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日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に係る安全性について


昭和49年7月25日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
 委員長 森山 欽司殿
原子炉安全専門審査会 
会長 内田 秀雄
日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和49年4月23日付49原委第111号(昭和49年7月25日付49原委第217号をもって一部
訂正)をもって審査の結果をもとめられた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更(原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「敦賀発電所原子炉設置変更許可申請書」(昭和49年3月8日付申請、昭和49年7月22日付一部訂正)等に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 変更の内容

1 液体廃棄物廃棄施設の変更

(1)蒸発濃縮装置
 処理能力約3m3/時のもの2基および約0.3m3/時のもの1基増設する。(従来は、約2m3/時のもの2基)

(2)ろ過装置(非肋材型フィルタ)
 処理能力約20m3/時のもの一式増設する。(従来は約45m3/時の助材型フィルタ3基)

(3)脱塩装置
 処理能力約3m3/時のもの1基増設する。(従来は、約45m3/時のもの1基)

2 固体廃棄物廃棄施設の変更

(1)フィルタ・スラッジ貯蔵タンク
 貯蔵能力約350m3/基のもの1基増設する。(従来は約135m3/基のもの2基、約200m3/基のもの2基)

(2)使用済樹脂貯蔵タンク
 貯蔵能力約350m3/基のもの1基増設する。(従来は、約46m3/基のもの2基)

(3)濃縮廃液貯蔵タンク
 貯蔵能力約60m3/基のもの2基増設する。(従来は、約46m3/基のもの3基)

(4)クラッド・スラリ貯蔵タンク
 貯蔵能力約130m3/基のもの2基新設する。
(5)サイトバンカ
 高放射性固体廃棄物を貯蔵する設備一式新設する。

(6)雑固体焼却炉設備
 処理能力約50kg/時のもの一式新設する。

(7)固化装置
 アスファルト固化装置一式新設する。(従来は、セメント固化装置一式)

Ⅲ 審査内容

 本変更は、放射性廃棄物の貯蔵能力を増強するとともに、今後発生する廃棄物の減容をはかるものであり、この変更によって原子炉の安全性は損われることはない。また、本変更に係る施設の設置に関する基本方針挙よび基本設計について検討した結果、その安全性は十分確保しうるものと認める。

1 新放射性廃棄物廃棄施設の構造設計および耐震設計

 新放射性廃棄物廃棄施設は、既設放射性廃棄物処理建物北側(原子炉建物北側、タービン建物北西側)に隣接して設置され、その敷地は、タービン建物と固体廃棄物置場との間の丘陵を掘削した造成地である。
 敷地の地盤については、敦賀発電所の建設に先立って行った地盤調査等の結果によれば、基礎岩盤は花岡岩質岩石であり、本施設の地盤条件として特に支障はない。
 敷地に建設する建物は、処理建物(地下1階、地上2階)、焼却炉建物(地下1階、地上2階)、サイトバンカ建物であり、焼却炉建物の北西側に隣接して焼却炉排気筒(地上高さ25m)が設けられる。
 処理建物には、貯蔵タンクおよびろ過装置、蒸発濃縮装置、アスファルト固化装置等の貯蔵および処理設備が設置され、焼却炉建物内には、焼却炉、焼却炉排ガス処理装置、焼却用雑固体一時置場等が設けられる。また、サイトバンカ建物には固体廃棄物貯蔵プール、移送キャスク置場、プール水循環装置等が設置される。
 なお、新廃棄物廃棄施設と既設廃棄物処理建物の間には、廃棄物を相互に移送するため、配管およびダクトが設けられる。
 本施設の建物は、鉄筋コンクリート鉄骨造りであり、その基礎は岩盤に支持される。
 液体廃棄物処理装置および固体廃棄物貯蔵タンクは、それぞれ処理建物の鉄筋コンクリートでしゃへいされたセル内に設置される。
 処理建物、焼却炉建物、サイトバンカ建物は、建築基準法に基づき設計され、放射線しゃへいについては、原子炉等規制法に定めた許容被ばく線量を十分に下廻るよう設計される。
 また、貯蔵タンクは「発電用原子力設備に関する技術基準を定める通産省令」の第4種容器に定める規格に従って設計され、固化装置については、熱媒ボイラは労働省の「小型ボイラー構造規格および小型圧力容器構造規格」、蒸発缶は、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める通産省令」の第3種容器に定める規格に従って設計される。
 本施設の耐震設計については、建物、構築物は、建築基準法に定められた水平震度(Co、この場合、地盤および構造種別による低減率は考慮されるが、地域による低減率は考慮されない。)の1.5倍から定まる水平地震力により、また、機器配管系については備え付け位置における支持構築物の水平震度の1.2倍から定まる水平地震力を下廻らない値により、耐震設計が行なわれる。
 このほか、特に重要なタンク類については、垂直地震力(この場合の垂直震度は基礎底面における水平震度の光から定まる値を下廻らない値が用いられる)も考慮して耐震設計が行なわれる。
 なお、連絡配管を収納するダクトは、鉄筋コンクリートの密閉構造とされ、万一、配管から廃棄物の漏洩があっても処置できるようにダクト内面はエポキシ塗装を施すほか、漏洩水をサンプピットに集められるように設計される。連絡配管は、炭素綱あるいは不銹鋼が用いられ、配管の損傷等に対処するため予備配管が設けられる。

