下部プレナム内に冷却材が押し込まれ、かなりの炉心流量が得られる。

(ハ) 機器の単一故障の仮定として、3台あるディーゼル発電機のうち、低圧炉心スプレイ系につながるディーゼル発電機が作動しないという一番厳しい条件をとる。

(ニ) 事故発生後約8.7秒でシュラウド外の水位がジェット・ポンプ・ノズルに達すると、健全なジェット・ポンプでのダウンカマ部よりの冷却水の吸込みがなくなり、再循環ポンプからの駆動水のみとなる。このため、炉心流量が急激に減少する。

さらに、シュラウド外水位が下り、事故後約12秒で再循環ポンプ吸込口に達すると原子炉圧力は急激に低下し、下部プレナム水はフラッシングを開始する。

 シュラウド内の水位は、事故発生後約30秒まで燃料顕熱及び減圧によるスエリングにより平常水位が維持され、その後水位は急激に下り、事故後約33秒で炉心は露出する。

(ホ) 高圧炉心スプレイ系が事故後約30秒で注水を開始すると、下部プレナムの水位は、上昇しはじめる。さらに、低圧注水系ポンプ2台が約48秒で注水を開始すると、炉心シュラウド内に注入された冷却水の多くは、燃料チャンネル外側の漏洩領域より炉心下部の漏洩経路を通って下部プレナムに注入され、残りの冷却水は、まず、燃料チャンネル外側の漏洩領域を満たし、漏洩領域の水位が燃料集合体頂部に達すると燃料集合体上部から下部プレナムに注入される。

 下部プレナムの水位が上昇し、燃料低部に水位が達すると燃料の発熱により水位はスエリングし、約114秒で炉心は、再冠水される。

 解析の結果によれば、最高燃料被覆管温度は、約886℃であり、制限値1200℃を下まわるとともに、燃料被覆管の破裂に至るような周方向応力も生じない。

 また、燃料被覆管の局部的な水−ジルコニウム反応量の燃料被覆管厚みに対する割合の最大値は、約0.3%で、制限値15%を下まわり、全炉心平均の水−ジルコニウム反応による酸化量は、約0.04%であり十分小さい。

 したがって、燃料体は、冷却可能なように形状が保持されるので、長期にわたる炉心の冷却は非常用炉心冷却系のうち、いずれか1台のポンプの作動によって確保できるものと判断する。

 なお、中小破断の解析として最も厳しい、破断面積が約93cm2の場合についての解析結果によれば、最高燃料被覆管温度は約782℃であり、再循環配管の完全両端破断の場合よりも低い。

 また、別途に上記解析結果の妥当性を評価するため、WREMコード(米国原子力規制委員会作成の安全審査用解析コード・システム)を用いて最大口径配管破断に対するチェック計算を実施した。

 これら両計算の解析モデル、入力条件、解析結果等を比較検討した結果、申請者の解析モデルは妥当であり、かつ、「ECCS安全評価指針」の要求事項及び基準を満足しているので、事故後の炉心冷却は維持できるものと判断する。

(2) 原子炉格納容器の性能解析

 冷却材喪失事故時の原子炉格納容器の健全性については、原子炉格納容器の圧力が最も高くなる再循環配管の完全破断をとりあげ、事故時の応答を解析している。

 原子炉格納容器内圧は、事故後約16秒で最高圧力の約2.6kg/cm2gに達するが、原子炉格納容器の設計内圧である2.85kg/cm2gより低い。原子炉格納容器スプレイ冷却系作動後は事故後約33日以内に大気圧に戻ることが示されている。

 さらに、冷却材喪失事故時に発生する可燃性ガス(酸素及び水素)の燃焼により、原子炉格納容器の温度、圧力を上昇させる可能性がないかについても検討を行った。

 原子炉格納容器内可燃性ガス濃度制御系の性能の評価のため、冷却材喪失事故解析結果よりも、さらに厳しい可燃性ガスの発生を仮定した場合でも、可燃性ガス濃度制御系を使用して、水素と酸素を再結合させることにより、ドライウェル及びサプレッション・チェンバ内の水素、酸素濃度を燃焼限界(水素4vol%または酸素5vol%)以下に抑え得ることが示されており、本系統の性能は妥当であると判断する。

