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環境安全専門部会中間報告書(安全研究分科会)


昭和48年6月

まえがき
 安全研究分科会は、原子力委員会の諮問により、昭和47年7月11日以降、国が積極的に実施すべき原子力施設の安全に関する研究の効果的な進め方について検討を行なってきた。

 当初、当分科会の審議対象を決定するため、軽水炉、新型転換炉、高速増殖炉、燃料再処理施設、高温ガス炉等について検討を行なったが新型転換炉、高速増殖炉については、開発プロジェクトの一環として実施することが妥当であり、また、高温ガス炉については、開発の方針が明確になった段階において審議を行なうのが妥当であるとの結論を得た。

 当分科会は以上の理由により軽水炉を対象として、また、燃料再処理施設については、放射性廃棄物放出低減化の研究が最も重要であるので、これらの研究も加え、当面、昭和48年度より5ケ年間を展望し、安全審査の実施、安全基準の作成等につき、国が実施すべき最も重要な安全研究課題を選定し、これの安全研究年次別計画、安全研究の進め方、安全研究推進体制等について審議を重ねてきた。

 この間、推進すべき安全研究課題の選定および安全研究年次別計画の策定に当たってはワーキング・グループを設置し、検討を行なった。

 また、これらの審議の経過については、昭和47年12月1日、中間的報告を行なったがその後さらにこれら諸問題について、鋭意審議を進め、最終的に審議結果をとりまとめたので、ここに報告する。

 なお、本安全研究分科会およびワーキング・グループのメンバーはつぎのとおりである。

安全研究分科会委員名簿(五十音順)


主査内田秀雄 東京大学教授
青木成文 東京工業大学教授
天野昇 日本原子力研究所東海研究所副所長
安藤良夫 東京大学教授
大野博教 電力中央研究所技術第一研究所原子力部長
大山彰 動力炉・核燃料開発事業団理事
鎌田勲 日本経済新聞社論説委員
清瀬量平 東京大学助教授
谷口薫 (株)日立製作所原子力研究所長
佃俊雄 関西電力(株)常務取締役
津田鉄彌 三菱原子力工業(株)常務取締役
都甲泰正 東京大学教授
野村顕雄 東京電力(株)取締役原子力部長
藤波恒雄 (財)電力中央研究所ウラン濃縮事業調査会副会長
伏見康治 名古屋大学プラズマ研究所長
三島良績 束京大学教授
和田文夫 通産省公益事業局技術長

ワーキング・グループ委員名簿(五十音順)
主査都甲泰正 東京大学教授
青木成文 東京工業大学教授
秋野金次 日本原子力発電(株)建設部
礒康彦 日本原子力研究所調査役
大野博教 電力中央研究所第一研究所原子力部長
大森紀彦 三菱原子力工業(株)プラント技術部燃料設計課長
川口修 動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉開発本部、主任研究員
佐藤高也 関西電力(株)原子力部原子力計画課長
沢口裕介 東京電力(株)原子力部原子力計画課長
島宗弘治 日本原子力研究所原子炉工学部
竹越尹 動力炉・核燃料開発事業団、新型転換炉開発本部副本部長
中島健太郎 〃再処理部次長
山内淳男 日立製作所(株)日立研究所第6部主任研究員
 
安全研究分科会開催日
昭47.7.11 第1回  会合
9.5 第2回   〃
11.14 第3回   〃
12.22  第4回   〃
48.3.19 第5回   〃
6.25 第6回   〃
ワーキング・グループ開催日
昭47.7.24  第1回  会 合
8.24 第2回   〃
9.20 第3回   〃
10.3 第4回   〃
11.2 第5回   〃
48.2.27 第6回   〃
3.12 第7回   〃
6.13 第8回   〃
 
   1 安全研究の必要性について
 近年わが国のエネルギー需要は、経済の発展とともにますます増大しており、とくに電力需要の占める割合は、国民生活水準の向上とともに著しいものがある。

 この増大する電力需要に対処して、安定かつきれいなエネルギー供給をはかることが可能である原子力発電に対する期待はきわめて大きく、昭和60年度には約6000万kW、昭和65年度には約1億kWを原子力発電でまかなうことが要請されており、このため今後本格的な原子力発電への着手が予測されるところである。