2 新放射性廃棄物廃棄施設の液体廃棄物処理設備

 液体廃棄物は、原子炉施設から発生する液体廃棄物の性状に応じて、機器ドレン系廃液、床ドレン系廃液、樹脂再生系廃液、ランドリ・ドレン系廃液に分類されて処理される。このうち、ランドリ・ドレン系廃液は既設の処理設備で処理されるが、その他の系の廃液は、原則として新設する廃液施設の液体処理設備で処理される。

(1)機器ドレン処理系は、電磁ろ過器供給タンク、電磁ろ過器、超ろ過器供給タンク、超ろ過器、処理水タンク等から成る。
 電磁ろ過器は、機器ドレン中に含まれるクラッド(鉄さび)のうち、強磁性体成分を磁力により除去するためのもので、ドレン中のクラッドを60%以上除去する能力を有する。
 超ろ過器は、電磁ろ過器で強磁性体成分を除去した廃液を処理する。超ろ過器は、プラスチック系の透過膜を使用するもので、膜を透過したろ過水は、処理水タンクに送られる。
 クラッドを含む濃縮液は、再び超ろ過器供給タンクに戻し、循環処理される。ろ過処理中に電磁ろ過器および超ろ過器で捕集されたクラッドは、逆洗によりクラッド・スラリ貯蔵タンクに排出される。
 電磁ろ過器および超ろ過器の性能については、クラッドの除去に関する複擬実験データを検討した結果、この系のクラッド除去は、ろ退水の濁度成分を0.5ppm以下にすることが出来る性能を有している。また系の処理能力が低下した場合には、逆洗することにより処理能力を回復させることが出来るので、所要の性能は維持される。なお、超ろ過器は、透過膜が劣化した場合には交換できるよう設計される。

(2)床ドレン系廃液および樹脂再生系廃液は、蒸発濃縮器で処理され、発生した蒸気は蒸発濃縮器復水器で凝縮し、濃縮廃液は、濃縮廃液貯蔵タンクに収集され、凝縮された復水は、処理水タンクに送られる。この系の処理設備は、蒸発濃縮器の除染係数および処理容量から見て、発生する廃液量を十分処理できる能力を有する。
 機器ドレン系、床ドレン系、再生廃液系の処理設備で処理された処理水は、既設の脱塩器で処理した後、復水貯蔵タンクに回収され、原子炉施設の補給水として再使用される。

