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再処理施設周辺の環境放射線モニタリング計画について




昭和50年5月22日
環境放射線モニタリング中央評価専門部会

原子力委員会環境放射線モニタリング中央評価専門部会構成員

部会長 山崎 文男    前日本原子力研究所理事
           市川 龍資    科学技術庁放射線医学総合
                              研究所環境衛生研究部環境
                              衛生第2研究室長
           大田 正次     (財)日本気象協会研究所長
           桂山 幸典    京都大学教授
           北畠 隆      新潟大学教授
           斎藤 信房    東京大学教授
           粟冠 正利    東北大学教授
           高島 洋一    東京工業大学教授

部会長代理 
           田島 弥太郎 文部省国立遺伝学研究所長
           敦賀 花人    水産庁東海区水産研究所放射能部長
           町田 貞      東京教育大学理学部長
           宮永 一郎    日本原子力研究所東海研究所保健物理安全管理部長
           山県 登      厚生省国立公衆衛生院放射線衛生学部長

特別に審議に参加する者
           岩上 二郎    前茨城県知事 (原子力発電関係団体協議会)4月22日まで
           竹内 藤男    茨城県知事 (原子力発電関係団体協議会)4月23日から
           中川 平太夫 福井県知事 (原子力発電関係団体協議会)
           矢部 知恵夫 敦賀市長(全国原子力発電所所在市町村協議会会長)


Ⅰ 前文

 本専門部会は、動力炉・核燃料開発事業団(以下「事業団」という。)が、茨城県東海村に設置している使用済燃料再処理施設(以下「再処理施設」という。)の操業に伴い、当該施設周辺地域において事業団が実施しようとする環境放射線モニタリング計画(以下「モニタリング計画」という。)の妥当性について、「動力炉・核燃料開発事業団東海事業所、再処理工場保安規定(注1)、第3編環境監視」を対象に審議を行った。
 このたび結論を得たので、審議の結果をとりまとめ、次のとおり報告する。
 なお、審議にあたっては、本専門部会のなかに、再処理施設モニタリング計画ワーキンググループを設置し、モニタリング計画の具体的内容について検討を行った。


Ⅱ モニタリング計画審議にあたっての基本的考え方

 モニタリング計画の審議にあたっては、放射線審議会の答申(昭和44年2月)(注2)並びに原子力委員会の再処理施設安全審査(昭和44年11月以下「安全審査」という。)(注3)及び環境・安全専門部会の報告(昭和49年10月)(注4)における周辺住民の健康と安全の確保に関する考え方に基づくものとし、今後必要に応じて計画の内容の見直しを行うことを前提として、次の基本的考え方のもとに審議を行った。

(1)モニタリング計画は、周辺住民の受ける被ばく線量が、我が国の法令及び国際放射線防護委員会の定める公衆の構成員に対する線量限度(以下「線量限度」という)を下まわっていることを確認しうるのみならず、昭和44年の再処理施設の安全審査において評価された被ばく線量程度の線量が把握しうるものであること。

(2)被ばく線量は、安全審査の際の被ばく評価における重要な被ばく経路について、それぞれのクリテカルグループの代表的個人について、モニタリングの実測値をもとに算定することを原則とし、実測が困難な場合においては、放出記録をもとに算定すること。

(3)その他いくつか主要な被ばく経路からの被ばくをも監視しうるものであること。

(4)再処理施設周辺環境における放射能水準の長期的変動を把握しうるものであること。


Ⅲ 審議結果

 本専門部会は、審議にあたり、再処理施設から環境に放出される放射性物質の種類、量、放出率及び放出源における監視の方法については、再処理工場保安規定第2編、第Ⅱ-12表、第Ⅱ-13表、第Ⅱ-14表、第Ⅱ-15表及び第Ⅱ-16表(注5)を前提とし、また放出に起因する環境の放射能水準の変動の程度及び周辺住民に対する重要な被ばく経路については、安全審査における被ばく評価(注6、7)を参考とした。

