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核燃料サイクル問題懇談会 第1次中間とりまとめ 昭和51年9月
原子力委員会
核燃料サイクル問題懇談会
まえがき エネルギー需要の増大にともなって、原子力発電への依存度も急速に高まりつつあり、これを支える基盤の整備が望まれているが、特に原子力発電システムとして整合性のとれた核燃料サイクルを、可能な限り自主性をもって確立する必要がある。 そのための方策は、原子力開発利用長期計画(昭和47年6月原子力委員会決定)に示されているところであるが、石油危機以来の急激な情勢変化と原子力発電の進展にともない、特に核燃料サイクルに係る諸方策については、早急にその見直しをする必要が生じてきている。 このため、本懇談会において、ウラン資源の確保から放射性廃棄物の処理処分に至る核燃料サイクルの各段階について問題点を摘出するとともに、その対応策を政府及び民間の果たすべき役割を含め明らかにすることとした。 懇談会は、幹事会において必要な調査を行うとともに、関係産業界の意見を徴し、また、原子力委員会の新型動力炉開発専門部会及び放射性廃棄物対策技術専門部会並びに資源エネルギー庁の核燃料研究委員会の検討結果等も参考にしつつ審議を行った結果を中間的にとりまとめた。 しかしながら、このとりまとめは、審議途中における中間的なものであって、懇談会としては幹事会の調査の進展及び各方面における検討を踏まえ、また、諸外国の動向をも勘案しつつ、今後さらに全般的な論議をつくして最終報告書をとりまとめることとしたい。 なお、本とりまとめの提言を具体化するにあたっては、官民の一層の協調と努力が必要であるが、特に政府においては、関連する研究開発の推進、事業化の促進等所要の施策を実施するため必要な資金を確保するよう、格段の配慮を要望する、との強い意見が表明されたことを付記する。 核燃料サイクル問題懇談会構成員(五十音順)
原子力委員
1)昭和51年5月18日から
2) 〃 5月18日まで
3) 〃 7月27日まで
4) 〃 7月27日から
5) 〃 6月2日まで
6) 〃 6月2日から
合会開催状況
第1回 昭和51年4月13日
第2回 〃 5月25日
第3回 〃 7月2日
第4回 〃 8月24日
第5回 〃 9月28日
Ⅰ 天然ウランの確保策 ウラン資源は特定地域に偏在しており、かつ、国際大資本による寡占化の傾向がみられるうえ、ウラン資源国におけるナショナリズム等の動きも加わって供給の不安定と価格の高騰が懸念されている。このためウラン資源の長期的、安定的供給の確保を図る観点から、海外ウランの長期購入契約を引続き促進するとともに、長期的には世界におけるウラン資源量の増大に寄与しつつ安定供給を確保するという考えに立って開発輸入の比率を高めていくこととし、年間所要量の1/3程度を海外開発によって確保することを目標とする。 このために、
(1)国は、
イ ウラン資源保有国との経済協力を推進し、友好関係の保持に努める。 ロ 動燃事業団による先駆的な海外調査探鉱を一層強化拡充する。 ハ 民間企業による海外探鉱開発に対し、金属鉱業事業団の成功払い融資等の助成制度の強化を図る。 ニ 低品位ウラン鉱の利用のための技術開発を推進する。 (2)民間は、
イ 鉱山業界等においては、電力業界と協議しつつ海外での探鉱開発を強力に推進する。 ロ 電力業界においては、鉱山業界等が行う海外開発に協力するとともに、我が国企業が開発に成功したプロジェクトについて生産品の引取りを行う。 Ⅱ 濃縮ウランの確保策 自由世界で唯一の濃縮役務供給国であるアメリカの現有3工場の供給能力は、1980年代前半に限界に達するものと見込まれるため第4工場以降の計画が進行中であり、また欧州各国は、濃縮技術の開発及び工場の建設計画を独自に進めている。 自由世界の中で濃縮需要の大きい我が国としても、濃縮ウランの安定供給を図るため、将来は国産工場を建設し、新規需要の大部分を国内で賄うことを目標として技術開発を強力に進めることとする。 なお既契約分に加えて、供給源の多様化を図るため国際共同事業への参加も考慮するものとする。 このため、
(1)国は、
イ 動燃事業団を中心に国のプロジェクトとして進められてきた遠心分離法によるウラン濃縮技術開発を引き続き推進することとし、昭和52年度から次の段階であるパイロットプラントの建設を進め、国産技術の確立を図る。 (2)民間は、