3 新放射性廃棄物廃棄施設の固体廃棄物処理設備

(1)貯蔵タンク
 液体廃棄物処理設備で発生するフィルタ・スラッジ、クラッド・スラリ、使用済樹脂および濃縮廃液は、それぞれ貯蔵タンクに貯蔵保管される。これらタンクの容量については、過去の運転実績から考慮すると、必要期間貯蔵保管するに十分な能力を有する。
 濃縮廃液は、約3ケ月貯蔵保管した後、固化材と混合してドラム缶内に固化するが、フィルタ・スラッジ、クラッド・スラリおよび使用済樹脂は、最終処分法が確立されるまでの間、貯蔵タンク内に貯蔵保管される。
 各貯蔵タンクを収納するセル内の床面は、エポキシ塗装とし、勾配をつけて、万一、タンクの損傷によって漏洩した場合には、漏洩水をファネルに導き、配管を通じて床ドレンサンプに送るように設計される。

(2)アスファルト固化設備
 本設備は、液状または水分を多量に含んで発生する固体廃棄物をアスファルトと混合加熱し、固化体とする装置である。
 アスファルト固化装置は、廃液供給タンク、薄膜蒸発形蒸発缶、アスファルト供給タンク、蒸発缶加熱用熱媒ボイラ、ドラム缶充填用回転テーブル等から構成される。
 本装置は、液状固体廃棄物を固化する能力を有するが、当面は濃縮廃液のみを対象に固化される。
 本装置は、蒸発缶内で、アスファルトと濃縮廃液を熱媒により約230℃に加熱して混合するが、蒸発缶内のアスファルトに引火して火災が発生することを防止するため、熱媒温度の制御、静電気発生の防止、外部からの引火防止等の防火対策が講じられる。

(3)雑固体廃棄物焼却設備
 本設備は、雑固体廃棄物のうち、可燃性雑固体廃棄物を焼却処理し、これらの廃棄物を減容する設備である。
 本設備は、焼却炉、焼却排ガス処理装置、灰処理装置から成り、焼却炉は、耐火構造で自燃式である。焼却される雑固体廃棄物は、自動投入装置により間けつ投入され、起動時の炉体加熱のためにプロパンガス燃焼式の加熱用空気供給器が備えられる。
 排ガス処理装置は、1次および2次のセラミック・フィルタ各2系統のほか、高性能フィルタ2系統を備えており、各1系統は予備としている。
セラミック・フィルタは、排ガス処理のほかに排ガス中の未然分の2次燃焼を目的としている。
各フィルタにより処理された排ガスを排出するため、焼却炉排気筒(高さ25m)を焼却炉建物に隣接して設置する。
 焼却灰の処理は、焼却炉、1次および2次フィルタの下部に設置したグローブボックス内でドラム缶に受ける方式であり、使用済および破損セラミック・フィルタは、クラッシャにより粉砕後、灰と同様ドラム缶に受ける。
 本装置の除染係数は、系統全体で105以上と見込まれるので、排気筒から放出される粒子状放射性気体廃棄物は、無視出来る程少ない。なお、可燃性固体廃棄物の焼却処理は、約80日間の減衰時間を置いてから行なわれる。
 本装置の安全対策については、セラミック・フィルタが損壊した場合には、2系統のうち他の1系統に切替えられ、また、可燃性焼却物中に、万一、有機溶媒等の可燃物が混入し、炉内の圧力が上昇しても、逃し安全弁が設けられるので装置は保護される。

