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新型動力炉開発専門部会報告書


−新型炉開発の進め方について−
昭和51年8月11日

原子力委員会委員長
佐々木義武 殿
新型動力炉開発専門部会
部会長 稲葉 秀三

 当部会は、昭和50年7月8日付原子力委員会決定に基づき、我が国の長期的な動力炉開発の今後の進め方に関し、総括ワーキング・グループ、高速増殖炉分科会及び高温ガス炉分科会を設け、鋭意審議を進めてきましたが、このほど別添のとおり、新型炉開発の進め方についてとりまとめたのでご報告いたします。

 近時の厳しい経済情勢、財政事情下において本報告書において提案した諸施策を実施していくことは、種々困難もあることと推察いたしますが、原子力委員会においては、これら諸施策の実現に格段のご配慮を払われ、我が国の今後の原子力開発利用が円滑に推進されることを強く望む次第であります。


(別添)

新型動力炉開発専門部会報告書
−新型炉開発の進め方について−

総論 新型炉開発の認識と前提

1.新型炉開発の基本的認識

 我が国の国民生活及び社会経済の発展にとって、エネルギー供給の安定化、自立化は基本的課題であり、エネルギー資源に恵まれない我が国では、今後、原子力が石油代替エネルギーとして、その中核をなすものと考えられる。特に、我が国のエネルギー供給の安定化、自立化の実現のためには、当面、原子力発電の規模の拡大が重要な鍵と目される。また、将来の長期的エネルギー供給の観点からは、核熱エネルギーの直接利用が、原子力発電と並んで、我が国のエネルギー供給の安定化、自立化に貢献するものと期待される。

 世界的な原子力発電の開発規模の拡大に伴って、将来にわたって軽水炉による開発に中心を置く限り、昭和70年代頃を境に、ウラン資源の需給ギャップが生ずることが予測される。このため、先進諸外国においては、核燃料(ウラン、プルトニウム等)を有効利用することを目的とした新型炉の開発を進めている。

 我が国としても、原子力が、将来、各産業分野の中で大きな比重を占めることとなること、自主技術の蓄積が安全性、信頼性の向上に不可欠であること等から、独自の技術開発を進めることが必要であるとの認識に立ち、高速増殖炉、新型転換炉(ATR)及び核熱エネルギーの直接利用の研究開発を自主的に進めてきている。

 これらの新型炉は、高速増殖炉実験炉の臨界が昭和51年度、新型転換炉原型炉の臨界が昭和52年度に、それぞれ予定されているほか、核熱エネルギーの直接利用については、基礎的研究の段階から多目的高温ガス実験炉の開発研究に入ろうとしており、いずれの炉型についても、今後の実用化に向けて開発の進展度や優先度を考慮した新たな評価を必要としている。

 原子炉開発は、リードタイムが他の技術開発に比して極めて長いため、その開発には、長期にわたる計画が必要であり、新型炉開発の評価は、これまでの研究開発の成果と石油危機以降の情勢変化を踏えた新たな長期的な計画の中で、総合的に考える必要がでてきている。

 一方、我が国の原子力発電については、昭和50年8月の通商産業省総合エネルギー調査会の中間報告において、また、同年12月の総合エネルギー対策閣僚会議において、昭和60年度4,900万KWの目標が設定されている。

 しかしながら、軽水炉についての核燃料サイクル、特に、そのダウンストリームの確立、安全・環境保全及び立地をめぐる諸問題などの点で、多くの困難に遭遇しており、我が国のみならず、先進諸外国においても、原子力発電の開発計画と現実の進捗との間に、少なからぬギャップが生じている。従って、今後、我が国において、これらの諸問題の解決に格段の政策努力等が払われなければ、上述の発電計画の達成は極めて困難といわねばならない。これを解決するためには、軽水炉の安全性試験研究、炉の改良標準化等を積極的に進め、軽水炉発電プラントの信頼性を回復させ、完成された技術としての社会的地位を確保しなければならない。特に、軽水炉についての核燃料サイクルの確立は、今後の原子炉戦略の構想及び原子力発電の拡大にあたって不可欠の要件と考えられる。また、これらの軽水炉体系定着化の諸対策によって、原子力開発に対する国民の信頼と理解を得ることができるものと考えられる。