1 モニタリング計画の基本的方針

1-1 周辺住民の被ばくの監視

1-1-1 大気放出に係る被ばくの監視
 事業団の計画によれば、大気放出に係る被ばくの監視の方針は次のとおりである。

(1)大気放出に起因する重要な被ばくは、Kr-85による外部被ばく並びにⅠ-129及びⅠ-131の経口及び吸入による甲状腺被ばくであるので、これらについて、クリティカルグループの代表的個人の被ばく線量を算定する。

(2)Kr-85による外部被ばく及びⅠ-129による甲状腺被ばくについては、放出記録及び気象観測結果に基づく計算によって線量を算定し、他方、Ⅰ-131による甲状腺被ばくについては、モニタリングの実測値をもとにこれを算定する。

(3)陸上における、いくつか代表的な被ばく経路において環境放射能の実測を行い、放射能水準の動向を監視する。
 以上の内容に関して、本専門部会の審議結果は、次のとおりである。

(1)安全審査における被ばく評価の結果から見て、大気放出に起因する重要な被ばくとしては、Kr-85による外部被ばく並びにⅠ-131の経口及び吸入による甲状腺被ばくを考えれば十分であり、Ⅰ-129については、放出量が極めて微量であるので、常時、被ばく評価を行う必要はないと考えられる。しかし、Ⅰ-129は、半減期が極めて長い核種であるので、長期的観点に立って環境における蓄積傾向を監視することが将来必要になるであろう。

(2)Kr-85のみならず、Ⅰ-131についても、放出に起因する陸上環境中の放射能水準の変動の程度及び現在の実用的な分析技術の精度に照らし、モニタリングの実測値から放出に起因する部分を弁別して、被ばく線量を算定することは困難であると考えられる。
 従って、これらによる被ばく線量は、いずれも放出記録及び気象観測結果に基づく計算によって求めることが妥当であり、補足的に周辺環境において空間線量の実測及び環境試料の採取測定を行い、総合的に周辺住民の安全を確認することが適当である。
 なお、陸上におけるモニタリング計画の具体的内容に関する審議結果は、2-1で述べる。

1-1-2 海洋放出に係る被ばくの監視
 事業団の計画によれば、海洋放出に係る被ばくの監視の方針は、次のとおりである。

(1)海洋放出に起因する重要な被ばくは、海岸砂、漁網及び船体の汚染による外部被ばく並びに海産生物の採取による内部被ばくであるので、これらについてクリティカルグループの代表的個人の被ぼく線量を算定する。

(2)被ばく線量は、モニタリングの実測値をもとに算定する。このため、モニタリングにおいては、上記の被ばく経路において、なるべく直接人の被ばくに係る環境試料を採取し、核種分析を実施する。
 以上の内容に関して、本専門部会の審議結果は、次のとおりである。

(1)安全審査における被ばく評価の結果から見て、被ばく線量を定期的に算定すべき経路の選定は妥当である。

(2)安全審査における被ばく評価を前提として、海洋放出に起因する環境の放射能水準の変動を考えれば、現在の実用的な分析測定技術の精度に照らし、モニタリングの実測値からの放出に起因する部分を弁別して被ばく線量を算定するという事業団の方針は妥当なものと考えられる。しかし、実測値により被ばく線量を評価できないこともありうるので、補足的に、海洋放出記録、廃液拡散に関する海洋調査結果等に基づく計算によってこれを求め、総合的に周辺住民の安全を確認することが適当である。
 なお、海洋におけるモニタリング計画の具体的内容に関する審議結果は、2-2で述べる。

1-2 周辺環境の放射能水準の長期的変動の把握事業団の計画によれば、周辺環境における放射能水準の長期的変動の把握に関する方針は、次のとおりである。
(1)陸上については、浮遊塵、表上等について、Sr-90、Cs-137及びPu-239を対象核種として核種分析を行うとともに、雨水、原水等についてH-3の核種分析を行う。