(4)サイトバンカ設備
 サイトバンカ設備は、使用済制御棒、チャネルボックス等の高放射性固体廃棄物を貯蔵保管するための設備である。
 サイトバンカ設備は、貯蔵保管プール、プール水処理系、移送キャスク置場、クレーン設備等から成る。
 貯蔵保管プールは、鉄筋コンクリート製で内面に不銹鋼ライニングを施し、プール水は、オーバー・フロー式であり、オーバー・フロー水は、プール水処理系でろ過処理し、循環させる。
 貯蔵保管容量は、発生実績および発生予測を考慮すると、必要期間貯蔵保管できる能力を有する。
 これらの高放射性固体廃棄物は、発生する放射線をしゃへいするため、水中で取扱われ、プール内に設けられた支持物等に支持されるなどして種類別に配置される。
 貯蔵保管プールは、不銹鋼でライニングされているので、プール水が漏洩することはない。万一、ライニングの損傷によりプ一ル水が漏洩した場合、漏洩水検出装置で検知し、補給水を給水するように設計されるので、必要なしゃへい水は確保される。
 移送キャスクは、高放射性固体廃棄物を、使用済燃料貯蔵池からサイトバンカに移送するための円筒型容器で、鉛しゃへいを設けて廃棄物からの放射線を防ぐ構造とされる。
 キャスクの移送は自走車により行なわれるが、キャスクは、自走車から落下しても、放射線が漏洩することがないように設計される。

4 新放射性廃棄物廃棄施設の放射性廃棄物管理および放射線管理

(1)放射性廃棄物管理

① 気体廃棄物
 新廃棄物処理施設の換気系は、制御室、通路、機器室等の換気を行なう建物換気系と、タンクおよび処理設備のベント系から構成される。ベント系は、建物内の汚染拡大防止をはかるため、一括してベント管により既設廃棄物処理建物の換気系に導き、モニタで常時管理されて既設の主排気筒より放出される。
 処理建物および焼却炉建物換気は、送風機および誹風機により行なうが、ろ過処理後、モニタで常時管理されて処理建物の排気口より放出される。サイトバンカ建物は、通常屋上換気扇により換気されるが固体廃棄物の貯蔵保管等の作業を行なう場合には、汚染の可能性を考慮して局所排気処理フィルタで処理し、モニタで管理しながら建物の排気口より排気される。
 焼却炉の排気は、ろ過処理後、モニタで常時管理されて焼却炉排気筒より放出される。

② 液体廃棄物
 原子炉施設で発生する機器ドレン、床ドレンおよび再生廃液は、一旦、既設廃棄物処理建物内にある各収集タンクに集められた後、新処理設備に移送し、ろ過、蒸発濃縮、脱塩等の処理が行なわれる。処理水は、既設廃棄物処理設備に戻され、原則として、復水貯蔵タンクに回収され再使用される。ランドリ・ドレン系廃液は、平常運転時には約20m3/d発生するが、既設の処理設備で処理後、環境に放出される。なお、原子炉施設の定期点検時のように建物内で雑用水を多量に使用すると、復水貯蔵タンクの保有水量が増加するので、床ドレン、再生廃液処理系の処理水の一部を環境へ放出することがあるが、その量は、年間約1000m3と見込まれている。液体廃棄物の放出にあたっては、あらゆる場合一旦サンプルタンクに貯え、その放射能濃度をモニタして、復水器冷却水路出口における放射能濃度が原子炉等規制法に定められた水中許容濃度以下になることを確認し、さらに、魚、貝、海藻等による放射性物質の濃縮および蓄積の効果も考慮して行なわれる。

③ 固体廃棄物
 固体廃棄物のうち、濃縮廃液は、放射能濃度が低いので、ドラム缶に固化し、既設の固体廃棄物置場に貯蔵保管されるが、フィルタ・スラッジ、使用済樹脂、クラッド・スラリは、放射能濃度が高いので、貯蔵タンク内に貯蔵保管し、最終処分法が樹立されるまでの間、放射能を減衰させる。
 雑固体廃棄物のうち、不燃性のものは、減容機でドラム缶内に圧縮減容した後、固体廃棄物置場に貯蔵保管さる。可燃性のものについては、ドラム缶等に収納して、短半減期核種を十分減衰させるために、焼却炉建物の一時置場に80日以上保管した後、焼却される。焼却後の焼却灰は、ドラム缶に収納され、固体廃棄物置場に貯蔵保管される。
 使用済制御棒、チャネルボックス等の高放射性固体廃棄物は、原子炉から取り出された後、一旦使用済燃料貯蔵池に貯蔵保管され、その後移送キャスクによりサイトバンカに移送され、貯蔵プール中に貯蔵保管される。
 なお、固体廃棄物の処分に関する国の方針に従い最終的に処分する場合には、関係官庁の承認を受けることになっている。