 このように、新型炉開発計画の推進とその実用化、軽水炉の核燃料サイクルの確立を主とする軽水炉体系の定着化など、原子力開発の諸問題を解決するために、今後、長期にわたって膨大な資源と資金が必要である。これまでの高度成長から安定成長に移行しつつある経済環境の下で、かかる資源と資金の投入は、企業と財政に少なからぬ負担を課すことが予想される。

 従って、今日の経済情勢のもとにおいて、原子力開発利用を、今後、円滑に推進していくためには、国として、今後の情勢変動に適切に対応できるよう、総合的なエネルギー戦略分析を進め、長期的な計画の中で、開発目標の集約化と効率化をこれまで以上に強く図る必要がある。


2.原子炉利用体系の基本

 我が国の原子力利用は、これまで発電に中心が置かれており、今後も発電を主流とした傾向は続くものと考えられる。しかし、より長期的に、エネルギーを多量に消費する産業分野での原子力利用を実現していく必要があり、これによって、一次エネルギー全体における石油依存度の低下を図ることが必要である。

 発電用原子炉としては、現在、軽水炉が世界の主流を占めており、今後とも当分の間は、この傾向が続くものと思われるが、ウラン資源の制約から、将来は、核燃料経済のより優れた高速増殖炉を主とする新型炉の導入を図っていく必要がある。

 また、発電以外、特に、直接製鉄用還元ガスの製造、水素製造等の分野では、原子炉の核熱エネルギーの直接利用が期待されており、1,000℃程度の冷却材出口温度をもった多目的高温ガス炉が、これに適切な炉型であると考えられる。

 我が国の原子炉利用体系の昭和75年以降の姿は、軽水炉から、遂次、高速増殖炉の利用系への編入が進められる発電分野を主軸としつつ、併せて、より長期的には、核熱エネルギーの直接利用の実現を図ることが望ましいものと考えられる。


3.新型炉開発の目標と位置づけ

 新型炉の開発目標を定めるにあたっては、技術的実現可能性のほか、ウラン資源確保や再処理、廃棄物処理処分等を含めての核燃料サイクルの確立の見通しと、原子力発電の開発規模などを考慮した、総合的原子力利用体系の中での位置づけを明らかにする必要がある。

 原子力利用の拡大に伴って、ウラン等核燃料資源の確保が一層重要となるが、軽水炉発電系において試算すれば、昭和75年に1億数千万KWの発電規模で、全炉の耐用期間中の累積所要量として40〜60万MTU程度の天然ウランが必要であり、長期的に、さらに拡大を図るためには、資源効率の高い高速増殖炉を開発し、実用化することが必要である。

 従って、核燃料サイクルの効率性、新型炉開発の集約化、効率化を考慮すれば、軽水炉から高速増殖炉への転換を我が国の新型炉開発戦略の基本として、これに、政府及び、民間の総力を傾注すべきである。

 新型転換炉(ATR)は、その核燃料特性からみて、ウラン資源及び濃縮作業量の節減、プルトニウムの利用等、優れた性能が期待でき、高速増殖炉の実用化時期如何によっては、特に、重要な意義を持つと考えられるので、これに備えて、今後とも技術の蓄積を図って行くものとする。

 多目的高温ガス炉は、原料炭不足分の代替、燃料用水素の製造等を通じて、原子力利用分野を非電力部門に拡大し、化石資源の不足による将来のエネルギー供給の制約を解消する役割を果すものと考えられるので、その研究開発を進めるものとする。

 海外で開発が進められている新型炉の我が国への導入については、安全性、経済性、核燃料サイクルに及ぼす効果等について、今後とも調査、検討を進めるものとする。

 以上の新型炉開発を進めるにあたっては、新型炉の安全性の確保、及び、環境の保全に努力を注ぐことがこれまで以上に要請されるので、それぞれの開発計画の中で、これらの研究開発を推進するとともに、実用化に備えて安全評価等に関する諸データの蓄積を図るものとする。