 冷却材喪失事故の発生を防止するため、以下のような対策がとられるので、事故発生の可能性は極めて少ないものと考える。

(イ) 配管等の設計にあたっては、原子炉の寿命中の各種の応力を十分に考慮した厳しい条件が適用される。

(ロ) 材料の選定、加工及び配管等の製作過程において十分な品質管理が行われる。

(ハ) 原子炉供用期間中に主要な箇所は定期的に検査が行われ、その健全性が確認される。

(ニ) 脆性破壊を防止するよう運転管理がなされる。

(ホ) さらに、漏洩検出系による監視によって、破断に進展する前に漏洩が検知され、適切な処置が講じられる。

6.3 主蒸気管破断事故

 何らかの原因で主蒸気管の破断が生じると、破断口から冷却材が流出し、炉心の核・熱水力特性の変化のため、燃料に影響を与える可能性がある。

 主蒸気管に設備されている冷却材流出のための防護機器の機能を評価するため、主蒸気管の完全破断を想定する。

 解析の具体的条件、経過及び結果を以下に示す。

(イ) 主蒸気管1本が冷却材圧力バウンダリ外で瞬時に完全破断するものとし、事故発生後5秒で主蒸気隔離弁が完全に閉鎖するまで、原子炉内の冷却材が流出するものとする。

(ロ) 事故発生と同時に外部電源は喪失すると仮定し、再循環系ポンプによる流量はコーストダウンするものとする。

(ハ) 主蒸気管からの冷却材流出は、流量制限器で定格流量の200%に制限されるものとする。

(ニ) 機器の単一故障として、8個の主蒸気隔離弁のうち、1個が閉じないものとする。

 解析の結果によれば、隔離弁が閉じるまでに破断口を通して流出する蒸気及び水の量は、それぞれ約1.32×104kg及び約2.22×104kgとなる。

 この結果、事故の過程において炉心が露出することはなく、MCPRも初期値を下まわらないので、燃料の健全性が損われることはない。

 主蒸気隔離弁閉鎖後は、炉心は原子炉隔離時冷却系等により冷却される。

 解析条件としての主蒸気隔離弁閉鎖時間は結果が厳しくなるよう、設計上要求される設定範囲の最大値である5秒が用いられており妥当である。また、流量制限器の構造についても検討し、主蒸気管破断事故時に機能を果たすよう設計し得ることを確認した。

 主蒸気管破断事故の発生を防止するため、以下のような対策がとられるので、事故発生の可能性は極めて少ないものと考える。

(イ) 配管等の設計にあたっては、原子炉の寿命中の各種の応力を十分に考慮した厳しい条件が適用される。

(ロ) 材料の選定、加工及び配管等の製作過程において十分な品質管理がなされる。

(ハ) 主蒸気管トンネル内での雰囲気温度の検出等によって、破断に進展する前に漏洩を検知して、適切な処置が講じられるよう設計される。

 なお、原子炉運転中、何らかの原因でタービンから飛散物が発生した場合(以下タービン破損という。)には、タービン内や復水器内に存在している放射性物質が大気に放出される可能性がある。

 タービン破損の原因としては、ロータ等回転部分の材料欠陥並びに残留応力、応力集中等の製作上の欠陥による場合、または何らかの原因でタービン調速機構が動作しなくなり、過速状態になって破壊回転数に至る場合の2つのケースが考えられる。

 これらに対しては、次のような対策がなされており、発生の可能性は少ないと判断する。

(イ) タービンの設計にあたっては、タービンの速度が定格速度の120%を超えないように制御測置が設けられる。

(ロ) ロータの製作に際しては、材料分析、材料試験、各種検査等十分な品質管理と工程管理を行い、破壊の原因となる材料欠陥、残留応力、応力集中等が生じないよう留意されるとともに、据付に際しても、異常な振動等が生じないよう十分に配慮される。

(ハ) タービン回転数の異常な上昇に対しては、主調速装置、非常調速装置及びバックアップ過速度トリップ装置の3重の保護装置が設けられ、最悪の場合でも、定格回転数の120%を超えないようになっているとともに、ロータ強度は、120%の速度でも破壊しないようになっている。

 また、何らかの原因により、タービン・ロータに振動が発生した場合、そのまま放置して運転を継続するとタービン破損につながる可能性がある。そのため、各軸受には、振動計が取付けられており、記録計に常時振動を記録するとともに、制限値を超える振動が発生すると警報を発し、振動がさらに大きくなる場合には自動的にタービンをトリップして、タービン破損に至ることを防止するようになっている。

