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IAEA第6回プラズマ物理及び制御核融合研究国際会議


〔開催日〕昭和51年10月6日より13日まで
〔場所〕西独(ババリヤ州)ベルヒテスガーデン
〔出席者数〕434名、30ヵ国、4国際機関より参加日本よりは39名
〔論文数〕151編、日本よりは19編

 なお、ホスト研究所は、ガルヒンク研究所である。

〔会議内容〕

 本会議はIAEAが主催する核融合の研究論文を発表する国際会議であり、前回の東京会議後2年弱しか経過していないが、全般に着実な進歩が見られた。会議はプラズマの閉込め方式ごとに分けて行われ、それぞれの内容は次のとおりであった。

(1)トカマク型

 約半年前より実験を始めた比較的大型のトカマクであるT-10(ソ)、PLT(米)は、初期故障を克服しつつ、注目すべきデーターを発表した。とくに、T-10では、懸案であったトカマクの不純物問題について明るい見通しが得られ、また、閉込め時間は40~60msとなった。

 これ以外では、Alcator(米)でnτ*~10・sを実現し、JFT-2a(日)、DITE(英)でダイバータの有効性を実証した。DoubletⅡb(米)では形状制御により非円形断面プラズマを実現した。著者らは円形断面に比べて、プラズマ電流、ベータの点で数倍優れていると主張している。

 第二段加熱によって、イオンは予想通りに加熱され、TiTe**になった。相当大量の加熱を行っても、閉込めに悪影響が認められなかった。今後は、イオンと同時に電子を加熱する問題が注目されるであろう。

 なお、炉として効率の向上のため、トカマクを高ベータ化する必要性が広く認識されている。この動きに応じて、今回の会議では、高ベータピンチの一部は、トカマクのセッションで議論された。

(2)ステラレータ型

 新しく稼動したL-2(ソ)、W-ⅦA(独)において温度200~500ev密度約10のプラズマの閉込め時間6~8msを得た(従来は<1ms)。これは相当するトカマク型装置と同程度のデータである。しかしながら、これらのステラレータは何れも(トカマクと同様の)オーム加熱を利用しており、オーム加熱をしないステラレータはτ<1msである。このことはステラレータ磁場そのものではなく、オーム加熱が閉込めになんらかの作用があるのではないかという直観的危惧をいだかせるものであり、この点とステラレータ巻線の技術的困難さが、この型の今後の課題である。

(3)ミラー型

 この型では、2ⅩⅡB(米)で、β0.7、n=10、Ti9KeV、nτ103sを達成した。

 これは、プラズマ物理が役立つという点で心強い結果である。ミラー炉としては、Q(出力/入力)を上げるという困難な問題が残っている。これについてのいくつかのアイデアが出された。

(4)慣性閉込め

 東京会議後、圧縮に伴う不安定性が問題になり非常に対称性のよいターゲットあるいは多層構造のターゲットが実験の対象となっている。これに伴い当然高度の計測が必要となってくる。そこで時間、空間分解性のある計測法を開発し、圧縮時の現象の解明に力をそそいでいる。また、相対論電子ビーム(REB)によるプラズマ圧縮の際の中性子の発生が報告された。なお、レーザー、REBともに大出力の装置は、建設と会議とのフェーズが合わず、派手な話題はなかった。

 プラズマフォーカスの比例則が予想よりも有利な結果を得ているのは注目される。

(5)高ベータ

 高ベータ・トーラスの実験では、依然として不安定性を克服できていない。Scyllac(米)とヘリカルピンチ(独)で夫々比例則、不安定性制御につき有望な結果が得られている。しかし、何れも円弧、直線のプラズマであり、トーラスではない。

(6)核融合炉

 この関係の活動は、最近ますます盛んになっているのに、このセッションは、東京会議にくらべて淋しいものとなった。なお、実験炉について原研が提唱しているLi2O方式が再び注目され、Wisconsin大のUWMAK-ⅢもLi20方式を採用した。

 最近問題となっている核融合炉(トカマク炉)のコストについても発表された(英)。今後の炉心技術の効率化(例えばβ値の上昇)を考えに入れなければ、現在言われているFBRのコストを上廻るというのがその要点である。

* nは密度、τは閉込め時間
** Tiはイオン温度、Teは電子の温度

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