 以上の目標を達成していくにあたり、時期的な優先度を考慮して、開発目標を次のとおり重点化するものとする。

 短期的目標(〜昭和60年)
(イ)軽水炉の定着化
(ロ)自立的核燃料サイクルの確立
(ハ)新型炉開発計画の推進と新型炉用核燃料サイクル技術の開発
  中期的目標(昭和61年〜昭和75年)
(イ)原子力発電規模の拡大
(ロ)新型炉の実用化と核燃料サイクルの拡大・多様化

 なお、昭和75年における我が国の原子力利用系を試算すれば、次の表のとおりとなる。


各論 新型炉開発の推進方策

1.軽水炉の定着化

 軽水炉は、昭和75年までに至る我が国の原子炉システムにおいて、基幹となる炉型であり、軽水炉の技術的、経済的な信頼性の向上は、今後のエネルギー供給における原子力発電の役割を確保するための基本的条件である。

 そのためには、安全・環境基準とその評価に必要な各種データの整備を含めて、改良・標準化を進め、我が国に適した軽水炉として定着化させる必要がある。

 こうした軽水炉の定着化のため、政府と民間とが相互に有機的、且つ、密接な連携の下に、各々最大限の努力を傾注すべきであるが、特に、環境基準及びその評価に関する研究開発は、主として、政府及び政府関係機関において、機器の改良、信頼性の向上、主要機器の国産化については、主として民間において、それぞれ強化拡充するとともに、国は、民間に対し引き続き所要の助成を行うものとする。さらに原子力委員会においては、国及び民間におけるこれらの研究の総合的な計画の企画、立案及び実施にあたっての調整をこれまで以上強化する。


2.自立的核燃料サイクルの確立

 核燃料サイクルの確立のための具体的方策については、原子力委員会に新たに設けられた「核燃料サイクル問題懇談会」における検討に待つこととするが、長期の炉型戦略にとっては、それを支える核燃料サイクル、特に、軽水炉のダウンストリームの確立が不可欠であり、当部会としては、以下の方策が緊要であると考える。

(イ)ウラン資源の確保

 ウラン資源の長期安定確保が原子力利用促進の前提であるので、その確保対策に万全を期す必要がある。さらに、現在、未利用のまま放置されている劣化ウラン・減損ウランについては、将来の新型炉の核燃料及び核原料として利用できるので、その確保策を検討する必要がある。

(ロ)ダウンストリームの確立

 新型炉の開発及び利用において、再処理、プルトニウムの利用、減損ウランの利用、放射性廃棄物処理処分等の要素が、総合的に、整合性をもって実現して行くことが必要であり原子力委員会としては、この見通しの早期確立を図る必要がある。

 プルトニウム利用、高レベル放射性廃棄物の処理処分については、昭和60年代の事業化を目指して、動力炉・核燃料開発事業団を中心に、日本原子力研究所がこれに協力して、研究開発等の推進を図るべきである。

 また、新型炉の本格的利用にあたっては、その燃料としてプルトニウムを大量に利用するので、その商業的規模での生産を行うためにも、第2再処理工場の早期実現を図る必要がある。その際、各国の動向をも勘案しつつ、使用済燃料の長期貯蔵施設、廃棄物処理処分施設、燃料加工施設などを総合した機能的立地が、輸送問題、フィジカルプロテクション等の見地から望ましいと考えられる。このため、国と民間の役割、及び、実現体制について検討を進めるべきである。


3.高速増殖炉の開発

 ウラン資源の究極的な有効利用が期待される高速増殖炉は、昭和70年代における本格的実用化を目標として、次の時期的区分により、原型炉の開発を強化推進するものとする。

 第T期(昭和43〜53年)開発初期の研究開発
 第U期(昭和54〜59年)原型炉の建設工事、臨界までの研究開発、高速炉燃料の再処理技術の研究開発

 動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉原型炉建設の具体的計画は、実験炉の建設経験、研究開発の成果、海外における技術開発の動向等に照して妥当なものであると判断され、計画どおり建設を行うことが適当である。

 原型炉の建設及び運転管理体制については、動力炉・核燃料開発事業団を中心として、電気事業者、メーカー等産業界が密接に協力し得る強力な体制を確立することとし、原型炉の建設に係るメーカー体制としては、人材の確保、資金の集約化、開発の効率化等の見地から、メーカーを中心に、高速増殖炉のエンジニアリング会社を設立するなど、一元化することが望ましい。

