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原子力船「むつ」の出力上昇試験始まる



 原子力船「むつ」は8月26日母港青森県大湊港を出港し同月28日早朝青森県尻屋崎沖東方約800㎞の試験海域に到着した。
 その後直ちに臨界試験に入った結果、同日午前11時34分初臨界に到達し我が国初の原子力船が誕生した。
 原子力船「むつ」は、わが国の原子力船の第一船として日本原子力船開発事業団において開発が進められ、昭和47年9月には燃料装荷も終え出力上昇試験を実施し得る段階に達していたが、地元との話し合いの結論が得られないまま本年8月に至るまで母港大湊港に係留継続の止むなき状況にあった。
 同船は昭和38年国の原子力特別研究開発計画(ナショナルプロジェクト)として着手して以来今日まで150億円の巨責を投入している事業であり、また近年石油価格の高騰により高速コンテナー船、大型タンカーなどの分野で原子力船の評価が再び高まっていることなどから、政府はこのような局面を打解し早期に出力上昇試験を実施するため積極的に関係各方面との話し合いを進めてきた。
 この結果、開発利益の地元への還元として、むつ市内関連公共施設整備及び漁業振興対策を講ずるとともに、地元漁業者の定係港移転に関する要望については、出力上昇試験の実施と並行して誠意をもって青森県知事との接衝に応ずることで、地元各方面の大方の理解と協力を得られることとなり、今回の出港をむかえることとなった。
 なお、原子力船「むつ」は、今後約五ヶ月間にわたり出力上昇試験を実施した後、実験航海に入る予定である。(昭和49年8月未現在)


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