 さらに、万一のタービン破損を想定した場合についても検討を加え、タービン羽根、T−Gカップリング、タービン・ディスク等が飛散した場合にも、安全上重要な機器の機能が損われる可能性は無視できることを確認した。

6.4 燃料取扱事故

 燃料取替作業中、燃料つかみ機によって燃料集合体を運搬している際に、つかみ機が故障して、その燃料集合体が落下することを想定した場合、炉心内の燃料集合体上部に衝突して燃料棒の機械的破損が生じる可能性がある。

 事故の想定として、燃料取替作業中に燃料集合体1体が炉心上10mの高さから、燃料つかみ機より脱落し、炉心上に落下するものと考える。

 解析結果によれば、落下した燃料集体合が炉心内の燃料集合体と数度にわたって非弾性衝突を起こすとして、曲げ変形、圧縮変形によって被覆管が破損する燃料棒本数を計算すると、135本となることが示されている。解析に用いられた条件は、いずれも被覆管が破損する本数が多くなるように選定されており、解析の結果は妥当であると判断する。

 破損した燃料棒より、原子炉建家内に放出される核分裂生成物は、原子炉建家内放射能高の信号により起動する原子炉建家内ガス処理系により処理されるため、原子炉建家外に放出される放射性物質は、W.7に示される放出量より小さい。

 この事故の発生を防止するため、以下のような対策がとられるので、事故発生の可能性は極めて少ないものと考える。

(イ) 燃料取扱機器は、燃料集合体の総重量を十分上まわる強度に設計されており、さらに、燃料取替作業中の燃料集合体落下防止対策として、燃料つかみ機のワイヤの2重化が行われる。

(ロ) 燃料つかみ機は、空気作動式であり、空気圧が供給されていなければ燃料集合体をはずせないというフェイル・セーフ設計になっている。

6.5 活性炭式希ガス・ホールドアップ装置破損事故

 原子炉運転中、何らかの原因で活性炭式希ガス・ホールドアップ装置の配管が破断した場合には、活性炭にホールドアップされていた希ガス及び空気拙出器排ガス系の希ガスが、希ガス・ホールドアップ塔室に放出される可能性がある。

 本事故は、放射性廃棄物廃棄施設における事故を代表するものとして選定されているが、活性炭式希ガス・ホールドアップ装置は、放射性希ガスが最も多く蓄積されているところであり、放射性液体廃棄物の場合よりも系外へ放出される可能性が高いと考えられることから、その選定は妥当であると判断する。

 事故の想定として、8塔あるホールドアップ塔の第1塔の入口配管に破断が生じるものと考える。解析の結果によれば、本事故時に放出される放射性物質は、W.7に示される放出量よりも小さい。

 この事故の発生を防止するため、以下のような対策がとられるので、事故発生の可能性は極めて少ないものと考えられる。

(イ) 系統全体をほぼ大気圧(チャコール・ベッド付近は負圧)に設計し、ホールドアップ装置に内圧がかからないようになっている。

(ロ) 材料の選定、加工及び配管等の製作過程において、十分な品質管理がなされる。

 活性炭式希ガス・ホールドアップ装置が静的機器であるうえ、以上のような設計上の配慮を払うので、本装置の配管破断が生じることは、本質的に起こり難いと考えられるが、仮に破断が生じて、ホールドアップされていた希ガスが、希ガス・ホールドアップ塔室に放出された場合には、建家換気系モニタ等により検知し、空気抽出器排ガス系の隔離等の対策を講じることができる。

7 災害評価

7.1 災害評価の概要

 申請者が行った災害評価は、「原子炉立地審査指針」に基づき、重大事故及び仮想事故を想定し、これらの事故により被曝線量が非居住区域、低人口地帯及び人口密集地帯に係るめやす線量を下まわることを示すために行われている。

 重大事故及び仮想事故の種類については、核分裂生成物の大気中への放出量が大きくなるような事故事象として、冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故が想定されている。

 これは、核分裂生成物の放出量が最大となる可能性のある事象で、核分裂生成物が原子炉格納容器内と原子炉格納容器外に放出される事象を代表して想定されたものである。

 重大事故の解析は、核分裂生成物が燃料から大気中に放出されるまでの過程について行われており、核分裂生成物の大気中への放出量は、厳しい評価となるような仮定を用いて解析されている。

 仮想事故の解析は、重大事故の解析と同様に行われているが、核分裂生成物の大気中への放出量については、炉心燃料から放出される核分裂生成物の割合等が重大事故の場合に比べ、より大きくなるような仮定を用いて解析されている。