 原型炉の建設費については、原型炉の建設を計画どおり推進するため、政府及び民間において、それぞれ最大限の努力を傾注するものとし、具体的な政府と民間の負担の在り方については、原型炉の建設費の見通しが明らかになった段階で検討するものとする。その際、民間において少なくとも同規模の軽水炉建設費相当額程度を負担するとの意向のあることに留意することとする。

 高速増殖炉の実用化を円滑に進めるためには、昭和60年代半ばまでに、実証段階における大型炉(実用炉の経済的な見通しの確立と技術的諸性能の実証を目的とする実用規模に近い大型炉。以下、実証炉という。)の建設が必要であると考えられる。その開発に当っては、原型炉の建設、運転経験による技術的、経済的評価を十分反映しつつ、適切な国際協力による開発の加速効果も十分考慮して進める必要がある。その開発体制については、原型炉開発の進展状況を踏えて、官民の役割をも含め、改めて検討するものとするが、その際、開発成果の円滑な産業化を図るため、エンジニアリング会社を中核としたメーカー体制を整備するとともに、電気事業者等のユーザーが直接運営管理にあたることが望ましい。また、動力炉・核燃料開発事業団においては、実験炉、原型炉及び関連研究開発施設を有効に利用しつつ安全性研究をはじめとする関連研究開発を進め、その技術と経験を実証段階においても活用されるよう、体制の整備を図る必要がある。

 高速増殖炉用の核燃料サイクルが、実用段階において、炉と整合性をもって確立することが必要であり、特に、核燃料の成型加工、再処理等の高速増殖炉用の核燃料サイクルの各要素は、これまでの軽水炉用の核燃料サイクルの各要素に比べて高度な技術が要求されるので、炉の開発と併せて、動力炉・核燃料開発事業団等において、その研究開発を強力に推進するものとする。


4.新型転換炉(ATR)の開発

 世界に先がけてプルトニウムの本格的利用を目指す我が国の新型転換炉は、高速増殖炉の実用化の進展状況により、核燃料の利用形態の多様化、有効利用等核燃料経済上のメリットのみならず、原型炉におけるプルトニウム利用の実証という見地からも重要な意義を有すると考えられるので、原型炉の建設、運転を、広くプルトニウム利用の研究開発計画と総合化して進める必要がある。

 このため、当面、動力炉・核燃料開発事業団において、原型炉の建設、運転により、技術的諸性能の確認、安全性評価データの蓄積、経済性の評価等に努力を傾注するとともに、実証炉の概念設計及びこれに必要な研究開発を進めるものとする。

 実証炉の建設については、核燃料サイクルにおける効果、高速増殖炉の開発の進展状況、重水の供給体制、海外市場開発の可能性等につき、原型炉の建設、運転経験を通じての技術的、経済的評価を反映しつつ、原子力委員会において、慎重に検討を進め、昭和50年代半ばまでに結論を得るものとする。


5.多目的高温ガス炉の開発

 現在の研究開発は、なお基礎的技術基盤が確立した段階にあり、将来の核熱エネルギーの直接的工業利用の重要性に鑑み、大型の実証試験等による本格的な研究開発を推進する必要がある。

 研究開発の実施に当っては、原則として、自主開発で行うこととし、発電用高温ガス炉等諸外国の経験をも考慮して進めることが必要である。

 当面、昭和50年代末までに運転することを目途に、実験炉の建設を行うこととし、通商産業省で進められている大型プロジェクトの直接製鉄の計画との対応をも考慮して、日本原子力研究所において強力に研究開発を推進する必要がある。

 原型炉以降の開発については、実験炉を中心とする研究開発成果及び内外の諸情勢を勘案し、開発体制の確立等をも含めて、改めて再検討する必要があるとともに、核燃料資源の多様化の見地から、トリウムサイクルの利用を考慮すべきものと考える。

 なお、多目的高温ガス炉システムを開発していくにあたっては、施設上、環境保全上の安全性はもとより、将来のエネルギー供給システムとして社会に受け入れられるよう十分配慮することが必要である。


