前頁 | 目次 | 次頁

動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉の設置変更(新型転換炉原型炉施設の変更)について(答申)


51原委第551号
昭和51年7月2日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和51年2月10日付け51安第266号(昭和51年6月12日付け51安(原規)第8号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。



① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)

昭和51年6月14日
原子力委員会
   委員長 佐々木義武 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
原子炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉の設置変更(新型転換炉原型炉の原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年2月10日付け51原委第170号(昭和51年6月12日付け51原委第535号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


 Ⅰ 審査結果

 動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉の設置変更(新型転換炉原型炉の原子炉施設の変更)に関し、同事業団が提出した「新型転換炉原型炉の原子炉設置変更許可申請書」(昭和51年1月29日付け申請、昭和51年6月8日付け一部補正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


 Ⅱ 変更内容

1. 燃料集合体の変更

 燃料に従来の燃料集合体(以下標準燃料集合体という。)のほかに、圧力管の監視試験片を照射できる特殊燃料集合体を追加し、炉心構成を標準燃料集合体220体及び特殊燃料集合体4体に変更する。

(従来の炉心構成は標準燃料集合体224体)

2. 新燃料貯蔵設備の変更

 新燃料貯蔵設備の貯蔵能力を、炉心全装荷量の約20%分に変更する。

(従来は炉心全装荷量の約10%分)

3. 固体廃棄物貯蔵庫の変更

 固体廃棄物貯蔵庫を鉄筋コンクリート造に変更する。(従来は鉄骨スレート造)

 Ⅲ 審査内容

1. 燃料集合体の変更

 本変更は、圧力管の監視試験片に高速中性子照射を実施することによるものである。

1.1 特殊燃料集合体の構造

 特殊燃料集合体の燃料要素(以下燃料棒という。)は、ジルカロイ-2製被覆管に微濃縮二酸化ウラン焼結ペレットを密封したもので、外層燃料棒及び内層燃料棒の2種類からなる。

 外層燃料棒の主要な仕様(()内は内層燃料棒の仕様である。)は、濃縮度約1.5wt%(約2.5wt%)、ペレット密度約95%T.D.(約95%T.D.)、燃料棒外径約15㎜(約10㎜)、燃料棒有効長さ約3.5m(約3.5m)及び被覆管厚さ約0.8㎜(約0.6㎜)である。

 特殊燃料集合体の中心部には、外径約54㎜、肉厚約1㎜のジルカロイ-2製キャプセル案内管が設けられる。

 特殊燃料集合体は外径約11㎝、全長約4.5mで内外2層の同心円周上に内層燃料棒及び外層燃料棒が18本ずつ配置される。これらの燃料棒間隔は上・下タイプレート及びキャプセル案内管に固定した12個のインコネル製スペーサにより維持され、上・下タイプレートは6本の外層燃料棒により固定される。

 Zr-2.5wt%Nb合金製圧力管の監視試験片(引張試験片及び曲げ試験片)を組込んだキャプセルを、キャプセル案内管当り7個装荷する計画である。監視試験片は圧力管と温度履歴を等しくするため及びγ発熱を除去するために、1次冷却水で冷却するように設計される。

 特殊燃料集合体の設計は、標準燃料集合体の設計基準と同等、又はそれ以上の裕度を持たせた設計を行なうこととしている。

 以上のことから特殊燃料集合体の設計方針は妥当であると判断する。

 なお、特殊燃料集合体の設計の妥当性を裏付けるためにイギリス原子力公社のSteam-Generating Heavy Water Reactor(SGHWR)で行なった照射試験の結果を参考にした。

1.2 特殊燃料集合体装荷炉心

 本変更により炉心構成は従来の標準燃料集合体224体から標準燃料集合体220体、特殊燃料集合体4体に変更され、特殊燃料集合体は炉心中央に対して対称の位置に配置される。

 特殊燃料集合体装荷炉心においても、最大反応度価値を有する制御棒一本が、そう入不能時でも常に炉心を未臨界とし、かつその状態で反応度停止余裕を0.01Δk/k以上とすること、冷却材ボイド係数、冷却材温度係数などを運転状態で負にすることなどの核設計方針には変更はない。

 特殊燃料集合体の使用によっても、通常運転時及び過渡状態において、燃料最高温度は燃料の溶融点以下であること、最小限界熱流束比が1.5以上であることなどの熱水力設計の方針も変更はない。

 以上のことから、特殊燃料集合体装荷炉心の安全性は確保されるものと判断する。

 また、従来の事故解析に用いていた条件の変更はないので、事故解析は変更されない。

 なお、特殊燃料集合体の核設計コードの妥当性を裏付けるための、動力炉・核燃料開発事業団、大洗工学センターの重水臨界実験装置(DCA)による試験結果、特殊燃料集合体の圧力損失特性検討のための同センターの部品機器実験装置(CTL)による試験結果及び標準燃料集合体の限界熱流束計算式を特殊燃料集合体に適用することの妥当性を裏付けるための、同センターの流動伝熱実験装置(HTL)による試験結果を参考にした。


2. 新燃料貯蔵設備の変更

 本変更は新燃料貯蔵ラックと同一設計の新燃料貯蔵室に設けてある新燃料仮貯蔵ラックを、本設備として使用することに伴なうものである。

 変更後の新燃料貯蔵ラックに容量一杯の微濃縮ウラン新燃料又は天然ウラン・プルトニウム富化新燃料を貯蔵し、仮に軽水で満たされたとしても未臨界性は十分に保たれるので、本変更は問題ないと判断する。


3. 固体廃棄物貯蔵庫の変更

 本変更は固体廃棄物貯蔵庫を従来の鉄骨スレート造から鉄筋コンクリート造に改めるものである。

 固体廃棄物貯蔵庫は、耐震設計Bクラスで設計され、又、遮蔽設計は管理区域境界で0.625m rem/h以下となるように行なうこととしているので、本変更は問題ないと判断する。


 Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和51年2月16日第145回審査会において、次の委員からなる第122部会を設置した。

(審査委員)
三島 良績(部会長)東京大学
安藤 良夫東京大学
木村 啓造金属材料技術研究所

(調査委員)
宮園昭八郎日本原子力研究所
森島 淳好日本原子力研究所

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行なうこととし、昭和51年3月1日に第1回部会を開催した。

 以後、部会及び審査会において審査を行なってきたが、昭和51年5月25日の部会において、部会報告書を決定し、本審査会はこれを受け、昭和51年6月14日第149回審査会において本報告書を決定した。


前頁 | 目次 | 次頁