 大気中に放出された核分裂生成物の大気拡散は、これらの事故が任意の時刻に起こること及び実効的な放出継続時間が短いことを考慮して、敷地における気象条件の出現頻度からみてめったに遭遇しないと思われる厳しい気象条件を用いて解析されている。

 解析の対象とした核分裂生成物は、全身被曝に対しては、希ガス及び放射性ハロゲン(以下ハロゲンという。)とし、甲状腺被曝に対しては、よう素としている。被曝線量は、よう素の吸入による甲状腺被曝線量、放射性雲からのγ線による外部全身被曝線量がそれぞれ計算されている。

 なお、そのほかの核分裂生成物は、被曝線量に与える寄与が小さいものとして計算上無視されている。

7.2 重大事故の解析

7.2.1 冷却材喪失事故

 冷却材喪失事故における希ガス及びよう素の大気中への放出量は、冷却材の喪失が最大となる冷却材再循環配管1本が瞬時に完全破断する場合を想定し、次の仮定を用いて解析されている。

 (1) 希ガス及びよう素の炉内蓄積量は、原子炉が定格出力の105%(3,440MWt)で1,000日間連続運転されているものとして算出する。これは、燃料内の希ガス及びよう素の蓄積量がを平衡に達しているものである。

 (2) 燃料から原子炉圧力容器中に放出される希ガス及びよう素は、全燃料内に内蔵されているもののうち、希ガスについては2%、よう素については1%とする。

 この放出割合は、燃料棒内のギャップ及びプレナム中に蓄積されている希ガス及びよう素が全量放出されるものと仮定した場合の値である。

 なお、よう素以外のハロゲンについては、希ガスに比べて小さい寄与しかもたらさないので、計算上は無視する。

 (3) 燃料から放出された希ガス及び有機よう素は、すべて原子炉格納容器に移行するものとし、無機よう素については、原子炉圧力容器、配管及び原原炉格納容器の壁面等に付着または沈着する効果を考慮して50%が原子炉格納容器からの漏洩に寄与するものとする。

 有機よう素の生成割合は、冷却材喪失事故条件下の実験結果によれば、多くても3.2%とされているが、ここでは10%とする。

 (4) 原子炉格納容器中のよう素は、液相及び気相中に存在するものとし、気相中のよう素は、原子炉格納容器スプレイ冷却水の効果により液相中に移行する一方、液相中のよう素も気相中に移行するものとする。

 気相−液相に含まれるよう素の割合は、気相−液相間の移行を考慮して、ここでは、気液分配係数を用いて計算する。

 よう素の気液分配係数は、無機よう素に対しては100以上、有機よう素に対しては、4〜5程度であるという実験結果があるが、計算にあたっては、無機よう素に対しては100、有機よう素に対しては希ガスと同様、液相に溶解しないものとする。

 (5) 原子炉格納容器から原子炉建家への希ガス及びよう素の移行は、0.5%/dの漏洩率で33日間続くものとする。

 この漏洩率は、原子炉格納容器の内圧の減少に応じて低下するが、ここでは、大気圧に戻るまでの期間一定としたものである。

 (6) 原子炉格納容器から原子炉建家に漏洩した希ガス及びよう素は、非常用再循環ガス処理系で再循環され、その過程において一部が非常用ガス処理系から排気筒を通して大気中に放出される。

 非常用再循環ガス処理系による原子炉建家内空気の再循環率は、5回/d、非常用ガス処理系による原子炉建家内空気の換気率は、1回/dとする。

 また、これらの処理系に備えられたチャコール・フィルタのよう素の除去効率は、非常用再循環ガス処理系を通過するものに対しては90%、非常用再循環ガス処理系と非常用ガス処理系を直列に通過するものに対しては95%とする。

 これらの除去効率は、それぞれ設計除去効率97%以上及び99%以上に対応して用いられた値である。

 以上の仮定に基づいて計算された希ガス及びよう素の大気中への放出量は、希ガス約1.49×104Ci(0.5MeV換算値、以下同様)、よう素約4.91×101Ci(I−131換算値、以下同様)である。