(2)放射線管理
 新廃棄物廃棄施設は空間放射線線量率、放射性物質の水中あるいは空気中濃度または表面汚染密度が原子炉等規制法で定められた値をこえ、またはこえるおそれのある区域を管理区域とするが、実際には管理上の便宜を考慮して、これらの施設を全体として管理区域に設定するとともに、原子炉建物等を含む従来の管理区域とあわせ一括して区域管理が行なわれる。
 新管理区域内は、外部放射線に起因する放射線管理区域と、空気、水および表面の放射能汚染に起因する汚染管理区域に分け、さらに、各区域を放射線レベルの高低、放射能汚染度の高低により2種類程度に区分して、段階的な出入管理が行なわれる。
 新管理区域は、エリアモニタ、ダストモニタ等の固定モニタによって、新廃棄物処理設備の運転に伴なう空間線量率、空気中放射能濃度を連続監視するほか、移動型モニタおよびサンプリング測定により、空間線量率、空気中および水中の放射性物質濃度、表面汚染密度等の定期的な監視が行なわれる。
 なお、従業員等の被ばく管理は従来と同一方式により行なわれる。

5 平常運転時における被ばく線量評価

 本変更にともなって放出される放射性物質および既設の原子炉施設から放出される放射性物質による敷地周辺の公衆の被ばく線量評価は次のとおりで、前提に用いた仮定は妥当であり、その結果は、敷地周辺の公衆に対する放射線障害の防止上支障がないものと認める。

(1)被ばく線量計算の前提条件

① 主排気筒から放出される気体状の放射性物質については、次の条件を用いる。

(イ)燃料から一次冷却水中に漏洩する核分裂生成物のうち、希ガス(クリプトン、キセノン)の放出率は、拡散混合組成を仮定し、制限値である30分減衰換算値650mCi/sとする。

(ロ)希ガス各核種の組成は、核分裂収率および崩壊定数を用いて定める。

(ハ)原子炉冷却水およびそのなかに溶けている空気が放射化されて生ずる窒素、アルゴンなどの放射化生成物は、発生量が少なく、かつ、半減期が短かいので主排気筒から放出される量は無視できるほど少ない。
 したがって、主排気筒から放出される気体廃棄物は、主として核分裂生成物のうち希ガスおよびよう素であるので、これらの放射性物質を対象に評価する。

(ニ)原子炉施設の各系統から放出される希ガスの主排気筒放出率は、前記の前提条件をもとに次のとおりとする。

(a)復水器空気抽出器系排ガスは、活性炭式希ガスホールドアップ装置で、キセノンについては30日間、クリプトンについては40時間保持され、ろ過処理後主排気筒から連続して放出される。
 この系の希ガスの放出率は0.79mCi/s(γ線実効エネルギ0.064MeV)である。

(b)タービン軸封蒸気系排ガスは、ろ過処理後、減衰管で15分減衰されたのち主排気筒から連続して放出される。
 この系の希ガスの放出率は1.0mCi/s(γ線実効エネルギ0.77MeV)である。

(c)原子炉建物、タービン建物等の換気系排ガスは、主排気筒から連続して放出される。
 この系の希ガスの放出率については、一次冷却系のバルブ、ポンプ等からの漏洩水に含まれている希ガスが建物内に放出されると仮定して計算した場合6.4×10-2mCi(γ線実効エネルギ0.69MeV)である。

(d)復水器真空ポンプ系排ガスは、タービンの起動停止に関連して放出されるが、比較的短時間にタービンを起動する際には、復水器に残留する希ガスが真空ポンプの運転により排出される。
 真空ポンプの運転により排出される希ガスの量は、過去の実績を参考に年間2,500Ci-MeVとする。

