前頁 | 目次 | 次頁

動力炉・核燃料開発事業団の再処理施設のウラン試験に係る試運転結果について


昭和52年4月4日
核燃料安全専門審査会
再処理部会

T 検討結果

 本部会は、動力炉・核燃料開発事業団(以下、「事業団」という。)が実施した再処理施設のウラン試験に関し、その第一次試験、第二次試験及び第三次試験の結果の報告に基づいて評価した結果、「U検討内容」に示すように、本ウラン試験は、各工程における操作性と安全性の確認及び再処理施設運転要員の訓練等について、それぞれ所期の目的を達成し、ホット試験に入る基盤が整ったものと認める。

U 検討内容


1 工程試験の結果

 事業団がウラン試験に係る試運転計画書に基づいて行った工程試験の結果の概要及び各工程別の試験結果は以下のとおりである。

1−1 工程試験の結果の概要

(1) 第一次試験(50.9.4〜51.11.29)では各装置、機器等の作動の確認と特性に関する試験及び各工程の処理能力、ウラン損失量等性能に関する試験が行われ、一応の成果が得られている。この試験期間中に、幾つかのトラブルが発生し、このうち、特にプルトニウム溶液蒸発缶及び脱硝工程におけるウラン溶液の漏洩については、その原因の究明と必要な対策を講ずるための試験が綿密に行われ、その結果、必要な手直し改造が行われている。

(2) 第二次試験(51.11.30〜52.1.31)では、第一次試験中に行われた手直し改造部分のうち、@プルトニウム溶液蒸発缶、Aウラン溶液蒸発缶、B脱硝塔、C酸回収蒸発缶及び酸回収精留塔、並びにD低放射性廃液蒸発缶について再試験が行われ、良好な結果が得られている。

(3) 第三次試験(52.2.1〜52.3.4)では、せん断、溶解、分離、精製、廃棄物処理等の工程を連続的に作動させ、各工程が有機的、かつ、円滑に作動すること並びに燃料の受入れ及び貯蔵工程の操作が円滑に行われること等が確認され満足すべき結果が得られている。

(4) 第一次試験開始以来第三次試験終了までに再処理施設内に存在するウラン量の調査が4回行われ、その結果、ウランの工程入量に対するウラン損失量の比率は次第に減少し、計量管理技術の向上等が認められる。

1−2 各工程別の試験結果

名工程別に行われた試験において、以下のことが確認されている。

(1) 燃料の受入れ及び貯蔵工程

 各種キャスク及び模擬燃料を取り扱うことにより、燃料の受入れ及び貯蔵関係の各機器が正常、かつ、安全に作動し、操作性が良好であること。

(2) 脱被覆工程

 模擬燃料を用いた燃料の移送、せん断装置、燃料分配装置及び燃料溶解槽開閉装置の作動並びに被覆残渣(ハル)の取出しを行うことにより、各機器が正常、かつ、安全に作動し、操作性が良好であること。

(3) 溶解工程
 @ ウラン溶解試験

 せん断された模擬燃料等を硝酸で溶解したときの溶解の温度条件、溶解時間等の溶解特性を求め、これらについては異常がないこと。

 A 緊急冷却試験

 溶解中に溶解槽の加熱ジャケットへの蒸気の供給を停止し、冷却水を供給することにより、溶解槽内温度が低下し、反応速度が低下すること。

 B 均一化試験

 溶解槽溶液受槽及び調整槽において、酸素又は圧空により溶液のかく拌を行うことにより、短時間で溶液が均一になること。

(4) 分離工程
 @ 抽出平衡試験

  a 分離第1サイクル及び分離第2サイクルにおけるウランの抽出平衡に達する時間及びそれに必要なウラン量を求め、これらについては異常がないこと。

  b ウランの抽出平衡時の分離第1サイクル及び分離第2サイクルにおける抽出平衡曲線を作成し、その特性に異常がないこと。

  c 分離第1サイクル及び分離第2サイクルの廃液並びに溶媒中へのウラン流出量は検出限界以下であること。

  d 分離第1サイクル及び分離第2サイクルのウラン押出しに要する時間並びにそれに必要な硝酸量を求め、これらについては異常がないこと。

 A 抽出操作試験

 分離第1サイクル及び分離第2サイクルにおいて、標準条件から、溶媒流量若しくは逆抽出液流量を減少させ、又は逆抽出液の温度を低下させても、廃液又は溶媒中へのウランの流出量には影響がないこと。