(2)海洋については、海底土及び海岸砂についてRu-106/Rh106、Cs-137、Sr-90、Ce-144/Pr-144、Zr-95/Nb-95及びPu-239を対象核種として核種分析を行うとともに、海水については、これらの核種のほかH-3の核種分析を行う。
 以上の内容に関して、本専門部会の審議結果は、次のとおりである。

(1)陸上については、Kr-85、H-3、I-129及びI-131以外の核種は、ほとんど大気中に放出されないのでモニタリングによって検出されるSr-90、Cs-137及びPu-239は、専らフォールアウトに起因するものであるが、フォールアウトによる放射能水準の変動をも把握しておくことが望ましいことに鑑み、これらの核種の選定は適切である。また、採取試料の選定にも配慮が払われており、全体として事業団の方針は妥当である。なお、1-1-1で述べたとおり、I-129については、環境での蓄積傾向を監視することが将来必要になると思われるが、当面は、これを定常的なモニタリング計画のなかに含める必要はない。しかし、環境におけるI-129の分析測定方法等について、調査研究をすすめておくことが望ましい。(注8)

(2)海洋については、核種及び放出量、蓄積しやすい環境試料の選定等に配慮が払われており、全体として事業団の方針は妥当である。

1-3 定常的なモニタリングを補足する調査
 再処理施設の操業に伴うモニタリングについては、定常的に実施するほか、これを補足する環境調査が適宜実施されるべきものと考える。
 本専門部会は、この観点から、当面実施することが望まれる補足的な調査について検討を行い、その結果を4にとりまとめた。モニタリング計画の具体的内容についての審議結果は2に述べるとおりであるが、その結論は、それを補足する調査の実施を前提としたものである。

2. モニタリング計画の具休的内容

2-1 陸上におけるモニタリング計画

2-1-1 気象観測
 事業団の計画によれば、主排気筒から放出される放射性物質の大気拡散状況の把握に資するため、東海事業所内の気象観測塔、安全管理棟屋上等において、風向、風速、大気温度差、日射量等が観測されることとなっている。
 この気象観測の内容について審議した結果、本専門部会としての指摘事項は、次のとおりである。

(1)将来、観測項目のなかに、風向変動幅を追加するよう検討を行うことが望まれる。

(2)日射量の観測のほかに、夜間の熱の放射収支量の観測が必要である。

(3)地上高約10mの風速を観測する必要がある。

(4)気象観測は、「地上気象観測法」(日本気象協会1971年)等に準拠して実施する必要がある。

 なお、東海村及びその周辺において、他の機関(日本原子力研究所、気象庁等)が行っている気象観測結果についても注意を払い、周辺環境の気象について総合的に把握するよう努めることが望まれる。

2-1-2 空間線量等の連続測定
 空間線量等の連続測定に関する事業団の計画の概要は、次のとおりである。

(1)周辺環境における空間γ線の変動傾向を監視するため、モニタリングステーション(注9)(敷地内1点、敷地外3点)及びモニタリングポスト(注10)(敷地内6点)において空間線量率の連続測定を行い、またモニタリングポイント(注11)(敷地内15点、敷地外25点)において積算線量の測定を行う。

(2)Kr-85に着目し、モニタリングステーションにおいて空気中のガス状β放射能濃度の連続測定を行う。

(3)これらの測定の結果が、あらかじめ定める目安レベル(注12)を越えた場合には原因調査を行う。
 本専門部会は、以上の内容に関して審議した結果、これらの計画は、大気中に放出される放射性物質に起因する周辺住民の被ばく線量が、線量限度を十分下まわることを確認する観点から妥当なものと考えられる。