 この原子力発電利用は十分なる安全確保が行なわれてはじめて健全なる発展が期待されるところから従来から在来産業に比較して安全について特段の配慮がなされてきた。

 しかしながら、今後技術の進歩にともなった、在来型炉の単基容量の大型化、施設の集中化、新型動力炉の開発およびこれらの関連施設の多数設置が予測されるという新しい情勢の展開をみるとき、これら施設の安全確保に対する強い国民的要請を厳粛に受けとめ、施設自体の安全研究はもとより、放射性廃棄物排出量の低滅化等の研究を従来より一層強力に推進し、これまで得られている高い安全確保の実績を一層向上させていかなければならない。

 この原子力施設の安全確保については、施設設置者、メーカー等が設計、建設、運転に際して十分留意すべきことはもとよりであり、技術開発と表裏一体となって安全研究を行なうべきであるが、一方、国としては国民の安全を保証する立場から、施設設置に際しての安全審査の実施、安全基準の作成等に適確かつ効果的な適用をはかるための安全研究を広範囲にわたり早急かつ強力に推進する必要がある。

    2 推進すべき安全研究課題について
 安全審査の実施、安全基準の作成等に必要な安全研究のうち当面推進すべきと考えられる課題は、以下のとおりである。

 なお、開発技術は、原子力施設の性能向上をめざして日進月歩で進歩しているので、安全研究も、これと表裏一体となって推進しなければならない。したがって、開発の進展において、新技術の導入が行なわれる等、新しい情勢の展開においてはこれに対して、随時適確な安全研究課題を設定し、これの推進を図る必要がある。

   課題 原子炉燃料の安全性に関する研究
(目的)
 高エネルギーの発生源である燃料および被覆管材料は、原子炉の中でも最も厳しい条件下におかれることになるが、その安全性には種々の要因が関連し、使用中および事故条件下の燃料のふるまいの把握はまだ完全とはいえない。

 したがって、原子炉の安全評価の際重要となる燃料の使用条件下および事故条件下のふるまいを実験により解明することが、燃料破損原因の究明、燃料のふるまい解析コードの実証等に不可欠である。

(研究内容)
 照射下測定による燃料棒挙動の研究、燃料ペレット被覆管材料の物性、使用中変化についての研究等に基いた燃料モデリングの実証的研究を行なうとともに、故意に破損要因を与えた燃料の放射能放出挙動および破損時のふるまいの解明、冷却材喪失事故時およびその後の非常用炉心冷却システム作動に至る過程での燃料および被覆管の挙動、この時の被覆材のジルコニウム合金の酸化による脆化の研究、等を行なう。

   課題 原子炉材料および構造安全に関する研究
(目的)
 原子炉の安全評価を行なう場合、原子炉の一次系配管破断事故を想定事故として、事故解析を行なっている。

 しかし、本来原子炉の安全を確保するには構造物の破損を起こさないように、設計、製作することが先決である。

 このため、圧力容器を含む一次系の構造および構造部材についての破損の原因となる諸要因特性について解明を行ない一次系の信頼度向上をはかることが必要である。

(研究内容)
 溶接継手部の冶金的欠陥材料の耐照射性、構造モデルによる内圧破壊に関する研究等、圧力バウンダリの不安定破壊に関する研究、コンポーネントおよび支持構造系の緊急時および事故時の荷重の評価、大型材の使用条件下における安定性の評価等、大型構造の構造安全に関する研究、ステンレスの応力腐食割れに関する研究、原子炉用コンクリートの高温クリープ特性の把握、原子力施設への飛来物落下事故に関する研究等を行なう。
 
   課題 原子炉施設の異常の早期発見および供用期間中検査法に関する研究
(目的)
 原子炉施設は、その安全の確保のため、設置されてからも、厳重なる定期検査が行なわれているが、最近、とくにこの検査が重視されるようになった。

 原子炉施設の検査は、原子炉の運転開始後は、放射能のため、検査部へ直接人が接近できず、すべて遠隔で行なう等、特殊な条件下で実施する必要がある。

 従って、現在考えられている種々の供用期間中検査法および漏洩検知法等検査方法、検査結果の評価方法を早急に確立する必要がある。

(研究内容)
 電気抵抗法、渦電流および磁気探傷法等の表面検査法、超音波法およびアコースティックエミッション法等の体積検査法等、種々の検査法について、自動化、遠隔操作および情報処理技術を含めた原子力施設への適用について、試験研究を行ない、総合的な評価を行なう。