(5) 精製工程
 @ ウラン精製系の抽出平衡試験

  a ウラン精製サイクルにおけるウランの抽出平衡に達する時間及びそれに必要なウラン量を求め、これらについては異常がないこと。

  b ウラン抽出平衡時のウラン精製サイクルにおける抽出平衡曲線を作成し、その特性に異常がないこと。

  c ウラン精製サイクルの廃液及び溶媒中へのウラン流出量は検出限界以下であること。

  d ウラン精製サイクルのウラン押出しに要する時間及びそれに必要な硝酸量を求め、これらについては異常がないこと。

 A プルトニウム精製系の抽出平衡試験

 プロトニウム精製第1抽出器の廃液中へのウラン流出量は検出限界以下であること。

 B ウラン精製系の抽出操作試験

 ウラン精製サイクルにおいて、標準条件から、逆抽出液の流量を減少させ、又は逆抽出液の温度を低下させても、溶媒中へのウランの流出量に影響がないこと及び溶媒流量を減少させた場合、廃液中へのウラン流出量が若干増加するが運転には支障がないこと。

 C プルトニウム溶液蒸発缶の蒸発濃縮試験

 第一次試験中に発生したプルトニウム溶液蒸発缶におけるウラン溶液の漏洩により、必要な手直し改造を行った結果、プルトニウム溶液蒸発缶は所定の能力を有すること及び凝縮液中のウラン濃度は検出刑界以下であること。

(6) 脱硝工程
 @ ウラン溶液蒸発缶の蒸発濃縮試験

  a ウラン溶液蒸発缶(第1段)は所定の能力を有すること及び同蒸発缶の計測制御系については改造後の作動は良好であること。

  b 回分方式を連続方式に改造した結果、ウラン溶液蒸発缶(第2段)は所定の能力を有すること。

  c ウラン溶液蒸発缶(第1段及び第2段)からの凝縮液中のウラン濃度は検出限界以下であること。

 A ウラン脱硝試験

 第一次試験中に発生した脱硝工程におけるウラン溶液の漏洩により、必要な手直し改造を行った結果、脱硝塔の適切な運転条件を確認し、安定な運転状態を維持することができること。

(7) 放射性廃棄物の処理処分工程
 @ 槽類換気試験

 溶解廃気及び脱硝塔からの廃気に含まれる窒素酸化物は、槽類換気系で硝酸として回収されること及び槽類から槽類換気系へのウラン流出量は検出限界以下であること。

 A セル換気及び建家換気試験

 インサイドパネルを仮設置してセルクロージング終了時と同様な気密性を維持することにより、正常な風量、負圧が得られること。

 B 高放射性廃液蒸発缶の蒸発濃縮試験

 含ウラン廃液を用いて求めた高放射性廃液蒸発缶の除染係数は期待値を上回ること。

 C 酸回収試験

  a 酸回収蒸発缶にデミスタを設置した結果、除染係数は期待値を上回ること。

  b 酸回収精留塔の除染係数は期待値を上回ること及び計測制御系については改造後の作動状況は良好であること。

 D 低放射性廃液蒸発缶の蒸発濃縮試験 低放射性廃液蒸発缶にデミスタを設置した結果、除染係数は期待値を上回ること。

(8) その他
 @ ウラン環元試験

 電解槽のウラン環元特性には異常がないこと。

 A 分析機器類の校正

 ウラン標準物質を使用して質量分析計、発光分光器、螢光X線分析装置、電位差滴定装置等を校正した結果、これら分析機器を使用して正確な分析ができること。

 B 小型試験設備(主工場の溶解系及び抽出分離系を小型化した模擬試験設備)の性能試験

 ウランを用いて小型試験設備を作動させることにより、小型試験設備の各機器が正常、かつ、安全に作動し、操作性が良好であること。

 C 低放射性廃液蒸発処理開発施設の蒸発濃縮試験

 低放射性廃液蒸発処理開発施設の除染係数は期待値を上回ること。

 以上のように、各工程の操作性及び装置、機器等の特性は良好であり、有機的、かつ、円滑に運転できることが確認されている。

 更に、これらの各工程における試験は、十分に安全性が確保された状態で進められているので、上記試験については、所期の目的を達成したものと認められる。

2 教育訓練

 事業団により行われた教育訓練は、以下のとおりである。

2−1 講義を主体とした教育

 ウラン試験開始前には、保安規定、安全作業基準、事故対策手順等のウラン試験中に必要な項目についての教育が実施された。

 ウラン試験中には、特に工程に関連した項目について、教育が実施されている。

2−2 現場実習を主体として施設の運転等の習得

 施設の始動、定常運転、停止等の訓練は、各装置毎に操作手順書を作成し、それに基づいて実施されている。また、第三次試験では、放射線管理についてもホット試験を想定した体制の下で行われるなど、全体にホット試験前の総合的な訓練が実施されている。