2-1-3、陸上環境試料の採取及び測定
 陸上環境試料の採取及び測定に関する事業団の計画の概要は、次のとおりである。

(1)浮遊塵、牛乳、葉菜等を採取し、被ばくの監視上重要なI-131の核種分析を行う。

(2)雨水、原水、飲料水等を採取し、H-3の核種分析を行う。

(3)陸上環境の放射能水準を簡易迅速に把握するため、採取試料について全β放射能の測定を行うほか、浮遊塵については全αの放射能をも測定する。これらの測定の結果が、あらかじめ定める目安レベル(注12)を越えた場合には、核種分析を実施する等により原因調査を行う。

(4)放射能水準の長期的な変動を把握する観点から牛乳、表土等について長半減期核種である。Sr-90、Cs-137及びPu-239の核種分析を行う。

(5)再処理施設からの放射性物質の放出の影響の判断に資するため、その影響がないと考えられる地点においては比較対照試料を採取測定する。
 本専門部会は、以上の計画に関して審議した結果、概ねその内容は妥当なものと認められるが、より合理的な計画を策定するという観点からの指摘事項は、次のとおりである。

(1)比較対照試料の採取測定頻度は、原則として監視対象試料のそれに合致させることが望ましい。

(2)雨水中の放射能は、地域的に大きく変動するものではなく、また、他の事業所においてもモニタリングされているので、その採取地点は、降下塵と同じく1カ所で十分である。

(3)牛乳についての長半減期核種の分析は、表土及び野菜と同様に年1回実施すれば、長期的変動傾向を把握することができる。

2-2. 海洋におけるモニタリング計画
 事業団の海洋におけるモニタリング計画の概要は、次のとおりである。

(1)内部被ばく線量を算定する実測データを得るため、海産生物を採取し、Ru-106/Rh-106、Cs-137、Sr-90、Ce-144/Pr-144、及びZr-95/Nb-95の核種分析を行う。

(2)外部被ばく線量を算定する実測データを得るため、海岸砂、漁網等の試料を採取し、(1)と同じ核種を対象として、核種分析を行う。

(3)海水中のH-3を核種分析し、その水準を把握する。

(4)海水、海底土等の全β放射能を測定し、海洋環境の放射能水準を簡易迅速に把握する。これらの測定の結果が、あらかじめ定める目安レベル(注12)を越えた場合には,核種分析を実施する等により、原因調査を行う。

(5)放射能水準の長期的な変動を把握する観点から、海水、海底土等について、Ru-106/Rh-106、Cs-137、Sr-90、Ce-144/Pr-144、Zr-95/Nb-95、及びPu-239の核種分析を行う。

(6)再処理施設からの放射性物質の放出の影響の判断に資するため、その影響がないと考えられる地点において、比較対照試料を採取測定する。
 本専門部会は、以上の計画に関して審議した結果、概ねその内容は妥当なものと認められるが、より合理的な計画を策定するという観点からの指摘事項は、次のとおりである。

(1)内部被ばくの線量評価を行うため、海産生物の核種分析を実施する計画は妥当である。他方、外部被ばくの線量評価に関しては、海岸砂、漁網等の核種分析を定常的なモニタリング計画として行うよりは、サーベイメータによる現場測定、又は採取試料の全β放射能測定等を実施する方が合理的である。これらの核種分析は、補足的な調査として実施し、上記の測定値との関連について、早期に検討しておくことが望ましい。(注13)

(2)海底土については、定常的なモニタリング計画としては概ね妥当であるが、これ以外に周辺海域における詳細な調査を行う必要がある。(注14)

(3)比較対照試料の採取測定頻度は、原則として比較される監視対象試料のそれに合致させることが望ましい。
 2-1及び2-2で述べた審議結果をもとに陸上及び海洋のモニタリング計画を、その目的によって、より合理的に整理した結果を付録1としてとりまとめた。
 なお、事業団の計画においては、陸上及び海洋のモニタリングに共通して、モニタリングを実施する範囲を一律に、監視区域及び比較対照区域として区分しているが、むしろ個々の測定試料について、両者の区別を明らかにしておくことが望ましい。