 被曝線量の計算は、上記の希ガス及びよう素の大気中への放出量をもとに、W.1.4で示した相対濃度(χ/Q)及び相対線量(D/Q)を用いて行われている。

 よう素による甲状腺被曝線量は、よう素の放出量にχ/Qの値を乗じた値を周辺監視区域境界(敷地境界付近)の地表空気中濃度として求め、その濃度の空気を人が呼吸した場合の被曝線量をICRP Publication 2の計算方法によって計算している。

 また、希ガスのγ線による外部全身被曝線量は、希ガスの放出量に周辺監視区域境界のD/Qの値を乗じて計算している。

 この結果、冷却材喪失事故の被曝線量は、小児甲状腺に対して約0.057rem、全身に対して約0.0019remである。

7.2.2 主蒸気管破断事故

 主蒸気管破断事故における希ガス及びハロゲンの大気中への放出量は、冷却材の流出量が最大となる主蒸気管1本が瞬時に完全破断する場合を想定し、次の仮定を用いて解析されている。

 (1) 主蒸気管破断事故が起こる前の原子炉は、冷却材の希ガス及びハロゲンの濃度が原子炉の運転上許容される最大濃度で運転されているものとする。

 この濃度はI−131の場合、0.5μCi/cm3である。

 (2) 主蒸気管が破断した場合、破断口からの冷却材の流出を阻止するために設けられている主蒸気隔離弁が短時間(5秒)で閉鎖するものとする。

 主蒸気隔離弁閉鎖前に放出されるハロゲンは、液相として放出されるものについては、液相中に含まれる濃度と液相の放出量から求め、また、気相として放出されるものは、液相濃度の1/50を蒸気相の濃度とし、これと放出蒸気量から計算する。

 なお、希ガスについては、放出量が少ないので、計算にあたっては、無視する。

 (3) 主蒸気隔離弁閉鎖後、主蒸気系からの蒸気の漏洩が停止するのは、事故後1日とする。

 これは、主蒸気管破断事故後、原子炉圧力は逃がし安全弁、原子炉隔離時冷却系、残留熱除去系により1日以内に大気圧まで減圧されることに対応して用いられたものである。

 (4) 主蒸気隔離弁閉鎖後に大気中に放出される希ガス及びハロゲンについては、運転中の冷却材中に含まれていた希ガス及びハロゲンのほかに、燃料から原子炉圧力容器中に追加放出されるものを考慮する。

 この原子炉圧力容器中への追加放出については、ピンホールを有する燃料から原子炉圧力の低下に伴い放出されるものとし、その量はI−131の場合、運転上の上限値の2倍である4.0×104Ciとする。

 追加放出される希ガス及びハロゲンは、主蒸気隔離弁閉鎖前に、大気中に放出されることはないが、ここでい主蒸気隔離弁閉鎖前に冷却材中に追加放出された希ガス及びハロゲンのうち1%が破断口から放出されるものとする。

 (5) 全主蒸気隔離弁が閉鎖した直後の漏洩率は、120%/dとし、その後の漏洩率は、原子炉の圧力、温度に依存するものとする。

 この漏洩率は、各主蒸気隔離弁の漏洩率が逃がし安全弁の最低設定圧力(75.2kg/cm2g)において蒸気相体積に対して10%/d以下に設計されるが、劣化等を考慮して、40%/dとし、さらに、4本の主蒸気管に8個ある主蒸気隔離弁のうち1個が閉鎖しないという条件をもとに計算された値である。

 (6) 主蒸気隔離弁(第1弁及び第2弁)の後方には、主蒸気第3弁が設けられており、また、第1弁と第2弁及び第2弁と第3弁間には、主蒸気隔離弁漏洩抑制系が設けられている。

 申請者は、第3弁以降の配管破断を仮定した場合、この系により、第1弁または第2弁から漏洩してきた蒸気は、サプレッション・プールに導くことができるので、主蒸気系全体の漏洩率は、十分小さくなるとしている。

 しかし、ここでは、第2弁と第3弁の間で主蒸気管の破断が起こると仮定し、かつ、最悪の機器の単一故障を仮定した場合には、この系の有効性が十分期待できないことになるので、この系の効果はないものとして解析することが妥当であると判断した。

 (7) 燃料から追加放出される希ガスとハロゲンのうち、希ガスと有機よう素は、すべて気相に移行するものとし、無機よう素については、液相−気相間に分配係数100で分配されるものとする。

 なお、気相部に移行する有機よう素の割合は、原子炉圧力容器中での加水分解等の効果を見込んで1%とする。

 (8) 主蒸気隔離弁閉鎖後、残留熱除去系または逃がし安全弁を通して崩壊熱相当の蒸気がサプレッション・プールへ移行するが、この蒸気に含まれる核分裂生成物の寄与は無視する。

