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放射性同位元素の盗難防止対策要綱




昭和50年3月12日
放射線障害防止関係省庁連結会議了解


放射性同位元素の盗難防止対策要綱

 この要綱は、最近における放射性同位元素の盗取事件の発生等に鑑み、放射性同位元素(放射性医薬品を含み、核燃料物質及び核原料物質を除く。以下同じ。)の盗難の防止について下記の対策を実施し、もって放射線障害の防止、公共の安全の確保を図ることを目的とする。



Ⅰ 盗難の予防措置

1. 放射性同位元素の使用者、販売業者及び廃棄業者は、放射性同位元素の取扱いについて、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(以下「障害防止法」又は「法」という。)その他の関係法令で定められている使用施設、貯蔵施設等の位置、構造及び設備の基準並びに使用、保管、運搬等に関する基準を遵守すべきことは当然であるが、特に次の諸規定の遵守の徹底に配意し、放射性同位元素の盗難の予防に関して各事業所の実情に即した実効ある措置を講ずること。

(1)貯蔵施設(又は保管廃棄設備)のとびら、ふた等外部に通ずる部分には、かぎその他の閉鎖のための設備又は器具を設けること(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令(以下「令」という。)15条5号-貯蔵施設・同16条-廃棄物貯蔵施設・同17条8号ロ-保管廃棄設備、電離放射線障害防止規則(以下「電離則」という。)33条1項-貯蔵施設・同36条1項-保管廃棄施設、人事院規則10-5(以下「人事院則」という。)5条、医療法施行規則(以下「医療則」という。)30条の9・6号-貯蔵施設・同30条の11、4号ロ-保管廃棄設備、薬局等構造設備規則(以下「薬局則」という。)1条2項5号・8条1項3号ニ・ホ-貯蔵設備・同8条1項4号チ-保管廃棄設備、放射性医薬品製造規則(以下「製造則」という。)2条4項2号-貯蔵設備)。

(2)管理区域の境界には、さくその他の人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設け、又は措置を講ずること(令12条1項8号-使用施設・同13条-詰替施設・同14条-廃棄物詰替施設・同15条6号-貯蔵施設・同16条-廃棄物貯蔵施設・同17条9号-廃棄施設、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則(以下「則」という。)15条12号・同16条2項・同17条1項9号・同19条、人事院則5条、医療則30条の16・2項、薬局則8条1項5号、製造則2条1項4号)。

(3)作業室から退出するときは、人体及び人体に着用している物の表面の放射性同位元素による汚染を検査すること(則15条8号、電離則31条1項、船員電離放射線障害防止規則(以下「船員電離則」という。)30条1項、人事院則14条、製造則2条1項10号)。

(4)密封された放射性同位元素を移動させて使用する場合には、使用後の点検等を行うこと(則15条14号、電離則19条、人事院則12条)。

(5)放射性同位元素の保管は、容器に入れ、かつ、貯蔵施設内の貯蔵室又は貯蔵箱(密封された放射性同位元素を耐火性の構造の容器に入れて保管する場合にあっては、貯蔵施設)において行うこと(則17条1項1号、人事院則14条)。

(6)貯蔵箱(密封された放射性同位元素を耐火性の構造の容器に入れて保管する場合には、その容器)について、放射性同位元素の保管中これをみだりに持ち運ぶことができないようにするための措置を講ずること(則17条1項3号の2、人事院則14条)。

(7)放射性同位元素の使用、保管又は廃棄に関する事項等の記帳をすること(則24条、医療則30条の23、製造則11条)。
 また、放射性同位元素の保管等に係るこれらの法令の規定の実施にとどまらず、更に、当該事業所の施設、物品の管理体制等との関係を含め、①出入門の管理 ②かぎの保管責任者の配置 ③照明又は警報装置の活用 ④必要に応じ宿日直又はパトロール制の実施等できる限り実効を確保し得る措置の確立、実施に努めるものとする。
 なお、特に密封小線源又はAu(トレーサー用)等の非密封線源の比較的盗難にかかり易いものについては、その盗難予防措置について十分配慮するものとする。

2. 障害防止法第10条第5項の規定による使用の場所の一時的変更届によって放射性同位元素を当該使用者の許可使用施設以外の場所で使用する場合については、特に、非破壊検査を専業として実施する許可使用者(非破壊検査専業業者)にあっては、上記1のほか更に次の諸点に留意し、当該検査を実施する場所等において一時保管する場合の放射性同位元素の盗難の予防について実効ある措置を講ずること。
 この場合、これらの非破壊検査の業務は、通常請負形式により他の事業所の構内等で行われる実態に鑑み、非破壊検査専業業者と当該土地・施設の所有者、非破壊検査の業務の発注者等との安全管理に関する協力体制が極めて重要であるので、盗難予防の措置についても、これらの関係者が密接に協力して行うものとする(参考 労働安全衛生法29条1項・2項、30条1項)。