2-3 その他の指摘事項
 再処理施設から環境に予期しない放射性物質の放出があった場合においては、定常的なモニタリングにおける空間線量等の連続測定によって、環境への影響について、ある程度の判断は下しうるものと考えられるが、国際放射線防護委員会の報告(注15)にも述べられているとおり、予期しない放出の程度に応じて迅速に対策をとり得るように、あらかじめ、その態勢について配慮しておくことが必要である。

3. 被ばく線量の算定

 本専門部会は、放出記録又はモニタリングの実測値から,クリティカルグループの代表的個人の被ばく線量を算定する場合の考え方について検討した。
検討結果は,以下のとおりであるので保安規定に基づいて、被ばく線量算定要領を定める際に、(注16)これらが考慮されるよう要望する。

3-1 大気放出に係る被ばく線量の算定

3-1-1 大気中放射能濃度の計算
 Kr一85の1時間毎の放出記録及びI-131の1週間毎の放出記録、並びに気象観測結果に基づき、正規型の大気拡散式を用いて、主排気筒を中心として、陸上の半経10km以内の範囲を距離別及び方位別に区切り、それぞれの濃度分布を計算し、各区画における時間的平均濃度を被ばく計算に用いる。

3-1-2 被ばく線量の算定
 Kr-85については、前記の計算によって得た地表濃度から被ばく線量を算定するとともに放射性雲からのγ線による被ばく線量の算定を行う。
 また、I-131については、計算によって得た地表濃度を用い、環境・安全専門部会(注17)の評価モデルにより、成人、幼児及び乳児の甲状腺被ばく線量をそれぞれ算定するものとするが、評価に使用するパラメータについて、新しいデータが得られた場合にはそれを用いることが適当である。

3-2 海洋放出に係る被ばく線量の算定

3-2-1 施設寄与分の弁別
 核種分析の実測値をもとに、被ばく線量を算定する際には、過去のバックグラウンドの放射能水準及び比較対照試料の測定結果等をもとに、施設寄与分を弁別評価することを原測とする。このため評価を行う時点までにバックグラウンド調査をさらに追加しておく必要がある。(注18)

3-2-2 評価に使用するパラメータ
 外部被ばくにおける漁網取扱時間、海浜利用時間、内部被ばくにおける海産生物摂取量等のパラメータについては安全審査において使用された数値を用いるものとするが、被ばく線量算定の時点までに新しいデータが得られた場合にはそれを用いることが適当である。

4. 補足的な調査の実施

 再処理施設の操業に伴う周辺環境の監視においては定常的なモニタリングに加えて、これを補足する環境調査を適切な時期に必要に応じて実施し、被ばく線量の算定に用いられる環境パラメータの信頼性を確認し、また環境中での放射性物質の移行蓄積に関する詳細な情報を得ることが望まれる。これらの成果は、定常的なモニタリング結果と合わせて、再処理施設の操業が、周辺環境に与える影響を総合的に評価することに役立ち、また将来における定常的なモニタリング計画の見直しに生かされることが期待される。特に少量の放射能が環境に放出される再処理施設の試運転時及び操業当初に、環境の放射能調査をすすめ、本格操業時のモニタリングに備えることが望ましい。本専門部会は、以上の考え方に立って、当面、施設の試運転及び操業当初の時期に、事業団が自ら又は他の機関と協力して実施することが望まれる補足的な調査について検討した。その結果を1-2、2-2及び3-2でそれぞれ述べた調査事項も含め、付録2としてとりまとめた。なお、現在、同施設周辺において、消費流通実態調査、海洋環境調査等が行われているが、これらについても必要に応じて継続実施することが望まれる。