 以上の仮定に基づいて、計算された核分裂生成物の大気中への放出量は、希ガス約3.69×103Ci、よう素約2.56×102Ci、ハロゲン約5.93×103Ci(0.5MeV換算、以下同様)てある。

 核分裂生成物の大気中への放出は、地上放散とし、被曝線量の計算は、冷却材喪失事故の場合と同様に行われている。ただし、主蒸気隔離弁閉鎖前に放出された核分裂生成物については、冷却材が大気中で完全に蒸発して半球状の放射性雲を形成し、1m/sの速度で風下方向に移動するものとして、被曝線量の計算が行われている。

 この結果、主蒸気管破断事故の被曝線量は、小児甲状腺に対して、約30rem、全身に対して約0.025remである。

7.3 仮想事故の解析

7.3.1 冷却材喪失事故

 冷却材喪失事故における希ガス及びよう素の大気中への放出量の解析にあたっては、次に述べる仮定以外は、重大事故の解析に用いられた仮定と同一の仮定が用いられている。

 (1) 全燃料に内蔵されている核分裂生成物のうち、希ガス100%、よう素50%が原子炉圧力容器内に放出されるものとする。

 (2) 希ガス及びよう素の原子炉格納容器から原子炉建家内への漏洩については、漏洩率が0.5%/dで無限時間続くものとする。

 以上の仮定に基づいて計算された核分裂生成物の大気中への放出量は、希ガス約7.57×105Ci、よう素約2.57×103Ciであり、この放出量による被曝線量は、成人甲状腺に対して約0.74rem、全身に対して約0.098remである。

7.3.2 主蒸気管破断事故

 主蒸気管破断事故における核分裂生成物の大気中への放出量の解析にあたっては、次に述べる仮定以外は、重大事故の解析に用いられた解析と同一の仮定が用いられている。

 (1) 主蒸気隔離弁閉鎖後、希ガス及びハロゲンの主蒸気隔離弁からの漏洩については、漏洩率が120%/dで無限時間続くものとする。

 (2) 主蒸気隔離弁閉鎖と同時に燃料から追加放出される希ガス及びハロゲンの量は、全量が瞬時に原子炉圧力容器中に放出されるものとする。

 以上の仮定に基づいて計算された核分裂生成物の大気中への放出量は、希ガス約1.18×104Ci、よう素約7.49×102Ci、ハロゲン約7.71×103Ciであり、この放出量による被曝線量は、成人甲状腺に対して、約15rem、全身に対して約0.037remである。

7.3.3 全身被曝線量の積算値

 国民遺伝線量の見地からみた全身曝線量の積算値は、仮想事故としての冷却材喪失事故及び主蒸気管破断事故について、次の仮定を持いて解析されている。

 (1) 大気中に放出される核分裂生成物の量は、W.7.3.1及びW.7.3.2の解析結果の値を用いる。

 (2) 拡散条件は、風速1.5m/s、大気安定度F型、水平方向拡散幅30°とする。

 (3) 拡散方向は、積算値が最大となる方向とする。

 (4) 人口は、1975年の国勢調査の人口のほか、2020年における推定人口を用いる。

 以上の仮定に基づいて計算された全身被曝線量の積算値は、冷却材喪失事故においては、1975年の人口に対して約12万人rem、2020年の人口に対して約15万人rem、主蒸気管破断事故においては、1975年の人口に対して約0.64万人rem、2020年の人口に対して約0.85万人remである。

7.4 評価

 重大事故及び仮想事故の解析にあたっては、核分裂生成物の大気中への放出量が最大になる可能性をもつ事故事象として、冷却材喪失事故と主蒸気管破断事故が選定されている。

 重大事故及び仮想事故の解析は、W.6.2及びW.6.3で示した事故解析が各種の安全防護機能の妥当性を検討するためのものであったのに対し、「原子炉立地審査指針」に基づき、立地条件の適否をみるため、核分裂生成物の大気中への放出に着目して行われたものである。

 核分裂生成物の大気中への放出量の解析は、炉心燃料から放出される核分裂生成物の割合等を重大事故及び仮想事故の趣旨に照らしてそれぞれ十分厳しくなるような仮定を用いて行われており、妥当なものと判断する。