6.海外で開発された新型炉の導入に当っての基本的考え方

 海外で開発された新型炉の我が国への導入に当っては、軽水炉導入の経験に照し、我が国としての安全性、信頼性に対する実証、及び、安全基準等の評価データの蓄積が前提となるので、導入主体においてこれらの努力が必要となる。

(イ)CANDU炉

 CANDU炉は、既に、相当程度実用炉として建設、運転されており、ウラン資源の有効利用及び供給保証への期待、ダウンストリーム問題の容易さ等から、我が国においても関心があるが、炉の安全性、安全審査に必要なデータ等、CANDU炉の導入に当って、なお我が国として研究開発を要する面も多く、導入主体における研究開発の進展を考慮しつつ、新型転換炉(ATR)の原型炉以降の開発との関連性をも含めて、なお十分に検討する必要がある。

(ロ)高温ガス炉

 発電用高温ガス炉については、欧米においても本格的な実証段階を迎えているとはいえないが、多目的高温ガス炉との技術的関連、トリウム資源の利用などを考慮して、欧米における実用化の動向に注視する必要がある。なお、米、独、仏間で現在相互に進められている国際共同開発計画について、その動向に注視しつつこれらの計画への参加等をも考慮して、引き続き技術蓄積を高めて行くことが必要である。


7.自主開発炉の実用化体制の確立

 新型炉の自主開発は、我が国に適した原子炉体系の確立、先端技術水準の向上、国際競争力の強化など、今後の我が国原子力産業の発展と原動力となるものであり、自主技術の蓄積が、安全性、信頼性の向上に不可欠であることなどの観点から、従来の技術導入依存型からの脱却を目指す主要なナショナルプロジェクトとして認識されている。従って、適切な国際協力による開発の加速化及び効率化を考慮しつつ、その開発成果の実用化を図るため、政府、産業界、大学の緊密な連携のもとに総力を挙げて取り組む必要がある。

 新型炉の実用化に当っては、安全のより一層の確保はもとより、大型化に伴う技術的、経済的リスクの軽減、及び、開発された成果の円滑な産業化を促進するため、原型炉の建設、運転経験を踏えての実証炉の建設、運転等の実証段階が必要と考えられる。

 今後の原型炉の開発においては、研究開発の一環であることにも鑑み、政府が中心となって推進することとし、国の研究開発機関における研究開発、プロジェクト管理、システムエンジニアリング等の機能の強化、及び、大学との協力体制の強化を図って行くことが必要である。その際、開発に必要な人材の確保、資金の集約化、開発の効率化等の見地から、民間における体制の一元化を図ることが望ましい。

 実証化段階の開発においては、実用を前提として、国の研究開発機関における成果の円滑な産業化を図るため、メーカーの体制整備が行われるとともに、電気事業者等のユーザーが、直接運営管理にあたる体制がとられることが望ましい。このような段階においても、自主技術開発成果の実用化を促進するため、ユーザーの資金調達の拡大、政府による長期低利融資の斡旋等について、今後、検討する必要がある。

 なお、実証炉を建設する場合には、英、仏、西独等でとられていると同様に、建設コストの低減、及び、産業体制確立の見地から、実証炉の数年後に、実用炉を数基程度建設する計画で臨む必要がある。


8.研究開発基盤の強化拡充

 以上の方策を進め、今後の開発目標を達成していくためには、豊富な人材と多額な資金が必要であり、今後、研究開発基盤の飛躍的な強化、拡充が必要である。

 研究開発のあらゆる局面において、優れた人材の養成、確保は、極めて重要な要件であるが、特に、高度で、且つ、多面的な技術の集積を基盤とする原子力開発の分野においては、卓越したプロジェクト管理者の優秀な技術者集団が必要である。今後の新型炉開発目標の早期達成のためには、長期的観点から、大学等の教育機関も含めた組織的、且つ、一貫した高度な人材養成確保策の拡充が要請される。また、大学においては、上述の人材養成とともに、新型炉開発に必要な基礎的分野の研究の拡充が期待される。