5 モニタリング計画の見通し

 定常的なモニタリングは、長期的観点に立って継続的に実施すべきものであるが、他方放出放射能の環境における移行蓄積状況、環境の諸条件の変化等に柔軟に対処することも重要である。このため定常的なモニタリングの結果及び環域調査の結果をもとにして、必要に応じモニタリング計画の内容を見直す必要がある。モニタリング計画の最初の見直しの時期は、操業開始1年後を1つの目途とすることが妥当である。


Ⅳ 審議経過

 本専門部会は、昭和50年2月20日第一回会合において、審議方針の検討を行うとともに、再処理施設モニタリング計画ワーキンググループを設置し、モニタリング計画の具体的事項の検討を依頼した。
 以後、部会及びワーキンググループは、別表のとおり審議を重ねてきたが、昭和50年5月22日第4回会合において、ワーキンググループの審議結果を聴取し、部会報告書を取りまとめた。
 なお、再処理施設モニタリング計画ワーキンググループの構成員は次のとおりである。
  (主査) 山 県  登
       市 川 竜 資
       大 田 正 次
       敦 賀 花 人
       宮 永 一 郎
 また、ワーキンググループの審議においては、随時ワーキンググループ以外の部会構成員の参加を得るとともに、関係学識経験者の協力を得た。


(注1)保安規定は、昭和50年3月11日付で事業団から科学技術庁長官あて、認可申請中のものである。

(注2)放射線審議会「再処理施設等から生ずる放射性廃液の海域放出に係る障害防止に関する考え方について」(昭和44年2月内閣総理大臣への答申)
(注3)原子力委員会「再処理施設の設置に係る安全性について」(昭和44年11月27日、内閣総理大臣への答申)

(注4)原子力委員会環境・安全専門部会報告(昭和49年10月)

(注5)「参考」参照

(注6)再処理施設安全審査専門部会「再処理の設置に係る安全性について」(原子力委員会への報告、昭和44年3月25日)

(注7)再処理施設の安全性に関する書類「10.3放射性廃棄物の廃棄及び被ばく評価」(動力炉、核燃料開発事業団、昭和44年3月20日)

(注8)4.「補足的な調査の実施」及び付録2参照。

(注9)モニタリングステーションとは、γ線線量率計、空気中βガス濃度計、ダストサンプラー及びよう素サンプリング装置を具備した野外固定施設をいう。

(注10)モニタリングポストとは、γ線線量率計を具備した野外固定施設をいう。

(注11)モニタリングポイントとは、積算線量計を具備した野外固定施設をいう。

(注12)目安レベルは、モニタリングの実測値のうち調査検討を要するものを見出すための目安を得るためのものであり、主として、茨城県環境放射線監視委員会が、過去に行われた放射能調査結果に基いて、バックグラウンド放射能をもとに、その変動を勘案して定めたものを準用している。

(注13,14) 4.「補足的な調査の実施」及び付録2参照
(注15)ICRP専門委員会4の報告
 「放射性物質の取り扱いに関する環境モニタリングの諸原則」(ICRP Pablication 7)

(注16)被ばく線量の算定方法は、再処理工場保安規定に基づき「被ばく線量算出要領」として定められる。

(注17)環境・安全専門部会第3部環境放射能分科会第1章付録1「被ばく評価モデル」(昭和49年10月)参照

(注18) 4.「補足的な調査の実施」及び付録2参照


(付録1)環境監視計画


 A 被ばく線量の評価


B 環境水準の監視


(付録2)補足的な調査項目


(参考)再処理工場保安規定第2編Ⅱ-12~16表


第Ⅱ-12表 放射性気体廃棄物中の主要核種の放出の基準


第Ⅱ-13表 放射性気体廃棄物中の主要核種を除く放射性物質の放出の基準


第Ⅱ-14表 主廃棄筒排気中放射性物質の監視測定


第Ⅱ-15表 処理済廃液の廃棄基準


第Ⅱ-16表 海洋放出廃液の核種分析
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