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原子力開発利用長期計画の実施施策について



 昨年末の石油危機に象徴されるエネルギー問題の新局面に対応し、現行の原子力開発利用長期計画の見直しとその具体的施策について、原子力委員会は、現在緊急に検討をすすめているが、その際諸問題につき原子力関係各界各氏の意見を広く聴取し、政策決定に資することとしたいとしている。
 このため、関係各界に下記質問項目により、回答を求めているので、参考資料として収録する。

1.原子力利用に対する基本的考え方

1−1 太陽熱利用、地熱発電等新エキルギーに関する研究開発が進められているが、短期、長期にわたるエネルギー供給に関する見とおしの中で、原子力発電、原子力の多目的熱利用などの原子力開発利用をどう位置づければよいか。

1−2 エネルギーに関する自立性がナショナルセキュリティーの観点から重要であると考えられており、原子力は「準国産エネルギー」であると言われているが、そのように考えてよいか。

1−3 昭和60年度末の原子力発電の開発規模を6000万KWと設定することの必要性と妥当性をどのように考えたらよいか。
 またそのための所要資金の確保の見通しはどうか。

1−4 昭和60年度6000万KWの原子力発電規模が実現すれば巨額の市場となることが予想されるが、これを実現する核燃料加工を含む機器製造、ウラン濃縮、再処理、廃棄物処理などの事業の確立、海外ウラン資源の確保などに対する所要資金の確保と官民の分担はどうあるべきか。

1−5 昭和60年度原子力発電規模6000万KWの開発目標を支える産業体制の整備をどのように進めたらよいか。

(1)機器、核燃料の供給体制についてはどうか。

(2)メーカー間の協力体制についてはどうか。

2 軽水炉

2−1 原子力分野に関する現在の品質保証(Quali−ty Assurerauce)の体制で十分か。改善すべき点はないか。

2−2 軽水炉の稼動率向上のための技術開発をどう進めるべきか。

(1)稼動率は計画に比較し、どの程度低いか。

(2)低い理由は何か。

(3)稼動率の向上のため、運転管理技術の向上と、プラント、機器の改良とどちらに重点をおくべきか。

(4)技術開発要素としてどのような項目が挙げられるか。

(5)項目のうちメーカーで分担すべきもの、ユーザーで分担すべきものはどれか。またその分担区分の考え方は何か。

(6)メーカー、ユーザーの共同研究はどのような体制で進めるべきか。

(7)稼動率向上のため国の関与すべき役割はどこまでか。

(8)稼動率向上のためどのような信頼性データを蓄積する必要があるか。

2−3 軽水炉の標準化をどのような体制、スケジュールで行えばよいか。

(1)軽水炉の標準化はパブリック・アクセプタンスを得てゆく上で、どのような意味があるか。

(2)米国原子力委員会は審査期間の短縮のためシステム全体のみならず個々の機器についても厳密な標準化を提唱しているがわが国でも同様の措置が必要か。

(3)出力の標準化はどう進めるべきか、その利害得失は何か。

(4)わが国で短期的、長期的に必要な標準化とはどんな事項か。

(5)メーカー、ユーザーの共同研究はどのような体制で進めるべきか。

(6)標準化を推進する場合、国が検討すべき事項は何か。

2−4 現在の日本の発電炉の主流は軽水炉であるが、長期計画では、軽水炉以外の炉型についても、今後十分な実証が得られしだいそれぞれの特色に応じわが国においても実用化されることが期待されるとしている。

(1)FBRの実用化のまえに、数種の新型炉の導入の必要性をどう考えるか。

(2)核燃料サイクルの観点から、多様化をどう考えるか。

(3)多目的利用の観点、経済性の観点、安全性の観点から、多様化をどう考えるか。

(4)多様化にすすむ場合、実証をいかにしてえるか。

3.動力炉開発

3−1 原子力発電規模を60年6000万KW、65年1億KWと想定した場合、新型動力炉(ATR、FBR、HTGR、CANDU等)の寄与をどの程度に考えたらよいか。

3−2 原型炉、実証炉、といった開発段階における国と民間の役割、特に費用の負担はどうあるべきか。
(研究開発および建設について)