 一方、原子炉研究開発に要する資金は極めて巨大であり、新型炉等の開発スケジュール(付表)に基づき、今後10年間に要する研究開発費を現在価格でおおまかに試算すれば、核融合に係る研究開発費を除いても、おおよそ2兆円を超える巨額に達する。

 原子力開発は、各国においても他の巨大科学と並んで、ナショナルプロジェクトとして、主として政府の財政資金によって開発が進められているが、政府資金の投入は新たな開発に重点が移り、実用段階と目される分野は順次民間が主体となっている。

 我が国の電気事業は、欧州諸国とは異なり、多くが民間企業によって進められているが、今後、我が国における新型炉開発を進めるに当っては、その開発規模が極めて巨大となることに鑑み、民間における努力の一層の傾注はもとより、政府の役割に期待するところが極めて大きい。

(付表) 新型炉等の開発スケジュール

 かかる観点から、これら研究開発に対する国の財政支出の増強について特段の配慮が必要である。

 近時の厳しい経済情勢、財政事情下において、これらを達成していくことは容易ではないと思われるが、将来のエネルギーの安定供給を確保するため、政府としては、原子力開発のみならずエネルギー研究開発が、総合的に、円滑に推進し得るよう、新たな財源方策を含めて早急に検討することが必要である。


原子力委員会新型動力炉開発専門部会構成員

部 会 長稲葉秀三(財)産業研究所理事長
部会長代理田島敏弘日本興業銀行常務取締役

青木成文東京工業大学教授

安成弘東京大学教授

生田豊朗科学技術庁参与

石井恂読売新聞社論説委員

伊藤俊夫関西電力兜寰ミ長

井上力通商産業省資源エネルギー

(武田康)庁長官官房審議官

(昭和51年7月27日以降)


井上亮東京ガス兜寰ミ長

鵜木丈夫動力炉・核燃料開発事業団副理事長

大石泰彦東京大学教授

鎌田勲日本経済新聞社論説委員

熊取敏之科学技術庁放射線医学総合研究所障害臨床研究部長

酒井正利電源開発蒲搦

武井満男(財)日本エネルギー経済研究所研究理事

武田榮一東京工業大学名誉教授

田中直治郎電気事業連合会原子力開発対策会議委員長

田畑新太郎日本鉄鋼協会専務理事

田宮茂文濃縮再処理準備会顧問

船後正道前環境庁事務次官

松下幸雄東京大学教授

村田浩日本原子力研究所副理事長

森一久(社)日本原子力産業会議理事

山野正登科学技術庁原子力局長

吉岡俊男日本原子力発電兜寰ミ長

吉山博吉(社)日本電機工業会理事

若林二郎京都大学教授

新型動力炉開発専門部会開催状況

第1回(昭和50年8月14日)
 部会の今後の進め方について
 総括ワーキンググループ、高速増殖炉分科会及び高温ガス炉分科会の設置

第2回(昭和50年11月19日)
 分科会等の審議状況と今後の審議予定について

第3回(昭和51年4月1日)
 分科会等の中間報告

第4回(昭和51年4月27日)
 部会報告のとりまとめ方について
 研究開発段階から実用化への移行問題について

第5回(昭和51年5月14日)
 多目的高温ガス炉及び核融合について
 起草委員会の設置

第6回(昭和51年7月15日)
 部会報告(案)の審議

第7回(昭和51年7月26日)
 部会報告(案)の審議
 総括ワーキンググループ報告、高速増殖炉分科会報告及び高温ガス炉分科会報告について

第8回(昭和51年8月11日)
 新型動力炉開発専門部会報告書について

新型動力炉開発専門部会起草委員会構成員

委員長田島敏弘 日本興業銀行常務取締役
委 員青木成文 東京工業大学教授
生田豊朗 科学技術庁参与
武井満男 (財)日本エネルギー経済研究所研究理事
武田榮一 東京工業大学名誉教授
田中直治郎 電気事業連合会原子力開発対策会議委員長
船後正道 前環境庁事務次官
松下幸雄 東京大学教授
(順不同)

新型動力炉開発専門部会起草委員会開催状況

第1回昭和51年5月27日
第2回6月4日
第3回6月11日
第4回6月17日
第5回6月25日
第6回7月1日

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