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昭和51年度軽水炉改良・標準化調査報告書〔概要〕


昭和52年4月25日
原子力発電機器標準化調査委員会
原子力発電設備改良標準化調査委員会

1 我が国の軽水型原子力発電所の現状

 我が国は、エネルギー供給の大部分を石油に依存しているが、世界のエネルギー情勢を勘案すると、今後長期的なエネルギーの安定供給の観点から石油依存度を低下させて行く必要があり、石油に代替するエネルギーの主要な供給源として、我が国において原子力開発を早急に推進していくことが極めて重要である。

 我が国では、軽水炉技術については既に10余年の建設運転の経験が積み重ねられて来ているので、それに基づく自主技術により改良・標準化を推進して、安全性、信頼性をより一層向上させ、原子力発電に対するパブリック・アクセプタンスを得るとともに稼働率の向上を図り、我が国の国情に適した軽水炉技術の定着化を図ることが肝要であると考える。このような観点から、昭和50年6月通商産業省に原子力発電機器標準化調査委員会及び原子力発電設備改良標準化調査委員会を設置し、51年4月中間報告をとりまとめ、軽水型原子力発電設備、機器の改良・標準化を図るに当たっての大綱方針を示した。

 51年度は50年度の検討結果に基づき、そのフィージィビリティスタディを実施するとともに、標準化の範囲とその内容を具体的に検討した。

2 改良・標準化の必要性

 前述の我が国の軽水型原子力発電所の現状を考えると、自動化、遠隔化などに基づく保守点検作業の的確化、従業員の被ばく低減対策、機器信頼性の向上及び定期検査期間の短縮を図るため、自主技術に基づく改良を行い、その成果を踏まえて標準化を進める必要がある。このような改良を進めることにより、

(1) 保守点検作業の的確化及び機器の信頼性向上が図られプラント稼働率の向上が期待できる。

(2) 作業スペースの確保、機器配置の改良、作業能率の向上等により従業員の被ばく低減が図られる。

また、このような機器の改良の成果を踏まえて標準化することにより、

(1) 各系統及び機器に標準化された設計を繰返し用いることによりプラント設備の信頼性の向上が図られる。

(2) 標準化された設計のプラントを積極的に採用することにより機器材料の計画生産が可能となり信頼性及び経済性の向上が図られる。

(3) プラント間の機器、部品類の互換性により建設、保守の効率化、予備品保有量の節減、停止期間の短縮が図られる。

(4) 信頼性と経済性の向上が図られ、パブリック・アクセプタンスが得られる。

などの効果が期待される。

3 原子力発電プラントの改良策と51年度の作業結果

 軽水型原子力発電所の運転実績によれば従業員被ばくは許容値以内に十分おさまるように管理されているが、格納容器内部での作業に伴う被ばくの占める割合が大きい。このため格納容器の形状の改良、容器内機器配置の改良、点検保守の自動化・遠隔化を図ることが必要である。

 一方、プラント稼働率を向上させるためには機器・部品の信頼性を向上させるとともに、定期検査などの保守点検作業の効率化が重要である。これらの観点から50年度中間報告書において、その改良策を提起し、これに基づき51年度に実施された検討作業の結果を述べる。

3.1 沸騰水型原子炉(BWR)

(1) 原子炉系統
 (a) 燃料性能及び信頼性向上のための調査及び試験
 (b) 原子炉容器蓋取付取外し用スタッドテンショナの改良検討
 (c) 主蒸気管ノズル水封プラグの改良
 (d) 制御棒駆動機構の交換作業の自動化(半自動化)

(2) 燃料取扱い系統
 燃料交換機の遠隔自動化

(3) 計測制御系統
 炉内中性子計測装置交換作業の治具改良

(4) 原子炉格納施設
 MARK−T及びMARK−Uの改良型試設計フィージビリティ調査の実施

(5) その他諸設備
 (a) 弁類、ポンプ類の保守点検作業の改善
 (b) フィルタエレメント洗浄装置の能率向上
 (c) サンプリング及び分析作業の改良
 (d) 補機冷却の淡水化による信頼性向上
 (e) ステンレス配管の応力腐食割れ防止
 (f) 濾過式復水脱塩装置、給水中溶存酸素濃度制御によるクラッド低減
 (g) 低コバルトステンレス鋼の採用検討

3.2 加圧水型軽水炉(PWR)

(1) 原子炉系統
 (a) 燃料性能及び信頼性向上のための諸施策の調査
 (b) 原子炉容器蓋着脱工具及び関連作業の改良

(2) 燃料取扱系統
 (a) 燃料取扱工具・燃料検査装置の増強・改良
 (b) キャビティ除染の効率化

(3) 原子炉冷却系統
 (a) 蒸気発生器二次側水質管理基準確立及び水質管理強化
 (b) 改良型蒸気発生器の設計
 (c) 渦電流探傷装置の自動化と検査作業性の改善