イ 将来の事業化の可能性を考慮し事業主体等について検討する。 Ⅲ 再処理体制の確立策 使用済燃料を再処理して回収したウラン及びプルトニウムを再び核燃料として利用することは、ウラン資源に乏しい我が国として必要不可欠であるので、国内における再処理体制を確立していくこととし、第2再処理工場の建設・運転は、電力業界を中心とする民間が主体となって行う方針で、その建設の準備を進める。 このため、
(1)電力業界、関連産業界及び関係政府機関から成る連絡協議の場を設け、第2再処理工場建設のための具体策について検討する。 (2)国は、
イ 動燃事業団再処理工場の運転を通じて我が国の再処理技術の確立に努めるとともに放出低減化技術、転換技術、高レベル廃棄物処理処分技術等の関連技術の開発を進める。 ロ 関係法規、各種基準等の整備、用地取得等に対する協力、建設資金に対する低利融資等所要の対策を検討する。 (3)民間は、
イ 電力業界を中心とし、その他関連する産業界を加えて、責任のある主体を設立し、再処理事業について所要の準備を進める。 ロ 再処理技術に関しては、動燃事業団等によって得られた経験を活用するとともに、海外からの導入も含めた検討が必要であるが、当該再処理事業に関連する産業界は協力して技術基盤の涵養に努める。 ハ 第2再処理工場稼動までの措置としては海外委託あるいは貯蔵池の建設により対処する。 Ⅳ プルトニウムの利用策 プルトニウムはその核特性から高速増殖炉に利用するのが最も適当であるが、高速増殖炉が実用化されるまでの間、資源の有効利用、外貨の節減等の観点から、プルトニウムを可能な限り熱中性子炉へリサイクルする方針でその利用を積極的に進めることとし、新型転換炉においてプルトニウム利用の実証を行うとともに、軽水炉についても所要の実証を経て、実用化に進むことを目標とする。 このため、
(1)国は、
イ プルトニウムの利用技術の研究開発を進めるとともに、新型転換炉の原型炉の建設・運転等を通じ、プルトニウム利用のための実証試験を行う。 ロ プルトニウム利用に伴う生物学的及び環境上の安全性についての研究を進めるとともに、環境への影響評価等を行う。 (2)民間は、
イ プルトニウム燃料を熱中性子炉に利用するため、その実証試験を含めた計画を推進する。 Ⅴ 放射性廃棄物の処理処分対策 低レベル放射性廃棄物については、陸地処分、海洋処分に関して早期にその処分の体系を確立させることを目標として技術開発を進めることとし、その処理処分は原則として民間において実施することとするが、本格的処分の体制については、試験的海洋処分等の結果を踏まえて検討する。 高レベル放射性廃棄物については、出来るだけ早期に処理処分の方法を確立することを目標として国が中心となって技術開発を進めることとする。なお、処分等に要する経費は使用済燃料の発生者が負担することを原則とするが、処分(永久的な処分及びこれに代わる貯蔵)については国が責任をもつ方向で具体的方策について検討する。 このため、
(1)国は、
イ 国際的な協調を図りつつ、低レベル放射性廃棄物の試験的海洋処分等を実施し、これに伴う環境への影響評価等を行う。 ロ 低レベル放射性廃棄物の処分に関して必要な法規の整備、基準の作成、安全評価等に関する研究開発を推進する。 ハ 高レベル放射性廃棄物の固化処理、貯蔵、地層処分等に関する研究開発を推進する。 ニ 技術開発に関する国際協力プロジェクトに参加する。 (2)民間は、
イ 試験的海洋処分について国に協力するとともに、その受託等を行う機関として、原子力環境整備センター(仮称)を設立する。 ロ 放射性廃棄物の発生量の低減化、高度の減容濃縮等を推進する。 ハ 加工施設等からの低レベル放射性廃棄物の共同処理体制の整備を図る。 Ⅵ 使用済燃料の輸送体制の確立策 使用済燃料の輸送の本格化に備え、キャスク、輸送船等の輸送手段、設備の増強を行い、安全輸送体制の整備、強化を図る必要がある。 なお、海外再処理委託に伴う海外への輸送体制についても整備を図る必要がある。 このため。 (1)国は、
イ 核燃料安全専門審査会、核物質防護専門部会等の検討結果を踏まえ、輸送の安全確保及びフィジカル・プロテクションに関する諸制度の一層の整備を図る。 (2)民間は、
イ ㈱エヌ・テイー・エス等を中心に輸送体制の強化を図る。 ロ キャスク、輸送船等の輸送手段の安全性向上に必要な技術開発を行うとともに、専用港湾、陸上施設等の輸送の安全確保に必要な施設の整備を進める。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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