3−3 ATR、FBRの開発はメーカー共同開発体制をとっているが、今後の体制はいかにあるべきか。その利害得失は何か。

3−4 動燃事業団は実証炉の開発に関してどのような寄与をすべきと考えるか。

4.多目的高温ガス炉

4−1 多目的高温ガス炉による直接製鉄の工業化の見通し(技術的、経済的)をどう考えたらよいか。さらに、製鉄以外の多目的利用をどう考えるか。

4−2 多目的高温ガス実験炉の建設問題について、その実施時期、実施機関、又、もし高温ガス炉を導入するとすれば、それとの関連をどの様に考えればよいか。

5.核融合

5−1 原子力委員会の核融合研究懇談会は今後の核融合研究開発の進め方について、7月26日報告をとりまとめ原子力委員会に提出した。
 今後、この核融合研究開発の実施にあたり,どのように具体化を図っていくべきであると考えるか。

5−2 この報告では、研究開発の効果的な推進を図り、核融合動力炉実現のための中心的総括的役割を果たす新研究所を設立すべきであるとしており、この研究所としては次の条件を整備する必要があることを指摘している。すなわち、研究開発の遂行に際してより弾力的な運営が行なえること、既存関係研究機関、大学、民間企業等との活発な交流、緊密な協力関係を確保しうること、望ましい研究環境が得られること等であるが、これらを達成するため具体化にあたって、留意すべき点は何か。

5−3 また、この報告では、上記の新研究所等で行なわれるプロジェクト的な研究開発と大学等で行なわれる基礎的先駆的な研究開発との緊密な連けいを保ち実質上一元的に推進する必要があることから研究開発を推進、評価し、内外の動向把握等を行なうとともに関係機関の連絡を促進するための組織を原子力委員会に設置する必要があるとしているがその具体化にあたって留意すべき点は何か。

6.原子力船の開発

6−1 原子力開発利用長期計画では、原子力船の実用化については舶用炉の技術開発をすすめることを中心に技術的経済的見通しをえることとしているが、石油を中心として情勢が大きく変化していると思われる。そこで

(1)原子力船に関する各国の動向をどう考えるか。

(2)原子力船実用化の見通しをどう考えたらよいか。

(3)原子力船実用化のための国のとる施策はいかにあるべきか。

(4)原子力船第1船「むつ」の実験航海終了以降の同船の保有形態、運航方針等についてどう考えたらよいか。

7.核燃料
(天然ウラン)

7−1 天然ウランの確保施策は現在、自主開発の確保1/3を目標としているが現状のままでよいか。

(1)動燃の役割は基礎調査だけに限定すべきか、相手国によっては動燃が企業探鉱の段階まで実施すべきではないか。

(2)民間の探鉱開発を活発化させるため、国として買上げ保証制度の導入を考える必要があるのか。

(3)我が国がウラン資源開発に投ずべき国の資金は海外諸国との対比においていかにあるべきか。

(4)動燃、金属事業団を含め、我国のウラン資源開発の実施体制についてどう考えるか。

(5)再処理後の減損ウランの活用策として自ら再使用することを考えるべきではないか。

(6)核燃料確保の観点から天然ウランの備蓄を行うべきか、また行うとすればどのようにすすめるのか。

(7)海水からの天然ウランの採取技術の実用可能性はどうか。

(8)最近のウラン産出国の資源ナショナリズムの動きに対する(例えば外交的手段、技術援助、その他)具体的な対応策として何が考えられるか。
(濃縮ウラン)

7−2 濃縮ウランの確保施策は現状のままでよいか。

(1)長期安定確保の観点から濃縮ウランの米国からの供給は、どの程度期待すべきか。

(2)国際共同濃縮事業への参加を検討する際の留意点は何か。また、ウラン資源国との共同濃縮事業の可能性についてどう考えるか。

(3)濃縮ウラン備蓄は必要か。また、備蓄を行う場合の備蓄量、体制等についてどう考えるか。

(4)動燃遠心分離法プロジェクトのパイロットプラント、実用濃縮工場の計画をどのように考えているか。(そのスケジュール、規模、チェックアンドレビュー、役割等)

(5)メーカーの遠心機供給体制等に問題はないか。
(再処理)