 また、以上の仮定に基づいて解析された核分裂生成物の大気中への放出量と厳しい気象条件を用いて計算された甲状腺及び全身の被曝線量並びに全身被曝線量の積算値は、「原子炉立地審査指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやす」に示されるめやす線量を十分下まわっているので、本原子炉施設の立地条件は、「原子炉立地審査指針」に十分適合しているものと判断する。

8 技術的能力

 申請者は、昭和41年12月福島第一原子力発電所1号炉を着工以来、2号炉、3号炉、4号炉、5号炉、及び6号炉の建設実績並びに1、2、3号炉については、運転実績を既に有している。

 さらに、福島第二原子力発電所1号炉についても、現在建設中である。

 (1) 本原子炉施設を設置するにあたっては、法令に基づく諸手続、基本設計の実施、工業進捗の管理並びにこれらに付随する対外連絡等の業務に従事する約70名の本店要員が継続的にまたは一時的に関与する見込みであり、また、現地において全工程を通じ実際の建設に従事する平均50名の現地要員の合計約120名の技術者を確保することとしているので、1プラントあたりの建設に必要とされる技術者の数は、妥当であると判断する。

 これら各部門に必要な組織、管理者及び技術者の確保並びに養成計画については、その概要が示されているが、これら各部門の管理者については、原子力・火力発電所の建設、運転等に10〜20年の経験を有する者が、そのほとんどを占め、原子力技術に限っても平均約10年の経験を有しており、妥当である。

 また、申請者は、引続き福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の建設、運転経験並びに原子力専門機関への派遣等を通じて技術能力の養成訓練を行うこととしており、妥当であると判断する。

 (2) 本原子炉施設を運転するにあたっては、運転を安全、かつ、確実に遂行するため、発電所の運営管理、対外連絡等の本店業務を行う約10名の本店要員と実際に発電所の運転管理を行い、安全確保を図るための現実要員約150名の技術者と本発電所運転開始時に確保することとしているので、1プラントあたりの運転に必要とされる技術者の数は妥当であると判断する。

 運転を行うにあたっては、運転直等を管轄する部門、放射線管理部門、炉心及び燃料管理部門、保修部門及び技術総括部門が必要であり、それぞれ、保健物理系、炉物理系、電気・機械系及び計測制御系等の知識を有し、原子力経験も5〜6年以上の者が管理職となることがよいとされているが、申請者の管理職名簿による経歴等をみると、このような人材をそれぞれの部門に配置することは十分可能であると判断する。

 (3) 法令上必要な主任技術者については、原子炉主任技術者有資格者14名及び放射線取扱主任者有資格者40名を有しており、十分確保されているものと判断する。

 以上のことから、本原子炉施設を設置するために必要な技術的能力及び運転を適確に遂行するに足りる技術的能力が十分にあるものと判断する。

 X 審査経過

 本審査会は、昭和50年5月28日第137回審査会において次の委員からなる第120部会を設置した。

(審査委員)
村主 進(部会長) 日本原子力研究所
秋山 守 東京大学
飯田 国広 東京大学
大崎 順彦 東京大学
小堀 鐸二 京都大学
坂上 治郎 お茶の水女子大学
竹内 清秀 気象庁
武谷 清昭 日本原子力研究所
西脇 一郎 宇都宮大学
浜田 達二 理化学研究所
松野 久也 地質調査所
山本 荘毅 東京教育大学
渡辺 博信 放射線医学総合研究所
(調査委員)
秋山 宏 東京大学
石田 泰一 動力炉・核燃料開発事業団
伊藤 公介 地質調査所
伊藤 直次 日本原子力研究所
垣見 俊弘 地質調査所
勝又 譲 気象庁
岸田 英明 東京工業大学
阪田 貞弘 日本原子力研究所
佐藤 裕 国土地理院
斯波 正誼 日本原子力研究所
丹羽 義次 京都大学
藤家 洋一 大阪大学
松田 時彦 東京大学
吉川 宗治 京都大学
渡部 丹 建築研究所

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査することとし、昭和50年6月10日に第1回部会を開催し、審査方針を検討するとともに、主として施設を担当するAグループ、主として環境を担当するBグループ及び主として地質・地盤を担当するCグループを設け審査を開始した。

 以後、部会及び審査会において審査を行ってきたが、昭和52年8月2日の部会において、部会報告書を決定し、本審査会は、これを受け昭和52年8月12日第162回審査会において本報告書を決定した。


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