(1)届け出た使用期間中であっても、放射性同位元素はできる限り許可を受けた貯蔵施設において保管するように努めること。また、非破壊検査を実施する場所等において一時保管する場合には、放射性同位元素を入れた容器をみだりに持ち運ぶことができないようにすること、管理区域には人がみだりに立ち入らないような措置を講じ、放射線作業従事者以外の者が立ち入るときは、放射線作業従事者の指示に従わせること等放射性同位元素の管理に十分留意すること(則17条1項3号の2、9号)。

(2)非破壊検査を実施する場所等における放射性同位元素の一時保管場所については、当該検査を実施する場所等の実情に即し、例えば守衛所の附近で常時監視の視野に入る場所、倉庫等人の立入りの規制の厳しい場所等最も安全と思われる場所を選定すること。

(3)放射性同位元素の一時保管のための設備には、できる限り堅固なかぎを使用すること。かぎの保管者、保管方法については、関係者が協議して、例えば非破壊検査業務実施の責任者と当該検査を実施する場所等の守衛の双方がかぎを保管すること等実情に即して最善のものを定めること。

(4)その他、実情に応じ、放射性同位元素の一時保管のための設備に照明、守衛所にまで繋れた警報装置又は有刺鉄線を設置する等施設面についても極力配意すること。

(5)放射性同位元素の一時保管中は、毎日、目視及び測定器を用いての点検を行い、記帳すること。

3 使用者及び販売業者並びにこれらの者から運搬を委託された者は、放射性同位元素の運搬(陸上のものに限る。)については、特に次の諸点に留意し、放射性同位元素の盗難予防の徹底を期すること。

(1)放射性同位元素を運搬する容器には、放射性同位元素をみだりに持ち出すことができないようにするための措置を講ずること。

(2)放射性同位元素を運搬する容器には、これをみだりに持ち運ぶことができないようにするための措置を講ずること。

(3)運搬中の自動車等が駐車する場合には、見張人を配置すること(放射性物質車輌運搬規則12条1号)。

(4)運搬中の自動車等をやむを得ず離れる場合には、放射性同位元素又はその運搬容器をみだりに持ち出すことができないようにするため、及び当該自動車を盗取されないようにするため、そのドア等には必ずかぎをかける等の措置を講ずること。


Ⅱ 盗難発生の場合の緊急措置

1. 放射性同位元素の使用者、販売業者及び廃棄業者並びにこれらの者から運搬を委託された者は、その所持する放射性同位元素について盗取、所在不明に気付いたときは、関係法令の定めるところにより、直ちにその旨を次の関係行政機関に届出、報告又は通報すること。

(1)全事業所-警察官又は海上保安官(法32条、医療則30条の25)

(2)全事業所-科学技術庁(茨城県所在の事業所にあっては同庁水戸原子力事務
                    所)(法42条、医療則30条の25)、なお福井県又は福島県所在の事業所
                    にあっては科学技術庁に報告するほか同庁福井原子力連絡調整官
                    事務所又は同庁福島原子力連絡調整官事務所に連絡すること。

(3)安衛法適用事業所-労働基準監督署又は公立の教育・研究・調査及び非現業の
                                事業所にあっては人事委員会若しくはその委任を受けた人事
                                委員会の委員(電離則43条)

(4)船員法適用事業所-海運局長(船員電離則37条)

(5)国家公務員法適用事業所(非現業の一般職の国家公務員)人事院(人事院則17条)

(6)病院・診療所-保健所、消防署(医療則30条の25)

2. 関係事業所においては、上記関係行政機関、関係者等と連絡をとりつつ、極力探査に努めるとともに、必要に応じ事業所関係者や公衆へ周知し、発見者の届出要請を広報する等の措置を講ずること。

3. 関係行政機関においては、所轄警察署を中心として、必要に応じ打合せを行う等連絡しつつ、関係事業所の探査の指導、発見者の届出要請の広報等当該事案に即応した適切な措置を迅速に講ずること。


Ⅲ 本対策の実施権保措置

1. 関係事業所においては、上記Ⅰ及びⅡの趣旨に沿って、当該事業所の実情に即して適切な盗難防止に関する規定を定めること。
 なお、放射線障害予防規定等を新たに作成し、又は改正する際には、それにこの盗難防止に関する規定をもり込むようにすること。

2. 「放射線障害防止関係省庁連絡会議」の構成省庁においては、上記Ⅰ及びⅡの趣旨をそれぞれ所轄機関・事業所に対し周知、指導することに努めるものとする。

3. 科学技術庁、厚生省、運輸省、労働省及び人事院においては、それぞれの所管法令に基づく手続(放射性同位元素の使用等に係る許可・承認、届出受理又は放射線障害予防規定等の届出受理等)の際に、特に盗難防止体制についてもチェック又は指導を行うとともに、立入検査又は臨検の際にも同様のチェック又は指導を行うものとすること。
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