 また、圧力バウングリーからの漏洩検知方法等に関する試験研究を行なう。

   課題 原子炉事故時(冷却材喪失事故時)の機械的熱的挙動に関する研究
(目的)
 原子炉の安全評価を行なう際の最も厳しい事故は、一次冷却系破断によって生ずる冷却材喪失事故である。
この事故時の現象を正確に解明し、より精度の高い安全解析コードを作成し、安全審査に反映させることが極めて重要である。

 このため実際の原子炉の条件に模擬した実験装置および実用規模程度の試験装置により冷却材喪失事故時の冷却材、炉心、炉構造物等の熱的、流体的、機械的データを求めコードの開発・改良に資する。

(研究内容)
 冷却材喪失事故試験装置によりブローダウン中非常用炉心冷却装置作動時の冷却材の熱的、流体的挙動、燃料温度、炉構造物に及ぼす熱的、機械的影響等、それに与える諸因子についての総合試験研究を行なう。

 これと平行して総合試験では十分解明し得ない部分たとえばブローダウン中の伝熱流動実験、再冠水実験被覆材、水反応実験などの部分的実証実験を行ない総合試験の結果得られたデータをより普遍的なものとする。

 さらには実際の原子炉により近いデータを得るためには上記実験を実施する冷却材喪失事故試験装置をスケーリングアップした装置によるデータを得る必要があり、このため海外で実施している実用規模程度の試験施設による研究計画に積極的に参画する必要がある。

   課題 反応度事故に関する研究
(目的)
 原子炉の安全評価を行なう際に想定される事故の一つに反応度事故がある。これは、何らかの原因で、原子炉の出力が異常に急上昇し、炉心材料の破損ないし溶融を生じ有害な核分裂生成物が外界に放出される事故である。

 この反応度事故を対象とし、反応度実験装置により、燃料破損と、それに伴う諸現象の把握、燃料破損時の破壊エネルギー量の測定、事故時の燃料挙動など、核的安全性の実証研究を行なう必要がある。

(研究内容)
 反応度条件を模擬したパルス運転によって、未照射の酸化ウラン燃料を試験材料として、種々の条件下で試験的に破壊し、燃料破壊とそれに伴う諸現象の解明を行なう。

 さらに、周辺燃料、冷却材流動挙動が、燃料の破損機構、しきい値に及ぼす影響の究明、燃料破損に伴う破壊エネルギーの発生形態、破折機構やしきい値との相互関係、炉構造に及ぼす影響、等に関する研究を行なう。

   課題 安全解析コードの研究
(目的)
 原子炉の安全性を評価するためには、炉心全体の挙動、燃料の挙動、冷却材の温度、圧力、構造材に及ぼす影響等を解析し、通常運転時の使用条件が安全限界内であることを確かめる必要がある。

 また、事故評価上重要な冷却材喪失、事故時および反応度事故時の冷却材の熱的流体力学的挙動、燃料温度や被覆管内圧上昇等の諸現象、事故時の燃料特に被覆破損の程度の精度よい評価、事故後の雰囲気中での燃料及構造材の特性劣化程度およびその安全性に及ぼす影響の評価、非常用炉心冷却装置作動時の燃料の挙動、原子炉構造材に及ぼす熱的機械的影響等、一連の複雑な現象を解析しうる安全解析コードの開発が必要である。

(研究内容)
 安全評価に関する解析コードとしてすでにある程度開発されているブローダウン現象解析用、ブローダウン時点の非定常燃料温度計算用、格納容器温度、圧力等の解析用、燃料挙動解析用、炉内構造物に加わる衝撃力の評価用等のコードについて、各種の実験データと照合しつつ、一層精緻なコードとして整備するとともに、各種コードの統合による総合的な安全解析コードを開発する。

   課題 原子力施設の信頼度に関する研究
(目的)
 原子力施設の安全性を評価するに際しては、事故を想定しての災害評価とともに、事故の発生確率を予測することが重要なる要件となる。

 このため、安全防護施設を含めた各種原子炉機器の平常運転時、および異常状態等のデータを収集することによって、原子炉施設の信頼度を評価するとともに、検査基準作成に寄与するための資料を得る。

(研究内容)
 原子炉施設、安全防護施設、各種原子力機器の平常運転、異常状態等の情報の収集方式を検討し、故障データを収集して、データーバンキングのための電算機ソフトウエアを開発し、信頼度評価に適合できるようにデータの整理を行なう。