7−3 再処理能力の確保は現状のままでよいか。

(1)最近の情勢にかんがみ、海外再処理にどこまで期待できると考えればよいか。期待量が不足する場合の緊急対策(例えば貯蔵ポンドの増設等が考えられるが)をどう考えるか。各電力会社は需給ギャップを具体的にどのようにのりきる予定なのか。

(2)第2再処理工場の建設を何年を目途にどうするのか。

7−4 放射性物質放出低減化を志向した再処理技術について、今後いかに開発をすすめるべきか。

7−5 再処理事業を確立させるために必要な国の施策は何か。民間としては、どのように取り組むのか。(プルトニウム)

7−6 プルトニウムの熱中性子炉利用と、将来にそなえた備蓄とのどちらを選択するか。その推進体制はいかにあるべきか。

7−7 プルトニウム燃料の開発は、どこが、どのようなスケジュールで行えばよいのか。

7−8 プルトニウムの転換、加工等の技術開発は、どこが、どのようなスケジュールで行えばよいのか。
(トリウム)

7−9 トリウム資源の確保は容易か。

7−10 トリウム核燃料サイクルの導入に関して留意すべき事項は何か。また必要な研究開発とそのスケジュールはどうあるべきか。

7−11 トリウム燃料の再処理技術の見通しについてどのように考えているか。

7−12 トリウムを使用しないHTGRと、トリウムを使用するHTGRとの燃料サイクルを含めた全体の利害得失をどう判断しているか。
(核燃料加工)

7−13 軽水炉燃料の加工事業体制は現状のままでよいか。

7−14 燃料被覆管のピンホール対策、燃料の焼きしまり対策など、軽水炉燃料の加工技術の向上のための研究開発をどのようにすすめるべきか。
 加工事業の規制のあり方について、現状を改善する具体的提案はないか。
(輸送)

7−15 使用済燃料等輸送問題について国の役割は何か。

7−16 キャスク、輸送船等の確保について、どのような体制で対応するのか。

7−17 事故対策(フィジィカル・プロテクションを含む)は、どうあるべきか。

7−18 現行の輸送関係法令について要望は何か。

8.環境・安全
(環境放射能)

8−1 「As Low As Practicable」(以下ALAPという)の考え方をどのように規制体系にとりいれたらよいか。

(1)ALAPの原則のとりいれ方を具体化するために、軽水炉について現行線量限度を十分下まわった「線量目標値」を定めることが検討されているが、その数値を規制体系にいかにとり入れるべきか。

(2)軽水炉の「線量目標値」を達成するために、原子力施設の運転に対応した「管理の基準」を定めることになるが、この基準を規制体系にいかにとりいれるべきか。

(3)軽水炉以外の原子力施設(例えば新型転換炉、再処理施設)に対して、ALAPの原則をどのようにとりいれるべきか。
 またこの場合ICRP pub 22に示された「As Low As Reasonably Achievable」という概念をどう考えるか。

8−2 原子力発電所の多数基設置に対処する方策として総量規制の考え方をどう考えるか。

(1)現行のRemによる規制に加えていわゆる総量規制をすることは必要なのか。もし必要なら、どのような考え方で、どのような指標を用いて総量規制を行うべきか。

(2)総量規制の考え方の一つとして、多数基設置地域の原子力発電所からの総放出キューリー数を規定値に抑える方式が考えられるが、これについてはどうか。

(3)原子力発電所の多数基設置に対処する方策として(国民遺伝線量に対する配慮から)man−rem規制(平常時)をどう考えるか。

(4)上記の他に、取り得る総量規制の考え方として何があるか。

8−3 低線量被ばくの影響研究を現在放医研を中心にすすめているが、これについてとくに意見があるか。

8−4 「As Low As practicable」を達成するため、放射性物質放出低減化のための研究開発をどうすすめたらよいか。また、そのスケジュールはどうあるべきか。

8−5 環境放射能モニタリング技術の開発をどうすすめたらよいか。また、そのスケジュールはどうあるべきか。

8−6 環境放射能モニタリング体制はどうあるべきか。とくに、国、地方自治体の役割をどう考えるか。

8−7 放射線審議会、再処理安全専門部会で環境放射能モニタリングに関する中央評価機構の設置について提言しているがこのあり方についてどう考えるか。
(安全確保)