(e)放射性よう素が大気に放出される経路は、希ガスの場合とほぼ同じと考えられるが、過去の実績を参考にし、年平均主排気筒放出率を5.8×10-2μCi/s(1-131)とする。

(ホ)焼却炉排気筒から放出される放射性物質については、可燃性固体廃棄物に含まれる放射性物質のうち放射性よう素が焼却の過程において揮発し、気体となって放出される可能性がある。
 その放出量は、過去の可燃性固体廃棄物中の放射能量および核種構成を参考にし、焼却管理を考慮して1mCi/y(I-131)とする。

② 放出される液体状の放射性物質については下記により、トリチウムを除き1Cⅰ/yとし、トリチウムについては100Ci/yと仮定する。

(イ)機器ドレン系廃液
 機器ドレン系廃液の発生量は、約70m3/dその放射性物質濃度は約0.1μCi/cm3である。ろ過装置で処理された処理水は、処理水タンクに集めた後脱塩装置で処理され、放射性物質濃度が約10-3μCi/cm3となって復水貯蔵タンクに回収され、再使用される。

(ロ)再生廃液系廃液
 再生廃液系廃液の発生量は、再生1回につき約60m3で、年間約25回の再生が行われ、その放射性物質濃度は約0.1μCi/cm3である。蒸発濃縮装置で処理された処理水は、処理水タンクに集められた後、脱塩装置で処理され、放射性物質濃度が約10-4μCi/cm3となって復水貯蔵タンクに回収され再使用される。

(ハ)床ドレン系廃液
 床ドレン系廃液の発生量は約30m3/d、その放射性物質濃度は約10-2μCi/cm3である。蒸発濃縮装置で処理された処理水は、処理水タンクに集められた後、脱塩装置で処理された放射性物質濃度が約10-5μCi/cm3となって復水貯蔵タンクに回収され再使用される。
 なお、この系の処理水は、プラント内の保有水量が増加した場合、一部環境に放出されるが、その量は約1,000m3/yである。

(ニ)ランドリ・ドレン系
ランドリ・ドレン系廃液の発生量は約20m3/d、その放射性物質濃度は約10-4μCi/cm3で、復水器冷却水で希釈して環境に放出される。
 以上の前提にもとづき計算すると、環境に放出される液体廃棄物の量は、約8,300m3/y放射性物質の量は、約740mCi/yとなる。

(2)平常運転時の被ばく線量評価

① 気体廃棄物中の希ガスの外部γ線による全身被ばく線量
 平常運転時に環境に放出される希ガスによる被ばく線量評価は、次の条件を用いて行なった。

(イ)連続放出の場合

(a)復水器空気抽出器系希ガス、タービングランドシール系希ガスおよび換気系希ガスについては、主排気筒から連続して放出されるものとし、その希ガスの放出率を0.87mCi-MeV/sとする。

(b)主排気筒(地上高30m、標高約140m)の実効高さについては、主排気筒からの吹き上げ効果と山の斜面に沿う流線の上昇下降を考慮する。

(c)気象条件は、1年間の気象観測の毎時の実測値を用いる。

(d)原子炉の年間稼動率は、80%とする。

(ロ)間けつ放出の場合

(a)復水器真空ポンプ使用時、1回当りに放出される希ガスの量は、500Ci-MeVとし、放出回数は年間5回あるものとする。

(b)主排気筒の実効高さの求め方は、(イ)-(b)と同じとする。

(c)着目地点への影響回数は、風向出現頻度、年間総放出回数とから二項確率分布で評価する。

(d)風速は、着目方位の逆数平均風速を使用し、大気安定度はD型とする。
 以上の条件を用いて計算した結果、周辺監視区域境界で、全身被ばく線量は、最大値約7.5mrem/yであり、原子炉等規制法で定める許容被ばく線量を十分下まわっている。
 当該敷地の境界はほとんどが山と海に接しており、このためこれらの敷地境界付近には人は居住していない。居住の可能性があり、かつ、最も被ばく線量が高くなると予想される方向は、浦底部落方向であり、この方向の敷地境界における被ばく線量を評価すると、全身被ばく線量は約3.9mrem/yである。
 また、敷地には動力炉。核燃料開発事業団の新型転換炉原型炉の原子炉施設があり、その運転に伴って放出される希ガスの寄与は、前述の地点で全身被ばく線量は約0.54mrem/yであり、両者を合計すると約4.4mrem/yである。

