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関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)について(答申)


51原委第549号
昭和51年7月2日

  内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和51年5月11日付け51安第3150号(昭和51年6月11日付け51安(原規)第7号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の準備のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)
昭和51年6月14日
原子力委員会
委員長 佐々木義武 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年5月11日付け51原委第419号(昭和51年6月11日付け51原委第531号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。


 Ⅰ 審査結果

 関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「高浜発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和51年4月28日付け申請、昭和51年6月7日付け一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


 Ⅱ 変更内容

1. 敷地の変更

 2号炉の原子炉施設の中心から敷地境界までの最短直線距離を南南東方向約830mに変更する。(従来は、北北東方向約760m)

 ただし、1号炉に係る最短直線距離は変更されない。


2. 濃縮度の変更

 1号炉及び2号炉の第7領域以降の取替燃料(以下、取替燃料という。)のウラン235濃縮度(以下、濃縮度という。)を約2.8wt%に変更する。(従来は、約3.3wt%)

 ただし、第4、5、6領域取替燃料の濃縮度は、従来どおり、約3.3wt%とする。


3. 使用済燃料貯蔵設備の変更

 2号炉の使用済燃料貯蔵設備の貯蔵能力を約8/3炉心相当分に変更する。(従来は、約4/3炉心相当分以上)

4. ほう素濃度の調整

 2号炉の取替炉心初期出力運転時の1次冷却材中のほう素濃度を1,600ppm以下とする。


5. バーナブルポイズンの使用

 2号炉の取替炉心においても、バーナブルポイズンを炉心全体に分布配置して使用する。使用本数は592本以下とする。(従来は、初装荷炉心のみの使用で本数は892本)

 Ⅲ 審査内容

1. 敷地の変更

 本変更は、敷地境界に隣接する土地の一部交換を行うことにより、敷地境界が変更されることに伴うものであるが、敷地面積はほとんど変わらない。

 2号炉から敷地境界までの最短直線距離の変更は、従来のそれよりも長くなることから災害評価上問題はない。また、本変更に伴い原子炉施設から敷地境界までの距離が最短直線距離以外に従来のそれよりも短くなる方位があるが、後述の「平常運転時における原子炉施設周辺の被曝線量評価」に示すとおり、平常時被曝線量評価値は線量目標値を下まわっている。

 以上のことから、本変更は問題ないと判断する。


2. 濃縮度の変更

 1号炉及び2号炉の取替燃料の濃縮度の変更は、発電所負荷率を見直した結果によるものである。

 この取替燃料も、1号炉及び2号炉の従来の燃料設計方針に従い設計されるものであり、取替燃料の健全性に問題はないと判断する。

 1号炉及び2号炉の取替炉心においても、最大価値を有する制御棒クラスタ1体が、全引抜位置で挿入できなくても0.01Δk/k以上の反応度停止余裕を確保すること、ドプラ係数は常に負とすること、減速材温度係数は運転状態では負とすることなどの、1号炉及び2号炉の従来の核設計方針に変更はない。

 以上のことから、本変更は問題ないと判断する。


3. 使用済燃料貯蔵設備の変更

 本変更は、2号炉の使用済燃料貯蔵設備の従来の設計方針を変更しない範囲で使用済燃料貯蔵設備の貯蔵能力を増加させるために、2号炉の使用済燃料貯蔵ラックを従来より中心間隔を短くしたラックにするものである。

 この使用済燃料貯蔵ラックに、仮りに新燃料を全容量貯蔵し、使用済燃料ピット水のほう素の効果を無視しても、未臨界性は十分に保たれる。

 また、使用済燃料を全容量貯蔵しても、使用済燃料ピット水の冷却は十分に確保される。

 以上のことから、本変更は問題ないと判断する。


4. ほう素濃度の調整及びバーナブルポイズンの使用

 本変更は、今後、2号炉の取替炉心において新燃料装荷数が増大する可能性があり、そのような取替炉心の1次冷却材中のほう素濃度調整及び炉心出力分布の平担化をはかるためのものである。2号炉の取替炉心初期出力運転時の1次冷却材中のほう素濃度は、炉心寿命初期の高温状態における減速材温度係数を負に保つための上限値を定めたものであり、妥当である。

 バーナブルポイズンを使用する2号炉の取替炉心においても、2号炉の従来の核設計方針を満足するように炉心構成を行うこととしている。

 数サイクルの取替炉心について、各サイクルあたり予想される数ケースの炉心の解析を行い、各炉心の反応度停止余裕、ドプラ係数、減速材温度係数、ピーキング係数などが、いずれも従来の核設計方針を満足していることを確認した。

 このことから2号炉の取替炉心でバーナブルポイズンを使用しても、2号炉の従来の核設計方針を満足するように炉心構成が行えるものと判断する。


5. 平常運転時における原子炉施設周辺の被曝線量評価

 前述の「敷地の変更」に示したとおり原子炉施設から敷地境界(本発電所は、敷地境界をもって周辺監視区域境界としている。)までの距離が変更されることに伴い「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」への適合性を判断するため平常運転時に放出される放射性物質による本原子炉施設周辺の被曝線量評価を行った。

 その結果、周辺監視区域境界外で放射性希ガスからのγ線による全身被曝線量が最大となる地点は、1、2号炉心から南南東方向の周辺監視区域境界(1号炉心から約740m、2号炉心から約830m)であって、その被曝線量は、1、2号炉合算で年間約1.0mremである。

 周辺監視区域境界外で放射性よう素による甲状腺被曝線量が最大となる地点は、1、2号炉心から南南東方向の地点(1号炉心から約1,550m、2号炉心から約1,650m)であって、その被曝線量は、1、2号炉合算で年間約2.9mrem(幼児)である。

 また、液体廃棄物の寄与を含めても、評価結果は、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」に定める線量目標値を下まわっている。


 Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和51年5月17日第148回審査会及び、昭和51年6月14日第149回審査会において、審査を行い本報告書を決定した。


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