8−8 安全審査、検査等の改善についての具体的提案はないか。

(1)現行の安全審査体制の改善案としていかなるものが考えられるか。

(2)審査の手続、審査の簡素化について、具体的提案があるか。

(3)検査体制の具体案として第3者検査機関を設置するという考え方があるが、これについてはどう考えるか。

8−9 原子炉運転員の資格規制についてどのように考えるか。

(1)原子炉運転員の資格規制が必要と思われるがどうか。

(2)資格付与はどのような方法が適当か。

(3)資格を研究炉、発電炉毎に数段階に区分する必要があるか。

8−10 原子炉主任技術者試験について改善策はあるか。

(1)研究炉、発電炉等に区分する必要はないか。

8−11 定検時等補修による作業員の被ばく低減化のための技術開発はいかにあるべきか。

(1)どのような作業で作業員の被ばく量が大きいか。

(2)どのような事項について防護具、作業手法等の技術開発が必要か。

(3)プラント設計面で配慮すべき事項は何か。

8−12 高温ガス炉等新型炉、特に導入炉の場合、安全性、実証性の確認のために、事前に検討すべき事項は何か。

8−13 下請作業者被ばく管理のための施設者と国の役割についてどのように考えるか。

8−14 早急に実施すべき安全研究課題(原子炉の工学的安全研究、環境安全研究、生物学的安全研究等)としてどのようなものが考えられるか。
(放射性廃棄物)

8−15 放射性廃棄物の処理、処分についてどう考えるか。

(1)サイト内保管の考え方、とくにその最大容量と安全性についてはどうか。

(2)国は最終的処分等を担当する専門機関をつくろうとしているが、これについてはどうか。

8−16 放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発について

(1)低レベル廃棄物に関する研究開発事項には何が残されているか。

(2)高レベル廃棄物に関する研究の見通しについてどう考えるか。
(温排水)

8−17 原子力発電所の設置にともなう温排水に関する基準の設定についてどう考えるか。

8−18 温排水の影響に関する研究についてはどこが主体となってどのようにすすめるべきか。

8−19 温排水利用技術の実用化に関する研究開発は、どこが、どのようにすすめたらよいか。

8−20 その他、温排水の影響低減技術の研究開発はどのようにすすめるべきか。
(その他)

8−21 環境・安全論争と関連して、企業秘密をどう考えるべきか。

8−22 専門家による公聴会ないしこれに代る場を設けることについてどう考えるか。

9.立地問題

9−1 従来の立地技術によるとわが国においてどの程度の規模まで原子力発電所の立地が可能か。その場合に想定したサイト当りの出力規模はいくらか。

9−2 立地上のどのような困難を打破するために、新立地技術の開発を行うのか。研究開発はどこがどのようにすすめるべきか。

9−3 電源三法の運用をどのように活用して、立地円滑化を図るか。

(1)原子力施設設置と地域開発との調整をどのように図るべきか。

(2)原子力開発と地場産業との関連をどう考えるか。

(3)地元への開発利益の還元をどう図っていくべきか。

9−4 原子力施設立地に関する地方自治体の関与権をどう考えるか。

9−5 立地円滑化のため、許認可制度上の改善策はあるか。

9−6 原子力知識の普及啓発(PR)のすすめ方はどうあるべきか。また国と民間の分担はどうあるべきか。

10.人材養成

10−1 原子力開発利用の進展に対応して、必要とする各分野の技術系人材が充分確保出来ると考えるか。
 もし、確保出来ない分野及び人材の種類があるとすれば、それは何か。また確保出来ない原因と、それに対する対策は、何が考えられるか。

分野の例:研究開発(R&D)、設計、製造、建設、運転、保守管理、放射線管理等
人材の種類の例:研究者、技術者、技能者、労務者等。

10−2 原子力関係技術者の養成訓練は現状のままでよいか。

10−3 原子力に関する学校教育をどう考えるか。

11.保障措置

11−1 現在および将来に亘って、国際的信頼性を確保しつつ、IAEAの保障措置に応え得る国内保障措置制度をどう整備して行くか(計量管理方法の確立、情報処理の機械化、保障措置関係分析機関の設立等)。

11−2 保障措置技術開発についてどう考えるか。

11−3 保障措置関連技術者の養成をどうするか。

11−4 Physical Protectionの問題にどう対処するか。


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