   課題 放射性廃棄物の放出低減化に関する研究
(目的)
 今後原子炉施設の大型化、集中化および再処理施設の稼働が予想される情勢を考慮するとき、排出される廃棄物を実行可能な限り低液化するための諸方法について工学的研究を実施し、今後の基準作成に反映させる必要がある。

(研究内容)
 隔膜法、溶媒吸収-液化蒸留の結合方式等によるクリプトン回収技術の研究、ボロキシデーション法等によるトリチウム回収技術の研究を行なう。

 さらに、事故時に放出される希ガス(キセノンー133、クリプトンー85等)の処理技術についても、調査研究を行なう。

   課題 耐震に関する研究
(目的)
 世界でも有数の地震国であるわが国においては、原子力施設の耐震設計は、とくに重要な問題である。

 しかしながら、耐震設計に必要な基本的事項、例えば設計地震の強さ、建物と地盤の相互干渉の取扱い方許容応力等についての基準が未だ明らかでなく、安全審査においても、過去の経験をもとにケースバイケースの判断をせざるを得ない現状である。

 したがって、国としても、各原子力施設の耐震設計に関する許認可等が、統一的判断のもとに行なえるような安全基準の確立に資することを目的とした試験研究の推進を図る必要がある。

(研究内容)
 まずインプットとしての地震動の問題として、過去の地震記録をもとに、地震地帯構造学を加味した統計的手法により、設計用標準地震動の策定法の研究を行なう。

 また、動的応答解析に最も影響のある、建物と地盤の相互干渉の究明と、その普辺的取扱い方の手法の確立、重要なプラント構成要素の振動実験による機能や耐力の確認および評価基準、標準仕様の作成、さらには、大きな地動変位に追従せねばならない地表または、地中埋設管の適合性に関する研究等を行なう。

   課題 核燃料輸送容器の安全に関する研究
(目的)
 使用済燃料輸送容器は、「核燃料物質輸送容器の安全性審査基準」に規定された諸試験を行なうために、実用輸送容器そのものを被験体に使用すると、その容器の再使用が不可能となるため、少数製造する輸送容器についてはモデル実験もしくは理論評価により基準との適合性を確認できることがのぞまれる。

 このような観点から、近い将来多数の使用済燃料用輸送容器の実用が期待される今日、これに先立って大型輸送容器を対象に各種モデル実験を実施し、同時にこの結果と照合しつゝ輸送容器の安全を理論的に解析するための解析コードの整備が必要である。

(研究内容)
 オープンファイアによる火災試験によって熱特性評価を行ない、伝熱コードの作成を行なう。
また、多重しゃへい能力の解析、キャスクの臨界解析等安全解析コードの開発のための研究を行なう。

さらに従来実施されている落下試験結果等を含めて総合評価を行ないコードの整備を行なう。

   課題 気象に関する研究
(目的)
 現在、原子炉施設設置に際しての施設周辺の気象安全審査を行なう場合には現地の気象条件について検討するが、これには昭和40年11月原子炉安全基準専門部会において作成された「原子炉安全解析のための気象手引」が審査の指針となっている。

 しかしながら本基準では、平常時および事故時に大気中に放出されるガス状またはエアロゾル状の放射性廃棄物が、微風時においてどのように拡散するかが明確にされていないため、これに関する研究を実施し、本基準の改訂に資する必要がある。

(研究内容)
 現場における大気拡散実験、とくに、弱風および無風時の拡散に関する実験研究、モデル地形についての風洞実験による結果の現地への適用方法に関する研究等を行なう。

    3 安全研究の進め方について
 前述した安全研究課題は相互に有機的に関連を有するものであり、したがってこれら諸研究は総合的、計画的に推進することによって有意義な成果が期待できるものである。

 また、これら安全研究を遂行するにあたっては、研究機器、施設等の整備に多額の資金を必要とするので特段の配慮が必要である。

 このような観点からこれら研究課題に関する研究を原子力特定総合研究として積極的に推進する必要があるものと判断する。

 なお、安全研究ほ開発研究と異なり、技術進歩に伴って緊急に実施をせまられる新しい研究課題の出現が予測されるので、このような状況に際しては、これらの研究課題についても検討を加え、必要に応じて原子力特定総合研究に加えて、推進すべきであると考える。

 一方、安全研究をより効果的に推進させるためには海外の情報の収集および交換、研究者の交換、共同研究、海外への研究委託等密接な国際協力を、安全研究の実施と並行して行なう必要がある。