② 気体廃棄物中のよう素による甲状腺被ばく線量
 平常運転時に環境に放出されるよう素による被ばく評価は、次の条件を用いて行なった。
(イ)主排気筒からの放出の場合

(a)よう素の放出率は、過去の実績を参考として年平均5.8×10-2μCi/s(I-131)とする。

(b)主排気筒の実効高さの求め方は①-(イ)-(b)と同じとする。

(c)気象条件は①-(イ)-(c)と同じとする。

(d)被ばく経路は、呼吸による吸入ならびに葉菜の摂取を考慮する。この場合、呼吸量は成人で20m3/d、幼児で8m3/d、また葉菜の摂取量は、成人で100g/d、幼児で50g/dとし、この量を毎日摂取するものとする。

(ロ)焼却炉排気筒からの放出の場合

(a)よう素の放出率は過去の可燃性固体廃棄物中の放射能量および核種構成を参考にし、焼却管理を考慮して1mCi/y(1-131)とする。

(b)焼却炉排気筒の拡散条件は地上放散とする。

(c)気象条件は①-(イ)-(c)と同じとする。

(d)被ばく経路は②-(イ)-(d)と同じとする。
 以上の条件を用いて計算した結果、敷地境界外で、よう素の濃度が最大となる地点は、浦底部落方向の敷地境界付近(主排気筒から約800m)であり、その地点における年平均濃度は約1.9×10-14μCi/cm3である。
 また、前述の地点で新型転換炉の原子炉施設の排気筒から放出されるよう素の寄与は、約2.7×10-15μCi/cm3であり、両者を合計すると年平均濃度は約22×10-14μCi/cm3である。
 この地点における甲状腺被ばく線量は、幼児が最大で、約14mrem/yである。

③ 液体廃棄物中の放射性物質による被ばく線量液体廃棄物中の放射性物質による被ばく線量評価は、次の条件を用いて行なった。

(イ)放射性物質の放出量は、トリチウムを除き1Ci/yとする。トリチウムは、100Ci/yとする。
(ロ)放射性物質の核種と組成は、過去の実績値を参考とする。
(ハ)放出された放射性物質は、復水器冷却水のみによって希釈されるものとし、放出後の海水による混合希釈は考慮しない。
 また、循環水ポンプの年間稼動率は90%とする。
(ニ)海産物の放射性物質の濃縮係数は、現在報告されているもののうちから、厳しい側の値を用いる。
(ホ)住民の海産物摂取量は成人で魚類200g/d、海草類40g/d、甲穀類10g/d、軟体動物10g/dとし、この量を毎日摂取するものとする。
(ヘ)よう素の甲状腺被ばく線量の計算は比放射能法による。
 以上の条件を用いて計算した結果、全身被ばく線量は約0.5mrem/y。甲状腺被ばく線量は約0.2mrem/yである。

Ⅵ 審査経過

 本審査会は、昭和49年4月26日第125回審査会において次の委員よりなる第108部会を設置した。

(審査委員)
村主進
浜田達二
(部会長)日本原子力研究所
理化学研究所
(調査委員)
秋山宏
上村克郎
阪田貞弘
福田整司
東京大学
建築研究所
日本原子力研究所
日本原子力研究所

 当該部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行なうこととし、昭和49年5月14日第1回会合を開催して以来、審査を行なってきたが、昭和49年7月18日の部会において部会報告書を決定し、本審査会はこれを受け、同年7月25日第128回審査会において本報告書を決定した。


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