(4) 計測制御系統
 (a) よう素トリチウムモニタの開発
 (b) 自動測定装置の調査検討

(5) 原子炉格納施設
 110万kW級PWRの格納容器として高張力鋼製ドライ型を用い保守点検作業性向上、被ばく低減を目標にフィージビリティ調査を実施

(6) プラント全般とその他諸設備
 (a) 運転特性拡大の予備検討
 (b) 弁類・ポンプ類・空調フィルタの保守点検作業の改善
 (c) サンプリング及び分析作業の改良
 (d) 自動超音波探傷(UT)装置の開発の検討

4 改良・標準化フィージビリティ調査結果

4.1 沸騰水型軽水炉(BWR)

 作業員の被ばく低減、保守点検の的確化に関する各種改良策を考慮したMARK−T改良型、MARK−U改良型原子炉格納容器のフィージビリティ調査を行った。

4.1.1 前提条件(設計要求)

(1) プラントの出力は110万kW級

 システムは当面の標準プラントであるBWR−5を用いる。

(2) 被ばく低減と作業性向上として下記諸策を考慮する。

(a) MSIV弁軸鉛直化及びラッピングマシンの搬出入性改善
(b) CRD自動交換機の採用とCRDの搬出入性改善
(c) 再循環ポンプモータの仮置スペースを確保し、メカニカルシール、ポンプモータの点検作業性改善
(d) SR弁搬出入性改善と専用バッチの設置
(e) ISIのための作業スペース、接近性改善
(f) 階段の設置、作業ステージの増設、垂直シャフトスペースの確保

4.1.2 MARK−T改良型、MARK−U改良型原子炉格納容器のフィージビリティ調査結果(1)原子炉格納容器内配置配管計画

 ドライウェル上部空間を拡大し、上記被ばく低減と作業性向上の設計要求は全て満足させることが可能であることを確認した。

(2) 建設時の作業性

ドライウェル形状の拡大及び原子炉遮へい壁の内径拡大等により建設性が改善された。

 また、MARK−T改良型ではドライウェル内面に沿った内壁の設置により原子炉格納容器と建屋の並行建設を可能とし、これによるプラント建設工程短縮の可能性を検討した。

(3) 構造・耐震

(a) 改良型原子炉格納容器ではドライウェル直径の拡大により高張力鋼(SPV−50)の採用を検討した。

(b) 原子炉建屋原子炉格納容器及び原子炉圧力容器ペデスタルを含む原子炉格納容器内主要構造物の構造・強度について耐震性を主体とした検討を行い、特に問題ないことを確認した。

(4) 模型の作成

 原子炉格納容器内設備について縮尺1/15の模型を作成した。

4.1.3 今後の検討事項

(1) 模型による具体的詳細検討
(2) 主蒸気隔離弁の最適弁軸角度の検討
(3) ドライウェル冷却系の見直し

4.2 加圧水型軽水炉(PWR)
 110万kW級原子炉蒸気発生設備について

i)原子炉系統設備の標準化検討ii)原子炉格納施設の配置及び基本設計検討を行い、従来の運転経験に基づく改良点を取り入れるとともに、最近国内外において検討されている安全基準の適用を考慮し、今後の標準とすべきプラントの基本計画をとりまとめた。

4.2.1 原子炉系統設備の標準化検討

 原子炉及び主要系統設備のうち、安全性及び信頼性に密接な関連を持つ系統及び設備について標準プラントとしての計画、検討を行い、標準仕様を設定した。

4.2.2 原子炉格納施設の配置及び基本設計検討

(1) ドライ型格納容器(高張力鋼製又はプレストレス・コンクリート製)を標準とし本年度は高張力鋼製格納容器を用いて作業性向上と被ばく低減を図ることを目標に格納容器内の基本配置計画を行い、昨年度計画された従来型より拡大された格納容器内径寸法が妥当であるとの結論を得た。

(2) 特に蒸気発生器、一次冷却材ポンプからなる一次冷却系ループを納める蒸気発生器コンパートメントは総てのPWRで共通の形状を有し、また、定検時の作業として重要な比重を持っているのでこれに対しては機器、配管、トレイ、ダクト、グレーチング及びサポートまでの詳細な検討を行い、保守点検の的確化を図った。

(3) また、外部遮へい、内部コンクリートを含む原子炉格納施設について、構造・強度面から上記配置計画の妥当性を確認するため、標準的な耐震条件及び事故荷重に対する構造検討を行い安全性を確認した。

(4) 模型の製作

 蒸気発生器コンパートメントの縮尺1/10の模型を作製した。

4.2.3 今後の検討事項

(1) 模型を使用しての蒸気発生器室内詳細配置及び作業性等の検討。

(2) 本標準仕様に対するプラントの事故解析を実施し、設計の妥当性を確認する。

(3) プレストレス・コンクリート格納容器採用の場合の原子炉格納施設の配置及び基本設計検討。

5 標準プラント

5.1 標準プラントの基本的な考え方

 標準プラントとしては、安全性の確保はもちろん信頼性及び稼働率の向上、従業員被ばく低減、保守点検の的確化を十分考慮したプラントであることが必要で、すべに国内で運転又は建設中の軽水炉プラントをベースとして前述の改良策を充分勘案したプラントとする。