 また、安全研究を強力に推進するためには研究に従事する人材の養成ならびに確保を積極的に行なう必要がある。

   4 安全研究推進体制について
 原子力開発技術は、日進月歩の技術革新が行なわれているのであり、したがって、安全研究も絶えず開発研究の進行を注目しつつ進めることが肝要である。

 このため、安全研究を推進するにあたっては常に内外の動向、研究情報等を適確に把握し、総合的な見地から研究計画等に反映させることが肝要である。

 また、安全研究をより効果的に実施するためには、研究成果を評価し、もって以後の研究に反映させ、さらには、これらの研究成果を確実に安全審査の実施、安全基準の作成に反映させることが肝要である。

 現在、安全研究は日本原子力研究所においては主として事故現象の解明、安全解析コードの開発を、国立試験研究機関は主として原子炉材料構造の安全に関する基礎的研究を、国からの委託研究を受けている民間機関においては主として耐震設計、供用期間中検査法など事故防止に関する安全基準作成に必要な研究を実施しているので、これら諸機関に有機的な連けいを保たせながら安全研究を推進する必要がある。

 このような観点から、安全研究を効率的に推進するためには、以上に掲げた諸問題を一元的に総合調整する体制の設置が必要である。

 すなわち、安全研究実施計画を立案し、推進し、評価するとともに内外の動向、研究情報の把握、長期的な安全研究計画の検討等をするための安全研究推進会議(仮称)を設け、安全研究の推進体制を確立しなければならない。

   5.新型動力炉の安全研究について
 まえがきにおいて述べたとおり、新型動力炉の安全に関する研究については、本分科会は、検討した結果動力炉・核燃料開発事業団が、動力炉開発業務に関する基本方針および基本計画に従い国のプロジェクトとして、安全に関する諸問題を含めて開発を推進することが妥当であるとの結論を得た。

 この観点から、新型動力炉の安全研究に関する研究内容、年次計画等については特に詳細な審議を行なわなかったが、推進すべき重要な研究課題としては次のようなものが挙げられた。

 また、研究の進め方としては、軽水炉に関する安全研究の推進方策と密接な連けいを保ちつつ推進する必要がある。

 一方、将来開発が予想される大型の新型転換炉および実用規模の高速増殖炉などに関する安全研究については、現在プロジェクトで推進中の安全研究の進捗状況および今後の開発の動向を勘案しつつ前述した推進体制において検討していく必要がある。

  Ⅰ 新型転換炉の安全研究課題
〔1〕原子炉の安全評価に関する研究
(冷却系破断試験、非常用炉心冷却試験、安全機器の作動、機能試験等)

〔2〕安全解析コードの研究
(冷却系破断時の冷却材放出現象、核反応度係数を取り入れたコードの改良と解析計算の実施等)

〔3〕供用中検査法に関する研究
(超音波探傷法による原子炉圧力容器、圧力管、下部ヘッダ、蒸気ドラム等の検査法の開発等)

〔4〕放射性廃棄物の放出低減化の研究
(空気中のトリチウム除去に関する研究、重水中のトリチウム除去に関する研究等)

〔5〕核燃料輸送容器の安全に関する研究
(安全解析コードの開発、プルトニウム燃料の輪送容器の安全性に関する研究等)

  Ⅱ 高速増殖炉の安全研究課題
〔1〕原子炉の安全評価に関する研究
(スクラム、バック、アップ系の確認試験、ナトリウムー二酸化ウラン相互作用、耐衝撃構造試験、燃料破損伝播試験、局所異常検出に関する研究、ナトリウム過度沸騰試験、ナトリウム中のFP挙動および除去に関する研究、F.Pを含む。ナトリウム燃焼試験、ナトリウム水反応試験、一次冷却系配管の信頼性および破断に関する研究等。)

〔2〕安全解析コードの研究
 (過度現象解析、超臨界事故解析コードの作成等)

〔3〕燃料の安全性に関する研究
 (燃料照射試験、被覆材に関する研究等)

〔4〕耐震設計に関する研究
(黒鉛ブロック積の耐震設計、配管支持機構の開発炉内構造物の耐震設計等)

〔5〕放射性廃棄物の放出低減化の研究
(活性炭吸着-液化蒸留の結合方式によるクリプトンー85の回収試験、放射性汚染ナトリウムの処理処分に関する試験等)

〔6〕核燃料輸送容器の安全に関する研究
(使用済燃料の輸送容器の安全に関する研究、プルトニウム燃料の輸送容器の安全性に関する研究等)
 
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