 緊急措置対策として、電気、工業用水及び蒸気の供給が停止した時の緊急時訓練が実施されている。

2−3 緊急時訓練等

 ウラン試験開始前に引き続き、火災訓練、防護具着用訓練、除染訓練、救急法訓練等が実施されている。

2−4 その他の教育訓練

 事業団のプルトニウム燃料部、人形峠鉱業所等の施設及び原子力発電所等の民間の施設に従業員を派遣し、保安の実習及び技術の習得が行われている。

 以上のようにウラン試験中には、再処理施設の運転要員に必要な基礎的及び専門的教育訓練が十分に行われており、この結果、試運転初期において、施設に対する不慣れ等により生じた誤操作等は試験の進展とともに減少してきたことにも示されるように教育訓練については、十分にその成果を挙げたものと認められる。

3 被ばく管理

 事業団により行われた従業員等の被ばく管理は以下のとおりである。

3−1 管理区域の設定

 ウラン試験中には、保安規定に基づいて管理区域が設定され、衣類、靴等の交換、退出時のモニタリング等が励行されている。

3−2 管理区域内放射線管理

 管理区域内における放射線管理は、ガンマ線空間線量率、空気中の放射性物質濃度及び表面汚染密度の監視により行われ、このうち、ガンマ線空間線量率については保安規定に定める基準以下であることが確認されている。また、表面汚染密度及び空気中の放射性物質濃度については、ウラン漏洩時に異常が認められたが、速やかに汚染区域を設定し、除染等の措置が施されている。

3−3 個人被ばく管理

 外部被ばくの管理は、管理区域立入者の個人被ばく線量計による被ばく線量の測定により行われ、異常のないことが確認されている。

 内部被ばくの管理は、必要に応じ、従事者の尿のバイオアッセイにより行われ、異常のないことが確認されている。

 また、従事者及び随時立入者に対し、血液検査等の特殊健康診断が行われ、この結果、従事者等には、異常のないことが確認されている。

 以上のようにウラン試験中の従事者等の被ばく管理には、特に問題となる点は認められず、ウラン漏洩時に際しての被ばく管理の処置も適切に行われたものと認められる。

4 放射性廃棄物の管理

 事業団により行われた放射性廃棄物の管理は以下のとおりである。

4−1 気体廃棄物の管理

 ウラン試験中に発生した気体廃棄物の放出は、排気モニタ・サンプリング・ユニットにより、放出排気中の塵埃を採取し、これを1週間毎に回収して、排気中のアルファ放射性物質濃度を測定することにより監視されている。この結果、すべて測定装置の検出限界以下であることが確認されている。

4−2 液体廃棄物の管理

 ウラン試験中に発生した液体廃棄物の放出は、放出のつど、放出廃液のサンプリングを行い、廃液中の全アルファ放射性物質濃度及び全ベータ放射性物質濃度を測定することにより監視されている。第三次試験終了時までに、約240回の放出が行われたが、全アルファ放射性物質濃度及び全ベータ放射性物質濃度は、いずれも保安規定に定められた基準値以下であることが確認されている。

4−3 固体廃棄物の管理

 ウラン試験中に発生した固体廃棄物は、容器表面の放射線量率が測定され、保安規定に定められた基準値以下であることが確認された後、低放射性固体廃棄物貯蔵場に保管されている。

 以上のようにウラン試験中に施設内で発生した放射性廃棄物の管理は適切に行われていると認められる。

5 環境監視

 ウラン試験中にも、保安規定に定められた監視計画に基づき、環境監視が実施されている。

 陸上監視としては、周辺監視区域内又は同区域外において、空気、飲料水、野菜、牛乳等の放射能水準等について測定、監視が行われ、また、海洋監視としては、東海地先海域における海水、海底土、海産生物等の放射能水準等について測定、監視が行われている。

 この結果、ウラン試験前に比べ異常は認められていない。

6 トラブルの処理

 ウラン試験中に生じた施設面及び管理面のトラブルのうち、主なものは @プルトニウム溶液蒸発缶からのウラン溶液の漏洩、A脱硝工程におけるウラン溶液の漏洩及び B脱硝塔種供給配管からのウラン粉末の漏れの3件でありその他軽微なものが発生している。

 これらのトラブルについては、そのつど徹底的原因究明と改善が図られ、トラブルの発生は試運転経験を経るにしたがい着実に減少した。このことは、不具合箇所の改造及び教育訓練がその実を挙げ、ウラン試験が所期の目的を達成していることを示すものであり、また、万一トラブルが発生しても、迅速、かつ、的確に対応し、処置し得る基盤が整っていると認められる。



前頁 | 目次 | 次頁