 また、プラントに採用する設備はすでに十分な運転実績があるか又はこゝ1、2年の技術開発により実用化可能であると確信できるものに限定するものとするが、新技術についても積極的に開発を続け、標準プラントの見直し時点ではこの開発の成果を可能な限り採用して行くものとする。

5.2 プラント出力

 国内での運転、建設経験、電力系統容量、経済性などを総合的に勘案し、当面、電気出力80万kW級及び110万kW級の2種類の出力レベルで標準化する。

5.3 標準化の範囲

 標準化すべき範囲としては、我が国では各プラントの立地条件に大きな差異があるため、まずこれらの立地条件に比較的左右されない原子炉蒸気発生設備(NSSS)を先行して標準化し、機器配置、建屋設計など立地条件により大きく影響される部分の標準化は今後の課題とする。

5.4 許認可時の審査

 許認可時の審査に当たっては、第1号標準プラントについては、従来通りの審査が行われるが、その後申請される標準プラントについては、立地条件等の差異に起因する設計の相違点を重点的に審査するなど、審査の効率化が期待される。

 なお、設置許可申請に係る安全審査については、原子炉安全専門審査会の中に軽水炉安全審査標準化検討会が設置され、標準プラントに係る安全審査の標準化についての検討が始まっている。

5.5 耐震設計の標準化

 原子力発電設備の耐震設計に当たり、設計条件、解析手法及び機器配管類とその支持方法の仕様を標準化することは、耐震信頼性の向上、工期の短縮、経済性の向上及び許認可業務の効率化等につながるものと期待されるが、耐震設計は立地条件に大きく左右されるものであり、その標準化については今後標準入力条件、標準解析手法、標準地震荷重等の具体的な検討を進めていく必要がある。

6 今後の改良・標準化

 我が国の軽水炉の改良・標準化の進め方については、我が国に蓄積された軽水炉技術を踏まえ、第1段階、第2段階と数次のステップで改良してゆき、一方では、それぞれの段階における成果を標準仕様として、一定期間建設し続け、最終的には、我が国の国情に適した日本型軽水炉標準プラントを定着化させるという方策が妥当である。

 第1段階の改良・標準化は、こゝ1、2年間の技術開発により確信のもてるものを、52年度以降計画の発電所に適用できるよう努める。

 第2段階の改良・標準化においては第1段階の成果をもとに自動化遠隔操作化等、技術的により高度な改良を目標とするとともに、標準化の範囲を原子炉蒸気発生設備(NSSS)から原子炉建屋や、プラントの耐震設計等に広げていくことが必要である。

7 標準化推進に当たっての官民の役割

 軽水炉プラントの標準化推進のためには、国、設置者及びメーカーがそれぞれ、その役割を明確化し、緊密な協力体制の下に一致協力することが必要である。

7.1 国の役割

 国としては、許認可業務の効率化とともに技術基準等の整備充実を図る。具体的政策として、財政投融資等政府資金の活用、安全研究の推進と標準化のための技術開発に対する援助協力などを積極的に推進する必要がある。

7.2 設置者の役割

 標準プラントの採否を最終的に決定するのは設置者である電気事業者であるので電気事業者が積極的に改良標準プラントの採用に踏み切ること、標準化に係る各社間の基準の整備及び統一、運転保守の標準化、広域共同開発に際し標準プラントの採用及びメーカーの行う改良・標準化のための技術開発への協力が必要である。

7.3 メーカーの役割

 メーカーとしては我が国に適した信頼性の高い標準プラントの確立及びそのための研究開発、関連する安全研究及び安全解析手法の確立、許認可申請資料の標準化への協力が必要である。


委員名簿

(委員)
五十音順

葦原 悦朗 東京芝浦電気(株)原子力本部BWR技師長

安藤 良夫 東京大学工学部教授
内田 秀雄 東京大学工学部教授

大崎 順彦 東京大学工学部教授

小川 健 関西電力(株)原子力建設部長

角谷 省三 (株)荏原製作所原子力部長

是井 良朗 (株)日立製作所原子力技術本部長

柴田 栄作 富士電機製造(株)原子力事業部技術計画室長

柴田 碧 東京大学生産技術研究所教授

都甲 泰正 東京大学工学部教授

豊田 正敏 東京電力(株)原子力保安部長

西川 喜之 日本原子力発電(株)建設部第四発電所準備室長

野村 純一 (株)日本製鋼所理事

久田 俊彦 鹿島建設(株)専務取締役技術研究所長

藤原 菊男 三菱重工業(株)原子力技術部長

増田 耕 九州電力(株)取締役原子力部長

松本 崇 (株)大林組原子力部長

薬師寺 薫 中国電力(株)原子力部長

湯川 譲 中部電力(株)原子力室長

渡辺 常夫 (株)竹中工務店原子力工事本部専門部長
○印 委員長
(常時参加)
科学技術庁原子力安全局原子炉規制課
工業技術院標準部電気規格課
電気事業連合会原子力部
(社)日本電機工業会原子力室
通商産業省機械情報産業局電子機器電機課
資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課


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